表面を修飾した微粒子およびその形成方法および使用
表面修飾微粒子およびこのような微粒子の製造方法および使用方法を開示する。表面修飾微粒子には、少なくとも1種の活性薬剤を含有する予め形成された微粒子またはコア微粒子が含まれる。予め形成された微粒子またはコア微粒子の外面は、正味表面電荷を帯びている。単層は、予め形成された微粒子またはコア微粒子の外面と結合している。この単層は、予め形成された微粒子またはコア微粒子の正味表面電荷とは異なる電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2005年4月27日に出願した米国仮特許出願第60/675,352号および2005年12月6日に出願した米国仮特許出願第60/750,903号の利益を主張する。
【0002】
(分野および背景)
本発明の開示は一般的に、1種または複数の活性薬剤を含有する微粒子およびこのような微粒子の対象への送達方法を対象とする。より具体的には、本発明の開示は、1種または複数の活性薬剤を制御放出できるような、微粒子の表面修飾を対象とする。本発明の開示はさらに、このような表面修飾微粒子の製造方法および使用方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
微粒子は、活性薬剤の制御された送達および/または放出を含めた多種多様な用途に使用されてきた。活性薬剤の放出特性を制御するか、または変更することによって、所望するならば、受容者の血流における活性薬剤のレベル(例えば、治療レベル)を持続させ、薬物動態および薬物力学を改善し、その結果受容者により便利さをもたらすことができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
本発明の開示は一般的に、表面修飾微粒子の調製方法を対象とする。一例として、この方法は、少なくとも1種の活性薬剤を含む、アモルファスおよび固体の予め形成された微粒子を提供することを含む。この予め形成された微粒子は、正味表面電荷を帯びた外面を備えている。この方法はさらに、予め形成された微粒子の少なくとも外面を、予め形成された微粒子の外面の正味表面電荷とは反対の符号である正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露することを含む。この荷電化合物の単層が形成され、それによってこの単層は予め形成された微粒子の外面と結合する。
【0005】
本発明の開示はまた、溶媒、少なくとも1種の活性薬剤および1種または複数の相分離増強剤を含有する液体連続相系を提供することを含む、表面修飾微粒子の調製方法を対象とする。この方法は、液相−固相分離を、場合によって液相−固相分離を引き起こすために制御された速度で誘導すること、ならびに溶媒および相分離増強剤を液相に保持しながら、活性薬剤、正味表面電荷を帯びた外面を備えた微粒子を含有する固体およびアモルファスの微粒子を含む固相を形成することを含む。微粒子を形成した後、予め形成された微粒子の少なくとも外面を、微粒子外面の正味表面電荷と反対の符号である正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露する。この方法はさらに、形成された微粒子上に少なくとも1種の荷電化合物を含む単層を形成し、それによって形成された単層が微粒子外面と結合することを含む、単層の形成を含む。
【0006】
本発明の開示はまた、少なくとも1種の活性薬剤を含むアモルファスおよび固体の予め形成された微粒子を提供することを含む表面修飾微粒子の調製方法であって、この予め形成された微粒子が正味表面電荷を帯びた外面を備えている方法を対象とする。この例では、この方法はさらに、予め形成された微粒子の少なくとも外面を、予め形成された微粒子の正味表面電荷と反対の符号である正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露することを含む。予め形成された微粒子および少なくとも1種の荷電化合物を含む形成された単層を含み、この形成された単層が予め形成された微粒子外面と結合している、中間体微粒子が形成される。この形成された単層は次に、中間体微粒子および少なくとも1種の異なる荷電化合物を含む次の単層を含む表面修飾微粒子を形成するために、少なくとも1種の異なる荷電化合物に曝露される。この表面修飾微粒子は、中間体微粒子の放出プロファイルとは異なる、少なくとも1種の活性薬剤の放出プロファイルを有する。
【0007】
本発明の開示はまた、少なくとも1種の活性薬剤を80重量%以上含む固体、アモルファスコア微粒子を含む微粒子を対象とする。コア微粒子の外面は、選択された正味表面電荷を帯びている。結合を可能にするために、コア微粒子外面の表面電荷と十分異なる正味表面電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物の単層は、限定はしないが、少なくとも外面との静電的相互作用によってコア微粒子外面と結合する。
【0008】
少なくとも1種の活性薬剤を少なくとも80重量%含み、微粒子の外面が活性薬剤と結合した少なくとも1種の荷電化合物を含む固体微粒子は、適切な緩衝液中で、選択されたpHおよび温度で、in vitro放出させると、活性薬剤の1時間累積放出率50%以下を示すことができる。
【0009】
さらに、予め形成された微粒子の外面がタンパク質性化合物と結合する少なくとも1種の荷電化合物を有する、少なくとも1種のタンパク質性化合物を少なくとも80重量%有する固体の予め形成された微粒子は、in vivo投与に適している。このような投与では、この微粒子は、コア微粒子のCmaxおよびtmaxとは異なるCmaxおよびtmaxを提供する。
【0010】
前述の微粒子、その微粒子の製造方法およびこの微粒子からの活性薬剤の放出の制御方法をさらに以下に詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(詳細な説明)
本明細書で特に定義しなければ、本発明の開示で使用した科学的および技術的用語は、当業者によって通常理解され、使用される意味を有する。特に内容的に必要ない場合は、単数形の用語はその複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものと理解される。特に、本明細書および特許請求の範囲で使用したように、単数形「a」および「an」は、明白にその他の場合を指示しない限り、複数形を含む。したがって、例えば、特定の微粒子について言及する場合、当業者に公知のそれらの同等物を含めた単一のこのような微粒子または複数のこのような微粒子について言及している。また、本明細書および特許請求の範囲で使用したように、「少なくとも1つ」および「1つまたは複数の」という用語は、同じ意味を有し、1つ、2つ、3つ以上を含む。以下の用語は、特に指示がなければ、本発明の開示の場合で使用したとき、以下の意味を有するものと理解される。
【0012】
「活性薬剤」とは、in vitroおよび/またはin vivoにおいて、1種または複数の物理的、化学的および/または生物学的効果を直接的または間接的に惹起することができる、天然に生じる、合成、または半合成物質(例えば、化合物、発酵物、抽出物、細胞構造物)のことである。この活性薬剤は、例えば、寄生生物を駆除するか、あるいは宿主または寄生生物の生理機能を著しく変更して疾患または異常の影響を制限することによって、生体の異常状態および/または病的状態を予防、軽減、治療および/または治癒できることがある。この活性薬剤は、生理学的な生体機能を維持、増強、減少、制限または破壊できることがある。この活性薬剤は、in vitroおよび/またはin vivo試験によって、生理学的症状または状態を診断できることがある。この活性薬剤は、動物または微生物を攻撃、無力化、阻害、死滅、変更、忌避および/または阻害することによって、環境または生体を制御または防御できることがある。この活性薬剤は、他の場合では、生体を処置(例えば、脱臭、保護、装飾、手入れ)できることがある。効果および/またはその適用に応じて、この活性薬剤はさらに、生物活性剤、医薬品(例えば、予防薬、治療薬)、診断薬、栄養補給剤、および/または化粧品と称することができ、限定はしないが、プロドラッグ、親和性分子、合成有機分子、重合体、分子量2kD以下の分子(例えば、1.5kD以下、または1kD以下)、高分子(例えば、分子量2kD以上、好ましくは、5kD以上の分子)、タンパク質性化合物、ペプチド、ビタミン、ステロイド、ステロイド類似体、脂質、核酸、炭水化物、それらの前駆体およびそれらの誘導体を含む。活性薬剤は、イオン性または非イオン性であってよく、中性、正に荷電されているか、負に荷電されているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。活性薬剤は水不溶性であってよいが、より好ましくは水溶性である。活性薬剤は、等電点が7.0以上であってよいが、好ましくは7.0未満である。
【0013】
「微粒子」は、幾何学的平均粒径(時々、直径のことである)が1mm未満、好ましくは200ミクロン未満、より好ましくは100ミクロン未満、最も好ましくは10ミクロン未満である固形(実質的固形または半固形を含むが、ゲル、液体および気体を除く)である粒子のことである。一例では、粒径は、0.01ミクロン以上、好ましくは0.1ミクロン以上、より好ましくは0.5ミクロン以上、最も好ましくは0.5ミクロンから5ミクロンであってよい。幾何学的平均粒径は、動的光散乱法(例えば、光相関分光法、レーザー回折法、低角度レーザー光散乱法(LALLS)、中角度レーザー光散乱法(MALLS))、光遮蔽法(例えば、Coulter分析法)またはその他の方法(例えば、流体力学、光学または電子顕微鏡)によって測定することができる。肺送達用粒子は、飛行時間型測定法またはAnderson Cascade Impactor測定法によって測定された空気力学粒径を有する。微粒子は、球体(小球体と称することもある)であってよく、および/またはカプセル化(時々、ミクロカプセルと称する)されていてよい。ある種の微粒子は、1個または複数の内部空隙および/または空洞を有してよい。その他の微粒子は、このような空隙または空洞を有さなくてよい。微粒子は、多孔性、または、好ましくは非多孔性であってよい。微粒子は、部分的に、または全体的に、本明細書で開示する活性薬剤、担体、重合体、安定化剤、および/または複合体形成剤などの1種または複数の非限定的物質から形成することができる。
【0014】
「ペプチド」とは、少なくとも部分的に、2種以上の同一または異なるアミノ酸および/またはイミノ酸から形成された天然、合成、または半合成化合物のことである。ペプチドの非限定的例には、オリゴペプチド(例えば、ジペプチドおよびトリペプチドなどを含む、アミノ/イミノ酸単量体単位50個未満のもの)、ポリペプチド、本明細書で定義したようなタンパク質性化合物、ならびにそれらの前駆体および誘導体(例えば、グリコシル化、高グリコシル化、PEG化、FITC標識、それらの塩)が含まれる。ペプチドは、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。ペプチドは、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
「タンパク質性化合物」とは、タンパク質の天然、合成、半合成または組換え化合物、あるいはタンパク質に構造的および/または機能的に結合した化合物、例えば、ペプチド結合によって共有結合したαアミノ酸を含有するか、本質的にそれらから構成されるもののことである。非限定的なタンパク質性化合物には、球形タンパク質(例えば、アルブミン、グロブリン、ヒストン)、繊維性タンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチン、ケラチン)、化合物タンパク質(1種または複数の非ペプチド成分を含有するもの、例えば、糖タンパク質、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、金属タンパク質)、治療用タンパク質、融合タンパク質、受容体、抗原(例えば、合成または組換え抗原)、ウイルス表面タンパク質、ホルモンおよびホルモン類似体、抗体(例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)、酵素、Fab断片、環状ペプチド、線状ペプチドなどが含まれる。非限定的な治療用タンパク質には、骨形態形成タンパク質、薬剤耐性タンパク質、トキソイド、エリスロポエチン、血液凝固カスケードのタンパク質(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子など)、サブチリシン、卵白アルブミン、アルファ−1−アンチトリプシン(AAT)、DNアーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン、インシュリンおよびインシュリン様成長因子または類似体、インターフェロン、グラチラマー、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、デスモプレシン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(例えば、リュープロリド、ゴセレリン、ブセレリン、ゴナドレリン、ヒストレリン、ナファレリン、デスロレリン、フェルチレリン、トリプトレリン)、LHRH遮断薬、バソプレッシン、シクロスポリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモンペプチド、インシュリン、グルカゴン様ペプチド、およびそれらの類似体が含まれる。タンパク質性化合物は、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
「核酸」とは、少なくとも部分的に、2種以上の同一または異なるヌクレオチドから形成された天然、合成、半合成または組換え化合物のことであり、1本鎖または2本鎖であってよい。核酸の非限定的な例には、オリゴヌクレオチド(センス、アンチセンス、またはミスセンスなどの塩基対20対以下のもの)、アプタマー、ポリヌクレオチド(例えば、センス、アンチセンスまたはミスセンス)、DNA(例えば、センス、アンチセンス、またはミスセンス)、RNA(例えば、センス、アンチセンス、またはミスセンス)、siRNA、ヌクレオチド酸構築物、それらの1本鎖または2本鎖部分、ならびにそれらの前駆体および誘導体(例えば、グリコシル化、高グリコシル化、PEG化、FITC標識、ヌクレオシド、それらの塩)が含まれる。核酸は、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
「炭水化物」とは、少なくとも部分的に単量体糖単位から形成された天然、合成、または半合成化合物のことである。非限定的な炭水化物には、多糖、糖、澱粉およびセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ヘタスターチ、シクロデキストリン、アルギン酸塩、キトサン、コンドロイチン、ヘパリン、ならびにそれらの前駆体および誘導体(例えば、グリコシル化、高グリコシル化、PEG化、FITC標識、それらの塩)が含まれる。炭水化物は、イオン性、または非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単一で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
「脂質」とは、一般的に両親媒性である天然、合成、または半合成化合物のことである。この脂質は通常、親水性成分および疎水性部分を含む。非限定的例には、脂肪酸、中性脂肪、ホスファチド、油、糖脂質、界面活性剤、脂肪族アルコール、蝋、テルペンおよびステロイドが含まれる。脂質は、イオン性または非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
「複合体形成剤」とは、活性薬剤と1種または複数の非共有結合を形成することができる物質のことである。このような結合によって、複合体形成剤は、微粒子への1種または複数の活性薬剤の添加を促進し、微粒子内で活性薬剤を保持し、および/または、その他では、微粒子からの活性薬剤の放出を変更することを可能にする。複合体形成剤は、イオン性または非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
特に薬剤(例えば、化合物)、プロセス、条件と組み合わせて使用される「安定化」とは、少なくとも部分的に、微粒子(またはこのような微粒子を含有する組成物または製剤またはキット)を形成し、それらの形成を促進し、および/またはそれらの安定性(例えば、破壊、分解、減成などに対する耐性の増強のような比較的平衡化した条件の維持)を増強するこのような薬剤、プロセスまたは条件の能力のことである。非限定的な安定化プロセスまたは条件には、吸熱/放熱(例えば、加熱、冷却)、電磁波照射(例えば、ガンマ線、X線、UV、可視光、化学線、赤外線、マイクロ波、ラジオ波)、高エネルギー粒子照射(例えば、電子ビーム、核エネルギー)、および超音波照射が含まれる。非限定的安定化剤には、脂質、タンパク質、重合体、炭水化物、界面活性剤、塩(例えば、単価もしくは多価、金属、有機、または有機金属であるカチオン、および単価もしくは多価、有機、無機、または有機金属であるアニオンとの有機塩、無機塩)ならびにある種の担体、活性薬剤、架橋結合剤、助剤および本明細書で開示した複合体形成剤が含まれる。安定化剤は、イオン性または非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
「高分子」とは、3次元(例えば、3要素および/または4要素)構造をもたらすことができる物質のことであり、担体および本発明の開示のある種の活性薬剤を含む。微粒子を形成するために使用される非限定的な高分子には、特に、重合体、共重合体、タンパク質(例えば、酵素、組換えタンパク質、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン)、ペプチド、脂質、炭水化物、多糖類、核酸、ベクター(例えば、ウイルス、ウイルス粒子)、それらの複合体およびコンジュゲート(例えば、炭水化物−タンパク質コンジュゲートのように2種の高分子の間、ハプテン−タンパク質コンジュゲートのように活性剤と高分子との間の共有結合および/または非共有結合による、活性薬剤は、3要素および/または4要素構造を有することができてもよいし、できなくてもよい)および好ましくは分子量が1500以上であるそれらの2種以上の混合物が含まれる。高分子は、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
「球体」とは、少なくとも「実質的に球体」である幾何学的形状を意味する。「実質的に球体」とは、最長距離(すなわち、外周の2点の間の距離であって、その形の幾何学的中心を通過する距離)の、幾何学的中心を通過するいかなる横断面上の最短距離に対する比が、約1.5以下、好ましくは約1.33以下、より好ましくは1.25以下であることを意味する。球体は対称である必要はない。さらに、微粒子は表面テクスチャリング(例えば、微粒子の全体の大きさと比較したとき、規模が小さい、連続線または不連続線、島、格子、ギザギザ、チャンネル開口、隆起)を有していてよく、それでも球体であってよい。球体の微粒子では、間の表面接触は最小限であり、微粒子の所望しない凝集を最小限に抑える。それに比べて、結晶または薄片の微粒子は通常、比較的大きくて平坦な表面で、イオン性および/または非イオン性の相互反応によって、著しい凝集を示す。
【0023】
「単分散性粒径分布」とは、10パーセンタイルの体積粒径(すなわち、微粒子の最小10%の平均粒径)に対する90パーセンタイルの体積粒径(すなわち、微粒子の最大10%の平均粒径)の比が、約5以下、好ましくは約3以下、より好ましくは約2以下、最も好ましくは約1.5から1である、微粒子の好ましい粒径分布のことである。したがって、「多分散性粒径分布」とは、前記の粒径比が5を上回り、好ましくは8を上回り、より好ましくは10を上回ることである。多分散性粒径分布の微粒子では、大きい微粒子の間の空隙に小さな微粒子が入り込み、したがって、おそらく間の大きな接触表面および著しい凝集を示すだろう。2.5以下、好ましくは1.8以下の幾何学的標準偏差(GSD)も、単分散性粒径分布を示すために使用することができる。GSDの計算は、当業者には公知で、理解されている。
【0024】
「アモルファス」とは、「実質的にアモルファス」である物質および構造物、例えば、複数の非結晶性ドメインを有する(または、結晶性が全く欠如している)微粒子、または、そうでなければ非結晶性の微粒子のことである。本発明の開示の実質的にアモルファスである微粒子は一般的に、結晶格子が微粒子の体積および/または重量の50%未満を構成するか、または存在していない無秩序な固体の粒子であり、当業者が理解する通りの半結晶性微粒子および非結晶性微粒子を含む。
【0025】
「固体」とは、少なくとも実質的に固体および/または半固体を含むが、ゲル、液体および気体は除く。
【0026】
「予め形成された微粒子」とは、当業者に公知の方法など、1種または複数の非限定的な方法を使用して製造された、本明細書で記載したような表面修飾を有さない、外面に正、負または中性の正味表面電荷を有する、または有することができる微粒子のことである。予め形成された微粒子はまた、本明細書では「コア微粒子」または「コア」と呼ばれる。予め形成された微粒子またはコア微粒子は通常、1種または複数の活性薬剤および、場合によって、独立して、予め形成された微粒子、またはコア微粒子の一部に区分することができるか、または好ましくは予め形成された微粒子全体に実質的に均一に分布することができる1種または複数の担体を含む。好ましくはゼロではない正味表面電荷は、主として、または少なくとも、実質的に、活性薬剤および/または、場合によって担体によって影響を受け得る。
【0027】
「担体」とは、3次元構造(3要素および/または4要素構造を含む)を提供するために主要な機能を有する化合物、通常高分子のことである。担体は、前述のような微粒子の形成において、活性薬剤(例えば、それらのコンジュゲートまたは複合体)と結合しないか、または結合してよい。担体はさらに、その他の機能をもたらすことができ、例えば、活性薬剤であることができ、微粒子からの活性薬剤の放出プロファイルを変更することができ、および/または微粒子に(例えば、正味表面電荷に少なくとも部分的に関与する)1種または複数の特定の特性を付与することができる。一例では、この担体は、分子量1500ダルトン以上のタンパク質(例えば、アルブミン、好ましくはヒト血清アルブミン)である。
【0028】
「重合体」または「重合体の」とは、主鎖または環構造に2種以上の反復単量体単位を有する天然、合成、または半合成分子のことである。重合体には、広義には、2量体、3量体、4量体、オリゴマー、高分子量重合体、付加物、ホモポリマー、ランダムコポリマー、擬コポリマー、統計コポリマー、交互コポリマー、周期コポリマー、2元重合体、3元重合体、4元重合体、その他の形態のコポリマー、それらの置換誘導体、およびそれらの混合物が含まれ、狭義には、10個以上の反復単量体単位を有する分子のことである。重合体は、線状、分枝状、ブロック、グラフト、単分散、多分散、規則性、不規則性、タクチック、イソタクチック、シンジオタクチック、立体規則性、アタクチック、ステレオブロック、1本鎖、2本鎖、星形、櫛形、樹枝状、および/またはイオノマーであってよく、イオン性、非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性イオンであってよく、単独で、もしくはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
「懸濁」または「分散」とは、2種以上の相(例えば、固体、液体、気体)の好ましくは超微粒子状の混合物のことで、例えば、液体中における固体、液体中における液体、液体中における気体、固体中における固体、気体中における固体、気体中における液体などである。懸濁または分散は、時間(例えば、分、時間、日、週、月、年)を延長しても安定に維持されることが好ましい。
【0030】
「再懸濁」とは、微粒子の特性のほとんどまたは全てを維持しながら、流動性を有する媒体(例えば、液体)を添加することによって、流動性を有さない状態(例えば、固体)から流動性を有する状態(例えば、液体)に微粒子を変化させることである。液体は、例えば、水性、水混和性、または有機性であってよい。
【0031】
「荷電した」および「電気的に荷電した」とは交換可能で、同一または反対の符号の電気的な荷電の1個、2個、3個以上の形式単位を提供する能力、および/またはこのような荷電の存在のことである(すなわち、「荷電した」とは、荷電可能な、および/または荷電していることを意味する)。電気的な荷電は、好ましくはある種の条件に置かれたとき(例えば、溶液中または懸濁液中において)、化合物(例えば、高分子電解質、タンパク質)または関心のある構造物(例えば、予め形成された微粒子、単層)中において、1種または複数の同一または異なる有機および/または有機金属部分(例えば、イオン基、イオン化できる基、それらの前駆体)の形態で提供され、および/または存在することができる。
【0032】
「荷電化合物」および「電気的に荷電した化合物」とは交換可能で、前述のような荷電した単一の化合物、あるいはそれぞれが独立して、同一の符号の正味電荷を有する、および/または有することができる、結合していない、および/または結合した形態の2種以上の異なる化合物の組合せ(例えば、それらのコンジュゲート、集合体、および/または複合体)のことである。
【0033】
「単層」とは、1種または複数の化合物(例えば、前述のような荷電化合物)の組成物から3次元基質上に形成された単一の層のことである。単層は、連続した非多孔性単層、連続した多孔性単層(例えば、格子状の網)、複数の別個の要素の非連続的な単層(例えば、島、縞、塊など)、またはそれらの組合せであってよい。一般的に、単層は、分解可能または崩壊可能で、例えば、生分解性、酵素的または加水分解的に崩壊可能で、単層が沈着した活性薬剤の(微粒子からの)非拡散的放出を可能にする。この単層の厚さは、100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下、最も好ましくは10nm以下である。一例では、この単層は、荷電化合物の自己集合によって形成される。
【0034】
「飽和単層」とは、単層が形成されるのと同様の条件群に置かれたとき、過剰量の単層形成組成物をさらに累積的に組み入れることができない、前記で定義した通りの単層のことである。飽和単層は、表面修飾微粒子で使用した好ましい単層である。
【0035】
「正味電荷」および「正味電気的電荷」は交換可能に使用され、ある種の条件下で(好ましくは、あるpHの溶液中で)、流動性を有する媒体中などで、荷電化合物が有することができるか、または有する電気的電荷の形式単位全体の総和のことである。正味電荷は、正、負またはゼロ(例えば、両性イオン化合物)であってよく、条件(例えば、溶媒、pH)によって左右される。
【0036】
「正味表面電荷」および「正味表面電気的電荷」は交換可能に使用され、3次元構造(例えば、微粒子、単層)の最も外部の表面の累積的電気的電荷全体のことである。正味表面電荷は、正、負またはゼロであってよく、条件(例えば、溶媒、pH)によって左右される。
【0037】
「周囲温度」とは、室温に近い温度のことで、通常約20℃から約40℃の範囲である。
【0038】
「対象」または「患者」とは、ほ乳類などの脊椎動物を含む動物のことで、好ましくはヒトである。
【0039】
「対象の部位」とは、対象の局所的内部もしくは外部領域または部分(例えば、器官)、あるいは対象全体からの領域もしくは部分の収集物(例えば、リンパ球)のことである。このような部位の非限定的な例は、肺部位(例えば、肺、肺胞)、胃腸部位(例えば、食道、胃、小腸大腸および直腸によって定義される部位)、心血管部位(例えば、心筋組織)、腎臓部位(例えば、腎臓、腹部大動脈、および腎臓に、および腎臓から直接導かれる脈管構造によって定義される部位)、脈管構造(すなわち、血管、例えば、動脈、静脈、毛細血管など)、循環器系、健全または罹患組織、良性または悪性(例えば、腫瘍または癌)組織、リンパ球、受容体、器官など、ならびに画像診断法によって映された部位、活性薬剤を投与された、および/または処置された部位、活性薬剤の送達の標的となる部位、および高温部位が含まれる。
【0040】
「治療」とは、対象における不調、苦痛、疾患または傷害の治療(予防、診断、軽減、抑制、緩解または治癒を含む)に有用な任意の医薬品、薬物、予防薬、造影剤または色素のことである。治療的に有用なペプチドおよび核酸は、「医薬品」または「薬物」という用語の意味の中に含めることができる。
【0041】
「親和性分子」とは、in vivoにおける部位、および/またはin vitroにおける組織/受容体の結合および/または標的化を促進できる任意の材料または物質のことである。受容体および標的リガンドを含む親和性分子は、天然、合成、または半合成であってよく、またはイオン性、または非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性イオンであってよく、単一で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。非限定的な親和性分子には、タンパク質性化合物(例えば、抗体、抗体断片、ホルモン、ホルモン類似体、糖タンパク質およびレクチン)、ペプチド、ポリペプチド、アミノ酸、糖、糖類(例えば、単糖類、多糖類、炭水化物)、ビタミン、ステロイド、ステロイド類似体、補因子、活性薬剤、核酸、ウイルス、細菌、毒素、抗原、その他のリガンド、それらの前駆体およびそれらの誘導体が含まれる。
【0042】
「前駆体」とは、好ましくは、化学的および/または生化学的反応または経路によって、例えば、前駆体がある材料に固定されることによって、所望する材料または物質に変換されることができる材料または物質のことである。非限定的な前駆体部分には、マレイミド基、ジスルフィド基(例えば、オルト−ピリジルジスルフィド)、ビニルスルホン基、アジド基、およびα−ヨードアセチル基が含まれる。
【0043】
「誘導体」とは、好ましくは、当業者にとって通常と考えられる化学的および/または生化学的反応または経路によって、親材料または物質から形成される任意の材料または物質のことである。誘導体の非限定的な例には、グリコシル化、高グリコシル化、PEG化、FITC標識、保護基による保護(例えば、アルコールもしくはチオールにはベンジル、アミンにはt−ブトキシカルボニル)、ならびに、それらの塩、エステル、アミド、コンジュゲート、複合体、製造関連化合物および代謝物が含まれる。塩は、単価または多価、金属、有機、または有機金属であるカチオン、および単価または多価、有機、無機、または有機金属であるアニオンによって有機または無機であってよい。好ましい塩は、薬学的に許容され、限定はしないが、塩基性残基(例えば、アミン)の無機または有機酸塩、酸性残基(例えば、カルボン酸)のアルカリまたは有機塩など、例えば、非毒性無機酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸)および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸)から形成された親化合物の従来の非毒性塩または四級アンモニウム塩が含まれる。
【0044】
「類似体」とは、基本化合物または種類に特有の薬学的および/または薬理学的活性を保持した、基本化合物またはそれらの種類の化学的に変更された形態を有する化合物のことである。
【0045】
「プロドラッグ」とは、対象に投与されたとき、in vivoにおいて活性薬剤を放出する任意の共有結合担体のことである。プロドラッグは、活性薬剤の数多くの所望する性質(例えば、溶解性、生物学的利用性、製造性)を高めることが知られている。プロドラッグは、通常の操作で、またはin vivoにおいて修飾が除去され(例えば、修飾基が切断され)、元の活性薬剤が生じるように、活性薬剤に存在する官能基(例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、および/またはスルフヒドリル基)を修飾することによって、調製することができる。in vivoにおける変換は、例えば、いくつかの代謝プロセス、例えば、カルボン酸、リン酸または硫酸エステルの化学的または酵素的加水分解、あるいは感受性のある官能基の還元または酸化の結果であることができる。
【0046】
「代謝物」とは、化合物の投与形態に対する体の作用によって、対象の体内で得られる化合物の形態のことである。例えば、脱メチル化代謝物は、メチル基を有するメチル化化合物を投与した後、体内で得ることができる。代謝物は、それ自体生物学的活性、好ましくは治療活性を有することができる。
【0047】
「診断薬」とは、正常か、または異常な生物学的症状または状態を知覚的に確認する(例えば、画像診断する)ため、あるいは、病原体または病理状態の有無を検出するための方法と関連して有用な任意の材料または物質のことである。非限定的な診断薬には、放射線撮影(例えば、X線撮影)、超音波画像処理、核磁気共鳴画像処理、コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影画像処理などと関連して使用するための造影剤および色素が含まれる。診断薬にはさらに、画像処理法を使用しようとしなかろうと、in vivoおよび/またはin vitroにおける診断を容易にするために有用な任意のその他の薬剤が含まれる。
【0048】
「架橋結合する」、「架橋結合した」および「架橋結合」は一般的に、1種または複数の共有的および/または非共有的(例えば、イオン的)結合による、本明細書で開示したもののいずれかを含む2種以上の材料および/または物質の結合のことである。架橋結合は、天然に(例えば、シスチン残基のジスルフィド結合)または合成もしくは半合成経路によって、例えば、場合によって1種または複数の架橋結合剤(すなわち、架橋結合生成物Y−X−Zを形成するために、それ自体、2種以上の材料/物質YおよびZと反応することができる分子Xであり、Y−XおよびX−Zの結合は独立して共有結合性および/または非共有結合性である)、開始剤(すなわち、それ自体、架橋結合反応のために遊離ラジカルなどの反応種を提供することができる分子、例えば、有機過酸化物などの熱によって分解可能な開始剤、アゾ開始剤、および炭素−炭素開始剤、様々な波長の光開始剤などの化学線によって分解可能な開始剤)、活性化剤(すなわち、第1の材料/物質Yと反応して活性化中間体[A−Y]を形成することができ、次に第2の材料/物質Zと反応して架橋結合生成物Y−Zを形成することができる分子Aで、Aは過程中に化学的に変化するか、または消費される)、触媒(すなわち、過程中に化学的に変化しないで、架橋結合の反応速度を変更することができる分子)、助剤(すなわち、1種または複数の開始剤、活性化剤および/または触媒と一緒に存在すると架橋結合反応の反応速度を変更でき、および/または2種以上の材料/物質の架橋結合生成物に組み込まれるが、通常は材料/物質に非反応性である分子)、および/またはエネルギー源(例えば、加熱、冷却、電磁石、電子ビーム、および核などの高エネルギー照射、超音波などの聴放線)の存在下で実施することができる。
【0049】
「共有結合」とは、2個の原子の結合軌道において電子の共有が関与する2種以上の個々の分子の間の分子間相互作用(例えば、結合)のことである。
【0050】
「非共有結合」とは、共有結合が関与しない、2種以上の個々の分子の間の分子間相互作用のことである。分子間相互作用は、例えば、極性、電気的電荷、および/または個々の分子のその他の特性に左右され、限定はしないが、静電的(例えば、イオン的)相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス力およびそれらの2種以上の組合せを含む。
【0051】
「静電的相互作用」とは、2種以上の正または負に荷電した部分/群の間の分子内相互作用のことで、2つが反対に荷電しているとき(すなわち、一方が正で、もう一方が負である)、引きつけあうことができ、2つの荷電が同じ符号であるとき(すなわち、2つとも正であるか、2つとも負である)、反発することができ、またはそれらの組合せであってよい。
【0052】
「双極子相互作用」とは、2種以上の極性分子、例えば、電荷を持たないか、陽性に偏った末端δ+(例えば、ホスファチジルコリンのコリン頭部のような電気陽性頭部)を有する第1の分子と電荷を持たないか、陰性に偏った末端δ−(例えば、多糖のヘテロ原子O、NまたはSのような電気陰性原子)である第2の分子との間の分子間の引きつけあいのことである。双極子相互作用とはまた、水素原子が離れた分子の電気陰性原子との間の橋として役立ち、水素原子が共有結合によって第1の分子に結合し、静電力によって第2の分子に結合する分子間水素結合のことである。
【0053】
「水素結合」とは、第1の電気陰性原子(例えば、O、N、S)に共有的に結合した水素原子と第2の電気陰性原子との間の引力または橋のことであり、第1および第2の電気陰性原子は、2種の異なる分子中(分子間水素結合)または単一の分子中(分子内水素結合)にあってよい。
【0054】
「ファンデルワールス力」とは、量子力学によって説明される非極性分子間の引力のことである。ファンデルワールス力は一般的に、電子分布の変化を受けている近隣の分子によって導入された瞬間的な双極子モーメントに関連している。
【0055】
「親水性相互作用」とは、水分子に対する吸引力のことで、材料/化合物またはそれらの一部は、水と結合し、水を吸収し、および/または水に溶解することができる。これによって、膨潤および/または可逆的ヒドロゲルの形成が引き起こされ得る。
【0056】
「疎水性相互作用」とは、水分子に対する反発力のことで、材料/化合物またはそれらの一部は、水と結合せず、水を吸収せず、および/または水に溶解しない。
【0057】
「生体適合性」とは、一般的に生物学的機能に有害ではなく、許容できない毒性(例えば、アレルギー反応または疾患状態)を生じない材料/物質のことである。
【0058】
「に結合して」および「に結合した」とは、一般的に、様々な材料(通常微粒子の一部であるもの)、1種または複数のこのような材料および微粒子の1種または複数の構造物(またはそれらの一部)および微粒子の様々な構造物(またはそれらの一部)の間の1種または複数の相互作用、および/または組み込みのことである。微粒子の材料には、限定はしないが、本明細書で開示した単価および多価イオンなどのイオン、ならびに活性薬剤、安定化剤、架橋結合剤、荷電した、もしくは荷電していない化合物などの化合物、本明細書で開示した様々な重合体、およびそれらの2種以上の組合せが含まれる。微粒子の構造およびそれらの一部には、限定はしないが、コア、コア微粒子、予め形成された微粒子、単層、中間体微粒子、表面修飾微粒子、このような構造の一部(例えば、外面、内面)、このような構造およびそれらの一部の間のドメイン、およびそれらの2種以上の組合せが含まれる。可逆的または不可逆的、移動性または非移動性の様々な結合が単独で、またはそれらの2種以上の組合せで存在することができる。非限定的な結合には、限定はしないが、共有結合および/または非共有結合(例えば、共有結合、イオン性相互作用、静電的相互作用、双極性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、架橋結合および/またはその他の相互作用)、層/膜内へのカプセル化、中心または小胞または2種の層/膜の間の区画化、微粒子全体またはその一部における均一な統合(例えば、中心または層または小胞またはそれらの内面および/または外面への含有、接着、および/または付加、異なる材料間の分散、結合および/または複合)が含まれる。
【0059】
「組織」とは一般的に、特殊化され、1種または複数の特定の機能を遂行できる個々の細胞あるいは複数または集合した細胞のことである。非限定的な組織の例には、膜組織、(例えば、内皮、上皮)、血液、薄層、結合組織(例えば、腸管組織)、器官(例えば、心筋組織、心筋細胞(myocardial cell)、心筋細胞(cardiomyocyte)、異常細胞(例えば、腫瘍)が含まれる。
【0060】
「受容体」とは、細胞内またはその表面の分子構造のことで、一般的に特異的物質、例えば、リガンドの選択的結合を特徴とする。非限定的な受容体には、ペプチドホルモン、神経伝達物質、抗原、補体断片およびイムノグロブリンの細胞表面受容体、ならびにステロイドホルモンの細胞質受容体が含まれる。
【0061】
「制御放出」とは、天然型の活性薬剤の放出プロファイルと比較した、活性薬剤の予め測定されたin vivoおよび/またはin vitro放出(例えば、溶解)プロファイルのことである。活性薬剤は、放出反応速度の1種または複数の態様(例えば、初期バースト、特定の期間または相における量および/または速度、特定の期間における累積量、総放出時間の長さ、パターンおよび/またはプロファイルなど)が、増加、減少、短縮、延長および/または、他の方法で所望する通りに変更されるように、微粒子、または本明細書で開示したように、微粒子を含有する組成物または製剤と結合することが好ましい。制御放出の非限定的な例には、即時/瞬時放出(すなわち、初期バーストまたは迅速放出)、延長放出、持続放出、長期放出、遅延放出、変更された放出、および/または標的放出が含まれ、個々に、それらの2種以上を組み合わせて、またはそれらの1種または複数を含めずに(例えば、初期バーストのない延長または持続放出)行われる。
【0062】
「延長放出」とは、微粒子または、本明細書で開示したような、微粒子を含有する組成物または製剤と好ましくは結合した活性薬剤を、天然型の活性薬剤の自由な水拡散期間よりも長期間にわたって放出することを意味する。延長放出期間は、時間(例えば、少なくとも約1、2、5または10時間)、日(例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20、30、40、45、60または90日)、週(少なくとも約1、2、3、4、5、6、10、15、20、30、40または50週)、月(少なくとも約1、2、3、4、6、9または12ヵ月)、約1年または数年、あるいは任意の2種の期間の間の範囲であってよい。延長放出のパターンは、連続的、断続的、孤発的、またはそれらの組合せであってよい。
【0063】
「持続放出」とは、活性薬剤の機能的に有意なレベル(すなわち、活性薬剤の所望する機能をもたらすことができるレベル)が延長放出期間の任意の時点において、好ましくは連続した、および/または均一な放出パターンで存在するように、活性薬剤を延長放出することである。持続放出プロファイルの非限定的な例には、放出時間(x軸)対累積放出(y軸)のプロットを示したとき、1時間以上の期間にわたって、直線、段階的、Z字型、曲線および/または波状の少なくとも上向きの部分を示すものが含まれる。
【0064】
操作例以外に、特記されていなければ、例えば、材料の量、時間、温度、反応条件、量の比、分子量の値(数平均分子量Mnであっても、重量平均分子量Mwであっても)および本明細書で開示されたその他のものなどの数的範囲、量、値およびパーセントは全て、あらゆる場合において、「約」という用語によって修飾されるものと理解されたい。したがって、逆の指示がなければ、本発明の開示および添付の特許請求の範囲で記載した数的変数は、所望する通りに変更可能な概算値である。少なくとも、各数的変数は、報告した有意な数字の数を考慮して、通常の四捨五入法を適用することによって、少なくとも解釈するべきである。
【0065】
記載した数的範囲および変数に関わらず、開示の広範な範囲は概算値であり、具体的な例で記載した数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、任意の数値は、個々の試験測定で見いだされた、標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を本来含有している。さらに、変化する範囲の数的範囲を本明細書で記載するとき、引用した値を含むこれらの値の任意の組合せを使用できるものと考えられる。
【0066】
「から形成された」および「の形成された」は、オープンランゲージを意味する。このように、引用した成分のリスト「から形成された」または「の形成された」組成物は、少なくともこれらの引用した成分を含む組成物で、さらに組成物の形成中にその他の引用されていない成分を含むことができる。
【0067】
「など」および「例えば」の次のものを含む本明細書で提供された例は、特にそれらに限定するのではなく、本発明の開示およびそれらの実施形態の様々な態様を例示するのみであると考えられる。当業者にとって公知および/または使用可能なそれらの任意の適切な同等物、代替物および変更(材料、物質、構造物、組成物、製剤、手段、方法、条件など)は、本明細書で開示したものの代わりに、または組み合わせて使用または実施することができ、本発明の開示の範囲内に含まれるものと考えられる。
【0068】
一例において、本発明の開示の表面修飾微粒子はそれぞれ、少なくともその外面において、少なくとも1種の荷電化合物を含有する少なくとも1種の単層と結合した、アモルファス(例えば、結晶構造物を含まないもの)および固形の予め形成された微粒子を含有することが好ましい。予め形成された微粒子は、少なくとも1種の活性薬剤および/または分子量4500ダルトン以上の少なくとも1種の高分子を含有する。この高分子は、活性薬剤であってよく、または活性薬剤と異なっていてよい。この高分子は、担体、安定化剤、または複合体形成剤(例えば、タンパク質性化合物、高分子電解質)であってよい。活性薬剤および/または高分子は、予め形成された微粒子の40重量%から100重量%以下、通常少なくとも80重量%、例えば、90重量%以上または95重量%以上を構成してよい。好ましくは、活性薬剤および/または高分子は、コア微粒子全体に均一に分布する。予め形成された微粒子の外面は、特に、この外面が活性薬剤および/または高分子から形成されているとき、少なくとも部分的に、より一般的には大部分が、活性薬剤および/または高分子が原因となり得る正味表面電荷を帯びている。予め形成された微粒子は、共有的架橋結合、ヒドロゲル、脂質、および/またはカプセル化を含まなくてよい。あるいは、予め形成された微粒子は、1種または複数の荷電化合物、共有的架橋結合および/またはカプセル化を含有してよい。予め形成された微粒子中の1種または複数の荷電化合物は、予め形成された微粒子全体に均一に分布するか、それらの特定の部位、例えば層に区画化されてよい。予め形成された微粒子の粒径は、10μm以下であることが好ましく、単分散または多分散サイズ分布であってよい。
【0069】
予め形成された微粒子の予備形成方法は、特に制限はなく、全体を本明細書に参照として援用した米国特許第6458387号および米国特許公開番号第2005/0142206号に開示されたものを含む。一例において、単一の流動性を有する連続相系(例えば、液体、気体またはプラズマ、好ましくは液体または懸濁液)は、1種または複数の活性薬剤、媒体、および1種または複数の相分離増強剤(PSEA)を含有するように製剤化されている。媒体は、好ましくは液体溶媒(例えば、親水性または疎水性有機溶媒、水、緩衝液、水混和性有機溶媒、およびそれらの2種以上の組合せ)、より好ましくは水性または水混和性溶媒である。適切な有機溶媒には、限定はしないが、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、ペンタンなど、およびそれらの2種以上の組合せ(例えば、塩化メチレンおよびアセトンの1:1混合物)が含まれる。活性薬剤およびPSEAは、独立して、媒体内に溶解、懸濁、または、他の方法で均一に分布することができる。流動性を有する系をある種の条件(例えば、媒体中における活性薬剤の相転移温度未満の温度)に置くと、活性薬剤は液体−固体相分離を受け、不連続な相、好ましくは固体の相(例えば、媒体中に懸濁した複数のコア微粒子)を形成し、一方PSEAは連続層に保持される(例えば、媒体中に溶解する)。
【0070】
媒体は、有機溶媒、あるいは、独立して水混和性または水非混和性であってよい2種以上の相互混和性有機溶媒の混合物を含有する有機物であることができる。この溶液はまた、水性媒体または水混和性有機溶媒または水混和性有機溶媒の混合物またはそれらの組合せを含有する水をベースにした溶液であることができる。水性媒体は、水、緩衝液(例えば、通常の生理食塩水、緩衝溶液、緩衝生理食塩水)などであることができる。適切な水混和性有機溶媒は、単量体または重合体であってよく、限定はしないが、N−メチル−2−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)、2−ピロリジノン(2−ピロリドン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセタミド、酢酸、乳酸、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、3−ペンタノール、ベンジルアルコール、グリセロール、テトラヒドロフラン(THF)、ポリエチレングリコール(PEG、例えば、PEG−4、PEG−8、PEG−9、PEG−12、PEG−14、PEG−16、PEG−120、PEG−75、PEG−150)、PEGエステル(例えば、ジラウリン酸PEG−4、ジラウリン酸PEG−20、イソステアリン酸PEG−6、パルミトステアリン酸PEG−8、パルミトステアリン酸PEG−150)、PEGソルビタン(例えば、イソステアリン酸PEG−20ソルビタン)、PEGエーテル(例えば、モノアルキルおよびジアルキルエーテル、例えば、PEG−3ジメチルエーテル、PEG−4ジメチルエーテル、およびグリコフロール)、ポリプロピレングリコール(PPG)、PPGエステル(例えば、プロピレングリコールアルギン酸エステル(PGA)、ジカプリル酸PPG、ジカプリン酸PPG、ラウリル酸PPG)、アルコキシル化直鎖アルキルジオール(例えば、PPG−10ブタンジオール)、アルコキシル化アルキルグルコースエーテル(例えば、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル)、PPGアルキルエーテル(例えば、PPG−15ステアリルエーテル)、アルカン(例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン)およびそれらの2種以上の組合せが含まれる。
【0071】
好ましい例では、第1の溶媒に溶かしたPSEAの溶液が提供され、PSEAは第1の溶媒に溶解するか、または混和する。活性薬剤は、第1の溶液と共に、第2の溶媒に直接混合するか、または第2の溶媒に溶かした第2の溶液とする。第1および第2の溶媒は、同一であるか、または少なくとも互いに混和性であってよい。好ましくは、活性薬剤は、特に活性薬剤がある種のタンパク質性化合物などの熱に不安定な分子の場合、周囲温度と等しい温度で、または低い温度で添加される。しかし、系における活性薬剤の溶解性を高めるために、活性薬剤の活性が悪影響を受けない限り、系を加熱してよい。
【0072】
混合物が相分離条件にもたらされるとき、PSEAは、液体連続層中に維持されながら、溶液からの活性薬剤の液体−固体相分離を増強および/または誘導し(例えば活性薬剤の溶解性を減少することにより)、好ましくは小球体であってよいコア微粒子(固体不連続相)を形成する。適切なPSEA化合物には、限定はしないが、天然および合成重合体、線状重合体、分枝状重合体、環化重合体、コポリマー(ランダム、ブロック、グラフト、例えば、ポロキサマー、特に、PLURONIC(登録商標)F127およびF68)、3元重合体、両親媒性重合体、炭水化物をベースにした重合体、ポリ脂肪族アルコール、ポリ(ビニル)重合体、ポリアクリル酸、ポリ有機酸、ポリアミノ酸、ポリエーテル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアルデヒド、ポリビニルピロリドン(PVP)および界面活性剤が含まれる。適切な、または例示的PSEAには、限定はしないが、医薬品添加物として許容される重合体、例えば、PEG(例えば、PEG200、PEG300、PEG3350、PEG8000、PEG10000、PEG20000など)、ポロキサマー、PVP、ヒドロキシエチル澱粉、両親媒性重合体、ならびに非重合体(例えば、プロピレングリコールおよびエタノールの混合物)が含まれる。
【0073】
液相−固相分離を増強、誘導、制御、抑制、遅延、または、その他の方法で影響を及ぼすことができる条件には、限定はしないが、温度、圧力、pH、溶液のイオン強度および/または浸透圧、活性薬剤および/またはPSEAの濃度など、ならびに、このような変化の速度、ならびにそれらの2種以上の組合せが含まれる。このような条件は、相分離の前、および前まで、または相分離中であっても適用できることが望ましい。一例では、開示全体を本明細書に参照として援用した米国特許出願公開第2005/0142206号に記載されている通りに、系は、活性薬剤の相転移温度未満の温度で、単独で、または活性薬剤および/またはPSEAの濃度調節と組み合わせて曝露される。温度降下速度は、0.2℃/分から50℃/分、好ましくは0.2℃/分から30℃/分の範囲内である限り、任意の調節方法で一定に維持するか、変化させてよい。特に氷点が活性薬剤の相転移温度より高い系では、個々に、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用した氷点降下剤(FPDA)は、系に直接、またはそれらの溶液(例えば、水溶液)で混合してよい。適切なFPDAには、限定はしないが、プロピレングリコール、スクロース、エチレングリコール、アルコール(例えば、エタノール、メタノール)およびそれらの水性混合物が含まれる。
【0074】
一例では、予め形成された微粒子はさらに、相分離への影響がごくわずかである1種または複数の賦形剤を含むことができる。この賦形剤は、安定性の増強、活性薬剤の予め形成された微粒子からの放出制御、および/または活性薬剤の生体組織への透過性の改変などの付加的特性を有するコア微粒子および/またはその中の化合物(例えば、活性薬剤、任意選択の担体)に染みこませることができる。適切な賦形剤には、限定はしないが、炭水化物(例えば、トレハロース、スクロース、マンニトール)、多価カチオン(好ましくは、金属カチオン、例えば、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+)、アニオン(例えば、CO32−、SO42−)、アミノ酸(例えば、グリシン)、脂質、リン脂質、脂肪酸およびそれらのエステル、界面活性剤、トリグリセリド、胆汁酸およびそれらのコンジュゲートおよび塩(例えば、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、コール酸ナトリウム)、および本明細書で開示した任意の重合体が含まれる。
【0075】
予め形成された微粒子は、場合によって溶液から分離して、本明細書で開示した表面修飾の前に洗浄するか、分離または洗浄を行わずに表面修飾してよい。分離手段には、限定はしないが、遠心、透析、沈降(クリーム分離)、相分離、クロマトグラフィー、電気泳動、沈殿、抽出、親和性結合、濾過およびダイアフィルトレーションが含まれる。比較的水溶解性が低い活性薬剤では、洗浄媒体は、場合によって1種または複数の溶解性抑制剤(SRA)および/または本明細書で開示した賦形剤を含有する水性であってよい。好ましいSRAは、微粒子中の活性薬剤および/または担体と不溶性複合体を形成することができ、限定はしないが、(本明細書で開示したものなどの)二価または多価カチオンを含む塩などの化合物を含む。(タンパク質性化合物などの)比較的水溶解性の高い活性薬剤では、洗浄媒体は有機または水性であってよいが、少なくとも1種のSRAまたは沈殿剤(例えば、硫酸アンモニウム)を含有する。一例では、洗浄媒体は、約16%(w/v)PEGおよび0.7%(w/v)NaClを含む水性溶液などの相分離反応で使用されるのと同様の溶液である。
【0076】
洗浄媒体は、例えば、凍結乾燥、留去または乾燥によって除去が容易なように、沸点が低いことが好ましい。洗浄媒体は、超臨界液または超臨界点に近い流体であってよく、単独または共溶媒と組み合わせて使用される。超臨界液は、PSEA用であるが、予め形成された微粒子用ではない溶媒であってよい。超臨界液の非限定的例には、液体CO2、エタン、およびキセノンが含まれる。共溶媒の非限定的例には、アセトニトリル、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、水および2−プロパノールが含まれる。
【0077】
前記で示したように、水中での溶解度の程度が様々である活性薬剤を本明細書で記載した微粒子に使用することができる。水不溶性活性薬剤も使用してよいが、水可溶性活性薬剤が好ましい。
【0078】
活性薬剤は、医薬品であってよい。その効果および/または適用に応じて、この医薬品は、限定はしないが、補助剤、アドレナリン作用薬、アドレナリン遮断薬、副腎皮質ステロイド、抗アドレナリン薬、アドレナリン様作用薬、アルカロイド、アルキル化剤、アロステリック阻害剤、タンパク質同化ステロイド、興奮薬、鎮痛剤、麻酔剤、食欲抑制薬、制酸薬、駆虫薬、抗アレルギー薬、血管新生抑制薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗生物質、抗体、抗癌剤、抗コリン作用薬、抗コリンエステラーゼ、抗凝固薬、抗痙攣薬、抗認知症薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、下痢止め薬、解毒薬、抗てんかん薬、葉酸代謝拮抗薬、抗真菌薬、抗原、抗蠕虫薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬、抗高血圧薬、抗感染症薬、抗炎症薬、抗マラリア薬、代謝拮抗薬、抗ムスカリン薬、抗マイコバクテリア薬、抗悪性腫瘍薬、抗骨粗鬆薬、抗病原薬、抗原虫薬、接着分子、解熱薬、抗リウマチ薬、防腐薬、抗甲状腺薬、抗潰瘍薬、抗ウイルス薬、抗不安薬鎮静薬、収れん薬、ベータアドレナリン受容体遮断薬、殺生物薬、血液凝固因子、カルシトニン、強心薬、化学療法薬、コレステロール低下薬、補因子、コルチコステロイド、咳抑制薬、サイトカイン、利尿薬、ドーパミン作用薬、エストロゲン受容体調節因子、酵素およびそれらの補因子、酵素阻害剤、成長分化因子、成長因子、血液学的因子(hematological agent)、造血剤、ヘモグロビン調節因子、止血剤、ホルモンおよびホルモン類似体、催眠薬、降圧利尿剤、免疫学的製剤、免疫刺激薬、免疫抑制薬、阻害剤、リガンド、脂質調節薬、リンホカイン、ムスカリン様作用薬、筋弛緩薬、神経遮断薬、向神経薬、パクリタキセルおよび誘導体化合物、副交感神経様作用薬、副甲状腺ホルモン、プロモーター、プロスタグランジン類、心理療法薬、向精神薬、放射線医薬品、受容体、鎮静薬、性ホルモン、殺菌剤、刺激薬、血小板新生薬、栄養因子、交感神経様作用薬、甲状腺薬、ワクチン、血管拡張薬、ビタミン、キサンチン、ならびにそれらのコンジュゲート、複合体、前駆体および代謝物が含まれる。この活性薬剤は、個々に、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。一例では、活性薬剤は、限定はしないが、ペプチド、炭水化物、核酸、その他の化合物、それらの前駆体および誘導体、ならびにそれらの2種以上の組合せを含む予防薬および/または治療薬である。
【0079】
前述の通り、活性薬剤は化粧品であってよい。非限定的な化粧品には、特に、緩和剤、湿潤剤、遊離ラジカル阻害剤、抗炎症剤、ビタミン、脱色剤、ざ瘡止め剤、抗脂漏薬、角質溶解剤、痩身薬、皮膚着色剤および日焼け止め剤が含まれる。化粧品として有用な非限定的な化合物には、リノレン酸、レチノール、レチノイン酸、アスコルビン酸アルキルエステル、ポリ不飽和脂肪酸、ニコチン酸エステル、ニコチン酸トコフェロール、米、ダイズまたはシアバターの不鹸化物、セラミド、グリコール酸などのヒドロキシ酸、セレン誘導体、抗酸化剤、ベータカロテン、ガンマオリザノールおよびグリセリン酸ステアリルが含まれる。化粧品は、市販されているか、および/または公知の技術によって調製されてよい。
【0080】
前述の通り、活性薬剤は栄養補給剤であってよい。非限定的な栄養補給剤には、タンパク質、炭水化物、水溶性ビタミン(例えば、ビタミンC、ビタミンB群など)、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、Kなど)および草本抽出物が含まれる。栄養補給剤は、市販されているか、および/または公知の技術によって調製されてよい。
【0081】
前述の通り、活性薬剤は分子量2kD以下の化合物であってよい。このような化合物の非限定的な例には、ステロイド、ベータアゴニスト、抗菌剤、抗真菌剤、タキサン(有糸分裂阻害剤および微小管阻害剤)、アミノ酸、脂肪族化合物、芳香族化合物および尿素化合物が含まれる。
【0082】
一例では、活性薬剤は、肺疾患の予防および/または治療のための治療薬であってよい。このような薬剤の非限定的な例には、ステロイド、ベータアゴニスト、抗真菌剤、抗菌化合物、気管支拡張剤、抗喘息薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、AATおよび嚢胞性線維症を治療するための薬剤が含まれる。ステロイドの非限定的な例には、ベクロメサゾン(ジブロピオン酸ベクロメサゾン)、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸フルチカゾン)、ブデソニド、エストラジオール、フルドコルチゾン、フルシノニド、トリアムシノロン(例えば、トリアムシノロンアセトニド)、フルニソリドおよびそれらの塩が含まれる。ベータアゴニストの非限定的な例には、キシナホ酸サルメテロール、フマル酸ホルモテロール、レボアルブテロール、バンブテロール、ツロブテロールおよびそれらの塩が含まれる。抗真菌剤の非限定的な例には、イトラコナゾール、フルコナゾール、アンホテリシンBおよびそれらの塩が含まれる。
【0083】
前述の通り、活性薬剤は診断薬であってよい。非限定的な診断薬には、x線画像剤および造影剤が含まれる。x線画像剤の非限定的な例には、エチル3,5−ジアセタミド−2,4,6−トリヨードベンゾエート(WIN−8883、ジアトラゾ酸(diatrazoic acid)のエチルエステル)、6−エトキシ−6−オキソヘキシル−3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾエート(WIN67722)、エチル−2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)−ブチレート(WIN16318)、エチルジアトリゾキシアセテート(WIN12901)、エチル2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)プロピオネート(WIN16923)、N−エチル2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ−アセタミド(WIN65312)、イソプロピル2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)アセタミド(WIN12855)、ジエチル2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシマロネート(WIN67721)、エチル2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)フェニル−アセテート(WIN67585)、プロパン二酸、[[3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,5−トリヨードベンゾイル]オキシ]ビス(1−メチル)エステル(WIN68165)、および安息香酸、3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−4−(エチル−3−エトキシ−2−ブテノエート)エステル(WIN68209)が含まれる。好ましい造影剤は、生理学的条件下で比較的迅速に分解されることが望ましく、こうしていかなる粒子関連炎症応答も最小限に抑えられる。分解は、酵素的加水分解、生理学的pHでのカルボン酸の可溶化、またはその他の機構によって生じ得る。したがって、WIN67721、WIN12901、WIN68165およびWIN68209その他などの、加水分解に不安定なヨウ化された種に加えて、ヨージパミド、ジアトリゾ酸およびメトリゾ酸などの溶解性に乏しいヨウ化カルボン酸が好ましい。
【0084】
前述の通り、活性薬剤はそれらの2種以上を組み合わせて使用してよい。非限定的な例には、ステロイドおよびベータアゴニスト、例えば、プロピオン酸フルチカゾンおよびサルメテロール、ブデソニドおよびホルメテロールなどが含まれる。
【0085】
予め形成された微粒子は、内部空隙および/空洞が実質的になく(例えば、小胞がない)、カプセル化が実質的になく、脂質が実質的になく、ヒドロゲルまたは膨潤が実質的になく、実質的に非多孔性のアモルファス固体および/または球体であり、それらの用語は本明細書で定義した通りである。予め形成された微粒子は、複数の表面チャンネル開口を有してよく、その直径は一般に100nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下、最も好ましくは1nm以下である。予め形成された微粒子の全体的密度は、0.5g/cm3以上、好ましくは0.75g/cm3以上、より好ましくは0.85g/cm3以上であってよい。密度は、一般的に約2g/cm3まで、好ましくは1.75g/cm3以下、より好ましくは1.5g/cm3以下であってよい。
【0086】
予め形成された微粒子は、少なくとも1種の活性薬剤の負荷量を高くしてよい。製剤および化合物の物理的/化学的性質に応じて、予め形成された微粒子それぞれにおける活性薬剤分子は、一般的に少なくとも1000以上、例えば、数百から数億である。予め形成された微粒子の活性薬剤の重量パーセントは、下回る量または上回る量のいずれかであってよく、あるいは任意の範囲であってよいが、100%未満であり、すなわち、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%であってよい。著しい量の充填剤および/またはその他の賦形剤の組み込みは予め形成された微粒子には必要ないが、このような化合物の1種または複数を存在させてよい。いずれにしても、活性薬剤の所望する状態および/または活性は、100%でなくても大部分(50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)が保持される。
【0087】
予め形成された微粒子の表面修飾は、限定はしないが、制御された方法で、少なくとも1種の荷電化合物を含有する少なくとも1種の単層を予め形成された微粒子の周りに形成することによって実現される。このような単層を2種以上形成するとき、それぞれは異なる荷電化合物を含有し、好ましくは、それぞれは、存在するならば、前の単層および/または後の単層とは符号および/または値が異なる正味表面電荷を外面上に帯びている。このような単層を1層ずつ沈着すると、得られた微粒子の様々な特性を最適に制御することが可能で、所望する結果を実現するために微粒子の調整または「調節」を可能にする。
【0088】
好ましくは、予め形成された微粒子の周囲に密着した単層(「形成された単層」)は、コア微粒子の正味表面電荷の反対の符号である正味電荷をそれぞれが独立して有する1種または複数の荷電化合物を含有する。予め形成された微粒子は、少なくとも、部分的に、形成された単層中の荷電化合物によって透過することができる。形成された単層の外面は、特にこの形成された単層が本明細書で定義した通りの飽和単層であるとき、予め形成された微粒子外面のものとは異なる、好ましくは反対の符号である正味表面電荷を帯びていてよい。荷電化合物には、1種または複数の高分子電解質、荷電ポリアミノ酸、荷電多糖類、ポリイオン性重合体、荷電タンパク質性化合物、荷電ペプチド、荷電していない脂質、荷電脂質構造物、およびそれらの誘導体と場合によって組み合わさった荷電脂質が含まれる。
【0089】
表面修飾微粒子が活性薬剤の所望する放出プロファイルを有するように、表面修飾微粒子はさらに1種または複数の他の交互荷電単層を含有してよい。この数には特に制限はないが、一般的に1から7の間、例えば、2、3、4、5または6であってよい。場合によって、1種または複数のこのような荷電単層は独立して、1種または複数の同一または異なる活性薬剤、例えば、好ましくはそれぞれの外面に共有結合および/または非共有結合した親和性分子、特に標的化リガンドを有してよい。交互に、または組み合わせて、コア微粒子は、1種または複数の部分、例えば、少なくとも1種のこのような活性薬剤を好ましくは部分の外面上に含有する、中心または基底層(例えば、荷電単層)を有してよい。
【0090】
予め形成された微粒子、表面修飾微粒子および、もしあれば、それらの間の任意の中間物は、以下の特性:本明細書で定義した通りの球体、共有架橋結合を含まない、ヒドロゲルおよび/または膨潤を有さない、大きさの分布が多分散、または、好ましくは単分散である、の1種または複数を備えてよい、および/または備えている。予め形成された微粒子は、脂質および/またはカプセル化を含まなくてよい。
【0091】
好ましくは、表面修飾微粒子は、活性薬剤を制御放出、特に持続放出することができ、初期バーストおよび直線放出プロファイルなどの非限定的放出プロファイルを備え、薬剤、治療、診断、化粧、および/または栄養的適用のための組成物または製剤に懸濁物または乾燥粉末として提供することができる。前述の通り、制御放出は、選択されたpH環境内で生じることができる。その点では、制御放出は好ましくは約2から10、より好ましくは約5から7.5、例えば、生理学的pHの7から7.4またはエンドソームpHの5から6.5のpH範囲内で生じることができる。
【0092】
1種または複数の単層の制御沈着にはさらに、1種または複数の条件、例えば、温度、圧力、pH、反応媒体のイオン強度および/または浸透圧、反応媒体中の成分の濃度の変化など、およびこのような変化の速度、およびそれらの2種以上の組合せを制御操作することによって、微粒子(例えば、1種または複数の単層が沈着した予め形成された微粒子)の正味表面電荷を改変することが関与し得る。このような制御操作は、1種または複数の単層の沈着の前、および前まで、または単層形成中であっても、適用できることが望ましい。一例では、微粒子の正味表面電荷は、正、中性、および負であることができる。正味表面電荷は、例えば、前述の条件の1種または複数の制御変化、例えば、pHの制御変化によって選択される。一例では、溶液のpHは、微粒子の正味表面電荷が負であり、溶液のpHと微粒子の表面中性点との差が0.3未満、あるいは0.3以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上であるように、選択される。
【0093】
図1は、本発明の開示に従って、表面修飾微粒子を提供する方法の一例を示す。沈着のための3次元基質として使用する複数の予め形成された微粒子の懸濁液を最初に準備する。予め形成された微粒子の非限定的形成方法には、本明細書で開示した方法および当業者に公知のその他の任意の方法が含まれる。このような1方法を図24の上部に示したが、活性薬剤および相分離増強剤を含有する溶液を提供し、例えば、制御冷却によって液相−固相分離を誘導し、予め形成された微粒子を形成することが関与する。一例では、予め形成された微粒子の形成に使用した化合物のいずれか1種、2種以上、または全ては、予め形成された微粒子それぞれの全体に均一に分布していること(例えば、中心、表面上、および内部の他のあらゆるところにおいて同一濃度で存在すること)が好ましい。本明細書で開示したような表面修飾法は、図24で例示した通りに、全体または一部が予め形成された微粒子の基本的な製造方法に組み込まれるか、またはそれらの延長部分とすることができることを理解されたい。非修飾微粒子の予備形成と表面修飾の間で、予め形成された微粒子は液相から分離され、場合によって、好ましくは相分離増強剤存在下で洗浄することができる。例えば、洗浄用媒体は、相分離増強剤を含有する相分離中に使用したものと同様の溶液であってよい。あるいは、予め形成された微粒子を液相から分離せず、洗浄もしない。いずれにしても、図1および24に示した通りに、予め形成された微粒子の懸濁液または再懸濁液は、少なくとも1種の適切な荷電化合物を含む溶液と一緒にして混合される。
【0094】
前述の通り、予め形成された微粒子の活性薬剤の負荷重量%(wt%)は、40%以上、好ましくは60%以上、または80%以上、または90%以上、または95%以上、および100%未満、一般的に98%未満であってよい。予め形成された微粒子はさらに、正味表面電気的電荷を帯びるか、または(例えば、中性状態から)帯びるように誘導されることができる。一例では、この正味表面電荷は、活性薬剤、および/または、存在するならば、予め形成された微粒子中に存在する担体によって、主に、または本質的に提供され、この化合物は好ましくは均一にその中に分布していてよい。あるいは、活性薬剤は、予め形成された微粒子の1種または複数の部分、例えば、中心または基底層(例えば、荷電単層)に、好ましくはその部分内、または主にそれらの外面上に実質的に均一に分布して、区画化される。予め形成された微粒子は、予め形成された微粒子の正味表面電荷と好ましくは反対の符号の正味電気的電荷を帯びる、または帯びることができる少なくとも1種の荷電化合物に曝露(例えば、混合)されて、それによって予め形成された微粒子の周りに荷電化合物の形成単層を形成することができる。形成された単層または表面修飾微粒子は、予め形成された微粒子と同一の符号、ゼロ、または、好ましくは予め形成された微粒子と反対の符号であってよい正味表面電気的電荷を有する。言い換えると、(例えば、ゼータ電位測定によって測定して)予め形成された微粒子の外面が負の正味表面電荷を帯びるならば、形成された単層は、その外面に正の正味表面電荷を帯び得ることが好ましい。あるいは、予め形成された微粒子が正の正味表面電荷を帯びるならば、形成された単層は、負の正味表面電荷を帯びることが好ましい。単層の沈着は、水性媒体(例えば、水、緩衝液、または前述の種類のある水混和性有機溶媒を含有する水性溶液または予め形成された微粒子の製造で存在してよいもの)中で行うことができる。
【0095】
表面修飾微粒子を調製するために、非限定的な方法には、非修飾微粒子を予め形成すること、またはそうでなければ提供すること、それを1種または複数の荷電化合物に曝露すること(これは、微粒子を浸漬することができる溶液中で行われる)、および単層を形成することが含まれる。この溶液は、1種または複数の水、緩衝液、水混和性有機溶媒、および1種または複数の溶解性抑制剤(例えば、アルコール、炭水化物、非イオン性水混和性重合体、および/または単価または多価カチオンを含有する無機イオン化合物)を、重量対体積百分率5%から50%、好ましくは10%から30%の濃度で含有してよい。この溶液の非限定的な例は、ポリエチレングリコール約16%(w/v)およびNaCl0.7%(w/v)を含有する。溶液のpHは、一般的に4から10の範囲で、コア粒子の表面中和点と同一であるか、または近接するように(例えば、差が0から0.3未満である)、あるいは離れているように(例えば、差が0.3pH単位以上である)調節することができる。荷電化合物は、0.05mg/mLから10mg/mLの濃度で溶液中に存在してよい。予め形成された微粒子および荷電化合物を、溶液中で、好ましくは2℃から5℃の温度または周囲温度までで、1秒から10時間の時間にわたって一緒にインキュベートする。単層の形成は、制御された方法で実施することができる。得られた表面修飾微粒子またはそれらの中間体は、任意選択の洗浄で溶液から分離することができる。この洗浄媒体は、前述の溶液と同様であってよい。所望するならば、この方法は交互に荷電した単層を形成するために交互に荷電した化合物を使用することを繰り返してよい。
【0096】
前記で示したように、反応系は1種または複数の溶解性抑制剤および/または粘度増強剤(SRA/VIA)ならびに1種または複数のPSEAを含むことができる。適切なSRA/VIAおよびPSEAには、限定はしないが、当業者に公知のものおよび本明細書で開示したもの、例えば、アルコール(例えば、エタノール、グリセロール)、炭水化物(例えば、スクロース)、非イオン性水混和性重合体(例えば、PEG、PVP、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(ポロキサマー)、ヘタスターチ、デキストランなど)、および多価(例えば、二価、三価)カチオン(例えば、本明細書で開示したものなどの金属および有機カチオン)を含有する無機のイオン化できる化合物、例えば、ZnCl2が含まれる。
【0097】
したがって、一例では、形成された単層の沈着は、緩衝生理食塩水(すなわち、0.7%NaCl緩衝液)およびPEGなどのSRA/VIAを重量または体積で8%以上、好ましくは12%以上、より好ましくは15%以上、一般的に30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは約16%以下含む溶液中で実施することができる。溶液に必要なSRA/VIAの量は、部分的に、活性薬剤の安定性および単層の溶解プロファイルに左右される。ある種の荷電化合物(例えば、ポリカチオン、ゼラチンBおよびキトサン)は、SRA/VIA16%以下を含有する溶液中で作用することができる。
【0098】
微粒子の正味表面電荷がゼロである溶液のpHは、本明細書では特定の溶液中における微粒子の表面中性点と称する。ある例では、溶液のpHは、溶液中の微粒子の表面中性点またはその近くに調節することができ、その間の差は0.3(pH単位)未満、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下である。その他の例では、溶液のpHは、溶液中の微粒子の表面中性点から離れて調節することができ、その間の差が0.3(pH単位)以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上である。ある例では、微粒子の表面中性点から離れた溶液pHを調節すると、そこにある活性薬剤の溶解速度に影響を及ぼし得ることが観察された。溶液中での微粒子のインキュベーションは、微粒子の分解を最小限に抑えるために、周囲温度で、好ましくは周囲温度以下で、しかし、好ましくは溶液の凍結温度を上回った温度で実施することができる。インキュベーション温度は、本明細書で開示した1種または複数のFPDAを使用するときは、溶液の凍結温度より低くてもよい。例えば、インキュベーション温度は、0℃と15℃との間、好ましくは1℃と10℃との間、より好ましくは2℃と5℃の間、最も好ましくは5℃未満であってよい。一般的に、各単層を製造するための溶液中の荷電化合物の濃度は、以下の、0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、10mg/mL、5mg/mL、3mg/mLの1つと等しいか、下回っているか、および/または上回っていてよく、あるいはそれらの任意の2つの間の範囲であってよい。予め形成された微粒子を溶液中で荷電化合物と一緒にインキュベートするとき、予め形成された微粒子の荷電化合物に対する重量比は、1:1以上、好ましくは2:1から10:1、より好ましくは2.5:1から7:1であってよい。
【0099】
インキュベーション時間は、所望する荷電修飾(例えば、中性化または電荷逆転)、単層適用範囲、および/または単層の厚さを実現するために調節することができる。特定の反応に応じて(例えば、成分および/または条件)、インキュベーション時間は、以下の、10時間、5時間、3時間、10分、30分、100分、75分、60分、15分、5分、1分、30秒、10秒、5秒、1秒の1つと等しいか、短いか、および/または長いか、あるいはそれらの任意の2つの間の範囲であってよい。各単層の厚さは、以下の、100nm、50nm、20nm、5nm、1nm、0.5nm、0.1nm、2nm、10nmの1つと等しいか、薄いか、および/または厚いか、あるいはそれらの任意の2つの間の範囲であってよい。本発明の開示の一般的な単層の厚さは、100nm未満、好ましくは10nm未満である。
【0100】
特定の理論に結びつけることは望まないが、微粒子からの活性薬剤の放出制御における要素は、活性薬剤、荷電化合物および/または、もしあるならば、その他の成分が関与することができる、予め形成された微粒子の外面またはその近く(例えば、形成された単層との界面で)で生じる相互作用および/または結合の種類および/または程度(例えば、非共有結合、イオン複合体形成)であることができると考えられる。場合によっては、この接触面での強い相互作用または結合は、活性薬剤の溶解を遅くし、延長し、および/または、そうでなければ、妨害し、表面修飾微粒子を安定化し、所望するならば、他の交互荷電単層の製造を促進すると考えられる。さらに、以下に詳細に説明するように、この相互作用はさらに、他の交互荷電単層のその後の形成によって影響を受け得る。
【0101】
したがって、図2について簡単に触れると、予め形成された微粒子10と荷電化合物20を好ましくは溶液中で一緒にインキュベートすると、荷電化合物20の単一単層が、予め形成された微粒子10の少なくとも外面上に形成され、それと結合している中間体微粒子40が生じる。インキュベーション後、中間微粒子40の懸濁液を遠心、濾過、ダイアフィルトレーションおよび/またはその他の分離方法によって溶液から分離することができる。中間体微粒子40は、場合によって洗浄溶液(好ましくは、水性媒体、例えば、図1に一般的に示したような、前述のSRA含有緩衝液)で洗浄される。インキュベーション中の温度および任意選択の洗浄は、活性薬剤および荷電化合物20の溶解度に基づいて最適化される。
【0102】
さらなる表面修飾を所望するか、または必要とする場合、任意選択で洗浄した後、好ましくは溶液中で、中間体微粒子40をさらに異なる電荷の化合物30に曝露(例えば、混合)して、中間体微粒子40の形成された単層の周りに、結合した荷電化合物30の次の単層を形成してよい。荷電化合物30は、荷電化合物20とは反対の符号の正味電気的電荷を有することが好ましい。次の単層は、形成された単層の周囲に密着して形成することができる。中間体微粒子50は、中間体微粒子40と同一の符号、中性、または、好ましくは中間体微粒子40と反対の符号の正味表面電気的電荷を帯びていてよい。図1に示したように、単層形成方法を前回のように反復して、それぞれが先行する単層と結合した、追加的であるが、好ましくは必ずしも必要ではない、隣接する交互荷電単層を備えた微粒子50および60を形成することができる(図2)。所望する放出プロファイルを有する活性薬剤の制御放出を表面修飾微粒子中で実現できるように、形成される単層の総数を選択するか、予め決定することができる。前述のように、その数は、整数1、2、3、4、5、6、7以上、好ましくは100未満、より好ましくは20未満、最も好ましくは10未満であることができる。
【0103】
他の例では、単層を形成する1種または複数の荷電化合物は、予め形成された微粒子中の1つと同一か、または異なる活性薬剤であってよい。例えば、予め形成された微粒子の正味表面電荷と反対の符号である正味電気的電荷を有する同一または異なる荷電活性薬剤の1種または複数の奇数(例えば、1つ、3つ)の単層を独立して形成することができる。交互に、または組み合わせて、予め形成された微粒子の正味表面電荷と同一の符号である正味電気的電荷を有する同一または異なる荷電活性薬剤の1種または複数の偶数(例えば、2つ、4つ)の単層を独立して形成することができる。図2に関して、荷電化合物20または30は、予め形成された微粒子10の中の1つと同一であるか、または異なった活性薬剤であってよく、そうでなければ、荷電化合物30または20はそれぞれ、予め形成された微粒子の1つとは異なる不活性荷電化合物または荷電活性薬剤であってよい。
【0104】
他の例では、荷電した、および/または非荷電の1種または複数の活性薬剤を、共有的および/または非共有結合によって1種または複数の単層に組み入れることができる。このような単層結合型活性薬剤は、予め形成された微粒子のものと同一であるか、またはそれらとは異なっていてよい。このような構造によって、単層結合型活性薬剤の制御放出(例えば、延長放出、持続放出)が可能になる。あるいは、組み合わせて、1種または複数のこのような単層結合型活性薬剤は、コア微粒子内の活性薬剤の標的化送達を実現するために、基礎となる微粒子を予め決定された部位に選択的にもたらすことができる、標的化リガンドなどの親和性分子であってよい。
【0105】
他の例では、荷電化合物の1種または複数の単層を備えた前述の表面修飾微粒子は、表面修飾微粒子の1種または複数の特性、例えば、限定はしないが、その中の活性薬剤の放出プロファイルをさらに変更するために、好ましくは懸濁液中において、1種または複数の物理的および/または化学的処理を施されてよい。この処理は、表面修飾微粒子の形成直後および任意選択の洗浄前、または任意選択の洗浄の直後に実施することができる。この処理には、反応混合物の1種または複数の変数、例えば、限定はしないが、温度、pHおよび/または圧力の操作が関与し得る。一般的に、1種または複数の変数は、最初の値から第2の値まで調節(例えば、増加または減少)し、ある期間維持することができ、次に第3の値に調節(例えば、減少または増加)するか、または第1の値に戻して、あるいは戻すことができ、さらに維持することができる。
【0106】
熱処理には、例えば、加熱段階および冷却段階が必要であり得る。さらに処理する前に、懸濁液を周囲温度未満の比較的低温、好ましくは表面修飾微粒子が形成される温度、より好ましくは2℃から10℃、例えば4℃に維持して、微粒子の溶解を少なくとも最小限に抑えることができる。加熱段階中、懸濁液をある温度まで加熱して、この高温で1分から5時間、好ましくは15分から1時間、例えば、30分のインキュベーション期間でインキュベートすることができる。高温とは、追加的処理をする前に懸濁液を維持する比較的低い温度よりも高く、懸濁液中での表面修飾微粒子の分解温度よりも低い、好ましくは5℃と40℃との間、より好ましくは10℃と30℃との間の温度である。加熱段階は、場合によって、直後に冷却段階を伴うことができ、その間、懸濁液をある温度で迅速に、または徐々に、制御された方法で冷却することができ、場合によって、この低い温度で1分から5時間、好ましくは15分から1時間、例えば、30分のインキュベーション期間でインキュベートすることができる。一例では、冷却は冷却した洗浄溶液で洗浄することによって実施される。あるいは、懸濁液は、元の温度、または懸濁液が加熱された温度を下回る選択温度まで戻すか、または近接させることができる。この低温は、前記の高温より低くて懸濁液の凍結温度より高く、好ましくは周囲温度で、または周囲温度未満であってよく、場合によって追加的処理の前に懸濁液を維持する比較的低い温度と等しいか、もしくは異なっていてよく、より好ましくは15℃以下、最も好ましくは10℃以下、例えば4℃である。得られた混合物はさらに、本明細書で記載した通りの洗浄を任意選択で行い、さらに処理された表面修飾微粒子を得ることができる。
【0107】
前述の追加的処理に適した表面修飾微粒子には、本明細書で記載したような活性薬剤を重量で40%から100%未満、より一般的には80重量%以上有する、アモルファス、固形、および均一な予め形成された微粒子から形成されたものが含まれる。適切な懸濁液の非限定的な例には、緩衝液、例えば、PEG16%、NaCl0.7%、酢酸Na67mMを含有し、pHが5から8の範囲(例えば、5.7、5.9、6.5、7.0)のPEG緩衝液に溶かした微粒子(例えば、インシュリン小球体)が含まれる。この緩衝液中における微粒子の濃度は、0.01mg/mlから50mg/ml、好ましくは0.1mg/mlから10mg/ml、例えば、1mg/mlであってよい。荷電化合物またはそれらの2種以上の混合物、例えば、硫酸プロタミン、ポリ−L−リシン、および/またはポリ−L−アルギニンは、懸濁液に混合して、0.01mg/mlから10mg/ml、好ましくは0.1mg/mlから1mg/ml、例えば、0.3mg/mlの濃度を提供することができる。この混合物を比較的低温で、例えば、4℃で、撹拌しながら、10秒から5時間、例えば、1時間のインキュベーション期間でインキュベートして、予め形成された微粒子それぞれの外面に荷電化合物の単層を確実に形成することができる。次に、この懸濁液を前述の通り熱処理することができる。任意選択の洗浄を追加的処理の前に懸濁液に実施してよい。
【0108】
追加的処理は、本明細書で開示した通りの任意の1種または複数の単層の形成直後に実施してよい。一例では、追加的処理は、予め形成された微粒子上に単一の単層を形成した直後に実施することができ、この単層は正に荷電した化合物または負に荷電した化合物で形成されている。1種または複数の追加的単層を第1の単層の上に場合によって形成するとき、追加的処理は、このような追加的単層の形成の直後に実施してもよいし、実施しなくてもよい。他の例では、2種以上の単層をコア微粒子上に次々と形成することができ、追加的処理は、単一の予め決定された単層(例えば、最後の単層、第1の単層、または間にある任意のその他の単層)が形成された直後にのみ実施することができる。さらに他の例では、2種以上の単層をコア微粒子上に次々と形成することができ、追加的処理は、例えば、正に荷電した、または負に荷電した化合物を含有するか、あるいは特定の化合物(例えば、活性薬剤、親和性分子、誘導体)または部分(例えば、官能基、標識)を含有するか、あるいはコアからの特定の単層(例えば、1番目、2番目、3番目、4番目、5番目)である、1種または複数の予備決定された特性を有する1層1層の単層の形成直後に実施することができる。さらに他の例では、追加的処理は、単層の全てまたはそれらのサブセットであってよい予め決定された組の各単層の形成直後に実施することができる。
【0109】
以下の実施例16で説明したように、追加的処理後の表面修飾微粒子は、正味表面電荷(ゼータ電位)および/またはその中の活性薬剤のプロファイルの変更を示すことができる。ある種の荷電化合物(例えば、PLLおよびPLA、しかし、硫酸プロタミンではない)では、表面修飾微粒子の表面電荷の変化(例えば、増加)を見いだすことができる。本明細書で開示したin vitroにおける放出プロトコールを実施すると、追加的処理を行った表面修飾微粒子は、追加的処理を行わなかった表面修飾微粒子と比較して、その中の活性薬剤の1時間累積放出率(%CR1h)の減少を示すことができる。活性薬剤放出の初期バーストは一般的に、最初の1時間に生じると考えられているので、活性薬剤放出の初期バーストは追加的処理によって著しく抑制されることがこの例によって示唆される。同様に追加的処理を行った表面修飾微粒子は、1時間を超えて、好ましくは24時間を超えて、より好ましくは48時間を超えて、最も好ましくは7日間を超えて継続的に、好ましくは持続的に放出することができ、24時間累積放出率(%CR24h)は%CR1hを上回る。追加的処理の結果として、本発明の開示の表面修飾微粒子は、放出緩衝液(Tris 10mM、0.05% Brij35、0.9% NaCl、pH7.4、2価カチオンを含まない)中で、37℃でin vitro放出を行うと、%CR1hが50%以下を示し、および/または%CR1hに対する%CR24hの比は1:1を上回ることができる。この%CR1hは、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である。この%CR1hに対する%CR24hの比は、好ましくは1.05:1以上、より好ましくは1.1:1以上であってよいが、10:1以下、好ましくは5:1以下、より好ましくは2:1以下、最も好ましくは1.5:1以下であってよい。
【0110】
特定の理論に結びつけはしないが、本明細書で開示したような単層形成後の追加的処理によって、基質(例えば、予め形成された微粒子、先行する単層)の外面を含む単層中の荷電化合物および分子(例えば、活性薬剤、予め形成された微粒子中の任意選択の担体分子、先行する単層中の荷電化合物)は再配置し、追加処理前の単層と基質外面との間の静電的相互作用よりもずっと強い結合を形成するようになると考えられる。追加的処理によって、修飾された殻が、表面修飾微粒子の外面上に形成され、この修飾された殻は、荷電化合物および基質の外面を形成する分子の均一な混合物を含有するものと考えられる。
【0111】
形成された単層上への荷電化合物の追加的な交互荷電単層の沈着はさらに、とりわけ、予め形成された微粒子中の活性薬剤の放出プロファイルに影響を及ぼすことができる。既に記載されているように、予め形成された微粒子と形成された単層との間の接触面における引力に応じて、2つの間の強い結合が認められる。これによって、活性薬剤放出の量および/または速度の抑制が生じ得る。放出プロファイルはさらに、形成された単層の周りに1種または複数の追加的な交互荷電単層を形成することによって変更することができる。どんな特定の理論にも限定されないが、2番目の逆に荷電した単層を追加すると、形成された単層と予め形成された微粒子との間の結合が緩和され、それによって活性薬剤の放出が増強され得ると考えられる。本明細書で開示した例のいくつかで示したように、所望するならば、活性薬剤の任意選択の介在層を連続的に配置して、交互荷電単層をその後適用することによって、表面修飾微粒子からの活性薬剤の放出を良好に調節することができる。
【0112】
本発明に従って使用できる適切な荷電化合物は、限定はしないが、好ましくは非共有結合、より好ましくは静電的相互作用によって、任意の基質に結合することができる荷電化合物であってよい。したがって、適切な荷電化合物には、正に荷電した、負に荷電した、または両性のイオンが含まれ、限定はしないが、高分子電解質、荷電ポリアミノ酸、多糖類、ポリイオン性重合体、イオノマー、荷電ペプチド、荷電タンパク質性化合物、場合によって荷電していない脂質と組み合わせた荷電脂質、リポソームなどの荷電脂質構造物、それらの前駆体および誘導体、ならびにそれら2種以上の組合せが含まれる。非限定的な例には、ポリスチレンスルホン酸エステル(PSS)およびポリアクリル酸(PAA)などの負に荷電した高分子電解質、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸およびアルギン酸などの負に荷電したポリアミノ酸、コンドロイチン硫酸およびデキストラン硫酸などの負に荷電した多糖類、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)などの正に荷電した高分子電解質、ポリ(L−リシン)塩酸塩、ポリオルニチン塩酸塩およびポリアルギニン塩酸塩などの正に荷電したポリアミノ酸、ならびにキトサンおよび硫酸化キトサンなどの正に荷電した多糖類が含まれる。本発明において荷電化合物として有用なのはさらに、限定はしないが、生体適合性ポリイオン性ポリマー(例えば、イオノマー、ポリカチオン性ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドなどのポリカチオン性ポリマー、ポリアニオン性ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドなどのポリアニオン性ポリマー)、荷電タンパク質(例えば、プロタミン、プロタミン硫酸、キサンタンガム、ヒト血清アルブミン、ゼイン、ユビキチンおよびゼラチンA&B)、ならびに荷電脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン)である。さらに、本明細書で開示した荷電化合物の誘導体(例えば、グリコシル化、過グリコシル化、PEG化、FITC標識、それらの塩)、コンジュゲートおよび複合体が含まれる。より具体的には、適切な正に荷電した脂質(すなわち、ポリアニオン性脂質)、負に荷電した脂質(すなわち、ポリカチオン性脂質)および両性イオン性脂質には、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(カルボキシフルオレセイン)(FITC−EA)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3(ホスホ−rac−O(1−グリセロール)(ナトリウム塩)(DSPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファート(1ナトリウム塩)(DPPA)1,2−ジオレイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(Dが含まれる。
【0113】
さらに、脂質構造物(例えば、リポソーム)は、荷電化合物の交互沈着で使用することができる。非荷電(例えば、非イオン性)脂質は、1種または複数の単層を形成するために電気的に荷電した脂質と組み合わせて使用することができ、その間のモル比は、単層を通過する活性化合物の最小限の透過性を実現するために最適化することができる。
【0114】
一般的に予め形成された微粒子および1種または複数の単層を含有する本明細書で開示した表面修飾微粒子は、コア微粒子とは異なる活性薬剤放出プロファイルを有することが好ましい。放出プロファイルの違いの非限定的例には、初期バーストの減少、放出時間の延長、期間中の直線的/一定な放出の表示、および/または長期間にわたる放出速度の減少が含まれる。表面修飾微粒子は、好ましくは機能的に(例えば、治療的、薬学的、診断的に)有効な量で、液体または固体組成物または製剤に溶かした懸濁液または乾燥粉末として、1種または複数の保存剤、等張化剤、薬学的に許容される担体および安定化剤の存在下または非存在下で、存在させることができる。このような組成物および製剤は、症状または状態の予防または治療のために、あるいは、栄養補給剤として、あるいは身体的増強または生理学的に満足な状態のために、対象に有効量で投与することができる。このような組成物および製剤は、存在するか、もしくは存在しない物質、症状または症状、あるいは、このような症状または障害の素質のin vitroおよび/またはin vivoで検出するための診断方法、装置、またはキットに組み込むことができる。例えば、物質は、接触すると、表面修飾微粒子またはその一部(例えば、コア微粒子)と結合体(例えば、コンジュゲート、複合体)を形成し、検出のための1種または複数の信号を提供することができる。1種または複数の信号は、この結合の1種または複数の部分(例えば、物質、微粒子)上に標識された1種または複数の部分であってよく、あるいは、この結合体の形成によって誘発されてよい(例えば、発光、他の物質の放出)。さらに、表面修飾微粒子は、対象の症状または障害を予防および/または治療するために、栄養補給剤および/または栄養補助食品または食品成分に組み入れるか、あるいは食品添加物として使用することができる。
【0115】
本発明の開示に従って製造した表面修飾微粒子の分析方法およびいくつかの実施例を以下に記載する。実施例で形成された荷電単層は全て、本明細書で記載した通りの飽和単層であるものと考えられる。報告された読み取り値および測定値は、以下に記載した機器および方法を使用して記録した。
【0116】
水晶振動子微量天秤(QCM)測定
QCM法は、SRA含有溶液の存在下で電気的に荷電した化合物の積層集合体の存在を確かめるために使用した。複数の(例えば、2、3または4)PAH/PSS2層の前駆体フィルム(すなわち、各2層はPSS単層に密着して隣接したPAH単層を含む)をQCMの9MHz銀共振器(USI QCMシステム、260303モデル、Sanwa Tsusho Co.、Ltd、日本)上に沈着させた。各単層を形成するために、荷電化合物を濃度1.5mg/mLで含むNaCl 0.25Mの水性緩衝液中で、室温で15分間、この共振器をインキュベートし、脱イオン(DI)水で3回洗浄し、乾燥させた。水性緩衝液の代わりに、単層はまた、荷電化合物を濃度3mg/mLで有するDI水溶液を使用して形成することができる。
【0117】
前駆体フィルム上に関心のある電気的に荷電した化合物の単層それぞれを形成するために、コーティングした共振器をさらに、それぞれの荷電化合物を含有する水性緩衝液中で、+2℃で約1時間インキュベートし、次いでDI水で洗浄した。高分子電解質および荷電タンパク質については、緩衝液中の荷電化合物の濃度は、0.1mg/mLから3mg/mLの範囲であり、好ましくは1mg/mLであった。荷電脂質については、緩衝液(懸濁液)中の荷電化合物の濃度は、0.1mg/mLから3mg/mL、好ましくは0.25mg/mLから1mg/mLであった。(w/vパーセントで表して)a)PEG16%−NaCl0.7%、pH5.8、b)PEG16%−NaCl0.7% pH7.0、c)酢酸0.16%−ZnCl20.026%を含む様々な緩衝液を使用した。集合用の緩衝液中のPEG、NaClおよびZnCl2の濃度は、最適にするために変化させてよい。
【0118】
単層は、形成後、窒素ガス流中で乾燥させた。単層それぞれを形成した後、共振器の振動変化をモニターし、当業者に理解されている厚さに変換し、その結果を図9に示した。
【0119】
微粒子の正味表面電荷の測定
微粒子の正味表面電荷(ゼータ電位)を測定するために、ゼータ電位分析器(ZetaPALSモデル、Brookhaven Instruments Corp.、Holtsville、NY)を使用した。観察下で各試料の一部40μlを、塩を含まない対応するPEG溶液1.5mLに添加し、混合し、得られた懸濁液を測定のためにすぐ使用した。懸濁液の温度は、微粒子分解を最小限に抑えるために8℃に平衡化させた。
【0120】
in vitro放出(IVR)
(インシュリンなどの)活性薬剤のIVRプロファイルを作製するために、放出緩衝液(Tris10mM、Brij35 0.05%、NaCl 0.9%、pH7.4)の一部10mLを、濃縮粒子懸濁液0.5mL(インシュリン3mgに相当)を含有するガラスバイアルに添加し、混合し、37℃でインキュベートした。指定した時間間隔で、IVR媒体400μLを微量遠心管に移し、13krpmで2分間遠心した。上清の一部300μLを取り出し、当業界で理解されている通りにビシンコシン酸(BCA)測定法によって分析するまで、−80℃に保存した。新鮮な放出緩衝液の一部300μlをこの微量遠心管に添加して、ペレットを元に戻した。懸濁液400μLをIVRに戻した。微粒子中の活性薬剤総含量は、ジメチルスルホキシド(DMSO)および界面活性剤およびpH中和剤を含有する水性アルカリ溶液中に微粒子を完全に溶解した後、BCA測定法によって測定した。
【実施例】
【0121】
(実施例1A)
ポリスチレンスルホン酸単層を備えた小球体
本明細書で開示した相分離法を使用して形成されたインシュリン小球体(すなわち、予め形成された微粒子)を、ポリイオンPSS0.3mg/mLの存在下でPEG16%(w/v)およびNaCl0.7%(w/v)の水性溶液中で2℃でpH4.8で1時間インキュベートした。結合していないPSSを除去するために遠心洗浄(3000rpmで15分)を2回行い、毎回、小球体を再懸濁するための洗浄媒体として初期量の前述の水性溶液を使用した。非修飾小球体および修飾小球体のゼータ電位値を比較して、PSS単層の形成を確かめた(図3)。
【0122】
(実施例1B)
ポリスチレンスルホン酸およびポリアリルアミン塩酸塩の複数の交互単層を備えた小球体
実施例1AのPSS修飾微粒子は、ポリカチオンPAHのその後の単層を形成するための中間体微粒子として使用した。同様の形成および洗浄方法は、PAHを同濃度のPSSと置換する以外は、実施例1Aで記載した通りに使用した。所望する数の交互単層を形成するためにこの方法を繰り返した。図3は、各単層形成後にPSS/PAH2層集合物を4回連続して沈着したゼータ電位値を示す。
【0123】
(実施例2A)
小球体の表面中性点を下回るpHで表面修飾された小球体
実施例1Aの方法を使用して、pH4.8(約5.6で認められる小球体の表面中性点を下回る)でインシュリン小球体上にポリアニオン単層を形成した。図4は、ポリアクリル酸(ポリアニオンのモデル)、デキストラン硫酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸およびアルギン酸の単層を備えたインシュリン小球体のゼータ電位値を示す。予め形成されたインシュリン小球体のpH4.8でのゼータ電位は、正の正味表面電荷を示した。それぞれのポリアニオン単層を形成した後、得られた表面修飾小球体の正味表面電荷は負だった。
【0124】
(実施例2B)
小球体の表面中性点を上回るpHで表面修飾された小球体
実施例1Aおよび1Bの方法を使用して、(小球体の表面中性点を上回る)pH7.0でインシュリン小球体上にポリカチオン単層を形成した。図5は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA、ポリカチオンのモデル)、プロタミン硫酸(ProtS)、ポリ−l−アルギニン(PLA)およびポリ−l−リシン(PLL)の単層を備えたインシュリン小球体のゼータ電位値を示す。予め形成されたインシュリン小球体のpH7.0でのゼータ電位は、負の正味表面電荷を示した。それぞれのポリカチオン単層を形成した後、得られた表面修飾小球体の正味表面電荷は正だった。図6に示したように、FITC標識プロタミン単層を備えたインシュリン小球体のLSC顕微鏡写真によって、ポリカチオン単層の形成が確かめられた。
【0125】
(実施例3A)
反対に荷電したポリイオンの複数の単層を備えた小球体
実施例1A&2Aで得られた小球体を中間体小球体として使用して、ポリカチオンPLL0.3mg/mLの存在下で水性溶液中(PEG16%、NaCl0.7%、pH4.8)に再懸濁し、2℃で1時間インキュベートして、形成されたポリアニオン単層の上にPLLの次の単層を形成した。図7に示したように、小球体の正味表面電荷逆転によって、ポリイオン単層の形成が確認された。図8に示したように、形成されたPSS単層および次のFITC標識PLL単層を備えたインシュリン小球体のLSC顕微鏡写真によって、ポリカチオンPLLの表面沈着が示された。
【0126】
前述のようなQCMを、各ポリイオン単層の厚さを測定するために使用した。反応媒体は、PLLまたはコンドロイチン硫酸をPEG16%、NaCl0.7%中に1mg/mLで含有した。フィルム集合体は、ポリイオンを含有する反応媒体中で、それぞれ15分間QCM共鳴器を連続的にインキュベートし、その直後DI水で洗浄し、窒素流で乾燥させることによって構築した。図9は、各単層形成後漸増するフィルムの厚さを示す。ポリイオンに応じて、各単層全体の厚さの増加は約1nm以下で、平均増加は約0.5nmであることが推定された。
【0127】
(実施例3B)
逆に荷電した生体適合性ポリイオンの複数の単層を備えた小球体
コンドロイチン硫酸およびゼラチンAは、予め形成されたインシュリン小球体の周りに逆に荷電したポリイオンの複数の単層を形成するために、PEG16%およびNaCl0.7%の水溶液中で、pH4.8で2℃で使用された。実施例1Aの方法によって、コンドロイチン硫酸単層を形成した後、ゼラチンA単層を形成した。6層の交互荷電単層を形成するために、この方法を繰り返した。各単層形成後の小球体の正味表面電荷の逆転を図10に示す。
【0128】
(実施例4A)
多価カチオンおよびPEGの存在下での単層形成
予め形成されたインシュリン小球体の周りにプロタミンおよびコンドロイチン硫酸の単層を形成するために、水溶液のpHが6.4で、PEG16%、NaCl0.7%、酢酸0.16%(w/v)およびZnCl20.026%(w/v)を含有すること以外は、実施例1Bの方法を使用した。比較実施例は、pH6.4で、PEG16%、NaCl0.7%を含有するZnおよび酢酸塩を含まない水溶液を使用して形成した。得られた小球体のゼータ電位を図11に示す。
【0129】
(実施例4B)
多価カチオンの存在下およびPEGの非存在下での単層形成
予め形成されたインシュリン小球体の周りにプロタミンおよびコンドロイチン硫酸の単層を形成するために、水溶液がPEGを含まず、pHが7.0で、NaCl0.7%、酢酸0.16%、ZnCl20.026%を含有すること以外は、実施例1Bの方法を使用した。得られた小球体のゼータ電位を図12に示す。
【0130】
(実施例5)
リポソームで表面修飾した小球体
PEG16%、NaCl0.7%、酢酸0.16%、ZnCl20.026%、pH7.0の水溶液に懸濁した、60%カチオン性脂質1,2−ジオレイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DAP)および20%両性イオン1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)を含有するリポソームを使用して、(同水溶液で予め洗浄された)予め形成されたインシュリン小球体と2℃で1時間一緒にインキュベートした。コンドロイチン硫酸の次の単層を形成するために実施例4Bの方法を適用した。
【0131】
あるいは、実施例4Bの方法を使用して、アニオン性1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3[ホスホル−rac−(1−グリセロ)])(DSPG、ナトリウム塩)、DOPCおよびコレステロールを含有するリポソームをプロタミン修飾インシュリン小球体に沈着させた。図13は、ローダミンB標識プロタミン単層を含有する小球体(右上)、FITC標識DAPを含有する小球体(左上)および両方を含有する小球体(左下)のLSC顕微鏡写真を示す。各沈着後の小球体のゼータ電位値を図14に示す。
【0132】
(実施例6)
プロタミン修飾小球体からのインシュリンの持続放出
プロタミン修飾インシュリン小球体は、実施例2Bの方法を使用して、反応媒体中において様々な濃度のポリイオンで形成した。得られたプロタミン修飾インシュリン小球体のIVRプロファイルを図15に示す。ポリイオンの濃度を増加させると、表面修飾小球体からのインシュリンの初期バーストおよびその後の放出速度が減少した。
【0133】
(実施例7)
複数の単層による放出変更
実施例2Bで得られた小球体を中間体微粒子として使用して、その周りにカルボキシメチルセルロース(CMC)を反応媒体中において様々な濃度で沈着させた。図16に示したIVRプロファイルは、その後の単層が表面修飾小球体からの活性薬剤の放出をさらに変更する能力を示している。さらにプロタミン単層を沈着すると、放出プロファイルを部分的または完全に回復することができた(図17)。
【0134】
(実施例8)
プロタミン修飾インシュリン小球体からのインシュリンのin vivo放出
プロタミン修飾インシュリン小球体からのインシュリンのin vivo放出を、化学的に誘導したスプラーグドーリーラットで調べた。実施例2Bに従って調製した表面修飾小球体をPEG3350 16%、pH7.0に溶かした懸濁液として投与した。表面修飾を行っていない予め形成されたインシュリン小球体を、PEG溶液、またはリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4に溶かして対照として投与した。動物には、最初に小球体を1IU/kgの皮下用量で投与した。収集した試料中の組換えヒトインシュリン(rhINS)血清レベルを測定するために、ELISA測定法を使用した。表1および図18Aおよび18Bに示した結果は、投与用量の薬物動態に対する表面修飾の著しい効果を示している。特に、表面修飾は、rhINS(Cmax)の最大血清濃度およびCmaxを実現する時間(tmax)、ならびにrhINS濃度−時間曲線下面積(AUC)およびタンパク質の平均滞留時間(MRT)を増加させた。血清グルコース抑制(図18)はまた、対応する血清rhINSと一致した。以下に示したように、表面修飾微粒子では、非修飾、予め形成された微粒子のCmaxおよびtmaxと比較して、Cmaxがずっと増加した。この実施例で示したように、表面修飾微粒子のCmaxは、予め形成された微粒子のCmaxより2.5倍高かった。その他の実施例では、表面修飾微粒子のCmaxは、予め形成された微粒子のCmaxの1.1倍以上、1.25倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上増加することができる。
【0135】
【表1】
(実施例9)
様々な溶解度抑制剤の存在下での表面修飾
予め形成されたインシュリン微粒子をインキュベートするために使用したプロタミン硫酸(0.15mg/mL)の水性媒体は、PLURONIC(登録商標)F−68またはF−127(10%または16%w/v)の1つ、グリセロール(20%、40%または60%v/v)およびエタノール(10%v/v)を含有した。実施例1Aで説明した方法に従った。図19に示した表面修飾前後の小球体のゼータ電位値は、プロタミン単層の形成を示唆した。
【0136】
(実施例10)
表面修飾小球体の放出プロファイルに対する荷電化合物の濃度の効果
実施例1Aの方法に従って、プロタミン硫酸の濃度を0.1mg/mLから1.5mg/mLの範囲で変化させた。図20Aは、小球体のゼータ電位と48時間後のインシュリンの累積放出との間の関係を示す。反応媒体中のプロタミン濃度の増加は、インシュリン放出の減少と相関し、観察された最大効果濃度は約0.3mg/mLである。
【0137】
プロタミン濃度1.5mg/mLで調製されたプロタミン修飾小球体はさらに、ポリアニオンカルボキシメチルセルロース0.05〜1.2mg/mLまたはコンドロイチン硫酸0.1〜1.2mg/mLの濃度範囲で修飾した。その後の単層の形成によって、図20Bおよび20Cに示したように、プロタミン単層の放出減少効果は著しく逆転した。この結果から、2、3の単層には、制御された方法で微粒子の放出プロファイルを微量調節する能力があることが示唆された。
【0138】
(実施例11)
hGH小球体の表面修飾
予め形成されたhGH小球体を交互に、プロタミン硫酸およびコンドロイチン硫酸0.3mg/mLそれぞれを含有する水性媒体(PEG335016%、NaCl0.7%、pH6.0)中で2℃でそれぞれ1時間インキュベートし、交互荷電単層を形成した。図21Aは、各単層沈着後の小球体のゼータ電位を示す。図21Bにおいて、1、2または3層の単層を備えた表面修飾hGH小球体のIVRプロファイルを、非修飾の予め形成されたhGH小球体のプロファイルと比較する。
【0139】
(実施例12)
静脈イムノグロブリンの小球体の表面修飾
予め形成されたの静脈イムノグロブリン(IVIG)小球体を、コンドロイチン硫酸およびプロタミン硫酸の交互単層で修飾した。各単層について、インキュベーションは、PEG8000 12.5%、酢酸アンモニウム50mMおよび各ポリイオン0.15mg/mLを含有するpH7.0の水性媒体中で4℃で1時間実施した。過剰なポリイオンを除去するために遠心洗浄を使用した。図22は、各単層沈着後の小球体のゼータ電位を示す。
【0140】
(実施例13)
水性PEG媒体中での小球体の表面電荷特性
PEG16%を含有する溶解度減少媒体中における予め形成されたインシュリン小球体の表面荷電特性を測定するために、媒体のpHを4〜7.5の範囲で調節した。小球体のゼータ電位を各媒体中で測定して、図23に示すように、対応するpHに対してプロットした。予め形成されたのインシュリン小球体の表面中性点は5.6と推定された。媒体のpHが表面中性点を下回って減少するか、上回って増加するにつれて、予め形成されたインシュリン小球体の正味表面電荷はそれぞれより正または負になった。
【0141】
(実施例14)
表面修飾小球体のゼータ電位および放出プロファイルに対する反応pHの効果
本明細書で開示した相分離法を使用して形成されたインシュリン小球体(20mg)を4℃で以下のpH値、5.7、5.9、6.5および7.0の1つの緩衝液(PEG16%(w/v)、NaCl0.7%(w/v)および酢酸ナトリウム67mMを含有する)に懸濁した。異なるpHの緩衝液に溶かした非修飾小球体のゼータ電位を本明細書で前述したように測定した。プロタミン硫酸、ポリ−l−リシン、またはポリ−l−アルギニンは、懸濁液と同様のpHの同緩衝液で6mg/ml溶液として、その1mlを懸濁液に添加した。得られた反応混合物それぞれの小球体濃度は1mg/mlで、ポリカチオン濃度は0.3mg/mlであった。得られた反応混合物を4℃で1時間インキュベートして、次に反応混合物のそれぞれのpH値の新鮮な緩衝液の一部20mlで遠心によって3回洗浄した(3000rpmで15分間)。最終洗浄の再懸濁物中の得られた表面修飾小球体のゼータ電位は、前述の通りに測定した。次に、表面修飾小球体は、本明細書で開示したプロトコールに従ってin vitro放出を行った。
【0142】
図25に示したように、ポリカチオン単層の形成は、前述した様々な反応pH値でのインシュリン小球体の表面電荷の性質を逆転させた(負から正)。表面修飾小球体のゼータ電位および電荷逆転の規模は、少なくとも部分的には反応pHおよび/またはポリカチオンに左右されるようである。特に、PLL修飾インシュリン小球体のゼータ電位は、非修飾インシュリン小球体の表面中性点(インシュリンSNPcore、約5.6)に近い反応pH値(例えば、5.7、5.9)では高く(一般的に15mV以上の範囲、例えば、約20mV)、インシュリンSNPcoreから離れた反応pH値(例えば、6.5、7.0)では低い(一般的に、15mV以下の範囲、例えば、約8mV)。PLL単層形成後の電荷逆転の規模(約30mV)は、上記に明記した様々な反応pH値で同一であった。
【0143】
PLA修飾インシュリン小球体のゼータ電位は、インシュリンSNPcoreに近い反応pH値では高く(20mVを上回る)、インシュリンSNPcoreから離れた反応pH値では低い(20mVを下回る)。PLA単層形成後の電荷逆転の規模は、インシュリンSNPcoreに近い反応pH値では少なく(約30mV)、インシュリンSNPcoreから離れた反応pH値では多い(約40mV)。ProtS修飾インシュリン小球体のゼータ電位(約20mV)は、上記に明記した様々な反応pH値で同一であった。プロタミン硫酸単層形成後の電荷逆転の規模は、インシュリンSNPcoreに近い反応pH値では少なく(約30mV以下)、インシュリンSNPcoreから離れた反応pH値では多い(約40mV以上)。
【0144】
図26に示したように、表面修飾インシュリン小球体からのインシュリンのin vitroでの1時間累積放出率(%CR1h)は、反応pHおよび/または表面修飾反応で使用したポリカチオンによって影響を受けた。特に、インシュリン%CR1hは一般的に、インシュリンSNPcoreから離れた反応pH値の場合よりもインシュリンSNPcoreに近い反応pH値の場合の方が大きく、その間の差は、5%より大きく、10%まで、20%まで、30%未満までの範囲であった。同一の反応pHでは、PLA修飾小球体およびProtS修飾小球体は、同程度のインシュリン%CR1hを有し、そのレベルは、PLL修飾小球体よりも少なく、その間の差は一般的に20%から30%以上であった。
【0145】
%CR1hが50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、最も好ましくは20%未満であることが所望され得る場合、本発明の開示の予め形成された微粒子(例えば、非修飾インシュリン小球体)は、ある種の荷電化合物(例えば、プロタミン硫酸、PLA)を使用して、SNPcoreから離れた反応pHで表面修飾されてよい。%CR1hが50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、最も好ましくは75%以上であることが所望され得る場合、本発明の開示の予め形成された微粒子(例えば、非修飾インシュリン小球体)は、ある種の荷電化合物(例えば、PLL)を使用して、SNPcoreに近い反応pHで表面修飾されてよい。
【0146】
(実施例15)
表面修飾核酸小球体
核酸小球体は、全体を参照によって本明細書に組み込んだ米国特許出願公開第2006−0018971号および第2006−0024240号の開示によって形成された。小球体それぞれは、CD40siRNAを少なくとも80重量%(例えば、85重量%から90重量%)およびポリ−l−リシンを15重量%以下(例えば、6重量%から10重量%)含有する均一な混合物を有する。この核酸小球体を、ローダミンB標識PLL(70kD)1mg/mlを含有し、ヌクレアーゼを含まない脱イオン水(pH7.0)100μlに懸濁した。この懸濁液を撹拌しながら4℃で45分間インキュベートして、表面修飾小球体を形成し、次に、ヌクレアーゼを含まない脱イオン水(pH7.0)で遠心によって洗浄した。非修飾小球体および表面修飾小球体のゼータ電位は、それぞれ−24mVおよび34mVであることが測定された。明らかに、ポリカチオン単層の形成による核酸小球体の表面修飾は、表面の電気的荷電を逆転させることができる。ローダミンB標識PLLのレーザー走査共焦点顕微鏡写真を図27に示すが、核酸小球体の外面に単層がうまく形成されていることが確認される。
【0147】
(実施例16)
表面修飾微粒子の熱処理
本明細書で開示した通りの制御された相分離によって形成されたものなどの予め形成された非修飾インシュリン小球体(12mg)を、PEG16%(w/v)、NaCl0.7%(w/v)および酢酸ナトリウム67mMを含有するpH7.0の緩衝液1.5mlに4℃で懸濁した。濃度6mg/mlで、同一緩衝液に溶解したポリカチオン(ProtS、PLLまたはPLA)の水溶液1.5mlをこの懸濁液と混合すると、小球体濃度4mg/mlおよびポリカチオン濃度3mg/mlを有する反応混合物が生じた。この反応混合物を4℃で継続的に攪拌しながら30分間インキュベートして、それぞれポリカチオン単層を備えた表面修飾インシュリン小球体を形成した。次に、この反応混合物をさらに30分間、温度4℃、15℃、28℃または37℃でインキュベートした。次いで、熱処理インシュリン小球体を遠心(3000rpm、4℃で10分間)によって収集し、pH7.0の新鮮な緩衝液の一部で4℃で3回洗浄した。熱処理した表面修飾インシュリン小球体のゼータ電位データおよびin vitro放出プロファイルは、本明細書で前述した通りに作製された。
【0148】
予期せぬことに、前述したある種の熱処理(例えば、15℃、28℃または37℃の温度でのインキュベートであるが、それだけに限定はされない)は、それらのその他の特性(例えば、粒径、長時間にわたる放出相)に悪影響を及ぼすことなく表面修飾微粒子のある種の特性(例えば、ゼータ電位および放出プロファイル)を選択的および特異的に改変することができた。図28に例示したように、前述のような様々な高温でインキュベートすると、ポリカチオン修飾インシュリン小球体からのインシュリン初期放出の様々なレベルが生じ(15℃でインキュベートした後よりも、28℃でインキュベートした後の方がインシュリン%CR1hは低い)、高くない温度(すなわち、4℃)でインキュベートした後よりも一貫して下回っている。
【0149】
表2に例示したように、熱処理した、表面修飾微粒子のin vitro放出プロファイルにおける初期放出または「バースト」相は、%CR1hで表すと、熱処理を受けていない表面修飾微粒子(例えば、第2の温度4℃でインキュベートしたもの)と比較して減少していた。熱処理した表面修飾微粒子からin vitroにおいて放出された活性薬剤の%CR1hの減少量は、対照に対して、10%以上、例えば、15%以上、25%以上または40%以上であることができる。
【0150】
【表2】
インシュリンのin vitro放出の初期放出相に対する(28℃での)熱処理の減少効果は、前記で試験したポリカチオンにおいて一貫して認められた。予期せぬことに、様々なポリカチオンがインシュリンの初期放出に対して様々なレベルの抑制を発揮した。図26および28に示したように、また表3にまとめて示したように、本発明の開示のPLA修飾インシュリン小球体で認められた減少効果は、PLL修飾インシュリン小球体におけるよりも大きく、一方ProS修飾インシュリン小球体で認められた減少効果は、PLL修飾インシュリン小球体におけるよりも小さい。
【0151】
【表3】
(実施例17)
表面修飾微粒子の熱処理
本明細書で開示したような制御された相分離法によって形成されたものなどの予め形成されたの非修飾hGH小球体に、実施例16で記載したのと同様の熱処理を行った。熱処理した表面修飾hGH小球体のゼータ電位データおよびin vitro放出プロファイルは、本明細書で前述した通りに作製された。表4に示したように、28℃でインキュベーションした後の表面修飾hGH小球体の%CR1hは、4℃でインキュベーションした後の表面修飾hGHと同程度に減少した。
【0152】
【表4】
(実施例18)
熱処理した表面修飾微粒子のin vivoでの効果
非修飾インシュリン小球体を、本明細書で開示した制御された相分離法を使用して調製した。非修飾インシュリン小球体の2つの部分をPLAで表面修飾し、実施例16で記載した方法に従って、1つの部分を(28℃で)熱処理し、もう1つの部分を対照として4℃でインキュベートした。緩衝液(PEG16%(w/v)、NaCl0.7%(w/v)、pH7.0)に懸濁した3種類の異なるインシュリン小球体の1種類をそれぞれ含有する注射用組成物を調製した。組成物を正常なスプラーグドーリーラットに4IU/kgの用量で皮下投与した。収集した試料中のインシュリン血清レベルを測定するために、ELISA測定法を使用した。結果を表5および図29Aおよび29Bに示す。図29Aに示したように、CR1hは同様に熱処理後に減少した。
【0153】
4℃で処理したPLA修飾インシュリン小球体は、同程度の血清インシュリン濃度プロファイル、血清グルコース抑制プロファイル、Cmaxおよびtmaxを示した。相対的に、28℃で処理したPLA修飾インシュリン小球体は、平坦で、右に偏った血清インシュリン濃度プロファイル、右に偏った血清グルコース抑制プロファイル、Cmaxの減少およびtmaxの延長を示した。
【0154】
【表5】
図29Aは、コーティングされていないインシュリン小球体、28℃で処理されたPLA修飾インシュリン小球体、または4℃で処理されたPLA修飾インシュリン小球体の皮下注射を1回受けたラットにおける血清インシュリン濃度対時間プロファイルを示した図である(実施例18)。
【0155】
図29Bは、コーティングされていないインシュリン小球体、28℃で処理されたPLA修飾インシュリン小球体、または4℃で処理されたPLA修飾インシュリン小球体の皮下注射を1回受けたラットにおける血清グルコース抑制対時間プロファイルを示した図である(実施例18)。
【0156】
本明細書で開示した実施形態は、開示の態様の単なる例示に過ぎず、様々な異なる形態で実施することが可能であることを理解されたい。したがって、本明細書で開示した具体的な詳細および好ましい実施形態は、制限するものとして解釈すべきではなく、単に、特許請求の範囲のための基準、および任意の適切な方法で本明細書で開示した対象物を様々に使用するために当業者を教示するための代表的な基準である。記載された実施形態は、本発明の開示の原則の適用のいくつかを例示しており、個々に開示した、または本明細書で請求した特性の組合せを含む変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、本発明の開示で記載した例示的方法を示す流れ図である。
【図2】図2は、予め形成された微粒子上の荷電化合物の単層の作製の概略図である。
【図3】図3は、交互に荷電した単層を備えたインシュリン微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例1Aおよび1B)。
【図4】図4は、それぞれが、様々なポリアニオン性化合物の1単層を備えたインシュリン微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例2A)。
【図5】図5は、それぞれが、様々なポリカチオン性化合物の1単層を備えたインシュリン微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例2B)。
【図6】図6は、1層のFITC標識プロタミン単層を備えたインシュリン微粒子のレーザー走査共焦点(LCS)顕微鏡写真を示した図である(実施例2B)。
【図7】図7は、それぞれが、異なるポリアニオン性化合物の第1単層およびポリ−L−リシンの第2単層を備えたインシュリン微粒子の表面の電気的荷電変化を示した図である(実施例3A)。
【図8】図8は、PSSの第1単層およびFITC−標識PLLの第2単層を備えたインシュリン微粒子のLSC顕微鏡写真を示した図である(実施例3A)。
【図9】図9は、交互に荷電した高分子電解質単層(例えば、PLLおよびコンドロイチン硫酸)をQCM電極上にそれぞれ逐次沈着した後の漸増するフィルム厚を示した図である(実施例3A)。
【図10】図10は、コンドロイチン硫酸単層およびゼラチンA単層を次々と沈着した後のインシュリン微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例3B)。
【図11】図11は、PEG含有反応媒体中における、亜鉛カチオンの存在下および非存在下での、プロタミン硫酸およびコンドロイチン硫酸の単層を備えたインシュリン微粒子のゼータ電位を比較した図である(実施例4A)。
【図12】図12は、PEGを含有しない反応媒体中における、亜鉛カチオンの存在下での、プロタミン硫酸およびコンドロイチン硫酸の単層を備えたインシュリン微粒子のゼータ電位を示した図である(実施例4B)。
【図13】図13は、ローダミンB標識プロタミンの1単層(左上)およびFITC標識DAPの1単層(右上)を備えたインシュリン微粒子のLSC顕微鏡写真を示した図である(実施例5)。
【図14】図14は、実施例5で説明したような各単層沈着後のインシュリン微粒子のゼータ電位を示した図である。
【図15】図15は、様々な濃度のポリカチオンを有するプロタミン硫酸の単層でコーティングされた微粒子からの反応媒体中におけるインシュリン放出プロファイルを示した図である(実施例6)。
【図16】図16は、プロタミン硫酸の第1単層および様々な濃度のポリアニオンのカルボキシメチルセルロースの第2単層を備えた微粒子の反応媒体中におけるインシュリン放出プロファイルを示した図である(実施例7)。
【図17】図17は、3種の単層でコーティングされたインシュリン微粒子のインシュリン放出プロファイルを示した図である(実施例7)。
【図18A】図18Aは、コーティングされていない微粒子またはプロタミンコーティングされたインシュリン微粒子の皮下注射を1回受けたラットにおける、血清ヒトインシュリン(hINS)濃度対時間プロファイルを示した図である(実施例8)。
【図18B】図18Bは、コーティングされていないインシュリン微粒子またはプロタミンコーティングされたインシュリン微粒子の皮下注射で1回処置されたラットにおける、血清グルコース抑制対時間プロファイルを示した図である実施例8)。
【図19】図19は、pH7.0の様々な溶解度抑制媒体において、プロタミンの1単層を沈着したことによる、インシュリン微粒子の表面電荷の変化を示した図である(実施例9)。
【図20A】図20Aは、反応媒体中のプロタミン濃度の、インシュリン微粒子の表面電荷およびin vitro放出の開始から48時間後の分解程度に対する効果を示した図である(実施例10)。
【図20B】図20Bは、反応媒体中のCMC濃度の、プロタミンコーティングされたインシュリン微粒子の表面電荷およびin vitro放出の開始から48時間後の分解程度に対する効果を示した図である(実施例10)。
【図20C】図20Cは、反応媒体中のプロタミン濃度の、プロタミンの1単層およびCMCの1単層でコーティングされたインシュリン微粒子の表面電荷およびin vitro放出の開始から48時間後の分解程度に対する効果を示した図である(実施例10)。
【図21A】図21Aは、プロタミン硫酸およびコンドロイチン硫酸単層で次々と沈着した後のhGH微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例11)。
【図21B】図21Bは、プロタミンおよびコンドロイチン硫酸が交互になった1、2または3層の単層でコーティングされた微粒子からのhGH放出のプロファイルを示した図である(実施例11)。
【図22】図22は、コンドロイチン硫酸およびプロタミン硫酸単層で次々と沈着した後の静注用イムノグロブリン(IVIG)微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例12)。
【図23】図23は、pH範囲4から7.5までの16%PEG溶液におけるインシュリン小球体の正味表面電荷特性を示した図である(実施例13)。
【図24】図24は、本発明の開示で記載した微粒子を調製する他の例示的方法を示す流れ図である。
【図25】図25は、プロタミン硫酸、ポリ−l−リシンまたはポリ−l−アルギニンの1単層で表面修飾されたインシュリン微粒子のゼータ電位に対する反応pHの効果を示した図である(実施例14)。
【図26】図26は、プロタミン硫酸、ポリ−l−リシンまたはポリ−l−アルギニンの1単層で表面修飾されたインシュリン微粒子のin vitroでの1時間累積インシュリン放出率に対する反応pHの効果を示した図である(実施例14)。
【図27】図27は、ローダミンB標識ポリ−l−リシンの1単層で表面修飾された核酸微粒子のレーザー走査共焦点(LCS)顕微鏡写真を示した図である(実施例15)。
【図28】図28は、様々な温度で熱処理したPLL−インシュリン微粒子のin vitroでの放出プロファイルを示した図である。
【図29A】図29Aは、コーティングされていないインシュリン微粒子、28℃で処理したPLA修飾インシュリン微粒子および4℃で処理したPLA修飾インシュリン微粒子の皮下注射を1回受けたラットにおける血清インシュリン濃度対時間プロファイルを示した図である(実施例18)。
【図29B】図29Bは、コーティングされていないインシュリン微粒子、28℃で処理したPLA修飾インシュリン微粒子および4℃で処理したPLA修飾インシュリン微粒子の皮下注射を1回受けたラットにおける血清グルコース抑制濃度対時間プロファイルを示した図である(実施例18)。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2005年4月27日に出願した米国仮特許出願第60/675,352号および2005年12月6日に出願した米国仮特許出願第60/750,903号の利益を主張する。
【0002】
(分野および背景)
本発明の開示は一般的に、1種または複数の活性薬剤を含有する微粒子およびこのような微粒子の対象への送達方法を対象とする。より具体的には、本発明の開示は、1種または複数の活性薬剤を制御放出できるような、微粒子の表面修飾を対象とする。本発明の開示はさらに、このような表面修飾微粒子の製造方法および使用方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
微粒子は、活性薬剤の制御された送達および/または放出を含めた多種多様な用途に使用されてきた。活性薬剤の放出特性を制御するか、または変更することによって、所望するならば、受容者の血流における活性薬剤のレベル(例えば、治療レベル)を持続させ、薬物動態および薬物力学を改善し、その結果受容者により便利さをもたらすことができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
本発明の開示は一般的に、表面修飾微粒子の調製方法を対象とする。一例として、この方法は、少なくとも1種の活性薬剤を含む、アモルファスおよび固体の予め形成された微粒子を提供することを含む。この予め形成された微粒子は、正味表面電荷を帯びた外面を備えている。この方法はさらに、予め形成された微粒子の少なくとも外面を、予め形成された微粒子の外面の正味表面電荷とは反対の符号である正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露することを含む。この荷電化合物の単層が形成され、それによってこの単層は予め形成された微粒子の外面と結合する。
【0005】
本発明の開示はまた、溶媒、少なくとも1種の活性薬剤および1種または複数の相分離増強剤を含有する液体連続相系を提供することを含む、表面修飾微粒子の調製方法を対象とする。この方法は、液相−固相分離を、場合によって液相−固相分離を引き起こすために制御された速度で誘導すること、ならびに溶媒および相分離増強剤を液相に保持しながら、活性薬剤、正味表面電荷を帯びた外面を備えた微粒子を含有する固体およびアモルファスの微粒子を含む固相を形成することを含む。微粒子を形成した後、予め形成された微粒子の少なくとも外面を、微粒子外面の正味表面電荷と反対の符号である正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露する。この方法はさらに、形成された微粒子上に少なくとも1種の荷電化合物を含む単層を形成し、それによって形成された単層が微粒子外面と結合することを含む、単層の形成を含む。
【0006】
本発明の開示はまた、少なくとも1種の活性薬剤を含むアモルファスおよび固体の予め形成された微粒子を提供することを含む表面修飾微粒子の調製方法であって、この予め形成された微粒子が正味表面電荷を帯びた外面を備えている方法を対象とする。この例では、この方法はさらに、予め形成された微粒子の少なくとも外面を、予め形成された微粒子の正味表面電荷と反対の符号である正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露することを含む。予め形成された微粒子および少なくとも1種の荷電化合物を含む形成された単層を含み、この形成された単層が予め形成された微粒子外面と結合している、中間体微粒子が形成される。この形成された単層は次に、中間体微粒子および少なくとも1種の異なる荷電化合物を含む次の単層を含む表面修飾微粒子を形成するために、少なくとも1種の異なる荷電化合物に曝露される。この表面修飾微粒子は、中間体微粒子の放出プロファイルとは異なる、少なくとも1種の活性薬剤の放出プロファイルを有する。
【0007】
本発明の開示はまた、少なくとも1種の活性薬剤を80重量%以上含む固体、アモルファスコア微粒子を含む微粒子を対象とする。コア微粒子の外面は、選択された正味表面電荷を帯びている。結合を可能にするために、コア微粒子外面の表面電荷と十分異なる正味表面電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物の単層は、限定はしないが、少なくとも外面との静電的相互作用によってコア微粒子外面と結合する。
【0008】
少なくとも1種の活性薬剤を少なくとも80重量%含み、微粒子の外面が活性薬剤と結合した少なくとも1種の荷電化合物を含む固体微粒子は、適切な緩衝液中で、選択されたpHおよび温度で、in vitro放出させると、活性薬剤の1時間累積放出率50%以下を示すことができる。
【0009】
さらに、予め形成された微粒子の外面がタンパク質性化合物と結合する少なくとも1種の荷電化合物を有する、少なくとも1種のタンパク質性化合物を少なくとも80重量%有する固体の予め形成された微粒子は、in vivo投与に適している。このような投与では、この微粒子は、コア微粒子のCmaxおよびtmaxとは異なるCmaxおよびtmaxを提供する。
【0010】
前述の微粒子、その微粒子の製造方法およびこの微粒子からの活性薬剤の放出の制御方法をさらに以下に詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(詳細な説明)
本明細書で特に定義しなければ、本発明の開示で使用した科学的および技術的用語は、当業者によって通常理解され、使用される意味を有する。特に内容的に必要ない場合は、単数形の用語はその複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものと理解される。特に、本明細書および特許請求の範囲で使用したように、単数形「a」および「an」は、明白にその他の場合を指示しない限り、複数形を含む。したがって、例えば、特定の微粒子について言及する場合、当業者に公知のそれらの同等物を含めた単一のこのような微粒子または複数のこのような微粒子について言及している。また、本明細書および特許請求の範囲で使用したように、「少なくとも1つ」および「1つまたは複数の」という用語は、同じ意味を有し、1つ、2つ、3つ以上を含む。以下の用語は、特に指示がなければ、本発明の開示の場合で使用したとき、以下の意味を有するものと理解される。
【0012】
「活性薬剤」とは、in vitroおよび/またはin vivoにおいて、1種または複数の物理的、化学的および/または生物学的効果を直接的または間接的に惹起することができる、天然に生じる、合成、または半合成物質(例えば、化合物、発酵物、抽出物、細胞構造物)のことである。この活性薬剤は、例えば、寄生生物を駆除するか、あるいは宿主または寄生生物の生理機能を著しく変更して疾患または異常の影響を制限することによって、生体の異常状態および/または病的状態を予防、軽減、治療および/または治癒できることがある。この活性薬剤は、生理学的な生体機能を維持、増強、減少、制限または破壊できることがある。この活性薬剤は、in vitroおよび/またはin vivo試験によって、生理学的症状または状態を診断できることがある。この活性薬剤は、動物または微生物を攻撃、無力化、阻害、死滅、変更、忌避および/または阻害することによって、環境または生体を制御または防御できることがある。この活性薬剤は、他の場合では、生体を処置(例えば、脱臭、保護、装飾、手入れ)できることがある。効果および/またはその適用に応じて、この活性薬剤はさらに、生物活性剤、医薬品(例えば、予防薬、治療薬)、診断薬、栄養補給剤、および/または化粧品と称することができ、限定はしないが、プロドラッグ、親和性分子、合成有機分子、重合体、分子量2kD以下の分子(例えば、1.5kD以下、または1kD以下)、高分子(例えば、分子量2kD以上、好ましくは、5kD以上の分子)、タンパク質性化合物、ペプチド、ビタミン、ステロイド、ステロイド類似体、脂質、核酸、炭水化物、それらの前駆体およびそれらの誘導体を含む。活性薬剤は、イオン性または非イオン性であってよく、中性、正に荷電されているか、負に荷電されているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。活性薬剤は水不溶性であってよいが、より好ましくは水溶性である。活性薬剤は、等電点が7.0以上であってよいが、好ましくは7.0未満である。
【0013】
「微粒子」は、幾何学的平均粒径(時々、直径のことである)が1mm未満、好ましくは200ミクロン未満、より好ましくは100ミクロン未満、最も好ましくは10ミクロン未満である固形(実質的固形または半固形を含むが、ゲル、液体および気体を除く)である粒子のことである。一例では、粒径は、0.01ミクロン以上、好ましくは0.1ミクロン以上、より好ましくは0.5ミクロン以上、最も好ましくは0.5ミクロンから5ミクロンであってよい。幾何学的平均粒径は、動的光散乱法(例えば、光相関分光法、レーザー回折法、低角度レーザー光散乱法(LALLS)、中角度レーザー光散乱法(MALLS))、光遮蔽法(例えば、Coulter分析法)またはその他の方法(例えば、流体力学、光学または電子顕微鏡)によって測定することができる。肺送達用粒子は、飛行時間型測定法またはAnderson Cascade Impactor測定法によって測定された空気力学粒径を有する。微粒子は、球体(小球体と称することもある)であってよく、および/またはカプセル化(時々、ミクロカプセルと称する)されていてよい。ある種の微粒子は、1個または複数の内部空隙および/または空洞を有してよい。その他の微粒子は、このような空隙または空洞を有さなくてよい。微粒子は、多孔性、または、好ましくは非多孔性であってよい。微粒子は、部分的に、または全体的に、本明細書で開示する活性薬剤、担体、重合体、安定化剤、および/または複合体形成剤などの1種または複数の非限定的物質から形成することができる。
【0014】
「ペプチド」とは、少なくとも部分的に、2種以上の同一または異なるアミノ酸および/またはイミノ酸から形成された天然、合成、または半合成化合物のことである。ペプチドの非限定的例には、オリゴペプチド(例えば、ジペプチドおよびトリペプチドなどを含む、アミノ/イミノ酸単量体単位50個未満のもの)、ポリペプチド、本明細書で定義したようなタンパク質性化合物、ならびにそれらの前駆体および誘導体(例えば、グリコシル化、高グリコシル化、PEG化、FITC標識、それらの塩)が含まれる。ペプチドは、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。ペプチドは、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
「タンパク質性化合物」とは、タンパク質の天然、合成、半合成または組換え化合物、あるいはタンパク質に構造的および/または機能的に結合した化合物、例えば、ペプチド結合によって共有結合したαアミノ酸を含有するか、本質的にそれらから構成されるもののことである。非限定的なタンパク質性化合物には、球形タンパク質(例えば、アルブミン、グロブリン、ヒストン)、繊維性タンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチン、ケラチン)、化合物タンパク質(1種または複数の非ペプチド成分を含有するもの、例えば、糖タンパク質、核タンパク質、ムコタンパク質、リポタンパク質、金属タンパク質)、治療用タンパク質、融合タンパク質、受容体、抗原(例えば、合成または組換え抗原)、ウイルス表面タンパク質、ホルモンおよびホルモン類似体、抗体(例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体)、酵素、Fab断片、環状ペプチド、線状ペプチドなどが含まれる。非限定的な治療用タンパク質には、骨形態形成タンパク質、薬剤耐性タンパク質、トキソイド、エリスロポエチン、血液凝固カスケードのタンパク質(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子など)、サブチリシン、卵白アルブミン、アルファ−1−アンチトリプシン(AAT)、DNアーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、ヒト成長ホルモン(hGH)、エリスロポエチン、インシュリンおよびインシュリン様成長因子または類似体、インターフェロン、グラチラマー、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、デスモプレシン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト(例えば、リュープロリド、ゴセレリン、ブセレリン、ゴナドレリン、ヒストレリン、ナファレリン、デスロレリン、フェルチレリン、トリプトレリン)、LHRH遮断薬、バソプレッシン、シクロスポリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモンペプチド、インシュリン、グルカゴン様ペプチド、およびそれらの類似体が含まれる。タンパク質性化合物は、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
「核酸」とは、少なくとも部分的に、2種以上の同一または異なるヌクレオチドから形成された天然、合成、半合成または組換え化合物のことであり、1本鎖または2本鎖であってよい。核酸の非限定的な例には、オリゴヌクレオチド(センス、アンチセンス、またはミスセンスなどの塩基対20対以下のもの)、アプタマー、ポリヌクレオチド(例えば、センス、アンチセンスまたはミスセンス)、DNA(例えば、センス、アンチセンス、またはミスセンス)、RNA(例えば、センス、アンチセンス、またはミスセンス)、siRNA、ヌクレオチド酸構築物、それらの1本鎖または2本鎖部分、ならびにそれらの前駆体および誘導体(例えば、グリコシル化、高グリコシル化、PEG化、FITC標識、ヌクレオシド、それらの塩)が含まれる。核酸は、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
「炭水化物」とは、少なくとも部分的に単量体糖単位から形成された天然、合成、または半合成化合物のことである。非限定的な炭水化物には、多糖、糖、澱粉およびセルロース、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ヘタスターチ、シクロデキストリン、アルギン酸塩、キトサン、コンドロイチン、ヘパリン、ならびにそれらの前駆体および誘導体(例えば、グリコシル化、高グリコシル化、PEG化、FITC標識、それらの塩)が含まれる。炭水化物は、イオン性、または非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単一で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
「脂質」とは、一般的に両親媒性である天然、合成、または半合成化合物のことである。この脂質は通常、親水性成分および疎水性部分を含む。非限定的例には、脂肪酸、中性脂肪、ホスファチド、油、糖脂質、界面活性剤、脂肪族アルコール、蝋、テルペンおよびステロイドが含まれる。脂質は、イオン性または非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
「複合体形成剤」とは、活性薬剤と1種または複数の非共有結合を形成することができる物質のことである。このような結合によって、複合体形成剤は、微粒子への1種または複数の活性薬剤の添加を促進し、微粒子内で活性薬剤を保持し、および/または、その他では、微粒子からの活性薬剤の放出を変更することを可能にする。複合体形成剤は、イオン性または非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
特に薬剤(例えば、化合物)、プロセス、条件と組み合わせて使用される「安定化」とは、少なくとも部分的に、微粒子(またはこのような微粒子を含有する組成物または製剤またはキット)を形成し、それらの形成を促進し、および/またはそれらの安定性(例えば、破壊、分解、減成などに対する耐性の増強のような比較的平衡化した条件の維持)を増強するこのような薬剤、プロセスまたは条件の能力のことである。非限定的な安定化プロセスまたは条件には、吸熱/放熱(例えば、加熱、冷却)、電磁波照射(例えば、ガンマ線、X線、UV、可視光、化学線、赤外線、マイクロ波、ラジオ波)、高エネルギー粒子照射(例えば、電子ビーム、核エネルギー)、および超音波照射が含まれる。非限定的安定化剤には、脂質、タンパク質、重合体、炭水化物、界面活性剤、塩(例えば、単価もしくは多価、金属、有機、または有機金属であるカチオン、および単価もしくは多価、有機、無機、または有機金属であるアニオンとの有機塩、無機塩)ならびにある種の担体、活性薬剤、架橋結合剤、助剤および本明細書で開示した複合体形成剤が含まれる。安定化剤は、イオン性または非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
「高分子」とは、3次元(例えば、3要素および/または4要素)構造をもたらすことができる物質のことであり、担体および本発明の開示のある種の活性薬剤を含む。微粒子を形成するために使用される非限定的な高分子には、特に、重合体、共重合体、タンパク質(例えば、酵素、組換えタンパク質、ヒト血清アルブミンなどのアルブミン)、ペプチド、脂質、炭水化物、多糖類、核酸、ベクター(例えば、ウイルス、ウイルス粒子)、それらの複合体およびコンジュゲート(例えば、炭水化物−タンパク質コンジュゲートのように2種の高分子の間、ハプテン−タンパク質コンジュゲートのように活性剤と高分子との間の共有結合および/または非共有結合による、活性薬剤は、3要素および/または4要素構造を有することができてもよいし、できなくてもよい)および好ましくは分子量が1500以上であるそれらの2種以上の混合物が含まれる。高分子は、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性であってよく、単独で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
「球体」とは、少なくとも「実質的に球体」である幾何学的形状を意味する。「実質的に球体」とは、最長距離(すなわち、外周の2点の間の距離であって、その形の幾何学的中心を通過する距離)の、幾何学的中心を通過するいかなる横断面上の最短距離に対する比が、約1.5以下、好ましくは約1.33以下、より好ましくは1.25以下であることを意味する。球体は対称である必要はない。さらに、微粒子は表面テクスチャリング(例えば、微粒子の全体の大きさと比較したとき、規模が小さい、連続線または不連続線、島、格子、ギザギザ、チャンネル開口、隆起)を有していてよく、それでも球体であってよい。球体の微粒子では、間の表面接触は最小限であり、微粒子の所望しない凝集を最小限に抑える。それに比べて、結晶または薄片の微粒子は通常、比較的大きくて平坦な表面で、イオン性および/または非イオン性の相互反応によって、著しい凝集を示す。
【0023】
「単分散性粒径分布」とは、10パーセンタイルの体積粒径(すなわち、微粒子の最小10%の平均粒径)に対する90パーセンタイルの体積粒径(すなわち、微粒子の最大10%の平均粒径)の比が、約5以下、好ましくは約3以下、より好ましくは約2以下、最も好ましくは約1.5から1である、微粒子の好ましい粒径分布のことである。したがって、「多分散性粒径分布」とは、前記の粒径比が5を上回り、好ましくは8を上回り、より好ましくは10を上回ることである。多分散性粒径分布の微粒子では、大きい微粒子の間の空隙に小さな微粒子が入り込み、したがって、おそらく間の大きな接触表面および著しい凝集を示すだろう。2.5以下、好ましくは1.8以下の幾何学的標準偏差(GSD)も、単分散性粒径分布を示すために使用することができる。GSDの計算は、当業者には公知で、理解されている。
【0024】
「アモルファス」とは、「実質的にアモルファス」である物質および構造物、例えば、複数の非結晶性ドメインを有する(または、結晶性が全く欠如している)微粒子、または、そうでなければ非結晶性の微粒子のことである。本発明の開示の実質的にアモルファスである微粒子は一般的に、結晶格子が微粒子の体積および/または重量の50%未満を構成するか、または存在していない無秩序な固体の粒子であり、当業者が理解する通りの半結晶性微粒子および非結晶性微粒子を含む。
【0025】
「固体」とは、少なくとも実質的に固体および/または半固体を含むが、ゲル、液体および気体は除く。
【0026】
「予め形成された微粒子」とは、当業者に公知の方法など、1種または複数の非限定的な方法を使用して製造された、本明細書で記載したような表面修飾を有さない、外面に正、負または中性の正味表面電荷を有する、または有することができる微粒子のことである。予め形成された微粒子はまた、本明細書では「コア微粒子」または「コア」と呼ばれる。予め形成された微粒子またはコア微粒子は通常、1種または複数の活性薬剤および、場合によって、独立して、予め形成された微粒子、またはコア微粒子の一部に区分することができるか、または好ましくは予め形成された微粒子全体に実質的に均一に分布することができる1種または複数の担体を含む。好ましくはゼロではない正味表面電荷は、主として、または少なくとも、実質的に、活性薬剤および/または、場合によって担体によって影響を受け得る。
【0027】
「担体」とは、3次元構造(3要素および/または4要素構造を含む)を提供するために主要な機能を有する化合物、通常高分子のことである。担体は、前述のような微粒子の形成において、活性薬剤(例えば、それらのコンジュゲートまたは複合体)と結合しないか、または結合してよい。担体はさらに、その他の機能をもたらすことができ、例えば、活性薬剤であることができ、微粒子からの活性薬剤の放出プロファイルを変更することができ、および/または微粒子に(例えば、正味表面電荷に少なくとも部分的に関与する)1種または複数の特定の特性を付与することができる。一例では、この担体は、分子量1500ダルトン以上のタンパク質(例えば、アルブミン、好ましくはヒト血清アルブミン)である。
【0028】
「重合体」または「重合体の」とは、主鎖または環構造に2種以上の反復単量体単位を有する天然、合成、または半合成分子のことである。重合体には、広義には、2量体、3量体、4量体、オリゴマー、高分子量重合体、付加物、ホモポリマー、ランダムコポリマー、擬コポリマー、統計コポリマー、交互コポリマー、周期コポリマー、2元重合体、3元重合体、4元重合体、その他の形態のコポリマー、それらの置換誘導体、およびそれらの混合物が含まれ、狭義には、10個以上の反復単量体単位を有する分子のことである。重合体は、線状、分枝状、ブロック、グラフト、単分散、多分散、規則性、不規則性、タクチック、イソタクチック、シンジオタクチック、立体規則性、アタクチック、ステレオブロック、1本鎖、2本鎖、星形、櫛形、樹枝状、および/またはイオノマーであってよく、イオン性、非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性イオンであってよく、単独で、もしくはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
「懸濁」または「分散」とは、2種以上の相(例えば、固体、液体、気体)の好ましくは超微粒子状の混合物のことで、例えば、液体中における固体、液体中における液体、液体中における気体、固体中における固体、気体中における固体、気体中における液体などである。懸濁または分散は、時間(例えば、分、時間、日、週、月、年)を延長しても安定に維持されることが好ましい。
【0030】
「再懸濁」とは、微粒子の特性のほとんどまたは全てを維持しながら、流動性を有する媒体(例えば、液体)を添加することによって、流動性を有さない状態(例えば、固体)から流動性を有する状態(例えば、液体)に微粒子を変化させることである。液体は、例えば、水性、水混和性、または有機性であってよい。
【0031】
「荷電した」および「電気的に荷電した」とは交換可能で、同一または反対の符号の電気的な荷電の1個、2個、3個以上の形式単位を提供する能力、および/またはこのような荷電の存在のことである(すなわち、「荷電した」とは、荷電可能な、および/または荷電していることを意味する)。電気的な荷電は、好ましくはある種の条件に置かれたとき(例えば、溶液中または懸濁液中において)、化合物(例えば、高分子電解質、タンパク質)または関心のある構造物(例えば、予め形成された微粒子、単層)中において、1種または複数の同一または異なる有機および/または有機金属部分(例えば、イオン基、イオン化できる基、それらの前駆体)の形態で提供され、および/または存在することができる。
【0032】
「荷電化合物」および「電気的に荷電した化合物」とは交換可能で、前述のような荷電した単一の化合物、あるいはそれぞれが独立して、同一の符号の正味電荷を有する、および/または有することができる、結合していない、および/または結合した形態の2種以上の異なる化合物の組合せ(例えば、それらのコンジュゲート、集合体、および/または複合体)のことである。
【0033】
「単層」とは、1種または複数の化合物(例えば、前述のような荷電化合物)の組成物から3次元基質上に形成された単一の層のことである。単層は、連続した非多孔性単層、連続した多孔性単層(例えば、格子状の網)、複数の別個の要素の非連続的な単層(例えば、島、縞、塊など)、またはそれらの組合せであってよい。一般的に、単層は、分解可能または崩壊可能で、例えば、生分解性、酵素的または加水分解的に崩壊可能で、単層が沈着した活性薬剤の(微粒子からの)非拡散的放出を可能にする。この単層の厚さは、100nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは20nm以下、最も好ましくは10nm以下である。一例では、この単層は、荷電化合物の自己集合によって形成される。
【0034】
「飽和単層」とは、単層が形成されるのと同様の条件群に置かれたとき、過剰量の単層形成組成物をさらに累積的に組み入れることができない、前記で定義した通りの単層のことである。飽和単層は、表面修飾微粒子で使用した好ましい単層である。
【0035】
「正味電荷」および「正味電気的電荷」は交換可能に使用され、ある種の条件下で(好ましくは、あるpHの溶液中で)、流動性を有する媒体中などで、荷電化合物が有することができるか、または有する電気的電荷の形式単位全体の総和のことである。正味電荷は、正、負またはゼロ(例えば、両性イオン化合物)であってよく、条件(例えば、溶媒、pH)によって左右される。
【0036】
「正味表面電荷」および「正味表面電気的電荷」は交換可能に使用され、3次元構造(例えば、微粒子、単層)の最も外部の表面の累積的電気的電荷全体のことである。正味表面電荷は、正、負またはゼロであってよく、条件(例えば、溶媒、pH)によって左右される。
【0037】
「周囲温度」とは、室温に近い温度のことで、通常約20℃から約40℃の範囲である。
【0038】
「対象」または「患者」とは、ほ乳類などの脊椎動物を含む動物のことで、好ましくはヒトである。
【0039】
「対象の部位」とは、対象の局所的内部もしくは外部領域または部分(例えば、器官)、あるいは対象全体からの領域もしくは部分の収集物(例えば、リンパ球)のことである。このような部位の非限定的な例は、肺部位(例えば、肺、肺胞)、胃腸部位(例えば、食道、胃、小腸大腸および直腸によって定義される部位)、心血管部位(例えば、心筋組織)、腎臓部位(例えば、腎臓、腹部大動脈、および腎臓に、および腎臓から直接導かれる脈管構造によって定義される部位)、脈管構造(すなわち、血管、例えば、動脈、静脈、毛細血管など)、循環器系、健全または罹患組織、良性または悪性(例えば、腫瘍または癌)組織、リンパ球、受容体、器官など、ならびに画像診断法によって映された部位、活性薬剤を投与された、および/または処置された部位、活性薬剤の送達の標的となる部位、および高温部位が含まれる。
【0040】
「治療」とは、対象における不調、苦痛、疾患または傷害の治療(予防、診断、軽減、抑制、緩解または治癒を含む)に有用な任意の医薬品、薬物、予防薬、造影剤または色素のことである。治療的に有用なペプチドおよび核酸は、「医薬品」または「薬物」という用語の意味の中に含めることができる。
【0041】
「親和性分子」とは、in vivoにおける部位、および/またはin vitroにおける組織/受容体の結合および/または標的化を促進できる任意の材料または物質のことである。受容体および標的リガンドを含む親和性分子は、天然、合成、または半合成であってよく、またはイオン性、または非イオン性であってよく、中性、正に荷電しているか、負に荷電しているか、または両性イオンであってよく、単一で、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。非限定的な親和性分子には、タンパク質性化合物(例えば、抗体、抗体断片、ホルモン、ホルモン類似体、糖タンパク質およびレクチン)、ペプチド、ポリペプチド、アミノ酸、糖、糖類(例えば、単糖類、多糖類、炭水化物)、ビタミン、ステロイド、ステロイド類似体、補因子、活性薬剤、核酸、ウイルス、細菌、毒素、抗原、その他のリガンド、それらの前駆体およびそれらの誘導体が含まれる。
【0042】
「前駆体」とは、好ましくは、化学的および/または生化学的反応または経路によって、例えば、前駆体がある材料に固定されることによって、所望する材料または物質に変換されることができる材料または物質のことである。非限定的な前駆体部分には、マレイミド基、ジスルフィド基(例えば、オルト−ピリジルジスルフィド)、ビニルスルホン基、アジド基、およびα−ヨードアセチル基が含まれる。
【0043】
「誘導体」とは、好ましくは、当業者にとって通常と考えられる化学的および/または生化学的反応または経路によって、親材料または物質から形成される任意の材料または物質のことである。誘導体の非限定的な例には、グリコシル化、高グリコシル化、PEG化、FITC標識、保護基による保護(例えば、アルコールもしくはチオールにはベンジル、アミンにはt−ブトキシカルボニル)、ならびに、それらの塩、エステル、アミド、コンジュゲート、複合体、製造関連化合物および代謝物が含まれる。塩は、単価または多価、金属、有機、または有機金属であるカチオン、および単価または多価、有機、無機、または有機金属であるアニオンによって有機または無機であってよい。好ましい塩は、薬学的に許容され、限定はしないが、塩基性残基(例えば、アミン)の無機または有機酸塩、酸性残基(例えば、カルボン酸)のアルカリまたは有機塩など、例えば、非毒性無機酸(例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸)および有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸)から形成された親化合物の従来の非毒性塩または四級アンモニウム塩が含まれる。
【0044】
「類似体」とは、基本化合物または種類に特有の薬学的および/または薬理学的活性を保持した、基本化合物またはそれらの種類の化学的に変更された形態を有する化合物のことである。
【0045】
「プロドラッグ」とは、対象に投与されたとき、in vivoにおいて活性薬剤を放出する任意の共有結合担体のことである。プロドラッグは、活性薬剤の数多くの所望する性質(例えば、溶解性、生物学的利用性、製造性)を高めることが知られている。プロドラッグは、通常の操作で、またはin vivoにおいて修飾が除去され(例えば、修飾基が切断され)、元の活性薬剤が生じるように、活性薬剤に存在する官能基(例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、および/またはスルフヒドリル基)を修飾することによって、調製することができる。in vivoにおける変換は、例えば、いくつかの代謝プロセス、例えば、カルボン酸、リン酸または硫酸エステルの化学的または酵素的加水分解、あるいは感受性のある官能基の還元または酸化の結果であることができる。
【0046】
「代謝物」とは、化合物の投与形態に対する体の作用によって、対象の体内で得られる化合物の形態のことである。例えば、脱メチル化代謝物は、メチル基を有するメチル化化合物を投与した後、体内で得ることができる。代謝物は、それ自体生物学的活性、好ましくは治療活性を有することができる。
【0047】
「診断薬」とは、正常か、または異常な生物学的症状または状態を知覚的に確認する(例えば、画像診断する)ため、あるいは、病原体または病理状態の有無を検出するための方法と関連して有用な任意の材料または物質のことである。非限定的な診断薬には、放射線撮影(例えば、X線撮影)、超音波画像処理、核磁気共鳴画像処理、コンピュータ断層撮影、陽電子放射断層撮影画像処理などと関連して使用するための造影剤および色素が含まれる。診断薬にはさらに、画像処理法を使用しようとしなかろうと、in vivoおよび/またはin vitroにおける診断を容易にするために有用な任意のその他の薬剤が含まれる。
【0048】
「架橋結合する」、「架橋結合した」および「架橋結合」は一般的に、1種または複数の共有的および/または非共有的(例えば、イオン的)結合による、本明細書で開示したもののいずれかを含む2種以上の材料および/または物質の結合のことである。架橋結合は、天然に(例えば、シスチン残基のジスルフィド結合)または合成もしくは半合成経路によって、例えば、場合によって1種または複数の架橋結合剤(すなわち、架橋結合生成物Y−X−Zを形成するために、それ自体、2種以上の材料/物質YおよびZと反応することができる分子Xであり、Y−XおよびX−Zの結合は独立して共有結合性および/または非共有結合性である)、開始剤(すなわち、それ自体、架橋結合反応のために遊離ラジカルなどの反応種を提供することができる分子、例えば、有機過酸化物などの熱によって分解可能な開始剤、アゾ開始剤、および炭素−炭素開始剤、様々な波長の光開始剤などの化学線によって分解可能な開始剤)、活性化剤(すなわち、第1の材料/物質Yと反応して活性化中間体[A−Y]を形成することができ、次に第2の材料/物質Zと反応して架橋結合生成物Y−Zを形成することができる分子Aで、Aは過程中に化学的に変化するか、または消費される)、触媒(すなわち、過程中に化学的に変化しないで、架橋結合の反応速度を変更することができる分子)、助剤(すなわち、1種または複数の開始剤、活性化剤および/または触媒と一緒に存在すると架橋結合反応の反応速度を変更でき、および/または2種以上の材料/物質の架橋結合生成物に組み込まれるが、通常は材料/物質に非反応性である分子)、および/またはエネルギー源(例えば、加熱、冷却、電磁石、電子ビーム、および核などの高エネルギー照射、超音波などの聴放線)の存在下で実施することができる。
【0049】
「共有結合」とは、2個の原子の結合軌道において電子の共有が関与する2種以上の個々の分子の間の分子間相互作用(例えば、結合)のことである。
【0050】
「非共有結合」とは、共有結合が関与しない、2種以上の個々の分子の間の分子間相互作用のことである。分子間相互作用は、例えば、極性、電気的電荷、および/または個々の分子のその他の特性に左右され、限定はしないが、静電的(例えば、イオン的)相互作用、双極子相互作用、ファンデルワールス力およびそれらの2種以上の組合せを含む。
【0051】
「静電的相互作用」とは、2種以上の正または負に荷電した部分/群の間の分子内相互作用のことで、2つが反対に荷電しているとき(すなわち、一方が正で、もう一方が負である)、引きつけあうことができ、2つの荷電が同じ符号であるとき(すなわち、2つとも正であるか、2つとも負である)、反発することができ、またはそれらの組合せであってよい。
【0052】
「双極子相互作用」とは、2種以上の極性分子、例えば、電荷を持たないか、陽性に偏った末端δ+(例えば、ホスファチジルコリンのコリン頭部のような電気陽性頭部)を有する第1の分子と電荷を持たないか、陰性に偏った末端δ−(例えば、多糖のヘテロ原子O、NまたはSのような電気陰性原子)である第2の分子との間の分子間の引きつけあいのことである。双極子相互作用とはまた、水素原子が離れた分子の電気陰性原子との間の橋として役立ち、水素原子が共有結合によって第1の分子に結合し、静電力によって第2の分子に結合する分子間水素結合のことである。
【0053】
「水素結合」とは、第1の電気陰性原子(例えば、O、N、S)に共有的に結合した水素原子と第2の電気陰性原子との間の引力または橋のことであり、第1および第2の電気陰性原子は、2種の異なる分子中(分子間水素結合)または単一の分子中(分子内水素結合)にあってよい。
【0054】
「ファンデルワールス力」とは、量子力学によって説明される非極性分子間の引力のことである。ファンデルワールス力は一般的に、電子分布の変化を受けている近隣の分子によって導入された瞬間的な双極子モーメントに関連している。
【0055】
「親水性相互作用」とは、水分子に対する吸引力のことで、材料/化合物またはそれらの一部は、水と結合し、水を吸収し、および/または水に溶解することができる。これによって、膨潤および/または可逆的ヒドロゲルの形成が引き起こされ得る。
【0056】
「疎水性相互作用」とは、水分子に対する反発力のことで、材料/化合物またはそれらの一部は、水と結合せず、水を吸収せず、および/または水に溶解しない。
【0057】
「生体適合性」とは、一般的に生物学的機能に有害ではなく、許容できない毒性(例えば、アレルギー反応または疾患状態)を生じない材料/物質のことである。
【0058】
「に結合して」および「に結合した」とは、一般的に、様々な材料(通常微粒子の一部であるもの)、1種または複数のこのような材料および微粒子の1種または複数の構造物(またはそれらの一部)および微粒子の様々な構造物(またはそれらの一部)の間の1種または複数の相互作用、および/または組み込みのことである。微粒子の材料には、限定はしないが、本明細書で開示した単価および多価イオンなどのイオン、ならびに活性薬剤、安定化剤、架橋結合剤、荷電した、もしくは荷電していない化合物などの化合物、本明細書で開示した様々な重合体、およびそれらの2種以上の組合せが含まれる。微粒子の構造およびそれらの一部には、限定はしないが、コア、コア微粒子、予め形成された微粒子、単層、中間体微粒子、表面修飾微粒子、このような構造の一部(例えば、外面、内面)、このような構造およびそれらの一部の間のドメイン、およびそれらの2種以上の組合せが含まれる。可逆的または不可逆的、移動性または非移動性の様々な結合が単独で、またはそれらの2種以上の組合せで存在することができる。非限定的な結合には、限定はしないが、共有結合および/または非共有結合(例えば、共有結合、イオン性相互作用、静電的相互作用、双極性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、架橋結合および/またはその他の相互作用)、層/膜内へのカプセル化、中心または小胞または2種の層/膜の間の区画化、微粒子全体またはその一部における均一な統合(例えば、中心または層または小胞またはそれらの内面および/または外面への含有、接着、および/または付加、異なる材料間の分散、結合および/または複合)が含まれる。
【0059】
「組織」とは一般的に、特殊化され、1種または複数の特定の機能を遂行できる個々の細胞あるいは複数または集合した細胞のことである。非限定的な組織の例には、膜組織、(例えば、内皮、上皮)、血液、薄層、結合組織(例えば、腸管組織)、器官(例えば、心筋組織、心筋細胞(myocardial cell)、心筋細胞(cardiomyocyte)、異常細胞(例えば、腫瘍)が含まれる。
【0060】
「受容体」とは、細胞内またはその表面の分子構造のことで、一般的に特異的物質、例えば、リガンドの選択的結合を特徴とする。非限定的な受容体には、ペプチドホルモン、神経伝達物質、抗原、補体断片およびイムノグロブリンの細胞表面受容体、ならびにステロイドホルモンの細胞質受容体が含まれる。
【0061】
「制御放出」とは、天然型の活性薬剤の放出プロファイルと比較した、活性薬剤の予め測定されたin vivoおよび/またはin vitro放出(例えば、溶解)プロファイルのことである。活性薬剤は、放出反応速度の1種または複数の態様(例えば、初期バースト、特定の期間または相における量および/または速度、特定の期間における累積量、総放出時間の長さ、パターンおよび/またはプロファイルなど)が、増加、減少、短縮、延長および/または、他の方法で所望する通りに変更されるように、微粒子、または本明細書で開示したように、微粒子を含有する組成物または製剤と結合することが好ましい。制御放出の非限定的な例には、即時/瞬時放出(すなわち、初期バーストまたは迅速放出)、延長放出、持続放出、長期放出、遅延放出、変更された放出、および/または標的放出が含まれ、個々に、それらの2種以上を組み合わせて、またはそれらの1種または複数を含めずに(例えば、初期バーストのない延長または持続放出)行われる。
【0062】
「延長放出」とは、微粒子または、本明細書で開示したような、微粒子を含有する組成物または製剤と好ましくは結合した活性薬剤を、天然型の活性薬剤の自由な水拡散期間よりも長期間にわたって放出することを意味する。延長放出期間は、時間(例えば、少なくとも約1、2、5または10時間)、日(例えば、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20、30、40、45、60または90日)、週(少なくとも約1、2、3、4、5、6、10、15、20、30、40または50週)、月(少なくとも約1、2、3、4、6、9または12ヵ月)、約1年または数年、あるいは任意の2種の期間の間の範囲であってよい。延長放出のパターンは、連続的、断続的、孤発的、またはそれらの組合せであってよい。
【0063】
「持続放出」とは、活性薬剤の機能的に有意なレベル(すなわち、活性薬剤の所望する機能をもたらすことができるレベル)が延長放出期間の任意の時点において、好ましくは連続した、および/または均一な放出パターンで存在するように、活性薬剤を延長放出することである。持続放出プロファイルの非限定的な例には、放出時間(x軸)対累積放出(y軸)のプロットを示したとき、1時間以上の期間にわたって、直線、段階的、Z字型、曲線および/または波状の少なくとも上向きの部分を示すものが含まれる。
【0064】
操作例以外に、特記されていなければ、例えば、材料の量、時間、温度、反応条件、量の比、分子量の値(数平均分子量Mnであっても、重量平均分子量Mwであっても)および本明細書で開示されたその他のものなどの数的範囲、量、値およびパーセントは全て、あらゆる場合において、「約」という用語によって修飾されるものと理解されたい。したがって、逆の指示がなければ、本発明の開示および添付の特許請求の範囲で記載した数的変数は、所望する通りに変更可能な概算値である。少なくとも、各数的変数は、報告した有意な数字の数を考慮して、通常の四捨五入法を適用することによって、少なくとも解釈するべきである。
【0065】
記載した数的範囲および変数に関わらず、開示の広範な範囲は概算値であり、具体的な例で記載した数値は可能な限り正確に報告されている。しかし、任意の数値は、個々の試験測定で見いだされた、標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を本来含有している。さらに、変化する範囲の数的範囲を本明細書で記載するとき、引用した値を含むこれらの値の任意の組合せを使用できるものと考えられる。
【0066】
「から形成された」および「の形成された」は、オープンランゲージを意味する。このように、引用した成分のリスト「から形成された」または「の形成された」組成物は、少なくともこれらの引用した成分を含む組成物で、さらに組成物の形成中にその他の引用されていない成分を含むことができる。
【0067】
「など」および「例えば」の次のものを含む本明細書で提供された例は、特にそれらに限定するのではなく、本発明の開示およびそれらの実施形態の様々な態様を例示するのみであると考えられる。当業者にとって公知および/または使用可能なそれらの任意の適切な同等物、代替物および変更(材料、物質、構造物、組成物、製剤、手段、方法、条件など)は、本明細書で開示したものの代わりに、または組み合わせて使用または実施することができ、本発明の開示の範囲内に含まれるものと考えられる。
【0068】
一例において、本発明の開示の表面修飾微粒子はそれぞれ、少なくともその外面において、少なくとも1種の荷電化合物を含有する少なくとも1種の単層と結合した、アモルファス(例えば、結晶構造物を含まないもの)および固形の予め形成された微粒子を含有することが好ましい。予め形成された微粒子は、少なくとも1種の活性薬剤および/または分子量4500ダルトン以上の少なくとも1種の高分子を含有する。この高分子は、活性薬剤であってよく、または活性薬剤と異なっていてよい。この高分子は、担体、安定化剤、または複合体形成剤(例えば、タンパク質性化合物、高分子電解質)であってよい。活性薬剤および/または高分子は、予め形成された微粒子の40重量%から100重量%以下、通常少なくとも80重量%、例えば、90重量%以上または95重量%以上を構成してよい。好ましくは、活性薬剤および/または高分子は、コア微粒子全体に均一に分布する。予め形成された微粒子の外面は、特に、この外面が活性薬剤および/または高分子から形成されているとき、少なくとも部分的に、より一般的には大部分が、活性薬剤および/または高分子が原因となり得る正味表面電荷を帯びている。予め形成された微粒子は、共有的架橋結合、ヒドロゲル、脂質、および/またはカプセル化を含まなくてよい。あるいは、予め形成された微粒子は、1種または複数の荷電化合物、共有的架橋結合および/またはカプセル化を含有してよい。予め形成された微粒子中の1種または複数の荷電化合物は、予め形成された微粒子全体に均一に分布するか、それらの特定の部位、例えば層に区画化されてよい。予め形成された微粒子の粒径は、10μm以下であることが好ましく、単分散または多分散サイズ分布であってよい。
【0069】
予め形成された微粒子の予備形成方法は、特に制限はなく、全体を本明細書に参照として援用した米国特許第6458387号および米国特許公開番号第2005/0142206号に開示されたものを含む。一例において、単一の流動性を有する連続相系(例えば、液体、気体またはプラズマ、好ましくは液体または懸濁液)は、1種または複数の活性薬剤、媒体、および1種または複数の相分離増強剤(PSEA)を含有するように製剤化されている。媒体は、好ましくは液体溶媒(例えば、親水性または疎水性有機溶媒、水、緩衝液、水混和性有機溶媒、およびそれらの2種以上の組合せ)、より好ましくは水性または水混和性溶媒である。適切な有機溶媒には、限定はしないが、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、ペンタンなど、およびそれらの2種以上の組合せ(例えば、塩化メチレンおよびアセトンの1:1混合物)が含まれる。活性薬剤およびPSEAは、独立して、媒体内に溶解、懸濁、または、他の方法で均一に分布することができる。流動性を有する系をある種の条件(例えば、媒体中における活性薬剤の相転移温度未満の温度)に置くと、活性薬剤は液体−固体相分離を受け、不連続な相、好ましくは固体の相(例えば、媒体中に懸濁した複数のコア微粒子)を形成し、一方PSEAは連続層に保持される(例えば、媒体中に溶解する)。
【0070】
媒体は、有機溶媒、あるいは、独立して水混和性または水非混和性であってよい2種以上の相互混和性有機溶媒の混合物を含有する有機物であることができる。この溶液はまた、水性媒体または水混和性有機溶媒または水混和性有機溶媒の混合物またはそれらの組合せを含有する水をベースにした溶液であることができる。水性媒体は、水、緩衝液(例えば、通常の生理食塩水、緩衝溶液、緩衝生理食塩水)などであることができる。適切な水混和性有機溶媒は、単量体または重合体であってよく、限定はしないが、N−メチル−2−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)、2−ピロリジノン(2−ピロリドン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセタミド、酢酸、乳酸、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、3−ペンタノール、ベンジルアルコール、グリセロール、テトラヒドロフラン(THF)、ポリエチレングリコール(PEG、例えば、PEG−4、PEG−8、PEG−9、PEG−12、PEG−14、PEG−16、PEG−120、PEG−75、PEG−150)、PEGエステル(例えば、ジラウリン酸PEG−4、ジラウリン酸PEG−20、イソステアリン酸PEG−6、パルミトステアリン酸PEG−8、パルミトステアリン酸PEG−150)、PEGソルビタン(例えば、イソステアリン酸PEG−20ソルビタン)、PEGエーテル(例えば、モノアルキルおよびジアルキルエーテル、例えば、PEG−3ジメチルエーテル、PEG−4ジメチルエーテル、およびグリコフロール)、ポリプロピレングリコール(PPG)、PPGエステル(例えば、プロピレングリコールアルギン酸エステル(PGA)、ジカプリル酸PPG、ジカプリン酸PPG、ラウリル酸PPG)、アルコキシル化直鎖アルキルジオール(例えば、PPG−10ブタンジオール)、アルコキシル化アルキルグルコースエーテル(例えば、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル)、PPGアルキルエーテル(例えば、PPG−15ステアリルエーテル)、アルカン(例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン)およびそれらの2種以上の組合せが含まれる。
【0071】
好ましい例では、第1の溶媒に溶かしたPSEAの溶液が提供され、PSEAは第1の溶媒に溶解するか、または混和する。活性薬剤は、第1の溶液と共に、第2の溶媒に直接混合するか、または第2の溶媒に溶かした第2の溶液とする。第1および第2の溶媒は、同一であるか、または少なくとも互いに混和性であってよい。好ましくは、活性薬剤は、特に活性薬剤がある種のタンパク質性化合物などの熱に不安定な分子の場合、周囲温度と等しい温度で、または低い温度で添加される。しかし、系における活性薬剤の溶解性を高めるために、活性薬剤の活性が悪影響を受けない限り、系を加熱してよい。
【0072】
混合物が相分離条件にもたらされるとき、PSEAは、液体連続層中に維持されながら、溶液からの活性薬剤の液体−固体相分離を増強および/または誘導し(例えば活性薬剤の溶解性を減少することにより)、好ましくは小球体であってよいコア微粒子(固体不連続相)を形成する。適切なPSEA化合物には、限定はしないが、天然および合成重合体、線状重合体、分枝状重合体、環化重合体、コポリマー(ランダム、ブロック、グラフト、例えば、ポロキサマー、特に、PLURONIC(登録商標)F127およびF68)、3元重合体、両親媒性重合体、炭水化物をベースにした重合体、ポリ脂肪族アルコール、ポリ(ビニル)重合体、ポリアクリル酸、ポリ有機酸、ポリアミノ酸、ポリエーテル、ポリエステル、ポリイミド、ポリアルデヒド、ポリビニルピロリドン(PVP)および界面活性剤が含まれる。適切な、または例示的PSEAには、限定はしないが、医薬品添加物として許容される重合体、例えば、PEG(例えば、PEG200、PEG300、PEG3350、PEG8000、PEG10000、PEG20000など)、ポロキサマー、PVP、ヒドロキシエチル澱粉、両親媒性重合体、ならびに非重合体(例えば、プロピレングリコールおよびエタノールの混合物)が含まれる。
【0073】
液相−固相分離を増強、誘導、制御、抑制、遅延、または、その他の方法で影響を及ぼすことができる条件には、限定はしないが、温度、圧力、pH、溶液のイオン強度および/または浸透圧、活性薬剤および/またはPSEAの濃度など、ならびに、このような変化の速度、ならびにそれらの2種以上の組合せが含まれる。このような条件は、相分離の前、および前まで、または相分離中であっても適用できることが望ましい。一例では、開示全体を本明細書に参照として援用した米国特許出願公開第2005/0142206号に記載されている通りに、系は、活性薬剤の相転移温度未満の温度で、単独で、または活性薬剤および/またはPSEAの濃度調節と組み合わせて曝露される。温度降下速度は、0.2℃/分から50℃/分、好ましくは0.2℃/分から30℃/分の範囲内である限り、任意の調節方法で一定に維持するか、変化させてよい。特に氷点が活性薬剤の相転移温度より高い系では、個々に、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用した氷点降下剤(FPDA)は、系に直接、またはそれらの溶液(例えば、水溶液)で混合してよい。適切なFPDAには、限定はしないが、プロピレングリコール、スクロース、エチレングリコール、アルコール(例えば、エタノール、メタノール)およびそれらの水性混合物が含まれる。
【0074】
一例では、予め形成された微粒子はさらに、相分離への影響がごくわずかである1種または複数の賦形剤を含むことができる。この賦形剤は、安定性の増強、活性薬剤の予め形成された微粒子からの放出制御、および/または活性薬剤の生体組織への透過性の改変などの付加的特性を有するコア微粒子および/またはその中の化合物(例えば、活性薬剤、任意選択の担体)に染みこませることができる。適切な賦形剤には、限定はしないが、炭水化物(例えば、トレハロース、スクロース、マンニトール)、多価カチオン(好ましくは、金属カチオン、例えば、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+)、アニオン(例えば、CO32−、SO42−)、アミノ酸(例えば、グリシン)、脂質、リン脂質、脂肪酸およびそれらのエステル、界面活性剤、トリグリセリド、胆汁酸およびそれらのコンジュゲートおよび塩(例えば、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、コール酸ナトリウム)、および本明細書で開示した任意の重合体が含まれる。
【0075】
予め形成された微粒子は、場合によって溶液から分離して、本明細書で開示した表面修飾の前に洗浄するか、分離または洗浄を行わずに表面修飾してよい。分離手段には、限定はしないが、遠心、透析、沈降(クリーム分離)、相分離、クロマトグラフィー、電気泳動、沈殿、抽出、親和性結合、濾過およびダイアフィルトレーションが含まれる。比較的水溶解性が低い活性薬剤では、洗浄媒体は、場合によって1種または複数の溶解性抑制剤(SRA)および/または本明細書で開示した賦形剤を含有する水性であってよい。好ましいSRAは、微粒子中の活性薬剤および/または担体と不溶性複合体を形成することができ、限定はしないが、(本明細書で開示したものなどの)二価または多価カチオンを含む塩などの化合物を含む。(タンパク質性化合物などの)比較的水溶解性の高い活性薬剤では、洗浄媒体は有機または水性であってよいが、少なくとも1種のSRAまたは沈殿剤(例えば、硫酸アンモニウム)を含有する。一例では、洗浄媒体は、約16%(w/v)PEGおよび0.7%(w/v)NaClを含む水性溶液などの相分離反応で使用されるのと同様の溶液である。
【0076】
洗浄媒体は、例えば、凍結乾燥、留去または乾燥によって除去が容易なように、沸点が低いことが好ましい。洗浄媒体は、超臨界液または超臨界点に近い流体であってよく、単独または共溶媒と組み合わせて使用される。超臨界液は、PSEA用であるが、予め形成された微粒子用ではない溶媒であってよい。超臨界液の非限定的例には、液体CO2、エタン、およびキセノンが含まれる。共溶媒の非限定的例には、アセトニトリル、ジクロロメタン、エタノール、メタノール、水および2−プロパノールが含まれる。
【0077】
前記で示したように、水中での溶解度の程度が様々である活性薬剤を本明細書で記載した微粒子に使用することができる。水不溶性活性薬剤も使用してよいが、水可溶性活性薬剤が好ましい。
【0078】
活性薬剤は、医薬品であってよい。その効果および/または適用に応じて、この医薬品は、限定はしないが、補助剤、アドレナリン作用薬、アドレナリン遮断薬、副腎皮質ステロイド、抗アドレナリン薬、アドレナリン様作用薬、アルカロイド、アルキル化剤、アロステリック阻害剤、タンパク質同化ステロイド、興奮薬、鎮痛剤、麻酔剤、食欲抑制薬、制酸薬、駆虫薬、抗アレルギー薬、血管新生抑制薬、抗不整脈薬、抗菌剤、抗生物質、抗体、抗癌剤、抗コリン作用薬、抗コリンエステラーゼ、抗凝固薬、抗痙攣薬、抗認知症薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、下痢止め薬、解毒薬、抗てんかん薬、葉酸代謝拮抗薬、抗真菌薬、抗原、抗蠕虫薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬、抗高血圧薬、抗感染症薬、抗炎症薬、抗マラリア薬、代謝拮抗薬、抗ムスカリン薬、抗マイコバクテリア薬、抗悪性腫瘍薬、抗骨粗鬆薬、抗病原薬、抗原虫薬、接着分子、解熱薬、抗リウマチ薬、防腐薬、抗甲状腺薬、抗潰瘍薬、抗ウイルス薬、抗不安薬鎮静薬、収れん薬、ベータアドレナリン受容体遮断薬、殺生物薬、血液凝固因子、カルシトニン、強心薬、化学療法薬、コレステロール低下薬、補因子、コルチコステロイド、咳抑制薬、サイトカイン、利尿薬、ドーパミン作用薬、エストロゲン受容体調節因子、酵素およびそれらの補因子、酵素阻害剤、成長分化因子、成長因子、血液学的因子(hematological agent)、造血剤、ヘモグロビン調節因子、止血剤、ホルモンおよびホルモン類似体、催眠薬、降圧利尿剤、免疫学的製剤、免疫刺激薬、免疫抑制薬、阻害剤、リガンド、脂質調節薬、リンホカイン、ムスカリン様作用薬、筋弛緩薬、神経遮断薬、向神経薬、パクリタキセルおよび誘導体化合物、副交感神経様作用薬、副甲状腺ホルモン、プロモーター、プロスタグランジン類、心理療法薬、向精神薬、放射線医薬品、受容体、鎮静薬、性ホルモン、殺菌剤、刺激薬、血小板新生薬、栄養因子、交感神経様作用薬、甲状腺薬、ワクチン、血管拡張薬、ビタミン、キサンチン、ならびにそれらのコンジュゲート、複合体、前駆体および代謝物が含まれる。この活性薬剤は、個々に、またはそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。一例では、活性薬剤は、限定はしないが、ペプチド、炭水化物、核酸、その他の化合物、それらの前駆体および誘導体、ならびにそれらの2種以上の組合せを含む予防薬および/または治療薬である。
【0079】
前述の通り、活性薬剤は化粧品であってよい。非限定的な化粧品には、特に、緩和剤、湿潤剤、遊離ラジカル阻害剤、抗炎症剤、ビタミン、脱色剤、ざ瘡止め剤、抗脂漏薬、角質溶解剤、痩身薬、皮膚着色剤および日焼け止め剤が含まれる。化粧品として有用な非限定的な化合物には、リノレン酸、レチノール、レチノイン酸、アスコルビン酸アルキルエステル、ポリ不飽和脂肪酸、ニコチン酸エステル、ニコチン酸トコフェロール、米、ダイズまたはシアバターの不鹸化物、セラミド、グリコール酸などのヒドロキシ酸、セレン誘導体、抗酸化剤、ベータカロテン、ガンマオリザノールおよびグリセリン酸ステアリルが含まれる。化粧品は、市販されているか、および/または公知の技術によって調製されてよい。
【0080】
前述の通り、活性薬剤は栄養補給剤であってよい。非限定的な栄養補給剤には、タンパク質、炭水化物、水溶性ビタミン(例えば、ビタミンC、ビタミンB群など)、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、Kなど)および草本抽出物が含まれる。栄養補給剤は、市販されているか、および/または公知の技術によって調製されてよい。
【0081】
前述の通り、活性薬剤は分子量2kD以下の化合物であってよい。このような化合物の非限定的な例には、ステロイド、ベータアゴニスト、抗菌剤、抗真菌剤、タキサン(有糸分裂阻害剤および微小管阻害剤)、アミノ酸、脂肪族化合物、芳香族化合物および尿素化合物が含まれる。
【0082】
一例では、活性薬剤は、肺疾患の予防および/または治療のための治療薬であってよい。このような薬剤の非限定的な例には、ステロイド、ベータアゴニスト、抗真菌剤、抗菌化合物、気管支拡張剤、抗喘息薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、AATおよび嚢胞性線維症を治療するための薬剤が含まれる。ステロイドの非限定的な例には、ベクロメサゾン(ジブロピオン酸ベクロメサゾン)、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸フルチカゾン)、ブデソニド、エストラジオール、フルドコルチゾン、フルシノニド、トリアムシノロン(例えば、トリアムシノロンアセトニド)、フルニソリドおよびそれらの塩が含まれる。ベータアゴニストの非限定的な例には、キシナホ酸サルメテロール、フマル酸ホルモテロール、レボアルブテロール、バンブテロール、ツロブテロールおよびそれらの塩が含まれる。抗真菌剤の非限定的な例には、イトラコナゾール、フルコナゾール、アンホテリシンBおよびそれらの塩が含まれる。
【0083】
前述の通り、活性薬剤は診断薬であってよい。非限定的な診断薬には、x線画像剤および造影剤が含まれる。x線画像剤の非限定的な例には、エチル3,5−ジアセタミド−2,4,6−トリヨードベンゾエート(WIN−8883、ジアトラゾ酸(diatrazoic acid)のエチルエステル)、6−エトキシ−6−オキソヘキシル−3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾエート(WIN67722)、エチル−2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)−ブチレート(WIN16318)、エチルジアトリゾキシアセテート(WIN12901)、エチル2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)プロピオネート(WIN16923)、N−エチル2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ−アセタミド(WIN65312)、イソプロピル2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)アセタミド(WIN12855)、ジエチル2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシマロネート(WIN67721)、エチル2−(3,5−ビス(アセタミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)フェニル−アセテート(WIN67585)、プロパン二酸、[[3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,5−トリヨードベンゾイル]オキシ]ビス(1−メチル)エステル(WIN68165)、および安息香酸、3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−4−(エチル−3−エトキシ−2−ブテノエート)エステル(WIN68209)が含まれる。好ましい造影剤は、生理学的条件下で比較的迅速に分解されることが望ましく、こうしていかなる粒子関連炎症応答も最小限に抑えられる。分解は、酵素的加水分解、生理学的pHでのカルボン酸の可溶化、またはその他の機構によって生じ得る。したがって、WIN67721、WIN12901、WIN68165およびWIN68209その他などの、加水分解に不安定なヨウ化された種に加えて、ヨージパミド、ジアトリゾ酸およびメトリゾ酸などの溶解性に乏しいヨウ化カルボン酸が好ましい。
【0084】
前述の通り、活性薬剤はそれらの2種以上を組み合わせて使用してよい。非限定的な例には、ステロイドおよびベータアゴニスト、例えば、プロピオン酸フルチカゾンおよびサルメテロール、ブデソニドおよびホルメテロールなどが含まれる。
【0085】
予め形成された微粒子は、内部空隙および/空洞が実質的になく(例えば、小胞がない)、カプセル化が実質的になく、脂質が実質的になく、ヒドロゲルまたは膨潤が実質的になく、実質的に非多孔性のアモルファス固体および/または球体であり、それらの用語は本明細書で定義した通りである。予め形成された微粒子は、複数の表面チャンネル開口を有してよく、その直径は一般に100nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下、最も好ましくは1nm以下である。予め形成された微粒子の全体的密度は、0.5g/cm3以上、好ましくは0.75g/cm3以上、より好ましくは0.85g/cm3以上であってよい。密度は、一般的に約2g/cm3まで、好ましくは1.75g/cm3以下、より好ましくは1.5g/cm3以下であってよい。
【0086】
予め形成された微粒子は、少なくとも1種の活性薬剤の負荷量を高くしてよい。製剤および化合物の物理的/化学的性質に応じて、予め形成された微粒子それぞれにおける活性薬剤分子は、一般的に少なくとも1000以上、例えば、数百から数億である。予め形成された微粒子の活性薬剤の重量パーセントは、下回る量または上回る量のいずれかであってよく、あるいは任意の範囲であってよいが、100%未満であり、すなわち、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%であってよい。著しい量の充填剤および/またはその他の賦形剤の組み込みは予め形成された微粒子には必要ないが、このような化合物の1種または複数を存在させてよい。いずれにしても、活性薬剤の所望する状態および/または活性は、100%でなくても大部分(50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上)が保持される。
【0087】
予め形成された微粒子の表面修飾は、限定はしないが、制御された方法で、少なくとも1種の荷電化合物を含有する少なくとも1種の単層を予め形成された微粒子の周りに形成することによって実現される。このような単層を2種以上形成するとき、それぞれは異なる荷電化合物を含有し、好ましくは、それぞれは、存在するならば、前の単層および/または後の単層とは符号および/または値が異なる正味表面電荷を外面上に帯びている。このような単層を1層ずつ沈着すると、得られた微粒子の様々な特性を最適に制御することが可能で、所望する結果を実現するために微粒子の調整または「調節」を可能にする。
【0088】
好ましくは、予め形成された微粒子の周囲に密着した単層(「形成された単層」)は、コア微粒子の正味表面電荷の反対の符号である正味電荷をそれぞれが独立して有する1種または複数の荷電化合物を含有する。予め形成された微粒子は、少なくとも、部分的に、形成された単層中の荷電化合物によって透過することができる。形成された単層の外面は、特にこの形成された単層が本明細書で定義した通りの飽和単層であるとき、予め形成された微粒子外面のものとは異なる、好ましくは反対の符号である正味表面電荷を帯びていてよい。荷電化合物には、1種または複数の高分子電解質、荷電ポリアミノ酸、荷電多糖類、ポリイオン性重合体、荷電タンパク質性化合物、荷電ペプチド、荷電していない脂質、荷電脂質構造物、およびそれらの誘導体と場合によって組み合わさった荷電脂質が含まれる。
【0089】
表面修飾微粒子が活性薬剤の所望する放出プロファイルを有するように、表面修飾微粒子はさらに1種または複数の他の交互荷電単層を含有してよい。この数には特に制限はないが、一般的に1から7の間、例えば、2、3、4、5または6であってよい。場合によって、1種または複数のこのような荷電単層は独立して、1種または複数の同一または異なる活性薬剤、例えば、好ましくはそれぞれの外面に共有結合および/または非共有結合した親和性分子、特に標的化リガンドを有してよい。交互に、または組み合わせて、コア微粒子は、1種または複数の部分、例えば、少なくとも1種のこのような活性薬剤を好ましくは部分の外面上に含有する、中心または基底層(例えば、荷電単層)を有してよい。
【0090】
予め形成された微粒子、表面修飾微粒子および、もしあれば、それらの間の任意の中間物は、以下の特性:本明細書で定義した通りの球体、共有架橋結合を含まない、ヒドロゲルおよび/または膨潤を有さない、大きさの分布が多分散、または、好ましくは単分散である、の1種または複数を備えてよい、および/または備えている。予め形成された微粒子は、脂質および/またはカプセル化を含まなくてよい。
【0091】
好ましくは、表面修飾微粒子は、活性薬剤を制御放出、特に持続放出することができ、初期バーストおよび直線放出プロファイルなどの非限定的放出プロファイルを備え、薬剤、治療、診断、化粧、および/または栄養的適用のための組成物または製剤に懸濁物または乾燥粉末として提供することができる。前述の通り、制御放出は、選択されたpH環境内で生じることができる。その点では、制御放出は好ましくは約2から10、より好ましくは約5から7.5、例えば、生理学的pHの7から7.4またはエンドソームpHの5から6.5のpH範囲内で生じることができる。
【0092】
1種または複数の単層の制御沈着にはさらに、1種または複数の条件、例えば、温度、圧力、pH、反応媒体のイオン強度および/または浸透圧、反応媒体中の成分の濃度の変化など、およびこのような変化の速度、およびそれらの2種以上の組合せを制御操作することによって、微粒子(例えば、1種または複数の単層が沈着した予め形成された微粒子)の正味表面電荷を改変することが関与し得る。このような制御操作は、1種または複数の単層の沈着の前、および前まで、または単層形成中であっても、適用できることが望ましい。一例では、微粒子の正味表面電荷は、正、中性、および負であることができる。正味表面電荷は、例えば、前述の条件の1種または複数の制御変化、例えば、pHの制御変化によって選択される。一例では、溶液のpHは、微粒子の正味表面電荷が負であり、溶液のpHと微粒子の表面中性点との差が0.3未満、あるいは0.3以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上であるように、選択される。
【0093】
図1は、本発明の開示に従って、表面修飾微粒子を提供する方法の一例を示す。沈着のための3次元基質として使用する複数の予め形成された微粒子の懸濁液を最初に準備する。予め形成された微粒子の非限定的形成方法には、本明細書で開示した方法および当業者に公知のその他の任意の方法が含まれる。このような1方法を図24の上部に示したが、活性薬剤および相分離増強剤を含有する溶液を提供し、例えば、制御冷却によって液相−固相分離を誘導し、予め形成された微粒子を形成することが関与する。一例では、予め形成された微粒子の形成に使用した化合物のいずれか1種、2種以上、または全ては、予め形成された微粒子それぞれの全体に均一に分布していること(例えば、中心、表面上、および内部の他のあらゆるところにおいて同一濃度で存在すること)が好ましい。本明細書で開示したような表面修飾法は、図24で例示した通りに、全体または一部が予め形成された微粒子の基本的な製造方法に組み込まれるか、またはそれらの延長部分とすることができることを理解されたい。非修飾微粒子の予備形成と表面修飾の間で、予め形成された微粒子は液相から分離され、場合によって、好ましくは相分離増強剤存在下で洗浄することができる。例えば、洗浄用媒体は、相分離増強剤を含有する相分離中に使用したものと同様の溶液であってよい。あるいは、予め形成された微粒子を液相から分離せず、洗浄もしない。いずれにしても、図1および24に示した通りに、予め形成された微粒子の懸濁液または再懸濁液は、少なくとも1種の適切な荷電化合物を含む溶液と一緒にして混合される。
【0094】
前述の通り、予め形成された微粒子の活性薬剤の負荷重量%(wt%)は、40%以上、好ましくは60%以上、または80%以上、または90%以上、または95%以上、および100%未満、一般的に98%未満であってよい。予め形成された微粒子はさらに、正味表面電気的電荷を帯びるか、または(例えば、中性状態から)帯びるように誘導されることができる。一例では、この正味表面電荷は、活性薬剤、および/または、存在するならば、予め形成された微粒子中に存在する担体によって、主に、または本質的に提供され、この化合物は好ましくは均一にその中に分布していてよい。あるいは、活性薬剤は、予め形成された微粒子の1種または複数の部分、例えば、中心または基底層(例えば、荷電単層)に、好ましくはその部分内、または主にそれらの外面上に実質的に均一に分布して、区画化される。予め形成された微粒子は、予め形成された微粒子の正味表面電荷と好ましくは反対の符号の正味電気的電荷を帯びる、または帯びることができる少なくとも1種の荷電化合物に曝露(例えば、混合)されて、それによって予め形成された微粒子の周りに荷電化合物の形成単層を形成することができる。形成された単層または表面修飾微粒子は、予め形成された微粒子と同一の符号、ゼロ、または、好ましくは予め形成された微粒子と反対の符号であってよい正味表面電気的電荷を有する。言い換えると、(例えば、ゼータ電位測定によって測定して)予め形成された微粒子の外面が負の正味表面電荷を帯びるならば、形成された単層は、その外面に正の正味表面電荷を帯び得ることが好ましい。あるいは、予め形成された微粒子が正の正味表面電荷を帯びるならば、形成された単層は、負の正味表面電荷を帯びることが好ましい。単層の沈着は、水性媒体(例えば、水、緩衝液、または前述の種類のある水混和性有機溶媒を含有する水性溶液または予め形成された微粒子の製造で存在してよいもの)中で行うことができる。
【0095】
表面修飾微粒子を調製するために、非限定的な方法には、非修飾微粒子を予め形成すること、またはそうでなければ提供すること、それを1種または複数の荷電化合物に曝露すること(これは、微粒子を浸漬することができる溶液中で行われる)、および単層を形成することが含まれる。この溶液は、1種または複数の水、緩衝液、水混和性有機溶媒、および1種または複数の溶解性抑制剤(例えば、アルコール、炭水化物、非イオン性水混和性重合体、および/または単価または多価カチオンを含有する無機イオン化合物)を、重量対体積百分率5%から50%、好ましくは10%から30%の濃度で含有してよい。この溶液の非限定的な例は、ポリエチレングリコール約16%(w/v)およびNaCl0.7%(w/v)を含有する。溶液のpHは、一般的に4から10の範囲で、コア粒子の表面中和点と同一であるか、または近接するように(例えば、差が0から0.3未満である)、あるいは離れているように(例えば、差が0.3pH単位以上である)調節することができる。荷電化合物は、0.05mg/mLから10mg/mLの濃度で溶液中に存在してよい。予め形成された微粒子および荷電化合物を、溶液中で、好ましくは2℃から5℃の温度または周囲温度までで、1秒から10時間の時間にわたって一緒にインキュベートする。単層の形成は、制御された方法で実施することができる。得られた表面修飾微粒子またはそれらの中間体は、任意選択の洗浄で溶液から分離することができる。この洗浄媒体は、前述の溶液と同様であってよい。所望するならば、この方法は交互に荷電した単層を形成するために交互に荷電した化合物を使用することを繰り返してよい。
【0096】
前記で示したように、反応系は1種または複数の溶解性抑制剤および/または粘度増強剤(SRA/VIA)ならびに1種または複数のPSEAを含むことができる。適切なSRA/VIAおよびPSEAには、限定はしないが、当業者に公知のものおよび本明細書で開示したもの、例えば、アルコール(例えば、エタノール、グリセロール)、炭水化物(例えば、スクロース)、非イオン性水混和性重合体(例えば、PEG、PVP、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロックコポリマー(ポロキサマー)、ヘタスターチ、デキストランなど)、および多価(例えば、二価、三価)カチオン(例えば、本明細書で開示したものなどの金属および有機カチオン)を含有する無機のイオン化できる化合物、例えば、ZnCl2が含まれる。
【0097】
したがって、一例では、形成された単層の沈着は、緩衝生理食塩水(すなわち、0.7%NaCl緩衝液)およびPEGなどのSRA/VIAを重量または体積で8%以上、好ましくは12%以上、より好ましくは15%以上、一般的に30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、最も好ましくは約16%以下含む溶液中で実施することができる。溶液に必要なSRA/VIAの量は、部分的に、活性薬剤の安定性および単層の溶解プロファイルに左右される。ある種の荷電化合物(例えば、ポリカチオン、ゼラチンBおよびキトサン)は、SRA/VIA16%以下を含有する溶液中で作用することができる。
【0098】
微粒子の正味表面電荷がゼロである溶液のpHは、本明細書では特定の溶液中における微粒子の表面中性点と称する。ある例では、溶液のpHは、溶液中の微粒子の表面中性点またはその近くに調節することができ、その間の差は0.3(pH単位)未満、好ましくは0.25以下、より好ましくは0.2以下である。その他の例では、溶液のpHは、溶液中の微粒子の表面中性点から離れて調節することができ、その間の差が0.3(pH単位)以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上である。ある例では、微粒子の表面中性点から離れた溶液pHを調節すると、そこにある活性薬剤の溶解速度に影響を及ぼし得ることが観察された。溶液中での微粒子のインキュベーションは、微粒子の分解を最小限に抑えるために、周囲温度で、好ましくは周囲温度以下で、しかし、好ましくは溶液の凍結温度を上回った温度で実施することができる。インキュベーション温度は、本明細書で開示した1種または複数のFPDAを使用するときは、溶液の凍結温度より低くてもよい。例えば、インキュベーション温度は、0℃と15℃との間、好ましくは1℃と10℃との間、より好ましくは2℃と5℃の間、最も好ましくは5℃未満であってよい。一般的に、各単層を製造するための溶液中の荷電化合物の濃度は、以下の、0.05mg/mL、0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、10mg/mL、5mg/mL、3mg/mLの1つと等しいか、下回っているか、および/または上回っていてよく、あるいはそれらの任意の2つの間の範囲であってよい。予め形成された微粒子を溶液中で荷電化合物と一緒にインキュベートするとき、予め形成された微粒子の荷電化合物に対する重量比は、1:1以上、好ましくは2:1から10:1、より好ましくは2.5:1から7:1であってよい。
【0099】
インキュベーション時間は、所望する荷電修飾(例えば、中性化または電荷逆転)、単層適用範囲、および/または単層の厚さを実現するために調節することができる。特定の反応に応じて(例えば、成分および/または条件)、インキュベーション時間は、以下の、10時間、5時間、3時間、10分、30分、100分、75分、60分、15分、5分、1分、30秒、10秒、5秒、1秒の1つと等しいか、短いか、および/または長いか、あるいはそれらの任意の2つの間の範囲であってよい。各単層の厚さは、以下の、100nm、50nm、20nm、5nm、1nm、0.5nm、0.1nm、2nm、10nmの1つと等しいか、薄いか、および/または厚いか、あるいはそれらの任意の2つの間の範囲であってよい。本発明の開示の一般的な単層の厚さは、100nm未満、好ましくは10nm未満である。
【0100】
特定の理論に結びつけることは望まないが、微粒子からの活性薬剤の放出制御における要素は、活性薬剤、荷電化合物および/または、もしあるならば、その他の成分が関与することができる、予め形成された微粒子の外面またはその近く(例えば、形成された単層との界面で)で生じる相互作用および/または結合の種類および/または程度(例えば、非共有結合、イオン複合体形成)であることができると考えられる。場合によっては、この接触面での強い相互作用または結合は、活性薬剤の溶解を遅くし、延長し、および/または、そうでなければ、妨害し、表面修飾微粒子を安定化し、所望するならば、他の交互荷電単層の製造を促進すると考えられる。さらに、以下に詳細に説明するように、この相互作用はさらに、他の交互荷電単層のその後の形成によって影響を受け得る。
【0101】
したがって、図2について簡単に触れると、予め形成された微粒子10と荷電化合物20を好ましくは溶液中で一緒にインキュベートすると、荷電化合物20の単一単層が、予め形成された微粒子10の少なくとも外面上に形成され、それと結合している中間体微粒子40が生じる。インキュベーション後、中間微粒子40の懸濁液を遠心、濾過、ダイアフィルトレーションおよび/またはその他の分離方法によって溶液から分離することができる。中間体微粒子40は、場合によって洗浄溶液(好ましくは、水性媒体、例えば、図1に一般的に示したような、前述のSRA含有緩衝液)で洗浄される。インキュベーション中の温度および任意選択の洗浄は、活性薬剤および荷電化合物20の溶解度に基づいて最適化される。
【0102】
さらなる表面修飾を所望するか、または必要とする場合、任意選択で洗浄した後、好ましくは溶液中で、中間体微粒子40をさらに異なる電荷の化合物30に曝露(例えば、混合)して、中間体微粒子40の形成された単層の周りに、結合した荷電化合物30の次の単層を形成してよい。荷電化合物30は、荷電化合物20とは反対の符号の正味電気的電荷を有することが好ましい。次の単層は、形成された単層の周囲に密着して形成することができる。中間体微粒子50は、中間体微粒子40と同一の符号、中性、または、好ましくは中間体微粒子40と反対の符号の正味表面電気的電荷を帯びていてよい。図1に示したように、単層形成方法を前回のように反復して、それぞれが先行する単層と結合した、追加的であるが、好ましくは必ずしも必要ではない、隣接する交互荷電単層を備えた微粒子50および60を形成することができる(図2)。所望する放出プロファイルを有する活性薬剤の制御放出を表面修飾微粒子中で実現できるように、形成される単層の総数を選択するか、予め決定することができる。前述のように、その数は、整数1、2、3、4、5、6、7以上、好ましくは100未満、より好ましくは20未満、最も好ましくは10未満であることができる。
【0103】
他の例では、単層を形成する1種または複数の荷電化合物は、予め形成された微粒子中の1つと同一か、または異なる活性薬剤であってよい。例えば、予め形成された微粒子の正味表面電荷と反対の符号である正味電気的電荷を有する同一または異なる荷電活性薬剤の1種または複数の奇数(例えば、1つ、3つ)の単層を独立して形成することができる。交互に、または組み合わせて、予め形成された微粒子の正味表面電荷と同一の符号である正味電気的電荷を有する同一または異なる荷電活性薬剤の1種または複数の偶数(例えば、2つ、4つ)の単層を独立して形成することができる。図2に関して、荷電化合物20または30は、予め形成された微粒子10の中の1つと同一であるか、または異なった活性薬剤であってよく、そうでなければ、荷電化合物30または20はそれぞれ、予め形成された微粒子の1つとは異なる不活性荷電化合物または荷電活性薬剤であってよい。
【0104】
他の例では、荷電した、および/または非荷電の1種または複数の活性薬剤を、共有的および/または非共有結合によって1種または複数の単層に組み入れることができる。このような単層結合型活性薬剤は、予め形成された微粒子のものと同一であるか、またはそれらとは異なっていてよい。このような構造によって、単層結合型活性薬剤の制御放出(例えば、延長放出、持続放出)が可能になる。あるいは、組み合わせて、1種または複数のこのような単層結合型活性薬剤は、コア微粒子内の活性薬剤の標的化送達を実現するために、基礎となる微粒子を予め決定された部位に選択的にもたらすことができる、標的化リガンドなどの親和性分子であってよい。
【0105】
他の例では、荷電化合物の1種または複数の単層を備えた前述の表面修飾微粒子は、表面修飾微粒子の1種または複数の特性、例えば、限定はしないが、その中の活性薬剤の放出プロファイルをさらに変更するために、好ましくは懸濁液中において、1種または複数の物理的および/または化学的処理を施されてよい。この処理は、表面修飾微粒子の形成直後および任意選択の洗浄前、または任意選択の洗浄の直後に実施することができる。この処理には、反応混合物の1種または複数の変数、例えば、限定はしないが、温度、pHおよび/または圧力の操作が関与し得る。一般的に、1種または複数の変数は、最初の値から第2の値まで調節(例えば、増加または減少)し、ある期間維持することができ、次に第3の値に調節(例えば、減少または増加)するか、または第1の値に戻して、あるいは戻すことができ、さらに維持することができる。
【0106】
熱処理には、例えば、加熱段階および冷却段階が必要であり得る。さらに処理する前に、懸濁液を周囲温度未満の比較的低温、好ましくは表面修飾微粒子が形成される温度、より好ましくは2℃から10℃、例えば4℃に維持して、微粒子の溶解を少なくとも最小限に抑えることができる。加熱段階中、懸濁液をある温度まで加熱して、この高温で1分から5時間、好ましくは15分から1時間、例えば、30分のインキュベーション期間でインキュベートすることができる。高温とは、追加的処理をする前に懸濁液を維持する比較的低い温度よりも高く、懸濁液中での表面修飾微粒子の分解温度よりも低い、好ましくは5℃と40℃との間、より好ましくは10℃と30℃との間の温度である。加熱段階は、場合によって、直後に冷却段階を伴うことができ、その間、懸濁液をある温度で迅速に、または徐々に、制御された方法で冷却することができ、場合によって、この低い温度で1分から5時間、好ましくは15分から1時間、例えば、30分のインキュベーション期間でインキュベートすることができる。一例では、冷却は冷却した洗浄溶液で洗浄することによって実施される。あるいは、懸濁液は、元の温度、または懸濁液が加熱された温度を下回る選択温度まで戻すか、または近接させることができる。この低温は、前記の高温より低くて懸濁液の凍結温度より高く、好ましくは周囲温度で、または周囲温度未満であってよく、場合によって追加的処理の前に懸濁液を維持する比較的低い温度と等しいか、もしくは異なっていてよく、より好ましくは15℃以下、最も好ましくは10℃以下、例えば4℃である。得られた混合物はさらに、本明細書で記載した通りの洗浄を任意選択で行い、さらに処理された表面修飾微粒子を得ることができる。
【0107】
前述の追加的処理に適した表面修飾微粒子には、本明細書で記載したような活性薬剤を重量で40%から100%未満、より一般的には80重量%以上有する、アモルファス、固形、および均一な予め形成された微粒子から形成されたものが含まれる。適切な懸濁液の非限定的な例には、緩衝液、例えば、PEG16%、NaCl0.7%、酢酸Na67mMを含有し、pHが5から8の範囲(例えば、5.7、5.9、6.5、7.0)のPEG緩衝液に溶かした微粒子(例えば、インシュリン小球体)が含まれる。この緩衝液中における微粒子の濃度は、0.01mg/mlから50mg/ml、好ましくは0.1mg/mlから10mg/ml、例えば、1mg/mlであってよい。荷電化合物またはそれらの2種以上の混合物、例えば、硫酸プロタミン、ポリ−L−リシン、および/またはポリ−L−アルギニンは、懸濁液に混合して、0.01mg/mlから10mg/ml、好ましくは0.1mg/mlから1mg/ml、例えば、0.3mg/mlの濃度を提供することができる。この混合物を比較的低温で、例えば、4℃で、撹拌しながら、10秒から5時間、例えば、1時間のインキュベーション期間でインキュベートして、予め形成された微粒子それぞれの外面に荷電化合物の単層を確実に形成することができる。次に、この懸濁液を前述の通り熱処理することができる。任意選択の洗浄を追加的処理の前に懸濁液に実施してよい。
【0108】
追加的処理は、本明細書で開示した通りの任意の1種または複数の単層の形成直後に実施してよい。一例では、追加的処理は、予め形成された微粒子上に単一の単層を形成した直後に実施することができ、この単層は正に荷電した化合物または負に荷電した化合物で形成されている。1種または複数の追加的単層を第1の単層の上に場合によって形成するとき、追加的処理は、このような追加的単層の形成の直後に実施してもよいし、実施しなくてもよい。他の例では、2種以上の単層をコア微粒子上に次々と形成することができ、追加的処理は、単一の予め決定された単層(例えば、最後の単層、第1の単層、または間にある任意のその他の単層)が形成された直後にのみ実施することができる。さらに他の例では、2種以上の単層をコア微粒子上に次々と形成することができ、追加的処理は、例えば、正に荷電した、または負に荷電した化合物を含有するか、あるいは特定の化合物(例えば、活性薬剤、親和性分子、誘導体)または部分(例えば、官能基、標識)を含有するか、あるいはコアからの特定の単層(例えば、1番目、2番目、3番目、4番目、5番目)である、1種または複数の予備決定された特性を有する1層1層の単層の形成直後に実施することができる。さらに他の例では、追加的処理は、単層の全てまたはそれらのサブセットであってよい予め決定された組の各単層の形成直後に実施することができる。
【0109】
以下の実施例16で説明したように、追加的処理後の表面修飾微粒子は、正味表面電荷(ゼータ電位)および/またはその中の活性薬剤のプロファイルの変更を示すことができる。ある種の荷電化合物(例えば、PLLおよびPLA、しかし、硫酸プロタミンではない)では、表面修飾微粒子の表面電荷の変化(例えば、増加)を見いだすことができる。本明細書で開示したin vitroにおける放出プロトコールを実施すると、追加的処理を行った表面修飾微粒子は、追加的処理を行わなかった表面修飾微粒子と比較して、その中の活性薬剤の1時間累積放出率(%CR1h)の減少を示すことができる。活性薬剤放出の初期バーストは一般的に、最初の1時間に生じると考えられているので、活性薬剤放出の初期バーストは追加的処理によって著しく抑制されることがこの例によって示唆される。同様に追加的処理を行った表面修飾微粒子は、1時間を超えて、好ましくは24時間を超えて、より好ましくは48時間を超えて、最も好ましくは7日間を超えて継続的に、好ましくは持続的に放出することができ、24時間累積放出率(%CR24h)は%CR1hを上回る。追加的処理の結果として、本発明の開示の表面修飾微粒子は、放出緩衝液(Tris 10mM、0.05% Brij35、0.9% NaCl、pH7.4、2価カチオンを含まない)中で、37℃でin vitro放出を行うと、%CR1hが50%以下を示し、および/または%CR1hに対する%CR24hの比は1:1を上回ることができる。この%CR1hは、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である。この%CR1hに対する%CR24hの比は、好ましくは1.05:1以上、より好ましくは1.1:1以上であってよいが、10:1以下、好ましくは5:1以下、より好ましくは2:1以下、最も好ましくは1.5:1以下であってよい。
【0110】
特定の理論に結びつけはしないが、本明細書で開示したような単層形成後の追加的処理によって、基質(例えば、予め形成された微粒子、先行する単層)の外面を含む単層中の荷電化合物および分子(例えば、活性薬剤、予め形成された微粒子中の任意選択の担体分子、先行する単層中の荷電化合物)は再配置し、追加処理前の単層と基質外面との間の静電的相互作用よりもずっと強い結合を形成するようになると考えられる。追加的処理によって、修飾された殻が、表面修飾微粒子の外面上に形成され、この修飾された殻は、荷電化合物および基質の外面を形成する分子の均一な混合物を含有するものと考えられる。
【0111】
形成された単層上への荷電化合物の追加的な交互荷電単層の沈着はさらに、とりわけ、予め形成された微粒子中の活性薬剤の放出プロファイルに影響を及ぼすことができる。既に記載されているように、予め形成された微粒子と形成された単層との間の接触面における引力に応じて、2つの間の強い結合が認められる。これによって、活性薬剤放出の量および/または速度の抑制が生じ得る。放出プロファイルはさらに、形成された単層の周りに1種または複数の追加的な交互荷電単層を形成することによって変更することができる。どんな特定の理論にも限定されないが、2番目の逆に荷電した単層を追加すると、形成された単層と予め形成された微粒子との間の結合が緩和され、それによって活性薬剤の放出が増強され得ると考えられる。本明細書で開示した例のいくつかで示したように、所望するならば、活性薬剤の任意選択の介在層を連続的に配置して、交互荷電単層をその後適用することによって、表面修飾微粒子からの活性薬剤の放出を良好に調節することができる。
【0112】
本発明に従って使用できる適切な荷電化合物は、限定はしないが、好ましくは非共有結合、より好ましくは静電的相互作用によって、任意の基質に結合することができる荷電化合物であってよい。したがって、適切な荷電化合物には、正に荷電した、負に荷電した、または両性のイオンが含まれ、限定はしないが、高分子電解質、荷電ポリアミノ酸、多糖類、ポリイオン性重合体、イオノマー、荷電ペプチド、荷電タンパク質性化合物、場合によって荷電していない脂質と組み合わせた荷電脂質、リポソームなどの荷電脂質構造物、それらの前駆体および誘導体、ならびにそれら2種以上の組合せが含まれる。非限定的な例には、ポリスチレンスルホン酸エステル(PSS)およびポリアクリル酸(PAA)などの負に荷電した高分子電解質、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸およびアルギン酸などの負に荷電したポリアミノ酸、コンドロイチン硫酸およびデキストラン硫酸などの負に荷電した多糖類、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)およびポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)などの正に荷電した高分子電解質、ポリ(L−リシン)塩酸塩、ポリオルニチン塩酸塩およびポリアルギニン塩酸塩などの正に荷電したポリアミノ酸、ならびにキトサンおよび硫酸化キトサンなどの正に荷電した多糖類が含まれる。本発明において荷電化合物として有用なのはさらに、限定はしないが、生体適合性ポリイオン性ポリマー(例えば、イオノマー、ポリカチオン性ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドなどのポリカチオン性ポリマー、ポリアニオン性ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミドなどのポリアニオン性ポリマー)、荷電タンパク質(例えば、プロタミン、プロタミン硫酸、キサンタンガム、ヒト血清アルブミン、ゼイン、ユビキチンおよびゼラチンA&B)、ならびに荷電脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン)である。さらに、本明細書で開示した荷電化合物の誘導体(例えば、グリコシル化、過グリコシル化、PEG化、FITC標識、それらの塩)、コンジュゲートおよび複合体が含まれる。より具体的には、適切な正に荷電した脂質(すなわち、ポリアニオン性脂質)、負に荷電した脂質(すなわち、ポリカチオン性脂質)および両性イオン性脂質には、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−(カルボキシフルオレセイン)(FITC−EA)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3(ホスホ−rac−O(1−グリセロール)(ナトリウム塩)(DSPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスファート(1ナトリウム塩)(DPPA)1,2−ジオレイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(Dが含まれる。
【0113】
さらに、脂質構造物(例えば、リポソーム)は、荷電化合物の交互沈着で使用することができる。非荷電(例えば、非イオン性)脂質は、1種または複数の単層を形成するために電気的に荷電した脂質と組み合わせて使用することができ、その間のモル比は、単層を通過する活性化合物の最小限の透過性を実現するために最適化することができる。
【0114】
一般的に予め形成された微粒子および1種または複数の単層を含有する本明細書で開示した表面修飾微粒子は、コア微粒子とは異なる活性薬剤放出プロファイルを有することが好ましい。放出プロファイルの違いの非限定的例には、初期バーストの減少、放出時間の延長、期間中の直線的/一定な放出の表示、および/または長期間にわたる放出速度の減少が含まれる。表面修飾微粒子は、好ましくは機能的に(例えば、治療的、薬学的、診断的に)有効な量で、液体または固体組成物または製剤に溶かした懸濁液または乾燥粉末として、1種または複数の保存剤、等張化剤、薬学的に許容される担体および安定化剤の存在下または非存在下で、存在させることができる。このような組成物および製剤は、症状または状態の予防または治療のために、あるいは、栄養補給剤として、あるいは身体的増強または生理学的に満足な状態のために、対象に有効量で投与することができる。このような組成物および製剤は、存在するか、もしくは存在しない物質、症状または症状、あるいは、このような症状または障害の素質のin vitroおよび/またはin vivoで検出するための診断方法、装置、またはキットに組み込むことができる。例えば、物質は、接触すると、表面修飾微粒子またはその一部(例えば、コア微粒子)と結合体(例えば、コンジュゲート、複合体)を形成し、検出のための1種または複数の信号を提供することができる。1種または複数の信号は、この結合の1種または複数の部分(例えば、物質、微粒子)上に標識された1種または複数の部分であってよく、あるいは、この結合体の形成によって誘発されてよい(例えば、発光、他の物質の放出)。さらに、表面修飾微粒子は、対象の症状または障害を予防および/または治療するために、栄養補給剤および/または栄養補助食品または食品成分に組み入れるか、あるいは食品添加物として使用することができる。
【0115】
本発明の開示に従って製造した表面修飾微粒子の分析方法およびいくつかの実施例を以下に記載する。実施例で形成された荷電単層は全て、本明細書で記載した通りの飽和単層であるものと考えられる。報告された読み取り値および測定値は、以下に記載した機器および方法を使用して記録した。
【0116】
水晶振動子微量天秤(QCM)測定
QCM法は、SRA含有溶液の存在下で電気的に荷電した化合物の積層集合体の存在を確かめるために使用した。複数の(例えば、2、3または4)PAH/PSS2層の前駆体フィルム(すなわち、各2層はPSS単層に密着して隣接したPAH単層を含む)をQCMの9MHz銀共振器(USI QCMシステム、260303モデル、Sanwa Tsusho Co.、Ltd、日本)上に沈着させた。各単層を形成するために、荷電化合物を濃度1.5mg/mLで含むNaCl 0.25Mの水性緩衝液中で、室温で15分間、この共振器をインキュベートし、脱イオン(DI)水で3回洗浄し、乾燥させた。水性緩衝液の代わりに、単層はまた、荷電化合物を濃度3mg/mLで有するDI水溶液を使用して形成することができる。
【0117】
前駆体フィルム上に関心のある電気的に荷電した化合物の単層それぞれを形成するために、コーティングした共振器をさらに、それぞれの荷電化合物を含有する水性緩衝液中で、+2℃で約1時間インキュベートし、次いでDI水で洗浄した。高分子電解質および荷電タンパク質については、緩衝液中の荷電化合物の濃度は、0.1mg/mLから3mg/mLの範囲であり、好ましくは1mg/mLであった。荷電脂質については、緩衝液(懸濁液)中の荷電化合物の濃度は、0.1mg/mLから3mg/mL、好ましくは0.25mg/mLから1mg/mLであった。(w/vパーセントで表して)a)PEG16%−NaCl0.7%、pH5.8、b)PEG16%−NaCl0.7% pH7.0、c)酢酸0.16%−ZnCl20.026%を含む様々な緩衝液を使用した。集合用の緩衝液中のPEG、NaClおよびZnCl2の濃度は、最適にするために変化させてよい。
【0118】
単層は、形成後、窒素ガス流中で乾燥させた。単層それぞれを形成した後、共振器の振動変化をモニターし、当業者に理解されている厚さに変換し、その結果を図9に示した。
【0119】
微粒子の正味表面電荷の測定
微粒子の正味表面電荷(ゼータ電位)を測定するために、ゼータ電位分析器(ZetaPALSモデル、Brookhaven Instruments Corp.、Holtsville、NY)を使用した。観察下で各試料の一部40μlを、塩を含まない対応するPEG溶液1.5mLに添加し、混合し、得られた懸濁液を測定のためにすぐ使用した。懸濁液の温度は、微粒子分解を最小限に抑えるために8℃に平衡化させた。
【0120】
in vitro放出(IVR)
(インシュリンなどの)活性薬剤のIVRプロファイルを作製するために、放出緩衝液(Tris10mM、Brij35 0.05%、NaCl 0.9%、pH7.4)の一部10mLを、濃縮粒子懸濁液0.5mL(インシュリン3mgに相当)を含有するガラスバイアルに添加し、混合し、37℃でインキュベートした。指定した時間間隔で、IVR媒体400μLを微量遠心管に移し、13krpmで2分間遠心した。上清の一部300μLを取り出し、当業界で理解されている通りにビシンコシン酸(BCA)測定法によって分析するまで、−80℃に保存した。新鮮な放出緩衝液の一部300μlをこの微量遠心管に添加して、ペレットを元に戻した。懸濁液400μLをIVRに戻した。微粒子中の活性薬剤総含量は、ジメチルスルホキシド(DMSO)および界面活性剤およびpH中和剤を含有する水性アルカリ溶液中に微粒子を完全に溶解した後、BCA測定法によって測定した。
【実施例】
【0121】
(実施例1A)
ポリスチレンスルホン酸単層を備えた小球体
本明細書で開示した相分離法を使用して形成されたインシュリン小球体(すなわち、予め形成された微粒子)を、ポリイオンPSS0.3mg/mLの存在下でPEG16%(w/v)およびNaCl0.7%(w/v)の水性溶液中で2℃でpH4.8で1時間インキュベートした。結合していないPSSを除去するために遠心洗浄(3000rpmで15分)を2回行い、毎回、小球体を再懸濁するための洗浄媒体として初期量の前述の水性溶液を使用した。非修飾小球体および修飾小球体のゼータ電位値を比較して、PSS単層の形成を確かめた(図3)。
【0122】
(実施例1B)
ポリスチレンスルホン酸およびポリアリルアミン塩酸塩の複数の交互単層を備えた小球体
実施例1AのPSS修飾微粒子は、ポリカチオンPAHのその後の単層を形成するための中間体微粒子として使用した。同様の形成および洗浄方法は、PAHを同濃度のPSSと置換する以外は、実施例1Aで記載した通りに使用した。所望する数の交互単層を形成するためにこの方法を繰り返した。図3は、各単層形成後にPSS/PAH2層集合物を4回連続して沈着したゼータ電位値を示す。
【0123】
(実施例2A)
小球体の表面中性点を下回るpHで表面修飾された小球体
実施例1Aの方法を使用して、pH4.8(約5.6で認められる小球体の表面中性点を下回る)でインシュリン小球体上にポリアニオン単層を形成した。図4は、ポリアクリル酸(ポリアニオンのモデル)、デキストラン硫酸、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸およびアルギン酸の単層を備えたインシュリン小球体のゼータ電位値を示す。予め形成されたインシュリン小球体のpH4.8でのゼータ電位は、正の正味表面電荷を示した。それぞれのポリアニオン単層を形成した後、得られた表面修飾小球体の正味表面電荷は負だった。
【0124】
(実施例2B)
小球体の表面中性点を上回るpHで表面修飾された小球体
実施例1Aおよび1Bの方法を使用して、(小球体の表面中性点を上回る)pH7.0でインシュリン小球体上にポリカチオン単層を形成した。図5は、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA、ポリカチオンのモデル)、プロタミン硫酸(ProtS)、ポリ−l−アルギニン(PLA)およびポリ−l−リシン(PLL)の単層を備えたインシュリン小球体のゼータ電位値を示す。予め形成されたインシュリン小球体のpH7.0でのゼータ電位は、負の正味表面電荷を示した。それぞれのポリカチオン単層を形成した後、得られた表面修飾小球体の正味表面電荷は正だった。図6に示したように、FITC標識プロタミン単層を備えたインシュリン小球体のLSC顕微鏡写真によって、ポリカチオン単層の形成が確かめられた。
【0125】
(実施例3A)
反対に荷電したポリイオンの複数の単層を備えた小球体
実施例1A&2Aで得られた小球体を中間体小球体として使用して、ポリカチオンPLL0.3mg/mLの存在下で水性溶液中(PEG16%、NaCl0.7%、pH4.8)に再懸濁し、2℃で1時間インキュベートして、形成されたポリアニオン単層の上にPLLの次の単層を形成した。図7に示したように、小球体の正味表面電荷逆転によって、ポリイオン単層の形成が確認された。図8に示したように、形成されたPSS単層および次のFITC標識PLL単層を備えたインシュリン小球体のLSC顕微鏡写真によって、ポリカチオンPLLの表面沈着が示された。
【0126】
前述のようなQCMを、各ポリイオン単層の厚さを測定するために使用した。反応媒体は、PLLまたはコンドロイチン硫酸をPEG16%、NaCl0.7%中に1mg/mLで含有した。フィルム集合体は、ポリイオンを含有する反応媒体中で、それぞれ15分間QCM共鳴器を連続的にインキュベートし、その直後DI水で洗浄し、窒素流で乾燥させることによって構築した。図9は、各単層形成後漸増するフィルムの厚さを示す。ポリイオンに応じて、各単層全体の厚さの増加は約1nm以下で、平均増加は約0.5nmであることが推定された。
【0127】
(実施例3B)
逆に荷電した生体適合性ポリイオンの複数の単層を備えた小球体
コンドロイチン硫酸およびゼラチンAは、予め形成されたインシュリン小球体の周りに逆に荷電したポリイオンの複数の単層を形成するために、PEG16%およびNaCl0.7%の水溶液中で、pH4.8で2℃で使用された。実施例1Aの方法によって、コンドロイチン硫酸単層を形成した後、ゼラチンA単層を形成した。6層の交互荷電単層を形成するために、この方法を繰り返した。各単層形成後の小球体の正味表面電荷の逆転を図10に示す。
【0128】
(実施例4A)
多価カチオンおよびPEGの存在下での単層形成
予め形成されたインシュリン小球体の周りにプロタミンおよびコンドロイチン硫酸の単層を形成するために、水溶液のpHが6.4で、PEG16%、NaCl0.7%、酢酸0.16%(w/v)およびZnCl20.026%(w/v)を含有すること以外は、実施例1Bの方法を使用した。比較実施例は、pH6.4で、PEG16%、NaCl0.7%を含有するZnおよび酢酸塩を含まない水溶液を使用して形成した。得られた小球体のゼータ電位を図11に示す。
【0129】
(実施例4B)
多価カチオンの存在下およびPEGの非存在下での単層形成
予め形成されたインシュリン小球体の周りにプロタミンおよびコンドロイチン硫酸の単層を形成するために、水溶液がPEGを含まず、pHが7.0で、NaCl0.7%、酢酸0.16%、ZnCl20.026%を含有すること以外は、実施例1Bの方法を使用した。得られた小球体のゼータ電位を図12に示す。
【0130】
(実施例5)
リポソームで表面修飾した小球体
PEG16%、NaCl0.7%、酢酸0.16%、ZnCl20.026%、pH7.0の水溶液に懸濁した、60%カチオン性脂質1,2−ジオレイル−3−ジメチルアンモニウム−プロパン(DAP)および20%両性イオン1,2−ジオレイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)を含有するリポソームを使用して、(同水溶液で予め洗浄された)予め形成されたインシュリン小球体と2℃で1時間一緒にインキュベートした。コンドロイチン硫酸の次の単層を形成するために実施例4Bの方法を適用した。
【0131】
あるいは、実施例4Bの方法を使用して、アニオン性1,2ジステアロイル−sn−グリセロ−3[ホスホル−rac−(1−グリセロ)])(DSPG、ナトリウム塩)、DOPCおよびコレステロールを含有するリポソームをプロタミン修飾インシュリン小球体に沈着させた。図13は、ローダミンB標識プロタミン単層を含有する小球体(右上)、FITC標識DAPを含有する小球体(左上)および両方を含有する小球体(左下)のLSC顕微鏡写真を示す。各沈着後の小球体のゼータ電位値を図14に示す。
【0132】
(実施例6)
プロタミン修飾小球体からのインシュリンの持続放出
プロタミン修飾インシュリン小球体は、実施例2Bの方法を使用して、反応媒体中において様々な濃度のポリイオンで形成した。得られたプロタミン修飾インシュリン小球体のIVRプロファイルを図15に示す。ポリイオンの濃度を増加させると、表面修飾小球体からのインシュリンの初期バーストおよびその後の放出速度が減少した。
【0133】
(実施例7)
複数の単層による放出変更
実施例2Bで得られた小球体を中間体微粒子として使用して、その周りにカルボキシメチルセルロース(CMC)を反応媒体中において様々な濃度で沈着させた。図16に示したIVRプロファイルは、その後の単層が表面修飾小球体からの活性薬剤の放出をさらに変更する能力を示している。さらにプロタミン単層を沈着すると、放出プロファイルを部分的または完全に回復することができた(図17)。
【0134】
(実施例8)
プロタミン修飾インシュリン小球体からのインシュリンのin vivo放出
プロタミン修飾インシュリン小球体からのインシュリンのin vivo放出を、化学的に誘導したスプラーグドーリーラットで調べた。実施例2Bに従って調製した表面修飾小球体をPEG3350 16%、pH7.0に溶かした懸濁液として投与した。表面修飾を行っていない予め形成されたインシュリン小球体を、PEG溶液、またはリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4に溶かして対照として投与した。動物には、最初に小球体を1IU/kgの皮下用量で投与した。収集した試料中の組換えヒトインシュリン(rhINS)血清レベルを測定するために、ELISA測定法を使用した。表1および図18Aおよび18Bに示した結果は、投与用量の薬物動態に対する表面修飾の著しい効果を示している。特に、表面修飾は、rhINS(Cmax)の最大血清濃度およびCmaxを実現する時間(tmax)、ならびにrhINS濃度−時間曲線下面積(AUC)およびタンパク質の平均滞留時間(MRT)を増加させた。血清グルコース抑制(図18)はまた、対応する血清rhINSと一致した。以下に示したように、表面修飾微粒子では、非修飾、予め形成された微粒子のCmaxおよびtmaxと比較して、Cmaxがずっと増加した。この実施例で示したように、表面修飾微粒子のCmaxは、予め形成された微粒子のCmaxより2.5倍高かった。その他の実施例では、表面修飾微粒子のCmaxは、予め形成された微粒子のCmaxの1.1倍以上、1.25倍以上、1.5倍以上、2.0倍以上増加することができる。
【0135】
【表1】
(実施例9)
様々な溶解度抑制剤の存在下での表面修飾
予め形成されたインシュリン微粒子をインキュベートするために使用したプロタミン硫酸(0.15mg/mL)の水性媒体は、PLURONIC(登録商標)F−68またはF−127(10%または16%w/v)の1つ、グリセロール(20%、40%または60%v/v)およびエタノール(10%v/v)を含有した。実施例1Aで説明した方法に従った。図19に示した表面修飾前後の小球体のゼータ電位値は、プロタミン単層の形成を示唆した。
【0136】
(実施例10)
表面修飾小球体の放出プロファイルに対する荷電化合物の濃度の効果
実施例1Aの方法に従って、プロタミン硫酸の濃度を0.1mg/mLから1.5mg/mLの範囲で変化させた。図20Aは、小球体のゼータ電位と48時間後のインシュリンの累積放出との間の関係を示す。反応媒体中のプロタミン濃度の増加は、インシュリン放出の減少と相関し、観察された最大効果濃度は約0.3mg/mLである。
【0137】
プロタミン濃度1.5mg/mLで調製されたプロタミン修飾小球体はさらに、ポリアニオンカルボキシメチルセルロース0.05〜1.2mg/mLまたはコンドロイチン硫酸0.1〜1.2mg/mLの濃度範囲で修飾した。その後の単層の形成によって、図20Bおよび20Cに示したように、プロタミン単層の放出減少効果は著しく逆転した。この結果から、2、3の単層には、制御された方法で微粒子の放出プロファイルを微量調節する能力があることが示唆された。
【0138】
(実施例11)
hGH小球体の表面修飾
予め形成されたhGH小球体を交互に、プロタミン硫酸およびコンドロイチン硫酸0.3mg/mLそれぞれを含有する水性媒体(PEG335016%、NaCl0.7%、pH6.0)中で2℃でそれぞれ1時間インキュベートし、交互荷電単層を形成した。図21Aは、各単層沈着後の小球体のゼータ電位を示す。図21Bにおいて、1、2または3層の単層を備えた表面修飾hGH小球体のIVRプロファイルを、非修飾の予め形成されたhGH小球体のプロファイルと比較する。
【0139】
(実施例12)
静脈イムノグロブリンの小球体の表面修飾
予め形成されたの静脈イムノグロブリン(IVIG)小球体を、コンドロイチン硫酸およびプロタミン硫酸の交互単層で修飾した。各単層について、インキュベーションは、PEG8000 12.5%、酢酸アンモニウム50mMおよび各ポリイオン0.15mg/mLを含有するpH7.0の水性媒体中で4℃で1時間実施した。過剰なポリイオンを除去するために遠心洗浄を使用した。図22は、各単層沈着後の小球体のゼータ電位を示す。
【0140】
(実施例13)
水性PEG媒体中での小球体の表面電荷特性
PEG16%を含有する溶解度減少媒体中における予め形成されたインシュリン小球体の表面荷電特性を測定するために、媒体のpHを4〜7.5の範囲で調節した。小球体のゼータ電位を各媒体中で測定して、図23に示すように、対応するpHに対してプロットした。予め形成されたのインシュリン小球体の表面中性点は5.6と推定された。媒体のpHが表面中性点を下回って減少するか、上回って増加するにつれて、予め形成されたインシュリン小球体の正味表面電荷はそれぞれより正または負になった。
【0141】
(実施例14)
表面修飾小球体のゼータ電位および放出プロファイルに対する反応pHの効果
本明細書で開示した相分離法を使用して形成されたインシュリン小球体(20mg)を4℃で以下のpH値、5.7、5.9、6.5および7.0の1つの緩衝液(PEG16%(w/v)、NaCl0.7%(w/v)および酢酸ナトリウム67mMを含有する)に懸濁した。異なるpHの緩衝液に溶かした非修飾小球体のゼータ電位を本明細書で前述したように測定した。プロタミン硫酸、ポリ−l−リシン、またはポリ−l−アルギニンは、懸濁液と同様のpHの同緩衝液で6mg/ml溶液として、その1mlを懸濁液に添加した。得られた反応混合物それぞれの小球体濃度は1mg/mlで、ポリカチオン濃度は0.3mg/mlであった。得られた反応混合物を4℃で1時間インキュベートして、次に反応混合物のそれぞれのpH値の新鮮な緩衝液の一部20mlで遠心によって3回洗浄した(3000rpmで15分間)。最終洗浄の再懸濁物中の得られた表面修飾小球体のゼータ電位は、前述の通りに測定した。次に、表面修飾小球体は、本明細書で開示したプロトコールに従ってin vitro放出を行った。
【0142】
図25に示したように、ポリカチオン単層の形成は、前述した様々な反応pH値でのインシュリン小球体の表面電荷の性質を逆転させた(負から正)。表面修飾小球体のゼータ電位および電荷逆転の規模は、少なくとも部分的には反応pHおよび/またはポリカチオンに左右されるようである。特に、PLL修飾インシュリン小球体のゼータ電位は、非修飾インシュリン小球体の表面中性点(インシュリンSNPcore、約5.6)に近い反応pH値(例えば、5.7、5.9)では高く(一般的に15mV以上の範囲、例えば、約20mV)、インシュリンSNPcoreから離れた反応pH値(例えば、6.5、7.0)では低い(一般的に、15mV以下の範囲、例えば、約8mV)。PLL単層形成後の電荷逆転の規模(約30mV)は、上記に明記した様々な反応pH値で同一であった。
【0143】
PLA修飾インシュリン小球体のゼータ電位は、インシュリンSNPcoreに近い反応pH値では高く(20mVを上回る)、インシュリンSNPcoreから離れた反応pH値では低い(20mVを下回る)。PLA単層形成後の電荷逆転の規模は、インシュリンSNPcoreに近い反応pH値では少なく(約30mV)、インシュリンSNPcoreから離れた反応pH値では多い(約40mV)。ProtS修飾インシュリン小球体のゼータ電位(約20mV)は、上記に明記した様々な反応pH値で同一であった。プロタミン硫酸単層形成後の電荷逆転の規模は、インシュリンSNPcoreに近い反応pH値では少なく(約30mV以下)、インシュリンSNPcoreから離れた反応pH値では多い(約40mV以上)。
【0144】
図26に示したように、表面修飾インシュリン小球体からのインシュリンのin vitroでの1時間累積放出率(%CR1h)は、反応pHおよび/または表面修飾反応で使用したポリカチオンによって影響を受けた。特に、インシュリン%CR1hは一般的に、インシュリンSNPcoreから離れた反応pH値の場合よりもインシュリンSNPcoreに近い反応pH値の場合の方が大きく、その間の差は、5%より大きく、10%まで、20%まで、30%未満までの範囲であった。同一の反応pHでは、PLA修飾小球体およびProtS修飾小球体は、同程度のインシュリン%CR1hを有し、そのレベルは、PLL修飾小球体よりも少なく、その間の差は一般的に20%から30%以上であった。
【0145】
%CR1hが50%未満、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、最も好ましくは20%未満であることが所望され得る場合、本発明の開示の予め形成された微粒子(例えば、非修飾インシュリン小球体)は、ある種の荷電化合物(例えば、プロタミン硫酸、PLA)を使用して、SNPcoreから離れた反応pHで表面修飾されてよい。%CR1hが50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、最も好ましくは75%以上であることが所望され得る場合、本発明の開示の予め形成された微粒子(例えば、非修飾インシュリン小球体)は、ある種の荷電化合物(例えば、PLL)を使用して、SNPcoreに近い反応pHで表面修飾されてよい。
【0146】
(実施例15)
表面修飾核酸小球体
核酸小球体は、全体を参照によって本明細書に組み込んだ米国特許出願公開第2006−0018971号および第2006−0024240号の開示によって形成された。小球体それぞれは、CD40siRNAを少なくとも80重量%(例えば、85重量%から90重量%)およびポリ−l−リシンを15重量%以下(例えば、6重量%から10重量%)含有する均一な混合物を有する。この核酸小球体を、ローダミンB標識PLL(70kD)1mg/mlを含有し、ヌクレアーゼを含まない脱イオン水(pH7.0)100μlに懸濁した。この懸濁液を撹拌しながら4℃で45分間インキュベートして、表面修飾小球体を形成し、次に、ヌクレアーゼを含まない脱イオン水(pH7.0)で遠心によって洗浄した。非修飾小球体および表面修飾小球体のゼータ電位は、それぞれ−24mVおよび34mVであることが測定された。明らかに、ポリカチオン単層の形成による核酸小球体の表面修飾は、表面の電気的荷電を逆転させることができる。ローダミンB標識PLLのレーザー走査共焦点顕微鏡写真を図27に示すが、核酸小球体の外面に単層がうまく形成されていることが確認される。
【0147】
(実施例16)
表面修飾微粒子の熱処理
本明細書で開示した通りの制御された相分離によって形成されたものなどの予め形成された非修飾インシュリン小球体(12mg)を、PEG16%(w/v)、NaCl0.7%(w/v)および酢酸ナトリウム67mMを含有するpH7.0の緩衝液1.5mlに4℃で懸濁した。濃度6mg/mlで、同一緩衝液に溶解したポリカチオン(ProtS、PLLまたはPLA)の水溶液1.5mlをこの懸濁液と混合すると、小球体濃度4mg/mlおよびポリカチオン濃度3mg/mlを有する反応混合物が生じた。この反応混合物を4℃で継続的に攪拌しながら30分間インキュベートして、それぞれポリカチオン単層を備えた表面修飾インシュリン小球体を形成した。次に、この反応混合物をさらに30分間、温度4℃、15℃、28℃または37℃でインキュベートした。次いで、熱処理インシュリン小球体を遠心(3000rpm、4℃で10分間)によって収集し、pH7.0の新鮮な緩衝液の一部で4℃で3回洗浄した。熱処理した表面修飾インシュリン小球体のゼータ電位データおよびin vitro放出プロファイルは、本明細書で前述した通りに作製された。
【0148】
予期せぬことに、前述したある種の熱処理(例えば、15℃、28℃または37℃の温度でのインキュベートであるが、それだけに限定はされない)は、それらのその他の特性(例えば、粒径、長時間にわたる放出相)に悪影響を及ぼすことなく表面修飾微粒子のある種の特性(例えば、ゼータ電位および放出プロファイル)を選択的および特異的に改変することができた。図28に例示したように、前述のような様々な高温でインキュベートすると、ポリカチオン修飾インシュリン小球体からのインシュリン初期放出の様々なレベルが生じ(15℃でインキュベートした後よりも、28℃でインキュベートした後の方がインシュリン%CR1hは低い)、高くない温度(すなわち、4℃)でインキュベートした後よりも一貫して下回っている。
【0149】
表2に例示したように、熱処理した、表面修飾微粒子のin vitro放出プロファイルにおける初期放出または「バースト」相は、%CR1hで表すと、熱処理を受けていない表面修飾微粒子(例えば、第2の温度4℃でインキュベートしたもの)と比較して減少していた。熱処理した表面修飾微粒子からin vitroにおいて放出された活性薬剤の%CR1hの減少量は、対照に対して、10%以上、例えば、15%以上、25%以上または40%以上であることができる。
【0150】
【表2】
インシュリンのin vitro放出の初期放出相に対する(28℃での)熱処理の減少効果は、前記で試験したポリカチオンにおいて一貫して認められた。予期せぬことに、様々なポリカチオンがインシュリンの初期放出に対して様々なレベルの抑制を発揮した。図26および28に示したように、また表3にまとめて示したように、本発明の開示のPLA修飾インシュリン小球体で認められた減少効果は、PLL修飾インシュリン小球体におけるよりも大きく、一方ProS修飾インシュリン小球体で認められた減少効果は、PLL修飾インシュリン小球体におけるよりも小さい。
【0151】
【表3】
(実施例17)
表面修飾微粒子の熱処理
本明細書で開示したような制御された相分離法によって形成されたものなどの予め形成されたの非修飾hGH小球体に、実施例16で記載したのと同様の熱処理を行った。熱処理した表面修飾hGH小球体のゼータ電位データおよびin vitro放出プロファイルは、本明細書で前述した通りに作製された。表4に示したように、28℃でインキュベーションした後の表面修飾hGH小球体の%CR1hは、4℃でインキュベーションした後の表面修飾hGHと同程度に減少した。
【0152】
【表4】
(実施例18)
熱処理した表面修飾微粒子のin vivoでの効果
非修飾インシュリン小球体を、本明細書で開示した制御された相分離法を使用して調製した。非修飾インシュリン小球体の2つの部分をPLAで表面修飾し、実施例16で記載した方法に従って、1つの部分を(28℃で)熱処理し、もう1つの部分を対照として4℃でインキュベートした。緩衝液(PEG16%(w/v)、NaCl0.7%(w/v)、pH7.0)に懸濁した3種類の異なるインシュリン小球体の1種類をそれぞれ含有する注射用組成物を調製した。組成物を正常なスプラーグドーリーラットに4IU/kgの用量で皮下投与した。収集した試料中のインシュリン血清レベルを測定するために、ELISA測定法を使用した。結果を表5および図29Aおよび29Bに示す。図29Aに示したように、CR1hは同様に熱処理後に減少した。
【0153】
4℃で処理したPLA修飾インシュリン小球体は、同程度の血清インシュリン濃度プロファイル、血清グルコース抑制プロファイル、Cmaxおよびtmaxを示した。相対的に、28℃で処理したPLA修飾インシュリン小球体は、平坦で、右に偏った血清インシュリン濃度プロファイル、右に偏った血清グルコース抑制プロファイル、Cmaxの減少およびtmaxの延長を示した。
【0154】
【表5】
図29Aは、コーティングされていないインシュリン小球体、28℃で処理されたPLA修飾インシュリン小球体、または4℃で処理されたPLA修飾インシュリン小球体の皮下注射を1回受けたラットにおける血清インシュリン濃度対時間プロファイルを示した図である(実施例18)。
【0155】
図29Bは、コーティングされていないインシュリン小球体、28℃で処理されたPLA修飾インシュリン小球体、または4℃で処理されたPLA修飾インシュリン小球体の皮下注射を1回受けたラットにおける血清グルコース抑制対時間プロファイルを示した図である(実施例18)。
【0156】
本明細書で開示した実施形態は、開示の態様の単なる例示に過ぎず、様々な異なる形態で実施することが可能であることを理解されたい。したがって、本明細書で開示した具体的な詳細および好ましい実施形態は、制限するものとして解釈すべきではなく、単に、特許請求の範囲のための基準、および任意の適切な方法で本明細書で開示した対象物を様々に使用するために当業者を教示するための代表的な基準である。記載された実施形態は、本発明の開示の原則の適用のいくつかを例示しており、個々に開示した、または本明細書で請求した特性の組合せを含む変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】図1は、本発明の開示で記載した例示的方法を示す流れ図である。
【図2】図2は、予め形成された微粒子上の荷電化合物の単層の作製の概略図である。
【図3】図3は、交互に荷電した単層を備えたインシュリン微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例1Aおよび1B)。
【図4】図4は、それぞれが、様々なポリアニオン性化合物の1単層を備えたインシュリン微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例2A)。
【図5】図5は、それぞれが、様々なポリカチオン性化合物の1単層を備えたインシュリン微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例2B)。
【図6】図6は、1層のFITC標識プロタミン単層を備えたインシュリン微粒子のレーザー走査共焦点(LCS)顕微鏡写真を示した図である(実施例2B)。
【図7】図7は、それぞれが、異なるポリアニオン性化合物の第1単層およびポリ−L−リシンの第2単層を備えたインシュリン微粒子の表面の電気的荷電変化を示した図である(実施例3A)。
【図8】図8は、PSSの第1単層およびFITC−標識PLLの第2単層を備えたインシュリン微粒子のLSC顕微鏡写真を示した図である(実施例3A)。
【図9】図9は、交互に荷電した高分子電解質単層(例えば、PLLおよびコンドロイチン硫酸)をQCM電極上にそれぞれ逐次沈着した後の漸増するフィルム厚を示した図である(実施例3A)。
【図10】図10は、コンドロイチン硫酸単層およびゼラチンA単層を次々と沈着した後のインシュリン微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例3B)。
【図11】図11は、PEG含有反応媒体中における、亜鉛カチオンの存在下および非存在下での、プロタミン硫酸およびコンドロイチン硫酸の単層を備えたインシュリン微粒子のゼータ電位を比較した図である(実施例4A)。
【図12】図12は、PEGを含有しない反応媒体中における、亜鉛カチオンの存在下での、プロタミン硫酸およびコンドロイチン硫酸の単層を備えたインシュリン微粒子のゼータ電位を示した図である(実施例4B)。
【図13】図13は、ローダミンB標識プロタミンの1単層(左上)およびFITC標識DAPの1単層(右上)を備えたインシュリン微粒子のLSC顕微鏡写真を示した図である(実施例5)。
【図14】図14は、実施例5で説明したような各単層沈着後のインシュリン微粒子のゼータ電位を示した図である。
【図15】図15は、様々な濃度のポリカチオンを有するプロタミン硫酸の単層でコーティングされた微粒子からの反応媒体中におけるインシュリン放出プロファイルを示した図である(実施例6)。
【図16】図16は、プロタミン硫酸の第1単層および様々な濃度のポリアニオンのカルボキシメチルセルロースの第2単層を備えた微粒子の反応媒体中におけるインシュリン放出プロファイルを示した図である(実施例7)。
【図17】図17は、3種の単層でコーティングされたインシュリン微粒子のインシュリン放出プロファイルを示した図である(実施例7)。
【図18A】図18Aは、コーティングされていない微粒子またはプロタミンコーティングされたインシュリン微粒子の皮下注射を1回受けたラットにおける、血清ヒトインシュリン(hINS)濃度対時間プロファイルを示した図である(実施例8)。
【図18B】図18Bは、コーティングされていないインシュリン微粒子またはプロタミンコーティングされたインシュリン微粒子の皮下注射で1回処置されたラットにおける、血清グルコース抑制対時間プロファイルを示した図である実施例8)。
【図19】図19は、pH7.0の様々な溶解度抑制媒体において、プロタミンの1単層を沈着したことによる、インシュリン微粒子の表面電荷の変化を示した図である(実施例9)。
【図20A】図20Aは、反応媒体中のプロタミン濃度の、インシュリン微粒子の表面電荷およびin vitro放出の開始から48時間後の分解程度に対する効果を示した図である(実施例10)。
【図20B】図20Bは、反応媒体中のCMC濃度の、プロタミンコーティングされたインシュリン微粒子の表面電荷およびin vitro放出の開始から48時間後の分解程度に対する効果を示した図である(実施例10)。
【図20C】図20Cは、反応媒体中のプロタミン濃度の、プロタミンの1単層およびCMCの1単層でコーティングされたインシュリン微粒子の表面電荷およびin vitro放出の開始から48時間後の分解程度に対する効果を示した図である(実施例10)。
【図21A】図21Aは、プロタミン硫酸およびコンドロイチン硫酸単層で次々と沈着した後のhGH微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例11)。
【図21B】図21Bは、プロタミンおよびコンドロイチン硫酸が交互になった1、2または3層の単層でコーティングされた微粒子からのhGH放出のプロファイルを示した図である(実施例11)。
【図22】図22は、コンドロイチン硫酸およびプロタミン硫酸単層で次々と沈着した後の静注用イムノグロブリン(IVIG)微粒子のゼータ電位変化を示した図である(実施例12)。
【図23】図23は、pH範囲4から7.5までの16%PEG溶液におけるインシュリン小球体の正味表面電荷特性を示した図である(実施例13)。
【図24】図24は、本発明の開示で記載した微粒子を調製する他の例示的方法を示す流れ図である。
【図25】図25は、プロタミン硫酸、ポリ−l−リシンまたはポリ−l−アルギニンの1単層で表面修飾されたインシュリン微粒子のゼータ電位に対する反応pHの効果を示した図である(実施例14)。
【図26】図26は、プロタミン硫酸、ポリ−l−リシンまたはポリ−l−アルギニンの1単層で表面修飾されたインシュリン微粒子のin vitroでの1時間累積インシュリン放出率に対する反応pHの効果を示した図である(実施例14)。
【図27】図27は、ローダミンB標識ポリ−l−リシンの1単層で表面修飾された核酸微粒子のレーザー走査共焦点(LCS)顕微鏡写真を示した図である(実施例15)。
【図28】図28は、様々な温度で熱処理したPLL−インシュリン微粒子のin vitroでの放出プロファイルを示した図である。
【図29A】図29Aは、コーティングされていないインシュリン微粒子、28℃で処理したPLA修飾インシュリン微粒子および4℃で処理したPLA修飾インシュリン微粒子の皮下注射を1回受けたラットにおける血清インシュリン濃度対時間プロファイルを示した図である(実施例18)。
【図29B】図29Bは、コーティングされていないインシュリン微粒子、28℃で処理したPLA修飾インシュリン微粒子および4℃で処理したPLA修飾インシュリン微粒子の皮下注射を1回受けたラットにおける血清グルコース抑制濃度対時間プロファイルを示した図である(実施例18)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面修飾微粒子の調製方法であって、
正味表面電荷を有する外面を備えた、少なくとも1種の活性薬剤を含む固体およびアモルファスの予め形成された微粒子を提供する工程と、
前記予め形成された微粒子の少なくとも前記外面を、前記正味表面電荷と反対の符号の正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露する工程と、
前記少なくとも1種の荷電化合物を含む単層を形成し、それによって前記形成された単層が前記外面に結合する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記形成された単層が、前記予め形成された微粒子とは異なる正味表面電荷を帯びた外面を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の予め形成された微粒子の前記外面が、前記少なくとも1種の活性薬剤から実質的に構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記形成された単層が飽和単層であり、前記正味表面電荷が前記の予め形成された微粒子とは反対の符号である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記の予め形成された微粒子が、前記予め形成された微粒子全体に実質的に均一に分布される前記少なくとも1種の活性薬剤を約40重量%から100重量%未満含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の予め形成された微粒子が、前記予め形成された微粒子全体に実質的に均一に分布される前記少なくとも1種の活性薬剤を80重量%以上含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記曝露工程が、前記少なくとも1種の荷電化合物ならびに水、緩衝液、および水混和性有機溶媒の1種または複数ならびに1種または複数の溶解性抑制剤を含む溶液を提供することと、
前記溶液中で前記予め形成された微粒子を接触させることと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記の正味表面電荷には前記少なくとも1種の活性薬剤が実質的に関与している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1種または複数の溶解性抑制剤がアルコール、炭水化物、非イオン性水混和性重合体および多価カチオンを含む無機イオン化合物の1種または複数を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液が、重量対体積パーセントで、ポリエチレングリコール16%および塩化ナトリウム0.7%を含み、pHが4から10の間である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記溶液が、前記予め形成された微粒子の表面中性点から0から0.3未満異なるpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液が、前記予め形成された微粒子の表面中性点から0.3以上異なるpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記曝露工程が2℃と5℃の間の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
温度、圧力、pHまたはそれらの組合せの操作を含む1種または複数の処理を表面修飾微粒子に実施する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記処理が微粒子を含む懸濁液を高温で加熱することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記懸濁液を前記高温より低い低温に到達させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記表面修飾微粒子を前記溶液から分離することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1種の荷電化合物が、1種または複数の高分子電解質、荷電ポリアミノ酸、荷電多糖類、ポリイオン性重合体、荷電ペプチド、荷電タンパク質性化合物、場合によって荷電していない脂質と組み合わせた荷電脂質、荷電脂質構造物、およびそれらの誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
形成された単層の少なくとも前記外面を、前記形成された単層の前記正味表面電荷と反対の符号である正味電荷を帯びた少なくとも1種の異なる荷電化合物に曝露する工程と、
前記少なくとも1種の異なる荷電化合物を含み、前記形成された単層と結合する次の単層を形成する工程と
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記次の単層が前記形成された単層とは反対の符号の正味表面電荷を帯びた外面を備えている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
追加的交互荷電単層を1層から5層形成する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
奇数の追加的交互荷電単層を形成する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1種の活性薬剤の制御放出が可能な前記表面修飾微粒子を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記制御放出が初期バーストおよび実質的に直線である放出プロファイルを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記予め形成された微粒子が球体である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1種の活性薬剤がタンパク質性化合物である、請求項1に記載の微粒子。
【請求項27】
前記予め形成された微粒子が共有的架橋結合を含まず、ヒドロゲルを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記予め形成された微粒子が脂質を含まず、カプセル化を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
表面修飾微粒子の調製方法であって、
少なくとも1種の溶媒、少なくとも1種の活性薬剤、少なくとも1種の相分離増強剤を含む液体連続相系を提供する工程と、
液相−固相分離を引き起こすために、前記系において場合によって制御された速度で相変化を誘導する工程と、
前記少なくとも1種の活性薬剤を含み、正味表面電荷を帯びた外面を備えたアモルファスおよび固体の微粒子を含む固相ならびに前記溶媒および前記少なくとも1種の相分離増強剤を含む液相を形成する工程と、
前記形成された微粒子の少なくとも前記外面を、前記正味表面電荷と反対の符号の正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露する工程と、
前記少なくとも1種の荷電化合物を含む単層を形成する工程であって、前記形成された単層が形成された微粒子の前記外面と結合する工程と、
を含む方法。
【請求項30】
前記曝露工程の前に前記形成された微粒子を洗浄する工程を含まない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記曝露工程の前に、少なくとも1種の相分離増強剤の存在下で、前記形成された微粒子を洗浄する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記曝露工程が、少なくとも1種の相分離増強剤の存在下で実施される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記の予め形成された微粒子が、前記予め形成された微粒子全体に実質的に均一に分布される前記少なくとも1種の活性薬剤を80重量%以上を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記曝露工程が、
前記少なくとも1種の荷電化合物、場合によって多価カチオン、および重量対体積パーセントで、ポリエチレングリコール16%および塩化ナトリウム0.7%を含む溶液を提供することと、
前記溶液中で2℃から5℃の温度で1秒から10時間の期間、前記形成された微粒子をインキュベートすることと
を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1種の荷電化合物が、前記形成された微粒子の表面中性点と0から0.3未満異なるpHを有する溶液中で提供される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1種の荷電化合物が、前記形成された微粒子の表面中性点と0.3以上異なるpHを有する溶液中で提供される、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
単分散または多分散の大きさ分布を有する前記表面修飾微粒子を形成する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
表面修飾微粒子の調製方法であって、
少なくとも1種の活性薬剤を含み、正味表面電荷を帯びた外面を備えたアモルファスおよび個体の予め形成された微粒子を提供する工程と、
前記予め形成された微粒子の少なくとも前記外面を、前記予め形成された微粒子の前記正味表面電荷と反対の符号の正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露する工程と、
前記予め形成された微粒子、および前記予め形成された微粒子の前記外面と結合し、前記少なくとも1種の荷電化合物を含む形成された単層とを含む中間体微粒子を形成する工程と、
少なくとも前記形成された単層を少なくとも1種の異なる荷電化合物に曝露する工程と、
前記中間体微粒子および前記少なくとも1種の異なる荷電化合物を含む次の単層を含み、前記中間体微粒子の放出プロファイルと異なる前記少なくとも1種の活性薬剤の放出の放出プロファイルを有する前記表面修飾微粒子を形成する工程と
を含む方法。
【請求項39】
前記中間体微粒子に、温度、圧力、pHまたはそれらの組合せの操作を含む1種または複数の処理を実施する工程をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記処理が微粒子を含む懸濁液を高温で加熱することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1種の活性薬剤を80重量%以上含み、正味表面電荷を帯びた外面を含む固体、アモルファスのコア微粒子、および
前記コア微粒子の前記外面と少なくとも静電的相互作用によって結合し、前記コア微粒子の前記正味表面電荷と十分異なる正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物を含む単層を含む微粒子。
【請求項42】
前記少なくとも1種の活性薬剤が前記コア微粒子に均一に分布している、請求項41に記載の微粒子。
【請求項43】
前記コア微粒子が球体である、請求項41に記載の微粒子。
【請求項44】
前記単層の厚さが50nm未満である、請求項41に記載の微粒子。
【請求項45】
前記荷電化合物の前記電荷が前記微粒子外面の前記正味電荷と反対の符号である、請求項41に記載の微粒子。
【請求項46】
少なくとも1種の異なる荷電化合物を含む他の単層をさらに含み、前記その他の単層が前記コア微粒子と結合した前記単層の前記正味電荷とは異なる正味電荷を帯びた、請求項41に記載の微粒子。
【請求項47】
前記その他の単層の前記正味表面電荷が前記コア微粒子と結合した前記単層と反対の符号である、請求項46に記載の微粒子。
【請求項48】
前記活性薬剤がインシュリンまたはヒト成長ホルモンである、請求項41に記載の微粒子。
【請求項49】
少なくとも1種の活性薬剤を少なくとも80重量%含む微粒子であって、固体であり、前記微粒子の外面が前記活性薬剤と結合した少なくとも1種の荷電ポリマーを含み、10mM Tris、Brij35 0.05%(w/v)およびNaCl 0.9%(w/v)の水溶液から成る放出緩衝液pH7.4中で、37℃で、in vitro放出を行ったとき、活性薬剤の1時間累積放出率が50%以下を示すことができる微粒子。
【請求項50】
固体を含むin vivo投与用の微粒子であって、前記微粒子に均一に分布される少なくとも1種のタンパク質性化合物を少なくとも80重量%有し、前記微粒子の外面が前記外面に結合した少なくとも1種の荷電化合物を含み、
投与するとき、前記コア微粒子のCmaxおよびtmaxではないCmaxおよびtmaxを提供する微粒子。
【請求項51】
前記微粒子外面に結合した前記単層が、正に荷電した高分子電解質、正に荷電したポリアミノ酸および正に荷電した多糖類から本質的に構成された群から選択された正に荷電した化合物を含む、請求項50に記載の微粒子。
【請求項52】
前記コアに結合した前記単層が、負に荷電した高分子電解質、負に荷電したポリアミノ酸および負に荷電した多糖類から本質的に構成された群から選択された負に荷電した化合物を含む、請求項50に記載の微粒子。
【請求項53】
前記他の単層が、負に荷電した高分子電解質、負に荷電したポリアミノ酸および負に荷電した多糖類から本質的に構成された群から選択された負に荷電した化合物を含む、請求項51に記載の微粒子。
【請求項54】
前記他の単層が、正に荷電した高分子電解質、正に荷電したポリアミノ酸および正に荷電した多糖類から本質的に構成された群から選択された正に荷電した化合物を含む、請求項52に記載の微粒子。
【請求項55】
前記タンパク質性化合物がインシュリンまたはヒト成長ホルモンである、請求項50に記載の微粒子。
【請求項1】
表面修飾微粒子の調製方法であって、
正味表面電荷を有する外面を備えた、少なくとも1種の活性薬剤を含む固体およびアモルファスの予め形成された微粒子を提供する工程と、
前記予め形成された微粒子の少なくとも前記外面を、前記正味表面電荷と反対の符号の正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露する工程と、
前記少なくとも1種の荷電化合物を含む単層を形成し、それによって前記形成された単層が前記外面に結合する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記形成された単層が、前記予め形成された微粒子とは異なる正味表面電荷を帯びた外面を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の予め形成された微粒子の前記外面が、前記少なくとも1種の活性薬剤から実質的に構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記形成された単層が飽和単層であり、前記正味表面電荷が前記の予め形成された微粒子とは反対の符号である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記の予め形成された微粒子が、前記予め形成された微粒子全体に実質的に均一に分布される前記少なくとも1種の活性薬剤を約40重量%から100重量%未満含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の予め形成された微粒子が、前記予め形成された微粒子全体に実質的に均一に分布される前記少なくとも1種の活性薬剤を80重量%以上含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記曝露工程が、前記少なくとも1種の荷電化合物ならびに水、緩衝液、および水混和性有機溶媒の1種または複数ならびに1種または複数の溶解性抑制剤を含む溶液を提供することと、
前記溶液中で前記予め形成された微粒子を接触させることと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記の正味表面電荷には前記少なくとも1種の活性薬剤が実質的に関与している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1種または複数の溶解性抑制剤がアルコール、炭水化物、非イオン性水混和性重合体および多価カチオンを含む無機イオン化合物の1種または複数を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液が、重量対体積パーセントで、ポリエチレングリコール16%および塩化ナトリウム0.7%を含み、pHが4から10の間である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記溶液が、前記予め形成された微粒子の表面中性点から0から0.3未満異なるpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液が、前記予め形成された微粒子の表面中性点から0.3以上異なるpHを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記曝露工程が2℃と5℃の間の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
温度、圧力、pHまたはそれらの組合せの操作を含む1種または複数の処理を表面修飾微粒子に実施する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記処理が微粒子を含む懸濁液を高温で加熱することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記懸濁液を前記高温より低い低温に到達させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記表面修飾微粒子を前記溶液から分離することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1種の荷電化合物が、1種または複数の高分子電解質、荷電ポリアミノ酸、荷電多糖類、ポリイオン性重合体、荷電ペプチド、荷電タンパク質性化合物、場合によって荷電していない脂質と組み合わせた荷電脂質、荷電脂質構造物、およびそれらの誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
形成された単層の少なくとも前記外面を、前記形成された単層の前記正味表面電荷と反対の符号である正味電荷を帯びた少なくとも1種の異なる荷電化合物に曝露する工程と、
前記少なくとも1種の異なる荷電化合物を含み、前記形成された単層と結合する次の単層を形成する工程と
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記次の単層が前記形成された単層とは反対の符号の正味表面電荷を帯びた外面を備えている、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
追加的交互荷電単層を1層から5層形成する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
奇数の追加的交互荷電単層を形成する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1種の活性薬剤の制御放出が可能な前記表面修飾微粒子を形成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記制御放出が初期バーストおよび実質的に直線である放出プロファイルを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記予め形成された微粒子が球体である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1種の活性薬剤がタンパク質性化合物である、請求項1に記載の微粒子。
【請求項27】
前記予め形成された微粒子が共有的架橋結合を含まず、ヒドロゲルを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記予め形成された微粒子が脂質を含まず、カプセル化を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
表面修飾微粒子の調製方法であって、
少なくとも1種の溶媒、少なくとも1種の活性薬剤、少なくとも1種の相分離増強剤を含む液体連続相系を提供する工程と、
液相−固相分離を引き起こすために、前記系において場合によって制御された速度で相変化を誘導する工程と、
前記少なくとも1種の活性薬剤を含み、正味表面電荷を帯びた外面を備えたアモルファスおよび固体の微粒子を含む固相ならびに前記溶媒および前記少なくとも1種の相分離増強剤を含む液相を形成する工程と、
前記形成された微粒子の少なくとも前記外面を、前記正味表面電荷と反対の符号の正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露する工程と、
前記少なくとも1種の荷電化合物を含む単層を形成する工程であって、前記形成された単層が形成された微粒子の前記外面と結合する工程と、
を含む方法。
【請求項30】
前記曝露工程の前に前記形成された微粒子を洗浄する工程を含まない、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記曝露工程の前に、少なくとも1種の相分離増強剤の存在下で、前記形成された微粒子を洗浄する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記曝露工程が、少なくとも1種の相分離増強剤の存在下で実施される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記の予め形成された微粒子が、前記予め形成された微粒子全体に実質的に均一に分布される前記少なくとも1種の活性薬剤を80重量%以上を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記曝露工程が、
前記少なくとも1種の荷電化合物、場合によって多価カチオン、および重量対体積パーセントで、ポリエチレングリコール16%および塩化ナトリウム0.7%を含む溶液を提供することと、
前記溶液中で2℃から5℃の温度で1秒から10時間の期間、前記形成された微粒子をインキュベートすることと
を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1種の荷電化合物が、前記形成された微粒子の表面中性点と0から0.3未満異なるpHを有する溶液中で提供される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1種の荷電化合物が、前記形成された微粒子の表面中性点と0.3以上異なるpHを有する溶液中で提供される、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
単分散または多分散の大きさ分布を有する前記表面修飾微粒子を形成する工程をさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項38】
表面修飾微粒子の調製方法であって、
少なくとも1種の活性薬剤を含み、正味表面電荷を帯びた外面を備えたアモルファスおよび個体の予め形成された微粒子を提供する工程と、
前記予め形成された微粒子の少なくとも前記外面を、前記予め形成された微粒子の前記正味表面電荷と反対の符号の正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物に曝露する工程と、
前記予め形成された微粒子、および前記予め形成された微粒子の前記外面と結合し、前記少なくとも1種の荷電化合物を含む形成された単層とを含む中間体微粒子を形成する工程と、
少なくとも前記形成された単層を少なくとも1種の異なる荷電化合物に曝露する工程と、
前記中間体微粒子および前記少なくとも1種の異なる荷電化合物を含む次の単層を含み、前記中間体微粒子の放出プロファイルと異なる前記少なくとも1種の活性薬剤の放出の放出プロファイルを有する前記表面修飾微粒子を形成する工程と
を含む方法。
【請求項39】
前記中間体微粒子に、温度、圧力、pHまたはそれらの組合せの操作を含む1種または複数の処理を実施する工程をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記処理が微粒子を含む懸濁液を高温で加熱することを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1種の活性薬剤を80重量%以上含み、正味表面電荷を帯びた外面を含む固体、アモルファスのコア微粒子、および
前記コア微粒子の前記外面と少なくとも静電的相互作用によって結合し、前記コア微粒子の前記正味表面電荷と十分異なる正味電荷を帯びた少なくとも1種の荷電化合物を含む単層を含む微粒子。
【請求項42】
前記少なくとも1種の活性薬剤が前記コア微粒子に均一に分布している、請求項41に記載の微粒子。
【請求項43】
前記コア微粒子が球体である、請求項41に記載の微粒子。
【請求項44】
前記単層の厚さが50nm未満である、請求項41に記載の微粒子。
【請求項45】
前記荷電化合物の前記電荷が前記微粒子外面の前記正味電荷と反対の符号である、請求項41に記載の微粒子。
【請求項46】
少なくとも1種の異なる荷電化合物を含む他の単層をさらに含み、前記その他の単層が前記コア微粒子と結合した前記単層の前記正味電荷とは異なる正味電荷を帯びた、請求項41に記載の微粒子。
【請求項47】
前記その他の単層の前記正味表面電荷が前記コア微粒子と結合した前記単層と反対の符号である、請求項46に記載の微粒子。
【請求項48】
前記活性薬剤がインシュリンまたはヒト成長ホルモンである、請求項41に記載の微粒子。
【請求項49】
少なくとも1種の活性薬剤を少なくとも80重量%含む微粒子であって、固体であり、前記微粒子の外面が前記活性薬剤と結合した少なくとも1種の荷電ポリマーを含み、10mM Tris、Brij35 0.05%(w/v)およびNaCl 0.9%(w/v)の水溶液から成る放出緩衝液pH7.4中で、37℃で、in vitro放出を行ったとき、活性薬剤の1時間累積放出率が50%以下を示すことができる微粒子。
【請求項50】
固体を含むin vivo投与用の微粒子であって、前記微粒子に均一に分布される少なくとも1種のタンパク質性化合物を少なくとも80重量%有し、前記微粒子の外面が前記外面に結合した少なくとも1種の荷電化合物を含み、
投与するとき、前記コア微粒子のCmaxおよびtmaxではないCmaxおよびtmaxを提供する微粒子。
【請求項51】
前記微粒子外面に結合した前記単層が、正に荷電した高分子電解質、正に荷電したポリアミノ酸および正に荷電した多糖類から本質的に構成された群から選択された正に荷電した化合物を含む、請求項50に記載の微粒子。
【請求項52】
前記コアに結合した前記単層が、負に荷電した高分子電解質、負に荷電したポリアミノ酸および負に荷電した多糖類から本質的に構成された群から選択された負に荷電した化合物を含む、請求項50に記載の微粒子。
【請求項53】
前記他の単層が、負に荷電した高分子電解質、負に荷電したポリアミノ酸および負に荷電した多糖類から本質的に構成された群から選択された負に荷電した化合物を含む、請求項51に記載の微粒子。
【請求項54】
前記他の単層が、正に荷電した高分子電解質、正に荷電したポリアミノ酸および正に荷電した多糖類から本質的に構成された群から選択された正に荷電した化合物を含む、請求項52に記載の微粒子。
【請求項55】
前記タンパク質性化合物がインシュリンまたはヒト成長ホルモンである、請求項50に記載の微粒子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29A】
【図29B】
【公表番号】特表2008−539259(P2008−539259A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509099(P2008−509099)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/015918
【国際公開番号】WO2006/116546
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【出願人】(507355375)ルイジアナ テック ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/015918
【国際公開番号】WO2006/116546
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【出願人】(507355375)ルイジアナ テック ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
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