表面イオン化分光に使用するためのサンプリングシステム
本発明の種々の実施形態において、装置は、準安定の中性励起状態種を含む担体ガスの作用によって生成されたイオンを効率的に収集して質量分析計へ伝送することができる。本発明の一実施形態では、装置は、ジェットセパレータと組み合わせてイオン化ソースを合体し、過剰な担体ガスを効率的に除去する一方、質量分析計の真空チャンバーへイオンを効率的に移送することができる。本発明の一実施形態では、検体の位置と質量分析計の位置との間から長い距離において準安定の中性励起状態種を含む担体ガスにより発生されるイオンの改良された収集が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光システムによって効率的にサンプリングするための検体イオン及び中性分子の改良された収集及び移送に係る。
【0002】
優先権の主張:本出願は次の出願に基づく優先権を主張する。
2006年3月3日に出願されたBrain D. Mussclmanを発明者とする“A Sampling System for Use with Surface Ionization Spectroscopy”と題する米国仮出願第60/778,874号(代理人整理番号第IONS−01000SU0号)及び
2006年10月13日に出願されたBrain D. Mussclmanを発明者とする“A Sampling System for Use with Surface Ionization Spectroscopy”と題する米国特許出願第11/580,323号(代理人整理番号第IONS−01000SU1号)。
これらの出願の開示内容は、引用により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
ワトソン及びビーマンによる1960年代のガス流出セパレータの発明、及びその改良である、レイヘッジにより発明されたジェットセパレータ以来、ガスクロマトグラフィー(GC)カラムの端を出るガス分子の流れから担体ガスを効率的に除去できるようになった。GC実験で通常使用されるガスは、ヘリウム、水素及び窒素を含む。文献に述べられたあらゆるケースにおいて、ジェットセパレータを通過する種は、中性原子及び分子として存在する。ジェットセパレータから出る分子は、質量分析計(MS)に直接入り、そこで、高真空状態のもとで動作するイオン化ソースにおいてイオン化される。GC/MCに使用されるジェットセパレータの主な機能は、質量分析計への検体分子の中性分子の流れを濃縮しながら担体ガスを除去することである。
【0004】
GC計測器と対照的に、雰囲気圧力イオン化(API)計測器は、質量分析計の高真空システムに外部にイオンを発生する。この場合に、APIソースMS計測器の大部分は、電界の存在中でイオンを発生する。又、この電界は、イオン化プロセス中に形成されたイオンをMSの入口に向けるのにも使用される。脱着電気スプレーイオン化(DESI)及び他の脱着イオン化技術では、サンプルを接地電位にした状態で雰囲気圧力においてイオンを発生することができる。例えば、質量分析計の入口に向けてイオンを選択的に収束するために電位を印加できるシステムのコンポーネントは、ほとんど存在しない。これらの環境では、MSの入口へのイオンの移送は、主として、イオンをMSの入口へ引っ張るための真空の作用に依存する。MSのソースは、多くの場合、小さなオリフィスで分離された複数のポンピング段を含み、これらオリフィスは、当該イオンが進行する経路に沿ったガス圧力を、質量分析に受け容れられるレベルまで下げ、又、これらオリフィスは、その表面に電位が印加されるときにはイオン収束レンズとしても動作する。
【0005】
表面から分子を脱着してイオン化し、液体から直接イオン化し、蒸気中で分子をイオン化するのを許す脱着イオン化ソースが、コディー氏等により最近開発された。この方法は、ヘリウムや、窒素や、担体ガスのような長寿命準安定物として存在し得る他のガスを含む低質量原子又は分子を使用する。これら担体ガスの種は、イオン化が生じる雰囲気中に豊富に存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このイオン化方法は、検体サンプルを迅速に分析するために多数の効果を発揮するが、種々のサンプル及び種々の実験環境に対してこの技術を使用するには厄介なことが残っている。例えば、サンプル関連イオンの、発生点から質量分析計の質量分析器への移送効率を改善することにより、脱着イオン化技術の感度を高めるのが好都合である。更に、質量分析計から著しい距離にある検体サンプルに脱着イオン化ソースを向けることができるのが望ましい。更に、ほとんどの質量分析計で遭遇する従来の高真空イオン化ソースに関する技術を利用できる場合には、脱着イオン化は、よりインパクトがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、担体ガス内に形成された検体イオンを収集して質量分析計の導入口へ移送するための装置及び方法を包含する。本発明の実施形態では、担体ガスは、準安定の中性励起状態種、荷電及び中性分子を含む。本発明の他の実施形態では、ジェットセパレータを使用して、イオン及び分子を質量分析計の高真空領域へ効率的に移送する。ジェットセパレータを使用してMSへの分子の移送を濃縮することしか説明していない従来技術とは対照的に、本発明の実施形態では、ジェットセパレータを使用して、担体ガスからイオンを分離することによりイオンの移送を選択的に濃縮する。ジェットセパレータを使用して、担体ガスの単位体積当たりのイオンの豊富さがその導入口において均一である場合に単位時間当たり著しく大きな担体ガス体積のサンプリングを許すことにより、脱着イオン化技術の感度を高めることができる。更に、ジェットセパレータを、脱着イオン化ソースでポンピングする第1真空段として使用することで、質量分析計から著しく離れたところで検体をより効率的に収集できるようにする。更に、ジェットセパレータでは、脱着イオン化ソースを従来の高真空イオン化ソース質量分析計に結合することができる。
【0008】
外部イオンソースをMSと共に使用することが知られているが、充分なイオンをMSに搬送する問題が典型的に感度の低下を引き起こす。外部イオン化ソースが大気圧又はその付近で動作される状態では、この問題が悪化する。というのは、MSが典型的に高真空で動作するからである。ジェットセパレータは、中性の検体分子をMSへ入力する前に当該検体を担体ガスから分離するように従来使用されている。しかしながら、ジェットセパレータを外部イオンソースと一緒に使用してイオンをMSへ導入する原理はこれまで認識されていない。したがって、本発明の一実施形態では、ガスセパレータは、外部イオンソース及びジェットセパレータより成る。一実施形態では、このようなガスセパレータがMSに使用される。本発明の種々の実施形態では、ガスセパレータは、高真空領域へ移送されている荷電粒子から小さな中性原子又は分子を剥離できるものであれば、いかなる装置でもよい。本発明の別の実施形態では、ガスセパレータの表面に電界を付与して、MSへのイオンの伝送を改善することができる。
【0009】
本発明の種々の実施形態では、ガスセパレータは、イオンソースと、複数のチューブとを備え、これらチューブと真空との間にはギャップがある。典型的に、ガスセパレータは、導入チューブ及び放出チューブで構成され、導入チューブの近方端は、外部イオン化ソースに最も接近し、その遠方端は、外部イオン化ソースから最も離れる。少なくとも1つの遠方チューブの出口に真空を付与すると共に、複数のチューブ間の1つ以上のギャップにも真空を付与することができる。種々の実施形態では、複数のチューブ間のギャップをワイヤメッシュスクリーンで包囲することができる。
【0010】
導入チューブの近方端は、典型的に、外部イオン化ソースからのZ軸距離が、約10-3mの下限と約101mの上限との間である。導入チューブの近方端及び/又は遠方端と、放出チューブの近方端及び/又は遠方端とを加熱するためのヒータを、ガスセパレータと共に使用することができる。本発明の別の実施形態では、1つ以上の導入及び/又は放出チューブの1つ以上の容量性表面に1つ以上の電位を印加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の種々の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
「ジェットセパレータ」という語は、従来技術を指すのに使用される。「ガスセパレータ」という語は、従来技術を指すのに使用されない。又、「ジェットセパレータ」という語は、荷電された種及び/又は中性分子のセパレータを指すのに使用されてもよい。「ガスセパレータ」という語は、荷電された種及び/又は中性分子のセパレータを指すのに使用される。「導入チューブ」という語は、ガスセパレータの低真空側を指すのに使用される。「出口チューブ」という語は、ガスセパレータの高真空側を指すのに使用されてもよい。「放出チューブ」という語は、ガスセパレータの高真空側を指すのに使用される。
【0013】
引用により本件出願に組み入れられる米国特許第6,949,741号(以下、‘741特許と称する)に説明されたように検体をイオン化するための非放射性「大気圧イオン化」(API)の近年の開発は、検体サンプルの「リアルタイム直接分析(Direct Analysis in Real Time)」(DART(登録商標))を許す。この‘741特許は、準安定の中性励起状態種を含む担体ガスを使用して表面、液体及び蒸気から分子を脱着イオン化するための手段を開示している。この‘741特許に説明された装置は、典型的に、ヘリウム及び/又は窒素である大量の担体ガスを使用するが、準安定の中性励起状態種を発生できる他の不活性ガスが使用されてもよい。
【0014】
ワトソン及びビーマンによる1960年代のガス流出セパレータの発明、及びその改良である、レイヘッジにより発明されたジェットセパレータ(引用により本件出願に組み入れられる米国特許第3,633,027号)以来、ガスクロマトグラフィー(GC)カラムの端を出るガス分子の流れから担体ガスを効率的に除去できるようになった。ジェットセパレータ装置は、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)システムの商業的な開発を可能にした。GC/MSでは、広いボアのGCカラムを通るガスの流量は、20ないし30ミリリッター/分の範囲である。これらの計測器は、1970年代に始まって、1980年代後期に、低流量毛管GCカラム計測器が工業標準として採用されて、ジェットセパレータのニーズがなくなるまで、広範囲に使用された。GCの実験に普通に使用されるガスは、ヘリウム、水素及び窒素を含む。ジェットセパレータから出る分子は、質量分析計へ直接入り、そこで、高真空状態のもとで動作するイオン化ソースによりイオン化される。大気圧の真空は、760torrである。一般的に、この圧力範囲は、101大気圧(7.6x103torr)以下から10-1大気圧(7.6x101torr)までの圧力範囲を「おおよそ」包含する。10-3torrより低い真空は、高い真空を構成する。一般に、この圧力範囲は、5x10-3torr以下から5x10-6torrまでの圧力範囲を「おおよそ」包含する。10-6より低い真空は、非常に高い真空を構成する。一般的に、この圧力範囲は、5x10-6torr以下から5x10-9torrまでの圧力範囲を「おおよそ」包含する。以下、「高真空」という語は、高い真空及び非常に高い真空を包含する。ジェットセパレータの主たる機能は、検体分子を含む中性分子を質量分析計へ移送する効率を高めながら担体ガスを除去することである。レイヘッジによりジェットセパレータに改善が導入された後に、ダウエス氏等は、米国特許第5,137,553号において分子セパレータを、米国特許第4,654,052号において可変分子セパレータを詳細に説明している。これら特許は、両方とも、引用により本件出願に組み入れられる。
【0015】
GC/MS計測器とは対照的に、API−MSは、質量分析計の高真空システムの外部にイオンを発生するための手段をなす。この場合は、APIソース計測器の大半が電界の存在中でイオンを発生する。この電界は、イオン化プロセス中に生成されたイオンを質量分析計(MS)の導入口に向けるのにも使用される。この電界は、典型的に、分解した検体分子を含む溶液が流れるニードル又はチューブに電位を印加することで確立される。これらAPI−MS計測器では、高真空の導入口が計測器の設計と一体化され、ガス流量の減少、及び質量分析計の高真空チャンバーへのイオンの収束が容易にされる。質量分析計へイオンを収束させるアクションは、電位を導入口に印加し且つニードルに印加し、イオン化が互いに作用してイオンを質量分析計へ選択的に移送する一方、中性分子及び雰囲気ガスの大半が周囲の雰囲気へ拡散するときに完了となる。
【0016】
コディー氏等により開発され、‘741特許に説明されたDART(登録商標)イオン化ソースは、大気圧でイオンを脱着する方法である。DART(登録商標)は、担体ガスのような長寿命準安定化として存在し得るヘリウム、窒素及び他のガスを含む低質量原子又は分子を利用する。これらの担体ガス種は、DART(登録商標)イオン化が生じる雰囲気中に高い豊富さで存在する。
【0017】
DART(登録商標)及びDESIでは、大気圧でのイオンの発生を、サンプルを接地電位にして達成することができる。これらのイオン化ソースで脱着するケースでは、質量分析計の導入口に向けてイオンを選択的に収束させるために電位を印加できるシステムコンポーネントが存在しない状況がある。このプロセスは、主として、MSの導入口に向かってイオンを引っ張るための真空の作用に依存する。API−MSの従来技術は、単一のレンズ及び複数のレンズが、イオン形成領域に位置されたイオン収束要素として働いて、大気圧でイオン収束の後イオン化を行う多数のシステムを備えている。大気圧領域に形成されたイオンは、それらの収束要素に印加される電位の作用により質量分析計の導入口に向けて選択的に引っ張られ、又はそのように強制される。大気圧ソースは、小さなオリフィスで分離された多数のポンピング段をしばしば含む。多数のポンピング段は、当該イオンが進行する経路に沿って、ガス圧力を、質量分析のための許容レベルに減少するように働く。又、オリフィスは、それらの表面に電位が印加されたときにはイオン収束レンズとしても働く。別のAPI−MS設計は、複数要素段に代わって、ある長さの小直径の毛管チューブを使用してガス圧力を下げる。これらの設計では、毛管導入口を取り巻くエリアは、電位を印加できる金属被覆ガラス表面又は金属断片である。
【0018】
図1は、導入側130及び放出側140で作られた従来のジェットセパレータ120を示す。担体ガス分子の流れに分散された検体粒子の流れは、内径112を通して進行し、オリフィス114においてジェットセパレータ110の導入側から出る。検体分子は、ギャップ105を横断し、オリフィス124を経てジェットセパレータ117の放出側の内径122へと吸い込まれる。軽い質量の担体ガス分子は、導入チップ114を出ると、真空180により形成されるチャンバー162の外側の領域155に比して、領域160内の低い相対的圧力により、引っ張られる。
【0019】
図2は、従来のイオン化ソース252の周りの領域が高真空のもとにある質量分析計のソース領域240へ従来技術によりイオンが直接移送されるところを示す。典型的に、中性分子及びガスはクロマトグラフィーカラムを出て(230)、従来のジェットセパレータ220に入り、そこで、ガスは、真空280のもとで選択的に除去される一方、重たい質量の分子は、ソース252へ通過し、そこで、イオン化された後に、ソース252における電界の作用により、一連の収束レンズ254を通してプッシュされて、分析のために質量分析器248に入る。
【0020】
図3は、大気圧イオン化質量分析計(API−MS)計測器の質量分析計真空導入口へイオンを直接移送するのに使用される従来の装置を示す。API−MSのイオン化ソースは、典型的に、ニードル又はチューブ326を備え、これに電位322が印加される。ニードル326は、一連の1つ以上のスキマー332、334のオリフィス328と整列され、これらスキマー332、334は、その表面に電位336、338が印加されたときにイオン収束レンズとして働いて、イオンを、1つ以上の質量分析器342、344に向け、これら質量分析器は、イオン検出器352へのイオンの移送を許すように整列されている。又、オリフィスは、ポンピング段と段との間の境界も与え、これは、当該イオンが進行する経路に沿って、ガスの圧力を、質量分析器348及びイオン検出器352が適切に機能するための許容レベルまで下げるように働く。
【0021】
GC/MS実験における従来のジェットセパレータは、真空を使用して担体ガスから検体分子を分離する。DART(登録商標)実験では、検体イオンが担体ガスと共に存在する。典型的にジェットセパレータが検体分子から担体ガスを選択的に除去するように設計されたところのガスは、DART(登録商標)実験に使用される典型的な担体ガスと同じであるか又は同様である。DART(登録商標)MS実験は、真空を使用できる。予期せぬことに、ジェットセパレータは、担体ガス流における検体分子だけでなく、担体ガスの流れにおける正及び負に荷電された検体イオンも分離するように機能できることが分かった。
【0022】
本発明の実施形態では、担体ガスの流れにおいて脱着イオン化により生成されたイオンは、検体分子を含むターゲットに向けられる。本発明の実施形態では、ターゲットは、次の種類の対象物、即ち個体、液体及びガス、のうちの1つ以上で構成することができる。図4(A)は、ターゲットから発生された検体イオンがジェットセパレータ420を通過してオリフィス428に入り、収束電位436、438が印加された一連の1つ以上のスキマー432、434を通して質量分析器448に入り、更に、イオン検出器452に衝撃する本発明の実施形態を示す。
【0023】
図4(B)に示す本発明の実施形態では、検体イオンがジェットセパレータ430の導入側付近に形成される。本発明の実施形態では、イオンは、真空480によりジェットセパレータに吸引される。本発明の実施形態では、計測器は、大気圧でジェットセパレータの導入側430と動作することができる。本発明の他の実施形態では、導入側430は、高い圧力で動作することもできる。本発明の別の実施形態では、導入側430は、低い圧力で動作することもできる。
【0024】
本発明の一実施形態では、DART(登録商標)ソースが、多量のヘリウム、空気分子及び同じ量の当該検体イオンを発生する。担体ガスの質量と当該検体の質量との間の差は、1桁ないし数桁の大きさである。したがって、軽い質量の担体ガスは、相対的モーメントの差に基づいてジェットセパレータにより高い質量の検体イオンから充分に分離することができる。本発明の別の実施形態では、ジェットセパレータは、雰囲気中における高質量のイオンの流れを優先的に濃縮化する一方、形成された低質量の溶媒分子及び溶媒関係イオンを除去して、表面からのサンプルのイオン化を行うことができる。本発明の更に別の実施形態では、ジェットセパレータは、雰囲気中における高質量のイオンの流れを優先的に濃縮化する一方、形成された低質量の溶媒分子及び溶媒関係イオンを除去して、試薬イオンを発生するのに使用されるオリジナルソースから発生するサンプルのイオン化を行うことができる。本発明の一実施形態では、メタノール、ジメチルスルホキサイド及びH2O溶媒分子より成るグループから選択された担体ガスの1つ以上が、DART(登録商標)に使用され、ジェットセパレータで分離される。
【0025】
本発明の実施形態では、ジェットセパレータを合体することで、イオンを含む多量のガスを収集して、これらイオンを質量分析計の高真空チャンバーへ移送することができる。図4(B)に示すように、本発明の実施形態では、多量のガスがジェット(ガス)セパレータの導入側430と出口側440との間のギャップ405に入り、重たい質量のイオン及び非イオン化分子は、軽いガス分子及び原子より高い効率で導入側から出口側へギャップを通過する。本発明の実施形態では、ジェット(ガス)セパレータは、内径412及び422をもつ2つ以上の実質的に同軸的なチューブ410及び417で形成される。本発明の実施形態では、これらのチューブは、その各端414及び424に小さな外径をもつことができる。ジェット(ガス)セパレータは、真空480の作用のために外側領域455に比して低い圧力460のもとにある領域462に配置される。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータが、従来の非API−MS計測器の導入口として使用される。本発明の別の実施形態では、ジェットセパレータがAPI−MS計測器の導入口として使用される。
【0026】
本発明の実施形態では、質量分析計ソースは、イオン化手段をもたずに動作することができる。本発明の別の実施形態では、質量分析計は、これに限定されないが、電子衝撃、化学的イオン化、及び脱着化学的イオン化を正又は負のいずれかのイオン化モードで含むイオン化手段を有することができる。
【0027】
図4(C)に示す本発明の実施形態では、図3のイオン化ソースが変更されて、計測器の真空段450は、そのスキマー442形式オリフィスをジェット(ガス)セパレータ420の出口側内部チューブオリフィス422に置き換えて、その第1の中程度真空領域450への導入口を形成し、これが、別のオリフィス432及びスキマー444により、質量分析器を含む質量分析計460の高真空領域から分離されるようにしている。本発明の実施形態では、ジェットセパレータの導入側430が大気圧にあり、480に真空が付与される。
【0028】
図17に示す本発明の実施形態では、図3に示す計測器のAPI領域が変更され、ガスセパレータの出口チューブ1740が、2つのスキマー1742、1744をバイパスして、質量分析計1760の高真空領域に直結され、ガスセパレータに入るガス及び分子がガスセパレータの真空ポンプ1780及び質量分析計システム1760の両方からの真空を受けるようにしている。
【0029】
ガスセパレータは、外部イオンソースに結合されたジェットセパレータを含むことができる。ガスセパレータは、質量分析計の性能に有害な影響を及ぼすことなく、外部イオンソースから質量分析計へ伝送されるイオンの数を増加できるという効果を有する。外部イオンソースから質量分析計へイオンを伝送するのに使用されるチューブの直径を増加することにより、より多くのイオンを伝送することができる。ガスセパレータをチューブに合体してイオンを質量分析計へ搬送することにより、質量分析計の高真空領域の妨害を最小にすることができる(さもなければ、妨害を受けない状態に保つことができる)。ガスセパレータは、外部イオンソースから質量分析計へ搬送されるイオンの流れに存在する中性原子及び小さな分子をポンピング除去するように働くことができる。
【0030】
実施例1−ジェットセパレータへの電位の印加
図5は、ジェットセパレータの導入側及び出口側を、接地電位、正の電位又は負の電位で動作することのできる本発明の実施形態を示す。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータを作り上げる1つ以上のチューブに荷電することができ、ジェットセパレータは、電位522及び524の均一な印加を許し、ひいては、真空580のもとでギャップ505に均一な電界を許すために、導入口530及び出口540と共に設計することができる。本発明の一実施形態では、導入チューブ及び出口チューブの金属面に印加される電位を同じ電位にして、最大のイオン伝達を与えることができる。本発明の別の実施形態では、導入ライン522及び出口ライン524の金属面に印加される電位を互いに異なるものとして、最大のイオン伝達を与えることができる。本発明の別の実施形態では、ギャップ505の長さを増加させて、最大のイオン伝達を与えることもできる。本発明の別の実施形態では、入口530及び出口540の直径が互いに異なる内径512、522を有して、最大のイオン伝達を与えることもできる。
【0031】
図14は、導入チューブ1430及び放出チューブ1440の外径が各チューブの内径1412、1422に対して大きな直径となるような本発明の実施形態を示す。図15に示す本発明の別の実施形態では、導入チューブ1530の内径1512及び放出チューブ1540の内径1522が異なるものである。図16に示す本発明の別の実施形態では、導入チューブ1630及び放出チューブ1640の長さが異なり、分析のためのガス及び分子をより効率的に収集することができる。
【0032】
実施例1では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0033】
実施例2−多量の担体ガスの取り扱い
図6は、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690を伴う本発明の実施形態を示す。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、準安定中性励起状態種、空気分子、サンプル関連分子及びサンプル関連イオンを含む担体ガスを長い距離にわたり質量分析計へ引っ張る能力を高める。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、直線的である。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、カーブしている。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、柔軟性がある。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、加熱される。本発明の実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、周囲温度で動作される。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、金属、柔軟な金属、セラミック、プラスチック、柔軟なプラスチック、又はその組合せである。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブは、その長さが10mmないし10m以上の範囲である。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、不織材料で作ることができる。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、1つ以上の織られた材料で作ることができる。従来技術では、限定された直径及び短い長さを伴う毛管移送ラインを使用して、表面イオン化中に発生されたイオンを、電位及び真空作用の組合せにより質量分析計へ直接移送している。本発明の一実施形態では、導入側の細い内径612をもつジェットセパレータを使用して、質量分析計622に入るガス流を制限し、ジェットセパレータ620が、質量分析計へ移送するためのイオンの最適な濃縮化を与えることができるようにする。本発明の一実施形態では、太い内径612を有するジェットセパレータを導入側に使用し、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690を通るイオン含有ガスの流れを改善するために質量分析計へ移送するイオンの最適に満たない濃縮化を許容できるという点で、ジェットセパレータ620がジェットセパレータとして理想的に機能するかどうかに関わらず、ジェットセパレータ620へのガス流を増加する。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブの入口内径692及び出口内径694を相違させて、担体ガス及び雰囲気ガスの存在中で、ある距離にわたるイオンの移送効率を高めることができる。
【0034】
実施例2では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0035】
実施例3−ジェットセパレータの金属グリッド改善
図7は、脱着イオン化実験においてイオン化領域を取り巻くグリッドを追加することにより、ジェットセパレータを経て質量分析計によりサンプリングするためのイオンの収集が改善される本発明の実施形態を示している。本発明の実施形態では、グリッドは、開放端メッシュかご770で作られる。本発明の一実施形態では、このメッシュかごは、円筒形の形状である。本発明の一実施形態では、グリッドが金属で作られる。本発明の一実施形態では、メッシュかごがワイヤである。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、接地電位で動作することができる。本発明の実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて正の電位772で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて負の電位772で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブ及び放出チューブの一方又は両方と接触される。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブにも放出チューブにも接触されない。本発明の一実施形態では、金属メッシュのかご770は、ジェットセパレータ720の導入口に発生されるイオンの収集効率を改善するのに使用するために、ジェットセパレータの導入口730の端を包囲し、そこから延びる。本発明の実施形態では、かごは、ギャップ705を完全に橋絡するように導入チューブ又は出口チューブのいずれかを重畳させることにより支持することもできるし、又はチューブの物理的な延長部として装着することもできる。
【0036】
図8は、脱着イオン化実験においてイオン化領域を取り巻くグリッドがジェットセパレータ820から離れたところにある本発明の実施形態を示す。本発明の一実施形態では、グリッドは、開放端メッシュかご870で作られる。本発明の一実施形態では、メッシュかごは、円筒形の形状である。本発明の一実施形態では、グリッドは、金属で作られる。本発明の一実施形態では、メッシュかごは、ワイヤである。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、接地電位で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて正の電位872で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて負の電位872で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブ及び放出チューブの一方又は両方と接触される。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブにも放出チューブにも接触されない。本発明の一実施形態では、かごは、ジェットセパレータ820の導入口から離れた位置で発生されるイオンの収集効率を改善するのに使用するために、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ890の端を包囲し、そこから延びる。本発明の一実施形態では、かごは、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ892の端と、ジェットセパレータ820の導入口894との間の位置に装着することができる。本発明の一実施形態では、ワイヤメッシュかごは、導入チューブ812と出口チューブ822との間でのイオンの移送を改善するように働く。本発明の一実施形態では、かごは、ギャップ805を完全に橋絡するように導入チューブ又は出口チューブのいずれかを重畳させることにより支持することもできるし、又はチューブの物理的な延長部として装着することもできる。
【0037】
実施例3では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0038】
実施例4−金属グリッドへの電界の付与
図9は、ジェットセパレータ920の入口側930と出口側940との間のギャップにグリッド970が及んでいる本発明の実施形態を示す。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータ920の入口側930及び出口側940に各々電位932及び942が印加される。本発明の一実施形態では、グリッドは、開放端メッシュかご970で作られ、ジェットセパレータ920の低圧真空領域980にガス原子及び中性分子を通過することができる。本発明の一実施形態では、メッシュかごは、円筒形の形状である。本発明の一実施形態では、グリッドは、金属で作られる。本発明の一実施形態では、メッシュかごは、ワイヤである。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、接地電位972で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて正の電位972で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて負の電位972で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブ及び放出チューブの一方又は両方と電気的及び/又は物理的に接触される。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブにも放出チューブにも電気的及び/又は物理的に接触されない。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかご内の電界は、均質である。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかご内の電界は、非均質である。本発明の一実施形態では、かごの内部に磁界が発生される。かごの内部に発生されるイオンは、かごの容積内に長時間拘束され、したがって、ジェットセパレータの入口に吸引されるガスの体積中にそれらが収集される潜在性が高くなる。本発明の別の実施形態では、ワイヤメッシュかごは、ジェットセパレータ920の入口側930と出口側940との間のギャップに及ばない。
【0039】
実施例4では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0040】
実施例5−イオンガイドの適用
本発明の他の実施形態では、ジェットセパレータの入口側と出口側との間のギャップにイオンガイドが及んでいる。本発明の一実施形態では、イオンガイドに直流電圧が印加される。本発明の他の実施形態では、イオンガイドに高周波電圧が印加される。
【0041】
実施例5では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。本発明の一実施形態では、ガスセパレータは、更に、イオンガイドを備えている。イオンガイドの効果は、イオンがガイドの長さに沿って効率的に伝達される一方、原子及び中性分子が影響を受けないままであり、したがって、真空は、中性分子がガスセパレータの出口側に入るのを取り除く傾向が強い。したがって、イオンガイドは、ガスセパレータの導入チューブから放出チューブへのイオンの伝送を増加する。
【0042】
実施例6−加熱による分子の蒸発
本発明の実施形態では、イオン化のエリアへ移送するための分子の収集は、導入吸引チューブの端末のエリアに高温ソースを受けさせることで完了され、この高温ソースは、ヒートランプ、炎、種々の形式のレーザ、電気回路の使用により作動されるヒートソース、及び表面に熱を付与できる他のヒートソースを含む。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータによって与えられる真空の作用で収集されるサンプル分子は、その後、準安定中性励起状態種、空気分子、サンプル関連分子、及びサンプル関連イオンを含む担体ガスが移送チューブに沿って混合するときに、脱着イオン化ソースの作用によりイオン化される。
【0043】
実施例6では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0044】
実施例7−閉システムにおける分子の蒸発
本発明の実施形態では、揮発性分子が、サンプルの周りの雰囲気中に均一な非収束状態で分散される。ガスの流れを使用して、蒸発された分子を含むガスを、出口を通して、サンプリングチューブへと強制し、そこには、脱着イオン化ソースにより発生された準安定中性励起状態種を含む担体ガスが存在し、ジェットセパレータの入口に向かって引っ張られる。揮発した分子と、脱着イオン化担体ガスとの相互作用で、それらのガスがサンプリングチューブにおいてイオン化され、その後、それらイオンがジェットセパレータの入口へ移送され、質量分析計へ移送されるときに濃縮化される。
【0045】
実施例7では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0046】
実施例8−閉システムにおける分子の蒸発
図10は、サンプルがチャンバー1092に包囲され、そのサンプルからの揮発性分子がチャンバー雰囲気の体積中へと自由に分散される本発明の実施形態を示す。サンプルチャンバーは、サンプルを完全に取り巻いてもよいし、或いはフラットな表面のような物体に配置されたときにエンクロージャーを形成するように構成されてもよい。サンプルは、周囲温度にあって、高温ソースを受け、該高温ソースは、ヒートランプ、炎、種々の形式のレーザ、電気回路の使用により作動されるヒートソース、及びサンプルに熱を付与できるか又は非常に揮発性のサンプルの場合には凍結できる他のヒートソースを含む。蒸発された分子は、それら自身の作用によりチャンバー1092を去ってチューブ1098を通して出るか、或いは装置1096から発生するガスの流れによって強制されて、チューブ1094を通してチャンバーに入り、チューブ1098を通して、ソース1070とジェットセパレータ1020との間の長さに沿ったポイントにおいて移送チューブ1090の容積部へと出る。チューブ1090は、ソース1070に取り付けられ、該ソースは、その端末に取り付けられた移送チューブ1090へ流れ込む準安定の中性励起状態種を含む担体ガスを発生する。揮発性のサンプル分子と、準安定の中性励起状態種を含む担体ガスがサンプリングチューブ1090において相互作用すると、サンプリングチューブの容積部に沿ってサンプル分子がイオン化される。1090の容積部に形成されたイオンは、ジェットセパレータの入口1012へ入り、それらが質量分析計へ移送されるときに濃縮化される。
【0047】
図11に示す別の構成では、流出型ジェットセパレータ1120の使用について考える。この装置では、可変内径の導入チューブ1130が多孔性のガラスチューブ1183に取り付けられ、これには出口チューブ1140も取り付けられて、ガスセパレータの長さを経てイオンを含むガスの流れを許す。多孔性のガラスチューブは、真空ポンプ1180に接続された排気チャンバー1162によって取り巻かれる。ガス及びイオンは、入口1130を通してガスセパレータに入り、質量分析計に向かって進行する。サンプルを含むガスが多孔性領域を通過するときには、より小さなガス分子及び原子が、低真空領域1162へと拡散することにより除去される。
【0048】
図12の別の構成では、電位1224を印加できる金属スクリーンシリンダ1283が多孔性チューブの容積部内に位置され、イオンがチューブの容積部内でガスセパレータを通して進行するときにイオンの周りに等しい電位を保持することによりイオンを維持できる一方、中性担体ガスをポンピング領域1262へ拡散させることができる。
【0049】
図13に示す本発明の別の実施形態では、多孔性ガラスチューブ、プラスチックふるい、ガラス、加工可能なガラス及びセラミック、金属膜又は被覆を施すことのできる多孔性セラミック、金属メッシュ、ガラス裏張り金属チューブ、金属被覆溶融シリカ、金属被覆の加工可能なガラス、及び電位1324を内径面に印加できる金属被覆セラミック1343を使用して、イオンを維持する一方、中性物が多孔性チューブを通してポンピング領域1362へ拡散するときにそれら中性物をポンピング除去する。
【0050】
実施例8では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0051】
実施例9−ガスセパレータを通してのイオンの移送
ガスセパレータの導入チューブ及び放出チューブの両方に等しい電位を印加した結果が図18に示されており、ここでは、陽子を加えたキニーネ分子イオンの質量クロマトグラムが、ガスセパレータチューブの内面及び外面に印加される電位の関数としてプロットされる。ガラス融点チューブに挿入されたキニーネの1ngサンプルがDART(登録商標)ソースの前部に導入されて、大気圧でイオン化された。導入及び放出チューブに印加される電位が上昇され、分子の相対的な豊富さが時間にわたって測定された。各サンプルに対してチューブに印加された電位が、各一連のピークの上に指示され、(i)は、0ボルト印加を指示し、(i)は、50Vを指示し、(ii)は、100Vを指示し、(iii)は、200Vを指示し、(iv)は、300Vを指示し、(v)は、400Vを指示し、(vi)は、500Vを指示する。これは、ガスセパレータに印加される(比較的高い)電位が大気イオンソースから質量分析計の分析領域へ伝送されるイオンの数を増加できるという予期せぬ結果を示している。実験では、更に、0から50Vの範囲の低い電位において、陽子を加えた分子の相対的豊富さは、100ないし400Vの範囲の高い電位において検出されたイオンの豊富さに対して低いことが指示される。
【0052】
大気圧イオン化領域と質量分析計の高真空入口との間で2つのチューブを互いに軸上に配置すると、これらイオンの集団が分析のために質量分析計へ移行される。実験では2つの異なる真空ソースがガスセパレータに存在すると理解された。中性原子及び分子、荷電原子及び分子、準安定原子及び分子を搬送するガスは、導入チューブから出ると、放出チューブへ引き込まれて質量分析計へ移送されるか、或いはセパレータの低圧領域へ引き込まれて真空ポンプへと出る。各領域の差圧力が合成されて、導入チューブを排気する。図19にプロットされた実験結果は、導入チューブと放出チューブとの間の領域に付与される真空を高くすることが、質量分析計へのイオン伝送に及ぼす作用を示している。バルブを使用して、ガスセパレータに付与される真空を調整する。図19において、領域(i)のTICトレースは、バルブの0回転に対応し、領域(ii)は、バルブの1回転に対応し、領域(iii)は、バルブの2回転に対応し、領域(iv)は、バルブの3回転に対応し、領域(v)は、バルブの4回転に対応し、領域(vi)は、バルブの5回転に対応する。この実験は、ガスセパレータに付与される真空で大気イオン化ソースから質量分析計の分析領域へ伝送されるイオンの数を増加できるという予期せぬ結果を示している。又、この結果は、バルブが開放され真空が高くなるにつれて、質量分析計へのイオンの伝送が増加することも示している(領域(ii)、(iii)及び(iv)を参照)。しかしながら、バルブを更に開放すると、領域(v)及び(vi)に示すように、伝送が減少される。又、このデータは、真空が更に高くなるにつれて、より多くのサンプルイオンが質量分析計からそらされるように作用することも示している。この値は、ガスセパレータの導入チューブと放出チューブとの間の距離の関数として変化することが観察されている。特定の幾何学形状に対して、ガスセパレータの放出チューブを通して質量分析計へ至るイオンの最適な移送を与えるように真空を調整することができる。
【0053】
DART(登録商標)ソースは、質量分析計のAPI入口に対して離れたところで材料のイオン化を可能にするが、距離が増加される場合には、周囲の雰囲気から導出されるイオンの豊富さが、当該サンプルから導出されるものに対して顕著になる。DART(登録商標)ソースの動作ゾーンを質量分析計のすぐ近くのAPI入口エリアから離すように延ばすことにより遠隔領域のサンプリングに長い導入チューブの使用を可能にすることで、周囲雰囲気中に存在する分子の貢献を減少することが図20に示されており、ここでは、(i)ガスセパレータの機能を伴う場合及び(ii)ガスセパレータの機能を伴わない場合に発生される質量スペクトルの比較が示されている。図20(ii)において、通常のラボラトリーの空気から導出されたイオンは、質量スペクトルを支配するが、これらのイオンは、真空オン状態において導入チューブと放出チューブとの間の領域に真空(図20(i))が付与されると、低いレベルで存在する。この実験は、導入チューブの開口でサンプリングされるガスの量を増加すると、大気イオン化ソースから質量分析計の分析領域へ伝送されるイオンの数を増加でき、ひいては、分析の全体的な感度を上げられるという予期せぬ結果を示している。
【0054】
効果
ガスセパレータの効果は、サンプリングされてMSの高真空領域へ導入されるガスの量を増加できることである。原子及び小さな中性分子をガスセパレータにおいてイオンから剥離できるので、高い真空を不変のまま保てる一方、分析感度を高めることができる。
【0055】
用途
ガスセパレータは、DART(登録商標)、DESI、及びMSに使用される大気圧MALDIを含む種々の大気イオン化ソースと結合することができる。各々の場合に、MSに導入されるイオンの数を増加することにより、技術の感度を高めることができる。又、ガスセパレータは、ほぼ大気圧又は低い真空で形成されたイオンを検出のために高真空の領域へ移送することに依存する多数の他の分光装置に使用することもできる。又、ガスセパレータは、ガスを導入するプロセスで形成されたイオンが有害なもので、それ故、ガスの除去が有益である、好ましくは超高真空で動作する表面科学分光装置に使用することもできる。又、ガスセパレータは、ラマン分光計、電磁吸収分光計、電磁放射分光計、及び表面検出分光計を含む他の適当な検出器と共に使用することもできる。ガスセパレータに使用できる分析検出器の種類は、ここに指定するものに限定されず、当業者が不当な実験を伴わずに想像する検出器も包含する。
【0056】
ワイヤメッシュかごは、穴を加工できる孔付きチューブ、或いは多孔性セラミック、等を含む。ここで使用する「に基づく(based on)」という語は、特に指示のない限り、「少なくとも一部分基づく(based at least in part on)」を意味する。
【0057】
容量性の表面は、電位で荷電できる表面である。表面は、その表面に印加される電位が典型的な実験期間中保持される場合に、電位で荷電することができ、ここで、表面の電位は、表面に印加される電位の50%より大きい。
【0058】
本発明の方法、システム及びコンポーネントの実施形態を以上に説明した。どこかで述べたように、これらの実施形態は、本発明を単に例示するものに過ぎず、これに限定されない。他の実施形態も考えられ、本発明によって網羅される。このような実施形態は、ここに含まれる技術に基づいて当業者に明らかであろう。例えば、種々の図面及び前記実施形態に示された実際の形状に関わらず、導入チューブの外径出口にテーパーを付けても付けなくてもよく、又、放出チューブの外径入口にテーパーを付けても付けなくてもよいことが考えられる。
【0059】
したがって、本発明の範囲は、上述した実施形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその等効物のみによって限定される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来のGC/MS計測器と共に使用される従来のジェットセパレータを示す図である。
【図2】従来のGC/MSの高真空イオン化ソースを伴う従来のジェットセパレータを示す図である。
【図3】従来の典型的なAPI−MSを示す図である。
【図4A】本発明の一実施形態によりスキマーベースのAPI導入口をもつMSへイオンを移送する手段としてジェットセパレータを示す概略図である。
【図4B】本発明の一実施形態により毛管型API導入口をもつMSへイオンを移送する手段としてジェットセパレータを示す概略図である。
【図4C】本発明の一実施形態により従来のAPI−MSと一体化されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態により導入及び放出チューブで製造されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図6】ジェットセパレータがサンプリングチューブに接続された本発明の実施形態を示す概略図である。
【図7】本発明の一実施形態により導入口にグリッドをもつジェットセパレータを示す概略図である。
【図8】本発明の一実施形態によりサンプリングチューブの導入口にグリッドをもつジェットセパレータを示す概略図である。
【図9】本発明の一実施形態により導入チューブと放出チューブとの間にグリッドをもつように製造されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図10】本発明の一実施形態によりサンプリングチューブ及びグリッドをもつジェットセパレータであって、グリッドとジェットセパレータとの中間点においてサンプリングチューブにサンプルが接続されるジェットセパレータを示す概略図である。
【図11】本発明の一実施形態による流出型セパレータを示す概略図である。
【図12】本発明の一実施形態により電位を印加できるワイヤメッシュかごを組み込んだ流出型セパレータを示す概略図である。
【図13】本発明の一実施形態により電位を印加できる孔付きのかごを組み込んだ流出型セパレータを示す概略図である。
【図14】本発明の一実施形態により図4(c)に比して太い直径のチューブを有する導入及び放出チューブで製造されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図15】本発明の一実施形態により異なる内径のチューブを有する導入及び放出チューブで製造されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図16】本発明の一実施形態により異なる長さを有する導入及び放出チューブで製造されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図17】本発明の一実施形態によりガスセパレータの放出チューブが2つ以上のスキマーに及ぶようなジェットセパレータの概略図である。
【図18】(i)−(vi)は、ガスセパレータの導入及び放出チューブの表面に印加される電位の関数としてイオン化領域からサンプリングされるイオンの相対的な豊富さを示す質量クロマトグラムトレースである。
【図19】(i)−(vi)は、ガスセパレータの導入チューブと放出チューブとの間に付与される相対的真空の関数としてイオン化領域からサンプリングされるイオンの相対的な豊富さを示す全イオンクロマトグラムトレースである。
【図20】周囲雰囲気のイオン化から導出される質量スペクトルを、(i)ガスセパレータに真空を付与した後、及び(ii)付与する前、に示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光システムによって効率的にサンプリングするための検体イオン及び中性分子の改良された収集及び移送に係る。
【0002】
優先権の主張:本出願は次の出願に基づく優先権を主張する。
2006年3月3日に出願されたBrain D. Mussclmanを発明者とする“A Sampling System for Use with Surface Ionization Spectroscopy”と題する米国仮出願第60/778,874号(代理人整理番号第IONS−01000SU0号)及び
2006年10月13日に出願されたBrain D. Mussclmanを発明者とする“A Sampling System for Use with Surface Ionization Spectroscopy”と題する米国特許出願第11/580,323号(代理人整理番号第IONS−01000SU1号)。
これらの出願の開示内容は、引用により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
ワトソン及びビーマンによる1960年代のガス流出セパレータの発明、及びその改良である、レイヘッジにより発明されたジェットセパレータ以来、ガスクロマトグラフィー(GC)カラムの端を出るガス分子の流れから担体ガスを効率的に除去できるようになった。GC実験で通常使用されるガスは、ヘリウム、水素及び窒素を含む。文献に述べられたあらゆるケースにおいて、ジェットセパレータを通過する種は、中性原子及び分子として存在する。ジェットセパレータから出る分子は、質量分析計(MS)に直接入り、そこで、高真空状態のもとで動作するイオン化ソースにおいてイオン化される。GC/MCに使用されるジェットセパレータの主な機能は、質量分析計への検体分子の中性分子の流れを濃縮しながら担体ガスを除去することである。
【0004】
GC計測器と対照的に、雰囲気圧力イオン化(API)計測器は、質量分析計の高真空システムに外部にイオンを発生する。この場合に、APIソースMS計測器の大部分は、電界の存在中でイオンを発生する。又、この電界は、イオン化プロセス中に形成されたイオンをMSの入口に向けるのにも使用される。脱着電気スプレーイオン化(DESI)及び他の脱着イオン化技術では、サンプルを接地電位にした状態で雰囲気圧力においてイオンを発生することができる。例えば、質量分析計の入口に向けてイオンを選択的に収束するために電位を印加できるシステムのコンポーネントは、ほとんど存在しない。これらの環境では、MSの入口へのイオンの移送は、主として、イオンをMSの入口へ引っ張るための真空の作用に依存する。MSのソースは、多くの場合、小さなオリフィスで分離された複数のポンピング段を含み、これらオリフィスは、当該イオンが進行する経路に沿ったガス圧力を、質量分析に受け容れられるレベルまで下げ、又、これらオリフィスは、その表面に電位が印加されるときにはイオン収束レンズとしても動作する。
【0005】
表面から分子を脱着してイオン化し、液体から直接イオン化し、蒸気中で分子をイオン化するのを許す脱着イオン化ソースが、コディー氏等により最近開発された。この方法は、ヘリウムや、窒素や、担体ガスのような長寿命準安定物として存在し得る他のガスを含む低質量原子又は分子を使用する。これら担体ガスの種は、イオン化が生じる雰囲気中に豊富に存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このイオン化方法は、検体サンプルを迅速に分析するために多数の効果を発揮するが、種々のサンプル及び種々の実験環境に対してこの技術を使用するには厄介なことが残っている。例えば、サンプル関連イオンの、発生点から質量分析計の質量分析器への移送効率を改善することにより、脱着イオン化技術の感度を高めるのが好都合である。更に、質量分析計から著しい距離にある検体サンプルに脱着イオン化ソースを向けることができるのが望ましい。更に、ほとんどの質量分析計で遭遇する従来の高真空イオン化ソースに関する技術を利用できる場合には、脱着イオン化は、よりインパクトがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、担体ガス内に形成された検体イオンを収集して質量分析計の導入口へ移送するための装置及び方法を包含する。本発明の実施形態では、担体ガスは、準安定の中性励起状態種、荷電及び中性分子を含む。本発明の他の実施形態では、ジェットセパレータを使用して、イオン及び分子を質量分析計の高真空領域へ効率的に移送する。ジェットセパレータを使用してMSへの分子の移送を濃縮することしか説明していない従来技術とは対照的に、本発明の実施形態では、ジェットセパレータを使用して、担体ガスからイオンを分離することによりイオンの移送を選択的に濃縮する。ジェットセパレータを使用して、担体ガスの単位体積当たりのイオンの豊富さがその導入口において均一である場合に単位時間当たり著しく大きな担体ガス体積のサンプリングを許すことにより、脱着イオン化技術の感度を高めることができる。更に、ジェットセパレータを、脱着イオン化ソースでポンピングする第1真空段として使用することで、質量分析計から著しく離れたところで検体をより効率的に収集できるようにする。更に、ジェットセパレータでは、脱着イオン化ソースを従来の高真空イオン化ソース質量分析計に結合することができる。
【0008】
外部イオンソースをMSと共に使用することが知られているが、充分なイオンをMSに搬送する問題が典型的に感度の低下を引き起こす。外部イオン化ソースが大気圧又はその付近で動作される状態では、この問題が悪化する。というのは、MSが典型的に高真空で動作するからである。ジェットセパレータは、中性の検体分子をMSへ入力する前に当該検体を担体ガスから分離するように従来使用されている。しかしながら、ジェットセパレータを外部イオンソースと一緒に使用してイオンをMSへ導入する原理はこれまで認識されていない。したがって、本発明の一実施形態では、ガスセパレータは、外部イオンソース及びジェットセパレータより成る。一実施形態では、このようなガスセパレータがMSに使用される。本発明の種々の実施形態では、ガスセパレータは、高真空領域へ移送されている荷電粒子から小さな中性原子又は分子を剥離できるものであれば、いかなる装置でもよい。本発明の別の実施形態では、ガスセパレータの表面に電界を付与して、MSへのイオンの伝送を改善することができる。
【0009】
本発明の種々の実施形態では、ガスセパレータは、イオンソースと、複数のチューブとを備え、これらチューブと真空との間にはギャップがある。典型的に、ガスセパレータは、導入チューブ及び放出チューブで構成され、導入チューブの近方端は、外部イオン化ソースに最も接近し、その遠方端は、外部イオン化ソースから最も離れる。少なくとも1つの遠方チューブの出口に真空を付与すると共に、複数のチューブ間の1つ以上のギャップにも真空を付与することができる。種々の実施形態では、複数のチューブ間のギャップをワイヤメッシュスクリーンで包囲することができる。
【0010】
導入チューブの近方端は、典型的に、外部イオン化ソースからのZ軸距離が、約10-3mの下限と約101mの上限との間である。導入チューブの近方端及び/又は遠方端と、放出チューブの近方端及び/又は遠方端とを加熱するためのヒータを、ガスセパレータと共に使用することができる。本発明の別の実施形態では、1つ以上の導入及び/又は放出チューブの1つ以上の容量性表面に1つ以上の電位を印加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の種々の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
「ジェットセパレータ」という語は、従来技術を指すのに使用される。「ガスセパレータ」という語は、従来技術を指すのに使用されない。又、「ジェットセパレータ」という語は、荷電された種及び/又は中性分子のセパレータを指すのに使用されてもよい。「ガスセパレータ」という語は、荷電された種及び/又は中性分子のセパレータを指すのに使用される。「導入チューブ」という語は、ガスセパレータの低真空側を指すのに使用される。「出口チューブ」という語は、ガスセパレータの高真空側を指すのに使用されてもよい。「放出チューブ」という語は、ガスセパレータの高真空側を指すのに使用される。
【0013】
引用により本件出願に組み入れられる米国特許第6,949,741号(以下、‘741特許と称する)に説明されたように検体をイオン化するための非放射性「大気圧イオン化」(API)の近年の開発は、検体サンプルの「リアルタイム直接分析(Direct Analysis in Real Time)」(DART(登録商標))を許す。この‘741特許は、準安定の中性励起状態種を含む担体ガスを使用して表面、液体及び蒸気から分子を脱着イオン化するための手段を開示している。この‘741特許に説明された装置は、典型的に、ヘリウム及び/又は窒素である大量の担体ガスを使用するが、準安定の中性励起状態種を発生できる他の不活性ガスが使用されてもよい。
【0014】
ワトソン及びビーマンによる1960年代のガス流出セパレータの発明、及びその改良である、レイヘッジにより発明されたジェットセパレータ(引用により本件出願に組み入れられる米国特許第3,633,027号)以来、ガスクロマトグラフィー(GC)カラムの端を出るガス分子の流れから担体ガスを効率的に除去できるようになった。ジェットセパレータ装置は、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)システムの商業的な開発を可能にした。GC/MSでは、広いボアのGCカラムを通るガスの流量は、20ないし30ミリリッター/分の範囲である。これらの計測器は、1970年代に始まって、1980年代後期に、低流量毛管GCカラム計測器が工業標準として採用されて、ジェットセパレータのニーズがなくなるまで、広範囲に使用された。GCの実験に普通に使用されるガスは、ヘリウム、水素及び窒素を含む。ジェットセパレータから出る分子は、質量分析計へ直接入り、そこで、高真空状態のもとで動作するイオン化ソースによりイオン化される。大気圧の真空は、760torrである。一般的に、この圧力範囲は、101大気圧(7.6x103torr)以下から10-1大気圧(7.6x101torr)までの圧力範囲を「おおよそ」包含する。10-3torrより低い真空は、高い真空を構成する。一般に、この圧力範囲は、5x10-3torr以下から5x10-6torrまでの圧力範囲を「おおよそ」包含する。10-6より低い真空は、非常に高い真空を構成する。一般的に、この圧力範囲は、5x10-6torr以下から5x10-9torrまでの圧力範囲を「おおよそ」包含する。以下、「高真空」という語は、高い真空及び非常に高い真空を包含する。ジェットセパレータの主たる機能は、検体分子を含む中性分子を質量分析計へ移送する効率を高めながら担体ガスを除去することである。レイヘッジによりジェットセパレータに改善が導入された後に、ダウエス氏等は、米国特許第5,137,553号において分子セパレータを、米国特許第4,654,052号において可変分子セパレータを詳細に説明している。これら特許は、両方とも、引用により本件出願に組み入れられる。
【0015】
GC/MS計測器とは対照的に、API−MSは、質量分析計の高真空システムの外部にイオンを発生するための手段をなす。この場合は、APIソース計測器の大半が電界の存在中でイオンを発生する。この電界は、イオン化プロセス中に生成されたイオンを質量分析計(MS)の導入口に向けるのにも使用される。この電界は、典型的に、分解した検体分子を含む溶液が流れるニードル又はチューブに電位を印加することで確立される。これらAPI−MS計測器では、高真空の導入口が計測器の設計と一体化され、ガス流量の減少、及び質量分析計の高真空チャンバーへのイオンの収束が容易にされる。質量分析計へイオンを収束させるアクションは、電位を導入口に印加し且つニードルに印加し、イオン化が互いに作用してイオンを質量分析計へ選択的に移送する一方、中性分子及び雰囲気ガスの大半が周囲の雰囲気へ拡散するときに完了となる。
【0016】
コディー氏等により開発され、‘741特許に説明されたDART(登録商標)イオン化ソースは、大気圧でイオンを脱着する方法である。DART(登録商標)は、担体ガスのような長寿命準安定化として存在し得るヘリウム、窒素及び他のガスを含む低質量原子又は分子を利用する。これらの担体ガス種は、DART(登録商標)イオン化が生じる雰囲気中に高い豊富さで存在する。
【0017】
DART(登録商標)及びDESIでは、大気圧でのイオンの発生を、サンプルを接地電位にして達成することができる。これらのイオン化ソースで脱着するケースでは、質量分析計の導入口に向けてイオンを選択的に収束させるために電位を印加できるシステムコンポーネントが存在しない状況がある。このプロセスは、主として、MSの導入口に向かってイオンを引っ張るための真空の作用に依存する。API−MSの従来技術は、単一のレンズ及び複数のレンズが、イオン形成領域に位置されたイオン収束要素として働いて、大気圧でイオン収束の後イオン化を行う多数のシステムを備えている。大気圧領域に形成されたイオンは、それらの収束要素に印加される電位の作用により質量分析計の導入口に向けて選択的に引っ張られ、又はそのように強制される。大気圧ソースは、小さなオリフィスで分離された多数のポンピング段をしばしば含む。多数のポンピング段は、当該イオンが進行する経路に沿って、ガス圧力を、質量分析のための許容レベルに減少するように働く。又、オリフィスは、それらの表面に電位が印加されたときにはイオン収束レンズとしても働く。別のAPI−MS設計は、複数要素段に代わって、ある長さの小直径の毛管チューブを使用してガス圧力を下げる。これらの設計では、毛管導入口を取り巻くエリアは、電位を印加できる金属被覆ガラス表面又は金属断片である。
【0018】
図1は、導入側130及び放出側140で作られた従来のジェットセパレータ120を示す。担体ガス分子の流れに分散された検体粒子の流れは、内径112を通して進行し、オリフィス114においてジェットセパレータ110の導入側から出る。検体分子は、ギャップ105を横断し、オリフィス124を経てジェットセパレータ117の放出側の内径122へと吸い込まれる。軽い質量の担体ガス分子は、導入チップ114を出ると、真空180により形成されるチャンバー162の外側の領域155に比して、領域160内の低い相対的圧力により、引っ張られる。
【0019】
図2は、従来のイオン化ソース252の周りの領域が高真空のもとにある質量分析計のソース領域240へ従来技術によりイオンが直接移送されるところを示す。典型的に、中性分子及びガスはクロマトグラフィーカラムを出て(230)、従来のジェットセパレータ220に入り、そこで、ガスは、真空280のもとで選択的に除去される一方、重たい質量の分子は、ソース252へ通過し、そこで、イオン化された後に、ソース252における電界の作用により、一連の収束レンズ254を通してプッシュされて、分析のために質量分析器248に入る。
【0020】
図3は、大気圧イオン化質量分析計(API−MS)計測器の質量分析計真空導入口へイオンを直接移送するのに使用される従来の装置を示す。API−MSのイオン化ソースは、典型的に、ニードル又はチューブ326を備え、これに電位322が印加される。ニードル326は、一連の1つ以上のスキマー332、334のオリフィス328と整列され、これらスキマー332、334は、その表面に電位336、338が印加されたときにイオン収束レンズとして働いて、イオンを、1つ以上の質量分析器342、344に向け、これら質量分析器は、イオン検出器352へのイオンの移送を許すように整列されている。又、オリフィスは、ポンピング段と段との間の境界も与え、これは、当該イオンが進行する経路に沿って、ガスの圧力を、質量分析器348及びイオン検出器352が適切に機能するための許容レベルまで下げるように働く。
【0021】
GC/MS実験における従来のジェットセパレータは、真空を使用して担体ガスから検体分子を分離する。DART(登録商標)実験では、検体イオンが担体ガスと共に存在する。典型的にジェットセパレータが検体分子から担体ガスを選択的に除去するように設計されたところのガスは、DART(登録商標)実験に使用される典型的な担体ガスと同じであるか又は同様である。DART(登録商標)MS実験は、真空を使用できる。予期せぬことに、ジェットセパレータは、担体ガス流における検体分子だけでなく、担体ガスの流れにおける正及び負に荷電された検体イオンも分離するように機能できることが分かった。
【0022】
本発明の実施形態では、担体ガスの流れにおいて脱着イオン化により生成されたイオンは、検体分子を含むターゲットに向けられる。本発明の実施形態では、ターゲットは、次の種類の対象物、即ち個体、液体及びガス、のうちの1つ以上で構成することができる。図4(A)は、ターゲットから発生された検体イオンがジェットセパレータ420を通過してオリフィス428に入り、収束電位436、438が印加された一連の1つ以上のスキマー432、434を通して質量分析器448に入り、更に、イオン検出器452に衝撃する本発明の実施形態を示す。
【0023】
図4(B)に示す本発明の実施形態では、検体イオンがジェットセパレータ430の導入側付近に形成される。本発明の実施形態では、イオンは、真空480によりジェットセパレータに吸引される。本発明の実施形態では、計測器は、大気圧でジェットセパレータの導入側430と動作することができる。本発明の他の実施形態では、導入側430は、高い圧力で動作することもできる。本発明の別の実施形態では、導入側430は、低い圧力で動作することもできる。
【0024】
本発明の一実施形態では、DART(登録商標)ソースが、多量のヘリウム、空気分子及び同じ量の当該検体イオンを発生する。担体ガスの質量と当該検体の質量との間の差は、1桁ないし数桁の大きさである。したがって、軽い質量の担体ガスは、相対的モーメントの差に基づいてジェットセパレータにより高い質量の検体イオンから充分に分離することができる。本発明の別の実施形態では、ジェットセパレータは、雰囲気中における高質量のイオンの流れを優先的に濃縮化する一方、形成された低質量の溶媒分子及び溶媒関係イオンを除去して、表面からのサンプルのイオン化を行うことができる。本発明の更に別の実施形態では、ジェットセパレータは、雰囲気中における高質量のイオンの流れを優先的に濃縮化する一方、形成された低質量の溶媒分子及び溶媒関係イオンを除去して、試薬イオンを発生するのに使用されるオリジナルソースから発生するサンプルのイオン化を行うことができる。本発明の一実施形態では、メタノール、ジメチルスルホキサイド及びH2O溶媒分子より成るグループから選択された担体ガスの1つ以上が、DART(登録商標)に使用され、ジェットセパレータで分離される。
【0025】
本発明の実施形態では、ジェットセパレータを合体することで、イオンを含む多量のガスを収集して、これらイオンを質量分析計の高真空チャンバーへ移送することができる。図4(B)に示すように、本発明の実施形態では、多量のガスがジェット(ガス)セパレータの導入側430と出口側440との間のギャップ405に入り、重たい質量のイオン及び非イオン化分子は、軽いガス分子及び原子より高い効率で導入側から出口側へギャップを通過する。本発明の実施形態では、ジェット(ガス)セパレータは、内径412及び422をもつ2つ以上の実質的に同軸的なチューブ410及び417で形成される。本発明の実施形態では、これらのチューブは、その各端414及び424に小さな外径をもつことができる。ジェット(ガス)セパレータは、真空480の作用のために外側領域455に比して低い圧力460のもとにある領域462に配置される。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータが、従来の非API−MS計測器の導入口として使用される。本発明の別の実施形態では、ジェットセパレータがAPI−MS計測器の導入口として使用される。
【0026】
本発明の実施形態では、質量分析計ソースは、イオン化手段をもたずに動作することができる。本発明の別の実施形態では、質量分析計は、これに限定されないが、電子衝撃、化学的イオン化、及び脱着化学的イオン化を正又は負のいずれかのイオン化モードで含むイオン化手段を有することができる。
【0027】
図4(C)に示す本発明の実施形態では、図3のイオン化ソースが変更されて、計測器の真空段450は、そのスキマー442形式オリフィスをジェット(ガス)セパレータ420の出口側内部チューブオリフィス422に置き換えて、その第1の中程度真空領域450への導入口を形成し、これが、別のオリフィス432及びスキマー444により、質量分析器を含む質量分析計460の高真空領域から分離されるようにしている。本発明の実施形態では、ジェットセパレータの導入側430が大気圧にあり、480に真空が付与される。
【0028】
図17に示す本発明の実施形態では、図3に示す計測器のAPI領域が変更され、ガスセパレータの出口チューブ1740が、2つのスキマー1742、1744をバイパスして、質量分析計1760の高真空領域に直結され、ガスセパレータに入るガス及び分子がガスセパレータの真空ポンプ1780及び質量分析計システム1760の両方からの真空を受けるようにしている。
【0029】
ガスセパレータは、外部イオンソースに結合されたジェットセパレータを含むことができる。ガスセパレータは、質量分析計の性能に有害な影響を及ぼすことなく、外部イオンソースから質量分析計へ伝送されるイオンの数を増加できるという効果を有する。外部イオンソースから質量分析計へイオンを伝送するのに使用されるチューブの直径を増加することにより、より多くのイオンを伝送することができる。ガスセパレータをチューブに合体してイオンを質量分析計へ搬送することにより、質量分析計の高真空領域の妨害を最小にすることができる(さもなければ、妨害を受けない状態に保つことができる)。ガスセパレータは、外部イオンソースから質量分析計へ搬送されるイオンの流れに存在する中性原子及び小さな分子をポンピング除去するように働くことができる。
【0030】
実施例1−ジェットセパレータへの電位の印加
図5は、ジェットセパレータの導入側及び出口側を、接地電位、正の電位又は負の電位で動作することのできる本発明の実施形態を示す。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータを作り上げる1つ以上のチューブに荷電することができ、ジェットセパレータは、電位522及び524の均一な印加を許し、ひいては、真空580のもとでギャップ505に均一な電界を許すために、導入口530及び出口540と共に設計することができる。本発明の一実施形態では、導入チューブ及び出口チューブの金属面に印加される電位を同じ電位にして、最大のイオン伝達を与えることができる。本発明の別の実施形態では、導入ライン522及び出口ライン524の金属面に印加される電位を互いに異なるものとして、最大のイオン伝達を与えることができる。本発明の別の実施形態では、ギャップ505の長さを増加させて、最大のイオン伝達を与えることもできる。本発明の別の実施形態では、入口530及び出口540の直径が互いに異なる内径512、522を有して、最大のイオン伝達を与えることもできる。
【0031】
図14は、導入チューブ1430及び放出チューブ1440の外径が各チューブの内径1412、1422に対して大きな直径となるような本発明の実施形態を示す。図15に示す本発明の別の実施形態では、導入チューブ1530の内径1512及び放出チューブ1540の内径1522が異なるものである。図16に示す本発明の別の実施形態では、導入チューブ1630及び放出チューブ1640の長さが異なり、分析のためのガス及び分子をより効率的に収集することができる。
【0032】
実施例1では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0033】
実施例2−多量の担体ガスの取り扱い
図6は、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690を伴う本発明の実施形態を示す。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、準安定中性励起状態種、空気分子、サンプル関連分子及びサンプル関連イオンを含む担体ガスを長い距離にわたり質量分析計へ引っ張る能力を高める。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、直線的である。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、カーブしている。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、柔軟性がある。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、加熱される。本発明の実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、周囲温度で動作される。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、金属、柔軟な金属、セラミック、プラスチック、柔軟なプラスチック、又はその組合せである。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブは、その長さが10mmないし10m以上の範囲である。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、不織材料で作ることができる。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690は、1つ以上の織られた材料で作ることができる。従来技術では、限定された直径及び短い長さを伴う毛管移送ラインを使用して、表面イオン化中に発生されたイオンを、電位及び真空作用の組合せにより質量分析計へ直接移送している。本発明の一実施形態では、導入側の細い内径612をもつジェットセパレータを使用して、質量分析計622に入るガス流を制限し、ジェットセパレータ620が、質量分析計へ移送するためのイオンの最適な濃縮化を与えることができるようにする。本発明の一実施形態では、太い内径612を有するジェットセパレータを導入側に使用し、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ690を通るイオン含有ガスの流れを改善するために質量分析計へ移送するイオンの最適に満たない濃縮化を許容できるという点で、ジェットセパレータ620がジェットセパレータとして理想的に機能するかどうかに関わらず、ジェットセパレータ620へのガス流を増加する。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブの入口内径692及び出口内径694を相違させて、担体ガス及び雰囲気ガスの存在中で、ある距離にわたるイオンの移送効率を高めることができる。
【0034】
実施例2では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0035】
実施例3−ジェットセパレータの金属グリッド改善
図7は、脱着イオン化実験においてイオン化領域を取り巻くグリッドを追加することにより、ジェットセパレータを経て質量分析計によりサンプリングするためのイオンの収集が改善される本発明の実施形態を示している。本発明の実施形態では、グリッドは、開放端メッシュかご770で作られる。本発明の一実施形態では、このメッシュかごは、円筒形の形状である。本発明の一実施形態では、グリッドが金属で作られる。本発明の一実施形態では、メッシュかごがワイヤである。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、接地電位で動作することができる。本発明の実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて正の電位772で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて負の電位772で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブ及び放出チューブの一方又は両方と接触される。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブにも放出チューブにも接触されない。本発明の一実施形態では、金属メッシュのかご770は、ジェットセパレータ720の導入口に発生されるイオンの収集効率を改善するのに使用するために、ジェットセパレータの導入口730の端を包囲し、そこから延びる。本発明の実施形態では、かごは、ギャップ705を完全に橋絡するように導入チューブ又は出口チューブのいずれかを重畳させることにより支持することもできるし、又はチューブの物理的な延長部として装着することもできる。
【0036】
図8は、脱着イオン化実験においてイオン化領域を取り巻くグリッドがジェットセパレータ820から離れたところにある本発明の実施形態を示す。本発明の一実施形態では、グリッドは、開放端メッシュかご870で作られる。本発明の一実施形態では、メッシュかごは、円筒形の形状である。本発明の一実施形態では、グリッドは、金属で作られる。本発明の一実施形態では、メッシュかごは、ワイヤである。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、接地電位で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて正の電位872で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて負の電位872で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブ及び放出チューブの一方又は両方と接触される。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブにも放出チューブにも接触されない。本発明の一実施形態では、かごは、ジェットセパレータ820の導入口から離れた位置で発生されるイオンの収集効率を改善するのに使用するために、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ890の端を包囲し、そこから延びる。本発明の一実施形態では、かごは、ジェットセパレータの導入口延長サンプリングチューブ892の端と、ジェットセパレータ820の導入口894との間の位置に装着することができる。本発明の一実施形態では、ワイヤメッシュかごは、導入チューブ812と出口チューブ822との間でのイオンの移送を改善するように働く。本発明の一実施形態では、かごは、ギャップ805を完全に橋絡するように導入チューブ又は出口チューブのいずれかを重畳させることにより支持することもできるし、又はチューブの物理的な延長部として装着することもできる。
【0037】
実施例3では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0038】
実施例4−金属グリッドへの電界の付与
図9は、ジェットセパレータ920の入口側930と出口側940との間のギャップにグリッド970が及んでいる本発明の実施形態を示す。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータ920の入口側930及び出口側940に各々電位932及び942が印加される。本発明の一実施形態では、グリッドは、開放端メッシュかご970で作られ、ジェットセパレータ920の低圧真空領域980にガス原子及び中性分子を通過することができる。本発明の一実施形態では、メッシュかごは、円筒形の形状である。本発明の一実施形態では、グリッドは、金属で作られる。本発明の一実施形態では、メッシュかごは、ワイヤである。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、接地電位972で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて正の電位972で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、サンプルから発生される当該イオンを拘束するために必要に応じて負の電位972で動作することができる。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブ及び放出チューブの一方又は両方と電気的及び/又は物理的に接触される。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかごは、ジェットセパレータの導入チューブにも放出チューブにも電気的及び/又は物理的に接触されない。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかご内の電界は、均質である。本発明の一実施形態では、金属ワイヤのメッシュかご内の電界は、非均質である。本発明の一実施形態では、かごの内部に磁界が発生される。かごの内部に発生されるイオンは、かごの容積内に長時間拘束され、したがって、ジェットセパレータの入口に吸引されるガスの体積中にそれらが収集される潜在性が高くなる。本発明の別の実施形態では、ワイヤメッシュかごは、ジェットセパレータ920の入口側930と出口側940との間のギャップに及ばない。
【0039】
実施例4では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0040】
実施例5−イオンガイドの適用
本発明の他の実施形態では、ジェットセパレータの入口側と出口側との間のギャップにイオンガイドが及んでいる。本発明の一実施形態では、イオンガイドに直流電圧が印加される。本発明の他の実施形態では、イオンガイドに高周波電圧が印加される。
【0041】
実施例5では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。本発明の一実施形態では、ガスセパレータは、更に、イオンガイドを備えている。イオンガイドの効果は、イオンがガイドの長さに沿って効率的に伝達される一方、原子及び中性分子が影響を受けないままであり、したがって、真空は、中性分子がガスセパレータの出口側に入るのを取り除く傾向が強い。したがって、イオンガイドは、ガスセパレータの導入チューブから放出チューブへのイオンの伝送を増加する。
【0042】
実施例6−加熱による分子の蒸発
本発明の実施形態では、イオン化のエリアへ移送するための分子の収集は、導入吸引チューブの端末のエリアに高温ソースを受けさせることで完了され、この高温ソースは、ヒートランプ、炎、種々の形式のレーザ、電気回路の使用により作動されるヒートソース、及び表面に熱を付与できる他のヒートソースを含む。本発明の一実施形態では、ジェットセパレータによって与えられる真空の作用で収集されるサンプル分子は、その後、準安定中性励起状態種、空気分子、サンプル関連分子、及びサンプル関連イオンを含む担体ガスが移送チューブに沿って混合するときに、脱着イオン化ソースの作用によりイオン化される。
【0043】
実施例6では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0044】
実施例7−閉システムにおける分子の蒸発
本発明の実施形態では、揮発性分子が、サンプルの周りの雰囲気中に均一な非収束状態で分散される。ガスの流れを使用して、蒸発された分子を含むガスを、出口を通して、サンプリングチューブへと強制し、そこには、脱着イオン化ソースにより発生された準安定中性励起状態種を含む担体ガスが存在し、ジェットセパレータの入口に向かって引っ張られる。揮発した分子と、脱着イオン化担体ガスとの相互作用で、それらのガスがサンプリングチューブにおいてイオン化され、その後、それらイオンがジェットセパレータの入口へ移送され、質量分析計へ移送されるときに濃縮化される。
【0045】
実施例7では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0046】
実施例8−閉システムにおける分子の蒸発
図10は、サンプルがチャンバー1092に包囲され、そのサンプルからの揮発性分子がチャンバー雰囲気の体積中へと自由に分散される本発明の実施形態を示す。サンプルチャンバーは、サンプルを完全に取り巻いてもよいし、或いはフラットな表面のような物体に配置されたときにエンクロージャーを形成するように構成されてもよい。サンプルは、周囲温度にあって、高温ソースを受け、該高温ソースは、ヒートランプ、炎、種々の形式のレーザ、電気回路の使用により作動されるヒートソース、及びサンプルに熱を付与できるか又は非常に揮発性のサンプルの場合には凍結できる他のヒートソースを含む。蒸発された分子は、それら自身の作用によりチャンバー1092を去ってチューブ1098を通して出るか、或いは装置1096から発生するガスの流れによって強制されて、チューブ1094を通してチャンバーに入り、チューブ1098を通して、ソース1070とジェットセパレータ1020との間の長さに沿ったポイントにおいて移送チューブ1090の容積部へと出る。チューブ1090は、ソース1070に取り付けられ、該ソースは、その端末に取り付けられた移送チューブ1090へ流れ込む準安定の中性励起状態種を含む担体ガスを発生する。揮発性のサンプル分子と、準安定の中性励起状態種を含む担体ガスがサンプリングチューブ1090において相互作用すると、サンプリングチューブの容積部に沿ってサンプル分子がイオン化される。1090の容積部に形成されたイオンは、ジェットセパレータの入口1012へ入り、それらが質量分析計へ移送されるときに濃縮化される。
【0047】
図11に示す別の構成では、流出型ジェットセパレータ1120の使用について考える。この装置では、可変内径の導入チューブ1130が多孔性のガラスチューブ1183に取り付けられ、これには出口チューブ1140も取り付けられて、ガスセパレータの長さを経てイオンを含むガスの流れを許す。多孔性のガラスチューブは、真空ポンプ1180に接続された排気チャンバー1162によって取り巻かれる。ガス及びイオンは、入口1130を通してガスセパレータに入り、質量分析計に向かって進行する。サンプルを含むガスが多孔性領域を通過するときには、より小さなガス分子及び原子が、低真空領域1162へと拡散することにより除去される。
【0048】
図12の別の構成では、電位1224を印加できる金属スクリーンシリンダ1283が多孔性チューブの容積部内に位置され、イオンがチューブの容積部内でガスセパレータを通して進行するときにイオンの周りに等しい電位を保持することによりイオンを維持できる一方、中性担体ガスをポンピング領域1262へ拡散させることができる。
【0049】
図13に示す本発明の別の実施形態では、多孔性ガラスチューブ、プラスチックふるい、ガラス、加工可能なガラス及びセラミック、金属膜又は被覆を施すことのできる多孔性セラミック、金属メッシュ、ガラス裏張り金属チューブ、金属被覆溶融シリカ、金属被覆の加工可能なガラス、及び電位1324を内径面に印加できる金属被覆セラミック1343を使用して、イオンを維持する一方、中性物が多孔性チューブを通してポンピング領域1362へ拡散するときにそれら中性物をポンピング除去する。
【0050】
実施例8では、ジェットセパレータをガスセパレータに置き換えることができる。
【0051】
実施例9−ガスセパレータを通してのイオンの移送
ガスセパレータの導入チューブ及び放出チューブの両方に等しい電位を印加した結果が図18に示されており、ここでは、陽子を加えたキニーネ分子イオンの質量クロマトグラムが、ガスセパレータチューブの内面及び外面に印加される電位の関数としてプロットされる。ガラス融点チューブに挿入されたキニーネの1ngサンプルがDART(登録商標)ソースの前部に導入されて、大気圧でイオン化された。導入及び放出チューブに印加される電位が上昇され、分子の相対的な豊富さが時間にわたって測定された。各サンプルに対してチューブに印加された電位が、各一連のピークの上に指示され、(i)は、0ボルト印加を指示し、(i)は、50Vを指示し、(ii)は、100Vを指示し、(iii)は、200Vを指示し、(iv)は、300Vを指示し、(v)は、400Vを指示し、(vi)は、500Vを指示する。これは、ガスセパレータに印加される(比較的高い)電位が大気イオンソースから質量分析計の分析領域へ伝送されるイオンの数を増加できるという予期せぬ結果を示している。実験では、更に、0から50Vの範囲の低い電位において、陽子を加えた分子の相対的豊富さは、100ないし400Vの範囲の高い電位において検出されたイオンの豊富さに対して低いことが指示される。
【0052】
大気圧イオン化領域と質量分析計の高真空入口との間で2つのチューブを互いに軸上に配置すると、これらイオンの集団が分析のために質量分析計へ移行される。実験では2つの異なる真空ソースがガスセパレータに存在すると理解された。中性原子及び分子、荷電原子及び分子、準安定原子及び分子を搬送するガスは、導入チューブから出ると、放出チューブへ引き込まれて質量分析計へ移送されるか、或いはセパレータの低圧領域へ引き込まれて真空ポンプへと出る。各領域の差圧力が合成されて、導入チューブを排気する。図19にプロットされた実験結果は、導入チューブと放出チューブとの間の領域に付与される真空を高くすることが、質量分析計へのイオン伝送に及ぼす作用を示している。バルブを使用して、ガスセパレータに付与される真空を調整する。図19において、領域(i)のTICトレースは、バルブの0回転に対応し、領域(ii)は、バルブの1回転に対応し、領域(iii)は、バルブの2回転に対応し、領域(iv)は、バルブの3回転に対応し、領域(v)は、バルブの4回転に対応し、領域(vi)は、バルブの5回転に対応する。この実験は、ガスセパレータに付与される真空で大気イオン化ソースから質量分析計の分析領域へ伝送されるイオンの数を増加できるという予期せぬ結果を示している。又、この結果は、バルブが開放され真空が高くなるにつれて、質量分析計へのイオンの伝送が増加することも示している(領域(ii)、(iii)及び(iv)を参照)。しかしながら、バルブを更に開放すると、領域(v)及び(vi)に示すように、伝送が減少される。又、このデータは、真空が更に高くなるにつれて、より多くのサンプルイオンが質量分析計からそらされるように作用することも示している。この値は、ガスセパレータの導入チューブと放出チューブとの間の距離の関数として変化することが観察されている。特定の幾何学形状に対して、ガスセパレータの放出チューブを通して質量分析計へ至るイオンの最適な移送を与えるように真空を調整することができる。
【0053】
DART(登録商標)ソースは、質量分析計のAPI入口に対して離れたところで材料のイオン化を可能にするが、距離が増加される場合には、周囲の雰囲気から導出されるイオンの豊富さが、当該サンプルから導出されるものに対して顕著になる。DART(登録商標)ソースの動作ゾーンを質量分析計のすぐ近くのAPI入口エリアから離すように延ばすことにより遠隔領域のサンプリングに長い導入チューブの使用を可能にすることで、周囲雰囲気中に存在する分子の貢献を減少することが図20に示されており、ここでは、(i)ガスセパレータの機能を伴う場合及び(ii)ガスセパレータの機能を伴わない場合に発生される質量スペクトルの比較が示されている。図20(ii)において、通常のラボラトリーの空気から導出されたイオンは、質量スペクトルを支配するが、これらのイオンは、真空オン状態において導入チューブと放出チューブとの間の領域に真空(図20(i))が付与されると、低いレベルで存在する。この実験は、導入チューブの開口でサンプリングされるガスの量を増加すると、大気イオン化ソースから質量分析計の分析領域へ伝送されるイオンの数を増加でき、ひいては、分析の全体的な感度を上げられるという予期せぬ結果を示している。
【0054】
効果
ガスセパレータの効果は、サンプリングされてMSの高真空領域へ導入されるガスの量を増加できることである。原子及び小さな中性分子をガスセパレータにおいてイオンから剥離できるので、高い真空を不変のまま保てる一方、分析感度を高めることができる。
【0055】
用途
ガスセパレータは、DART(登録商標)、DESI、及びMSに使用される大気圧MALDIを含む種々の大気イオン化ソースと結合することができる。各々の場合に、MSに導入されるイオンの数を増加することにより、技術の感度を高めることができる。又、ガスセパレータは、ほぼ大気圧又は低い真空で形成されたイオンを検出のために高真空の領域へ移送することに依存する多数の他の分光装置に使用することもできる。又、ガスセパレータは、ガスを導入するプロセスで形成されたイオンが有害なもので、それ故、ガスの除去が有益である、好ましくは超高真空で動作する表面科学分光装置に使用することもできる。又、ガスセパレータは、ラマン分光計、電磁吸収分光計、電磁放射分光計、及び表面検出分光計を含む他の適当な検出器と共に使用することもできる。ガスセパレータに使用できる分析検出器の種類は、ここに指定するものに限定されず、当業者が不当な実験を伴わずに想像する検出器も包含する。
【0056】
ワイヤメッシュかごは、穴を加工できる孔付きチューブ、或いは多孔性セラミック、等を含む。ここで使用する「に基づく(based on)」という語は、特に指示のない限り、「少なくとも一部分基づく(based at least in part on)」を意味する。
【0057】
容量性の表面は、電位で荷電できる表面である。表面は、その表面に印加される電位が典型的な実験期間中保持される場合に、電位で荷電することができ、ここで、表面の電位は、表面に印加される電位の50%より大きい。
【0058】
本発明の方法、システム及びコンポーネントの実施形態を以上に説明した。どこかで述べたように、これらの実施形態は、本発明を単に例示するものに過ぎず、これに限定されない。他の実施形態も考えられ、本発明によって網羅される。このような実施形態は、ここに含まれる技術に基づいて当業者に明らかであろう。例えば、種々の図面及び前記実施形態に示された実際の形状に関わらず、導入チューブの外径出口にテーパーを付けても付けなくてもよく、又、放出チューブの外径入口にテーパーを付けても付けなくてもよいことが考えられる。
【0059】
したがって、本発明の範囲は、上述した実施形態によって限定されるものではなく、特許請求の範囲及びその等効物のみによって限定される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来のGC/MS計測器と共に使用される従来のジェットセパレータを示す図である。
【図2】従来のGC/MSの高真空イオン化ソースを伴う従来のジェットセパレータを示す図である。
【図3】従来の典型的なAPI−MSを示す図である。
【図4A】本発明の一実施形態によりスキマーベースのAPI導入口をもつMSへイオンを移送する手段としてジェットセパレータを示す概略図である。
【図4B】本発明の一実施形態により毛管型API導入口をもつMSへイオンを移送する手段としてジェットセパレータを示す概略図である。
【図4C】本発明の一実施形態により従来のAPI−MSと一体化されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態により導入及び放出チューブで製造されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図6】ジェットセパレータがサンプリングチューブに接続された本発明の実施形態を示す概略図である。
【図7】本発明の一実施形態により導入口にグリッドをもつジェットセパレータを示す概略図である。
【図8】本発明の一実施形態によりサンプリングチューブの導入口にグリッドをもつジェットセパレータを示す概略図である。
【図9】本発明の一実施形態により導入チューブと放出チューブとの間にグリッドをもつように製造されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図10】本発明の一実施形態によりサンプリングチューブ及びグリッドをもつジェットセパレータであって、グリッドとジェットセパレータとの中間点においてサンプリングチューブにサンプルが接続されるジェットセパレータを示す概略図である。
【図11】本発明の一実施形態による流出型セパレータを示す概略図である。
【図12】本発明の一実施形態により電位を印加できるワイヤメッシュかごを組み込んだ流出型セパレータを示す概略図である。
【図13】本発明の一実施形態により電位を印加できる孔付きのかごを組み込んだ流出型セパレータを示す概略図である。
【図14】本発明の一実施形態により図4(c)に比して太い直径のチューブを有する導入及び放出チューブで製造されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図15】本発明の一実施形態により異なる内径のチューブを有する導入及び放出チューブで製造されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図16】本発明の一実施形態により異なる長さを有する導入及び放出チューブで製造されたジェットセパレータを示す概略図である。
【図17】本発明の一実施形態によりガスセパレータの放出チューブが2つ以上のスキマーに及ぶようなジェットセパレータの概略図である。
【図18】(i)−(vi)は、ガスセパレータの導入及び放出チューブの表面に印加される電位の関数としてイオン化領域からサンプリングされるイオンの相対的な豊富さを示す質量クロマトグラムトレースである。
【図19】(i)−(vi)は、ガスセパレータの導入チューブと放出チューブとの間に付与される相対的真空の関数としてイオン化領域からサンプリングされるイオンの相対的な豊富さを示す全イオンクロマトグラムトレースである。
【図20】周囲雰囲気のイオン化から導出される質量スペクトルを、(i)ガスセパレータに真空を付与した後、及び(ii)付与する前、に示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)検体のイオンを発生する外部イオンソースと、
(b)イオンが入り込むジェットセパレータと、
を備えたことを特徴とするガスセパレータ。
【請求項2】
前記ジェットセパレータ上に容量性表面を更に備えた、請求項1に記載のガスセパレータ。
【請求項3】
請求項1に記載のガスセパレータを備えた質量分析計。
【請求項4】
(a)外部イオンソースと、
(b)複数の実質的に同軸的なチューブであって、それら複数のチューブ間にギャップが存在するように離間された複数のチューブと、
(c)前記複数の同軸的なチューブの少なくとも一部分が配置された真空領域と、
を備えたことを特徴とするガスセパレータ。
【請求項5】
前記複数の実質的に同軸的なチューブ間の複数のギャップのうちの1つ以上を包囲する1つ以上のワイヤメッシュかごスクリーンを更に備えた、請求項4に記載のガスセパレータ。
【請求項6】
前記ガスセパレータが、近方端及び遠方端を有する導入チューブと、近方端及び遠方端を有する放出チューブとで形成され、前記導入チューブの近方端が、前記外部イオン化ソースに最も接近し、その遠方端は、そこから最も離れ、更に、前記導入チューブの近方端は、前記外部イオン化ソースから、約10-3mの下限ないし約101mの上限の距離にある、請求項1に記載のガスセパレータ。
【請求項7】
前記導入チューブの近方端、前記導入チューブの遠方端、前記放出チューブの近方端、及び、前記放出チューブの遠方端のうちの少なくとも1つに向けられたヒータを更に備えた、請求項6に記載のガスセパレータ。
【請求項8】
前記1つ以上の実質的に同軸的なチューブに1つ以上の容量性表面を更に備え、これら1つ以上の容量性表面には1つ以上の電位が印加される、請求項4に記載のガスセパレータ。
【請求項9】
前記複数の実質的に同軸的なチューブの1つ以上は、ガラス、抵抗被覆されたガラス、ガラス裏張りの金属チューブ、被覆された溶融シリカ、金属被覆された溶融シリカ、加工可能なガラス、金属被覆された加工可能なガラス、セラミック、金属被覆されたセラミック及び金属より成るグループから選択された材料で作られる、請求項8に記載のガスセパレータ。
【請求項10】
前記複数の実質的に同軸的なチューブが、ほぼ大気圧の領域とほぼ高真空の領域との間に位置される、請求項8に記載のガスセパレータ。
【請求項11】
(a)検体のイオンを発生する外部イオンソースと、
(b)真空のもとでイオンが横断するジェットセパレータと、
(c)前記ジェットセパレータを出たイオンが入り込む質量分析器/イオン検出器と、
を備えたことを特徴とする質量分析計。
【請求項12】
(a)質量分析計、外部イオンソース、及びジェットセパレータを含む装置を用意するステップと、
(b)前記外部イオンソースから検体イオンを発生するステップと、
(c)前記検体イオンを、前記ジェットセパレータを通して前記質量分析計へ搬送するステップと、
を含むことを特徴とする検体を検出する方法。
【請求項13】
(a)検体をイオン化するためのイオン化ソースと、
(b)2つの端を有する導入側チューブであって、前記イオン化ソースの近方にある一方の端は、それを通して検体イオンが入り、且つ前記イオン化ソースの遠方にある他方の端は、それを通して検体イオンが出るものである導入側チューブと、
(c)検体イオンが横断するところの真空領域と、
(d)2つの端を有する放出側チューブであって、前記真空領域の近方にある一方の端は、それを通して検体イオンが入り、且つ前記真空領域の遠方にある他方の端は、それを通して検体イオンが出るものである放出側チューブと、
(e)検体イオンの検出器と、
を備えたことを特徴とする検体を検出するシステム。
【請求項14】
前記検出器が、質量分析計、ラマン分光計、電磁吸収分光計、電磁放射分光計及び表面検出分光計より成るグループから選択される、請求項13に記載のシステム。
【請求項1】
(a)検体のイオンを発生する外部イオンソースと、
(b)イオンが入り込むジェットセパレータと、
を備えたことを特徴とするガスセパレータ。
【請求項2】
前記ジェットセパレータ上に容量性表面を更に備えた、請求項1に記載のガスセパレータ。
【請求項3】
請求項1に記載のガスセパレータを備えた質量分析計。
【請求項4】
(a)外部イオンソースと、
(b)複数の実質的に同軸的なチューブであって、それら複数のチューブ間にギャップが存在するように離間された複数のチューブと、
(c)前記複数の同軸的なチューブの少なくとも一部分が配置された真空領域と、
を備えたことを特徴とするガスセパレータ。
【請求項5】
前記複数の実質的に同軸的なチューブ間の複数のギャップのうちの1つ以上を包囲する1つ以上のワイヤメッシュかごスクリーンを更に備えた、請求項4に記載のガスセパレータ。
【請求項6】
前記ガスセパレータが、近方端及び遠方端を有する導入チューブと、近方端及び遠方端を有する放出チューブとで形成され、前記導入チューブの近方端が、前記外部イオン化ソースに最も接近し、その遠方端は、そこから最も離れ、更に、前記導入チューブの近方端は、前記外部イオン化ソースから、約10-3mの下限ないし約101mの上限の距離にある、請求項1に記載のガスセパレータ。
【請求項7】
前記導入チューブの近方端、前記導入チューブの遠方端、前記放出チューブの近方端、及び、前記放出チューブの遠方端のうちの少なくとも1つに向けられたヒータを更に備えた、請求項6に記載のガスセパレータ。
【請求項8】
前記1つ以上の実質的に同軸的なチューブに1つ以上の容量性表面を更に備え、これら1つ以上の容量性表面には1つ以上の電位が印加される、請求項4に記載のガスセパレータ。
【請求項9】
前記複数の実質的に同軸的なチューブの1つ以上は、ガラス、抵抗被覆されたガラス、ガラス裏張りの金属チューブ、被覆された溶融シリカ、金属被覆された溶融シリカ、加工可能なガラス、金属被覆された加工可能なガラス、セラミック、金属被覆されたセラミック及び金属より成るグループから選択された材料で作られる、請求項8に記載のガスセパレータ。
【請求項10】
前記複数の実質的に同軸的なチューブが、ほぼ大気圧の領域とほぼ高真空の領域との間に位置される、請求項8に記載のガスセパレータ。
【請求項11】
(a)検体のイオンを発生する外部イオンソースと、
(b)真空のもとでイオンが横断するジェットセパレータと、
(c)前記ジェットセパレータを出たイオンが入り込む質量分析器/イオン検出器と、
を備えたことを特徴とする質量分析計。
【請求項12】
(a)質量分析計、外部イオンソース、及びジェットセパレータを含む装置を用意するステップと、
(b)前記外部イオンソースから検体イオンを発生するステップと、
(c)前記検体イオンを、前記ジェットセパレータを通して前記質量分析計へ搬送するステップと、
を含むことを特徴とする検体を検出する方法。
【請求項13】
(a)検体をイオン化するためのイオン化ソースと、
(b)2つの端を有する導入側チューブであって、前記イオン化ソースの近方にある一方の端は、それを通して検体イオンが入り、且つ前記イオン化ソースの遠方にある他方の端は、それを通して検体イオンが出るものである導入側チューブと、
(c)検体イオンが横断するところの真空領域と、
(d)2つの端を有する放出側チューブであって、前記真空領域の近方にある一方の端は、それを通して検体イオンが入り、且つ前記真空領域の遠方にある他方の端は、それを通して検体イオンが出るものである放出側チューブと、
(e)検体イオンの検出器と、
を備えたことを特徴とする検体を検出するシステム。
【請求項14】
前記検出器が、質量分析計、ラマン分光計、電磁吸収分光計、電磁放射分光計及び表面検出分光計より成るグループから選択される、請求項13に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4(A)】
【図4(B)】
【図4(C)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4(A)】
【図4(B)】
【図4(C)】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2009−529141(P2009−529141A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558459(P2008−558459)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/063006
【国際公開番号】WO2007/103693
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(506381267)イオンセンス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/063006
【国際公開番号】WO2007/103693
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(506381267)イオンセンス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】
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