説明

表面コーティングおよび定着器部材

【課題】定着部材の表面エネルギーが低いコーティングは、剥離性能を悪化させることが多く、表面特性を改良するフィラー材料をもつ定着器部材を提供する。
【解決手段】表面コーティングを開示する。表面コーティングは、エアロゲル粒子が分散したフッ素系プラスチックを含み、エアロゲル粒子が、表面コーティングの約0.1重量%〜約25重量%含まれる。表面コーティングは、定着器部材100の外側層130として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本出願と同時に出願された、同一出願人による同時係属中の出願番号13/053,423(書類番号20101486−US−NP、代理人参照番号:XRX−0049)に関連する。
【0002】
本開示は、一般的に、表面エネルギーが低い表面層に関し、詳細には、デジタル、多重画像型などを含む電子写真式画像形成装置で有用な定着器部材に関する。
【背景技術】
【0003】
表面エネルギーがきわめて低いコーティングは、焦げ付き防止調理器具、海洋での汚染物質の付着防止、自浄化作用をもつ窓および建築材料、機械のコーティング、離型包装、インクおよびトナーの包装、落書き防止成分、インクジェット印刷および油を用いない印刷のような広範囲の用途に向けた多くの産業で必要とされている。表面エネルギーがきわめて低いコーティングは、油を用いない印刷で必要とされている。表面の性質を変えるために、PFAのような表面エネルギーが低いフッ素系プラスチック材料にフィラーを加えてきたが、フッ素化されていない材料のフィラーは、剥離性能を悪化させることが多い。定着器トップコートの表面特性を改良するフィラー材料をもつことが望ましいだろう。
【0004】
電子写真式印刷プロセスにおいて、トナー画像は、定着器ローラーを用いて支持板(例えば、紙シート)に固定されてもよく、定着されてもよい。従来の定着技術は、定着器ローラーからの良好な剥離性を維持するために、定着操作中に定着器ローラーに対して剥離剤/定着器油を適用する。例えば、油を用いた定着技術は、エントリーモデルの製品およびカラー製品の市場におけるすべての高速製品で用いられている。
【0005】
耐久性があり、製造が容易で、表面エネルギーが低いコーティングが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態によれば、エアロゲル粒子が分散したフッ素系プラスチックを含む表面コーティングが提供され、この表面コーティングの表面エネルギーは、約20mN/m以下である。
【0007】
別の実施形態によれば、基材と、基材の上に配置された機能性層とを備える定着器部材が記載されている。外側層は、機能性層の上に配置されており、エアロゲル粒子が分散したフッ素系プラスチックマトリックスを含み、外側層の表面エネルギーは、約20mN/m未満である。
【0008】
別の実施形態によれば、基材と、基材の上に配置された外側層とを備える定着器部材が提供される。外側層は、エアロゲル粒子が分散したフッ素系プラスチックマトリックスを含み、エアロゲル粒子は、約1重量%〜約5重量%含まれ、外側層の表面エネルギーは、約10mN/m未満である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本教示による円柱状基材を備える例示的な定着部材を示す図である。
【図2】本教示にかかるベルト基材を備える例示的な定着部材を示す図である。
【図3A】図3Aは、本発明の教示にかかる、図1に示した定着器ローラーを用いた例示的な定着構造を示す図である。
【図3B】図3Bは、本発明の教示にかかる、図1に示した定着器ローラーを用いた例示的な定着構造を示す図である。
【図4A】図4Aは、本発明の教示にかかる、図2に示した定着器ベルトを用いた別の例示的な定着構造を示す図である。
【図4B】図4Bは、本発明の教示にかかる、図2に示した定着器ベルトを用いた別の例示的な定着構造を示す図である。
【図5】転写固定装置を用いる例示的な定着器構造を示す図である。
【図6】コンポジットエアロゲル/PFAの処理を示す図である。
【図7】本明細書に記載の表面コーティングの接触角を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書には、表面エネルギーが非常に低い表面層が開示されている。表面エネルギーがきわめて低いコーティングは、焦げ付き防止調理器具、海洋での汚染物質の付着防止、自浄化作用をもつ窓および建築材料、機械のコーティング、離型包装、インクおよびトナーの包装、落書き防止成分、インクジェット印刷および油を用いない印刷のような広範囲の用途に向けた多くの産業で必要とされている。油を用いない定着のために、表面エネルギーがきわめて低い定着器トップコートが必要とされている。表面の性質を変えるために、PFAのような表面エネルギーが低いフッ素系プラスチック材料にフィラーを加えてもよいが、フッ素化されていない材料のフィラーを加えると、剥離性能が悪化することが多い。表面特性を改良するコンポジットコーティングが定着および他の用途で望ましく、本明細書に記載されている。本明細書に記載の表面層は、高疎水性であることを特徴とする。
【0011】
本明細書で使用する場合、用語「疎水性の/疎水性」および用語「撥油性の/撥油性」は、例えば、水およびヘキサデカン(または炭化水素、シリコーン油など)の接触角が、それぞれ約90°以上である表面の濡れ挙動を指す。例えば、疎水性/撥油性の表面では、約10〜15μLの水/ヘキサデカン液滴は球状になり、平衡接触角は、約90°以上であってよい。
【0012】
本明細書で使用する場合、「超疎水性/超疎水性の表面」および用語「超撥油性の/超撥油性」は、それぞれ、もっと限定した種類の疎水性および撥油性をもつ表面濡れ性を指す。例えば、超疎水性/超撥油性の表面は、水/ヘキサデカンの接触角が約120°以上であってよい。
【0013】
用語「高疎水性/高疎水性の表面」および「高撥油性の/高撥油性」は、それぞれ、さらにもっと限定した種類の疎水性および撥油性をもつ表面濡れ性を指す。例えば、高疎水性/高撥油性の表面は、水/ヘキサデカンの接触角が約150°以上であり、約10〜15μLの水/ヘキサデカンの液滴は、水平面から数度傾いた表面を自由に転がるだろう。高疎水性/高撥油性の表面上にある水/ヘキサデカン液滴のすべり角は、約10°以下であろう。高疎水性/高撥油性の傾いた表面では、後退する表面の接触角は高く、液滴のうち、坂の上側にある部分の界面が固体表面に張り付く傾向は小さいため、表面にある液滴が滑り落ちないようにする抵抗力に重力が打ち勝つだろう。高疎水性/高撥油性の表面は、前進接触角と後退接触角のヒステリシスが非常に小さいと記述することができる(例えば、40°以下)。なお、液滴が大きくなると、もっと重力の影響を受け、滑りやすくなり、一方、液滴が小さいと、静止した状態または所定の位置にとどまる傾向が大きくてよい。
【0014】
本明細書で使用する場合、用語「表面エネルギーが低い」および用語「表面エネルギーがきわめて低い」は、分子が表面に接着する能力を指す。表面エネルギーが低いほど、分子は表面に付着しにくくなるだろう。例えば、表面エネルギーが低いとは、値が約20mN/m以下であることを特徴とし、表面エネルギーがきわめて低いとは、値が約10mN/m以下であることを特徴とする。
【0015】
固定部材または定着器部材は、1つ以上の機能性層が形成された基材を備えていてもよい。1つ以上の機能性層は、疎水性および/または撥油性、超疎水性および/または超撥油性、または高疎水性および/または高撥油性である表面濡れ性を有する表面コーティングまたは上部層を備えていてもよい。支持材料(例えば、紙シート)の上にある定着したトナー画像からのトナー剥離性が良好であり、この性質を維持し、さらに、紙をはがしやすくするために、このような固定部材を、高速高品質の電子写真印刷のための油を用いない定着部材として用いてもよい。
【0016】
種々の実施形態では、固定部材は、例えば、1つ以上の機能性層が形成された基材を備えていてもよい。基材は、例えば、図1および2に示されるように、特定の構造に依存して、非導電性または導電性の適切な材料を用い、例えば、円柱(例えば、円筒管)、円柱状のドラム、ベルトまたは膜のような種々の形状で作成されてもよい。
【0017】
特に、図1は、本教示にかかる円柱状基材110を備える例示的な固定部材または定着部材100を示し、図2は、本教示にかかるベルト基材210を備える、別の例示的な固定部材または定着部材200を示す。図1に示されている固定部材または定着部材100および図2に示されている固定部材または定着部材200は、一般化された概略をあらわしており、他の層/基材を加えてもよく、存在する層/基材を除去するか、または変えてもよいことは、当業者には容易に明らかになるはずである。
【0018】
図1において、例示的な固定部材100は、1つ以上の機能性層120(中間層とも呼ばれる)と外側層130とが形成された円柱状基材110を備える定着器ローラーであってもよい。種々の実施形態では、円柱状基材110は、円筒管の形(例えば、内部に加熱ランプを備える中空構造を有するもの、または中身が詰まった円筒状のシャフト)をしていてもよい。図2において、例示的な固定部材200は、1つ以上の機能性層(例えば、220)と外側表面230とが形成されたベルト基材210を備えていてもよい。ベルト基材210および円柱状基材110は、当業者には知られているように、剛性および構造保全性を維持するために、例えば、ポリマー材料(例えば、ポリイミド、ポリアラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリフタルアミド、ポリアミド−イミド、ポリケトン、ポリフェニレンスルフィド、フルオロポリイミドまたはフルオロポリウレタン)、金属材料(例えば、アルミニウムまたはステンレス鋼)から作られていてもよい。
【0019】
機能性層120および220の例としては、フルオロシリコーン、シリコーンゴム、例えば、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴム、低温加硫(LTV)シリコーンゴムが挙げられる。これらのゴムは既知であり、商業的に簡単に入手可能であり、例えば、SILASTIC(登録商標)735ブラックRTVおよびSILASTIC(登録商標)732 RTV(いずれもDow Corning製)、106 RTV Silicone Rubberおよび90 RTV Silicone Rubber(いずれもGeneral Electric製)、JCR6115CLEAR HTVおよびSE4705U HTVシリコーンゴム(Dow Corning Toray Silicones製)である。他の適切なシリコーン材料としては、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)、フルオロシリコーン(例えば、Silicone Rubber 552(Sampson Coating(Richmond,Virginia)から入手可能))、液体シリコーンゴム、例えば、ビニル架橋した熱硬化性ゴム、またはシラノールを室温で架橋した材料などが挙げられる。別の特定の例は、Dow Corning Sylgard 182である。市販のLSRゴムとしては、Dow Corning製のDow Corning Q3−6395、Q3−6396、SILASTIC(登録商標)590 LSR、SILASTIC(登録商標)591 LSR、SILASTIC(登録商標)595 LSR、SILASTIC(登録商標)596 LSR、SILASTIC(登録商標)598 LSRが挙げられる。機能性層は、弾力性を付与し、必要な場合には、例えば、SiCまたはAlのような無機粒子と混合してもよい。
【0020】
また、機能性層120および220の例としては、フルオロエラストマーも挙げられる。フルオロエラストマーは、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー、例えば、VITON A(登録商標)で商業的に知られているもの、(2)VITON B(登録商標)として商業的に知られているような、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー、(3)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマー、例えば、VITON GH(登録商標)、VITON GF(登録商標)で商業的に知られているもののような種類に由来する。これらのフルオロエラストマーは、種々の名称で商業的に知られており、例えば、VITON E(登録商標)、VITON E 60C(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON 910(登録商標)、VITON ETP(登録商標)とともに、上に列挙したものがある。VITON(登録商標)という名称は、E.I.DuPont de Nemours,Incの商標である。キュアサイトモノマーは、4−ブロモペルフルオロブテン−1、1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1、3−ブロモペルフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1、または任意の他の適切な既知のキュアサイトモノマー(例えば、DuPontから市販されているもの)であってもよい。他の市販されているフッ素系ポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)、FLUOREL LVS 76(登録商標)が挙げられ、FLUOREL(登録商標)は、3M Companyの登録商標である。さらなる市販材料としては、AFLAS(商標)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)、FLUOREL II(登録商標)(LII900)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンビニリデンフルオリド)(これらも、3M Companyから入手可能)、FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、NH(登録商標)、P757(登録商標)TNS(登録商標)T439(登録商標)、PL958(登録商標)、BR9151(登録商標)、TN505(登録商標)として特定されるTecnoflon(Ausimontから入手可能)が挙げられる。
【0021】
フルオロエラストマーであるVITON GH(登録商標)およびVITON GF(登録商標)は、フッ化ビニリデンの量が比較的少ない。VITON GF(登録商標)およびVITON GH(登録商標)は、約35重量%のフッ化ビニリデンと、約34重量%のヘキサフルオロプロピレンと、約29重量%のテトラフルオロエチレンと、約2重量%のキュアサイトモノマーとを有している。
【0022】
ローラー構造の場合、機能性層の厚みは、約0.5mm〜約10mm、または約1mm〜約8mm、または約2mm〜約7mmであってもよい。ベルト構造の場合、機能性層は、約25μm〜約2mm、または約40μm〜約1.5mm、または約50μm〜約1mmであってもよい。
【0023】
剥離層130または230の例示的な実施形態は、エアロゲル粒子が分散したフッ素系ポリマーを含む。フッ素系ポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VF2)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のテトラポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。フッ素系プラスチックは、化学薬品および熱に安定であり、表面エネルギーが低い。フッ素系プラスチックは、融点が約255℃〜約360℃、または約280℃〜約330℃である。
【0024】
定着器部材200の場合、外側表面層または剥離層230の厚みは、約10μm〜約100μm、または約20μm〜約80μm、または約30μm〜約50μmであってもよい。
【0025】
添加剤およびさらなる導電性フィラーまたは非導電性フィラーが、中間層の基材層110および210、中間層220および230、剥離層130および230中に存在していてもよい。種々の実施形態では、他のフィラー材料または添加剤(例えば、無機粒子を含む)を、コーティング組成物に用いてもよく、その後に形成される表面層に用いてもよい。本明細書で用いられる導電性フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト、フラーレン、アセチレンブラック、フッ素化カーボンブラックなどのようなカーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属酸化物およびドープされた金属酸化物、例えば、酸化スズ、二酸化アンチモン、アンチモンがドープされた酸化スズ、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、インジウムがドープされた三酸化スズなど、およびこれらの混合物を挙げることができる。特定のポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ピロール、ポリインドール、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリアズレン、ポリアゼピン、ポリ(フッ素)、ポリナフタレン、有機スルホン酸塩、リン酸エステル、脂肪酸エステル、アンモニウム塩またはホスホニウム塩、およびこれらの混合物を、導電性フィラーとして用いてもよい。種々の実施形態では、当業者に知られている他の添加剤を入れ、開示されているコンポジット材料を作成することもできる。
【0026】
場合により、任意の既知の接着層および入手可能な適切な接着層が、外側層または外側表面、機能性層、基材の間に配置されていてもよい。接着層は、約2nm〜約10,000nm、または約2nm〜約1,000nm、または約2nm〜約5000nmの厚みで基材または外側層にコーティングされてもよい。接着剤を、スプレーコーティングまたはワイピングを含む既知の任意の適切な技術によってコーティングしてもよい。
【0027】
図3A〜4Bおよび図4A〜4Bは、本発明の教示にかかる定着プロセスのための例示的な定着構造を示す。図3A〜3Bに示されている定着構造300A〜B、および図4A〜4Bに示されている定着構造400A〜Bが、一般化された模式的な図を示しており、他の部材/層/基材/構造を追加してもよく、または、すでに存在している部材/層/基材/構造を取り除くか、または変えてもよいことが当業者には容易に明らかになるはずである。本明細書では電子写真式プリンターを記載しているが、開示されている装置および方法を、他の印刷技術に応用してもよい。例としては、オフセット印刷およびインクジェット機および固体転写固定機が挙げられる。
【0028】
図3A〜3Bは、本教示にかかる、図1に示される定着器ローラーを用いた定着構造300A〜Bを示す。構造300A〜Bは、定着器ローラー100(すなわち、図1の100)を備えていてもよく、このローラーは、加圧機構335(例えば、図3Aの加圧ローラーまたは図3Bの加圧ベルト)とともに、画像支持材料315のための定着器用爪を形成する。種々の実施形態では、加圧機構335を、加熱ランプ337と組み合わせて用い、トナー粒子を画像支持材料315の上で定着させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造300A〜Bは、図3Aおよび図3Bに示されているように、1つ以上の外部熱ロール350を、例えば、クリーニングウェブ360とともに備えていてもよい。
【0029】
図4A〜4Bは、本教示にかかる、図2に示される定着器ベルトを用いた定着構造400A〜Bを示す。構造400A〜Bは、定着器ベルト200(すなわち、図2の200)を備えていてもよく、このベルトは、加圧機構435(例えば、図4Aの加圧ローラーまたは図4Bの加圧ベルト)とともに、媒体基材415のための定着器用爪を形成する。種々の実施形態では、加圧機構435を、加熱ランプと組み合わせて用い、トナー粒子を媒体基材415の上で定着させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造400A〜Bは、定着器ベルト200を動かし、媒体基材415の上でトナー粒子を定着させ、画像を作成するような機械システム445を備えていてもよい。機械システム445は、1つ以上のローラー445a〜cを備えていてもよく、必要な場合には、これらを加熱ローラーとして用いてもよい。
【0030】
図5は、ベルト、シート、膜などの形態であってもよい、転写固定部材7の一実施形態の図を示す。転写固定部材7は、上述の定着器ベルト200と似た構成である。現像した画像12が中間転写体1の上にあり、ローラー4および8を介して転写固定部材7と接触し、転写固定部材7に転写される。ローラー4および/またはローラー8は、これらに関連して熱を帯びていてもよいし、帯びていなくてもよい。転写固定部材7は、矢印13の方向に進む。複写基材9がローラー10と11との間を進むにつれて、現像した画像が複写基材9に転写され、定着する。ローラー10および/または11は、これらに関連して熱を帯びていてもよいし、帯びていなくてもよい。
【0031】
高疎水性を含む表面特性を改良するコンポジット表面コーティングが記載される。すでに列挙したフッ素系プラスチック(例えば、PFA Teflon、PTFE Teflon、FEPなど)は、定着器トップコートとして優れた性質を示すが、このようなトップコートの疎水性を高め、脆さを低減することが望ましいだろう。
【0032】
エアロゲル/フッ素系プラスチックコンポジットコーティングによって、表面エネルギーをきわめて低くすることが可能な高疎水性表面が得られる。エアロゲルをフッ素系プラスチックコーティングに加えると、弾性率が高くなり、表面エネルギーが高くならずに(例えば、カーボンブラックまたは他の硬質フィラー粒子を加えた場合に起こり得るように)、材料の性質を変える機会が得られる。
【0033】
エアロゲルは、一般的な用語では、孔の流体を除去し、孔の流体を気体と交換することによって固相になるまで乾燥させたゲルと記述されるだろう。本明細書で使用する場合、「エアロゲル」は、一般的に、密度がきわめて低いセラミック固体、典型的には、ゲルから作られる材料を指す。したがって、用語「エアロゲル」は、乾燥中にゲルがほとんど縮まず、空隙率および関連する特性が保持された、乾燥させたゲルを示すために用いられる。これとは対照的に、「ヒドロゲル」は、孔の流体が水系流体である濡れたゲルを記述するために用いられる。用語「孔の流体」は、孔要素を作成している間に孔構造内に入った流体を記述する。乾燥させると(例えば、超臨界乾燥)、かなりの量の空気を含むエアロゲル粒子が形成され、密度が低い固体が得られ、表面積が大きくなる。種々の実施形態では、エアロゲルは、質量密度が小さく、比表面積が大きく、空隙率が非常に大きいことを特徴とする低密度微孔性材料である。特に、エアロゲルは、互いに接続した小さな大量の孔を含む固有の構造を特徴とする。溶媒を除去した後、重合した材料を不活性雰囲気中で熱分解させ、エアロゲルを作成する。
【0034】
任意の適切なエアロゲル要素を使用してもよい。実施形態では、エアロゲル要素は、例えば、無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲル、およびこれらの混合物から選択されてもよい。特定の実施形態では、セラミックエアロゲルを適切に用いることができる。これらのエアロゲルは、典型的には、シリカで構成されているが、金属酸化物(例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア)または炭素で構成されていてもよく、場合により、金属のような他の元素がドープされていてもよい。ある種の実施形態では、エアロゲル要素は、ポリマーエアロゲル、コロイド状エアロゲル、およびこれらの混合物から選択されるエアロゲルを含んでいてもよい。
【0035】
エアロゲル要素は、最初から望ましい粒径の粒子として作られてもよく、または、大きめの粒子として作っておき、次いで、望ましい粒径まで小さくすることによって作られてもよい。例えば、作成したエアロゲル材料を粉砕してもよく、または、ナノサイズからミクロンサイズのエアロゲル粒子として直接作成してもよい。
【0036】
いくつかの実施形態のエアロゲル粒子は、空隙率が約50%〜約99.9%であってもよく、この場合、エアロゲルは、99.9%の何も入っていない空間を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル粒子は、空隙率が、約50%〜約99.0%、または50%〜約98%である。いくつかの実施形態では、エアロゲル要素の孔は、直径が約2nm〜約500nm、または約10nm〜約400nm、または約20nm〜約100nmであってもよい。特定の実施形態では、エアロゲル要素は、直径が100nm未満である孔、さらに約20nm未満である孔を含み、空隙率が50%より大きくてもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル要素は、形状が球状、またはほぼ球状、円柱型、棒状、ビーズ状、立方体、平板状などの形態の粒子であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、エアロゲル要素は、平均体積粒径が約1μm〜約100μm、または約3μm〜約50μm、または約5μm〜20μmのエアロゲル粒子、粉末、または分散物を含む。エアロゲル要素は、ポリマー材料内に1個の粒子が分散した状態で存在するエアロゲル粒子、またはポリマー材料内に2個以上の粒子の凝集物または粒子群が分散した状態で存在するエアロゲル粒子を含んでいてもよい。
【0038】
一般的に、特定の実施形態で使用するエアロゲルの種類、空隙率、孔径、量は、得られる組成物の望ましい性質およびエアロゲルが組み込まれるポリマーおよび溶液の性質によって選択されてもよい。例えば、プレポリマー(例えば、処理粘度が比較的低い、例えば、10センチストークス未満の低分子量ポリウレタンモノマー)がある実施形態で使用するために選択される場合、空隙率が大きく(例えば、80%を超え)、比表面積が大きく(例えば、約500m/gmを超え)、孔径が比較的小さい(例えば、約100nm未満)エアロゲルを、中エネルギーから高エネルギーの混合技術を用いることによって、例えば、温度を制御した高剪断および/またはブレンドによって、比較的高濃度で(例えば、約2重量%〜約20重量%を超えて)プレポリマーに混合してもよい。親水型のエアロゲルを用いる場合、プレポリマーを架橋および硬化/後硬化し、ポリマーおよびエアロゲルフィラーの無限に長いマトリックスを作成したら、得られるコンポジットは、フィラーを含まない同様に調製したポリマーサンプルと比較すると、改良された疎水性を示し、硬度が大きくなるだろう。改良された疎水性は、液相処理中のポリマーとエアロゲルとの相互作用によって導かれ、それによって、ポリマーの分子鎖の一部分がエアロゲルの孔に入り込み、エアロゲルの孔以外の領域は、水分子が他の方法で入り込むか、水分子で占められるだろう分子間の空間の一部または全部を占めるように働くだろう。
【0039】
エアロゲル要素を特徴づける相互に接続した孔の連続したモノリス構造によって、高い表面積が導かれ、エアロゲルを製造するために用いられる材料によって、導電性は、熱的および電気的に非常に電気を通すものから、熱的および電気的に絶縁性のものまでさまざまであってもよい。さらに、エアロゲル要素は、いくつかの実施形態では、表面積が約400m/g〜約1200m/g、例えば、約500m/g〜約1200m/g、または約700m/g〜約900m/gであってもよい。いくつかの実施形態では、エアロゲル要素は、電気抵抗率が、約1.0×10−4Ω−cmよりも大きく、例えば、約0.01Ω−cm〜約1.0×1016Ω−cm、約1Ω−cm〜約1.0×10Ω−cm、または約50Ω−cm〜約750,000Ω−cmの範囲であってもよい。種々の実施形態で用いられる異なる種類のエアロゲルは、導電性(約0.01〜約1.00Ω−cm)から絶縁性(約1016Ω−cmを超える)までの電気抵抗率を有していてもよい。いくつかの実施形態の導電性エアロゲル(例えば、炭素エアロゲル)を、他の導電性フィラーと合わせ、他の方法では得ることが困難な物理的性質、機械的性質、電気的性質の組み合わせを得てもよい。
【0040】
適切に使用可能なエアロゲルは、いくつかの実施形態では、主に、無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲルの3種類のカテゴリーに分けられるだろう。いくつかの実施形態では、定着器部材層は、無機エアロゲル、有機エアロゲル、炭素エアロゲル、およびこれらの混合物から選択される1つ以上のエアロゲルを含んでいてもよい。例えば、いくつかの実施形態は、同じ種類の複数のエアロゲル、例えば、2種類以上の無機エアロゲルの組み合わせ、2種類以上の有機エアロゲルの組み合わせ、または2種類以上の炭素エアロゲルの組み合わせを含んでいてもよく、または異なる種類の複数のエアロゲル、例えば、1つ以上の無機エアロゲル、1つ以上の有機エアロゲル、および/または1つ以上の炭素エアロゲルを含んでいてもよい。例えば、化学修飾された疎水性シリカエアロゲルを、高導電性の炭素エアロゲルと合わせ、コンポジットの疎水性および電気的性質を同時に改変し、それぞれの性質について望ましい目標値を達成してもよい。
【0041】
無機エアロゲル、例えば、シリカエアロゲルは、一般的に、金属酸化物をゾル−ゲル重縮合し、高度に架橋した透明ヒドロゲルを作成することによって作られる。これらのヒドロゲルを超臨界乾燥させ、無機エアロゲルを作成する。
【0042】
有機エアロゲルは、一般的に、レゾルシノールとホルムアルデヒドとをゾル−ゲル重縮合させることによって作られる。これらのヒドロゲルを超臨界乾燥させ、有機エアロゲルを作成する。
【0043】
炭素エアロゲルは、一般的に、有機エアロゲルを不活性雰囲気下で熱分解することによって作られる。炭素エアロゲルは、3次元網目構造になるように整列した、共有結合したナノメートルサイズの粒子で構成される。炭素エアロゲルは、表面積が大きい炭素粉末とは異なり、酸素を含まない表面を有しており、ポリマーマトリックスとの適合性を高めるように化学修飾することができる。それに加えて、炭素エアロゲルは、一般的に、導電性であり、電気抵抗率が約0.005Ω−cm〜約1.00Ω−cmである。特定の実施形態では、コンポジットは、1つ以上の炭素エアロゲルを含んでいてもよく、および/または1つ以上の炭素エアロゲルと1つ以上の無機および/または有機エアロゲルのブレンドを含んでいてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態で含まれていてもよい炭素エアロゲルは、ポリマーおよびコロイドの2種類の形態を示し、別個の特性を有している。炭素エアロゲルの形態の種類は、エアロゲルの調製の詳細によって変わるが、両方とも分子クラスターの速度論的な凝集によって得られる。つまり、20Å(オングストローム)未満のナノポア、炭素エアロゲルの一次粒子であり、絡み合ったナノ結晶グラファイトリボン、二次粒子を形成するクラスター、または約20Å〜約500Åであってもよいメソポアで構成されている。これらのメソポアは、鎖を形成し、多孔性炭素エアロゲルマトリックスを構成していてもよい。炭素エアロゲルマトリックスは、いくつかの実施形態では、例えば、適切な溶融ブレンドまたは溶媒混合技術によって、ポリマーマトリックスに分散していてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、炭素エアロゲルを金属と合わせ、金属でコーティングし、または金属がドープされ、導電性、磁気感受性および/または分散性を高めてもよい。金属がドープされた炭素エアロゲルは、いくつかの実施形態では、単独で用いてもよく、他の炭素エアロゲルおよび/または無機または有機のエアロゲルとブレンドして用いてもよい。任意の適切な適切な金属、または金属の混合物、金属酸化物、アロイが、金属がドープされた炭素エアロゲルが用いられる実施形態で含まれていてもよい。特定的な実施形態および特定の実施形態では、炭素エアロゲルは、遷移金属(元素周期律表で特定されるような)およびアルミニウム、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、カドミウム、インジウム、スズ、水銀、タリウム、鉛から選択される1つ以上の金属がドープされていてもよい。特定の実施形態では、炭素エアロゲルは、銅、ニッケル、スズ、鉛、銀、金、亜鉛、鉄、クロム、マンガン、タングステン、アルミニウム、白金、パラジウムおよび/またはルテニウムがドープされていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、銅がドープされた炭素エアロゲル、ルテニウムがドープされた炭素エアロゲル、およびこれらの混合物がコンポジットに含まれていてもよい。
【0046】
例えば、すでに述べたように、エアロゲル要素がナノメートルサイズの粒子を含む実施形態では、これらの粒子またはその一部分は、ポリマーの分子格子構造の中にある分子間および分子内の空間を占有していてもよく、したがって、水分子が、これらの分子スケールの空間に入り込むのを防ぐことができる。このような遮断は、最終的なコンポジットの親水性を減らすだろう。それに加えて、多くのエアロゲルは疎水性である。疎水性エアロゲル要素を組み込むと、いくつかの実施形態のコンポジットの親水性も減るだろう。親水性が低下したコンポジット、およびこのようなコンポジットから作られた任意の成分は、環境安定性、特に、低湿度および高湿度が周期的に変化する条件下での安定性が優れている。
【0047】
エアロゲル粒子は、アルキルシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、アミノシラン、メタクリルシランからなる群から選択される表面官能基を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、表面処理材料は、エアロゲルに反応性の官能基を含み、改質された表面との相互作用が生じるだろう。また、表面処理によって、組成物表面との非粘着性相互作用を可能にするのに役立つ。
【0048】
それに加えて、多孔性エアロゲル粒子は、フッ素系プラスチックに浸透するか、またはフッ素系プラスチックと絡み合い、それによって、ポリマー格子が強化されるだろう。したがって、エアロゲル粒子がポリマー格子に浸透するか、またはポリマー格子間内に散在する実施形態の最終的なコンポジットの機械的性質は、高まるか、または安定化されるだろう。
【0049】
例えば、一実施形態では、エアロゲル要素は、平均粒径が5〜15μmであり、空隙率が90%以上であり、かさ密度が40〜100kg/mであり、表面積が600〜800m/gであるシリカシリケートであってもよい。もちろん、所望な場合、1つ以上の性質がこれらの範囲からはずれた材料を用いてもよい。
【0050】
エアロゲル要素の性質に依存して、エアロゲル要素をそのまま使用してもよく、または化学修飾してもよい。例えば、エアロゲル表面の化学物質を、種々の用途のために修飾してもよく、例えば、エアロゲル表面を、エアロゲルの分子構造の上または分子構造内にある化学置換基によって、親水性または疎水性の性質を有するように修飾してもよい。例えば、エアロゲル要素の疎水性を高めるように化学修飾することが望ましい場合がある。このような化学処理が望ましい場合、当該技術分野で十分知られている任意の従来からある化学処理を用いてもよい。例えば、エアロゲル粉末のこのような化学処理は、表面のヒドロキシル基を、有機基または部分的にフッ素化された有機基と置き換えることなどを含んでいてもよい。
【0051】
一般的に、広範囲のエアロゲル要素が当該技術分野で知られており、種々の用途に応用されている。例えば、多くのエアロゲル要素は、粉砕した疎水性エアロゲル粒子を含め、毛髪用組成物、スキンケア組成物、制汗用組成物のような配合物で低コスト添加剤として使用されてきた。ある特定の非限定的な例は、すでに化学処理されている市販の粉末である、粒径が5〜15μmのDow Corning VM−2270エアロゲル微粒子である。
【0052】
いくつかの実施形態では、表面コーティングは、少なくとも上述のエアロゲルのうち、少なくとも1つがフッ素系プラスチック成分に分散または結合したエアロゲルを含んでいてもよい。特定の実施形態では、エアロゲルは、フッ素系プラスチック成分に均一に分散および/または結合しているが、いくつかの実施形態では、特定の目標を達成するために、不均一な分散物または結合を利用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、エアロゲルは、表面層、基材層、単一層の異なる部分などでエアロゲルが高濃度になるように、フッ素系プラスチック成分に不均一に分散または結合していてもよい。
【0053】
望ましい結果を得るために、任意の適切な量のエアロゲルをフッ素系プラスチック成分に組み込んでもよい。例えば、コーティング層は、表面コーティングの合計重量の約0.1重量%〜約25重量%のエアロゲル、または約0.5重量%〜約15重量%のエアロゲル、または約1重量%〜約10重量%のエアロゲルから作られてもよい。エアロゲル粒子の粒径は、約1μm〜約100μm、または約3μm〜約50μm、または約5μm〜20μmである。
【0054】
表面コーティングは、表面自由エネルギーが、コンポジットで使用されるフッ素系プラスチックベース層の表面エネルギーよりも小さい。このことは、フッ素系プラスチックによるものである。いくつかの実施形態では、エアロゲル粒子が分散したフッ素系プラスチックは、表面層の表面エネルギーを20mN/m未満にする。いくつかの実施形態では、表面自由エネルギーは、高疎水性表面の場合、10mN/m未満、または10mN/m〜2mN/m、または10mN/m〜5mN/m、または10mN/m〜7mN/mである。
【0055】
TeflonおよびPFAのようなフッ素系プラスチックは、一般的に粉末から処理され、次いで、融点(350〜400℃)まで到達させ、粘着性のコーティングを作成する。エアロゲル粒子とフッ素系プラスチック粒子を合わせ、融点まで到達させ、エアロゲル粒子が埋め込まれた、定着したフッ素系樹脂マトリックスを製造する。図6は、PFA粉末とエアロゲル粉末を合わせ、コンポジットコーティングを作成する模式図を示す。エアロゲル/フッ素系プラスチックコンポジットコーティングを処理する可能な方法としては、粉末コーティング、溶媒分散物からのスプレーコーティング、スリーブコーティングが挙げられる。この層は、フッ素系プラスチックマトリックス全体に、0.1%〜25%の比率で分散したエアロゲルフィラー粒子が組み込まれている。いくつかの実施形態では、エアロゲルの量は、1%〜5%であった。
【0056】
フッ素系プラスチックとエアロゲルの組成物を任意の適切な既知の様式で基材にコーティングし、表面層を作成する。このような材料を基材層にコーティングする典型的な技術としては、フローコーティング、液体スプレーコーティング、浸漬コーティング、ワイヤ捲きロッドコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、静電吹き付け、音波による吹き付け、ブレードコーティング、成形、ラミネート加工などが挙げられる。
【実施例】
【0057】
シリカシリケートVM2270エアロゲル粉末をDow Corningから得た。この粉末は、空隙率が90%より大きく、かさ密度が40〜100kg/mであり、表面積が600〜800m/gである5〜15μmの粒子を含んでいた。粉末粒子についてSEM顕微鏡法を行なうと、個々の粒子の粒径が約10μmであり、粒子上に約20nmのナノ構造を含むことが確認される。
【0058】
DuPont製のMP320粉末PFA(粒径は15μmよりも大きい)およびVM2270シリカエアロゲル粉末を、合計固体保持量が20重量%になるように2−プロパノールに分散することによって、コーティング配合物を調製した。エアロゲルは、固体全体の0重量%〜5重量%の範囲で組み込まれた。繰り返し超音波処理することによって、この粉末を2−プロパノールに分散させた。次いで、分散物をPaasheエアブラシを用いてシリコーンゴム基材に噴霧した。このコーティングを350℃で15〜20分間熱処理することによって硬化させた。コンポジットPFA/エアロゲルコーティングの表面に形態を作成した。エアロゲル保持量が増えると、表面のテクスチャが増えていく傾向を観察することができた。
【0059】
表面エネルギーの測定は、エアロゲルを組み込むと、水、ホルムアミド、ジヨードメタンの接触角が大きくなる傾向を示している。図7に示されるように、表面エネルギーは、エアロゲル保持量が増加するのに対応して、PFAよりも十分に低い値まで低下していく。5%エアロゲルサンプルで得られた低い表面エネルギーは、表面が高度にテクスチャ加工された形態に起因して顕著に表面エネルギーが変わっていることを示唆している。エアロゲル粒子のナノ構造およびミクロ構造は、表面形態の階層状の特性の一因となる。
【0060】
機械的性質は、エアロゲル/PFAコンポジットの65〜100μmの厚いコーティングを機械的に試験することによって、室温で特性決定される。コンポジット粉末を、固体保持量が20重量%になるように2−プロパノールに分散し、Paasheエアブラシを用い、金属基材上に望ましい厚みになるようにスプレーコーティングした。350℃で20分間熱処理した後、試験のために自立性の厚い膜を金属基材から剥がした。
【0061】
機械的な試験は、Instron Model 3367を用い、ASTM D638(プラスチック類)の試験方法を用い、ASTMの小さなドッグボーン型に切断し、23℃で行った。結果から、2.5%のエアロゲルが組み込まれている場合には、以下の表1に示されるように、PFAと比較して、機械的性質はほとんど変化していないことが観察されている。

【0062】
【表1】

【0063】
フッ素系プラスチック/エアロゲルコンポジットコーティングが調製され、このコーティングは高疎水性を示し、表面エネルギーは8.5mN/mであった。コンポジットコーティングは、種々の処理技術で、シリコーン、金属または他のプラスチックを含む、非粘着性表面であることが必要な種々の表面で調製されてもよい。コンポジットの表面エネルギーは、エアロゲル粒子の組み込み量が増えるにつれて低下する。表面エネルギーが低いエアロゲルおよびPFA材料を組み合わせ、ナノサイズからマイクロサイズの形態の表面テクスチャ加工を合わせると、非粘着性の用途で有用な高疎水性表面コーティングが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゲル粒子が分散したフッ素系プラスチックを含み、表面エネルギーが約20mN/m以下である、表面コーティング。
【請求項2】
前記エアロゲル粒子が、前記表面コーティングの約0.1重量%〜約25重量%含まれる、請求項1に記載の表面コーティング。
【請求項3】
前記フッ素系プラスチックが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VF2)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のテトラポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の表面コーティング。
【請求項4】
前記エアロゲル粒子が、シリカ、炭素、アルミナ、チタニア、ジルコニアからなる群から選択される材料を含む、請求項1に記載の表面コーティング。
【請求項5】
前記エアロゲル粒子は、表面積が約400m/g〜約1200m/gである、請求項1に記載の表面コーティング。
【請求項6】
前記エアロゲル粒子は、粒径が約1μm〜約100μmである、請求項1に記載の表面コーティング。
【請求項7】
前記エアロゲル粒子が、アルキルシラン、アルキルクロロシラン、アルキルシロキサン、ポリジメチルシロキサン、アミノシラン、メタクリルシランからなる群から選択される表面官能基を含む、請求項1に記載の表面コーティング。
【請求項8】
基材と、
前記基材の上に配置されている機能性層と、
中間層の上に配置されている外側層とを備え、前記外側層は、エアロゲル粒子が分散したフッ素系プラスチックマトリックスを含み、前記外側層の表面エネルギーが約20mN/m未満である、定着器部材。
【請求項9】
前記フッ素系プラスチックが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)のコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)のコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VF2)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のテトラポリマーからなる群から選択される、請求項8に記載の定着器部材。
【請求項10】
基材と、
前記基材の上に配置されている外側層とを備え、前記外側層は、エアロゲル粒子が分散したフッ素系プラスチックマトリックスを含み、前記エアロゲル粒子は、約1重量%〜約5重量%含まれ、前記外側層の表面エネルギーが約10mN/m未満である、定着器部材。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−197430(P2012−197430A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−42543(P2012−42543)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】