説明

表面コーティングされたシール材

本発明は、表面コーティングされたシール材に関し、ゴム基材の持つ強度、硬度、シール性を保ちつつ、耐薬品性、耐プラズマ性、非粘着性を高めたシール材を提供する。ショアD硬度が75以下かつショアA硬度が40〜100である軟質材料からなる基材の表面全体または一部に、金属、金属酸化物、金属チッ化物、金属炭化物およびその複合物からなる群より選ばれる1種以上の金属または金属化合物からなるコーティング膜を有するシール材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面コーティングされたシール材に関し、軟質基材の持つ強度、硬度、シール性を保ちつつ、耐薬品性、耐プラズマ性、非粘着性を高めたシール材に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質材料は、自動車工業、半導体工業、化学工業などの分野において、シール材として一般的に使用されている。しかし、これらのシール材は、各種装置に密接に接触させて使用するため、長期間の使用により、シール材が装着された装置等に固着し、シール材の脱着を困難にしたり、動的な箇所においては、装置の動作に悪影響を及ぼす等の問題がある。このようなシール材の固着を防ぐために、シール材の表面に非粘着性を付与することが要求される。非粘着性を付与する方法としては、固体潤滑剤などのフィラーを添加する方法があるが、成形品のスキン層を取り除かなければ、効果が出ないため用途が限定されることや、軟質材料の強度、硬度、シール性といった特性に与える影響も大きい。
【0003】
また、半導体製造工程においては、絶縁膜や金属配線薄膜形成工程に使用されるCVD装置中の、種々の連結部分や可動部分に封止のためにシール材が使用されている。これらのシール材には、シール性、非固着性だけではなく、プロセスの微細化や基板ウェハーの大型化により、高密度(1012〜1013/cm3)のプラズマ処理条件に耐えられること、および極めて精密な加工が要求される半導体を汚染しないことが要求される。このような要求に対応できるシール材としては、主に架橋性の含フッ素エラストマーおよびシリコーン系エラストマーが採用されており、さらに、これらのエラストマーに耐プラズマ性を付与する方法として、プラズマ遮蔽効果のあるフィラーをエラストマーに充填する方法が一般的に知られている(例えば、国際公開第03/051999号パンフレット参照)。
【0004】
しかし、これらのフィラーが充填されたエラストマー材料においても、プラズマに暴露されることにより、徐々にエラストマーが劣化し、充填されていた耐プラズマ性を付与するフィラーが脱落してしまう。該フィラーが脱落することでパーティクルの発生につながる他、エラストマー材料の耐プラズマ性が低下するため、長期的にみれば、充分なものではない。また、耐(酸素)プラズマ性および固着性の改良の目的で、架橋可能な含フッ素エラストマーを含む組成物からなる基材の表面の少なくとも一部に、ダイヤモンドライクカーボンを設けてなるシール材が開示されており(例えば、特開2003−165970号公報参照)、さらに、固着性の改良、すべり性付与の目的でゴム基材の表面にダイヤモンドライクカーボンを設けてなるシール材(例えば、特開2002−47479号公報、特開2002−47480号公報または特開2002−48240号公報参照)が開示されている。しかし、これらの方法では、耐プラズマ性、特に酸素系のプラズマに対する耐性が低い。
【0005】
従って、ゴム基材の持つ強度、硬度、シール性を保ちつつ、表面が非粘着性であり、かつ耐薬品性、耐プラズマ性を有するシール材はいまだ知られていない。
【0006】
本発明は、表面コーティングされたシール材に関し、軟質基材の持つ強度、硬度、シール性を保ちつつ、非粘着性、耐薬品性、耐プラズマ性を高めたシール材を提供する。
【発明の開示】
【0007】
すなわち本発明は、ショアD硬度が75以下であり、かつショアA硬度が40〜100である軟質材料からなる基材の表面全体または一部に、金属、金属酸化物、金属チッ化物、金属炭化物およびそれらの複合物からなる群より選ばれる1種以上の金属または金属化合物からなるコーティング膜を有するシール材に関する。
【0008】
軟質材料が、エラストマーであることが好ましい。
【0009】
軟質材料が、フッ素系高分子材料であることが好ましい。
【0010】
軟質材料が、フッ素ゴムであることが好ましい。
【0011】
コーティング膜の膜厚が、0.005〜1μmであることが好ましい。
【0012】
JIS K5600の碁盤目テープ試験(1mm角/100目)にて測定される軟質材料とコーティング膜との剥離数が50/100以下となる密着度で、軟質材料とコーティング膜が密着していることが好ましい。
【0013】
下記条件でのマイクロスクラッチ試験にて測定される臨界破壊荷重が25mN以上となる密着度で、軟質材料とコーティング膜が密着していることが好ましい。
【0014】

試験条件:
ダイヤモンド圧力子曲率半径・・・・・・5.0μm
弾性アーム・・・・・・146.64g/mm
ステージ角度・・・・・・3.0度
測定速度・・・・・・10.0μm/s
荷重印加速度・・・・・・75.31mN/mm
励振幅・・・・・・79μm
励振周波数・・・・・・30Hz
【0015】
下記条件でO2、CF4、NF3のそれぞれのプラズマを照射した時の重量減少率が、全て1重量%以下であることが好ましい。
【0016】

サンプル:厚さ2mm、10mm×35mmのシート
照射条件:
2、CF4プラズマ ガス流量・・・・・・16SCCM
圧力・・・・・・20mTorr
出力・・・・・・800W
照射時間・・・・・・30分
NF3プラズマ NF3/Ar・・・・・・1SLM/1SLM
圧力・・・・・・3Torr
照射時間・・・・・・2時間
温度・・・・・・150℃
【0017】
コーティング膜が、真空成膜法により成膜されることが好ましい。
【0018】
真空成膜法が、イオンプレーティング法であることが好ましい。
【0019】
前記シール材を、液晶・半導体製造装置に用いることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、前記シール材を有する液晶・半導体製造装置に関する。
【0021】
さらに、本発明は、ショアD硬度が75以下であり、かつショアA硬度が40〜100である軟質材料からなる基材の表面全体または一部を、イオンプレーティング法により、金属、金属酸化物、金属チッ化物、金属炭化物およびそれらの複合物からなる群より選ばれる1種以上の金属または金属化合物でコーティングする工程を有するシール材の製造方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、ショアD硬度が75以下であり、かつショアA硬度が40〜100である軟質材料からなる基材の表面全体または一部に、金属、金属酸化物、金属チッ化物、金属炭化物およびその複合物からなる群より選ばれる1種以上の金属または金属化合物からなるコーティング膜を有するシール材に関する。
【0023】
本発明で使用される軟質材料は、ショアD硬度が75以下であり、かつショアA硬度が40〜100である。ショアD硬度は、65以下であることが好ましく、ショアA硬度は、50〜100であることが好ましい。ショアD硬度が、75を超えると、軟質材料とは言い難く、硬すぎてシール材としては不適であり、ショアA硬度が40未満であると、柔らかすぎて、適正なシール力が得られにくい傾向がある。軟質材料としては、ショアD硬度が75以下であり、かつショアA硬度が40〜100のものであれば、特に限定はされないが、たとえば、フッ素樹脂やフッ素ゴムなどのフッ素系高分子材料、フロロシリコンゴム、シリコンゴム、NBR、EPDMなどがあげられ、これらの中でも、フッ素系高分子材料が好ましく、フッ素ゴムがより好ましい。
【0024】
フッ素ゴムとしては、従来からシール材用、とくに半導体製造装置のシール材に用いられているものであれば、とくに制限はなく、例えば、フッ素ゴム(a)、熱可塑性フッ素ゴム(b)、およびこれらのフッ素ゴムからなるゴム組成物などがあげられる。
【0025】
フッ素ゴム(a)としては、非パーフルオロフッ素ゴム(a−1)およびパーフルオロフッ素ゴム(a−2)があげられる。
【0026】
熱可塑性フッ素ゴム(b)としては、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントからなり、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントおよび非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのそれぞれの構成単位の90モル%以上がパーハロオレフィンである含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−1)、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントからなり、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの構成単位の90モル%以上がパーハロオレフィンであり、かつ非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントが構成単位として90モル%未満のパーハロオレフィンを含む含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−2)、およびエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントからなり、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントが構成単位として90モル%未満のパーハロオレフィンを含み、かつ非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの構成単位の90モル%以上がパーハロオレフィンであるかまたは構成単位として90モル%未満のパーハロオレフィンを含む含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−3)があげられる。
【0027】
非パーフルオロフッ素ゴム(a−1)としては、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、またはフルオロホスファゼン系フッ素ゴムなどがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または本発明の効果を損なわない範囲で任意に組合わせて用いることができる。
【0028】
ビニリデンフルオライド系フッ素ゴムとは、ビニリデンフルオライド45〜85モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体55〜15モル%とからなる含フッ素エラストマー性共重合体をいう。好ましくは、ビニリデンフルオライド50〜80モル%と、ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体50〜20モル%とからなる含フッ素共重合体をいう。
【0029】
ビニリデンフルオライドと共重合可能な少なくとも1種の他の単量体としては、たとえばテトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体があげられる。これらをそれぞれ単独で、または、任意に組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)が好ましい。
【0030】
具体的なゴムとしては、VdF−HFP系ゴム、VdF−HFP−TFE系ゴム、VdF−CTFE系ゴム、VdF−CTFE−TFE系ゴムなどがある。
【0031】
テトラフルオロエチレン/プロピレン系フッ素ゴムとは、テトラフルオロエチレン45〜70モル%、プロピレン55〜30モル%からなり、さらにテトラフルオロエチレンとプロピレンの合計量に対して、架橋部位を与える単量体0〜5モル%含有する含フッ素共重合体をいう。
【0032】
架橋部位を与える単量体としては、たとえば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのヨウ素含有単量体、特開平4−505341号公報に記載されている臭素含有単量体、特開平4−505345号公報、特開平5−500070号公報に記載されているようなシアノ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、アルコキシカルボニル基含有単量体などがあげられる。
【0033】
これらの非パーフルオロフッ素ゴム(a−1)は、常法により製造することができる。
【0034】
パーフルオロフッ素ゴム(a−2)としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/架橋部位を与える単量体からなるものなどがあげられる。テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の組成は、50〜90/10〜50モル%であることが好ましく、より好ましくは、50〜80/20〜50モル%であり、さらに好ましくは、55〜70/30〜45モル%である。また、架橋部位を与える単量体は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の合計量に対して、0〜5モル%であることが好ましく、0〜2モル%であることがより好ましい。
【0035】
この場合のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、たとえばパーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
【0036】
架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式(1):
CX12=CX1−Rf1CHR12 (1)
(式中、X1は、水素原子、フッ素原子または−CH3、R1fは、フルオロアルキレン基、パーフルオロアルキレン基、フルオロポリオキシアルキレン基またはパーフルオロポリオキシアルキレン基、R1は、水素原子または−CH3、X2は、ヨウ素原子または臭素原子)で表されるヨウ素または臭素含有単量体、一般式(2):
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2n−X3 (2)
(式中、mは、0〜5の整数、nは、1〜3の整数、X3は、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、臭素原子)で表される単量体などがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組合わせて用いることができる。
【0037】
このヨウ素原子、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、臭素原子が、架橋点として機能することができる。
【0038】
パーフルオロフッ素ゴム(a−2)は、常法により製造することができる。
【0039】
かかるパーフルオロフッ素ゴム(a−2)の具体例としては、国際公開第97/24381号パンフレット、特公昭61−57324号公報、特公平4−81608号公報、特公平5−13961号公報などに記載されているフッ素ゴムなどがあげられる。
【0040】
つぎに、熱可塑性フッ素ゴム(b)である、含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−1)について説明する。
【0041】
まず、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントについて説明する。エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントは、重合体に柔軟性を付与し、ガラス転移点が25℃以下、好ましくは0℃以下である。その構成単位の90モル%以上を構成するパーハロオレフィンとしては、たとえば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、一般式(3):
CF2=CFO(CF2CFYO)p−(CF2CF2CF2O)q−Rf2 (3)
(式中、Yは、FまたはCF3、Rf2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、pは、0〜5の整数、qは、0〜5の整数)で表されるパーフルオロビニルエーテルなどがあげられる。
【0042】
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントを構成するパーハロオレフィン以外の構成単位としては、たとえばビニリデンフルオライド、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、フッ化ビニルなどの含フッ素単量体、エチレン、プロピレン、アルキルビニルエーテルなどの非フッ素単量体などであればよい。
【0043】
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの好ましい例としては、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/架橋部位を与える単量体からなるエラストマー性ポリマー鎖があげられる。テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の組成は、50〜85/50〜15モル%であり、架橋部位を与える単量体が、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)の合計量に対して、0〜5モル%であることが好ましい。
【0044】
架橋部位を与える単量体としては、たとえば、一般式(1)、一般式(2)で表されるような単量体などがあげられる。
【0045】
つぎに、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントについて説明する。非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの構成単位の90モル%以上を構成するパーハロオレフィンとしては、たとえばテトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、一般式(4):
CF2=CF(CF2r4 (4)
(式中、rは、1〜10の整数、X4は、フッ素原子または塩素原子)で表される化合物、パーフルオロ−2−ブテンなどのパーハロオレフィンなどがあげられる。
【0046】
非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントを構成するパーハロオレフィン以外の構成単位としては、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントを構成するパーハロオレフィン以外の構成単位と同様のものがあげられる。
【0047】
非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの好ましい例としては、テトラフルオロエチレン85〜100モル%、および一般式(5):
CF2=CF−Rf3 (5)
(式中、Rf3は、Rf4または−ORf4であり、Rf4は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表される化合物0〜15モル%からなる非エラストマー性ポリマー鎖があげられる。
【0048】
つぎに、含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−2)について説明する。
【0049】
この場合のエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントは、前記含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−1)について説明したものと同じでよい。
【0050】
非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの構成単位としては、ビニリデンフルオライド、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、一般式(6):
CH2=CX5−(CF2s−X5 (6)
(式中、X5は、水素原子またはフッ素原子、sは、1〜10の整数)で表される化合物、CH2=C(CF32などの部分フッ素化オレフィンなどがあげられる。
【0051】
また、これらの単量体と共重合可能なエチレン、プロピレン、塩化ビニル、ビニルエーテル、カルボン酸ビニルエステル、アクリル酸などの単量体も共重合成分として用いることができる。
【0052】
つぎに、含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−3)について説明する。
【0053】
含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−3)におけるエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントはガラス転移点が25℃以下、好ましくは0℃以下のポリマー鎖である。
【0054】
また、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントは、構成単位として90モル%未満のパーハロオレフィンを含む。この場合のパーハロオレフィン以外の構成単位としては、前記含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−1)のパーハロオレフィン以外の構成単位と同じものがあげられる。
【0055】
含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−3)における非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントは、前述した含フッ素多元セグメント化ポリマー(b−1)または(b−2)における非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと同じでよい。
【0056】
熱可塑性フッ素ゴム(b)は、1分子中にエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントと非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントがブロックやグラフトの形態で結合した含フッ素多元セグメント化ポリマーであることが重要である。
【0057】
そこで、熱可塑性フッ素ゴム(b)の製造方法としては、公知の種々の方法が採用できるが、なかでも特公昭58−4728号公報などに示されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法や、特開昭62−34324号公報に示されたグラフト型の含フッ素多元セグメント化ポリマーの製法などが好ましく採用できる。
【0058】
とりわけ、セグメント化率(ブロック化率)も高く、均質で規則的なセグメント化ポリマーが得られることから、特公昭58−4728号公報、高分子論文集(Vol.49、No.10、1992)記載のいわゆるヨウ素移動重合法で合成されたブロック型の含フッ素多元セグメント化ポリマーが好ましい。
【0059】
エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントは、フッ素ゴムの製造法として公知のヨウ素移動重合法で製造できる。たとえば、実質的に無酸素下で、水媒体中で、ヨウ素化合物、好ましくはジヨウ素化合物の存在下に、前記パーハロオレフィンと、要すれば硬化部位を与える単量体を加圧下で撹拌しながらラジカル開始剤の存在下、乳化重合を行なう方法があげられる。使用するジヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカンおよび1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタンがあげられる。これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合せて使用することもできる。なかでも、1,4−ジヨードパーフルオロブタンが好ましい。ジヨウ素化合物の添加量は、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメント全重量に対して、0.01〜1重量%であることが好ましい。
【0060】
このようにして得られるエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの末端部分はパーハロ型となっており、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのブロック共重合の開始点となるヨウ素原子を有している。
【0061】
本発明におけるエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの製造で使用するラジカル重合開始剤は、従来からフッ素系エラストマーの重合に使用されているものと同じものでよい。これらの開始剤には有機および無機の過酸化物ならびにアゾ化合物がある。典型的な開始剤として過硫酸塩類、過酸化カーボネート類、過酸化エステル類などがあり、好ましい開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)があげられる。APSは単独で使用してもよく、またサルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤と組み合わせて使用することもできる。
【0062】
こうして得られるエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの数平均分子量は、得られる含フッ素多元セグメント化ポリマー全体へ柔軟性の付与、弾性の付与、機械的物性の付与の点から、5,000〜750,000であることが好ましく、20,000〜400,000であることがより好ましい。
【0063】
ついで、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントのエラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントへのブロック共重合は、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの乳化重合に引き続き、単量体を非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメント用に変えることにより行なうことができる。
【0064】
得られる非エラストマー性セグメントの数平均分子量は、1,000〜1,200,000が好ましく、より好ましくは3,000〜600,000である。
【0065】
こうして得られる熱可塑性フッ素ゴム(b)は、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの両側に非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントが結合したポリマー分子、エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの片側に非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントが結合したポリマー分子を主体とするものである。
【0066】
また、得られる熱可塑性フッ素ゴム(b)(含フッ素多元セグメント化ポリマー)の耐熱性という点から、非エラストマー性含フッ素ポリマー鎖セグメントの結晶融点は、150℃以上であることが好ましく、200〜360℃であることがより好ましい。
【0067】
本発明においては、前述のようなフッ素ゴム(a)と熱可塑性フッ素ゴム(b)とからなる組成物を用いることもできる。
【0068】
本発明に使用される架橋剤としては、採用する架橋系によって適宜選定すればよい。架橋系としてはポリアミン架橋系、ポリオール架橋系、パーオキサイド架橋系、イミダゾール架橋系のいずれも採用できる。また、トリアジン架橋系、オキサゾール架橋系、チアゾール架橋系なども採用できる。
【0069】
架橋剤としては、ポリオール架橋系では、たとえば、ビスフェノールAF、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ジアミノビスフェノールAFなどのポリヒドロキシ化合物が、パーオキサイド架橋系では、たとえば、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物が、ポリアミン架橋系では、たとえばヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N′−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンなどのポリアミン化合物があげられる。
【0070】
トリアジン架橋に用いる架橋剤としては、テトラフェニルスズ、トリフェニルスズなどの有機スズ化合物があげられる。
【0071】
オキサゾール架橋系、イミダゾール架橋系、チアゾール架橋系に使用する架橋剤としては、たとえば一般式(7):
【0072】
【化1】

【0073】
(式中、R2は−SO2−、−O−、−CO−、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基または単結合手であり、R3およびR4は一方が−NH2であり他方が−NHR5、−NH2、−OHまたは−SHであり、R5は水素原子、フッ素原子または一価の有機基であり、好ましくはR3が−NH2でありR4が−NHR5である)で示されるビスジアミノフェニル系架橋剤、ビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤、一般式(8):
【0074】
【化2】

【0075】
で示されるビスアミドラゾン系架橋剤、一般式(9)または(10):
【0076】
【化3】

【0077】
(式中、Rf5は炭素数1〜10のパーフルオロアルキレン基)、
【0078】
【化4】

【0079】
(式中、nは1〜10の整数)
で示されるビスアミドキシム系架橋剤などがあげられる。これらのビスアミノフェノール系架橋剤、ビスアミノチオフェノール系架橋剤またはビスジアミノフェニル系架橋剤などは、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基と反応し、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を形成し、架橋物を与える。
【0080】
とくに好ましい架橋剤としては、複数個の3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル基、または3−アミノ−4−メルカプトフェニル基を有する化合物、もしくは一般式(11):
【0081】
【化5】

【0082】
(式中、R2、R3、R4は前記と同じ)で示される化合物があげられ、具体的には、たとえば2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(一般名:ビス(アミノフェノール)AF)、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、テトラアミノベンゼン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)メタン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)エーテル、2,2−ビス(3,4−ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−(N−フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[3−アミノ−4−(N−ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンなどである。
【0083】
架橋剤の添加量は、エラストマー100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤が、0.01重量部より少ないと、架橋度が不足するため、含フッ素成形品の性能が損なわれる傾向があり、10重量部をこえると、架橋密度が高くなりすぎるため架橋時間が長くなる傾向があることに加え、経済的にも好ましくない。
【0084】
ポリオール架橋系の架橋助剤としては、各種の4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、環状アミン、1官能性アミン化合物など、通常エラストマーの架橋に使用される有機塩基が使用できる。具体例としては、たとえば、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩;ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロリド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロリド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリドなどの4級ホスホニウム塩;ベンジルメチルアミン、ベンジルエタノールアミンなどの一官能性アミン;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデク−7−エンなどの環状アミンなどがあげられる。
【0085】
パーオキサイド架橋系の架橋助剤としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリス(ジアリルアミン−s−トリアジン)、トリアリルホスファイト、N,N−ジアリルアクリルアミド、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルテトラフタラミド、N,N,N′,N′−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレートなどがあげられる。これらの中でも、架橋性、架橋物の物性の点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0086】
架橋助剤の添加量は、エラストマー100重量部に対して、0.01〜10重量部であり、好ましくは0.1〜5重量部である。架橋助剤が、0.01重量部より少ないと、架橋時間が実用に耐えないほど長くなる傾向があり、10重量部をこえると、架橋時間が速くなり過ぎることに加え、成形品の圧縮永久歪も低下する傾向がある。
【0087】
さらに、強度、硬度、シール性の点から、カーボンブラック、金属酸化物などの無機フィラー、エンジニアリング樹脂粉末などの有機フィラーなどの充填材を添加することが好ましい。具体的には、金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどがあげられ、有機フィラーとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなどのイミド構造を有するイミド系フィラー;ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオキシベンゾエートなどをあげることができるが、これらの中でも、耐熱性、耐プラズマ性の点から、酸化アルミニウム、ポリイミドを添加することが好ましい。
【0088】
これらの充填材の添加量は、架橋性エラストマー100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましく、5〜20重量部であることがより好ましい。充填材の添加量が、1重量部未満であると、ほとんど充填材としての効果が期待できない傾向があり、50重量部をこえると、非常に高硬度となり、シール材として適さない傾向にある。
【0089】
また、加工助剤、顔料、水酸化カルシウムのような金属水酸化物などを本発明の目的を損なわない限り使用してもよい。
【0090】
本発明のシール材は、ショアD硬度が75以下であり、かつショアA硬度が40〜100である軟質材料からなる基材の表面全体または一部を金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、およびそれらの複合物からなる群より選ばれる1つ以上の金属または金属化合物でコーティングすることにより得られる。
【0091】
金属としては、アルミニウム、シリコン、チタン、イットリウムなどがあげられ、それぞれの酸化物、窒化物、炭化物があげられる。これらの中でも、材料価格、取り扱い性、耐プラズマ性の点から、アルミニウム、アルミナが好ましい。
【0092】
金属または金属化合物からなるコーティング膜の厚さは、0.005〜1μmであることが好ましく、0.005〜0.5μmであることがより好ましい。コーティング膜の厚さが、0.005μm未満であると、非固着性、耐プラズマ性といった特性が充分でない傾向があり、1μmをこえると、シール材の変形に追従できないため、表面に耐プラズマ性を悪化させるような亀裂を生じる傾向がある。
【0093】
金属または金属化合物からなるコーティング膜の成膜方法としては、真空成膜法が使用される。真空成膜法としては、イオンプレーティング法、スパッタ法、CVD法、蒸着法などがあげられるが、これらの中でも、コーティング膜の密着性の点、低温での加工が可能である点、コーティング用の蒸発材料の入手が容易な点、窒化物・炭化物の加工も可能であるといった点から、イオンプレーティング法が好ましく、その中でも、ホロカソードプラズマガンを使用するイオンプレーティング法がより好ましい。
【0094】
イオンプレーティング法による成膜条件としては、軟質基材の種類、膜種、および目的の膜厚により適宜設定すればよいが、成膜速度としては、0.1〜5nm/秒が好ましく、0.3〜2nm/秒がより好ましい。成膜速度が、0.1nm/秒未満であると、目的の膜厚を得るのに多大な時間を要する傾向にあり、5nm/秒をこえると、コーティング面が荒れやすく、膜厚の制御が困難となる傾向にある。
【0095】
また、コーティングする前に、基材表面をプラズマアッシングなどにより表面処理することが、コーティング層の密着性を高める上で好ましい。
【0096】
さらに、金属または金属化合物からなるコーティング膜を複数層にすることもできる。例えば、第一層として、アルミニウム、第二層として、金の2層からなるコーティング膜などをあげることができる。このように複数層にすることで、直接、軟質基材に密着させることが困難であった金属または金属化合物によるコーティングや非常に高価であるコーティング材料の使用量を最小限におさえることができる。
【0097】
本発明のシール材の軟質材料と金属または金属化合物からなるコーティング膜は、JIS K5600の碁盤目テープ試験(1mm角/100目)にて測定される軟質材料とコーティング膜との剥離数が50/100以下となる密着度で密着していることが好ましく、5/100以下であることがより好ましい。剥離数が、50/100をこえると、軽い摩擦によってもコーティング膜が剥離する傾向がある。また、碁盤目テープ試験に用いられるテストピースは、シール材に使用される軟質材料およびコーティング膜からなるシート(厚さ2mm、15mm×15mm)に所望の厚さのコーティング膜を施したものである。
【0098】
また、本発明のシール材の軟質材料と金属または金属化合物からなるコーティング膜は、下記条件でのマイクロスクラッチ試験にて測定される臨界破壊荷重が25mN以上である密着度で、軟質材料とコーティング膜が密着していることが好ましく、より好ましくは30mN以上であり、さらに好ましくは40mN以上である。臨界破壊荷重が、25mN未満であると、軽い摩擦や基材の変形によってコーティング膜が剥離する傾向がある。
【0099】

試験装置:超薄膜スクラッチ試験機 MODEL CSR−02((株)レスカ製)
試験条件:
ダイヤモンド圧子針曲率半径・・・・・・5.0μm
弾性アーム・・・・・・146.64g/mm
ステージ角度・・・・・・3.0度
測定速度・・・・・・10.0μm/s
荷重印加速度・・・・・・75.31mN/mm
励振幅・・・・・・79μm
励振周波数・・・・・・30Hz
【0100】
ここで、マイクロスクラッチ試験とは、基板上に形成された、厚さが1μm以下の金属、金属酸化物または金属窒化物の平坦な薄膜の付着性を評価する試験方法であり、膜の剥離を、摩擦係数の変化などから検知し、その時の圧子針にかかる荷重を臨界破壊荷重とする。この数値が大きいほど、密着性が大きいことがわかるものである。
【0101】
マイクロスクラッチ試験では、軟質材料とコーティング膜の密着性を測定することができ、コーティング膜が1μm以下では、ゴム硬度に影響されずに密着性を評価することができる。さらに、微小な領域での測定も可能であるため、測定用のテストピースを作製する必要性がなく、本発明のシール材をそのまま測定に用いることができる。
【0102】
本発明のシール材は、下記条件下で、O2、CF4、NF3プラズマをそれぞれ照射した時の重量減少率が、全て1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。重量減少率が、1重量%を超えると、コーティング膜によるプラズマの遮蔽効果がほとんど無い傾向がある。
【0103】

サンプル:厚さ2mm、10mm×35mmのシート
照射条件:
2、CF4プラズマ ガス流量・・・・・・16SCCM
圧力・・・・・・20mTorr
出力・・・・・・800W
照射時間・・・・・・30分
NF3プラズマ NF3/Ar・・・・・・1SLM/1SLM
圧力・・・・・・3Torr
照射時間・・・・・・2時間
温度・・・・・・150℃
【0104】
本発明の、軟質基材の持つ強度、硬度、シール性を保ちつつ、非粘着性、耐薬品性、耐プラズマ性を有するシール材は、液晶・半導体製造装置に好適に用いることができる。
【0105】
また、本発明のシール材は、以下に示す分野で好適に用いることができる。
【0106】
半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル、フィールドエミッションディスプレイパネル、太陽電池基板等の半導体関連分野では、O(角)リング、パッキン、シール材、チューブ、ロール、コーティング、ライニング、ガスケット、ダイアフラム、ホース等があげられ、これらはCVD装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、排気装置、薬液配管、ガス配管に用いることができる。具体的には、ゲートバルブのOリング、シール材として、クォーツウィンドウのOリング、シール材として、チャンバーのOリング、シール材として、ゲートのOリング、シール材として、ベルジャーのOリング、シール材として、カップリングのOリング、シール材として、ポンプのOリング、シール材、ダイアフラムとして、半導体用ガス制御装置のOリング、シール材として、レジスト現像液、剥離液用のOリング、シール材として、ウェハー洗浄液用のホース、チューブとして、ウェハー搬送用のロールとして、レジスト現像液槽、剥離液槽のライニング、コーティングとして、ウェハー洗浄液槽のライニング、コーティングとしてまたはウェットエッチング槽のライニング、コーティングとして用いることができる。さらに、封止材・シーリング剤、光ファイバーの石英の被覆材、絶縁、防振、防水、防湿を目的とした電子部品、回路基盤のポッティング、コーティング、接着シール、磁気記憶装置用ガスケット、エポキシ等の封止材料の変性材、クリーンルーム・クリーン設備用シーラント等として用いられる。
【0107】
自動車分野では、ガスケット、シャフトシール、バルブステムシール、シール材およびホースはエンジンならびに周辺装置に用いることができ、ホースおよびシール材はAT装置に用いることができ、O(角)リング、チューブ、パッキン、バルブ芯材、ホース、シール材およびダイアフラムは燃料系統ならびに周辺装置に用いることができる。具体的には、エンジンヘッドガスケット、メタルガスケット、オイルパンガスケット、クランクシャフトシール、カムシャフトシール、バルブステムシール、マニホールドパッキン、オイルホース、酸素センサー用シール、ATFホース、インジェクターOリング、インジェクターパッキン、燃料ポンプOリング、ダイアフラム、燃料ホース、クランクシャフトシール、ギアボックスシール、パワーピストンパッキン、シリンダーライナーのシール、バルブステムのシール、自動変速機のフロントポンプシール、リアーアクスルピニオンシール、ユニバーサルジョイントのガスケット、スピードメーターのピニオンシール、フートブレーキのピストンカップ、トルク伝達のO−リング、オイルシール、排ガス再燃焼装置のシール、ベアリングシール、EGRチューブ、ツインキャブチューブ、キャブレターのセンサー用ダイアフラム、防振ゴム(エンジンマウント、排気部等)、再燃焼装置用ホース、酸素センサーブッシュ等として用いることができる。
【0108】
航空機分野、ロケット分野および船舶分野では、ダイアフラム、O(角)リング、バルブ、チューブ、パッキン、ホース、シール材等があげられ、これらは燃料系統に用いることができる。具体的には、航空機分野では、ジェットエンジンバルブステムシール、燃料供給用ホース、ガスケットおよびO−リング、ローテーティングシャフトシール、油圧機器のガスケット、防火壁シール等に用いられ、船舶分野では、スクリューのプロペラシャフト船尾シール、ディーゼルエンジンの吸排気用バルブステムシール、バタフライバルブのバルブシール、バタフライ弁の軸シール等に用いられる。
【0109】
プラント等の化学品分野では、ライニング、バルブ、パッキン、ロール、ホース、ダイアフラム、O(角)リング、チューブ、シール材、耐薬品用コーティング等があげられ、これらは医薬、農薬、塗料、樹脂等化学品製造工程に用いることができる。具体的には、化学薬品用ポンプ、流動計、配管のシール、熱交換器のシール、硫酸製造装置のガラス冷却器パッキング、農薬散布機、農薬移送ポンプのシール、ガス配管のシール、メッキ液用シール、高温真空乾燥機のパッキン、製紙用ベルトのコロシール、燃料電池のシール、風洞のジョイントシール、耐トリクレン用ロール(繊維染色用)、耐酸ホース(濃硫酸用)、ガスクロマトグラフィー、pHメーターのチューブ結合部のパッキン、塩素ガス移送ホース、ベンゼン、トルエン貯槽の雨水ドレンホース、分析機器、理化学機器のシール、チューブ、ダイアフラム、弁部品等として用いることができる。
【0110】
医薬品等の薬品分野では、薬栓等として用いることができる。
【0111】
現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野および塗装設備等の塗装分野では、ロール等があげられ、それぞれフィルム現像機・X線フィルム現像機、印刷ロールおよび塗装ロールに用いることができる。具体的には、フィルム現像機・X線フィルム現像機の現像ロールとして、印刷ロールのグラビアロール、ガイドロールとして、塗装ロールの磁気テープ製造塗工ラインのグラビアロール、磁気テープ製造塗工ラインのガイドロール、各種コーティングロール等として用いることができる。さらに、乾式複写機のシール、印刷設備の印刷ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品、塗布、塗装設備の塗布ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品、プリンターのインキチューブ、ロール、ベルト、乾式複写機のベルト、ロール、印刷機のロール、ベルト等として用いることができる。
【0112】
またチューブを分析・理化学機分野に用いることができる。
【0113】
食品プラント機器分野では、ライニング、バルブ、パッキン、ロール、ホース、ダイアフラム、O(角)リング、チューブ、シール材、ベルト等があげられ、食品製造工程に用いることができる。具体的には、プレート式熱交換器のシール、自動販売機の電磁弁シール等として用いることができる。
【0114】
原子力プラント機器分野では、パッキン、Oリング、ホース、シール材、ダイアフラム、バルブ、ロール、チューブ等があげられる。
【0115】
鉄板加工設備等の鉄鋼分野では、ロール等があげられ、鉄板加工ロール等に用いることができる。
【0116】
一般工業分野では、パッキング、Oリング、ホース、シール材、ダイアフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウェザーストリップ、PPC複写機のロール、ロールブレード、ベルト等があげられる。具体的には、油圧、潤滑機械のシール、ベアリングシール、ドライクリーニング機器の窓、その他のシール、六フッ化ウランの濃縮装置のシール、サイクロトロンのシール(真空)バルブ、自動包装機のシール、空気中の亜硫酸ガス、塩素ガス分析用ポンプのダイアフラム(公害測定器)、印刷機のロール、ベルト、酸洗い用絞りロール等に用いられる。
【0117】
電気分野では、具体的には、新幹線の絶縁油キャップ、液封型トランスのベンチングシール、油井ケーブルのジャケット等として用いられる。
【0118】
燃料電池分野では、具体的には、電極、セパレーター間のシール材や水素・酸素・生成水配管のシール等として用いられる。
【0119】
電子部品分野では、具体的には、放熱材原料、電磁波シールド材原料、エポキシ等のプリント配線板プリプレグ樹脂の変性材、電球等の飛散防止材、コンピューターのハードディスクドライブのガスケット等に用いられる。
【0120】
現場施工型の成形に用いることが可能なものとしては特に限定されず、たとえば、自動車エンジン用メタルガスケットのコーティング剤、エンジンのオイルパンのガスケット、複写機・プリンター用のロール、建築用シーリング剤、磁気記録装置用のガスケット、クリーンルーム用フィルターユニットのシーリング剤、プリント基盤のコーティング剤、電気・電子部品の固定剤、電気機器リード線端子の絶縁防湿処理、電気炉等のオーブンのシール、シーズヒーターの末端処理、電子レンジの窓枠シール、CRTウェッジおよびネックの接着、自動車電装部品の接着、厨房、浴室、洗面所等の目地シール等があげられる。
【0121】
つぎに本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0122】
評価法
<クラック性>
成膜された基板を180度折り曲げて、表面にクラックや剥離が発生するかを目視により観察し、下記基準により評価する。
○:クラック、剥離の発生がない。
×:明らかなクラック、剥離がある。
【0123】
<表面粗さ(Ra)>
表面粗さ計(機種名:表面形状測定顕微鏡VF−7500、(株)キーエンス製)を用いて測定する。
【0124】
<密着性−1>
厚さ2mm、15mm×15mmのシートを用いて、JIS K5600の碁盤目テープ試験(1mm角/100目)に準拠して、密着性を測定する。
【0125】
<密着性−2>
ベンコットM5(旭化成工業(株)製)を用いて、厚さ2mm、10mm×20mmのシートのコーティング面を20回擦り、表面の剥離の状態を下記基準により評価する。
○:20回擦り後において剥離がなかった。
△:10〜20回の擦りで剥離した。
×:10回未満の擦りで剥離した。
【0126】
<密着性―3>
得られたシール材を用いて、下記条件にて密着性を測定する。なお、試験方法は、ガラス基板を軟質基材に置換える以外は、JIS R−3255(ガラスを基板とした薄膜の付着性試験方法)に規定された方法と同様の方法で行なう。
試験装置:超薄膜スクラッチ試験機 MODEL CSR−02((株)レスカ製)
試験条件:ダイヤモンド圧子針曲率半径・・・・・・5.0μm
弾性アーム・・・・・・146.64g/mm
ステージ角度・・・・・・3.0度
測定速度・・・・・・10.0μm/s
荷重印加速度・・・・・・75.31mN/mm
励振幅・・・・・・79μm
励振周波数・・・・・・30Hz
【0127】
<耐プラズマ性>
厚さ2mm、10mm×35mmのシート片を用いて、以下の条件で耐プラズマ性を測定する。ただし、コーティング膜で覆われていないシート側面がプラズマ照射による影響を受けないように、四フッ化エチレン樹脂製のシート(厚さ2mm、45mm×20mm)の中央部分をくり貫いて(10mm×35mm)作製した保護枠に、コーティング面を上にしてシートをはめ込み、プラズマ照射を行う。
【0128】
(O2、CF4プラズマ)
使用プラズマ照射装置:ICP高密度プラズマ装置((株)サムコインターナショナル研究所製、MODEL RIE−101iPH)
照射条件: ガス流量・・・・・・16SCCM
圧力・・・・・・20mTorr
出力・・・・・・800W
照射時間・・・・・・30分
【0129】
(NF3プラズマ)
使用プラズマ照射装置:アストロンフッ素原子ジェネレーターAX7657−2(アステックス(ASTEX)社製)
照射条件: NF3/Ar・・・・・・1SLM/1SLM
圧力・・・・・・3Torr
照射時間・・・・・・2時間
温度・・・・・・150℃
照射操作:プラズマ照射装置のチャンバー内の雰囲気を安定させるために、チャンバー前処理として5分間かけて実ガス空放電を行なう。ついで被験サンプルを入れたアルミニウム製の容器をRF電極の中心部に配置し、上記の条件下でプラズマを照射する。
重量測定:ザートリウス(Sertorious)・GMBH製の電子分析天秤2006MPE(商品名)を使用し、0.01mgまで測定し0.01mgの桁を四捨五入する。
表面粗度測定:表面粗さ計(機種名:表面形状測定顕微鏡VF−7500、(株)キーエンス製)を用いて測定する。
【0130】
(ショアA硬度)
ASTM D2240に準拠して、測定を行う。具体的には、高分子計器株式会社製アナログ硬さ計のA型を用いて測定を行う。
【0131】
(ショアD硬度)
ASTM D2240に準拠して、測定を行う。具体的には、高分子計器株式会社製アナログ硬さ計のD型を用いて測定を行う。
【0132】
参考例1
(フッ素ゴムシート(A)の作製)
含フッ素エラストマー(ダイエルパーフロGA−105、ダイキン工業(株)製)と、パーヘキサ25B(日本油脂(株)製)とトリアリルイソシアヌレート(TAIC)(日本化成(株)製)と酸化アルミニウムとを重量比100/1/2/15で、オープンロールにて混練して架橋可能なフッ素系エラストマー組成物を得た。
【0133】
得られたフッ素系エラストマー組成物を、160℃で、7分間プレスして架橋を行なったのち、さらに、180℃のエアーオーブン中で4時間かけてオーブン架橋し、厚さが2mmである100mm×75mmのフッ素ゴムシート(A)を得た。フッ素ゴムシート(A)の表面粗さ(Ra)は、0.18μmであった。
【0134】
参考例2
(フッ素ゴムシート(B)の作製)
含フッ素エラストマー(ダイエルパーフロGA−105、ダイキン工業(株)製)と、パーヘキサ25B(日本油脂(株)製)とトリアリルイソシアヌレート(TAIC)(日本化成(株)製)とポリイミド樹脂粉末UIP−S(宇部興産(株)製)とを重量比100/1/2/15で、オープンロールにて混練して架橋可能なフッ素系エラストマー組成物を得た。
【0135】
得られたフッ素系エラストマー組成物を、160℃で、7分間プレスして架橋を行なったのち、さらに、180℃のエアーオーブン中で4時間かけてオーブン架橋し、厚さが2mmである100mm×75mmのフッ素ゴムシート(B)を得た。フッ素ゴムシート(B)の表面粗さ(Ra)は、0.21μmであった。
【0136】
実施例1
参考例1で得られたフッ素ゴムシート(A)を、アルカリ超音波洗浄(45℃)1.5分、一般水道水超音波洗浄1.5分、一般水道水バブリング洗浄1.5分、純水超音波洗浄3分、純水バブリング洗浄1.5分、温純水洗浄 数分の順番で洗浄をした。洗浄後のフッ素ゴムシートを基材とし、その表面にイオンプレーティング装置(成膜条件:蒸発材料 Al、放電電流 50A、Ar流量 40SCCM、成膜圧力 0.25mTorr)を用いて、厚さ0.2μmのアルミニウムのコーティング膜を施した。
得られたコーティング膜を有するフッ素ゴムシートを用いて、密着性、クラック性、および所定の寸法にカットした物で耐プラズマ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0137】
実施例2
基材として、参考例2で得られたフッ素ゴムシート(B)を用いた以外は、実施例1と同様にし、厚さ0.2μmのアルミニウムのコーティング膜を施した。
【0138】
得られたコーティング膜を有するフッ素ゴムシートを用いて、密着性、クラック性、および所定の寸法にカットした物で耐プラズマ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0139】
実施例3
参考例1で得られたフッ素ゴムシート(A)を、実施例1と同様の条件で洗浄し、洗浄後の基材の表面にイオンプレーティング装置(成膜条件:蒸発材料 Al、放電電流 40A、Ar流量 40SCCM、O2流量 100SCCM、成膜圧力 0.59mTorr)を用いて、厚さ0.2μmの酸化アルミニウムのコーティング膜を施した。
【0140】
得られたコーティング膜を有するフッ素ゴムシートを用いて、密着性、クラック性、および所定の寸法にカットした物で耐プラズマ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0141】
実施例4
基材として、参考例2で得られたフッ素ゴムシート(B)を用いた以外は、実施例3と同様にし、厚さ0.2μmの酸化アルミニウムのコーティング膜を施した。
【0142】
得られたコーティング膜を有するフッ素ゴムシートを用いて、密着性、クラック性、および所定の寸法にカットした物で耐プラズマ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0143】
実施例5
参考例1で得られたフッ素ゴムシート(A)を、実施例1と同様の条件で洗浄し、洗浄後の基材の表面を、イオンプレーティング装置内にて、ガス条件Ar/O2=40SCCM/100SCCMで、Al材料が蒸発しない放電電流(約30A)、約5分のプラズマアッシング処理をし、その後、イオンプレーティング法により(成膜条件:蒸発材料 Al、放電電流 40A、Ar流量 40SCCM、成膜圧力 0.26mTorr、加熱なし)、厚さ0.2μmのアルミニウムのコーティング膜を施した。
【0144】
得られたコーティング膜を有するフッ素ゴムシートを用いて、密着性、クラック性、および所定の寸法にカットした物で耐プラズマ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0145】
実施例6
基材として、参考例2で得られたフッ素ゴムシート(B)を用いた以外は、実施例5と同様にし、厚さ0.2μmのアルミニウムのコーティング膜を施した。
【0146】
得られたコーティング膜を有するフッ素ゴムシートを用いて、密着性、クラック性、および所定の寸法にカットした物で耐プラズマ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0147】
実施例7
参考例1で得られたフッ素ゴムシート(A)を、アルカリ超音波洗浄(45℃)1.5分、一般水道水超音波洗浄1.5分、一般水道水バブリング洗浄1.5分、純水超音波洗浄3分、純水バブリング洗浄1.5分、温純水洗浄 数分の順番で洗浄をした。洗浄後のフッ素ゴムシートを基材とし、その表面にスパッタ装置を用いて、厚さ0.2μmのアルミニウムのコーティング膜を施した。
【0148】
得られたコーティング膜を有するフッ素ゴムシートを用いて、密着性、クラック性、および所定の寸法にカットした物で耐プラズマ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0149】
比較例1
参考例1で得られたフッ素ゴムシート(A)を用いて耐プラズマ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0150】
比較例2
参考例2で得られたフッ素ゴムシート(B)を用いて耐プラズマ性の試験を行った。その結果を表1に示す。
【0151】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明のシール材は、表面に非常に薄いコーティング層を有するため、軟質基材の持つ強度、硬度、シール性を保ちつつ、耐薬品性、耐プラズマ性、非粘着性を高めたシール材を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショアD硬度が75以下であり、かつショアA硬度が40〜100である軟質材料からなる基材の表面全体または一部に、金属、金属酸化物、金属チッ化物、金属炭化物およびそれらの複合物からなる群より選ばれる1種以上の金属または金属化合物からなるコーティング膜を有するシール材。
【請求項2】
軟質材料が、エラストマーである請求の範囲第1項記載のシール材。
【請求項3】
軟質材料が、フッ素系高分子材料である請求の範囲第1項記載のシール材。
【請求項4】
軟質材料が、フッ素ゴムである請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のシール材。
【請求項5】
コーティング膜の膜厚が、0.005〜1μmである請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載のシール材。
【請求項6】
JIS K5600の碁盤目テープ試験(1mm角/100目)にて測定される軟質材料とコーティング膜との剥離数が50/100以下となる密着度で、軟質材料とコーティング膜が密着している請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載のシール材。
【請求項7】
下記条件でのマイクロスクラッチ試験にて測定される臨界破壊荷重が25mN以上となる密着度で、軟質材料とコーティング膜が密着している請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載のシール材。

試験条件:
ダイヤモンド圧力子曲率半径・・・・・・5.0μm
弾性アーム・・・・・・146.64g/mm
ステージ角度・・・・・・3.0度
測定速度・・・・・・10.0μm/s
荷重印加速度・・・・・・75.31mN/mm
励振幅・・・・・・79μm
励振周波数・・・・・・30Hz
【請求項8】
下記条件でO2、CF4、NF3のそれぞれのプラズマを照射した時の重量減少率が、全て1重量%以下である請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載のシール材。

サンプル:厚さ2mm、10mm×35mmのシート
照射条件:
2、CF4プラズマ ガス流量・・・・・・16SCCM
圧力・・・・・・20mTorr
出力・・・・・・800W
照射時間・・・・・・30分
NF3プラズマ NF3/Ar・・・・・・1SLM/1SLM
圧力・・・・・・3Torr
照射時間・・・・・・2時間
温度・・・・・・150℃
【請求項9】
コーティング膜が、真空成膜法により成膜される請求の範囲第1項〜第8項のいずれかに記載のシール材。
【請求項10】
真空成膜法が、イオンプレーティング法である請求の範囲第9項記載のシール材。
【請求項11】
液晶・半導体製造装置に用いる請求の範囲第1項〜第10項のいずれかに記載のシール材。
【請求項12】
請求の範囲第1項〜第11項のいずれかに記載のシール材を有する液晶・半導体製造装置。
【請求項13】
ショアD硬度が75以下であり、かつショアA硬度が40〜100である軟質材料からなる基材の表面全体または一部を、イオンプレーティング法により、金属、金属酸化物、金属チッ化物、金属炭化物およびそれらの複合物からなる群より選ばれる1種以上の金属または金属化合物でコーティングする工程を有するシール材の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/050069
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515626(P2005−515626)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017085
【国際出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】