説明

表面コーティングしたモルタル又はコンクリート

【課題】中性化及び塩害の抑制が可能である、有機−無機複合型塗膜養生剤を表面にコーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタル又はコンクリートを提供する。
【解決手段】有機−無機複合型塗膜養生剤を表面にコーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタル又はコンクリートである。有機−無機複合型塗膜養生剤が合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂及び膨潤性粘土鉱物を含有するものであり、有機-無機複合型塗膜養生剤の膨潤性粘土鉱物が合成フッ素雲母であることが好ましい。また、有機-無機複合型塗膜養生剤の使用量が50〜500g/mである前記モルタル又はコンクリートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木・建築業界において使用される、中性化および塩害の抑制が可能な表面コーティングしたモルタル又はコンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
モルタルやコンクリートに空気中の炭酸ガスが浸透するとアルカリ性が低下するため、内部の鉄筋の表面に形成されていた不動態被膜が破壊され錆びが発生する。この錆びの体積膨張により、コンクリートにひび割れや浮きが発生しコンクリート片のはく落などが生じる。特に、水/セメント比の大きいコンクリートや、鉄筋とのかぶりの小さいコンクリートでこのような劣化現象が顕在化しやすい。また、塩化物イオンが浸透した場合も鉄筋の不動態被膜が破壊され錆びが発生し、同様にコンクリートにひび割れや浮きが発生する。
そのため、中性化及び塩害による劣化を受けたコンクリートに対して、表面被覆工法、含浸塗布工法、断面修復工法、電気化学的補修工法等の各種補修工法が提案されている(非特許文献1)。
例えば、中性化が鉄筋位置まで到達していない場合は、表面被覆工法や含浸塗布工法で対処する場合が多い。表面被覆工法では、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の有機樹脂をコンクリートやモルタル表面に塗布する工法である。しかしながら、これらの樹脂は非常に高価な材料であり、しかも種類の異なる塗布材を塗り重ねて数層構造の被覆層を形成させる必要があり、施工に長時間を要するものであった。含浸塗布工法は、コンクリートやモルタル表面からシラン系やケイ酸塩系の塗布剤を含浸させることで表層部分を改質する工法である。作業性は樹脂系の表面被覆材より簡便であるが、水分が介在するイオンの浸透性を抑制する効果は大きいが、炭酸ガス等の気体の遮断性に対する効果は大きくない。
また、劣化が健在化しひび割れや浮きなどが発生している場合は、断面修復工法による補修工事が行われている(特許文献1、2)。さらに、有機−無機複合型塗膜養生剤が開発され(特許文献3)、セメント硬化体に塗布して養生する方法について提案されている(特許文献4)。
【0003】
【非特許文献1】コンクリート診断技術‘03、基礎編、社団法人日本コンクリート工学協会編、2003年、p.236
【特許文献1】特開平11−270144号公報
【特許文献2】特開2005−104826号公報
【特許文献3】特開2002−274976号公報
【特許文献4】特開2005−162534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、中性化及び塩害の抑制などが可能である、有機−無機複合型塗膜養生剤を表面にコーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタル又はコンクリートを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、(1)有機−無機複合型塗膜養生剤を表面にコーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタル又はコンクリート、(2)有機−無機複合型塗膜養生剤が合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂及び膨潤性粘土鉱物を含有するものである(1)のモルタル又はコンクリート、(3)有機-無機複合型塗膜養生剤の膨潤性粘土鉱物が合成フッ素雲母である(2)のモルタル又はコンクリート、(4)有機-無機複合型塗膜養生剤の使用量が50〜500g/mである(1)〜(3)のうちのいずれかのモルタル又はコンクリートである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の有機−無機複合型塗膜養生剤を表面にコーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタル又はコンクリートは、中性化および塩害などを抑制する効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における部や%は、特に規定しない限り質量基準で示す。
【0008】
本発明のモルタル又はコンクリートとは、特に限定されるものではなく、セメント、砂、砂利の骨材、水などを使用して作製したものである。
【0009】
セメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱、及び低熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ及び石灰石微粉末を混合した各種混合セメント、高炉徐冷スラグや石灰石微粉末を混合したフィラーセメント、並びに都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)等が挙げられ、これらを微粉末化して使用することも可能である。混合セメントにおける混合物とセメントの割合は特に限定されるものではなく、これら混和材をJISで規定する以上に混合したものも使用可能である。さらに、セメントに、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフュームなどの潜在水硬性物質やポゾラン物質を多量に配合する場合もある。
【0010】
骨材としては、通常の砂、砂利の他に、例えば、ケイ砂系や石灰石系などの天然骨材、高炉水砕スラグ系、高炉徐冷スラグ系、再生骨材系などの人工骨材が挙げられる。耐酸性などの観点からは、ケイ砂系を選定することが好ましい。また、比重3.0g/cm以上の重量骨材を使用することもでき、その具体例としては、例えば、人工骨材として、電気炉酸化期スラグ系骨材や、フェロニッケルスラグ、フェロクロムスラグ、銅スラグ、亜鉛スラグおよび鉛スラグなどを総称する非鉄精錬スラグ骨材などが、また、天然骨材としては、橄欖岩(かんらん岩)系骨材、いわゆるオリビンサンドや、エメリー鉱などが挙げられる。本発明では、これらの1種または2種以上を併用できる。
【0011】
水の使用量は、使用する目的・用途や各材料の配合割合によって変化するため特に限定されるものではないが、通常、水セメント比で25〜60%の範囲が好ましく、30〜55%がより好ましい。水セメントが25%未満では流動性を得ることが難しく、また、発熱量が極めて大きくなる。逆に60%を超えると強度発現性を確保することが困難な場合がある。また、物質移動が容易となり、耐久性を確保しにくくなる傾向にある。
【0012】
セメント、骨材、流動化剤などとともに、石灰石微粉末、高炉徐冷スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰やその溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰やその溶融スラグ、パルプスラッジ焼却灰などの混和材料、カルシウムアルミネートやカルシウムアルミネートとセッコウの混合物などの急硬材、凝結調整剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、スチールファイバー、ビニロンファイバー、炭素繊維、ワラストナイト繊維などの繊維物質、ポリマー、ベントナイトなどの粘土鉱物、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体などのうちの1種または2種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することが可能である。
【0013】
本発明の硫酸アルミニウムとは、特に限定されるものではなく、Al(SO・nHOの化学式を持ち、Al(SO・14〜18HOやAl(SO・8HOなどの含水塩や、無水硫酸アルミニウムなどである。これらは粉末や水に溶解して液体としてモルタル又はコンクリート作製時に添加することができる。
硫酸アルミニウムは、モルタルやコンクリートの硬化促進剤として使用されものである。他のアルミン酸塩、炭酸塩などの無機塩類を主成分とする硬化促進剤や、カルシウムアルミネートを主成分とする硬化促進剤を使用したときに比べ、モルタルやコンクリートの中性化や塩化物イオン浸透などを抑制する優れた効果を発揮する。従って、塩害や中性化の影響を受けやすいトンネルや補修・補強分野などにおいて吹付け材料として好適である。
硫酸アルミニウムの使用量は、セメント100部に対して、固形分で0.5〜10部が好ましく、1〜5部がより好ましい。硫酸アルミニウムの使用量が少なすぎると、硬化促進の効果が発揮できない場合があり、多すぎると硬化が速過ぎて緻密な硬化体が得られず、中性化や塩化物イオンなどの浸透が早くなる場合がある。
【0014】
本発明で使用する有機−無機複合型塗膜養生剤とは、合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂、及び膨潤性粘土鉱物を含有するものである。さらに、架橋剤を含有するものが好ましい。
【0015】
本発明で使用する合成樹脂水性分散体とは、一般的には合成樹脂エマルジョンであり、芳香族ビニル単量体、脂肪族共役ジエン系単量体、エチレン系不飽和脂肪酸単量体、及びその他の共重合可能な単量体の内から一種又は二種以上を乳化重合して得られるものである。例えば、スチレンを主体としたスチレン・ブタジエン系ラテックス、スチレン・アクリル系エマルジョンやスチレンと共重合したメチルメタクリレート・ブタジエン系ラテックス、エチレン・アクリルエマルジョンである。合成樹脂エマルジョンには、カルボキシル基またはヒドロキシ基を有するものがより好ましい。
ここで、乳化重合は、重合すべき単量体を混合し、これに乳化剤や重合開始剤等を加え水系で行なう一般的な乳化重合方法である。
膨潤性粘土鉱物との配合安定性を得るには、アンモニア、アミン類、及びカセイソーダなどの塩基性物質を使用し、pH5以上に調整したものが好ましい。
合成樹脂水性分散体の粒子径は、一般的に100〜300nmであるが、60〜100nm程度の小さい粒子径のものが好ましい。
【0016】
水溶性樹脂としては、加工澱粉又はその誘導体、セルロース誘導体、ポリ酢酸ビニルの鹸化物又はその誘導体、スルホン酸基を有する重合体又はその塩、アクリル酸の重合体や共重合体又はこれらの塩、アクリルアミドの重合体や共重合体、ポリエチレングリコール、及びオキサゾリン基含有重合体等が挙げられ、そのうちの一種又は二種以上の使用が可能である。
水溶性樹脂として、純水への溶解度が常温で1%以上であるものであれば良く、樹脂単位重量当たりの水素結合性基又はイオン性基が10〜60%であることが好ましい。また、平均分子量は2,000〜1,000,000が好ましい。
水溶性樹脂の使用量は、合成樹脂水性分散体の固形分100部に対して、固形分換算で0.05〜200部が好ましい。0.05部未満では防湿性が低下する場合があり、200部を超えると防湿性が著しく低下する場合がある。
【0017】
膨潤性粘土鉱物としては、スクメタイト属に属する層状ケイ酸塩鉱物が挙げられる。例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、マイカ、及びベントナイトなどである。これらは天然品、合成品、及び加工処理品のいずれであっても使用可能である。
そのうち、日本ベントナイト工業会、標準試験方法 JBAS−104−77に準じた方法での膨潤力が20ml/2g以上の粘土鉱物、特に、ベントナイトが好ましい。また、イオン交換当量が100g当たり、10ミリ当量以上ものが好ましく、60〜200ミリ当量以上ものがより好ましい。さらに、そのアスペクト比が50〜5,000のものが好ましい。アスペクト比とは、電顕写真により求めた層状に分散した粘土鉱物の長さ/厚みの比である。
膨潤性粘土鉱物の使用量は、合成樹脂水性分散体の固形分100部に対して、固形分に対して、1〜50部が好ましい。1部未満では防湿性が低下しブロッキングが生じやすくなる場合があり、50部を超えると塗膜養生剤の膜の変形能力が低下する場合がある。
【0018】
架橋剤とは、水溶性樹脂や合成樹脂水性分散体が有するカルボキシル基、アミド基、及び水酸基等の親水性官能基と反応して、架橋、高分子化(三次元網目構造)、又は疎水化するものであり、カルボキシル基と付加反応を起こすオキサゾリン基を有するものが水溶性樹脂をも兼ねるので好ましい。
架橋剤の使用量は、合成樹脂水性分散体と水溶性樹脂の合計の固形分100部に対して、固形分換算で0.01〜30部が好ましい。0.01部未満では防湿性が低下する場合があり、30部を超えると防湿性やブロッキング防止性が頭打ちになる。
【0019】
本発明では、合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂、及び膨潤性粘土鉱物を混合して、さらに、これらと架橋剤とを反応させて塗膜養生剤を調製する。
塗膜養生剤の合成方法は、水溶性樹脂と膨潤性粘土鉱物をあらかじめ水中で混合した後に、合成樹脂水性分散体と架橋剤を混合する方法が好ましい。塗膜養生剤は、水に分散したポリマーディスパージョンであり、含有する固形分量は特に限定されるものではない。固形分濃度は、モルタルやコンクリートに塗布した場合に形成される被膜の強度や厚み、塗り易さなどに影響してくる。
モルタル又はコンクリートに塗布するときの塗布剤の固形分濃度は、10〜60%が好ましく、20〜50%がより好ましい。10%未満では、中性化や塩化物イオンの浸透などを抑制する効果が十分でなく、60%を超えると粘度が高くなることから塗り難くなる。
【0020】
有機-無機複合型塗膜養生剤の被覆方法は、均一に被覆膜が形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、撒布したり、塗布したり、吹付けたりすることが可能である。
有機-無機複合型塗膜養生剤の塗布量は、1m当たり50〜500gの範囲で使用することが好ましく、100〜400gがより好ましい。50g未満では中性化や塩化物イオンの浸透などを抑制する効果が十分でなく、500gを超えてもさらなる効果の向上が期待できない。
【実施例】
【0021】
「実施例1」
容量3Lのホバートミキサーを用いて、セメントの物理試験方法(JIS R 5201)に示されているモルタルの配合において1分間練り混ぜ、セメント100部に対して硫酸アルミニウムを2部加えて再度10秒間練り混ぜ、すばやく型詰めを行った。材齢28日間、温度20℃、湿度80%の環境下で気中養生した。試験体のサイズは4×4×16cmで、その試験体の側面と底面をエポキシ樹脂でシールし、上面に表1に示す固形分濃度の塗膜剤を150g/mとなるように刷毛で塗布し、促進中性化試験、塩化物イオン浸透試験、作業性(塗り易さ)評価を行った。なお、比較として、硫酸アルミニウムの代わりにセメント100部に対して炭酸ナトリウムを2部加えたものについても同様に行った。結果を表1に示す。
【0022】
(モルタルの使用材料と配合)
セメント:普通ポルトランドセメント、電気化学工業社製
硬化促進剤(A):硫酸アルミニウム、試薬1級品、無水物
硬化促進剤(B):炭酸ナトリウム、試薬1級品、無水物
砂:標準砂
水:水道水
セメント:砂:水=1:3:0.5(質量比)
塗膜剤:有機−無機複合型塗膜養生剤、東亞合成社製、「CA212」、アクリル樹脂-フッ素雲母の複合型、固形分濃度45%
【0023】
(試験方法)
促進中性化試験:促進条件は、炭酸ガス濃度5%、温度30℃、湿度60%とし、塗膜剤を塗布して翌日に促進試験を開始した。促進期間は28日間とし、フェノールフタレイン法により上面からの中性化深さを測定した。
塩化物イオン浸透試験:塗膜剤を塗布して翌日に、JIS A 1171に準拠して擬似海水に28日間浸漬することで塩化物イオンの浸透深さを測定した。
塗り易さ:刷毛で試験体上面(4×16cm)を塗ったときに、塗膜剤が均一な場合を○、塗膜剤がやや不均一の場合を△、塗膜剤がかなり不均一な場合を×とした。
【0024】
【表1】

【0025】
表1より、本発明の塗膜剤で表面コーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタルは、中性化と塩害を抑制することが分かる。
【0026】
「実施例2」
固形分濃度を25%とし、表2に示すように塗布量を変えた以外は実施例1と同様に行った。
【0027】
【表2】

【0028】
表2より、本発明の塗膜剤で表面コーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタルは、中性化と塩害を抑制し、塗り易さが良好であることが分かる。
【0029】
「実施例3」
硫酸アルミニウムの添加量を表3に示すように変え、塗膜剤の固形分濃度を25%として塗布量を150g/mとし、塗膜剤をモルタルに塗るまでの養生期間を材齢1日、7日、28日で行ったこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す
【0030】
【表3】

【0031】
表3より、本発明の塗膜剤で表面コーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタルは、中性化と塩害を抑制することが分かる。
【0032】
「実施例4」
実施例1の実験No.1-1の中性化深さが7.6mm、塩化物イオン浸透深さが9.8mmを示した塗膜剤を塗布しない試験体に対して、表4に示す実験No.の塗布条件(塗膜剤の種類、塗膜剤の固形分濃度、塗布量)で塗膜剤を塗布し、さらに、実施例1と同様に促進中性化試験及び塩化物イオン浸透試験を実施し中性化深さ及び塩化物イオン浸透深さを測定した。結果を表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】
表4より、本発明の塗膜剤で表面コーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタルは、中性化と塩害を抑制することが分かる。
【0035】
「実施例5」
実施例1と同様のモルタルで縦30cm×横30cm×厚み6cmの平板を作製し、市販の表面被覆材、表面含浸材、及び本発明の塗膜剤(実験No.1-10の塗布条件)を施工し、実施例1と同様にその塗り易さ及び中性化深さを確認した。
【0036】
(使用材料)
表面被覆材:プライマー(アクリル系樹脂、標準塗布量200g/m、市販品)、
中塗り材(アクリル系樹脂、標準塗布量200g/mを2回塗り、市販品)、上塗り材(アクリル−ウレタン系樹脂、標準塗布量200g/mを2回塗り、市販品)
表面含浸材:アルコキシシラン系エマルジョン、標準塗布量200g/m、市販品
【0037】
(結果)
表面被覆材は3種の材料の重ね塗りを行うもので表面被覆が完了するまでに要した時間は、プライマー、中塗り材等の乾燥時間を設ける必要があるため、8時間を要した。促進中性化28日後の中性化深さ及び塩化物イオン浸透深さは0mmであった。
表面含浸材は、標準塗布量である200g/mを表面に1回のみ刷毛塗りするだけである。促進中性化28日後の中性化深さは4.4mm、塩化物イオン浸透深さは1.3mmであった。
一方、本発明では、塗膜剤を1回のみ刷毛塗りするだけであり、促進中性化28日後の中性化深さは0.3mm、塩化物イオン浸透深さは0.2mmであった。 従って、本発明は施工が簡便であり、通常の市販表面被覆材に匹敵する中性化抑制効果及び塩化物イオン浸透抑制効果を発揮するモルタルが容易に得られることが分かる。
【0038】
「実施例6」
セメント318kg/m、砂829kg/m、砂利997kg/m、水170kg/m、減水剤をセメントに対し0.5%からなるコンクリート配合に、セメント100部に対して硫酸アルミニウムを2部加えて練り混ぜ、材齢28日間、温度20℃、湿度80%の環境下で気中養生した。試験体サイズは10×10×10cmで、その試験体側面と底面をエポキシ樹脂でシールし、上面に表5に示す実験No.の塗布条件(塗膜剤の種類、塗膜剤の固形分濃度、塗布量)で塗膜剤を刷毛で塗布した以外は実施例1と同様に行った。結果を表5に示す。
【0039】
(使用材料)
砂:新潟県姫川水系産砕石、最大骨材粒径5mm
砂利:新潟県姫川水系産砕石、最大骨材粒径20mm
減水剤:ナフタレンスルホン酸塩系、市販品
【0040】
【表5】

【0041】
表5より、本発明の塗膜剤で表面コーティングした硫酸アルミニウムを含有するコンクリートは、中性化と塩害を抑制し、塗り易さが良好であることが分かる。
【0042】
「実施例7」
セメント100部に対し砂200部、水42部、減水剤0.5部を50Lの左官ミキサーで練り混ぜ、得られたモルタルをスクイズポンプで3m圧送した。圧送ホース先端には吹付けノズルを取り付け、そのノズル手前で硫酸アルミニウム水溶液を固形分でセメント100部に対し6部となるように液体ポンプで圧送し圧縮空気と共に合流混合し型枠に吹き付け、表6に示す実験No.の塗布条件(塗膜剤の種類、塗膜剤の固形分濃度、塗布量)で塗膜剤を塗布し実施例1と同様に試験を行った。結果を表6に示す。
【0043】
(使用材料)
砂:石灰石砂、新潟県青海産石灰砂、最大粒径1.5mm
減水剤:ナフタレンスルホン酸塩系、市販品
硫酸アルミニウム水溶液:市販の硫酸アルミニウム18水塩を固形分27%となるように水に溶解させた水溶液
【0044】
(吹付け条件)
左官ミキサー:岡三機工社製ダマカットミキサー
スクイズポンプ:岡三機工社製OKG−05型、モルタルの吐出量0.2m/hr
コンプレッサー:圧力0.7MPa、空気流量0.4m/min
液体ポンプ:プランジャー方式圧送ポンプ(硫酸アルミニウム水溶液圧送用)
【0045】
【表6】

【0046】
表6より、本発明の塗膜剤で表面コーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタルは、中性化と塩害を抑制し、塗り易さが良好であることが分かる。
【0047】
「実施例8」
セメント400kg/m、砂1055kg/m、砂利713kg/m、水200kg/mからなるコンクリートを練り混ぜ、コンクリート圧送機(アリバー280)で空気搬送し、途中設けたシャワーリング管の一方より、実施例7の硫酸アルミニウム水溶液をセメント100部に対して固形分で6部となるように液体ポンプで圧送し、合流混合し方枠に吹き付けた。吹き付けた型枠のサイズは縦30cm×横30cm×厚さ15cmの箱型枠であり、翌日、直径5cm×高さ10cmの円柱状に成形、表に示す塗布条件No.で塗布剤を塗布した以外は実施例6と同様に試験を行った。結果を表7に示す。
【0048】
(使用材料)
砂:新潟県姫川産川砂、最大粒径5mm
砂利:新潟県姫川産川砂利、最大粒径15mm
【0049】
(吹付け条件)
吹付け機:アリバー社製アリバー280、空気消費量10m/min、コンクリート吐出量5m/hr
液体ポンプ:プランジャー方式圧送ポンプ(硫酸アルミニウム水溶液圧送用)
【0050】
【表7】

【0051】
表7より、本発明の塗膜剤で表面コーティングした硫酸アルミニウムを含有するコンクリートは、中性化と塩害を抑制し、塗り易さが良好であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のモルタル又はコンクリートは、土木・建築分野のコンクリート構造物やコンクリートやモルタルの二次製品の補修・補強を目的として使用することができる。特に、中性化及び塩害の抑制などが要求される箇所に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機−無機複合型塗膜養生剤を表面にコーティングした硫酸アルミニウムを含有するモルタル又はコンクリート。
【請求項2】
有機−無機複合型塗膜養生剤が合成樹脂水性分散体、水溶性樹脂及び膨潤性粘土鉱物を含有するものである請求項1記載のモルタル又はコンクリート。
【請求項3】
有機-無機複合型塗膜養生剤の膨潤性粘土鉱物が合成フッ素雲母である請求項2記載のモルタル又はコンクリート。
【請求項4】
有機-無機複合型塗膜養生剤の使用量が50〜500g/mである請求項1〜3のうちのいずれか1項記載のモルタル又はコンクリート。

【公開番号】特開2007−169100(P2007−169100A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367867(P2005−367867)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】