表面プラズモン・ポラリトン変調
【課題】 本発明は、表面プラズモン・ポラリトン(SPP:surface plasmon polariton)の噴流を変調するための装置及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 装置は、金属性表面を有する基板と、構造物と、金属性上部表面に対向する誘電物体とを含む。構造物は、金属性表面上を伝播する表面プラズモン・ポラリトンを光学的に生成するように構成される。誘電物体は、金属性表面に沿った、及びその近くの異なる位置のアレイにおいて誘電率の値を調節するように制御可能である。
【解決手段】 装置は、金属性表面を有する基板と、構造物と、金属性上部表面に対向する誘電物体とを含む。構造物は、金属性表面上を伝播する表面プラズモン・ポラリトンを光学的に生成するように構成される。誘電物体は、金属性表面に沿った、及びその近くの異なる位置のアレイにおいて誘電率の値を調節するように制御可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン・ポラリトン(SPP:surface plasmon polariton)に基づくデバイス及びそのようなデバイスを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本節は、本発明のよりよい理解を助けることができる態様を紹介する。したがって、本節の説明は、この観点から読むべきであり、何が先行技術に含まれるのか、又は何が先行技術に含まれないのかについて認めるものとして理解すべきでない。
【0003】
全光学的なルータは、受信した光信号を電気信号に中間変換せずに、光学的ルーティングを実施する。最近まで、そのような変換を回避することによって、全光学的なルータは、受信した光信号を中間的な電気信号に変換する従来の非全光学的なルータより迅速に光学的ルーティングを実施することが可能であった。全光学的なルータは、通常、そのような非全光学的なルータより簡単であった。というのは、そのような変換をするためのハードウェアがなかったからである。実際、そのような全光学的なルータは、動作速度がより速く、複雑さがより低いことによって、しばしば非全光学的なルータより好ましいものになっていた。
【0004】
最近、様々なタイプの非全光学的なルータに対する関心が高まってきている。1つのタイプの非全光学的なルータは、表面プラズモン・ポラリトンを使用して、光学的ルーティングを実施する。このタイプの非全光学的なルータには、高速で動作し、かつ製作するのに簡単で安価であるという両方についての可能性がある。具体的には、そのような非全光学的なルータの製作は、主にマイクロエレクトロニクス及び集積光学製作に使用される従来の技術に基づくことができる。
【0005】
また、表面プラズモン・ポラリトンは、表面プラズモンと一般に言われる。表面プラズモンは、伝播する表面電荷密度と付随する電磁波の組み合わせである。表面プラズモンは、金属と誘電体の間の界面に沿って伝播することができ、かつ真空に晒された金属の表面に沿って伝播することができる。表面プラズモンは、そのような界面に沿って、ならびに表面が滑らかであろうと、凹凸があろうとも、及び表面が平坦であろうとも、湾曲していても、そのような表面に沿って伝播することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,027,689号
【特許文献2】米国特許第7,068,409号
【特許文献3】米国特許出願第11/394950号
【特許文献4】米国特許出願第11/514584号
【特許文献5】米国特許出願第11/448,390号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
様々な実施形態によって、表面プラズモン・ポラリトン(SPP:surface plasmon polariton)の噴流を変調するための装置及び方法が提供される。いくつかの実施形態では、SPPの噴流を合焦させる、又はその焦点がぼかされる。いくつかの実施形態は、SPPに付随する電磁場の強さを高めるために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、金属性表面を有する基板と、構造物と、その金属性の上部表面に対向する誘電物体とを含む装置を特徴とする。構造物は、金属性表面上を伝播するSPPを光学的に生成するように構成される。誘電物体は、金属性表面に沿った、及びその近くの異なる位置のアレイにおいて誘電率の値を調節するように制御可能である。
【0009】
本装置のいくつかの実施形態では、誘電物体は、金属性表面に対向する誘電体層、及びその層に沿って配置された磁気的又は電気的なコントローラを含む。各コントローラは、誘電体層の隣接した部分の誘電率を変更することが可能である。
【0010】
本装置のいくつかの実施形態では、構造物は、金属性表面に沿った変形部の規則的なアレイを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本装置は、MEMSアクチュエータのアレイを含み、誘電物体は、フレキシブルな誘電体層、又は誘電体ブロックのアレイを含む。各MEMSアクチュエータは、層の対応する部分の金属性表面からの距離を、又はブロックの対応するブロックの金属性表面からの距離を変更することが可能である。いくつかのそのような実施形態では、誘電体層の各部分又は誘電体ブロックのそれぞれは、金属性表面の隣になるように移動させることができる。いくつかのそのような実施形態では、本装置は、金属性表面に対向する表面を有する第2の基板を含み、MEMSアクチュエータは、第2の基板上に配置される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本装置は、金属性表面に沿った変形部の規則的なアレイを有する第2の構造物を含む。2つの構造物は、互いに共通部がなく、第2の構造物は、第2のアレイに伝播するSPPを光学的に検出するように構成される。
【0013】
第2の態様では、本発明は、方法を特徴とする。本方法は、金属性表面上にSPPの噴流を生成するステップと、生成された噴流の波面を、波面の形状を変えるような方法で空間的に変調するステップとを含む。変調するステップは、波面のそれぞれの第1の部分の伝播速度を、波面のそれぞれの第2の部分の伝播速度に対して減少させるステップを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、変調するステップは、誘電体層の部分又は誘電体ブロックを金属性上部表面により近づけるように、又はそこからより遠く離れるように移動させるために、複数のMEMSアクチュエータを動作させるステップを含む。誘電体層の各部分又は各誘電体ブロックは、表面に沿った、かつ波面に沿った幅が、噴流の波面の幅の1/10より小さくすることができ、又は噴流のSPPの波長より小さくすることができる。動作させるステップは、誘電体層の部分又は誘電体ブロックの金属性上部表面からの距離が、上に凸のプロファイル又は上に凹のプロファイルを有するようにさせるステップを含むことができる。
【0015】
本方法のいくつかの実施形態では、空間的に変調するステップは、噴流を横方向に合焦させるステップ、又は噴流を発散させるステップを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、噴流の空間的に変調された波面の一部分によって放射された光を検出するステップをさらに含む。この光は、金属性上部表面に沿った変形部の規則的なアレイから放射される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】表面プラズモン・ポラリトン(SPP)を生成し、空間的に変調する装置の一部分の平面図である。
【図2】図1の装置の一部分の側面図である。
【図3】図1及び2の装置及びその装置のための例示の制御システムを表すブロック図である。
【図4】SPPの噴流用、例えば図1及び2の装置中で使用するための空間モジュレータの第1の実施形態の1つのMEMSアクチュエータの側面図である。
【図5】図4の空間モジュレータの部分をさらに表す斜投影図である。
【図6】SPPの噴流用、例えば図1及び2の装置中で使用するための空間モジュレータの第2の実施形態の1つのMEMSアクチュエータの側面図である。
【図7】図6のMEMSアクチュエータの移動部分の平面図である。
【図8】SPPの噴流用、例えば図1及び2の装置中で使用するための空間モジュレータの第3の実施形態の1つのMEMSアクチュエータの側面図である。
【図9】図8のMEMSアクチュエータの移動部分の平面図である。
【図10】金−真空及び様々な金−誘導体の界面におけるSPPの分散関係をプロットした図である。
【図11】銀−真空及び様々な銀−誘導体の界面におけるSPPの分散関係をプロットした図である。
【図12】図1〜3の空間SPPモジュレータ中における、金属性上部表面から誘電体層の側面の領域までの距離に関する、又は誘電体ブロックまでの距離に関する、例示の上に凹の空間プロファイルを示す図である。
【図13】図1〜3の空間SPPモジュレータ中における、金属性上部表面から誘電体層の側面の領域までの距離に関する、又は誘電体ブロックまでの距離に関する、例示の上に凸の空間プロファイルを示す図である。
【図14】図1〜3の空間SPPモジュレータ中における、金属性上部表面から誘電体層の側面の領域までの距離に関する、又は誘電体ブロックまでの距離に関する、例示の傾斜した空間プロファイルを示す図である。
【図15】例えば図1〜3の装置、及び例えば図4〜9のMEMSアクチュエータを用いて表面プラズモンを空間的に変調するための1つの方法を概略的に表すフロー・チャートである。
【0018】
図及びテキストでは、同様の参照番号は、実質的に同様の機能及び/又は実質的に同様の構造物に関する特徴を言う。
【0019】
図の中のいくつかでは、外観の相対寸法が、そこに示されている構造物をより明瞭に表すために、誇張されていることがある。
【0020】
本明細書では、様々な実施形態が、図及び「発明を実施するための形態」において、より十分に述べられている。しかし、本発明は、様々な形で実施することができ、図及び「発明を実施するための形態」において述べられる具体的な実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び2に、表面プラズモン・ポラリトン(SPP)に基づく装置8を示す。SPPは、基板12の金属性上部表面10に沿って伝播する。基板12は、金属、誘導体又は半導体を含むことができ、上部金属性表面は、平面としてもよい。例示的な基板12は、平面の半導体基板であり、それは、マイクロエレクトロニクス製作に適切であり、例えばシリコン・ウェハ基板である。そのような実施形態では、基板12は、金属上部表面10を形成する上部金属層を含む。様々な実施形態では、金属上部表面10又は金属基板12は、様々な元素金属又は合金金属、例えば金、銀、銅又はアルミニウムから形成することができる。いくつかの実施形態では、金属性上部表面10は、薄膜透明誘電体層(図示せず)によって覆うことができる。
【0022】
装置8は、光SPPカプラ14、空間SPPモジュレータ16及び1つ又は複数のSPP検出器18を含む。金属性上部表面10は、SPPが、光SPPカプラ14、空間SPPモジュレータ16及びSPP検出器18の間を伝播することができるように、これらの間に延在する。光SPPカプラ14、SPPモジュレータ16及び1つ又は複数のSPP検出器18は、金属性上部表面10の互いに共通部がない側面の部分に沿って配置される。
【0023】
光SPPカプラ14は、金属性上部表面10上を伝播する、SPPの噴流を光学的に生成するように構成される。光SPPカプラ14は、光源22及び基板12の部分的に変更された側面の領域23(図1の破線ボックスで示す)を含む。光源22は、部分的に変更された側面領域23中でSPPを光学的に生成し、金属性層12の上部表面に沿って異なる方向に伝播するSPPを生成することができる。
【0024】
ここでは、「SPPの噴流」は、1つ又は複数の表面プラズモン・ポラリトンの伝播コヒーレント・モードを言う。噴流の伝播は、一定位相の波面の空間的シーケンスを画定し、その波面は、平面、円弧状又はより複雑な形状になることがある。光学製品は、しばしば、伝播方向が実質的に良く定められたSPPの噴流を生成するが、光学製品は、その波面が真っすぐでないSPPの噴流を生成することがある。例えば、光SPPカプラ14は、SPPの発散的又は収束的な噴流を生成することがある、すなわち生成用光ビームが発散する、又は収束する光学波面を有する場合、波面が円弧状になる。
【0025】
示した光SPPカプラ14では、部分的に変更された側面領域23は、変形部20の実質的に規則的な1次元(1D)又は2次元(2D)のアレイを含む。変形部20は、例えば、金属性上部表面10中の穴、金属性上部表面10上の隆起部、又は金属性上部表面10上の任意選択の透明誘電体層中の穴とすることができる。変形部20は、実質的に同じ形状及びサイズを有することができ、部分的に変更された領域中に規則的に隔置することができる。
【0026】
示した光SPPカプラ14では、光源22は、光ファイバOFに結合されたレーザ・ダイオードLDを含む。光ファイバOFの一方の端部は、レーザ・ダイオードLDからの光を用いて基板12の部分的に変更された側面領域23を照明するように構成される。光源22は、変形部20の規則的な1次元又は2次元のアレイを、SPPを生成するような方法で、例えば単一光子がその中で単一SPPを生成するような方法で、照明するように構成される。例えば、光ファイバOFの一方の端部は、変形部20の規則的な1次元又は2次元のアレイ上に光を投射する、すなわち金属上部表面10に、垂直ベクトルNに対して斜角θで光を投射するように、方向付けることができる。
【0027】
光SPPカプラ14のための適切な変形部20及び光源22のアレイの例示の実施形態は、米国特許第7,027,689号に述べられており、それは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0028】
代替の実施形態では、光SPPカプラ14は、SPPを光学的に生成するために、異なる構造物を有することができる。例えば、光SPPカプラ14は、その中に欠陥部を有するプラズモン導波路を含むことができる。次いで、光源22は、その導波路の欠陥部においてSPPを光学的に生成する。また、光SPPカプラ14は、金属性上部表面10の部分的に変更された側面領域23中に他の周期的な構造物、例えば交差したワイヤ接合部を含むことができる。次いで、光源22は、その周期的な構造物中でSPPを光学的に生成する。また、光SPPカプラ14は、エバネセント光を生成する光源22を含むことができ、そこでは、エバネセント光は、金属性上部表面10の部分的に変更された側面領域中でSPPを生じる。
【0029】
いくつかの他の実施形態では、金属性上部表面10は、薄膜金属層から形成することができ、そこでは、変形部20は、金属層の底面に沿って配置される。次いで、光源22は、その薄膜金属層の底面を照明することによって、金属性上部表面10上を伝播するSPPを生成することができる。
【0030】
SPPモジュレータ16は、底面が金属性上部表面10に対向し、かつそれに隣接した誘電物体を含む。誘電物体は、移動可能な誘電体ブロック24の1次元又は2次元のアレイを含むことができ、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24(図1には図示せず)を含むことができる。前者の場合、誘電体ブロック24は、そのアレイが、金属性上部表面10のストリップの実質的に完全なカバーを形成するように、接近して隔置される。後者の場合、連続したフレキシブルな誘電体層24が誘電体ブロック24の代わりとなり、したがって、その間のギャプがなくされる。誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24は、その形状が金属性上部表面10の隣接した部分の形状を補完することができる底面を有することができる。例えば、金属性上部表面10の隣接した部分は、平坦とすることができ、そのような誘電体ブロック24の底面は、平坦として上記の隣接した部分に実質的に平行とすることができる。様々な実施形態では、誘電物体24は、様々な形状を有することができ、誘電体ブロック24の異なるブロックは、例えば図1に示すように、異なる形状を有することができる。
【0031】
誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24は、光SPPカプラ14によって生成されたSPPの波長より、例えばそのような波長の2倍以上、厚く、かつ長くすることができる。
【0032】
誘電体ブロック24又はフレキシブルな連続する誘電体層24は、様々な異なる材料組成物を有することができる。例示の材料組成物は、シリカ(SiO2)及び/又はシリコン窒化物(Si3N4)など、通常の誘電体を含む。他の例示の組成物は、強誘電体又は分極性化合物半導体を含むことができる。組成物は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、タングステン酸鉛コバルト(Pb(Co1/2W1/2)O3)、タンタル酸鉛鉄(Pb(Fe1/2Ta1/2)O3)、ニオブ酸鉛マグネシウム(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3)、ニオブ酸鉛亜鉛(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸カリウムストロンチウム、ニオブ酸ナトリウムストロンチウム(NaSr2Nb5O15)、ニオブ酸リチウムカリウムストロンチウム(LiNaSr4Nb10O30)、ニオブ酸ナトリウムバリウム(NaBa2Nb5O15)、ニオブ酸バリウムストロンチウム、ニオブ酸カリウムリチウム(K3Li2Nb5O15)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、又はリン酸カリウム2水素(KH2PO4)とすることができる。また、組成物は、化学式がAlXGa(1−X)N、ZnO、MgXZn(1−X)O、CdXZn(1−X)O、ただし0≦x≦1である、結晶族III〜V又は族II〜VIの半導体とすることができる。また、誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24は、上記に述べた組成物の混合物及び/又はマルチレイヤを含むことができる。
【0033】
誘電体ブロック24のアレイを備えた実施形態では、個々の誘電体ブロック24の位置がMEMS制御される。具体的には、誘電体ブロック24のそれぞれは、対応するMEMSアクチュエータによって、金属性上部表面10から離れるように、及び金属性上部表面10に向けてそれぞれ独立に移動させることができる。例えば、誘電体ブロック24は、それらの底面が金属性上部表面10に接触するように、及びそれらの底面が、金属性上部表面10から、SPP源14によって生成されたSPPの波長に比べてより遠く離れるように配置することができる。個々の誘電体ブロック24の位置は、以下に述べるように、SPPに対する実効誘電率の局所値を決定する。
【0034】
フレキシブルな誘電体層24を備えた実施形態では、誘電体層24の形状がMEMS制御される。具体的には、フレキシブルな誘電体層24の形状は、フレキシブルな誘電体層24の背面全体の上に1次元又は2次元のアレイの形で分散された個々のMEMSアクチュエータによって、変形させることができる。次いで、各MEMSアクチュエータは、フレキシブルな誘電体層24の対応する領域を、金属性上部表面10から離れるように、及び/又は金属性上部表面10に向けて移動させることができる。例えば、誘電体層24の領域は、それらの底面が金属性上部表面10に接触するように、又は、それらの底面が、金属性上部表面10から、SPP源14によって生成されたSPPの波長に比べてより遠く離れるように配置することができる。フレキシブルな誘電体層24の異なる領域の位置は、以下に述べるように、SPPに対する実効誘電率の値を決定する。
【0035】
1つ又は複数のSPP検出器18は、金属性上部表面10上を伝播するSPPを光学的に検出するように構成される。各SPP検出器18は、従来の光検出器26及び基板12の部分的に変更された側面の領域を含む。
【0036】
示したSPP検出器18では、部分的に変更された側面の領域25は、金属性上部表面10において、実質的に規則的な1次元又は2次元のアレイの変形部20(図1の破線ボックスによって示す)を含む。変形部20は、例えば、金属性上部表面10中の穴、金属性上部表面10上の隆起部、又は金属性上部表面10上の任意選択の透明誘電体層中の穴とすることができる。変形部20は、ほぼ同じサイズ及び形状を有することができ、金属性上部表面10の部分的に変更された側面領域25中に一様に分布させることができる。
【0037】
示したSPP検出器18では、各光検出器26は、光ファイバOF及び電子光検出器ELDを含む。光ファイバOFの一方の端部は、基板12の部分的に変更された側面領域25から放射された光を受け取るように構成される。電子光検出器ELDは、光ファイバOFの他方の端部から放出された光を、例えばダイオード検出器を介して検知する。
【0038】
適切なSPP検出器18の例示の実施形態は、米国特許第7,027,689号に述べられており、それは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0039】
代替の実施形態では、SPP検出器18は、異なるタイプの光検出器26を含むことができる。例えば、部分的に変更された側面領域は、金属性上部表面10の他のタイプの周期的な変形部を含むことができる。また、SPP検出器18は、金属性上部表面10上に、又はその近くに配置された感光性ダイオード又はトランジスタとすることができる。
【0040】
図3に、図1及び2の装置8のための制御システム6を示す。制御システム6は、デジタル・データ・プロセッサ2、例えばコンピュータと、デジタル・データ記憶デバイス3、例えばデジタル・データ・メモリと、電気的制御ライン4とを含む。デジタル・データ・プロセッサ2は、制御ライン4を介して送られる電気的制御信号によって、SPPモジュレータ16を制御する。制御信号は、上部金属表面10に沿った、及びその近くの位置において実効誘電率の値を決定する、SPPモジュレータ16の要素の空間アレイを制御する。いくつかの実施形態では、デジタル・データ・プロセッサ2は、図1及び2に示すように、上部金属表面10の上にある誘電体ブロック24の垂直位置、又はフレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない空間領域の垂直位置を制御する。他の実施形態では、デジタル・データ・プロセッサ2は、上部表面10上に配置された誘電体層中の横方向空間分極プロファイルを制御し、そこでは局所分極が、上部金属表面10の近くの誘電率を確定する。デジタル・データ・メモリ3は、SPPモジュレータ16を制御するようにデジタル・データ・プロセッサ2を動作させるための実行可能なプログラムを格納することができ、及び/又は、デジタル・データ・プロセッサ2が、SPPモジュレータ16を動作させて、上部金属表面10の上、及びその近くにおいて実効誘電率の異なる空間プロファイルのセットを生成することが可能になるためのデータを含むことができる。
【0041】
再び図1及び2を参照すると、多くのタイプのアクチュエータを使用して、誘電体ブロック24の垂直運動、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない領域の垂直運動をもたらすことができる。例えば、様々な従来のタイプのマイクロマシン・アクチュエータを誘電体ブロック又はフレキシブルな誘電体層24の領域と一緒に製作する、あるいはそのようなアクチュエータは、誘電体ブロック24に取り付ける、又はフレキシブルな誘電体層24に沿って分布させ、それによって外部制御信号、例えば電気的又は光学的な信号に応答してそれらの垂直移動をもたらすことができる。例示のアクチュエータは、静電気、磁気、圧電、熱膨張又は誘電体ブロック24に移動を与える、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない領域に移動を与えるための方法を使用することができる。
【0042】
様々な従来のマイクロマシニング及びマイクロ加工のプロセスは、そのようなアクチュエータを製作するために使用することができる。従来のプロセスは、層材料の蒸着、表面及びバルク・マイクロマシニング、接着、電気メッキ、層パターニング、層及び/又は強エッチング、及び/又は犠牲層の使用に関連した技術を含むことができる。
【0043】
マイクロ製作された静電気アクチュエータは、マイクロアクチュエータによって制御される誘電体ブロック24の密集したアレイを製作するのに殊に適している。というのは、マイクロ加工に良好な電導性の弾性材料が入手し易いからである。これらの材料は、例えば、ドープされた単結晶シリコン、多結晶シリコン、互換性のある従来の誘電体及び様々な金属を含む。また、これらの材料は、電力損が低い微小アクチュエータを製造することができる。
【0044】
図4及び5に、図1及び2の誘電体ブロック24用、又は代替えとして、図2のフレキシブルな誘電体層24の領域用のそのような静電気の機械的アクチュエータの一実施形態を示す。この実施形態では、各誘電体ブロック24、又はフレキシブルな誘電体層24の領域は、対応するマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS:micro−electro−mechanical system)アクチュエータ28Aによって機械的に移動される。MEMSアクチュエータ28Aは、第1の基板12の金属性上部表面10に対向する第2の基板30の表面に、しっかりと取り付けられる。
【0045】
そのような実施形態では、装置8は、マルチプル・ウェハ基板構造物である。第1のウェハ基板12は、光SPPカプラ14及びSPP検出器(1つ又は複数)18の部分的に変更された領域、ならびに金属性上部表面10を含む。第2のウェハ基板30は、MEMSアクチュエータ28A、ならびに誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体シート24を含む。第1及び第2の基板30及び12は、位置を合わせ、互いに接着させて垂直スタックを形成する。垂直スタックでは、スペーサ領域(図示せず)が、固定の分離間隔で基板30及び12の対向する面を保持する。そのようなマルチプル・ウェハ基板構造物は、当業者に既知である従来のマイクロエレクトロニック加工技術によって、製作することができる。
【0046】
各MEMSアクチュエータ28Aは、復元スプリング32と、固定電極34及び移動可能電極36を有する制御コンデンサとを含む。移動可能電極36は、対応する誘電体ブロック24に、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の対応する領域に、復元スプリング32と一体である金属、誘電体又は半導体のポスト(1つ又は複数)Pによってしっかりと取り付けられる。復元スプリング32の端部は、ポストPによって第2の基板30にしっかりと固定され、他の誘電体ブロック24と対応する移動可能電極36の間を通すことができる。その理由のため、個々のMEMSアクチュエータ28A、及び、例えば誘電体ブロック24は、近接したストリップ状の領域又は広い領域を密にカバーすることができる。すなわち、MEMSアクチュエータ28Aは、接近して詰め込まれた1次元アレイ、又は接近して詰め込まれた2次元アレイを形成するように、分布させることができる。
【0047】
各移動可能電極36は、同じ制御コンデンサの固定電極34に対して、電極34と36の間に制御電圧を印加することによって、移動させることができる。移動可能電極36のその結果得られた運動によって、対応する誘電体ブロック24の底面、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24の対応する領域の底面と、第1の基板12の近傍の金属性上部表面10との間の距離dを変更することができる。すなわち、MEMS制御電圧を使用して、誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域を、空間SPPモジュレータ16中で、隣接した金属性上部表面10に対して互いに独立に配置することができる。
【0048】
図6及び7に、及び図8及び9に、例えば図1及び2に示すような個々の誘電体ブロック24の位置、又は代替えとして誘電体層の個々の領域の位置を制御するのに適した静電気MEMSアクチュエータ28B及び28Cのための、2つの他の形状を概略的に示す。MEMSアクチュエータ28B及び28Cは、付随する誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域を金属表面10に向けて、それらの制御コンデンサ間への電圧の印加に応答して移動する。対照的に、図4及び5のMEMSアクチュエータ28Aは、付随する誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域を金属表面10から離れるように、その制御コンデンサ間へのそのような電圧の印加に応答して、例えば電極34と36の間への電圧の印加に応答して移動する。
【0049】
図6及び7を参照すると、MEMSアクチュエータ28Bは、固定電極34、移動可能電極36、フレキシブルなスプリング・アーム42、支持ポスト44、レバー・アーム46、取り付けプレート48、及び対応する誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域にしっかりと直接接続された取り付けポスト50を含む。MEMSアクチュエータ28Bでは、電極34と36の間への制御電圧によって、フレキシブルなスプリング・アーム42の隣接する端部が、基板30に向かって曲げられる。この運動によって、レバー・アーム46の先端部が反対方向に移動されて、誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域が上部金属表面10により近づくように移動する。
【0050】
そのような運動中の誘電体ブロック24の小さな傾き、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24の領域の小さな傾きは、例えば図8及び9のMEMSアクチュエータ28C中に示すように、取り付けプレート48と基板30上の第2のポストの間に取り付けられた補償用スプリングを追加することによって、なくすことができる。
【0051】
図8及び9を参照すると、MEMSアクチュエータ28Cは、固定電極34、移動可能電極36、フレキシブルなスプリング・アーム42A及び42B、支持ポスト44A及び44B、取り付けプレート48、及び対応する誘電体ブロック24に、又は代替えとして、誘電体層24の対応する領域に接続された取り付けポスト50を含む。MEMSアクチュエータ28Cでは、電極34と36の間への制御電圧によって、フレキシブルなスプリング・アーム42A及び42Bの隣接する端部が、基板30に向かって曲げられる。この運動によって、スプリング・アーム42Bの中心部分が反対方向に移動され、誘電体ブロック24又は誘電体層24の領域が上部金属表面10により近づくように移動する。
【0052】
図4〜9を参照すると、様々なMEMSアクチュエータ28A〜28Cは、そのようなアクチュエータの密集した線形アレイを構築することができるように、十分狭くなるように製作することができる。
【0053】
MEMSアクチュエータ28に適した例示のMEMSアクチュエータ及びそのようなアクチュエータを製造する方法が、例えば米国特許第7,068,409号、Carl J. Nuzman他による2006年3月31日出願の米国特許出願第11/394950号、及びVladimir Aksyuk他による2006年8月31日出願の米国特許出願第11/514584号に述べられている。上記の米国特許及び米国特許出願は、その全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0054】
誘電体層の領域の変位又はアレイの誘電体ブロックの変位を使用する代わりに、代替えとして、図1のSPPモジュレータ16は、その誘電率が電場又は磁場の印加に応答する、制御可能な誘電体層に基づくことができる。例えば、制御可能な層は、ニオブ酸リチウム又は他の分極可能な材料とすることができる。制御可能な誘電体層24は、例えば上部金属性表面10の領域上に配置される。制御可能な誘電体層の異なる領域における分極及び誘電率の関連する値は、近傍の電圧ベース又は磁気ベースの制御構造物、例えば電極が、上記の領域中に生成する電場又は磁場の値によって、決定されることになる。
【0055】
図1〜3及び図4〜9の実施形態では、誘電体ブロック24の垂直配置、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24の様々な領域の垂直配置によって、空間SPPモジュレータ16中でSPPの速度(例えば位相速度)が決定される。具体的には、SPPは、通常、波動ベクトルkを有し、その大きさkは、分散関係を通じてSPPの周波数ωに関連する。
【0056】
k=(ω/c)・([εm(ω)・εd(ω)]/[εm(ω)+εd(ω)])1/2
したがって、波動ベクトルkの大きさkは、誘電体領域の実効誘電率εd(ω)及びSPPの経路に沿った金属の誘電率εm(ω)の両方によって決定される。各側面領域では、金属性上部表面10の上及びその近くの実効誘電率の値εd(ω)が、波動ベクトルの大きさkに影響を及ぼす、したがってその領域中のSPPの位相速度に影響を及ぼす。
【0057】
同様に、SPPモジュレータ16が上部金属性表面10上に分極可能な誘電体層を含む実施形態では、SPPの波動ベクトルkの大きさは、そのSPPがそれに沿って伝播する上部金属表面の上及びその近くの層の領域中の誘電率の値εd(ω)によって、決定される。
【0058】
図10及び11に、SPPの分散関係が、そのSPPがそれに沿って伝播する界面における誘電体及び金属の実効誘電率の値、すなわちεd(ω)及びεm(ω)によって、変化することを示す。
【0059】
図10に、金の表面における、様々なタイプのSPPの分散関係を示す。具体的には、このグラフに、金/真空界面(交差した灰色ライン)、金/シリカ界面(黒色ライン)、及び金/シリコン窒化物界面(灰色ライン)におけるSPPの分散関係を示す。光に関する分散関係、すなわち破線は、比較の目的で示してある。「伝播するプラズモン」領域中の異なるSPP分散ラインから、同じ周波数、すなわちωの伝播するSPPが、異なる大きさkCの波動ベクトルを有することになるはずであることが明らかである。
【0060】
図11に、銀の表面における、様々なタイプのSPPの分散関係を示す。具体的には、このグラフに、銀/真空界面(交差した灰色ライン)、銀/シリカ界面(黒色ライン)、及び銀/シリコン窒化物界面(灰色ライン)におけるSSPの分散関係を示す。光に関する分散関係、すなわち破線は、比較の目的で示してある。「伝播するプラズモン」領域中の異なるSPP分散ラインから、同じ周波数、すなわちωの伝播するSPPが、異なる大きさkCの波動ベクトル有することになるはずであることが明らかである。
【0061】
図10及び11に、金属−誘電体界面の誘電体側の実効誘電率の値が、金属−誘電体界面に沿ったSPPの位相速度に影響を及ぼすことになることを示す。
【0062】
図1〜3では、空間SPPモジュレータ16が、金属性上部表面10の上及びその近くの領域中の実効誘電率の局所値、すなわちεd(ω)を通じて、SPPの局所速度を変調する。空間SPPモジュレータ16は、例えば、誘電体ブロック24又は誘電体層24の領域の1つ又は複数を、金属性上部表面10により近づけるように、及び/又はそこからより遠く離れるように、例えば図4〜9のMEMSアクチュエータ28A〜28Cを使用して移動させ、それによって、近傍のSPPにおいて見られるように、実効誘電率の値εd(ω)が局所的に変更される。例えば、誘電体ブロック24、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の領域を金属性上部表面10により近づくように(そこからより遠く離れるように)移動させることによって、通常、実効誘電率の値εd(ω)を増加させる(減少させる)。SPP速度が実効誘電率εd(ω)に依存するので、噴流のSPPは、その局所速度が、近傍の誘電体ブロック24の位置に、又は代替えとして誘電体層24の近傍の領域の位置によって、決定されることになる。
【0063】
空間SPPモジュレータ16は、個々の誘電体ブロック24又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の個々の領域の金属性上部表面10からの距離dを介して、図2及び図4〜9に示すように、SPPの局所速度を制御する。その理由のため、空間SPPモジュレータ、そして結局図2の制御システム6は、SPPの噴流中の波面の形状を制御することができる。例えば、誘電体ブロック24の1次元アレイ又はフレキシブルな誘電体層24の領域は、収束レンズ、発散レンズ、あるいはミラー又はプリズムが光ビームの波面を修正する方法に類似した方法で、SPPの噴流の波面を修正するように構成することができる。収束SPPレンズのための構成では、制御システム6は、上部金属表面10と、誘電体ブロック24の底部、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない領域の底部との間の距離dが、図12及び13にプロットされた距離プロファイルの一方を定性的に有するように、空間SPPモジュレータ16を設定する。発散SPPレンズのための構成では、制御システム6は、上部金属表面10と、誘電体ブロック24の底部、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない領域の底部との間の距離dが、図12及び13にプロットされた距離プロファイルの他方を定性的に有するように、空間SPPモジュレータ16を設定する。すなわち、上に凸の距離プロファイル及び上に凹の距離プロファイルの一方は、収束SPPレンズを形成し、これら2つの距離プロファイルの他方は、発散SPPレンズを形成する。SPP合焦タイプと距離dに関するプロファイル・タイプ、例えば上に凸、又は上に凹のプロファイル・タイプとの間の具体的な対応は、上記に述べたSPP分散関係から分かり得る。SPPミラー又はプリズムのための構成では、制御システム6は、上部金属表面10と、誘電体ブロック24の底部、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない領域の底部との間の距離dが、図14にプロットされた距離プロファイルを定性的に有するように、SPPモジュレータ16を設定する。すなわち、傾斜ラインのプロファイル、すなわち右側に下がるように傾く、又は左側に下がるように傾くプロファイルは、金属表面10に沿って、入射伝播方向に対してSPPの入射噴流の方向を左側に、又は右側に変えるために、使用することができる。方向変更角度の値は、プロファイルを画定する傾斜ラインの方向付けによって決定され、SPP分散関係から決定することができる。
【0064】
SPPモジュレータ16の他の構成では、例えば、傾斜プロファイルと上に凸のプロファイル、又は上に凹のプロファイルの1つ又は複数とを組み合わせて、同時にSPPの入射噴流の方向を向け直し、その焦点を定め直すことができる。
【0065】
さらに、いくつかの実施形態では、空間SPPモジュレータ16の制御システム6によって、1つの構成から他の構成へ、その間で誘電体ブロック24、又は代替えとして誘電体層24の領域を移動させることを可能とすることができる。例えば、制御システム6は、図12の距離プロファイルに、又は図13の距離プロファイルになるように距離プロファイルを調節することによって、空間SPPモジュレータ16が、収束SPPレンズ又は発散SPPレンズのどちらとしても機能することを可能にすることができる。その理由のため、SPPモジュレータ16のそのような実施形態は、その中の誘電体ブロック24、又は誘電体層24の領域の横方向寸法が、金属性上部表面10に沿ったSPPの入射噴流の幅に比べて小さいという条件で、SPPの入射噴流を合焦させる、及びその焦点をぼかすということの間で切り替えるように、動作させることができる。そのような実施形態では、誘電体ブロック24は、通常、光SPPカプラ14によって生成されたSPP噴流の、金属性上部表面10に沿った幅に、例えばその噴流中のSPPの波長より小さい幅に比較して、小さい横方向寸法を有することができる。実際、誘電体ブロック24のこの横方向寸法は、5ミクロンメーター又はそれより小さくする、2ミクロンメーター又はそれより小さくする、1ミクロンメーター又はそれより小さくする、0.5ミクロンメーター又はそれより小さくさえすることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、制御システム6は、上部金属表面10の上で、及びその近くで、実効誘電率のさらに他の空間プロファイルを生成することができる。制御システム6は、SPPモジュレータ16の隣接した要素の互いに共通部がない群、例えば隣接した誘電体ブロック24の互いに共通部がない群を局所動作ユニット(LOU:local operating unit)として動作させることによって、SPPの噴流の波面の位相及び振幅の両方をほぼ空間的に変調することさえできる。次いで、1つのLOUの要素によって処理される波面の横方向部分が、波面のその部分の局所的な振幅及び位相変調を生成するように、互いに干渉する。そのようなLOUは、ミラーのLOUが、Girsh Blumbergによる2006年6月6日出願の米国特許出願第11/448,390号に記載されている再構成可能なミラー・アレイの形で動作させられるのと同様に、動作させることができるはずである。この米国特許出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0067】
図15に、例えば図3の制御システム6を備えた図1及び2の装置8を動作させるために、SPPの噴流を使用する方法60を示す。
【0068】
この方法60は、金属性上部表面に沿ってSPP噴流を生成するステップ(ステップ62)を含む。例えば、SPP噴流は、図1及び2に示すように、金属性上部表面10上の光SPPカプラ14によって、光学的に生成することができる。
【0069】
本方法60は、生成されたSPP噴流の波面を、波面の形状を変更するような方法で、空間的に変調するステップ(ステップ64)を含む。空間的に変調するステップ62は、SPP噴流の各波面のいくつかの部分の位相又は伝播速度を、同じ波面の他の部分の位相又は伝播速度に対して、相対的に減少させるステップを伴う。例えば、そのような相対速度の差は、図1〜3の空間SPPモジュレータ16の誘電体ブロック24の異なるブロックの底面、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の異なる領域の底面を金属性上部表面10からの異なる距離に配置することによって、生成することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ステップ64は、例えば図12のような上に凹の形、例えば図13のような上に凸の形を有する距離dに関する空間プロファイル、又は他の形状のプロファイルを生成するために、誘電体ブロック24、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の異なる領域を配置するステップを伴う。その結果得られたプロファイルの形は、SPP噴流を合焦させる、又はSPP噴流の焦点をぼかすことができる。実際、いくつかの実施形態は、そのような合焦を生じさせて、SPP噴流に関連する電磁場の強度を増加させることができる。
【0071】
他の実施形態では、ステップ64は、表面においてSPP噴流を効率的に反射させるように、誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域を配置するステップを伴う。
【0072】
本方法60は、ステップ64において生成されたSPP噴流の空間的に変調された波面の1つ又は複数の部分を検出するステップを含む(ステップ66)。検出するステップは、図1及び2のSPP検出器(1つ又は複数)18中で、上記の空間的に変調された波面の1つ又は複数の部分から放射された光を検出するステップを含むことができる。この光は、金属性上部表面10の部分的に変更された側面の領域25から放射されることがあり、そこでは、部分的に変更された側面の領域が、例えば図1及び2に示すように、規則的なアレイ又は変形部20を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、本方法60は、例えば個々の誘電体ブロック24の金属性上部表面10からの距離dに、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の金属性上部表面10からの個々の領域の距離dに関する異なる空間プロファイルのために、ステップ64及び66を繰り返すステップを含む。そのような実施形態では、誘電体ブロック24、又はフレキシブルな誘電体層24の領域は、MEMSアクチュエータによって、例えば図4〜9のMEMSアクチュエータ28A〜28Cによって配置することができる。
【0074】
本発明は、ここに示した説明、図及び特許請求の範囲を考慮すると、当業者に明らかになるはずの他の実施形態を含むように意図される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン・ポラリトン(SPP:surface plasmon polariton)に基づくデバイス及びそのようなデバイスを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本節は、本発明のよりよい理解を助けることができる態様を紹介する。したがって、本節の説明は、この観点から読むべきであり、何が先行技術に含まれるのか、又は何が先行技術に含まれないのかについて認めるものとして理解すべきでない。
【0003】
全光学的なルータは、受信した光信号を電気信号に中間変換せずに、光学的ルーティングを実施する。最近まで、そのような変換を回避することによって、全光学的なルータは、受信した光信号を中間的な電気信号に変換する従来の非全光学的なルータより迅速に光学的ルーティングを実施することが可能であった。全光学的なルータは、通常、そのような非全光学的なルータより簡単であった。というのは、そのような変換をするためのハードウェアがなかったからである。実際、そのような全光学的なルータは、動作速度がより速く、複雑さがより低いことによって、しばしば非全光学的なルータより好ましいものになっていた。
【0004】
最近、様々なタイプの非全光学的なルータに対する関心が高まってきている。1つのタイプの非全光学的なルータは、表面プラズモン・ポラリトンを使用して、光学的ルーティングを実施する。このタイプの非全光学的なルータには、高速で動作し、かつ製作するのに簡単で安価であるという両方についての可能性がある。具体的には、そのような非全光学的なルータの製作は、主にマイクロエレクトロニクス及び集積光学製作に使用される従来の技術に基づくことができる。
【0005】
また、表面プラズモン・ポラリトンは、表面プラズモンと一般に言われる。表面プラズモンは、伝播する表面電荷密度と付随する電磁波の組み合わせである。表面プラズモンは、金属と誘電体の間の界面に沿って伝播することができ、かつ真空に晒された金属の表面に沿って伝播することができる。表面プラズモンは、そのような界面に沿って、ならびに表面が滑らかであろうと、凹凸があろうとも、及び表面が平坦であろうとも、湾曲していても、そのような表面に沿って伝播することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,027,689号
【特許文献2】米国特許第7,068,409号
【特許文献3】米国特許出願第11/394950号
【特許文献4】米国特許出願第11/514584号
【特許文献5】米国特許出願第11/448,390号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
様々な実施形態によって、表面プラズモン・ポラリトン(SPP:surface plasmon polariton)の噴流を変調するための装置及び方法が提供される。いくつかの実施形態では、SPPの噴流を合焦させる、又はその焦点がぼかされる。いくつかの実施形態は、SPPに付随する電磁場の強さを高めるために使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、金属性表面を有する基板と、構造物と、その金属性の上部表面に対向する誘電物体とを含む装置を特徴とする。構造物は、金属性表面上を伝播するSPPを光学的に生成するように構成される。誘電物体は、金属性表面に沿った、及びその近くの異なる位置のアレイにおいて誘電率の値を調節するように制御可能である。
【0009】
本装置のいくつかの実施形態では、誘電物体は、金属性表面に対向する誘電体層、及びその層に沿って配置された磁気的又は電気的なコントローラを含む。各コントローラは、誘電体層の隣接した部分の誘電率を変更することが可能である。
【0010】
本装置のいくつかの実施形態では、構造物は、金属性表面に沿った変形部の規則的なアレイを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本装置は、MEMSアクチュエータのアレイを含み、誘電物体は、フレキシブルな誘電体層、又は誘電体ブロックのアレイを含む。各MEMSアクチュエータは、層の対応する部分の金属性表面からの距離を、又はブロックの対応するブロックの金属性表面からの距離を変更することが可能である。いくつかのそのような実施形態では、誘電体層の各部分又は誘電体ブロックのそれぞれは、金属性表面の隣になるように移動させることができる。いくつかのそのような実施形態では、本装置は、金属性表面に対向する表面を有する第2の基板を含み、MEMSアクチュエータは、第2の基板上に配置される。
【0012】
いくつかの実施形態では、本装置は、金属性表面に沿った変形部の規則的なアレイを有する第2の構造物を含む。2つの構造物は、互いに共通部がなく、第2の構造物は、第2のアレイに伝播するSPPを光学的に検出するように構成される。
【0013】
第2の態様では、本発明は、方法を特徴とする。本方法は、金属性表面上にSPPの噴流を生成するステップと、生成された噴流の波面を、波面の形状を変えるような方法で空間的に変調するステップとを含む。変調するステップは、波面のそれぞれの第1の部分の伝播速度を、波面のそれぞれの第2の部分の伝播速度に対して減少させるステップを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、変調するステップは、誘電体層の部分又は誘電体ブロックを金属性上部表面により近づけるように、又はそこからより遠く離れるように移動させるために、複数のMEMSアクチュエータを動作させるステップを含む。誘電体層の各部分又は各誘電体ブロックは、表面に沿った、かつ波面に沿った幅が、噴流の波面の幅の1/10より小さくすることができ、又は噴流のSPPの波長より小さくすることができる。動作させるステップは、誘電体層の部分又は誘電体ブロックの金属性上部表面からの距離が、上に凸のプロファイル又は上に凹のプロファイルを有するようにさせるステップを含むことができる。
【0015】
本方法のいくつかの実施形態では、空間的に変調するステップは、噴流を横方向に合焦させるステップ、又は噴流を発散させるステップを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、噴流の空間的に変調された波面の一部分によって放射された光を検出するステップをさらに含む。この光は、金属性上部表面に沿った変形部の規則的なアレイから放射される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】表面プラズモン・ポラリトン(SPP)を生成し、空間的に変調する装置の一部分の平面図である。
【図2】図1の装置の一部分の側面図である。
【図3】図1及び2の装置及びその装置のための例示の制御システムを表すブロック図である。
【図4】SPPの噴流用、例えば図1及び2の装置中で使用するための空間モジュレータの第1の実施形態の1つのMEMSアクチュエータの側面図である。
【図5】図4の空間モジュレータの部分をさらに表す斜投影図である。
【図6】SPPの噴流用、例えば図1及び2の装置中で使用するための空間モジュレータの第2の実施形態の1つのMEMSアクチュエータの側面図である。
【図7】図6のMEMSアクチュエータの移動部分の平面図である。
【図8】SPPの噴流用、例えば図1及び2の装置中で使用するための空間モジュレータの第3の実施形態の1つのMEMSアクチュエータの側面図である。
【図9】図8のMEMSアクチュエータの移動部分の平面図である。
【図10】金−真空及び様々な金−誘導体の界面におけるSPPの分散関係をプロットした図である。
【図11】銀−真空及び様々な銀−誘導体の界面におけるSPPの分散関係をプロットした図である。
【図12】図1〜3の空間SPPモジュレータ中における、金属性上部表面から誘電体層の側面の領域までの距離に関する、又は誘電体ブロックまでの距離に関する、例示の上に凹の空間プロファイルを示す図である。
【図13】図1〜3の空間SPPモジュレータ中における、金属性上部表面から誘電体層の側面の領域までの距離に関する、又は誘電体ブロックまでの距離に関する、例示の上に凸の空間プロファイルを示す図である。
【図14】図1〜3の空間SPPモジュレータ中における、金属性上部表面から誘電体層の側面の領域までの距離に関する、又は誘電体ブロックまでの距離に関する、例示の傾斜した空間プロファイルを示す図である。
【図15】例えば図1〜3の装置、及び例えば図4〜9のMEMSアクチュエータを用いて表面プラズモンを空間的に変調するための1つの方法を概略的に表すフロー・チャートである。
【0018】
図及びテキストでは、同様の参照番号は、実質的に同様の機能及び/又は実質的に同様の構造物に関する特徴を言う。
【0019】
図の中のいくつかでは、外観の相対寸法が、そこに示されている構造物をより明瞭に表すために、誇張されていることがある。
【0020】
本明細書では、様々な実施形態が、図及び「発明を実施するための形態」において、より十分に述べられている。しかし、本発明は、様々な形で実施することができ、図及び「発明を実施するための形態」において述べられる具体的な実施形態に限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び2に、表面プラズモン・ポラリトン(SPP)に基づく装置8を示す。SPPは、基板12の金属性上部表面10に沿って伝播する。基板12は、金属、誘導体又は半導体を含むことができ、上部金属性表面は、平面としてもよい。例示的な基板12は、平面の半導体基板であり、それは、マイクロエレクトロニクス製作に適切であり、例えばシリコン・ウェハ基板である。そのような実施形態では、基板12は、金属上部表面10を形成する上部金属層を含む。様々な実施形態では、金属上部表面10又は金属基板12は、様々な元素金属又は合金金属、例えば金、銀、銅又はアルミニウムから形成することができる。いくつかの実施形態では、金属性上部表面10は、薄膜透明誘電体層(図示せず)によって覆うことができる。
【0022】
装置8は、光SPPカプラ14、空間SPPモジュレータ16及び1つ又は複数のSPP検出器18を含む。金属性上部表面10は、SPPが、光SPPカプラ14、空間SPPモジュレータ16及びSPP検出器18の間を伝播することができるように、これらの間に延在する。光SPPカプラ14、SPPモジュレータ16及び1つ又は複数のSPP検出器18は、金属性上部表面10の互いに共通部がない側面の部分に沿って配置される。
【0023】
光SPPカプラ14は、金属性上部表面10上を伝播する、SPPの噴流を光学的に生成するように構成される。光SPPカプラ14は、光源22及び基板12の部分的に変更された側面の領域23(図1の破線ボックスで示す)を含む。光源22は、部分的に変更された側面領域23中でSPPを光学的に生成し、金属性層12の上部表面に沿って異なる方向に伝播するSPPを生成することができる。
【0024】
ここでは、「SPPの噴流」は、1つ又は複数の表面プラズモン・ポラリトンの伝播コヒーレント・モードを言う。噴流の伝播は、一定位相の波面の空間的シーケンスを画定し、その波面は、平面、円弧状又はより複雑な形状になることがある。光学製品は、しばしば、伝播方向が実質的に良く定められたSPPの噴流を生成するが、光学製品は、その波面が真っすぐでないSPPの噴流を生成することがある。例えば、光SPPカプラ14は、SPPの発散的又は収束的な噴流を生成することがある、すなわち生成用光ビームが発散する、又は収束する光学波面を有する場合、波面が円弧状になる。
【0025】
示した光SPPカプラ14では、部分的に変更された側面領域23は、変形部20の実質的に規則的な1次元(1D)又は2次元(2D)のアレイを含む。変形部20は、例えば、金属性上部表面10中の穴、金属性上部表面10上の隆起部、又は金属性上部表面10上の任意選択の透明誘電体層中の穴とすることができる。変形部20は、実質的に同じ形状及びサイズを有することができ、部分的に変更された領域中に規則的に隔置することができる。
【0026】
示した光SPPカプラ14では、光源22は、光ファイバOFに結合されたレーザ・ダイオードLDを含む。光ファイバOFの一方の端部は、レーザ・ダイオードLDからの光を用いて基板12の部分的に変更された側面領域23を照明するように構成される。光源22は、変形部20の規則的な1次元又は2次元のアレイを、SPPを生成するような方法で、例えば単一光子がその中で単一SPPを生成するような方法で、照明するように構成される。例えば、光ファイバOFの一方の端部は、変形部20の規則的な1次元又は2次元のアレイ上に光を投射する、すなわち金属上部表面10に、垂直ベクトルNに対して斜角θで光を投射するように、方向付けることができる。
【0027】
光SPPカプラ14のための適切な変形部20及び光源22のアレイの例示の実施形態は、米国特許第7,027,689号に述べられており、それは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0028】
代替の実施形態では、光SPPカプラ14は、SPPを光学的に生成するために、異なる構造物を有することができる。例えば、光SPPカプラ14は、その中に欠陥部を有するプラズモン導波路を含むことができる。次いで、光源22は、その導波路の欠陥部においてSPPを光学的に生成する。また、光SPPカプラ14は、金属性上部表面10の部分的に変更された側面領域23中に他の周期的な構造物、例えば交差したワイヤ接合部を含むことができる。次いで、光源22は、その周期的な構造物中でSPPを光学的に生成する。また、光SPPカプラ14は、エバネセント光を生成する光源22を含むことができ、そこでは、エバネセント光は、金属性上部表面10の部分的に変更された側面領域中でSPPを生じる。
【0029】
いくつかの他の実施形態では、金属性上部表面10は、薄膜金属層から形成することができ、そこでは、変形部20は、金属層の底面に沿って配置される。次いで、光源22は、その薄膜金属層の底面を照明することによって、金属性上部表面10上を伝播するSPPを生成することができる。
【0030】
SPPモジュレータ16は、底面が金属性上部表面10に対向し、かつそれに隣接した誘電物体を含む。誘電物体は、移動可能な誘電体ブロック24の1次元又は2次元のアレイを含むことができ、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24(図1には図示せず)を含むことができる。前者の場合、誘電体ブロック24は、そのアレイが、金属性上部表面10のストリップの実質的に完全なカバーを形成するように、接近して隔置される。後者の場合、連続したフレキシブルな誘電体層24が誘電体ブロック24の代わりとなり、したがって、その間のギャプがなくされる。誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24は、その形状が金属性上部表面10の隣接した部分の形状を補完することができる底面を有することができる。例えば、金属性上部表面10の隣接した部分は、平坦とすることができ、そのような誘電体ブロック24の底面は、平坦として上記の隣接した部分に実質的に平行とすることができる。様々な実施形態では、誘電物体24は、様々な形状を有することができ、誘電体ブロック24の異なるブロックは、例えば図1に示すように、異なる形状を有することができる。
【0031】
誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24は、光SPPカプラ14によって生成されたSPPの波長より、例えばそのような波長の2倍以上、厚く、かつ長くすることができる。
【0032】
誘電体ブロック24又はフレキシブルな連続する誘電体層24は、様々な異なる材料組成物を有することができる。例示の材料組成物は、シリカ(SiO2)及び/又はシリコン窒化物(Si3N4)など、通常の誘電体を含む。他の例示の組成物は、強誘電体又は分極性化合物半導体を含むことができる。組成物は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、タングステン酸鉛コバルト(Pb(Co1/2W1/2)O3)、タンタル酸鉛鉄(Pb(Fe1/2Ta1/2)O3)、ニオブ酸鉛マグネシウム(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3)、ニオブ酸鉛亜鉛(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸カリウムストロンチウム、ニオブ酸ナトリウムストロンチウム(NaSr2Nb5O15)、ニオブ酸リチウムカリウムストロンチウム(LiNaSr4Nb10O30)、ニオブ酸ナトリウムバリウム(NaBa2Nb5O15)、ニオブ酸バリウムストロンチウム、ニオブ酸カリウムリチウム(K3Li2Nb5O15)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、又はリン酸カリウム2水素(KH2PO4)とすることができる。また、組成物は、化学式がAlXGa(1−X)N、ZnO、MgXZn(1−X)O、CdXZn(1−X)O、ただし0≦x≦1である、結晶族III〜V又は族II〜VIの半導体とすることができる。また、誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24は、上記に述べた組成物の混合物及び/又はマルチレイヤを含むことができる。
【0033】
誘電体ブロック24のアレイを備えた実施形態では、個々の誘電体ブロック24の位置がMEMS制御される。具体的には、誘電体ブロック24のそれぞれは、対応するMEMSアクチュエータによって、金属性上部表面10から離れるように、及び金属性上部表面10に向けてそれぞれ独立に移動させることができる。例えば、誘電体ブロック24は、それらの底面が金属性上部表面10に接触するように、及びそれらの底面が、金属性上部表面10から、SPP源14によって生成されたSPPの波長に比べてより遠く離れるように配置することができる。個々の誘電体ブロック24の位置は、以下に述べるように、SPPに対する実効誘電率の局所値を決定する。
【0034】
フレキシブルな誘電体層24を備えた実施形態では、誘電体層24の形状がMEMS制御される。具体的には、フレキシブルな誘電体層24の形状は、フレキシブルな誘電体層24の背面全体の上に1次元又は2次元のアレイの形で分散された個々のMEMSアクチュエータによって、変形させることができる。次いで、各MEMSアクチュエータは、フレキシブルな誘電体層24の対応する領域を、金属性上部表面10から離れるように、及び/又は金属性上部表面10に向けて移動させることができる。例えば、誘電体層24の領域は、それらの底面が金属性上部表面10に接触するように、又は、それらの底面が、金属性上部表面10から、SPP源14によって生成されたSPPの波長に比べてより遠く離れるように配置することができる。フレキシブルな誘電体層24の異なる領域の位置は、以下に述べるように、SPPに対する実効誘電率の値を決定する。
【0035】
1つ又は複数のSPP検出器18は、金属性上部表面10上を伝播するSPPを光学的に検出するように構成される。各SPP検出器18は、従来の光検出器26及び基板12の部分的に変更された側面の領域を含む。
【0036】
示したSPP検出器18では、部分的に変更された側面の領域25は、金属性上部表面10において、実質的に規則的な1次元又は2次元のアレイの変形部20(図1の破線ボックスによって示す)を含む。変形部20は、例えば、金属性上部表面10中の穴、金属性上部表面10上の隆起部、又は金属性上部表面10上の任意選択の透明誘電体層中の穴とすることができる。変形部20は、ほぼ同じサイズ及び形状を有することができ、金属性上部表面10の部分的に変更された側面領域25中に一様に分布させることができる。
【0037】
示したSPP検出器18では、各光検出器26は、光ファイバOF及び電子光検出器ELDを含む。光ファイバOFの一方の端部は、基板12の部分的に変更された側面領域25から放射された光を受け取るように構成される。電子光検出器ELDは、光ファイバOFの他方の端部から放出された光を、例えばダイオード検出器を介して検知する。
【0038】
適切なSPP検出器18の例示の実施形態は、米国特許第7,027,689号に述べられており、それは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0039】
代替の実施形態では、SPP検出器18は、異なるタイプの光検出器26を含むことができる。例えば、部分的に変更された側面領域は、金属性上部表面10の他のタイプの周期的な変形部を含むことができる。また、SPP検出器18は、金属性上部表面10上に、又はその近くに配置された感光性ダイオード又はトランジスタとすることができる。
【0040】
図3に、図1及び2の装置8のための制御システム6を示す。制御システム6は、デジタル・データ・プロセッサ2、例えばコンピュータと、デジタル・データ記憶デバイス3、例えばデジタル・データ・メモリと、電気的制御ライン4とを含む。デジタル・データ・プロセッサ2は、制御ライン4を介して送られる電気的制御信号によって、SPPモジュレータ16を制御する。制御信号は、上部金属表面10に沿った、及びその近くの位置において実効誘電率の値を決定する、SPPモジュレータ16の要素の空間アレイを制御する。いくつかの実施形態では、デジタル・データ・プロセッサ2は、図1及び2に示すように、上部金属表面10の上にある誘電体ブロック24の垂直位置、又はフレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない空間領域の垂直位置を制御する。他の実施形態では、デジタル・データ・プロセッサ2は、上部表面10上に配置された誘電体層中の横方向空間分極プロファイルを制御し、そこでは局所分極が、上部金属表面10の近くの誘電率を確定する。デジタル・データ・メモリ3は、SPPモジュレータ16を制御するようにデジタル・データ・プロセッサ2を動作させるための実行可能なプログラムを格納することができ、及び/又は、デジタル・データ・プロセッサ2が、SPPモジュレータ16を動作させて、上部金属表面10の上、及びその近くにおいて実効誘電率の異なる空間プロファイルのセットを生成することが可能になるためのデータを含むことができる。
【0041】
再び図1及び2を参照すると、多くのタイプのアクチュエータを使用して、誘電体ブロック24の垂直運動、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない領域の垂直運動をもたらすことができる。例えば、様々な従来のタイプのマイクロマシン・アクチュエータを誘電体ブロック又はフレキシブルな誘電体層24の領域と一緒に製作する、あるいはそのようなアクチュエータは、誘電体ブロック24に取り付ける、又はフレキシブルな誘電体層24に沿って分布させ、それによって外部制御信号、例えば電気的又は光学的な信号に応答してそれらの垂直移動をもたらすことができる。例示のアクチュエータは、静電気、磁気、圧電、熱膨張又は誘電体ブロック24に移動を与える、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない領域に移動を与えるための方法を使用することができる。
【0042】
様々な従来のマイクロマシニング及びマイクロ加工のプロセスは、そのようなアクチュエータを製作するために使用することができる。従来のプロセスは、層材料の蒸着、表面及びバルク・マイクロマシニング、接着、電気メッキ、層パターニング、層及び/又は強エッチング、及び/又は犠牲層の使用に関連した技術を含むことができる。
【0043】
マイクロ製作された静電気アクチュエータは、マイクロアクチュエータによって制御される誘電体ブロック24の密集したアレイを製作するのに殊に適している。というのは、マイクロ加工に良好な電導性の弾性材料が入手し易いからである。これらの材料は、例えば、ドープされた単結晶シリコン、多結晶シリコン、互換性のある従来の誘電体及び様々な金属を含む。また、これらの材料は、電力損が低い微小アクチュエータを製造することができる。
【0044】
図4及び5に、図1及び2の誘電体ブロック24用、又は代替えとして、図2のフレキシブルな誘電体層24の領域用のそのような静電気の機械的アクチュエータの一実施形態を示す。この実施形態では、各誘電体ブロック24、又はフレキシブルな誘電体層24の領域は、対応するマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS:micro−electro−mechanical system)アクチュエータ28Aによって機械的に移動される。MEMSアクチュエータ28Aは、第1の基板12の金属性上部表面10に対向する第2の基板30の表面に、しっかりと取り付けられる。
【0045】
そのような実施形態では、装置8は、マルチプル・ウェハ基板構造物である。第1のウェハ基板12は、光SPPカプラ14及びSPP検出器(1つ又は複数)18の部分的に変更された領域、ならびに金属性上部表面10を含む。第2のウェハ基板30は、MEMSアクチュエータ28A、ならびに誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体シート24を含む。第1及び第2の基板30及び12は、位置を合わせ、互いに接着させて垂直スタックを形成する。垂直スタックでは、スペーサ領域(図示せず)が、固定の分離間隔で基板30及び12の対向する面を保持する。そのようなマルチプル・ウェハ基板構造物は、当業者に既知である従来のマイクロエレクトロニック加工技術によって、製作することができる。
【0046】
各MEMSアクチュエータ28Aは、復元スプリング32と、固定電極34及び移動可能電極36を有する制御コンデンサとを含む。移動可能電極36は、対応する誘電体ブロック24に、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の対応する領域に、復元スプリング32と一体である金属、誘電体又は半導体のポスト(1つ又は複数)Pによってしっかりと取り付けられる。復元スプリング32の端部は、ポストPによって第2の基板30にしっかりと固定され、他の誘電体ブロック24と対応する移動可能電極36の間を通すことができる。その理由のため、個々のMEMSアクチュエータ28A、及び、例えば誘電体ブロック24は、近接したストリップ状の領域又は広い領域を密にカバーすることができる。すなわち、MEMSアクチュエータ28Aは、接近して詰め込まれた1次元アレイ、又は接近して詰め込まれた2次元アレイを形成するように、分布させることができる。
【0047】
各移動可能電極36は、同じ制御コンデンサの固定電極34に対して、電極34と36の間に制御電圧を印加することによって、移動させることができる。移動可能電極36のその結果得られた運動によって、対応する誘電体ブロック24の底面、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24の対応する領域の底面と、第1の基板12の近傍の金属性上部表面10との間の距離dを変更することができる。すなわち、MEMS制御電圧を使用して、誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域を、空間SPPモジュレータ16中で、隣接した金属性上部表面10に対して互いに独立に配置することができる。
【0048】
図6及び7に、及び図8及び9に、例えば図1及び2に示すような個々の誘電体ブロック24の位置、又は代替えとして誘電体層の個々の領域の位置を制御するのに適した静電気MEMSアクチュエータ28B及び28Cのための、2つの他の形状を概略的に示す。MEMSアクチュエータ28B及び28Cは、付随する誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域を金属表面10に向けて、それらの制御コンデンサ間への電圧の印加に応答して移動する。対照的に、図4及び5のMEMSアクチュエータ28Aは、付随する誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域を金属表面10から離れるように、その制御コンデンサ間へのそのような電圧の印加に応答して、例えば電極34と36の間への電圧の印加に応答して移動する。
【0049】
図6及び7を参照すると、MEMSアクチュエータ28Bは、固定電極34、移動可能電極36、フレキシブルなスプリング・アーム42、支持ポスト44、レバー・アーム46、取り付けプレート48、及び対応する誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域にしっかりと直接接続された取り付けポスト50を含む。MEMSアクチュエータ28Bでは、電極34と36の間への制御電圧によって、フレキシブルなスプリング・アーム42の隣接する端部が、基板30に向かって曲げられる。この運動によって、レバー・アーム46の先端部が反対方向に移動されて、誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域が上部金属表面10により近づくように移動する。
【0050】
そのような運動中の誘電体ブロック24の小さな傾き、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24の領域の小さな傾きは、例えば図8及び9のMEMSアクチュエータ28C中に示すように、取り付けプレート48と基板30上の第2のポストの間に取り付けられた補償用スプリングを追加することによって、なくすことができる。
【0051】
図8及び9を参照すると、MEMSアクチュエータ28Cは、固定電極34、移動可能電極36、フレキシブルなスプリング・アーム42A及び42B、支持ポスト44A及び44B、取り付けプレート48、及び対応する誘電体ブロック24に、又は代替えとして、誘電体層24の対応する領域に接続された取り付けポスト50を含む。MEMSアクチュエータ28Cでは、電極34と36の間への制御電圧によって、フレキシブルなスプリング・アーム42A及び42Bの隣接する端部が、基板30に向かって曲げられる。この運動によって、スプリング・アーム42Bの中心部分が反対方向に移動され、誘電体ブロック24又は誘電体層24の領域が上部金属表面10により近づくように移動する。
【0052】
図4〜9を参照すると、様々なMEMSアクチュエータ28A〜28Cは、そのようなアクチュエータの密集した線形アレイを構築することができるように、十分狭くなるように製作することができる。
【0053】
MEMSアクチュエータ28に適した例示のMEMSアクチュエータ及びそのようなアクチュエータを製造する方法が、例えば米国特許第7,068,409号、Carl J. Nuzman他による2006年3月31日出願の米国特許出願第11/394950号、及びVladimir Aksyuk他による2006年8月31日出願の米国特許出願第11/514584号に述べられている。上記の米国特許及び米国特許出願は、その全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0054】
誘電体層の領域の変位又はアレイの誘電体ブロックの変位を使用する代わりに、代替えとして、図1のSPPモジュレータ16は、その誘電率が電場又は磁場の印加に応答する、制御可能な誘電体層に基づくことができる。例えば、制御可能な層は、ニオブ酸リチウム又は他の分極可能な材料とすることができる。制御可能な誘電体層24は、例えば上部金属性表面10の領域上に配置される。制御可能な誘電体層の異なる領域における分極及び誘電率の関連する値は、近傍の電圧ベース又は磁気ベースの制御構造物、例えば電極が、上記の領域中に生成する電場又は磁場の値によって、決定されることになる。
【0055】
図1〜3及び図4〜9の実施形態では、誘電体ブロック24の垂直配置、又は代替えとして、フレキシブルな誘電体層24の様々な領域の垂直配置によって、空間SPPモジュレータ16中でSPPの速度(例えば位相速度)が決定される。具体的には、SPPは、通常、波動ベクトルkを有し、その大きさkは、分散関係を通じてSPPの周波数ωに関連する。
【0056】
k=(ω/c)・([εm(ω)・εd(ω)]/[εm(ω)+εd(ω)])1/2
したがって、波動ベクトルkの大きさkは、誘電体領域の実効誘電率εd(ω)及びSPPの経路に沿った金属の誘電率εm(ω)の両方によって決定される。各側面領域では、金属性上部表面10の上及びその近くの実効誘電率の値εd(ω)が、波動ベクトルの大きさkに影響を及ぼす、したがってその領域中のSPPの位相速度に影響を及ぼす。
【0057】
同様に、SPPモジュレータ16が上部金属性表面10上に分極可能な誘電体層を含む実施形態では、SPPの波動ベクトルkの大きさは、そのSPPがそれに沿って伝播する上部金属表面の上及びその近くの層の領域中の誘電率の値εd(ω)によって、決定される。
【0058】
図10及び11に、SPPの分散関係が、そのSPPがそれに沿って伝播する界面における誘電体及び金属の実効誘電率の値、すなわちεd(ω)及びεm(ω)によって、変化することを示す。
【0059】
図10に、金の表面における、様々なタイプのSPPの分散関係を示す。具体的には、このグラフに、金/真空界面(交差した灰色ライン)、金/シリカ界面(黒色ライン)、及び金/シリコン窒化物界面(灰色ライン)におけるSPPの分散関係を示す。光に関する分散関係、すなわち破線は、比較の目的で示してある。「伝播するプラズモン」領域中の異なるSPP分散ラインから、同じ周波数、すなわちωの伝播するSPPが、異なる大きさkCの波動ベクトルを有することになるはずであることが明らかである。
【0060】
図11に、銀の表面における、様々なタイプのSPPの分散関係を示す。具体的には、このグラフに、銀/真空界面(交差した灰色ライン)、銀/シリカ界面(黒色ライン)、及び銀/シリコン窒化物界面(灰色ライン)におけるSSPの分散関係を示す。光に関する分散関係、すなわち破線は、比較の目的で示してある。「伝播するプラズモン」領域中の異なるSPP分散ラインから、同じ周波数、すなわちωの伝播するSPPが、異なる大きさkCの波動ベクトル有することになるはずであることが明らかである。
【0061】
図10及び11に、金属−誘電体界面の誘電体側の実効誘電率の値が、金属−誘電体界面に沿ったSPPの位相速度に影響を及ぼすことになることを示す。
【0062】
図1〜3では、空間SPPモジュレータ16が、金属性上部表面10の上及びその近くの領域中の実効誘電率の局所値、すなわちεd(ω)を通じて、SPPの局所速度を変調する。空間SPPモジュレータ16は、例えば、誘電体ブロック24又は誘電体層24の領域の1つ又は複数を、金属性上部表面10により近づけるように、及び/又はそこからより遠く離れるように、例えば図4〜9のMEMSアクチュエータ28A〜28Cを使用して移動させ、それによって、近傍のSPPにおいて見られるように、実効誘電率の値εd(ω)が局所的に変更される。例えば、誘電体ブロック24、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の領域を金属性上部表面10により近づくように(そこからより遠く離れるように)移動させることによって、通常、実効誘電率の値εd(ω)を増加させる(減少させる)。SPP速度が実効誘電率εd(ω)に依存するので、噴流のSPPは、その局所速度が、近傍の誘電体ブロック24の位置に、又は代替えとして誘電体層24の近傍の領域の位置によって、決定されることになる。
【0063】
空間SPPモジュレータ16は、個々の誘電体ブロック24又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の個々の領域の金属性上部表面10からの距離dを介して、図2及び図4〜9に示すように、SPPの局所速度を制御する。その理由のため、空間SPPモジュレータ、そして結局図2の制御システム6は、SPPの噴流中の波面の形状を制御することができる。例えば、誘電体ブロック24の1次元アレイ又はフレキシブルな誘電体層24の領域は、収束レンズ、発散レンズ、あるいはミラー又はプリズムが光ビームの波面を修正する方法に類似した方法で、SPPの噴流の波面を修正するように構成することができる。収束SPPレンズのための構成では、制御システム6は、上部金属表面10と、誘電体ブロック24の底部、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない領域の底部との間の距離dが、図12及び13にプロットされた距離プロファイルの一方を定性的に有するように、空間SPPモジュレータ16を設定する。発散SPPレンズのための構成では、制御システム6は、上部金属表面10と、誘電体ブロック24の底部、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない領域の底部との間の距離dが、図12及び13にプロットされた距離プロファイルの他方を定性的に有するように、空間SPPモジュレータ16を設定する。すなわち、上に凸の距離プロファイル及び上に凹の距離プロファイルの一方は、収束SPPレンズを形成し、これら2つの距離プロファイルの他方は、発散SPPレンズを形成する。SPP合焦タイプと距離dに関するプロファイル・タイプ、例えば上に凸、又は上に凹のプロファイル・タイプとの間の具体的な対応は、上記に述べたSPP分散関係から分かり得る。SPPミラー又はプリズムのための構成では、制御システム6は、上部金属表面10と、誘電体ブロック24の底部、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の互いに共通部がない領域の底部との間の距離dが、図14にプロットされた距離プロファイルを定性的に有するように、SPPモジュレータ16を設定する。すなわち、傾斜ラインのプロファイル、すなわち右側に下がるように傾く、又は左側に下がるように傾くプロファイルは、金属表面10に沿って、入射伝播方向に対してSPPの入射噴流の方向を左側に、又は右側に変えるために、使用することができる。方向変更角度の値は、プロファイルを画定する傾斜ラインの方向付けによって決定され、SPP分散関係から決定することができる。
【0064】
SPPモジュレータ16の他の構成では、例えば、傾斜プロファイルと上に凸のプロファイル、又は上に凹のプロファイルの1つ又は複数とを組み合わせて、同時にSPPの入射噴流の方向を向け直し、その焦点を定め直すことができる。
【0065】
さらに、いくつかの実施形態では、空間SPPモジュレータ16の制御システム6によって、1つの構成から他の構成へ、その間で誘電体ブロック24、又は代替えとして誘電体層24の領域を移動させることを可能とすることができる。例えば、制御システム6は、図12の距離プロファイルに、又は図13の距離プロファイルになるように距離プロファイルを調節することによって、空間SPPモジュレータ16が、収束SPPレンズ又は発散SPPレンズのどちらとしても機能することを可能にすることができる。その理由のため、SPPモジュレータ16のそのような実施形態は、その中の誘電体ブロック24、又は誘電体層24の領域の横方向寸法が、金属性上部表面10に沿ったSPPの入射噴流の幅に比べて小さいという条件で、SPPの入射噴流を合焦させる、及びその焦点をぼかすということの間で切り替えるように、動作させることができる。そのような実施形態では、誘電体ブロック24は、通常、光SPPカプラ14によって生成されたSPP噴流の、金属性上部表面10に沿った幅に、例えばその噴流中のSPPの波長より小さい幅に比較して、小さい横方向寸法を有することができる。実際、誘電体ブロック24のこの横方向寸法は、5ミクロンメーター又はそれより小さくする、2ミクロンメーター又はそれより小さくする、1ミクロンメーター又はそれより小さくする、0.5ミクロンメーター又はそれより小さくさえすることができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、制御システム6は、上部金属表面10の上で、及びその近くで、実効誘電率のさらに他の空間プロファイルを生成することができる。制御システム6は、SPPモジュレータ16の隣接した要素の互いに共通部がない群、例えば隣接した誘電体ブロック24の互いに共通部がない群を局所動作ユニット(LOU:local operating unit)として動作させることによって、SPPの噴流の波面の位相及び振幅の両方をほぼ空間的に変調することさえできる。次いで、1つのLOUの要素によって処理される波面の横方向部分が、波面のその部分の局所的な振幅及び位相変調を生成するように、互いに干渉する。そのようなLOUは、ミラーのLOUが、Girsh Blumbergによる2006年6月6日出願の米国特許出願第11/448,390号に記載されている再構成可能なミラー・アレイの形で動作させられるのと同様に、動作させることができるはずである。この米国特許出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0067】
図15に、例えば図3の制御システム6を備えた図1及び2の装置8を動作させるために、SPPの噴流を使用する方法60を示す。
【0068】
この方法60は、金属性上部表面に沿ってSPP噴流を生成するステップ(ステップ62)を含む。例えば、SPP噴流は、図1及び2に示すように、金属性上部表面10上の光SPPカプラ14によって、光学的に生成することができる。
【0069】
本方法60は、生成されたSPP噴流の波面を、波面の形状を変更するような方法で、空間的に変調するステップ(ステップ64)を含む。空間的に変調するステップ62は、SPP噴流の各波面のいくつかの部分の位相又は伝播速度を、同じ波面の他の部分の位相又は伝播速度に対して、相対的に減少させるステップを伴う。例えば、そのような相対速度の差は、図1〜3の空間SPPモジュレータ16の誘電体ブロック24の異なるブロックの底面、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の異なる領域の底面を金属性上部表面10からの異なる距離に配置することによって、生成することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ステップ64は、例えば図12のような上に凹の形、例えば図13のような上に凸の形を有する距離dに関する空間プロファイル、又は他の形状のプロファイルを生成するために、誘電体ブロック24、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の異なる領域を配置するステップを伴う。その結果得られたプロファイルの形は、SPP噴流を合焦させる、又はSPP噴流の焦点をぼかすことができる。実際、いくつかの実施形態は、そのような合焦を生じさせて、SPP噴流に関連する電磁場の強度を増加させることができる。
【0071】
他の実施形態では、ステップ64は、表面においてSPP噴流を効率的に反射させるように、誘電体ブロック24又はフレキシブルな誘電体層24の領域を配置するステップを伴う。
【0072】
本方法60は、ステップ64において生成されたSPP噴流の空間的に変調された波面の1つ又は複数の部分を検出するステップを含む(ステップ66)。検出するステップは、図1及び2のSPP検出器(1つ又は複数)18中で、上記の空間的に変調された波面の1つ又は複数の部分から放射された光を検出するステップを含むことができる。この光は、金属性上部表面10の部分的に変更された側面の領域25から放射されることがあり、そこでは、部分的に変更された側面の領域が、例えば図1及び2に示すように、規則的なアレイ又は変形部20を含む。
【0073】
いくつかの実施形態では、本方法60は、例えば個々の誘電体ブロック24の金属性上部表面10からの距離dに、又は代替えとしてフレキシブルな誘電体層24の金属性上部表面10からの個々の領域の距離dに関する異なる空間プロファイルのために、ステップ64及び66を繰り返すステップを含む。そのような実施形態では、誘電体ブロック24、又はフレキシブルな誘電体層24の領域は、MEMSアクチュエータによって、例えば図4〜9のMEMSアクチュエータ28A〜28Cによって配置することができる。
【0074】
本発明は、ここに示した説明、図及び特許請求の範囲を考慮すると、当業者に明らかになるはずの他の実施形態を含むように意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属性表面を有する基板と、
該金属性表面上を複数の異なる方向に伝播する表面プラズモン・ポラリトンを光学的に生成するための構造物と、
該金属性表面に対向する表面を有する誘電物体であって、該表面プラズモン・ポラリトンの波面に沿って横方向に誘電率の空間的なプロファイルを変化させるように、該金属性表面に沿って且つ該金属性表面の近くに位置する異なる位置のアレイにおいて該誘電率の値を個々に調節するように制御可能である誘電物体とを含み、
該構造物は、該金属性表面に沿った変形部の規則的なアレイを含む装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
該誘電物体は、該金属性表面に対向する誘電体層と、該誘電体層に沿って配置された磁気的又は電気的なコントローラとを含み、
各コントローラは、該空間的なプロファイルを変化させるために該誘電体層の隣接した部分の誘電率を変更することが可能である装置。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか1項に記載の装置において、
MEMSアクチュエータのアレイをさらに含み、
該誘電物体は、フレキシブルな誘電体層又は誘電体ブロックのアレイを含み、
各MEMSアクチュエータは、該誘電体層の対応する部分又は該ブロックの対応するブロックの該金属性表面からの距離を変更することが可能である装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
該誘電物体は、該構造物によって生成された表面プラズモン・ポラリトンの噴流の波面に沿った複数の位置において、実効誘電率の値を調節するように動作させることができる装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、
複数のMEMSアクチュエータの1つのアレイをさらに含み、
該誘電物体は、誘電体ブロックのアレイを含み、
各MEMSアクチュエータは、該誘電体ブロックの対応するブロックの該金属性表面からの距離を変更することが可能である装置。
【請求項6】
金属性表面上に表面プラズモン・ポラリトンの噴流を生成するステップと、
該生成された表面プラズモン・ポラリトンの噴流の波面を、該波面の形状を変えるような方法で空間的に変調するステップとを含み、
該変調するステップは、該波面のそれぞれの第1の部分の伝播速度を、該波面のそれぞれの第2の部分の伝播速度に対して減少させるステップを含み、
該変調するステップは、該金属性表面により近づくように、又は該金属性表面からより遠くなるように誘電体層の部分又は誘電体ブロックを移動させるように、複数のMEMSアクチュエータを動作させるステップを含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
該複数のMEMSアクチュエータを動作させるステップは、該誘電体層の部分又は該誘電体ブロックを移動させるステップを含み、
該誘電体層の部分のそれぞれ、又は該誘電体ブロックのそれぞれは、該表面及び該波面に沿った幅を有し、
該幅は、該噴流の該表面プラズモン・ポラリトンの波長より小さい方法。
【請求項8】
請求項6又は7の何れか1項に記載の方法において、
該噴流の該空間的に変調された波面の一部分から放射された光を検出するステップをさらに含み、
該光は、該金属性表面に沿った変形部の規則的なアレイから放射される方法。
【請求項1】
金属性表面を有する基板と、
該金属性表面上を複数の異なる方向に伝播する表面プラズモン・ポラリトンを光学的に生成するための構造物と、
該金属性表面に対向する表面を有する誘電物体であって、該表面プラズモン・ポラリトンの波面に沿って横方向に誘電率の空間的なプロファイルを変化させるように、該金属性表面に沿って且つ該金属性表面の近くに位置する異なる位置のアレイにおいて該誘電率の値を個々に調節するように制御可能である誘電物体とを含み、
該構造物は、該金属性表面に沿った変形部の規則的なアレイを含む装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
該誘電物体は、該金属性表面に対向する誘電体層と、該誘電体層に沿って配置された磁気的又は電気的なコントローラとを含み、
各コントローラは、該空間的なプロファイルを変化させるために該誘電体層の隣接した部分の誘電率を変更することが可能である装置。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか1項に記載の装置において、
MEMSアクチュエータのアレイをさらに含み、
該誘電物体は、フレキシブルな誘電体層又は誘電体ブロックのアレイを含み、
各MEMSアクチュエータは、該誘電体層の対応する部分又は該ブロックの対応するブロックの該金属性表面からの距離を変更することが可能である装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において、
該誘電物体は、該構造物によって生成された表面プラズモン・ポラリトンの噴流の波面に沿った複数の位置において、実効誘電率の値を調節するように動作させることができる装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、
複数のMEMSアクチュエータの1つのアレイをさらに含み、
該誘電物体は、誘電体ブロックのアレイを含み、
各MEMSアクチュエータは、該誘電体ブロックの対応するブロックの該金属性表面からの距離を変更することが可能である装置。
【請求項6】
金属性表面上に表面プラズモン・ポラリトンの噴流を生成するステップと、
該生成された表面プラズモン・ポラリトンの噴流の波面を、該波面の形状を変えるような方法で空間的に変調するステップとを含み、
該変調するステップは、該波面のそれぞれの第1の部分の伝播速度を、該波面のそれぞれの第2の部分の伝播速度に対して減少させるステップを含み、
該変調するステップは、該金属性表面により近づくように、又は該金属性表面からより遠くなるように誘電体層の部分又は誘電体ブロックを移動させるように、複数のMEMSアクチュエータを動作させるステップを含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
該複数のMEMSアクチュエータを動作させるステップは、該誘電体層の部分又は該誘電体ブロックを移動させるステップを含み、
該誘電体層の部分のそれぞれ、又は該誘電体ブロックのそれぞれは、該表面及び該波面に沿った幅を有し、
該幅は、該噴流の該表面プラズモン・ポラリトンの波長より小さい方法。
【請求項8】
請求項6又は7の何れか1項に記載の方法において、
該噴流の該空間的に変調された波面の一部分から放射された光を検出するステップをさらに含み、
該光は、該金属性表面に沿った変形部の規則的なアレイから放射される方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−65053(P2013−65053A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−3183(P2013−3183)
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2010−533066(P2010−533066)の分割
【原出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月11日(2013.1.11)
【分割の表示】特願2010−533066(P2010−533066)の分割
【原出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】
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