表面レリーフ微細構造、関連するデバイスおよびそれらを作製する方法
本発明は、パターン化された表面レリーフ微細構造を複製するための方法であって、パターン化された表面レリーフ微細構造を持つ第一の層を生成する工程と、第一の層の微細構造を第二の層に複写し、それにより、少なくとも一つのドライまたはウェットエッチング工程を伴うことにより、マスタを生成する工程とを含み、マスタの微細構造をレプリカ材料に接触させ、マスタの微細構造をレプリカに再現する、追加的な工程を特徴とする、方法に関する。本発明は、さらに、その方法により、レプリカとして作製された要素に関する。表面レリーフ微細構造は、ポジティブ−ネガティブおよび/または色イメージ反転を持つイメージを表示するために好適である。本発明による要素は、特に、偽造および改ざんに対して文書および物品を保全するために有効である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン化された表面レリーフ微細構造のレプリカを作るための方法に関する。本発明は、さらに、その方法により、レプリカとして作製された要素に関する。本発明による要素は、特に、偽造および改ざんに対して文書および物品を保全するために有効である。
【0002】
発明の背景
偽造、違法な改変に対する保護および製品保護のための光学デバイスの使用は、概して、現在、よく確立された技術である。
【0003】
不正行為および偽造品の増加に起因して、新規な偽造品防止対策が常に要求されている。多くの年にわたり、ホログラムが好ましいセキュリティテクノロジであった。ただし、このテクノロジは、30年超の歳月を経ており、そのため、周知かつ普及している。今日、ギフトショップ毎にホログラム用ホイルを見ることさえできる。多くの人がホログラムテクノロジへのアクセスを有するため、この状況は、セキュリティリスクを表している。
【0004】
したがって、ホログラム用デバイスとは明らかに区別される、新規なセキュリティフィーチャにより、セキュリティデバイスの品目を拡張することが最も望ましい。そのような新しいデバイスの例は、代替の光学的可変デバイス(OVD)である。OVDは、視角度または照射角度が変化するにつれ、その外観、例えば、輝度、コントラストまたは色を変化させるデバイスである。主要な代表的色シフトOVDは、コレステリックまたは干渉フィルムであり、そのようなフィルムの薄片に基づく光学デバイスを包含する。両方とも、デバイスが垂直な視認角度から離れて傾斜するにつれ、明確な色シフトを呈する。
【0005】
薄膜光学フィルムにおける光の干渉に起因する色シフト作用は、現代の薄膜フィルム部品の歴史で長い伝統を有する(例を挙げると、J. A. Dobrowolski、「Optical thin-film security devices」、「Optical Document Security」、R. L. van Renesse編、Artechouse Boston、1998)。層状の薄膜フィルム系の多くの異なる組成物が可能である。投射角度が増加するにつれ、反射または透過スペクトルが短波長側に向かってシフトする。多くの場合、誘電体層および金属性層の組み合わせである、多層薄膜フィルム系は、誘電体材料のみでも可能である。この場合は、異なる屈折率の薄膜フィルムが要求される。
【0006】
今日、薄膜干渉フィルムまたはそのようなフィルムの薄片のいずれかに基づくセキュリティデバイスが市販されている。例は、一例として、米国特許第5084351号に見ることができる。
【0007】
他の手法は、散乱デバイスである。OVDにおける等方性およびなおより異方性の散乱作用の使用により、光学の魅力を有意に強化することができる。ことさらに、異方性光散乱は、視角度反応デバイスを生成するための有用な手段である。図1.1および1.2は、それぞれ、等方性および異方性光散乱を図示する。
【0008】
等方的に構造化された表面、例えば、新聞用紙または家庭用物品で生じるほとんどの表面における反射では、方位角方向がないことが好ましい。図1.1に指示するように、コリメート入光1は、散乱表面2で新しい出射方向3に誘導され、特徴的な軸対称性出力光分布および特徴的な発散角度4となる。
【0009】
異方的に構造化された表面は、しかし、明確な方式で特定の方向に光を反射し、他の方向については光を抑制する。図1.2では、コリメート入光1は、異方的に散乱させる表面5に衝突し、新しい出射方向6に誘導され、対応する方位角角度8、8´に依存する、特徴的な出力光分布7となる。
【0010】
本発明の文脈では、異方性方向という用語は、層の平面内の局所的な対称軸、例として、微細構造の溝またはくぼみに沿った方向を意味するものとする。
【0011】
図2の方向10、11など、局所的に相違する異方性方向を持つ異方性構造のパターンを表面が含む場合、その後、パターンの個別の領域は、入光を異なる方向に反射する。その後、斜めからの観察または斜行する入射光を使用することにより、パターンを認識することができる。
【0012】
パターン化された異方性を持つ異方性散乱フィルムを生産する公知の方法は、参照により内容が本明細書に組み込まれる、国際特許出願である国際公開公報第01/29148号に記載されている。方法では、いわゆるモノマーコルゲーション(monomer corrugation, MC)テクノロジを使用する。それは、基材に適用された特殊混合物またはブレンドの相分離が架橋、一例として、紫外線放射への暴露によって誘起されるという事実に依拠している。非架橋部品のその後の除去により、具体的な表面トポロジを持つ構造が残る。MC層という用語は、このテクノロジによって準備された層に使用される。下部のアライメント層のアライメントにより、トポロジを異方性にすることができる。パターン化されたアライメント層を使用することにより、パターン化された異方的に散乱させる表面トポロジをもたらすことが可能である。
【0013】
国際公開公報第2006/007742号では、特定の観察角度下でパステル色付きの外観を生成する、修正されたMC層および層構造を作るための方法を開示している。
【0014】
国際公開公報第07/131375号では、第一に、微細構造のイメージを含むマスクを生産し、その後、第二の工程でイメージを樹脂またはレジストに複写し、光学的に効果的な表面レリーフ微細構造を生成することにより、光学的に効果的な表面レリーフ微細構造を生成するための方法を開示している。国際公開公報第07/131375号の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。国際公開公報第07/131375号に開示されている方法の欠点として、プロセス工程数が高く、製造時間を増加させるのみでなく、生産歩留まりも低減させる。
【0015】
発明の概要
本発明の目的は、表面レリーフ微細構造のレプリカを製造するための簡易な方法を提供することがである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、表面レリーフ微細構造を複製するためのマスタを提供することである。
【0017】
本発明のまたさらなる目的は、本発明によるマスタを使用して、複製によって作られた表面レリーフ微細構造を持つ、要素を提供することである。
【0018】
好ましくは、複写された表面レリーフ微細構造が光学的に効果的であり、表面レリーフ微細構造に依存して、入光が特徴的な方式で変調されることを意味するものとする。より好ましくは、光との相互作用で光が回折、屈折または散乱する。
【0019】
本発明は、パターン化された表面レリーフ微細構造を複製するための方法であって、:
− パターン化された表面レリーフ微細構造を持つ第一の層(21)を、第二の層の上部に生成する工程であって、第一の層が第一の材料を含み、第二の層が第二の材料を含む、工程と、
− 第一の層の微細構造を第二の層に複写し、それにより、少なくとも一つのドライまたはウェットエッチング工程を伴うことにより、マスタを生成する工程と
を含み、
− マスタの微細構造をレプリカ材料に接触させ、マスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルでマスタの微細構造をレプリカ材料に再現する、追加的な工程を特徴とする、
方法を提供する。
【0020】
マスタのレプリカは、マスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルを有する。マスタのレプリカをマスタ(子マスタ)として使用し、さらなるレプリカを生成することもできる。本発明の文脈では、レプリカのレプリカは、より高次のレプリカと呼ばれる。本発明の文脈では、マスタは、複製プロセスでレプリカを作製するために使用することができ、とりわけ、第二の層に生成された直接的な複写と、任意のレプリカまたはそのより高次のレプリカとを包含する、表面レリーフ微細構造を含むデバイスである。
【0021】
本発明の好ましい方法によると、レプリカを子マスタとして使用し、子マスタをレプリカ材料に接触させ、子マスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルで子マスタの微細構造をレプリカ材料に再現することにより、パターン化された表面レリーフ微細構造を複製する。
【0022】
本発明のもう一つの好ましい方法によると、より高次のレプリカが子マスタとして使用される。
【0023】
本発明の文脈では、参照表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルは、その深さプロファイルが参照表面レリーフプロファイルの補完であることを意味するものとする。これは、例として、逆の表面レリーフのくぼみが参照表面レリーフの隆起に対応し、逆の表面レリーフの隆起が参照表面レリーフのくぼみに対応することを意味する。
【0024】
表面レリーフ微細構造を第一の層から第二の層に複写する方法は、一つ以上のドライまたはウェットエッチングプロセス工程を含む。
【0025】
エッチング工程の一つにおいて、表面レリーフ微細構造の下方ゾーン(くぼみ)の材料が取り除かれ、下部の第二の層の部分が解放されるまで、第一の層の厚さを減少させる。その後のエッチング工程では、先行するエッチング工程中に解放されたそれらの部分において、第二の層がエッチングされる。材料およびプロセス条件が適正に選択されている場合、第一および第二の層のエッチングを単一のエッチング工程で実施することができる。
【0026】
好ましくは、第一および第二の材料が同一ではない。
【0027】
例えば、コーティング、プリント、浸漬、蒸着、スパッタリング、鋳造、無電解めっきまたは電気めっきの方法により、複写された微細構造(マスタ)にレプリカ材料を適用することができる。複写された微細構造にレプリカ材料を適用する代わりに、複写された微細構造(マスタ)をエンボス加工ツールとして使用し、レプリカ材料に微細構造をエンボス加工することができる。
【0028】
本発明によるマスタを使用することにより、標準的な複製技法を適用し、表面レリーフ微細構造を持つ光学要素を適切なコストで大量製作することが可能である。今日、二つの一般的かつコスト効果的な複製技法は、UVエンボス加工およびホットエンボス加工である(一例として、M. T. Gale:「Replication techniques for diffractive optical elements」、Microelectronic Engineering、Vol. 34、321ページ(1997)を参照されたい)。
【0029】
複製プロセスでは、マスタのレリーフとは逆のレリーフをレプリカの表面に生成する。複製プロセスが終了した後、レプリカをマスタから分離する。レプリカを本発明による光学要素として使用することができるか、それ自体、レプリカを作製するためのマスタ(子マスタ)として使用することができる。子マスタは、オリジナルマスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルを呈する一方、子マスタのレプリカは、オリジナルマスタと同じ表面レリーフプロファイルを示す。
【0030】
本発明は、さらに、本発明の方法によるレプリカとして作られた、パターン化された表面レリーフ微細構造を含む、光学要素を提供する。
【0031】
国際公開公報第07/131375号に開示されている方法とは対照的に、本発明による方法は、マスタを生成するためのマスクの生産を除外する。それゆえに、プロセス工程数が低減し、よって、生産歩留まりが増加する。
【0032】
本発明の好ましい実施態様によると、レプリカは、電気めっきによって生成される。
【0033】
本発明のもう一つの態様によると、本発明の方法によって作られた、表面レリーフ微細構造を複製するためのマスタが提供される。
【0034】
本発明の文脈では、「微細構造の複写」という用語ならびに「複写」という用語は、先の方法に関するとき、主に、二次元横構造を指し、オリジナルおよび複写された微細構造が完全に同一であることを必ずしも意味しない。これは、例として、オリジナルおよび複写された微細構造において、対応する上部レベル(隆起)および下方レベル(くぼみ)の横距離がほぼ同じであることを意味する。しかし、概して、複写された微細構造の深さは、オリジナル微細構造の深さと同一ではない。なおも本発明の効果として、多様なプロセスパラメータにより、複写された微細構造の深さを調整することができ、かつ、制御することができる。優先的には、複写された微細構造の深さがオリジナル微細構造の深さよりも大きい。複写プロセスでは、そのため、好ましくは、微細構造の深さプロファイルを拡大する。
【0035】
本発明の文脈では、パターン化された表面レリーフ微細構造は、その微細構造が相違する、少なくとも二つの領域を持つ表面にパターンがあることを意味するものとする。パターンは、微細構造を持つ領域および持たない領域からなることもできる。例として、単純なパターンは、微細構造を持たない領域と、微細構造を持つもう一つの領域とを有するものであろう。概して、パターンの領域間の差異は、微細構造と光との異なる相互作用を引き起こす、微細構造における任意の物理的な差異であることができる。例として、差異は、微細構造の深さ、微細構造の横密度、微細構造の周期性、微細構造の異方性、異方性軸の方向に起因していることができる。パターン領域の先の特性の任意の組み合わせも可能である。例として、等方性微細構造を有する一つの領域と、第一の異方性軸を持つ異方性微細構造を有する、もう一つの領域と、第二の異方性軸を持つ異方性微細構造を有する、もう一つの領域とがあることができ、またもう一つの領域が微細構造を有さないことができる。微細構造は、等方性または異方性であることができる。本発明の好ましい実施態様では、異方性微細構造を含む、パターンの少なくとも一つの領域がある。
【0036】
パターンは、任意の種類の情報、例えば、例として、イメージ、文字、数、バーコード、図画、マイクロテキスト、グラフィック部品、指紋プリント、暗号化情報、ホログラム用データ、デジタルデータおよびその任意の組み合わせを表すことができる。
【0037】
微細構造は、周期的または非周期的であることができる。本発明の好ましい実施態様では、微細構造が非周期的である、少なくとも一つの領域をパターンが含む。
【0038】
非周期的または非決定性表面プロファイルを特徴付けるための有用なパラメータは、自己相関関数および関連する自己相関長さである。表面プロファイルの一次元または二次元自己相関関数は、平面において距離xで空間的に分離した二つの点について、表面プロファイルの予測可能性の尺度として理解することができる。
【0039】
例えば、表面レリーフ微細構造プロファイルの関数P(x)の自己相関関数AC(x)は、
【数1】
として画定される。
【0040】
自己相関関数および対応するプログラミング問題のより詳細は、例を挙げると、「Numerical recipes in C:the art of scientific computing/William H. Press;Saul A. Teukolsky;William T. Vetterling;Brian P. Flannery.−Cambridge;New York:Cambridge University Press、1992」に見ることができる。
【0041】
非周期的または非決定性表面プロファイルでは、xの増加とともに自己相関関数が急速に減衰する。他方、一例として、格子に見られる決定性表面プロファイルでは、自己相関が減衰しない。格子の場合は、自己相関関数は、しかし、周期的な関数で変調される。おおよそ周期的な格子でも、xの増加とともに包絡線が減衰する。
【0042】
一次元自己相関関数を活用して、単一の特徴的な数である自己相関長さLを画定することができる。自己相関長さLは、自己相関関数の包絡線が特定の閾値まで減衰する長さである。本趣旨のため、閾値は、AC(x=0)の10%が好適であることが証明された。
【0043】
本発明の好ましい実施態様によると、パターンは、表面レリーフ微細構造を持つ少なくとも一つの領域を含み、少なくとも一つの領域は、包絡線を有する平均化された一次元自己相関関数AC(x)を少なくとも一つの方向において有し、一次元自己相関関数は、自己相関長さ内でx=0でACの10%まで減衰し、自己相関長さは、上部および下部区域の隣接する移行部間の平均横距離の三倍よりも小さい。異方性表面変調では、一つの方向が異方性軸に垂直である。
【0044】
より好ましいのは、自己相関長さが上部および下部区域の隣接する移行部間の平均横距離の二倍よりも小さい、表面レリーフ微細構造である。なおより好ましいのは、自己相関長さが上部および下部区域の隣接する移行部間の一つの平均横距離よりも小さい、表面レリーフ微細構造である。
【0045】
もう一つの好ましい実施態様では、自己相関長さ(L)が上部および下部区域の隣接する移行部間の平均横距離の百分の一を上回る。
【0046】
本発明のまたもう一つの好ましい実施態様では、パターンは、異方性軸の異なる方向を持つ異方性微細構造の領域を含む。所与の方向の光は、具体的な局所的配向に依存して反射または抑制されるため、本発明により、レプリカとして作製された光学要素では、明および暗画素のイメージを参照することができる。追加して、そのような要素は、傾斜または回転したときに、ポジティブからネガティブへの視認の明確な変化を呈する。そのようなパターン化された表面要素は、白黒からだけでなく、グレースケールイメージからも作製することができ、例として、以降のように生成することができる。グレースケールイメージの場合は、グレースケールイメージを白黒イメージに転換するため、第一に、イメージがラスタ化され、すなわち、特定の画素解像度を持つ暗および明ゾーンにイメージが分割される。その後、白黒イメージの暗ゾーンは、第一の配向方向の異方的に散乱させるゾーンを原因とし、明ゾーンは、例を挙げると第一の配向方向に垂直である、異なる配向方向を持つ、異方的に散乱させるゾーンを原因とする。このように配置された画素のパターンを持つ要素は、第一の視角度下でポジティブとして現れ、例を挙げると、デバイスが90°回転するにつれ、ネガティブに反転する。
【0047】
あるいは、デジタル処理された各グレー値に個別の配向方向を割り当てるため、グレースケールイメージを多数のグレー値でデジタル処理することができる。デジタル処理されたグレー値の代わりに、連続的なグレースケールを連続的に変動する配向方向に変換することができる。
【0048】
本発明のまたもう一つの好ましい実施態様によると、パターンが、下部区域から上部区域および上部区域から下部区域への移行部の表面変調を持つ領域を含み、表面領域の(第一の)横方向において、20マイクロメートル毎内に(平均で)少なくとも一つの上部区域から下部区域またはその反対の移行部があり、好ましくは、追加的に、第一の方向に垂直である、表面領域の第二の横方向において、200マイクロメートル毎内に平均で少なくとも一つの上部区域から下部区域またはその反対の移行部がある。
【0049】
好ましい実施態様では、パターンは、第一の横方向において、上部区域から下部区域またはその反対の隣接する移行部間の平均横距離が0.5マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲に位置する、領域を含む。有利には、平均横距離は、0.5マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲に位置する。有利には、第一の横方向に垂直である第二の横方向において、上部区域から下部区域の移行部間の平均距離が100マイクロメートル未満であり、より有利には、50マイクロメートル未満である。
【0050】
異方性表面レリーフ構造を記載するため、表面レリーフアスペクト比(SRAR)という用語は、この発明の文脈について、異方性表面レリーフパターンの平均長さ対幅比として画定される。SRARは、表面レリーフ微細構造で散乱した光の方位角光学外観を強く決定付ける。少なくとも二つの横方向において、平均で同じ拡張を呈する表面レリーフパターンに対応するSRAR=1では、入射光の散乱特性は、光の方位角入射角度とほぼ無関係である。そのため、SRAR=1であるレリーフ微細構造の表面から反射した光の強度は、表面レリーフ微細構造を含有する要素が、要素の表面に垂直な軸に沿って回転したときに、ほぼ変化しない。
【0051】
SRAR>1を意味する異方性レリーフ構造では、反射した光の強度は、光の方位角投射角度に依存する。この方位角入射角度への依存を視覚的に認識することができるようにするため、SRARは、1.1よりも大きいべきである。異なる異方性軸を持つ表面レリーフ構造のパターンのイメージセットアップの可視コントラストを増加させるため、2よりも大きいSRAR値が好ましい。なおより好ましいのは、5よりも大きいSRAR値である。
【0052】
非常に大きいSRAR値では、有意な量の光が散乱する方位角角度の範囲がより小さくなり、表面レリーフパターンで作製されたイメージから反射した光を認識することがより困難になる。そのため、好ましくは、SRARが50未満であり、より好ましくは、SRARが20未満である、少なくとも一つの領域がある。
【0053】
本発明の文脈では、「表面レリーフ曲線因子」という用語は、すべての上部およびすべての下部区域上の合計領域に対する上部区域の総領域の比として画定される。好ましくは、表面レリーフ曲線因子が0.050〜0.95の範囲、より好ましくは、0.2〜0.8の範囲、なおより好ましくは、0.3〜0.7の範囲に位置する、少なくとも一つの領域がある。
【0054】
第一の工程で第一の層のみがエッチングされ、第二のエッチング工程のみが第二の層に影響する、二工程エッチングプロセスを使用して、第一の層から第二の層に表面レリーフ微細構造を複写する場合、複写プロセスでは、第一の層の深さプロファイルにある種のデジタル処理を行う。理由は、第一の層で取り除かれたそれらの部分では、第二の層のみのエッチングが発生することである。第二の層のエッチング速度は、それらの各部分と同じであることから、第二の層に複写された構造の深さは、ほぼ至る所で同じである。この結果、上部水平域および下部水平域である、主に二つの水平域を持つ微細構造となる。異なる領域に異なる深さを持つ微細構造を生成した場合、異なる水平域があることができる。
【0055】
本発明の文脈では、水平域は、構造の高さが構造の中間深さの20%未満で変動する、微細構造内の領域として画定されるものとする。
【0056】
本発明の好ましい実施態様によると、第二の層に複写された表面レリーフ微細構造の上部区域(隆起)は、実質的に同じ上方高さレベルに位置する上方水平域を形成し、第二の層に複写された表面レリーフ微細構造の下部区域(くぼみ)は、実質的に同じ下方高さレベルに位置する下方水平域を形成し、レリーフ変調深さが表面領域にわたって実質的に等しい。実質的に、同じ上方および下方高さレベルは、上方および下方水平域の高さ変動が表面レリーフ微細構造の中間深さの20%未満であり、好ましくは、10%未満であり、なおより好ましくは、5%未満であることを意味するものとする。
【0057】
本発明のまたもう一つの態様によると、マスタを使用してレプリカとして作られた、パターン化されたレリーフ微細構造を含む、光学要素が提供される。
【0058】
好ましくは、本発明による光学要素は、少なくとも部分的に反射性である。本発明による光学要素は、そのため、好ましくは、材料、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロムまたは顔料を使用した、反射性または部分的に反射性の層を含む。反射性または部分的に反射性の層は、さらに、光学要素の部分のみを被覆するように構造化することができる。これは、例として、層の構造化された堆積または局所的な脱金属化により、達成することができる。
【0059】
異なる屈折率を有する材料への移行部により、反射を引き起こすこともできる。そのため、本発明の好ましい実施態様では、本発明による光学要素の微細構造の表面が誘電体材料で被覆されている。高屈折率材料の例は、ZnS、ZnSe、ITOまたはTiO2である。高屈折率材料のナノ粒子を包含する複合材料も好適であることができる。被覆媒体は、デバイスの色外観を変化させるため、特定の色について吸収性であることもできる。
【0060】
特に、セキュリティ用途では、機械的衝撃、汚染に対して要素を保護するため、および、そのような要素のレプリカの不正および違法な作製を防止するため、本発明による光学要素の表面レリーフ微細構造を密閉することができる。そのため、本発明による光学要素は、好ましくは、微細構造の上部に誘電体層を含む。適切な保護および不動態フィルムは、場合により、色付きにすることができる、透明な誘電体材料である。
【0061】
パターン化された表面レリーフ微細構造に起因して、本発明による光学要素は、局所的な微細構造に依存して異なって、局所的に光を透過および/または反射する。そのため、微細構造パターンは、光で照光されたときに、透過および/または反射における異なる強度のパターンとして参照することができる。微細構造のタイプに依存して、入射光の角度および/または観察角度への光学外観の強い依存がある。
【0062】
微細構造の深さに依存して、干渉色を生成することができる。例として、黄色、橙色、バラ色、紫色、青色および緑色の色である、下方からより深い変調まで、広範な色パレットを得ることができる。なおより深い構造では、より高次の色が現れることができる。干渉色は、通常、明確な角依存を示す。特定の角度下では、色が参照されるのに対し、他の角度では、色が変化するか、消失することができる。パターンは、そのため、観察角度および/または光の入射角度に色が依存する、色付きのパターンとして認識される。
【0063】
本発明による光学要素は、他のセキュリティフィーチャを組み込むこともできる。そのいくつかは、要素の製造に使用されるマスタにおいて既に存在することができる。そのようなフィーチャは、例として、ホログラムまたはキネグラムである。第一、第二または第三のレベルのセキュリティフィーチャであることができる他のセキュリティフィーチャを、追加的なプロセスおよび/または追加的な層に追加することができる。追加的なフィーチャは、具体的な光学作用を生成することなく、永久的に可視であることができる。好ましくは、追加的に追加されたフィーチャは、例として、ここでもまた、ホログラムもしくはキネグラムまたはコレステリックもしくは干渉層によって実現される、視角度依存を示す。より好ましい実施態様では、観察ツールを使用することなく検知することができない、第二のレベルのセキュリティフィーチャが追加される。そのようなフィーチャは、例として、蛍光または複屈折材料によって導入される。ことさらに好ましいのは、異なるリタデーションまたは光学軸配向の領域を含む、複屈折性層である。そのような複屈折性層に格納されたセキュリティフィーチャは、偏光された光、例として、偏光子シートを使用した観察によってのみ、可視である。
【0064】
本発明によって作られた光学要素は、光強度の空間変調を扱う異なる用途に使用することができる。好ましくは、本発明による光学要素は、セキュリティデバイスのセキュリティ要素として使用される。具体的には、そのようなセキュリティデバイスは、偽造および改ざんに対して、文書、パスポート、免許証、株式および債券、クーポン券、小切手、証券、クレジットカード、紙幣、チケット等に適用されるか、組み込まれる。セキュリティデバイスは、さらに、ブランドまたは製品保護デバイスあるいは包装紙、梱包箱、封筒等など、梱包のための手段に適用するか、組み込まれることができる。有利には、セキュリティデバイスは、タグ、セキュリティストリップ、ラベル、繊維、糸、ラミネートまたはパッチ等の形態を取ることができる。
【0065】
高さヒストグラムに基づくメリット関数は、明確な表面レリーフ水平域を特徴付けるために有用であることができる。可能なメリット関数Mは、次のとおりである:
【数2】
【0066】
メリット関数Mでは、ピーク幅およびレリーフ変調深さの関係を使用する。その水平域周辺における上部および下部区域の偏差の範囲は、レリーフ変調深さの特定の画定された分数内に位置すべきである。Δx1およびΔx2は、全ピーク高さの高さ1/eで測定されるような二つのヒストグラムピークの幅であり、eは、自然対数の基数(e≒2.72)であり、dは、二つのピークの距離(平均水平域間距離またはレリーフ変調深さに対応する)である。
【0067】
本発明の方法で使用される表面レリーフ微細構造は、好ましくは、2を上回るメリット関数Mを有する。より好ましくは、Mが3.5を上回る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1.1】等方的に構造化された表面における光反射の図示である。
【図1.2】図1.1に類似しているが、異方的に散乱させる表面における反射からの特徴的な出力光分布を図示する。
【図2】相違する異方性方向配向を持つ画素を図示する。
【図3】基材として機能するために十分に厚い、第二の材料層の上部に表面レリーフ微細構造を含む、初期層を示す。
【図4】基材上の薄膜層である、第二の材料層の上部に表面レリーフ微細構造を含む、初期層を示す。
【図5】図5.1〜5.5は、第一の層から第二の層への表面レリーフ微細構造の複写プロセスを図示する。図5.6は複写された表面レリーフ微細構造の金属化プロセスである。
【図6】表面レリーフ微細構造の複写において、異なる微細構造深さを持つ領域をもたらすためのプロセス工程を図示する。
【図7】電気めっき(ガルバニックニッケル金属フィルム成長)によるマスタの複製である。
【図8】マスタNiシムの分離プロセスである。図8.1は、電気めっき工程の完了後の構造を図示する。図8.2は、Niシムからのマスタの分離プロセスを図示する。
【図9】製造ニッケルシムまたはホイルを製作するための電鋳および再組み合わせプロセスである。
【図10】最終要素の複製および大量製造である。図10.1は、ホットエンボス加工プロセスを図示し、図10.2は、UV鋳造および/またはエンボス加工プロセスを図示する。
【0069】
発明の詳細な説明
表面レリーフ微細構造を含む第一の材料は、通常、第二の材料の上部に薄膜層の形態で堆積される。これは図3に図示され、表面レリーフ微細構造を含む第一の材料が層21として表記され、第二の材料が層22として表記されている。層22は、図3に示唆されているように、基材の形態であることができるか、図4に図示するように、それ自体を基材23上に層として堆積させることができる。先の層の説明は、本発明による層の機能に関する。しかし、各層は、例として、接着を改善するための副層を含むことができ、および/または各材料は、例として、材料特性を修正するか、表面レリーフ微細構造の生成を支援するための複合材料であることができる。とりわけ、層21は、異方性表面レリーフ微細構造および/または接着促進剤層の配向方向を画定するためのアライメント層を含むことができる。
【0070】
表面レリーフ微細構造は、一つ以上のドライまたはウェットエッチングプロセス工程を使用して、第一の材料から第二の材料に複写される。多様なプロセスパラメータおよび材料特性により、微細構造の深さを制御することができる。好ましいドライエッチングプロセスは、プラズマエッチングである。プラズマエッチングのための好ましいガスは、酸素、アルゴン、塩素、三塩化ホウ素およびフッ化炭素である。
【0071】
原理上、基材23には、任意の種類の材料、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、シリコン、溶融石英を使用することができる。いくつかの基材材料特性は、プロセス条件に影響されることができるため、基材材料の選択では、当然のことながら、具体的なプロセス条件、例えば、例として、具体的な溶媒の使用、加熱プロセス等を考慮に入れる必要がある。基材は、重要なプロセスパラメータへの抵抗を増加させ、とりわけ、溶媒への抵抗を増加させるための特殊コーティングを含むことができる。
【0072】
層22には、任意の種類の材料、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、シリコン、溶融石英などを使用することができる。層22を基材23上の薄膜層として使用する場合、薄膜層として適用することができる材料のみが有効である。好ましくは、層22は、金属のものである。好ましい金属は、アルミニウム、銀、クロムおよび銅である。層22の材料の選択は、しかし、とりわけ、個別のエッチング工程におけるエッチング速度にかかわる、具体的なプロセス条件を考慮に入れることにより、作製される。好ましい実施態様では、層22の厚さが60nmよりも大きい。なおより好ましいのは、層22の厚さが90nmよりも大きい。
【0073】
層21は、通常、コーティングまたは蒸着させることができる材料からなる。好ましくは、層21は、重合化および/または架橋材料を含む。
【0074】
好ましくは、少なくとも一つのエッチング工程におけるエッチング速度は、第一の材料(層21)および第二の材料(層22)で異なる。エッチング速度は、パラメータ、例えば、層21および22で使用されている材料の性質と、エッチングのタイプ(ドライまたはウェットであることができる)と、ウェットエッチングプロセスの場合はエッチング溶液のタイプおよび温度と、ドライエッチングプロセスの場合はガスのタイプおよび使用されたエネルギーとに依存する。
【0075】
層21の上部に表面レリーフ微細構造を生成するための異なる公知の方法、例えば、コポリマーの自己組織化またはディウェッティング、レーザビームの射出で表面から局所的に材料を除去すること、原子間力顕微鏡(AFM)の先端で層21の表面を傷つけて溝を生成すること、金属または半導体、例えば、アルミニウムまたはシリコンの電解的なエッチング、電子ビームでの書き込み、MC層を生成すること、表面レリーフパターンをエンボス加工ツールとして使用したエンボス加工、プレポリマーを含む層の表面における局所的な重合または架橋および重合または架橋が発生しなかった領域からその後にプレポリマーを除去することがある。
【0076】
複数の先の方法を組み合わせて、表面レリーフ微細構造を生成することも可能である。これは、特に、局所的に異なる微細構造特性、例えば、微細構造の深さおよび横形状寸法のパターンの生成に有効である。異方性微細構造を持つパターンをもたらすことも可能である。エンボス加工により、例として、第一の異方性軸を持つ第一の異方性表面レリーフ微細構造を生成することができる。その後、局所的に異なる特性を持つ微細構造のパターンをもたらすため、AFMの先端で傷つけることにより、例として、異なる異方性軸または異なる周期性を持つ第二の微細構造を個別の領域に生成することができる。
【0077】
微細構造は、等方性または異方性であることができる。いくつかの領域では、微細構造が等方性であり、他の領域では、微細構造が異方性であることも可能である。微細構造は、周期的か、非周期的か、両方の組み合わせであることができる。微細構造は、異なる周期の構造の重ね合わせを呈することも可能である。
【0078】
表面レリーフ微細構造を生成するための好ましい方法では、架橋可能および非架橋可能な材料の混合物の相分離および架橋(MCテクノロジ)を使用する。少なくとも一つが架橋可能であり、少なくとも一つの他が非架橋可能である、少なくとも二つの材料の混合物を作製し、混合物を基材に適用し、架橋可能な材料の少なくとも実質的な部位を架橋させ、非架橋可能な材料の少なくとも実質的な部位を除去することにより、表面微細構造が得られる。異方性であるものとする微細構造では、例を挙げると、下部の配向層または配向させる基材表面を手段として、架橋中、架橋可能な材料を配向した状態に維持することができる。この場合は、層21は、少なくとも二つの副層を含む。
【0079】
好ましい方法では、層21の生産は、薄膜フォトアライメントフィルムをコーティングする工程と、フォトアライメントフィルムの個別の領域を異なる偏光方向の直線的に偏光されたUV光に暴露することにより、配向パターンを生成する工程と、架橋可能および非架橋可能な液晶材料のブレンドをフォトアライメントフィルムの上部にコーティングする工程と、液晶体ブレンドを架橋する工程と、例として、適切な溶媒を使用して、非架橋材料を除去する工程とを含む。なおより好ましいのは、薄膜フォトアライメントフィルムのコーティングに先行して、接着促進剤層をコーティングする工程を追加的に含む、方法である。
【0080】
液晶体ブレンドの架橋は、化学光への暴露により、実行することが好ましい。架橋プロセスでは、液晶プレポリマーの相分離および架橋を誘起する。微細コルゲート化された薄膜フィルムの基本原理および光学挙動は、例として、国際特許出願である国際公開公報第A−01/29148号に開示されている。
【0081】
本発明によると、表面レリーフ微細構造を複写するための方法は、コルゲート化された表面の下方ゾーン26における層21の材料が取り除かれ、下部の層22の部分27が解放されるまで、ウェットまたはドライエッチングにより、表面レリーフ微細構造を含む層21の厚さを減少させる工程を伴う。これは、図5.2〜5.3の工程に対応する。好ましくは、このプロセス工程における層21のエッチング速度が層22の少なくとも二倍よりも高いように、層21および22の材料と、エッチング条件とが選択される。最も好ましくは、この工程で層22がほとんどエッチングされないようなエッチング条件である。結果として、層22は、初期層21の微細構造の上方ゾーン21bの材料により、一部のみが被覆されている。
【0082】
次の工程では、ドライまたはウェットエッチングにより、層21の解放部分27を通じて層22がエッチングされる。このプロセスにより、フィルム21の微細構造の下方ゾーンに対応する、層22に微細構造化された穴または溝24がエッチングされる。フィルム21の微細構造の上方ゾーンに対応する領域では、図5.4に示すように、材料22bが残存する。したがって、このプロセスにより、層21の微細構造が層22に複写される。好ましくは、このプロセス工程において、層22のエッチング速度が層21の少なくとも二倍よりも高いように、層21および22の材料と、エッチング条件とが選択される。最も好ましくは、この工程で層21の材料がほとんどエッチングされないようなエッチング条件である。層22が基材23上の薄膜層である場合は、解放部分のすべての金属がエッチングして除かれるように、エッチング時間を選択することができる。この場合は、表面全体にわたり、層22の微細構造のよく画定された同一の深さが達成される。
【0083】
本発明によると、あるいは、層21および層22の両方の材料が同時にエッチングされる、単一のエッチング工程を使用することができる。この場合は、層22のエッチング速度が層21よりも高いように、層21および22の材料と、エッチング条件とを選択することが好ましい。より好ましくは、層22のエッチング速度が層21の二倍超よりも高い。最も好ましくは、層22のエッチング速度が層21の5倍超よりも高い。そのような単一のエッチングプロセスでは、層21の微細構造の下方ゾーン26(溝、くぼみ)に対応する、それらの領域で既に層22のエッチングが開始されている一方、層21のエッチングが継続する。そのようなプロセスは、プロセスパラメータのより良好な制御を要求するものの、プロセス工程数を減少させ、総加工時間を低減することもできる。
【0084】
層22にエッチングされた微細構造の深さは、層22のエッチング時間およびエッチング速度に依存する。よって、エッチング時間を制御することにより、微細構造の深さを調整することが可能である。好ましくは、複写された微細構造の深さが60nmよりも大きく、より好ましくは、複写された微細構造の深さが90nmよりも大きい。
【0085】
好ましくは、複写された微細構造の深さが1μm未満であり、より好ましくは、複写された微細構造の深さが700nm未満である。本発明によると、パターン化された表面レリーフ微細構造は、異なる深さの領域を含むことができる。結果として、そのような微細構造を用いる光学要素は、局所的に異なる色またはグレーレベルで現れ、さらに異なる角度での観察時に変化する。本発明の好ましい実施態様によると、複写された微細構造の深さは、異なる領域で異なる。複写された微細構造において、異なる深さの領域を生成するための多数の方法がある。これらの方法は、原則として、層22の局所的にブロックまたは遅延させるエッチングに基づく。
【0086】
第一の実施態様では、層22の上部と層21のくぼみ26との間の平均距離に対応する、層21の下方部分26の平均厚さが、異なる領域で異なる。図6.1は、層22の上部に対する距離が異なる微細構造くぼみ26a、26b、26cを持つ、三つの領域a、b、cを含む、層21の微細構造を描写する。層22に対し、くぼみ26aが最も小さく、26cが最大の距離を呈する。層21の厚さを減少させる、層21の第一のエッチング工程は、その後、くぼみ26aの真下のみ、領域a内において、表面レリーフ微細構造の材料が取り除かれ、下部の第二の層22の対応する部分27aが解放されるように、制御される(図6.2)。その後のエッチング工程では、これらの27a部分のみで層22がエッチングされる(図6.3)。
【0087】
領域bの微細構造を層22に複写するため、エッチング工程を反復し、ここでもまた、層21がエッチングされ、表面レリーフ微細構造のくぼみ26bの真下の材料が取り除かれ、下部の第二の層22の部分27bが解放されるまで、その厚さをさらに減少させることを意味する(図6.4)。そのうえで、ここでもまた、層22をエッチングし、領域bの27b部分におけるエッチングが開始される一方、領域におけるエッチングが継続されることに帰結する(図6.5)。
【0088】
エッチングの第三の期間では、層22のもう一つのエッチング工程でも、先の手順に従い、領域cの微細構造を層22にエッチングすることができるように、くぼみ26cの真下の材料がエッチングして除かれる(図6.6)。領域cをエッチングする一方、領域aおよびbのエッチングが継続される。最終的に、層21の残存部分を除去することができる。
【0089】
層22の結果的な微細構造(図6.7)は、複写された微細構造の深さが異なる、三つの領域a、b、cを呈する。層22の溝の深さは個別のエッチング工程で使用されたエッチング条件、とりわけ、エッチング時間に依存するので、溝27a、27b、27cの微細構造の深さは、くぼみ26a、26b、26cの高さの比に対し、直線的である必要はない。
【0090】
図6.7などの微細構造は、異なる領域の、異なる色またはグレーレベルの外観および異なる光学角挙動につながる。
【0091】
本発明の好ましい実施態様によると、両方の材料を同じプロセス、例として、同じウェットエッチングプロセス工程でエッチングすることができるように、層21および22の材料ならびにエッチング条件を選定することにより、先に記載したような複数個のエッチングプロセスが単一のエッチングプロセス工程に置き換えられる。好ましくは、エッチング速度が層22よりも高い。より好ましくは、層22のエッチング速度が層21の2倍超よりも高い。図6.1などの微細構造のエッチングを開始するときには、層22でエッチングが開始される前に、第一に、くぼみ26a、26bおよび26cの真下の材料を除去する必要がある。その後、図6.1〜6.7の順序に従い、エッチングが連続的に進行する。層22へのエッチングの遅延は、エッチング速度が時間にわたって一定であれば、くぼみ26a、26bおよび26cの真下の層21の厚さに直線的に依存する。そのため、26a、26b、26cの異なるレベルにより、領域a、b、cの異なる深さが制御される。
【0092】
図6では、層21における微細構造の矩形の形態は、図示の簡略のためにのみ選定されており、具体的な形状への任意の制約を示唆しないものとする。層21における微細構造の形態は、それを生成するための方法に依存し、任意の形状であることができる。層22に生成された微細構造の異なる深さを持つ、任意の数の領域があることもできる。図6の三つの領域は、単なる例である。
【0093】
図6.1のように、くぼみの異なる高さレベルを持つ微細構造を生成するための異なる方法がある。微細構造を生成する前に、例として、均一な高さの層から開始することにより、異なる高さレベルを準備することができる。その後、例として、プリントまたは真空堆積技法によって同じまたはもう一つの材料の薄膜層を局所的に適用するか、例として、ドライもしくはウェットエッチングまたはレーザアブレーションによって層の上部から材料を局所的に除去することにより、厚さパターン化をもたらすことができる。異なる厚さを持つ層21を異なる領域に直接的に適用することも可能である。異なる高さレベルを確立した後、層の上部に微細構造が生成される。微細構造が存在する後に、例として、プリントまたは真空堆積技法によって同じまたはもう一つの材料の薄膜層を局所的に適用するか、例として、ドライエッチングを使用することによって異なる領域において層21の厚さを異なって減少させることにより、くぼみの異なる高さレベルを準備することもできる。均一な厚さを持つ層において、局所的に異なる深さを持つ微細構造をもたらすことにより、くぼみの異なる高さレベルを達成することもできる。微細構造の異なる深さを生成するためのプロセスは、微細構造を生成する方法に依存する。例として、既に、構造の異なる深さを呈している微細構造をエンボス加工するか、局所的に異なる力を使用して、AFMの先端で傷つけるか、レーザアブレーションを使用して、異なるエネルギーを適用するか、MCテクノロジを使用している場合には、局所的に異なる光強度または光エネルギーを適用することにより、相分離と、そのため、微細構造深さとを制御する。
【0094】
層22に溝の異なる深さを生成するための代替実施態様では、図5.2のように、くぼみの均一な高さレベルを持つ層21の微細構造からプロセスが開始され、第一のエッチング工程後、図5.3のように、くぼみの真下の材料が除去される。適当な材料の薄膜層を局所的に適用することにより、図6.2などの構造を達成することができ、先の図6に関する説明によってさらにプロセスされることができる。
【0095】
微細構造の形状を採用して図6.2に類似した構造で生起する薄膜層を局所的に適用する代わりに、特定の領域における層22の解放部分27をエッチングされることから保護するため、エッチングされた層21上の特定の領域において、微細構造の溝を満たし、その形状を再現しない、より厚い層として、層21の材料と異なる材料を適用することができる。層21の材料を除去することなく、例として、溶媒により選択的に除去することができるように、特定の領域を保護するための材料を選定すべきである。層22への微細構造のエッチングは、その後、被覆されていない領域のみで実施される。保護材料を全面的にまたは特定の領域のみで除去した後、層21の微細構造の追加的な領域が層22に複写される一方、第一のエッチング工程で複写された領域において微細構造の深さが増加する作用により、層22のエッチングを継続することができる。層22において、微細構造の異なる深さを呈する多数の異なる領域をもたらすため、先の手順を複数回にわたって反復することができる。
【0096】
異なる深さの溝を生成するための代替方法では、層21の適用前に、例として、標準的なプリント技法、例えば、インクジェットプリントまたは真空堆積により、適当な材料の薄膜層のパターンを層22の上部に適用する。結果的な構造は、領域bおよびcにおいて、層21の下方部分が副層として追加的な層を含む、図6.1の構造に対応する。追加的なプロセス工程は、その後、図6にかかわり、先に記載された工程に従う。
【0097】
層22に微細構造をエッチングする工程後、好適な溶媒もしくは溶液または他の手段、例えば、プラズマ洗浄などにより、層21の残存部分を除くことができる(図5.5)。
【0098】
層21から複写された層22の微細構造は、レプリカを作製するためのマスタとして使用することができ、オリジナルマスタとも呼ばれる。
【0099】
本発明によると、マスタの微細構造をもう一つの材料(レプリカ材料)に接触させ、レプリカ材料との接触に起因して、マスタの表面レリーフ微細構造を逆の表面レリーフプロファイルでレプリカ材料に再現することにより、マスタのレプリカが作製される。
【0100】
レプリカ材料は、ポリマー、架橋可能なモノマーおよび金属、例えば、例として、ニッケル、クロム、アルミニウムなどであることができる。
【0101】
例えば、コーティング、プリント、浸漬、蒸着、スパッタリング、鋳造、無電解めっきまたは電気めっきの方法により、レプリカ材料を微細構造に適用することができる。電気めっきにより、レプリカ材料を適用する場合は、良好な電導性を達成するため、第一に、微細構造の上部に薄膜金属層、例えば、銀、クロム、金、銅、アルミニウムなどを堆積させることが要求される(図5.6)。マスタにレプリカ材料を適用する代わりに、マスタをエンボス加工ツールとして使用し、公知の方法により、レプリカ材料に表面レリーフ微細構造をエンボス加工することができる。レプリカ材料は、ポリマー、架橋可能なモノマー、金属、例えば、例として、ニッケル、クロム、アルミニウムなどであることができる。
【0102】
複製プロセスが終了した後、レプリカをマスタから分離させる。レプリカは、光学要素として使用することができるか、それ自体、レプリカを作製するためのマスタ(子マスタ)として使用することができる。オリジナルマスタのレプリカは、オリジナルマスタの表面レリーフプロファイルと相対的に逆の表面レリーフプロファイルを呈する一方、レプリカのレプリカは、オリジナルマスタと同じ表面レリーフプロファイルを示す。
【0103】
複製プロセスのタイプおよび適用されたプロセス条件に依存して、複製された微細構造の深さは、それが複製されたマスタの深さよりも小さいことができる。好ましくは、複製された微細構造の深さは、マスタの微細構造の対応する部分の深さの70%よりも大きく、より好ましくは、80%よりも大きく、なおより好ましいのは、90%よりも大きい。
【0104】
本発明の好ましい方法では、電気めっきにより、オリジナルマスタのレプリカが形成される。通常、ニッケルを複製材料として使用する。結果的なレプリカは、ニッケルシムと呼ばれる。オリジナルマスタならびに子マスタを多くの回にわたって使用し、レプリカを作製することができる。オリジナルマスタについて先に記載したのと同じ方式で、レプリカからのレプリカを作製することができる。
【0105】
通常、例として、光学要素として使用されるレプリカの大量製造のため、ロールツーロール製造装置が使用される。例として、アクリルコーティングでコーティングされた、ポリエステルフィルムまたは他の類似した材料が装置を通じて移動する。激しい熱および圧力下で、シムが表面レリーフ微細構造をフィルムに押し付ける(図10.1)。その後、エンボス加工されたフィルムがロールに巻き取られる。
【0106】
エンボス加工の代わりに、UV鋳造方法を使用することができる。UV鋳造は、深い微細構造および/または非常に安定的なOVDデバイスを製作するためにことさらに有効である(図10.1)。最終デバイスの仕様に依存して、熱伝達機能の有無を問わず、金属化されているか、半金属化されているか、透明であるかのいずれかである、複数のタイプの基材を使用することができる。
【0107】
いくつかの用途では、エンボス加工またはUV鋳造後に金属層を適用することが好ましい。この場合は、真空堆積により、微細構造上に金属層を堆積させることができる。場合により、例として、ラッカーによるもう一つのコーティングをフィルムに適用し、インクで印刷することができる表面をもたらすことができる。
【0108】
例1
図5は、本発明による金属層への表面レリーフ微細構造の複写プロセスを図示する。
【0109】
標準的なコーティング技法、例えば、蒸着またはスパッタリングを使用して、ガラスまたはプラスチック基材23にアルミニウムの厚さ100nmの金属層22をコーティングする。
【0110】
金属層22上に、先に記載し、かつ、国際公開公報第A‐01/29148号に開示されているMCテクノロジ手順により、クロムフォトマスクを用いて、順次、異なる領域で異なる偏光方向を持つUV光に暴露され、したがって、配向パターンを画定する、フォトアライメント層を使用して、表面レリーフ微細構造を呈する層21を生成する(図5.2)。
【0111】
その後、微細構造の下方ゾーン26の場所において、下部のアルミニウム層の部分が解放されるまで、層21をプラズマエッチングする(図5.3)。この処理は、層21の材料の性質に依存して、標準的な酸素および/またはアルゴンプラズマを使用して実行することができる。結果として、層21の厚さが減少し、アルミニウム層22は、初期層21における微細構造の上方ゾーン21bの材料のみにより、一部が被覆されている。
【0112】
次の工程では、適切なエッチ溶液を使用して、一部が解放されたアルミニウム層22をウェットエッチングする(図5.4)。このプロセスにより、層21の微細構造の下方ゾーン26に対応する、微細構造化された穴または溝24がアルミニウム層22にエッチングされる。層21の微細構造の上方ゾーンに対応する領域には、アルミニウム22bが残存する。したがって、このプロセスでは、層21の微細構造がアルミニウム層22に複写された。この微細構造は、その後、さらなる加工のための起点として使用される。エッチング時間をエッチング溶液の温度と組み合わせることにより、層22における微細構造の深さを、例として、制御および調整することができる。解放部分におけるすべての金属がエッチングして除かれるように、エッチング時間を選択することができる。この場合は、表面全体にわたり、層22の微細構造のよく画定された同一の深さが達成される。
【0113】
場合により、先に記載されたようなプラズマエッチングプロセスを使用して、上方ゾーン21bの残存材料を完璧に除去することができる(図5.5を参照されたい)。
【0114】
次の工程では、良好な電導性を達成するため、薄膜銀層25を微細構造22b上にスパッタリングすることにより、得られた微細構造化アルミニウム層をさらに加工する(図5.6)。通常の厚さは、約80nmであるか、より高い。
【0115】
その後、得られた導電性マスタをフレーム内に設置し、ニッケルの供給に沿って、槽の内側に置く(図7)。金属性層25をDC電力供給に接続し、電気的な電流を作り、微細構造がニッケルで電気めっきされることを引き起こす。電流強度および時間を調整し、要求されたニッケル層厚さを獲得する。このプロセスは、ニッケル層の所望の厚さに依存して、数十分〜数時間を取ることができる(例として、Bernard Gaidaのテキストブックである「Introduction to the Galvanic technique」、2008、ISBN 978−3−87480−242−0を参照されたい)。その後、基材上に電気めっきされた微細構造を持つフレームを槽から除去し、脱イオン水で洗う。
【0116】
薄膜ニッケルコーティングである、金属マスタシムをマスタプレートから除去する(図8)。このシムは、起点におけるオリジナル表面レリーフ微細構造のネガティブ(逆)を含む。
【0117】
Niシムおよびマスタの容易な分離に起因して、Niシムの準備のために同じマスタを複数回にわたって使用できることが実験的に見られた。
【0118】
同じプロセスを使用し、複数のシムがもたらされる。金属マスタシムから作られたシムは、「グランドマザー」として公知である。「グランドマザーシム」は、起点のポジティブイメージを含有する。このとき、オリジナルイメージの多様な複写を一つのシム上に列でコピーすることができ(図9を参照されたい)、単一の刻印で複数個の複写をプリントするために使用する(再組み合わせ)。シムの一連の世代は、「親」、「子」および「スタンパシム」などの多様な名称で公知である。これらのシムの世代は、起点のネガティブおよびポジティブイメージ間で交互となる。最終要素をプリントするための実際の製造が運転され、これらのシムがネガティブイメージであるときには、スタンパシム(または製造シム)を使用する。
【0119】
例2
例1とは対照的に、図3に図示するように、表面レリーフ微細構造を含む層21を金属基材の上部に生成する。層21の生成およびエッチングのためのパラメータは、例1と同じである。例1とは対照的に、基材22が例1の層22よりもはるかに厚いことから、層22のエッチングプロセスは、自動的に停止しない。使用される基材に依存して、複数のエッチング手段として、適切な溶液を使用したウェットエッチングまたは適切なガスを使用したドライエッチングのいずれかを使用することができる。一例として、標準的な方法を使用して、シリコンを洗浄およびエッチングする。(場合により)HFに基づく溶液を使用し、酸化物(自然酸化物層または酸化物がコーティングされた層のいずれか)を除去し、続いてDI水での強い水洗いをすることができる。
【0120】
次の工程では、異方性または等方性エッチングを実施し、例として、KOHをエッチング溶液として使用することにより、要求された微細構造深さを達成する。エッチング時間をエッチング溶液の温度と組み合わせることにより、層22の微細構造の深さを、例として、制御および調整することができる。
【0121】
層21から基材層22に所望の深さで表面レリーフ微細構造を複写した後、さらなる加工工程は、例1の工程と同じである。
【0122】
例3
接着促進剤としてシラン誘導体の薄膜層を事前にコーティングされたシリコンウエハの上部に、表面レリーフ微細構造を含む層21を適用した。250ml/分の酸素流量および160Wの電力で7分間の酸素プラズマ中でのドライエッチングにより、層21のエッチングを実行した。層22をエッチングする前に、基材22の上部の酸化物層を緩衝HFに基づく水溶液中で除去し、その後に、脱イオン水で強く水洗いした。次の工程では、50℃の温度で3.5分にわたり、40重量%の水酸化カリウム(KOH)のエッチング水溶液中で微細構造を基材22にエッチングした。AFMを使用して測定した、層22の微細構造の結果的な深さは、500nmであった。視覚的な観察により、複写された微細構造の領域におけるシリコンウエハ(層22)は、緑色として現れたのに対し、もう一つの角度から観察されたときには、黄色に現れた。最終的に、250ml/分のガス流量および160Wの電力で8分の酸素プラズマにより、上方ゾーン21bの残存材料を完璧に除去した(図5.5)。
【0123】
例4
例3の得られた微細構造化層をポリマーフィルムに複製した。例3で生成された微細構造表面の上部に、多アクリル酸化合物の混合物をスピンコーティングした。その後に、UV−A光への暴露により、コーティングされたアクリル酸層を室内温度で架橋させた。その後、結果的なポリマーフィルムをシリコンウエハから除去した。フィルムの視覚的な観察により、シリコンウエハ微細構造の微細構造に触れている領域は、第一の角度下で緑色に現れたのに対し、もう一つの角度から観察されたときには、黄色に現れた。このため、シリコンウエハの微細構造がポリマーフィルムに複製された。AFMにより、微細構造の深さを測定し、結果的に500nmの値となった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン化された表面レリーフ微細構造のレプリカを作るための方法に関する。本発明は、さらに、その方法により、レプリカとして作製された要素に関する。本発明による要素は、特に、偽造および改ざんに対して文書および物品を保全するために有効である。
【0002】
発明の背景
偽造、違法な改変に対する保護および製品保護のための光学デバイスの使用は、概して、現在、よく確立された技術である。
【0003】
不正行為および偽造品の増加に起因して、新規な偽造品防止対策が常に要求されている。多くの年にわたり、ホログラムが好ましいセキュリティテクノロジであった。ただし、このテクノロジは、30年超の歳月を経ており、そのため、周知かつ普及している。今日、ギフトショップ毎にホログラム用ホイルを見ることさえできる。多くの人がホログラムテクノロジへのアクセスを有するため、この状況は、セキュリティリスクを表している。
【0004】
したがって、ホログラム用デバイスとは明らかに区別される、新規なセキュリティフィーチャにより、セキュリティデバイスの品目を拡張することが最も望ましい。そのような新しいデバイスの例は、代替の光学的可変デバイス(OVD)である。OVDは、視角度または照射角度が変化するにつれ、その外観、例えば、輝度、コントラストまたは色を変化させるデバイスである。主要な代表的色シフトOVDは、コレステリックまたは干渉フィルムであり、そのようなフィルムの薄片に基づく光学デバイスを包含する。両方とも、デバイスが垂直な視認角度から離れて傾斜するにつれ、明確な色シフトを呈する。
【0005】
薄膜光学フィルムにおける光の干渉に起因する色シフト作用は、現代の薄膜フィルム部品の歴史で長い伝統を有する(例を挙げると、J. A. Dobrowolski、「Optical thin-film security devices」、「Optical Document Security」、R. L. van Renesse編、Artechouse Boston、1998)。層状の薄膜フィルム系の多くの異なる組成物が可能である。投射角度が増加するにつれ、反射または透過スペクトルが短波長側に向かってシフトする。多くの場合、誘電体層および金属性層の組み合わせである、多層薄膜フィルム系は、誘電体材料のみでも可能である。この場合は、異なる屈折率の薄膜フィルムが要求される。
【0006】
今日、薄膜干渉フィルムまたはそのようなフィルムの薄片のいずれかに基づくセキュリティデバイスが市販されている。例は、一例として、米国特許第5084351号に見ることができる。
【0007】
他の手法は、散乱デバイスである。OVDにおける等方性およびなおより異方性の散乱作用の使用により、光学の魅力を有意に強化することができる。ことさらに、異方性光散乱は、視角度反応デバイスを生成するための有用な手段である。図1.1および1.2は、それぞれ、等方性および異方性光散乱を図示する。
【0008】
等方的に構造化された表面、例えば、新聞用紙または家庭用物品で生じるほとんどの表面における反射では、方位角方向がないことが好ましい。図1.1に指示するように、コリメート入光1は、散乱表面2で新しい出射方向3に誘導され、特徴的な軸対称性出力光分布および特徴的な発散角度4となる。
【0009】
異方的に構造化された表面は、しかし、明確な方式で特定の方向に光を反射し、他の方向については光を抑制する。図1.2では、コリメート入光1は、異方的に散乱させる表面5に衝突し、新しい出射方向6に誘導され、対応する方位角角度8、8´に依存する、特徴的な出力光分布7となる。
【0010】
本発明の文脈では、異方性方向という用語は、層の平面内の局所的な対称軸、例として、微細構造の溝またはくぼみに沿った方向を意味するものとする。
【0011】
図2の方向10、11など、局所的に相違する異方性方向を持つ異方性構造のパターンを表面が含む場合、その後、パターンの個別の領域は、入光を異なる方向に反射する。その後、斜めからの観察または斜行する入射光を使用することにより、パターンを認識することができる。
【0012】
パターン化された異方性を持つ異方性散乱フィルムを生産する公知の方法は、参照により内容が本明細書に組み込まれる、国際特許出願である国際公開公報第01/29148号に記載されている。方法では、いわゆるモノマーコルゲーション(monomer corrugation, MC)テクノロジを使用する。それは、基材に適用された特殊混合物またはブレンドの相分離が架橋、一例として、紫外線放射への暴露によって誘起されるという事実に依拠している。非架橋部品のその後の除去により、具体的な表面トポロジを持つ構造が残る。MC層という用語は、このテクノロジによって準備された層に使用される。下部のアライメント層のアライメントにより、トポロジを異方性にすることができる。パターン化されたアライメント層を使用することにより、パターン化された異方的に散乱させる表面トポロジをもたらすことが可能である。
【0013】
国際公開公報第2006/007742号では、特定の観察角度下でパステル色付きの外観を生成する、修正されたMC層および層構造を作るための方法を開示している。
【0014】
国際公開公報第07/131375号では、第一に、微細構造のイメージを含むマスクを生産し、その後、第二の工程でイメージを樹脂またはレジストに複写し、光学的に効果的な表面レリーフ微細構造を生成することにより、光学的に効果的な表面レリーフ微細構造を生成するための方法を開示している。国際公開公報第07/131375号の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。国際公開公報第07/131375号に開示されている方法の欠点として、プロセス工程数が高く、製造時間を増加させるのみでなく、生産歩留まりも低減させる。
【0015】
発明の概要
本発明の目的は、表面レリーフ微細構造のレプリカを製造するための簡易な方法を提供することがである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、表面レリーフ微細構造を複製するためのマスタを提供することである。
【0017】
本発明のまたさらなる目的は、本発明によるマスタを使用して、複製によって作られた表面レリーフ微細構造を持つ、要素を提供することである。
【0018】
好ましくは、複写された表面レリーフ微細構造が光学的に効果的であり、表面レリーフ微細構造に依存して、入光が特徴的な方式で変調されることを意味するものとする。より好ましくは、光との相互作用で光が回折、屈折または散乱する。
【0019】
本発明は、パターン化された表面レリーフ微細構造を複製するための方法であって、:
− パターン化された表面レリーフ微細構造を持つ第一の層(21)を、第二の層の上部に生成する工程であって、第一の層が第一の材料を含み、第二の層が第二の材料を含む、工程と、
− 第一の層の微細構造を第二の層に複写し、それにより、少なくとも一つのドライまたはウェットエッチング工程を伴うことにより、マスタを生成する工程と
を含み、
− マスタの微細構造をレプリカ材料に接触させ、マスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルでマスタの微細構造をレプリカ材料に再現する、追加的な工程を特徴とする、
方法を提供する。
【0020】
マスタのレプリカは、マスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルを有する。マスタのレプリカをマスタ(子マスタ)として使用し、さらなるレプリカを生成することもできる。本発明の文脈では、レプリカのレプリカは、より高次のレプリカと呼ばれる。本発明の文脈では、マスタは、複製プロセスでレプリカを作製するために使用することができ、とりわけ、第二の層に生成された直接的な複写と、任意のレプリカまたはそのより高次のレプリカとを包含する、表面レリーフ微細構造を含むデバイスである。
【0021】
本発明の好ましい方法によると、レプリカを子マスタとして使用し、子マスタをレプリカ材料に接触させ、子マスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルで子マスタの微細構造をレプリカ材料に再現することにより、パターン化された表面レリーフ微細構造を複製する。
【0022】
本発明のもう一つの好ましい方法によると、より高次のレプリカが子マスタとして使用される。
【0023】
本発明の文脈では、参照表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルは、その深さプロファイルが参照表面レリーフプロファイルの補完であることを意味するものとする。これは、例として、逆の表面レリーフのくぼみが参照表面レリーフの隆起に対応し、逆の表面レリーフの隆起が参照表面レリーフのくぼみに対応することを意味する。
【0024】
表面レリーフ微細構造を第一の層から第二の層に複写する方法は、一つ以上のドライまたはウェットエッチングプロセス工程を含む。
【0025】
エッチング工程の一つにおいて、表面レリーフ微細構造の下方ゾーン(くぼみ)の材料が取り除かれ、下部の第二の層の部分が解放されるまで、第一の層の厚さを減少させる。その後のエッチング工程では、先行するエッチング工程中に解放されたそれらの部分において、第二の層がエッチングされる。材料およびプロセス条件が適正に選択されている場合、第一および第二の層のエッチングを単一のエッチング工程で実施することができる。
【0026】
好ましくは、第一および第二の材料が同一ではない。
【0027】
例えば、コーティング、プリント、浸漬、蒸着、スパッタリング、鋳造、無電解めっきまたは電気めっきの方法により、複写された微細構造(マスタ)にレプリカ材料を適用することができる。複写された微細構造にレプリカ材料を適用する代わりに、複写された微細構造(マスタ)をエンボス加工ツールとして使用し、レプリカ材料に微細構造をエンボス加工することができる。
【0028】
本発明によるマスタを使用することにより、標準的な複製技法を適用し、表面レリーフ微細構造を持つ光学要素を適切なコストで大量製作することが可能である。今日、二つの一般的かつコスト効果的な複製技法は、UVエンボス加工およびホットエンボス加工である(一例として、M. T. Gale:「Replication techniques for diffractive optical elements」、Microelectronic Engineering、Vol. 34、321ページ(1997)を参照されたい)。
【0029】
複製プロセスでは、マスタのレリーフとは逆のレリーフをレプリカの表面に生成する。複製プロセスが終了した後、レプリカをマスタから分離する。レプリカを本発明による光学要素として使用することができるか、それ自体、レプリカを作製するためのマスタ(子マスタ)として使用することができる。子マスタは、オリジナルマスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルを呈する一方、子マスタのレプリカは、オリジナルマスタと同じ表面レリーフプロファイルを示す。
【0030】
本発明は、さらに、本発明の方法によるレプリカとして作られた、パターン化された表面レリーフ微細構造を含む、光学要素を提供する。
【0031】
国際公開公報第07/131375号に開示されている方法とは対照的に、本発明による方法は、マスタを生成するためのマスクの生産を除外する。それゆえに、プロセス工程数が低減し、よって、生産歩留まりが増加する。
【0032】
本発明の好ましい実施態様によると、レプリカは、電気めっきによって生成される。
【0033】
本発明のもう一つの態様によると、本発明の方法によって作られた、表面レリーフ微細構造を複製するためのマスタが提供される。
【0034】
本発明の文脈では、「微細構造の複写」という用語ならびに「複写」という用語は、先の方法に関するとき、主に、二次元横構造を指し、オリジナルおよび複写された微細構造が完全に同一であることを必ずしも意味しない。これは、例として、オリジナルおよび複写された微細構造において、対応する上部レベル(隆起)および下方レベル(くぼみ)の横距離がほぼ同じであることを意味する。しかし、概して、複写された微細構造の深さは、オリジナル微細構造の深さと同一ではない。なおも本発明の効果として、多様なプロセスパラメータにより、複写された微細構造の深さを調整することができ、かつ、制御することができる。優先的には、複写された微細構造の深さがオリジナル微細構造の深さよりも大きい。複写プロセスでは、そのため、好ましくは、微細構造の深さプロファイルを拡大する。
【0035】
本発明の文脈では、パターン化された表面レリーフ微細構造は、その微細構造が相違する、少なくとも二つの領域を持つ表面にパターンがあることを意味するものとする。パターンは、微細構造を持つ領域および持たない領域からなることもできる。例として、単純なパターンは、微細構造を持たない領域と、微細構造を持つもう一つの領域とを有するものであろう。概して、パターンの領域間の差異は、微細構造と光との異なる相互作用を引き起こす、微細構造における任意の物理的な差異であることができる。例として、差異は、微細構造の深さ、微細構造の横密度、微細構造の周期性、微細構造の異方性、異方性軸の方向に起因していることができる。パターン領域の先の特性の任意の組み合わせも可能である。例として、等方性微細構造を有する一つの領域と、第一の異方性軸を持つ異方性微細構造を有する、もう一つの領域と、第二の異方性軸を持つ異方性微細構造を有する、もう一つの領域とがあることができ、またもう一つの領域が微細構造を有さないことができる。微細構造は、等方性または異方性であることができる。本発明の好ましい実施態様では、異方性微細構造を含む、パターンの少なくとも一つの領域がある。
【0036】
パターンは、任意の種類の情報、例えば、例として、イメージ、文字、数、バーコード、図画、マイクロテキスト、グラフィック部品、指紋プリント、暗号化情報、ホログラム用データ、デジタルデータおよびその任意の組み合わせを表すことができる。
【0037】
微細構造は、周期的または非周期的であることができる。本発明の好ましい実施態様では、微細構造が非周期的である、少なくとも一つの領域をパターンが含む。
【0038】
非周期的または非決定性表面プロファイルを特徴付けるための有用なパラメータは、自己相関関数および関連する自己相関長さである。表面プロファイルの一次元または二次元自己相関関数は、平面において距離xで空間的に分離した二つの点について、表面プロファイルの予測可能性の尺度として理解することができる。
【0039】
例えば、表面レリーフ微細構造プロファイルの関数P(x)の自己相関関数AC(x)は、
【数1】
として画定される。
【0040】
自己相関関数および対応するプログラミング問題のより詳細は、例を挙げると、「Numerical recipes in C:the art of scientific computing/William H. Press;Saul A. Teukolsky;William T. Vetterling;Brian P. Flannery.−Cambridge;New York:Cambridge University Press、1992」に見ることができる。
【0041】
非周期的または非決定性表面プロファイルでは、xの増加とともに自己相関関数が急速に減衰する。他方、一例として、格子に見られる決定性表面プロファイルでは、自己相関が減衰しない。格子の場合は、自己相関関数は、しかし、周期的な関数で変調される。おおよそ周期的な格子でも、xの増加とともに包絡線が減衰する。
【0042】
一次元自己相関関数を活用して、単一の特徴的な数である自己相関長さLを画定することができる。自己相関長さLは、自己相関関数の包絡線が特定の閾値まで減衰する長さである。本趣旨のため、閾値は、AC(x=0)の10%が好適であることが証明された。
【0043】
本発明の好ましい実施態様によると、パターンは、表面レリーフ微細構造を持つ少なくとも一つの領域を含み、少なくとも一つの領域は、包絡線を有する平均化された一次元自己相関関数AC(x)を少なくとも一つの方向において有し、一次元自己相関関数は、自己相関長さ内でx=0でACの10%まで減衰し、自己相関長さは、上部および下部区域の隣接する移行部間の平均横距離の三倍よりも小さい。異方性表面変調では、一つの方向が異方性軸に垂直である。
【0044】
より好ましいのは、自己相関長さが上部および下部区域の隣接する移行部間の平均横距離の二倍よりも小さい、表面レリーフ微細構造である。なおより好ましいのは、自己相関長さが上部および下部区域の隣接する移行部間の一つの平均横距離よりも小さい、表面レリーフ微細構造である。
【0045】
もう一つの好ましい実施態様では、自己相関長さ(L)が上部および下部区域の隣接する移行部間の平均横距離の百分の一を上回る。
【0046】
本発明のまたもう一つの好ましい実施態様では、パターンは、異方性軸の異なる方向を持つ異方性微細構造の領域を含む。所与の方向の光は、具体的な局所的配向に依存して反射または抑制されるため、本発明により、レプリカとして作製された光学要素では、明および暗画素のイメージを参照することができる。追加して、そのような要素は、傾斜または回転したときに、ポジティブからネガティブへの視認の明確な変化を呈する。そのようなパターン化された表面要素は、白黒からだけでなく、グレースケールイメージからも作製することができ、例として、以降のように生成することができる。グレースケールイメージの場合は、グレースケールイメージを白黒イメージに転換するため、第一に、イメージがラスタ化され、すなわち、特定の画素解像度を持つ暗および明ゾーンにイメージが分割される。その後、白黒イメージの暗ゾーンは、第一の配向方向の異方的に散乱させるゾーンを原因とし、明ゾーンは、例を挙げると第一の配向方向に垂直である、異なる配向方向を持つ、異方的に散乱させるゾーンを原因とする。このように配置された画素のパターンを持つ要素は、第一の視角度下でポジティブとして現れ、例を挙げると、デバイスが90°回転するにつれ、ネガティブに反転する。
【0047】
あるいは、デジタル処理された各グレー値に個別の配向方向を割り当てるため、グレースケールイメージを多数のグレー値でデジタル処理することができる。デジタル処理されたグレー値の代わりに、連続的なグレースケールを連続的に変動する配向方向に変換することができる。
【0048】
本発明のまたもう一つの好ましい実施態様によると、パターンが、下部区域から上部区域および上部区域から下部区域への移行部の表面変調を持つ領域を含み、表面領域の(第一の)横方向において、20マイクロメートル毎内に(平均で)少なくとも一つの上部区域から下部区域またはその反対の移行部があり、好ましくは、追加的に、第一の方向に垂直である、表面領域の第二の横方向において、200マイクロメートル毎内に平均で少なくとも一つの上部区域から下部区域またはその反対の移行部がある。
【0049】
好ましい実施態様では、パターンは、第一の横方向において、上部区域から下部区域またはその反対の隣接する移行部間の平均横距離が0.5マイクロメートル〜10マイクロメートルの範囲に位置する、領域を含む。有利には、平均横距離は、0.5マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲に位置する。有利には、第一の横方向に垂直である第二の横方向において、上部区域から下部区域の移行部間の平均距離が100マイクロメートル未満であり、より有利には、50マイクロメートル未満である。
【0050】
異方性表面レリーフ構造を記載するため、表面レリーフアスペクト比(SRAR)という用語は、この発明の文脈について、異方性表面レリーフパターンの平均長さ対幅比として画定される。SRARは、表面レリーフ微細構造で散乱した光の方位角光学外観を強く決定付ける。少なくとも二つの横方向において、平均で同じ拡張を呈する表面レリーフパターンに対応するSRAR=1では、入射光の散乱特性は、光の方位角入射角度とほぼ無関係である。そのため、SRAR=1であるレリーフ微細構造の表面から反射した光の強度は、表面レリーフ微細構造を含有する要素が、要素の表面に垂直な軸に沿って回転したときに、ほぼ変化しない。
【0051】
SRAR>1を意味する異方性レリーフ構造では、反射した光の強度は、光の方位角投射角度に依存する。この方位角入射角度への依存を視覚的に認識することができるようにするため、SRARは、1.1よりも大きいべきである。異なる異方性軸を持つ表面レリーフ構造のパターンのイメージセットアップの可視コントラストを増加させるため、2よりも大きいSRAR値が好ましい。なおより好ましいのは、5よりも大きいSRAR値である。
【0052】
非常に大きいSRAR値では、有意な量の光が散乱する方位角角度の範囲がより小さくなり、表面レリーフパターンで作製されたイメージから反射した光を認識することがより困難になる。そのため、好ましくは、SRARが50未満であり、より好ましくは、SRARが20未満である、少なくとも一つの領域がある。
【0053】
本発明の文脈では、「表面レリーフ曲線因子」という用語は、すべての上部およびすべての下部区域上の合計領域に対する上部区域の総領域の比として画定される。好ましくは、表面レリーフ曲線因子が0.050〜0.95の範囲、より好ましくは、0.2〜0.8の範囲、なおより好ましくは、0.3〜0.7の範囲に位置する、少なくとも一つの領域がある。
【0054】
第一の工程で第一の層のみがエッチングされ、第二のエッチング工程のみが第二の層に影響する、二工程エッチングプロセスを使用して、第一の層から第二の層に表面レリーフ微細構造を複写する場合、複写プロセスでは、第一の層の深さプロファイルにある種のデジタル処理を行う。理由は、第一の層で取り除かれたそれらの部分では、第二の層のみのエッチングが発生することである。第二の層のエッチング速度は、それらの各部分と同じであることから、第二の層に複写された構造の深さは、ほぼ至る所で同じである。この結果、上部水平域および下部水平域である、主に二つの水平域を持つ微細構造となる。異なる領域に異なる深さを持つ微細構造を生成した場合、異なる水平域があることができる。
【0055】
本発明の文脈では、水平域は、構造の高さが構造の中間深さの20%未満で変動する、微細構造内の領域として画定されるものとする。
【0056】
本発明の好ましい実施態様によると、第二の層に複写された表面レリーフ微細構造の上部区域(隆起)は、実質的に同じ上方高さレベルに位置する上方水平域を形成し、第二の層に複写された表面レリーフ微細構造の下部区域(くぼみ)は、実質的に同じ下方高さレベルに位置する下方水平域を形成し、レリーフ変調深さが表面領域にわたって実質的に等しい。実質的に、同じ上方および下方高さレベルは、上方および下方水平域の高さ変動が表面レリーフ微細構造の中間深さの20%未満であり、好ましくは、10%未満であり、なおより好ましくは、5%未満であることを意味するものとする。
【0057】
本発明のまたもう一つの態様によると、マスタを使用してレプリカとして作られた、パターン化されたレリーフ微細構造を含む、光学要素が提供される。
【0058】
好ましくは、本発明による光学要素は、少なくとも部分的に反射性である。本発明による光学要素は、そのため、好ましくは、材料、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、クロムまたは顔料を使用した、反射性または部分的に反射性の層を含む。反射性または部分的に反射性の層は、さらに、光学要素の部分のみを被覆するように構造化することができる。これは、例として、層の構造化された堆積または局所的な脱金属化により、達成することができる。
【0059】
異なる屈折率を有する材料への移行部により、反射を引き起こすこともできる。そのため、本発明の好ましい実施態様では、本発明による光学要素の微細構造の表面が誘電体材料で被覆されている。高屈折率材料の例は、ZnS、ZnSe、ITOまたはTiO2である。高屈折率材料のナノ粒子を包含する複合材料も好適であることができる。被覆媒体は、デバイスの色外観を変化させるため、特定の色について吸収性であることもできる。
【0060】
特に、セキュリティ用途では、機械的衝撃、汚染に対して要素を保護するため、および、そのような要素のレプリカの不正および違法な作製を防止するため、本発明による光学要素の表面レリーフ微細構造を密閉することができる。そのため、本発明による光学要素は、好ましくは、微細構造の上部に誘電体層を含む。適切な保護および不動態フィルムは、場合により、色付きにすることができる、透明な誘電体材料である。
【0061】
パターン化された表面レリーフ微細構造に起因して、本発明による光学要素は、局所的な微細構造に依存して異なって、局所的に光を透過および/または反射する。そのため、微細構造パターンは、光で照光されたときに、透過および/または反射における異なる強度のパターンとして参照することができる。微細構造のタイプに依存して、入射光の角度および/または観察角度への光学外観の強い依存がある。
【0062】
微細構造の深さに依存して、干渉色を生成することができる。例として、黄色、橙色、バラ色、紫色、青色および緑色の色である、下方からより深い変調まで、広範な色パレットを得ることができる。なおより深い構造では、より高次の色が現れることができる。干渉色は、通常、明確な角依存を示す。特定の角度下では、色が参照されるのに対し、他の角度では、色が変化するか、消失することができる。パターンは、そのため、観察角度および/または光の入射角度に色が依存する、色付きのパターンとして認識される。
【0063】
本発明による光学要素は、他のセキュリティフィーチャを組み込むこともできる。そのいくつかは、要素の製造に使用されるマスタにおいて既に存在することができる。そのようなフィーチャは、例として、ホログラムまたはキネグラムである。第一、第二または第三のレベルのセキュリティフィーチャであることができる他のセキュリティフィーチャを、追加的なプロセスおよび/または追加的な層に追加することができる。追加的なフィーチャは、具体的な光学作用を生成することなく、永久的に可視であることができる。好ましくは、追加的に追加されたフィーチャは、例として、ここでもまた、ホログラムもしくはキネグラムまたはコレステリックもしくは干渉層によって実現される、視角度依存を示す。より好ましい実施態様では、観察ツールを使用することなく検知することができない、第二のレベルのセキュリティフィーチャが追加される。そのようなフィーチャは、例として、蛍光または複屈折材料によって導入される。ことさらに好ましいのは、異なるリタデーションまたは光学軸配向の領域を含む、複屈折性層である。そのような複屈折性層に格納されたセキュリティフィーチャは、偏光された光、例として、偏光子シートを使用した観察によってのみ、可視である。
【0064】
本発明によって作られた光学要素は、光強度の空間変調を扱う異なる用途に使用することができる。好ましくは、本発明による光学要素は、セキュリティデバイスのセキュリティ要素として使用される。具体的には、そのようなセキュリティデバイスは、偽造および改ざんに対して、文書、パスポート、免許証、株式および債券、クーポン券、小切手、証券、クレジットカード、紙幣、チケット等に適用されるか、組み込まれる。セキュリティデバイスは、さらに、ブランドまたは製品保護デバイスあるいは包装紙、梱包箱、封筒等など、梱包のための手段に適用するか、組み込まれることができる。有利には、セキュリティデバイスは、タグ、セキュリティストリップ、ラベル、繊維、糸、ラミネートまたはパッチ等の形態を取ることができる。
【0065】
高さヒストグラムに基づくメリット関数は、明確な表面レリーフ水平域を特徴付けるために有用であることができる。可能なメリット関数Mは、次のとおりである:
【数2】
【0066】
メリット関数Mでは、ピーク幅およびレリーフ変調深さの関係を使用する。その水平域周辺における上部および下部区域の偏差の範囲は、レリーフ変調深さの特定の画定された分数内に位置すべきである。Δx1およびΔx2は、全ピーク高さの高さ1/eで測定されるような二つのヒストグラムピークの幅であり、eは、自然対数の基数(e≒2.72)であり、dは、二つのピークの距離(平均水平域間距離またはレリーフ変調深さに対応する)である。
【0067】
本発明の方法で使用される表面レリーフ微細構造は、好ましくは、2を上回るメリット関数Mを有する。より好ましくは、Mが3.5を上回る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1.1】等方的に構造化された表面における光反射の図示である。
【図1.2】図1.1に類似しているが、異方的に散乱させる表面における反射からの特徴的な出力光分布を図示する。
【図2】相違する異方性方向配向を持つ画素を図示する。
【図3】基材として機能するために十分に厚い、第二の材料層の上部に表面レリーフ微細構造を含む、初期層を示す。
【図4】基材上の薄膜層である、第二の材料層の上部に表面レリーフ微細構造を含む、初期層を示す。
【図5】図5.1〜5.5は、第一の層から第二の層への表面レリーフ微細構造の複写プロセスを図示する。図5.6は複写された表面レリーフ微細構造の金属化プロセスである。
【図6】表面レリーフ微細構造の複写において、異なる微細構造深さを持つ領域をもたらすためのプロセス工程を図示する。
【図7】電気めっき(ガルバニックニッケル金属フィルム成長)によるマスタの複製である。
【図8】マスタNiシムの分離プロセスである。図8.1は、電気めっき工程の完了後の構造を図示する。図8.2は、Niシムからのマスタの分離プロセスを図示する。
【図9】製造ニッケルシムまたはホイルを製作するための電鋳および再組み合わせプロセスである。
【図10】最終要素の複製および大量製造である。図10.1は、ホットエンボス加工プロセスを図示し、図10.2は、UV鋳造および/またはエンボス加工プロセスを図示する。
【0069】
発明の詳細な説明
表面レリーフ微細構造を含む第一の材料は、通常、第二の材料の上部に薄膜層の形態で堆積される。これは図3に図示され、表面レリーフ微細構造を含む第一の材料が層21として表記され、第二の材料が層22として表記されている。層22は、図3に示唆されているように、基材の形態であることができるか、図4に図示するように、それ自体を基材23上に層として堆積させることができる。先の層の説明は、本発明による層の機能に関する。しかし、各層は、例として、接着を改善するための副層を含むことができ、および/または各材料は、例として、材料特性を修正するか、表面レリーフ微細構造の生成を支援するための複合材料であることができる。とりわけ、層21は、異方性表面レリーフ微細構造および/または接着促進剤層の配向方向を画定するためのアライメント層を含むことができる。
【0070】
表面レリーフ微細構造は、一つ以上のドライまたはウェットエッチングプロセス工程を使用して、第一の材料から第二の材料に複写される。多様なプロセスパラメータおよび材料特性により、微細構造の深さを制御することができる。好ましいドライエッチングプロセスは、プラズマエッチングである。プラズマエッチングのための好ましいガスは、酸素、アルゴン、塩素、三塩化ホウ素およびフッ化炭素である。
【0071】
原理上、基材23には、任意の種類の材料、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、シリコン、溶融石英を使用することができる。いくつかの基材材料特性は、プロセス条件に影響されることができるため、基材材料の選択では、当然のことながら、具体的なプロセス条件、例えば、例として、具体的な溶媒の使用、加熱プロセス等を考慮に入れる必要がある。基材は、重要なプロセスパラメータへの抵抗を増加させ、とりわけ、溶媒への抵抗を増加させるための特殊コーティングを含むことができる。
【0072】
層22には、任意の種類の材料、例えば、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、シリコン、溶融石英などを使用することができる。層22を基材23上の薄膜層として使用する場合、薄膜層として適用することができる材料のみが有効である。好ましくは、層22は、金属のものである。好ましい金属は、アルミニウム、銀、クロムおよび銅である。層22の材料の選択は、しかし、とりわけ、個別のエッチング工程におけるエッチング速度にかかわる、具体的なプロセス条件を考慮に入れることにより、作製される。好ましい実施態様では、層22の厚さが60nmよりも大きい。なおより好ましいのは、層22の厚さが90nmよりも大きい。
【0073】
層21は、通常、コーティングまたは蒸着させることができる材料からなる。好ましくは、層21は、重合化および/または架橋材料を含む。
【0074】
好ましくは、少なくとも一つのエッチング工程におけるエッチング速度は、第一の材料(層21)および第二の材料(層22)で異なる。エッチング速度は、パラメータ、例えば、層21および22で使用されている材料の性質と、エッチングのタイプ(ドライまたはウェットであることができる)と、ウェットエッチングプロセスの場合はエッチング溶液のタイプおよび温度と、ドライエッチングプロセスの場合はガスのタイプおよび使用されたエネルギーとに依存する。
【0075】
層21の上部に表面レリーフ微細構造を生成するための異なる公知の方法、例えば、コポリマーの自己組織化またはディウェッティング、レーザビームの射出で表面から局所的に材料を除去すること、原子間力顕微鏡(AFM)の先端で層21の表面を傷つけて溝を生成すること、金属または半導体、例えば、アルミニウムまたはシリコンの電解的なエッチング、電子ビームでの書き込み、MC層を生成すること、表面レリーフパターンをエンボス加工ツールとして使用したエンボス加工、プレポリマーを含む層の表面における局所的な重合または架橋および重合または架橋が発生しなかった領域からその後にプレポリマーを除去することがある。
【0076】
複数の先の方法を組み合わせて、表面レリーフ微細構造を生成することも可能である。これは、特に、局所的に異なる微細構造特性、例えば、微細構造の深さおよび横形状寸法のパターンの生成に有効である。異方性微細構造を持つパターンをもたらすことも可能である。エンボス加工により、例として、第一の異方性軸を持つ第一の異方性表面レリーフ微細構造を生成することができる。その後、局所的に異なる特性を持つ微細構造のパターンをもたらすため、AFMの先端で傷つけることにより、例として、異なる異方性軸または異なる周期性を持つ第二の微細構造を個別の領域に生成することができる。
【0077】
微細構造は、等方性または異方性であることができる。いくつかの領域では、微細構造が等方性であり、他の領域では、微細構造が異方性であることも可能である。微細構造は、周期的か、非周期的か、両方の組み合わせであることができる。微細構造は、異なる周期の構造の重ね合わせを呈することも可能である。
【0078】
表面レリーフ微細構造を生成するための好ましい方法では、架橋可能および非架橋可能な材料の混合物の相分離および架橋(MCテクノロジ)を使用する。少なくとも一つが架橋可能であり、少なくとも一つの他が非架橋可能である、少なくとも二つの材料の混合物を作製し、混合物を基材に適用し、架橋可能な材料の少なくとも実質的な部位を架橋させ、非架橋可能な材料の少なくとも実質的な部位を除去することにより、表面微細構造が得られる。異方性であるものとする微細構造では、例を挙げると、下部の配向層または配向させる基材表面を手段として、架橋中、架橋可能な材料を配向した状態に維持することができる。この場合は、層21は、少なくとも二つの副層を含む。
【0079】
好ましい方法では、層21の生産は、薄膜フォトアライメントフィルムをコーティングする工程と、フォトアライメントフィルムの個別の領域を異なる偏光方向の直線的に偏光されたUV光に暴露することにより、配向パターンを生成する工程と、架橋可能および非架橋可能な液晶材料のブレンドをフォトアライメントフィルムの上部にコーティングする工程と、液晶体ブレンドを架橋する工程と、例として、適切な溶媒を使用して、非架橋材料を除去する工程とを含む。なおより好ましいのは、薄膜フォトアライメントフィルムのコーティングに先行して、接着促進剤層をコーティングする工程を追加的に含む、方法である。
【0080】
液晶体ブレンドの架橋は、化学光への暴露により、実行することが好ましい。架橋プロセスでは、液晶プレポリマーの相分離および架橋を誘起する。微細コルゲート化された薄膜フィルムの基本原理および光学挙動は、例として、国際特許出願である国際公開公報第A−01/29148号に開示されている。
【0081】
本発明によると、表面レリーフ微細構造を複写するための方法は、コルゲート化された表面の下方ゾーン26における層21の材料が取り除かれ、下部の層22の部分27が解放されるまで、ウェットまたはドライエッチングにより、表面レリーフ微細構造を含む層21の厚さを減少させる工程を伴う。これは、図5.2〜5.3の工程に対応する。好ましくは、このプロセス工程における層21のエッチング速度が層22の少なくとも二倍よりも高いように、層21および22の材料と、エッチング条件とが選択される。最も好ましくは、この工程で層22がほとんどエッチングされないようなエッチング条件である。結果として、層22は、初期層21の微細構造の上方ゾーン21bの材料により、一部のみが被覆されている。
【0082】
次の工程では、ドライまたはウェットエッチングにより、層21の解放部分27を通じて層22がエッチングされる。このプロセスにより、フィルム21の微細構造の下方ゾーンに対応する、層22に微細構造化された穴または溝24がエッチングされる。フィルム21の微細構造の上方ゾーンに対応する領域では、図5.4に示すように、材料22bが残存する。したがって、このプロセスにより、層21の微細構造が層22に複写される。好ましくは、このプロセス工程において、層22のエッチング速度が層21の少なくとも二倍よりも高いように、層21および22の材料と、エッチング条件とが選択される。最も好ましくは、この工程で層21の材料がほとんどエッチングされないようなエッチング条件である。層22が基材23上の薄膜層である場合は、解放部分のすべての金属がエッチングして除かれるように、エッチング時間を選択することができる。この場合は、表面全体にわたり、層22の微細構造のよく画定された同一の深さが達成される。
【0083】
本発明によると、あるいは、層21および層22の両方の材料が同時にエッチングされる、単一のエッチング工程を使用することができる。この場合は、層22のエッチング速度が層21よりも高いように、層21および22の材料と、エッチング条件とを選択することが好ましい。より好ましくは、層22のエッチング速度が層21の二倍超よりも高い。最も好ましくは、層22のエッチング速度が層21の5倍超よりも高い。そのような単一のエッチングプロセスでは、層21の微細構造の下方ゾーン26(溝、くぼみ)に対応する、それらの領域で既に層22のエッチングが開始されている一方、層21のエッチングが継続する。そのようなプロセスは、プロセスパラメータのより良好な制御を要求するものの、プロセス工程数を減少させ、総加工時間を低減することもできる。
【0084】
層22にエッチングされた微細構造の深さは、層22のエッチング時間およびエッチング速度に依存する。よって、エッチング時間を制御することにより、微細構造の深さを調整することが可能である。好ましくは、複写された微細構造の深さが60nmよりも大きく、より好ましくは、複写された微細構造の深さが90nmよりも大きい。
【0085】
好ましくは、複写された微細構造の深さが1μm未満であり、より好ましくは、複写された微細構造の深さが700nm未満である。本発明によると、パターン化された表面レリーフ微細構造は、異なる深さの領域を含むことができる。結果として、そのような微細構造を用いる光学要素は、局所的に異なる色またはグレーレベルで現れ、さらに異なる角度での観察時に変化する。本発明の好ましい実施態様によると、複写された微細構造の深さは、異なる領域で異なる。複写された微細構造において、異なる深さの領域を生成するための多数の方法がある。これらの方法は、原則として、層22の局所的にブロックまたは遅延させるエッチングに基づく。
【0086】
第一の実施態様では、層22の上部と層21のくぼみ26との間の平均距離に対応する、層21の下方部分26の平均厚さが、異なる領域で異なる。図6.1は、層22の上部に対する距離が異なる微細構造くぼみ26a、26b、26cを持つ、三つの領域a、b、cを含む、層21の微細構造を描写する。層22に対し、くぼみ26aが最も小さく、26cが最大の距離を呈する。層21の厚さを減少させる、層21の第一のエッチング工程は、その後、くぼみ26aの真下のみ、領域a内において、表面レリーフ微細構造の材料が取り除かれ、下部の第二の層22の対応する部分27aが解放されるように、制御される(図6.2)。その後のエッチング工程では、これらの27a部分のみで層22がエッチングされる(図6.3)。
【0087】
領域bの微細構造を層22に複写するため、エッチング工程を反復し、ここでもまた、層21がエッチングされ、表面レリーフ微細構造のくぼみ26bの真下の材料が取り除かれ、下部の第二の層22の部分27bが解放されるまで、その厚さをさらに減少させることを意味する(図6.4)。そのうえで、ここでもまた、層22をエッチングし、領域bの27b部分におけるエッチングが開始される一方、領域におけるエッチングが継続されることに帰結する(図6.5)。
【0088】
エッチングの第三の期間では、層22のもう一つのエッチング工程でも、先の手順に従い、領域cの微細構造を層22にエッチングすることができるように、くぼみ26cの真下の材料がエッチングして除かれる(図6.6)。領域cをエッチングする一方、領域aおよびbのエッチングが継続される。最終的に、層21の残存部分を除去することができる。
【0089】
層22の結果的な微細構造(図6.7)は、複写された微細構造の深さが異なる、三つの領域a、b、cを呈する。層22の溝の深さは個別のエッチング工程で使用されたエッチング条件、とりわけ、エッチング時間に依存するので、溝27a、27b、27cの微細構造の深さは、くぼみ26a、26b、26cの高さの比に対し、直線的である必要はない。
【0090】
図6.7などの微細構造は、異なる領域の、異なる色またはグレーレベルの外観および異なる光学角挙動につながる。
【0091】
本発明の好ましい実施態様によると、両方の材料を同じプロセス、例として、同じウェットエッチングプロセス工程でエッチングすることができるように、層21および22の材料ならびにエッチング条件を選定することにより、先に記載したような複数個のエッチングプロセスが単一のエッチングプロセス工程に置き換えられる。好ましくは、エッチング速度が層22よりも高い。より好ましくは、層22のエッチング速度が層21の2倍超よりも高い。図6.1などの微細構造のエッチングを開始するときには、層22でエッチングが開始される前に、第一に、くぼみ26a、26bおよび26cの真下の材料を除去する必要がある。その後、図6.1〜6.7の順序に従い、エッチングが連続的に進行する。層22へのエッチングの遅延は、エッチング速度が時間にわたって一定であれば、くぼみ26a、26bおよび26cの真下の層21の厚さに直線的に依存する。そのため、26a、26b、26cの異なるレベルにより、領域a、b、cの異なる深さが制御される。
【0092】
図6では、層21における微細構造の矩形の形態は、図示の簡略のためにのみ選定されており、具体的な形状への任意の制約を示唆しないものとする。層21における微細構造の形態は、それを生成するための方法に依存し、任意の形状であることができる。層22に生成された微細構造の異なる深さを持つ、任意の数の領域があることもできる。図6の三つの領域は、単なる例である。
【0093】
図6.1のように、くぼみの異なる高さレベルを持つ微細構造を生成するための異なる方法がある。微細構造を生成する前に、例として、均一な高さの層から開始することにより、異なる高さレベルを準備することができる。その後、例として、プリントまたは真空堆積技法によって同じまたはもう一つの材料の薄膜層を局所的に適用するか、例として、ドライもしくはウェットエッチングまたはレーザアブレーションによって層の上部から材料を局所的に除去することにより、厚さパターン化をもたらすことができる。異なる厚さを持つ層21を異なる領域に直接的に適用することも可能である。異なる高さレベルを確立した後、層の上部に微細構造が生成される。微細構造が存在する後に、例として、プリントまたは真空堆積技法によって同じまたはもう一つの材料の薄膜層を局所的に適用するか、例として、ドライエッチングを使用することによって異なる領域において層21の厚さを異なって減少させることにより、くぼみの異なる高さレベルを準備することもできる。均一な厚さを持つ層において、局所的に異なる深さを持つ微細構造をもたらすことにより、くぼみの異なる高さレベルを達成することもできる。微細構造の異なる深さを生成するためのプロセスは、微細構造を生成する方法に依存する。例として、既に、構造の異なる深さを呈している微細構造をエンボス加工するか、局所的に異なる力を使用して、AFMの先端で傷つけるか、レーザアブレーションを使用して、異なるエネルギーを適用するか、MCテクノロジを使用している場合には、局所的に異なる光強度または光エネルギーを適用することにより、相分離と、そのため、微細構造深さとを制御する。
【0094】
層22に溝の異なる深さを生成するための代替実施態様では、図5.2のように、くぼみの均一な高さレベルを持つ層21の微細構造からプロセスが開始され、第一のエッチング工程後、図5.3のように、くぼみの真下の材料が除去される。適当な材料の薄膜層を局所的に適用することにより、図6.2などの構造を達成することができ、先の図6に関する説明によってさらにプロセスされることができる。
【0095】
微細構造の形状を採用して図6.2に類似した構造で生起する薄膜層を局所的に適用する代わりに、特定の領域における層22の解放部分27をエッチングされることから保護するため、エッチングされた層21上の特定の領域において、微細構造の溝を満たし、その形状を再現しない、より厚い層として、層21の材料と異なる材料を適用することができる。層21の材料を除去することなく、例として、溶媒により選択的に除去することができるように、特定の領域を保護するための材料を選定すべきである。層22への微細構造のエッチングは、その後、被覆されていない領域のみで実施される。保護材料を全面的にまたは特定の領域のみで除去した後、層21の微細構造の追加的な領域が層22に複写される一方、第一のエッチング工程で複写された領域において微細構造の深さが増加する作用により、層22のエッチングを継続することができる。層22において、微細構造の異なる深さを呈する多数の異なる領域をもたらすため、先の手順を複数回にわたって反復することができる。
【0096】
異なる深さの溝を生成するための代替方法では、層21の適用前に、例として、標準的なプリント技法、例えば、インクジェットプリントまたは真空堆積により、適当な材料の薄膜層のパターンを層22の上部に適用する。結果的な構造は、領域bおよびcにおいて、層21の下方部分が副層として追加的な層を含む、図6.1の構造に対応する。追加的なプロセス工程は、その後、図6にかかわり、先に記載された工程に従う。
【0097】
層22に微細構造をエッチングする工程後、好適な溶媒もしくは溶液または他の手段、例えば、プラズマ洗浄などにより、層21の残存部分を除くことができる(図5.5)。
【0098】
層21から複写された層22の微細構造は、レプリカを作製するためのマスタとして使用することができ、オリジナルマスタとも呼ばれる。
【0099】
本発明によると、マスタの微細構造をもう一つの材料(レプリカ材料)に接触させ、レプリカ材料との接触に起因して、マスタの表面レリーフ微細構造を逆の表面レリーフプロファイルでレプリカ材料に再現することにより、マスタのレプリカが作製される。
【0100】
レプリカ材料は、ポリマー、架橋可能なモノマーおよび金属、例えば、例として、ニッケル、クロム、アルミニウムなどであることができる。
【0101】
例えば、コーティング、プリント、浸漬、蒸着、スパッタリング、鋳造、無電解めっきまたは電気めっきの方法により、レプリカ材料を微細構造に適用することができる。電気めっきにより、レプリカ材料を適用する場合は、良好な電導性を達成するため、第一に、微細構造の上部に薄膜金属層、例えば、銀、クロム、金、銅、アルミニウムなどを堆積させることが要求される(図5.6)。マスタにレプリカ材料を適用する代わりに、マスタをエンボス加工ツールとして使用し、公知の方法により、レプリカ材料に表面レリーフ微細構造をエンボス加工することができる。レプリカ材料は、ポリマー、架橋可能なモノマー、金属、例えば、例として、ニッケル、クロム、アルミニウムなどであることができる。
【0102】
複製プロセスが終了した後、レプリカをマスタから分離させる。レプリカは、光学要素として使用することができるか、それ自体、レプリカを作製するためのマスタ(子マスタ)として使用することができる。オリジナルマスタのレプリカは、オリジナルマスタの表面レリーフプロファイルと相対的に逆の表面レリーフプロファイルを呈する一方、レプリカのレプリカは、オリジナルマスタと同じ表面レリーフプロファイルを示す。
【0103】
複製プロセスのタイプおよび適用されたプロセス条件に依存して、複製された微細構造の深さは、それが複製されたマスタの深さよりも小さいことができる。好ましくは、複製された微細構造の深さは、マスタの微細構造の対応する部分の深さの70%よりも大きく、より好ましくは、80%よりも大きく、なおより好ましいのは、90%よりも大きい。
【0104】
本発明の好ましい方法では、電気めっきにより、オリジナルマスタのレプリカが形成される。通常、ニッケルを複製材料として使用する。結果的なレプリカは、ニッケルシムと呼ばれる。オリジナルマスタならびに子マスタを多くの回にわたって使用し、レプリカを作製することができる。オリジナルマスタについて先に記載したのと同じ方式で、レプリカからのレプリカを作製することができる。
【0105】
通常、例として、光学要素として使用されるレプリカの大量製造のため、ロールツーロール製造装置が使用される。例として、アクリルコーティングでコーティングされた、ポリエステルフィルムまたは他の類似した材料が装置を通じて移動する。激しい熱および圧力下で、シムが表面レリーフ微細構造をフィルムに押し付ける(図10.1)。その後、エンボス加工されたフィルムがロールに巻き取られる。
【0106】
エンボス加工の代わりに、UV鋳造方法を使用することができる。UV鋳造は、深い微細構造および/または非常に安定的なOVDデバイスを製作するためにことさらに有効である(図10.1)。最終デバイスの仕様に依存して、熱伝達機能の有無を問わず、金属化されているか、半金属化されているか、透明であるかのいずれかである、複数のタイプの基材を使用することができる。
【0107】
いくつかの用途では、エンボス加工またはUV鋳造後に金属層を適用することが好ましい。この場合は、真空堆積により、微細構造上に金属層を堆積させることができる。場合により、例として、ラッカーによるもう一つのコーティングをフィルムに適用し、インクで印刷することができる表面をもたらすことができる。
【0108】
例1
図5は、本発明による金属層への表面レリーフ微細構造の複写プロセスを図示する。
【0109】
標準的なコーティング技法、例えば、蒸着またはスパッタリングを使用して、ガラスまたはプラスチック基材23にアルミニウムの厚さ100nmの金属層22をコーティングする。
【0110】
金属層22上に、先に記載し、かつ、国際公開公報第A‐01/29148号に開示されているMCテクノロジ手順により、クロムフォトマスクを用いて、順次、異なる領域で異なる偏光方向を持つUV光に暴露され、したがって、配向パターンを画定する、フォトアライメント層を使用して、表面レリーフ微細構造を呈する層21を生成する(図5.2)。
【0111】
その後、微細構造の下方ゾーン26の場所において、下部のアルミニウム層の部分が解放されるまで、層21をプラズマエッチングする(図5.3)。この処理は、層21の材料の性質に依存して、標準的な酸素および/またはアルゴンプラズマを使用して実行することができる。結果として、層21の厚さが減少し、アルミニウム層22は、初期層21における微細構造の上方ゾーン21bの材料のみにより、一部が被覆されている。
【0112】
次の工程では、適切なエッチ溶液を使用して、一部が解放されたアルミニウム層22をウェットエッチングする(図5.4)。このプロセスにより、層21の微細構造の下方ゾーン26に対応する、微細構造化された穴または溝24がアルミニウム層22にエッチングされる。層21の微細構造の上方ゾーンに対応する領域には、アルミニウム22bが残存する。したがって、このプロセスでは、層21の微細構造がアルミニウム層22に複写された。この微細構造は、その後、さらなる加工のための起点として使用される。エッチング時間をエッチング溶液の温度と組み合わせることにより、層22における微細構造の深さを、例として、制御および調整することができる。解放部分におけるすべての金属がエッチングして除かれるように、エッチング時間を選択することができる。この場合は、表面全体にわたり、層22の微細構造のよく画定された同一の深さが達成される。
【0113】
場合により、先に記載されたようなプラズマエッチングプロセスを使用して、上方ゾーン21bの残存材料を完璧に除去することができる(図5.5を参照されたい)。
【0114】
次の工程では、良好な電導性を達成するため、薄膜銀層25を微細構造22b上にスパッタリングすることにより、得られた微細構造化アルミニウム層をさらに加工する(図5.6)。通常の厚さは、約80nmであるか、より高い。
【0115】
その後、得られた導電性マスタをフレーム内に設置し、ニッケルの供給に沿って、槽の内側に置く(図7)。金属性層25をDC電力供給に接続し、電気的な電流を作り、微細構造がニッケルで電気めっきされることを引き起こす。電流強度および時間を調整し、要求されたニッケル層厚さを獲得する。このプロセスは、ニッケル層の所望の厚さに依存して、数十分〜数時間を取ることができる(例として、Bernard Gaidaのテキストブックである「Introduction to the Galvanic technique」、2008、ISBN 978−3−87480−242−0を参照されたい)。その後、基材上に電気めっきされた微細構造を持つフレームを槽から除去し、脱イオン水で洗う。
【0116】
薄膜ニッケルコーティングである、金属マスタシムをマスタプレートから除去する(図8)。このシムは、起点におけるオリジナル表面レリーフ微細構造のネガティブ(逆)を含む。
【0117】
Niシムおよびマスタの容易な分離に起因して、Niシムの準備のために同じマスタを複数回にわたって使用できることが実験的に見られた。
【0118】
同じプロセスを使用し、複数のシムがもたらされる。金属マスタシムから作られたシムは、「グランドマザー」として公知である。「グランドマザーシム」は、起点のポジティブイメージを含有する。このとき、オリジナルイメージの多様な複写を一つのシム上に列でコピーすることができ(図9を参照されたい)、単一の刻印で複数個の複写をプリントするために使用する(再組み合わせ)。シムの一連の世代は、「親」、「子」および「スタンパシム」などの多様な名称で公知である。これらのシムの世代は、起点のネガティブおよびポジティブイメージ間で交互となる。最終要素をプリントするための実際の製造が運転され、これらのシムがネガティブイメージであるときには、スタンパシム(または製造シム)を使用する。
【0119】
例2
例1とは対照的に、図3に図示するように、表面レリーフ微細構造を含む層21を金属基材の上部に生成する。層21の生成およびエッチングのためのパラメータは、例1と同じである。例1とは対照的に、基材22が例1の層22よりもはるかに厚いことから、層22のエッチングプロセスは、自動的に停止しない。使用される基材に依存して、複数のエッチング手段として、適切な溶液を使用したウェットエッチングまたは適切なガスを使用したドライエッチングのいずれかを使用することができる。一例として、標準的な方法を使用して、シリコンを洗浄およびエッチングする。(場合により)HFに基づく溶液を使用し、酸化物(自然酸化物層または酸化物がコーティングされた層のいずれか)を除去し、続いてDI水での強い水洗いをすることができる。
【0120】
次の工程では、異方性または等方性エッチングを実施し、例として、KOHをエッチング溶液として使用することにより、要求された微細構造深さを達成する。エッチング時間をエッチング溶液の温度と組み合わせることにより、層22の微細構造の深さを、例として、制御および調整することができる。
【0121】
層21から基材層22に所望の深さで表面レリーフ微細構造を複写した後、さらなる加工工程は、例1の工程と同じである。
【0122】
例3
接着促進剤としてシラン誘導体の薄膜層を事前にコーティングされたシリコンウエハの上部に、表面レリーフ微細構造を含む層21を適用した。250ml/分の酸素流量および160Wの電力で7分間の酸素プラズマ中でのドライエッチングにより、層21のエッチングを実行した。層22をエッチングする前に、基材22の上部の酸化物層を緩衝HFに基づく水溶液中で除去し、その後に、脱イオン水で強く水洗いした。次の工程では、50℃の温度で3.5分にわたり、40重量%の水酸化カリウム(KOH)のエッチング水溶液中で微細構造を基材22にエッチングした。AFMを使用して測定した、層22の微細構造の結果的な深さは、500nmであった。視覚的な観察により、複写された微細構造の領域におけるシリコンウエハ(層22)は、緑色として現れたのに対し、もう一つの角度から観察されたときには、黄色に現れた。最終的に、250ml/分のガス流量および160Wの電力で8分の酸素プラズマにより、上方ゾーン21bの残存材料を完璧に除去した(図5.5)。
【0123】
例4
例3の得られた微細構造化層をポリマーフィルムに複製した。例3で生成された微細構造表面の上部に、多アクリル酸化合物の混合物をスピンコーティングした。その後に、UV−A光への暴露により、コーティングされたアクリル酸層を室内温度で架橋させた。その後、結果的なポリマーフィルムをシリコンウエハから除去した。フィルムの視覚的な観察により、シリコンウエハ微細構造の微細構造に触れている領域は、第一の角度下で緑色に現れたのに対し、もう一つの角度から観察されたときには、黄色に現れた。このため、シリコンウエハの微細構造がポリマーフィルムに複製された。AFMにより、微細構造の深さを測定し、結果的に500nmの値となった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン化された表面レリーフ微細構造を複製するための方法であって、
− パターン化された表面レリーフ微細構造を持つ第一の層(21)を、第二の層の上部に生成する工程であって、第一の層が第一の材料を含み、第二の層が第二の材料を含む、工程と、
− 第一の層の微細構造を第二の層に複写し、それにより、少なくとも一つのドライまたはウェットエッチング工程を伴うことにより、マスタを生成する工程と
を含み、
− マスタの微細構造をレプリカ材料に接触させ、マスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルでマスタの微細構造をレプリカ材料に再現する、追加的な工程を特徴とする、
方法。
【請求項2】
エッチング工程の一つにおいて、表面レリーフ微細構造の下方ゾーン(26)の材料が取り除かれ、下部の第二の層(22)の部分(27)が解放されるまで、第一の層の厚さを減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複写された微細構造の深さがオリジナル微細構造の深さよりも大きい、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
異なる領域において、複写された微細構造の深さが異なる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
異方性微細構造を含む、パターンの少なくとも一つの領域がある、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
パターンが、微細構造が非周期的である少なくとも一つの領域を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
表面レリーフアスペクト比(SRAR)が50未満である、少なくとも一つの領域がある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
表面レリーフ曲線因子が0.2〜0.8の範囲に位置する、少なくとも一つの領域がある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
パターン化された表面レリーフ微細構造がMCテクノロジによって生成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
パターンが、下部区域から上部区域および上部区域から下部区域への移行部の表面変調を持つ領域を含み、表面領域の(第一の)横方向に、20マイクロメートル毎内に(平均で)少なくとも一つの上部区域から下部区域またはその反対の移行部があり、好ましくは、追加的に、第一の方向に垂直である、表面領域の第二の横方向に、200マイクロメートル毎内に平均で少なくとも一つの上部区域から下部区域またはその反対の移行部がある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
子マスタをレプリカ材料に接触させ、子マスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルで子マスタの微細構造をレプリカ材料に再現することにより、レプリカを子マスタとして使用してパターン化された表面レリーフ微細構造を複製する、追加的な工程を特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
より高次のレプリカが子マスタとして使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
マスタ(子マスタ)の微細構造をレプリカ材料に接触させる前に、薄膜金属層が微細構造の上部に適用されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コーティング、プリント、浸漬、蒸着、スパッタリング、鋳造、無電解めっきまたは電気めっきの一つにより、微細構造にレプリカ材料が適用されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
表面レリーフ微細構造が、レプリカ材料にエンボス加工されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
さらなる複製のためのマスタとして、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法により作られた表面レリーフ微細構造のレプリカの使用。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法によりレプリカとして作られた、パターン化された表面レリーフ微細構造を含む、光学要素。
【請求項18】
要素が少なくとも部分的に反射性であることを特徴とする、請求項17に記載の光学要素。
【請求項19】
表面レリーフ微細構造の上部に誘電体層を含むことを特徴とする、請求項17または18に記載の光学要素。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の光学要素を含む、光学セキュリティデバイス。
【請求項1】
パターン化された表面レリーフ微細構造を複製するための方法であって、
− パターン化された表面レリーフ微細構造を持つ第一の層(21)を、第二の層の上部に生成する工程であって、第一の層が第一の材料を含み、第二の層が第二の材料を含む、工程と、
− 第一の層の微細構造を第二の層に複写し、それにより、少なくとも一つのドライまたはウェットエッチング工程を伴うことにより、マスタを生成する工程と
を含み、
− マスタの微細構造をレプリカ材料に接触させ、マスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルでマスタの微細構造をレプリカ材料に再現する、追加的な工程を特徴とする、
方法。
【請求項2】
エッチング工程の一つにおいて、表面レリーフ微細構造の下方ゾーン(26)の材料が取り除かれ、下部の第二の層(22)の部分(27)が解放されるまで、第一の層の厚さを減少させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複写された微細構造の深さがオリジナル微細構造の深さよりも大きい、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
異なる領域において、複写された微細構造の深さが異なる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
異方性微細構造を含む、パターンの少なくとも一つの領域がある、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
パターンが、微細構造が非周期的である少なくとも一つの領域を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
表面レリーフアスペクト比(SRAR)が50未満である、少なくとも一つの領域がある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
表面レリーフ曲線因子が0.2〜0.8の範囲に位置する、少なくとも一つの領域がある、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
パターン化された表面レリーフ微細構造がMCテクノロジによって生成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
パターンが、下部区域から上部区域および上部区域から下部区域への移行部の表面変調を持つ領域を含み、表面領域の(第一の)横方向に、20マイクロメートル毎内に(平均で)少なくとも一つの上部区域から下部区域またはその反対の移行部があり、好ましくは、追加的に、第一の方向に垂直である、表面領域の第二の横方向に、200マイクロメートル毎内に平均で少なくとも一つの上部区域から下部区域またはその反対の移行部がある、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
子マスタをレプリカ材料に接触させ、子マスタの表面レリーフプロファイルと比較して逆の表面レリーフプロファイルで子マスタの微細構造をレプリカ材料に再現することにより、レプリカを子マスタとして使用してパターン化された表面レリーフ微細構造を複製する、追加的な工程を特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
より高次のレプリカが子マスタとして使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
マスタ(子マスタ)の微細構造をレプリカ材料に接触させる前に、薄膜金属層が微細構造の上部に適用されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
コーティング、プリント、浸漬、蒸着、スパッタリング、鋳造、無電解めっきまたは電気めっきの一つにより、微細構造にレプリカ材料が適用されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
表面レリーフ微細構造が、レプリカ材料にエンボス加工されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
さらなる複製のためのマスタとして、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法により作られた表面レリーフ微細構造のレプリカの使用。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法によりレプリカとして作られた、パターン化された表面レリーフ微細構造を含む、光学要素。
【請求項18】
要素が少なくとも部分的に反射性であることを特徴とする、請求項17に記載の光学要素。
【請求項19】
表面レリーフ微細構造の上部に誘電体層を含むことを特徴とする、請求項17または18に記載の光学要素。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか一項に記載の光学要素を含む、光学セキュリティデバイス。
【図1.1】
【図1.2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5.1】
【図5.2】
【図5.3】
【図5.4】
【図5.5】
【図5.6】
【図6.1】
【図6.2】
【図6.3】
【図6.4】
【図6.5】
【図6.6】
【図6.7】
【図8.1】
【図8.2】
【図9】
【図7】
【図10】
【図1.2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5.1】
【図5.2】
【図5.3】
【図5.4】
【図5.5】
【図5.6】
【図6.1】
【図6.2】
【図6.3】
【図6.4】
【図6.5】
【図6.6】
【図6.7】
【図8.1】
【図8.2】
【図9】
【図7】
【図10】
【公表番号】特表2012−517919(P2012−517919A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550460(P2011−550460)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000909
【国際公開番号】WO2010/094441
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(596098438)ロリク アーゲー (22)
【氏名又は名称原語表記】ROLIC AG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000909
【国際公開番号】WO2010/094441
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(596098438)ロリク アーゲー (22)
【氏名又は名称原語表記】ROLIC AG
【Fターム(参考)】
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