説明

表面仕上げ方法

【課題】ポリ塩化ビニル面の塗り替えに適した仕上げ方法を提供する。
【解決手段】本発明の表面仕上方法は、ポリ塩化ビニル被覆鋼板、ポリ塩化ビニルシート等のポリ塩化ビニル面に対し、特定の被覆材によって被膜を形成するものである。当該被覆材としては、ポリオール、ポリイソシアネート、及び溶剤を必須成分とし、前記ポリオール中にポリエステル含有アクリルポリオールを40重量%以上含み、前記溶剤中にケトン化合物を10〜50重量%含むものを用いる。本発明では、当該被覆材によって被膜を形成した後、さらに、上塗材によって被膜を形成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル被覆鋼板、ポリ塩化ビニルシート等のポリ塩化ビニル面の表面仕上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリ塩化ビニルは、耐酸性、耐アルカリ性、耐水性、耐石油性等の物性に優れることから、建造物等の各種部材に用いられている。その一例として、ポリ塩化ビニル被覆鋼板は、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等の各種鋼板に、ポリ塩化ビニルの被膜を形成させたものであり、屋根材、外壁材等として広く使用されている(例えば特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−25557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
但し、このようなポリ塩化ビニルからなる面(以下「ポリ塩化ビニル面」という)は、太陽光や風雨に晒されると、紫外線の影響等によって変色したり、大気中の塵埃等によって汚染が生じたりするため、初期の外観を長期間維持するには限界がある。そのため、劣化したポリ塩化ビニル面に対しては、塗り替え塗装による表面仕上げが必要となる。また、劣化が進行していなくても、色や形状等の意匠性を変更する要望がある場合には、塗り替えの必要が生じる。
【0005】
ところが、上述のようなポリ塩化ビニル面を有する材料では、柔軟性、加工性等を付与するため、一般的にその構成成分中に可塑剤が含まれている。このような可塑剤は、塗り替えによって形成された被膜に移行して、被膜を軟質化し、ひいては大気中の塵埃物質の付着を助長してしまうという問題がある。加えて、ポリ塩化ビニル面を塗り替える際には、通常の被覆材を用いても密着性を確保することが難しいという問題がある。
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、ポリ塩化ビニル面の塗り替えに適した仕上げ方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定ポリオール、イソシアネート、及び特定溶剤を必須成分とする被覆材によって被膜を形成することに想到し、本発明を完成させるに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.ポリ塩化ビニル面に対し、
ポリオール、ポリイソシアネート、及び溶剤を必須成分とし、前記ポリオール中にポリエステル含有アクリルポリオールを40重量%以上含み、前記溶剤中にケトン化合物を10〜50重量%含む被覆材によって被膜を形成することを特徴とする表面仕上げ方法。
2.ポリ塩化ビニル面に対し、
ポリオール、ポリイソシアネート、及び溶剤を必須成分とし、前記ポリオール中にポリエステル含有アクリルポリオールを40重量%以上含み、前記溶剤中にケトン化合物を10〜50重量%含む被覆材によって被膜を形成し、次いで、
上塗材によって被膜を形成することを特徴とする表面仕上げ方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の仕上げ方法は、ポリ塩化ビニル面の塗り替えに適したものである。本発明によれば、ポリ塩化ビニル面に対する密着性に優れるとともに、可塑剤の移行を抑制することが可能な被膜が形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0011】
本発明は、ポリ塩化ビニル面に対して適用するものであり、とりわけ可塑剤を含むポリ塩化ビニル面に対して有効に作用するものである。このようなポリ塩化ビニル面を有する材料としては、ポリ塩化ビニル被覆鋼板、ポリ塩化ビニルシート等が挙げられる。このうち、ポリ塩化ビニル被覆鋼板は、各種鋼板にポリ塩化ビニルの被膜を形成させたものである。ポリ塩化ビニル被覆鋼板としては、JIS K6744に規定された材料等が例示される。
【0012】
ポリ塩化ビニル被覆鋼板に使用される鋼板としては、例えば、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板等が挙げられる。ポリ塩化ビニル被膜に用いられるポリ塩化ビニル樹脂としては、懸濁重合あるいは乳化重合等の方法で製造されたものが使用できる。また、ポリ塩化ビニル被膜に配合される可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチルエステル、トリメリット酸トリオクチルエステル、トリメリット酸トリイソデシルエステル、アジピン酸ジオクチルエステル、セバチン酸ジオクチルエステル、セバチン酸ジイソデシルエステル、アゼライン酸ジオクチルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等が挙げられる。
【0013】
本発明では、上記ポリ塩化ビニル面に対し、特定の被覆材によって被膜を形成する。この被覆材としては、ポリオールとしてポリエステル含有アクリルポリオール、当該ポリオールと硬化反応を生じる成分としてポリイソシアネートを含み、さらに溶剤としてケトン化合物を含むものである。本発明では、このような被覆材を用いることにより、ポリ塩化ビニル面に対する密着性と可塑剤移行防止性を発揮することができる。ポリオール成分として、通常のアクリルポリオールのみを使用した場合には、ポリ塩化ビニル面への密着性において十分な性能を得ることが難しく、また可塑剤移行防止性の点でも不利となる。
【0014】
上記被覆材を構成する成分のうち、ポリエステル含有アクリルポリオールは、アクリルポリオールからなる主鎖とポリエステルからなる側鎖から構成されたものである。このようなポリエステル含有アクリルポリオールは、例えば、重合性不飽和基を有するポリエステル樹脂(a)と、水酸基含有モノマー(b)と、その他の重合性モノマー(c)を反応させて得ることができる。
【0015】
上記成分のうち、重合性不飽和基を有するポリエステル樹脂(a)(以下「(a)成分」という)は、多塩基酸と多価アルコールを縮合反応させてポリエステル樹脂を得る際に、多塩基酸及び/または多価アルコールとして、重合性不飽和基を有するものを一部使用することによって得ることができる。また、(a)成分は、ポリエステル樹脂中の水酸基またはカルボキシル基と反応可能なモノマー、具体的にはマレイン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル等を、ポリエステル樹脂と反応させることによって得ることもできる。(a)成分は、ポリエステル含有アクリルポリオール中、通常2〜20重量%程度の比率で使用される。
【0016】
水酸基含有モノマー(b)(以下「(b)成分」という)は、水酸基と重合性不飽和基を有する化合物であり、ポリイソシアネートとの反応点を提供するものである。このような(b)成分としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が使用できる。(b)成分は、ポリエステル含有アクリルポリオールの水酸基価が5〜200KOHmg/g(好ましくは10〜150KOHmg/g、より好ましくは20〜100KOHmg/g)となる範囲内で導入すればよい。
【0017】
その他の重合性モノマー(c)(以下「(c)成分」という)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジルフマレート等のエポキシ基含有モノマー;マレイン酸アミド、(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマー等が使用できる。(c)成分は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが望ましい。
【0018】
さらに、(c)成分としては、少なくともカルボキシル基含有モノマーを含むものが望ましい。このカルボキシル基含有モノマーは、カルボキシル基と重合性不飽和基を有する化合物である。(c)成分にカルボキシル基含有モノマーが含まれることにより、被覆材の硬化反応が促進され、密着性、可塑剤移行防止性等の効果発現にも有利にはたらく。カルボキシル基含有モノマーは、ポリエステル含有アクリルポリオールの酸価が0.1〜30KOHmg/g(好ましくは1〜25KOHmg/g、より好ましくは2〜20KOHmg/g)となる範囲内で導入することが望ましい。
【0019】
本発明におけるポリエステル含有アクリルポリオールは、上記モノマー成分をラジカル重合することにより得ることができる。ポリエステル含有アクリルポリオールの重量平均分子量は、通常5000〜200000(好ましくは10000〜100000)程度である。また、ガラス転移温度は、通常0〜100℃(好ましくは30〜70℃)程度である。
【0020】
本発明被覆材では、ポリオール全体に対し、固形分換算で上記ポリエステル含有アクリルポリオールの重量比率が40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55重量%以上となるように調製する。このような範囲内であれば、本発明の効果を得ることが可能となる。ポリオールとしては、必要に応じポリエステル含有アクリルポリオール以外のポリオールを含んでもよいが、ポリオールがポリエステル含有アクリルポリオールのみで構成される態様も好適である。なお、ポリエステル含有アクリルポリオール以外のポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。この中では、アクリルポリオールが好適である。
アクリルポリオールの水酸基価は5〜200KOHmg/g(好ましくは10〜150KOHmg/g、より好ましくは20〜100KOHmg/g)であることが望ましい。また、アクリルポリオールの酸価は0.1〜30KOHmg/g(好ましくは1〜25KOHmg/g、より好ましくは2〜20KOHmg/g)であることが望ましい。重量平均分子量は、通常5000〜200000(好ましくは10000〜100000)程度であり、ガラス転移温度は、通常0〜100℃(好ましくは30〜70℃)程度である。
なお、上記の水酸基価、酸価は、いずれも樹脂固形分に対する値である。
【0021】
本発明被覆材におけるポリイソシアネートは、上記ポリオールとの硬化反応を生じる成分である。本発明では、このような硬化反応により、密着性、可塑剤移行防止性等において被膜形成初期段階から十分な効果が発現される。空気中の水分によって硬化反応を生じる湿気硬化型ウレタン樹脂等では、硬化までに相当の時間を要するため、被膜形成初期段階での効果発現が不十分となりやすい。
【0022】
ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(pure−MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等、あるいはこれらをアロハネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン)、3量化(イソシアヌレート)、アダクト化、カルボジイミド反応等によって誘導体化したもの等が使用できる。
これらポリイソシアネートとポリオールとの混合比率は、NCO/OH比率で通常0.7〜2.0、好ましくは0.8〜1.5となるような範囲内であればよい。
【0023】
本発明被覆材では、溶剤としてケトン化合物を含む。このようなケトン化合物は、ポリ塩化ビニル面への密着性発現に大きく寄与するものである。さらに、このようなケトン化合物は、被膜の乾燥促進作用を発現するため、可塑剤移行防止性向上の点においても有効に作用するものである。
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。本発明では、この中でも、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンから選ばれる1種以上を含むことが望ましい。
【0024】
本発明では、溶剤全体におけるケトン化合物の重量比率を10〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、より好ましくは30〜40重量%となるように調製する。このような範囲内であれば、本発明の効果を十分に得ることができる。ケトン化合物が上記比率よりも小さい場合は、密着性、可塑剤移行防止性等において十分な効果が得られ難くなる。逆に、ケトン化合物が上記比率よりも大きい場合は、被膜形成時の乾燥が早くなりすぎ、作業性、密着性等に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0025】
ケトン化合物以外の溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸n−アミル、酢酸メチルセロソルブ、酢酸セロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸メトキシプロピル、酢酸メトキシブチル、酢酸カルビトール、酢酸ブチルカルビトール等のエステル化合物、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素化合物等が挙げられる。本発明では、ケトン化合物の重量比率が上記比率となる範囲内で、ケトン化合物と、それ以外の溶剤を組み合わせて使用すればよい。このうち、脂肪族炭化水素化合物の比率は、溶剤中に50重量%以下(好ましくは30重量%以下)とすることが望ましく、溶剤として脂肪族炭化水素化合物を含まない態様も好適である。本発明では特に、ケトン化合物、エステル化合物及び芳香族炭化水素化合物を含む溶剤が好適である。なお、本発明における溶剤には、ポリオール、イソシアネート等の媒体として用いられる溶剤も包含される。
【0026】
上述の成分の他、本発明被覆材には、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内において、各種成分を配合することも可能である。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、増粘剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、皮張り防止剤、ドライヤー、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、低汚染化剤、触媒等が挙げられる。
【0027】
このうち、着色顔料としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、鉄黒、銅・クロムブラック、コバルトブラック、銅・マンガン・鉄ブラック、モリブデートオレンジ、酸化第二鉄(ベンガラ)、黄色酸化鉄、チタンイエロー、群青、紺青、コバルト・アルミブルー、クロムグリーン、コバルトグリーン等の無機着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機着色顔料が挙げられる。体質顔料としては、例えば重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等が挙げられる。
【0028】
本発明被覆材では、着色顔料、体質顔料等の粉体成分を含むことにより、被膜形成時の凝集力が高まり、密着性等においてより優れた効果を得ることができる。このような効果を得るためには、ポリオール及びポリイソシアネートの総固形分100重量部に対し、粉体成分を10〜200重量部(好ましくは20〜150重量部)含む態様が望ましい。このような態様において、粉体成分を100重量部以下とする場合は、上塗材の仕上り性等を高めることもできる。また、平均粒子径1μm以上(好ましくは5〜50μm)の粉体成分を用いることにより、密着性、可塑剤移行防止性等をいっそう高めることも可能である。
【0029】
本発明被覆材は、ポリエステル含有アクリルポリオールを含む主剤と、ポリイソシアネートを含む硬化剤とを塗装直前に混合して、塗装を行えばよい。溶剤は主剤、硬化剤のいずれか、または両方に含むことができる。また本発明では、主剤、硬化剤とは別に、希釈剤として塗装時に溶剤を混合することもできる。本発明被覆材の溶剤については、最終的に、塗装時における溶剤中のケトン化合物の比率が上記範囲内となるように調製すればよい。
また、本発明被覆材において、溶剤は、ポリオール及びポリイソシアネートの総固形分100重量部に対し、100〜500重量部(好ましくは110〜400重量部、より好ましくは120〜300重量部)含まれることが望ましい。溶剤の含有量がこのような範囲内であれば、可塑剤移行防止性、上塗材の仕上り性等の点で好適である。
【0030】
本発明被覆材は、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を用いて塗装することができる。塗装時の塗付け量は、通常30〜500g/m程度、好ましくは50〜300g/m程度である。被覆材の塗回数は、ポリ塩化ビニル面の表面状態等によって適宜設定すればよいが、通常は1〜2回である。
【0031】
本発明では、上記被覆材被膜の乾燥後、上塗材を塗装することができる。このような上塗材として、化粧性を有するものを使用すれば、所望の色相、艶、表面パターン等を付与することができる。
具体的に、上塗材としては、例えばアルキッド樹脂系塗料、アクリル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、アクリルシリコン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料等が挙げられる。樹脂の形態としては、例えば水系樹脂、非水系樹脂、無溶剤型樹脂等が挙げられる。このうち、非水系樹脂が好適である。非水系樹脂としては、溶剤可溶型樹脂及び/または非水分散型樹脂が使用できる。このような上塗材は、通常、このような樹脂と着色顔料等を必須成分として含むものである。
【0032】
本発明では、上塗材における結合材として熱硬化性樹脂を使用することにより、耐候性、耐水性、膨れ防止性、剥れ防止性等を高めることができる。熱硬化性樹脂としては、例えばカルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジノ基、エポキシ基とヒドラジノ基、エポキシ基とアミノ基、アルコキシシリル基どうし等の官能基による架橋性を有するものが使用可能である。この中でも特に、水酸基とイソシアネート基による架橋性を有するものが、耐久性、密着性等の点で好適である。このような上塗材としては、例えば水酸基を有する非水系樹脂とポリイソシアネートを樹脂成分とするものが使用できる。
【0033】
上塗材の塗装においては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を採用することができる。上塗材の塗付け量は、塗料の種類にもよるが、通常50〜500g/m程度、好ましくは100〜400g/m程度である。
なお、上塗材の塗装には1種の材料を使用すればよいが、2種以上を積層することも可能である。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0035】
ポリオール44重量部、溶剤28重量部、着色顔料12重量部、体質顔料14重量部、分散剤1.5重量部、消泡剤0.5重量部を常法にて均一に混合・撹拌することにより、主剤を製造した。
一方、ポリイソシアネート33重量部、溶剤67重量部を常法にて均一に混合・攪拌することにより、硬化剤を製造した。
被覆材としては、上記主剤と上記硬化剤を、NCO/OH比率で1.1/1.0となるように混合したものを用いた。
被覆材における溶剤の比率は、ポリオールとポリイソシアネートの総固形分100重量部に対し224重量部である。粉体成分(着色顔料及び体質顔料)の比率は、ポリオールとポリイソシアネートの総固形分100重量部に対し103重量部である。
なお、被覆材における原料としては、以下のものを使用した。
【0036】
・ポリオール1(ポリエステル含有アクリルポリオール、ポリエステル比率10重量%、水酸基価40KOHmg/g、酸価6KOHmg/g、重量平均分子量33000、ガラス転移温度52℃、固形分50重量%、媒体:芳香族炭化水素化合物、エステル化合物)
・ポリオール2(アクリルポリオール、水酸基価40KOHmg/g、酸価6KOHmg/g、重量平均分子量30000、ガラス転移温度52℃、固形分50重量%、媒体:芳香族炭化水素化合物、エステル化合物)
・着色顔料(酸化チタン、平均粒子径0.3μm)
・体質顔料(タルク、平均粒子径8μm)
・ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート3量体、NCO比率23重量%)
【0037】
(実施例1)
実施例1では、前記主剤におけるポリオールとして、ポリオール1とポリオール2を固形分重量比率60:40で混合し、溶剤全体に占めるケトン化合物(メチルイソブチルケトン)の比率を28重量%、エステル化合物36重量%、芳香族炭化水素化合物36重量%に調製した被覆材を用いて、以下の試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0038】
(1)密着性試験1
150mm×70mmのポリ塩化ビニル被覆鋼板(可塑剤含有)の上に、被覆材を塗付け量100g/mで刷毛塗りし、72時間養生した。なお、塗装、養生等はすべて標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で行った。
密着性試験1では、上記方法で得られた試験体を、50℃温水に72時間浸漬した後、クロスカット法(4×4mm・25マス)により評価した。なお、この試験では、値が大きいほど密着性に優れていることを示している。
【0039】
(2)密着性試験2
150mm×70mmのポリ塩化ビニル被覆鋼板(可塑剤含有)の上に、被覆材を塗付け量100g/mで刷毛塗りし、24時間養生した。次に、上塗材(JIS K5656に該当するポリウレタン樹脂塗料)を塗付量0.3kg/mでスプレー塗装し72時間養生した。なお、塗装、養生等はすべて標準状態で行った。
密着性試験2では、上記方法で得られた試験体を、50℃温水に72時間浸漬した後、クロスカット法(4×4mm・25マス)により評価した。なお、この試験では、値が大きいほど密着性に優れていることを示している。
【0040】
(3)可塑剤移行防止性試験
150mm×70mmのポリ塩化ビニル被覆鋼板(可塑剤含有)の上に、被覆材を塗付け量100g/mで刷毛塗りし、24時間養生した。次に、上塗材(JIS K5656に該当するポリウレタン樹脂塗料)を塗付量0.3kg/mでスプレー塗装し72時間養生した。なお、塗装、養生等はすべて標準状態で行った。
以上の方法で得た試験板を80℃恒温器内にて6時間放置後、恒温器から取り出し、水平に置いて黒色珪砂を散布した後、試験板を垂直に立てて珪砂を自然落下させた。このとき、付着した黒色珪砂の程度を目視にて確認することで可塑剤移行防止性を評価した。評価は、黒色珪砂がほとんど付着しなかったものを「○」、黒色珪砂が著しく付着したものを「×」とする3段階(○>△>×)で行った。
【0041】
(実施例2〜比較例5)
表1〜2に示すように、被覆材におけるポリオール及び溶剤を調製した以外は、実施例1と同様の方法で試験を行った。試験結果を表1〜2に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
(実施例7)
ポリオール60重量部、溶剤38重量部、着色顔料1.5重量部、分散剤0.3重量部、消泡剤0.2重量部を常法にて均一に混合・撹拌することにより、主剤を製造した。ここで、ポリオールとしては、ポリオール1とポリオール2を固形分重量比率60:40で用いた。
一方、ポリイソシアネート33重量部、溶剤67重量部を常法にて均一に混合・攪拌することにより、硬化剤を製造した。
被覆材としては、上記主剤と上記硬化剤を、NCO/OH比率で1.1/1.0となるように混合したものを用いた。
この被覆材における溶剤の比率は、ポリオールとポリイソシアネートの総固形分100重量部に対し223重量部である。粉体成分(着色顔料)の比率は、ポリオールとポリイソシアネートの総固形分100重量部に対し4重量部である。
実施例7では、溶剤全体に占めるケトン化合物(メチルイソブチルケトン)の比率を36重量%、エステル化合物30重量%、芳香族炭化水素化合物34重量%に調製した被覆材を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表3に示す。
【0045】
(実施例8)
ポリオール56重量部、溶剤30重量部、着色顔料12重量部、分散剤1.5重量部、消泡剤0.5重量部を常法にて均一に混合・撹拌することにより、主剤を製造した。ここで、ポリオールとしては、ポリオール1とポリオール2を固形分重量比率60:40で用いた。
一方、ポリイソシアネート33重量部、溶剤67重量部を常法にて均一に混合・攪拌することにより、硬化剤を製造した。
被覆材としては、上記主剤と上記硬化剤を、NCO/OH比率で1.1/1.0となるように混合したものを用いた。
この被覆材における溶剤の比率は、ポリオールとポリイソシアネートの総固形分100重量部に対し206重量部である。粉体成分(着色顔料)の比率は、ポリオールとポリイソシアネートの総固形分100重量部に対し37重量部である。
実施例8では、溶剤全体に占めるケトン化合物(メチルイソブチルケトン)の比率を36重量%、エステル化合物30重量%、芳香族炭化水素化合物34重量%に調製した被覆材を用いて、実施例1と同様の試験を行った。結果を表3に示す。また、実施例8では、実施例1〜6に比べ上塗材の仕上り性が良好であった。
【0046】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル面に対し、
ポリオール、ポリイソシアネート、及び溶剤を必須成分とし、前記ポリオール中にポリエステル含有アクリルポリオールを40重量%以上含み、前記溶剤中にケトン化合物を10〜50重量%含む被覆材によって被膜を形成することを特徴とする表面仕上げ方法。
【請求項2】
ポリ塩化ビニル面に対し、
ポリオール、ポリイソシアネート、及び溶剤を必須成分とし、前記ポリオール中にポリエステル含有アクリルポリオールを40重量%以上含み、前記溶剤中にケトン化合物を10〜50重量%含む被覆材によって被膜を形成し、次いで、
上塗材によって被膜を形成することを特徴とする表面仕上げ方法。


【公開番号】特開2010−167402(P2010−167402A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134527(P2009−134527)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】