説明

表面保護フィルム

【課題】基材フィルムと粘着層を一回の製膜で一体的に作り出すことが出来、巻き取っても粘着剤が裏移りすることも無く、表面保護フィルムとしての機能である、適度の接着強度と伸縮性を有し、塗装面に対し、汚染性がない表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】少なくとも、物品の表面に貼着される内層の粘着層と、外層の基材層とからなり、粘着層は、主成分がスチレン系ブロックコーポリマーであり、基材層は、直鎖状低密度ポリエチレンに高密度ポリエチレンを配合した混合樹脂からなる。また、前記粘着層と、前記基材層の間に白色顔料を含む中間層がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護フィルムに関するものである。特に金属表面に塗装された製品の塗装面の保護に用いる表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属表面に塗装された製品、たとえば、自動車の上塗り塗装面に貼られ表面を保護する表面保護フィルムがある。この表面保護フィルムは、塗装面に貼られるが、商品として展示されるときや、顧客に引き渡されるときなどに剥離させる必要がある。
【0003】
このため、要求性能としては、塗装面に対して適度の接着強度を有し、流通上で剥がれることなく、且つ、必要なときに容易に剥がせること。塗装面に対し、汚染性がないこと。適当な耐候性があり、紫外線や熱などによる劣化が少ないこと。曲面のある非着体に対して、密着するように適度な伸縮性があることなどがあげられる。また、被貼着物に貼られるまでは、巻き取って、流通、保管されるので、巻き取りより容易に巻きだすことができる必要がある。この用途としては、基材フィルム表面に粘着層を設けたものが用いられてきた。
【0004】
例えば、アルキル(メタ)アクリレートと、官能基を含有する重合性モノマーと、その他の共重合性モノマーとを含有するモノマー組成物を共重合したアクリル系高分子量重合体に対して、官能基を含有する重合性モノマーを含まない以外はほぼ同じモノマー組成のアクリル系低分子量重合体を配合した粘着剤を基材フイルムに塗布した表面保護フィルムがあった。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−117738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基材フィルムを製膜後、改めて別の設備を使用して粘着剤を塗工することは、手間がかかるとともに、コスト的にも大きなマイナス要因である。また、粘着剤を溶解した際の溶剤を除去するために加熱炉を通すが、ポリオレフィンなどの基材フィルムは収縮や変形を起こす可能性が高い。
【0007】
また、粘着剤を塗工して、乾燥直後に巻き取ると、充分に溶剤が乾燥されていないので、基材フィルムに裏移りする恐れがあり、あらかじめ基材フィルムに剥離剤などを塗工する必要もでてきて、品質面での維持管理が困難であるとともにコスト的にも不利となる。
【0008】
本発明の目的は、基材フィルムと粘着層を一回の製膜で一体的に作り出すことが出来、巻き取っても粘着剤が裏移りすることも無く、表面保護フィルムとしての機能である、適度の接着強度と伸縮性を有し、塗装面に対し、汚染性がない表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、物品の表面に剥離可能に貼着する表面保護フィルムであって、
少なくとも、前記物品の表面に貼着される内層の粘着層と、外層の基材層とからなり、
前記粘着層は、主成分がスチレン系ブロックコーポリマーであり、
前記基材層は、直鎖状低密度ポリエチレンに高密度ポリエチレンを配合した混合樹脂からなることを特徴とする表面保護フィルムである。
【0010】
上記の層構成にすることによって、一回の製膜で一体的に表面保護フィルムが製造できる。また、基材層は、直鎖状低密度ポリエチレンに高密度ポリエチレンを配合した混合樹脂からなっているので巻き取った後、裏移りが起きない。
【0011】
さらには、表面保護フィルムとして、適度の接着強度と伸縮性を有し、塗装面に対し、汚染性がすることがない。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記粘着層と、前記基材層の間に白色顔料を含む中間層があることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルムである。
【0013】
白色顔料を含ませた中間層を設けたので、光の透過を阻止し、被着体表面の光による劣化が抑えられる。また、貼ってあることがわかりやすい。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記粘着層から前記基材層までが、Tダイ方式押出しラミネート機を用い、共押し法により、積層されていることを特徴とする請求項1、または、2に記載の表面保護フィルムである。
【0015】
上記のように、粘着層や基材層などが、共押出法により、一回で積層されているので、溶剤による影響がなく、工程が簡単でコスト的にも有利である。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上のような構成になっているので、巻き取っても粘着剤が裏移りすることも無く、表面保護フィルムとしての機能である、適度の接着強度と伸縮性を有し、塗装面に対し、汚染性がないこと表面保護フィルムが得られる。また、表面保護フィルムを、一回の製膜で一体的に作り出すことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の表面保護フィルムの一例の層構成を模式的に断面で示した説明図である。
【図2】本発明の表面保護フィルムの他の例の層構成を模式的に断面で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を実施するための形態につき説明する。
図1は、本発明の表面保護フィルムの一例の層構成を模式的に断面で示した説明図である。本発明の一例の表面保護フィルム1は、図のように、粘着層2と基材層3からなっている。
【0019】
図2は、本発明の表面保護フィルムの他の例の層構成を模式的に断面で示した説明図である。本発明の他の例の表面保護フィルム10は、図のように、粘着層2と基材層3の間に中間層4が積層された層構成からなっている。
【0020】
粘着層2は、スチレン系ブロックコーポリマーを主成分として、粘着力を向上させるために、タッキファイアを添加したり、逆に、粘着力を下げるためにポリオレフィン類を添加したり、必要に応じて行うことが出来る。上記の混合物からなる粘着層のガラス転移温度は0℃以下であることが、粘着性を出すために必要である。
【0021】
スチレン系ブロックコーポリマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、部分水添スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(部分水添SEBS)スチレン・(エチレン−エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEEPS)が使用できる。スチレン系ブロックコーポリマーの質量平均分子量は、15〜50万のものが本願の用途として、好ましく使用できる。
【0022】
タッキファイアは、エラストマーであるスチレン系ブロックコーポリマーに配合して、粘着力を向上させる効果を有し、スチレン系ブロックコーポリマーより、分子量が小さく、質量平均分子量で数百から数千のオリゴマーである。タッキファイアとしては、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂などがあり、適宜選択して用いればよい。
【0023】
基材層3は、直鎖状低密度ポリエチレンに高密度ポリエチレンを配合した混合樹脂からなり、その配合割合は、直鎖状低密度ポリエチレンが10重量部に対して、高密度ポリエチレンを1〜5重量部である。特に好ましくは、1〜3重両部である。
【0024】
このように、直鎖状低密度ポリエチレンに高密度ポリエチレンを配合すると、巻き取ったときに、粘着層が重ねられた基材層3に密着して剥がせなくなるのを防ぐことが出来る。またこのとき、粘着層にもアクリル系ビーズや酸化ケイ素などの充填材を添加して、密着性を低下させておくとより効果的である。
【0025】
また、基材層3の混合樹脂に光安定剤や、酸化防止剤を添加することによって、太陽光などによる樹脂の劣化が防止できる。光安定剤には、光エネルギーを無害な熱エネルギーに変換する紫外線吸収剤(UVA)と光酸化で生成するラジカルを捕捉するヒンダードアミン系光安定剤(HALS)とがあり、いずれか、または、両方を用いることが出来る。
【0026】
酸化防止剤は、熱による酸化劣化の原因となるペルオキシラジカルおよびヒドロペルオキシドを捕捉、分解して劣化を防止する。この酸化防止剤には、フェノール系,ホスファイト系,イオウ系があり、単独でも、混合しても用いられる。また、光安定剤と併用することによって、顕著な効果を与えることが出来る。
【0027】
中間層4は、粘着層2と基材層3の間に設けられ、白色顔料を含んでいる樹脂層である。中間層4は、基材層3の物理的強度や腰を補強する効果もあるが、白色顔料を含むことによって、物品の塗工面に太陽光などの光をカットして、塗工面の劣化を抑制する効果がある。また、完全な透明ではないので、表面保護フィルムが貼ってあることを見て知ることが出来る。
【0028】
樹脂としては、基材層3と接着性樹脂を介さずに接着することが出来るものが、コスト的に有利である。そのため、基材層3に用いられている樹脂と同系であることが望ましい。よって、中間層4に用いる樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレンを用いることが、望ましい。
【0029】
また、白色顔料としては、酸化チタンを用いることが出来る。酸化チタンの配合は、樹脂が100重量部に対し、酸化チタンが1〜10重量部である。さらに好ましくは、3〜7重量部である。酸化チタンが1重量部未満では、光のカット性が充分ではなく、10重量部を超えると脆化など、樹脂の性質に悪影響を与えたり、加工上もよろしくない。
【0030】
また、中間層4にも、基材層3と同様に、光安定剤や、酸化防止剤を添加することが出来る。これによって、太陽光などによる樹脂の劣化を防止することができる。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0032】
<実施例1>
基材層3として、直鎖状低密度ポリエチレン100重量部に高密度ポリエチレンを20重量部添加した混合樹脂を用意した。また、中間層4としては、直鎖状低密度ポリエチレン100重量部に白色顔料の酸化チタンを5重量部添加した樹脂を用意した。また、粘着層2として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)を準備した。これらを用いて、3層共押しのTダイ方式押出しラミネート機を用いて押出して、3層のフィルムとし、実施例1の表面保護フィルムを得た。厚みは、基材層3が10μm、中間層4が30μm、粘着層2が10μmであった。
【0033】
<実施例2>
粘着層2として、SBS100重量部に対してタッキファイアを10重量部添加したSBSを用いた以外は、実施例1と同様に行い実施例2の表面保護フィルムを得た。
【0034】
<実施例3>
粘着層2として、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)100重量部に対してタッキファイアを10重量部添加したSEBSを用いた以外は、実施例1と同様に行い実施例3の表面保護フィルムを得た。
以下に本発明の比較例について説明する。
【0035】
<比較例1>
粘着層2として、エチレン−ブテンゴム(EBR)を用いた以外は、実施例1と同様に行い比較例1の表面保護フィルムを得た。
【0036】
<比較例2>
粘着層2として、EBR100重量部にタッキファイア20重量点添加したEBRを用いた以外は、実施例1と同様に行い比較例2の表面保護フィルムを得た。
【0037】
<比較例3>
基材層3として、直鎖状低密度ポリエチレン100重量部に高密度ポリエチレンを20重量部添加した混合樹脂を用意した。また、中間層4としては、直鎖状低密度ポリエチレン100重量部に白色顔料の酸化チタンを5重量部添加した樹脂を用意した。これらをTダイを用いた2層共押しの押出機を用いて押出して、2層のフィルムとした。
【0038】
厚みは、基材層3が15μm、中間層4が30μmであった。この中間層4の面に、コロナ処理を施し、アクリル系粘着剤を、ダイコーターで塗布し、厚さ5μmの粘着層2を設け、比較例3の表面保護フィルムを得た。
【0039】
アクリル系粘着剤は、n−ブチルアクリレートを主成分ポリマーとし、2−ヒドロキシメチルメタアクリレートを加え共重合して得られたポリマーに、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのビューレットタイプを加えたものを使用した。
【0040】
<評価方法>
1)接着強度
以上のようにして作製した実施例1〜3、および、比較例1〜3の表面保護フィルムの粘
着層面を、塗工鋼板の塗工面に貼り付けた。
塗工鋼板に貼り付けた表面保護フィルムを、25mm幅の短冊状の切り、その名が手方向先端部を剥がし、引っ張り試験機で、塗工鋼板に垂直な方向に引っ張り(引っ張り速度300mm/分)、接着強度を測定し、接着強度が5.0N/25mm幅以上であれば、○とし、それ未満なら×とした。
2)伸び率
上記、実施例1〜3、および、比較例1〜3の表面保護フィルムを幅25mmの短冊状にカットして、引っ張り試験機で引っ張り(引っ張り速度300mm/分)、その伸び率を測定し、伸び率が、300%/25mm幅以上であれば、○とし、それ未満なら×とした。
3)剥離状態
接着強度を測定した塗工鋼板の表面保護フィルムを剥離した箇所の汚れを目視で観察し、汚れがあるかどうかを、調べた。汚れがなければ○とし、あれば×とした。
以上の結果を表1にまとめた。
【0041】
【表1】

<比較結果>
上記実施例1から実施例3の本発明品の表面保護フィルムは、製造に当たって、一回の製膜で一体的に作り出すことが出来、巻き取っても粘着剤が裏移りすることも無い。また、1)接着強度、2)伸び率、3)剥離状態、いずれの評価に対しても良好であり、表面保護フィルムとしての機能である、適度の接着強度と伸縮性を有し、塗装面に対し、汚染性が無かった。
【0042】
比較例1及び比較例2の表面保護フィルムは、接着強度も、伸び率も、良好な値を得られず、表面保護フィルムとしての機能が満足しなかった。また、比較例3の表面保護フィルムは、剥離後の被着面の塗工鋼板に接着剤の剥離痕跡が認められ、使用上の問題がある。
【符号の説明】
【0043】
1・・・表面保護フィルム
2・・・粘着層
3・・・基材層
4・・・中間層
10・・・表面保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の表面に剥離可能に貼着する表面保護フィルムであって、
少なくとも、前記物品の表面に貼着される内層の粘着層と、外層の基材層とからなり、
前記粘着層は、主成分がスチレン系ブロックコーポリマーであり、
前記基材層は、直鎖状低密度ポリエチレンに高密度ポリエチレンを配合した混合樹脂からなることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記粘着層と、前記基材層の間に白色顔料を含む中間層があることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着層から前記基材層までが、Tダイ方式押出しラミネート機を用い、共押し法により、積層されていることを特徴とする請求項1、または、2に記載の表面保護フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−224926(P2011−224926A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99011(P2010−99011)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】