説明

表面保護フィルム

【課題】
光学材料に対する粘着特性、経時粘着安定性、透明性、巻き戻し性および耐熱性に優れた表面保護フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
表面層(A)および粘着層(X)の少なくとも2層からなる表面保護フィルムであり、表面層(A)がポリオレフィン樹脂からなり、粘着層(X)が、融点が50℃未満または融点が観測されない炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン(共)重合体(X−1)5〜95重量%、および融点が50〜130℃の範囲にあり、メタロセン触媒を用いて得られるプロピレン(共)重合体(X−2)95〜5重量%からなる組成物((X−1)および(X−2)の合計で100重量%とする。)から形成されること特徴とする表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学製品、建材、自動車部品等に使用される表面保護フィルムに関する。詳しくは、粘着特性、特には被着体に対する粘着性および粘着力の経時安定性に優れ、また、耐熱性に優れ、被着体等への汚染が少なく、またフィッシュアイ等の外観に優れ、被着体を傷つけることが無く、さらにはロール状から繰出す際の繰出し性が容易である表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは、主として建材用や光学用途用の樹脂製品、金属製品、ガラス製品等の被着体に貼付して使用し、これらの輸送、保管や加工時の傷付きまたは異物混入を防ぐ役割を果たしている。これらの表面保護フィルムは、一般には粘着性の無い表面層と、前記被着体と粘着させるための粘着層とからなる。表面層は通常、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体から形成される。
【0003】
近年、液晶画面、プラズマディスプレイ(PDP)やリアプロジェクション画面等に用いる部材、いわゆる光学製品の開発が進んでいる。これら光学製品を保護するための表面保護フィルムに対し、傷付きや異物混入のみならず、表面保護フィルムを貼付した状態で製品検査ができる様な透明性や、高温状態で貼付や熱処理工程を経ても適度な粘着力が発現する等の特性が所望されている。
【0004】
また、光学製品については、例えば偏光板、位相差板、導光板、プリズム板のように光学特性が要求される部材が多々あり、これらの部材に対しても適度な粘着力および経時でも安定した粘着力が発現できる保護フィルムが所望されている。
【0005】
一方、これらの光学部材に表面保護フィルムを使用した場合、表面保護フィルムを剥がした際に、糊残りや、表面保護フィルムにフィッシュアイが存在すると、光学部材に欠陥を生じることがあり、糊残りやフィッシュアイの無い表面保護フィルムが所望されている。
【0006】
また、比較的粘着力の高い表面保護フィルムでは、ロール状の製品から繰出すことが困難なため、粘着層に離型フィルムを貼り合わせた状態でロール状とし、被着体への貼付の際にこの離型フィルムを剥がして使用している。このような工程を採用すると、大量の廃棄物が発生することから、離型フィルムが無くても容易にロールから繰出すことのできる表面保護フィルムが求められている。
【0007】
特開2006−116769号公報には、ポリエチレン成分を主体とした表面保護フィルムが開示されている。しかしながら、同公報による方法では、一部用途部材に対しては適用可能であるが、粘着力が低く、また透明性も不充分で、被着体の用途には限りがあった。
【特許文献1】特開2006−116769号公報
【0008】
特開2009−83110号公報には、メタロセン触媒系によって得られる特定のプロピレン系ランダムブロック共重合体からなる表面保護フィルムが提案されている。しかしながら、同公報による方法では、粘着力も低く、さらなる改良が望まれている。
【特許文献2】特開2009−83110号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、光学製品、建材製品や自動車部品の保管、輸送、加工、検査時に保護するための表面保護フィルムとして要求される特性、特には、被着体への粘着特性、透明性、耐熱性に優れ、被着体等への汚染が少なく、またフィッシュアイ等の外観に優れ、被着体を傷つけることが無く、およびロールからの繰出し性に優れた表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を鑑み、鋭意検討した結果、ある特定の樹脂組成物からなる粘着層を有する表面保護フィルムにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、表面層(A)および粘着層(X)の少なくとも2層からなる表面保護フィルムであり、表面層(A)がポリオレフィン樹脂からなり、粘着層(X)が、融点が50℃未満または融点が観測されない炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン(共)重合体(X−1)5〜95重量%、および融点が50〜130℃の範囲にあり、メタロセン触媒を用いて得られるプロピレン(共)重合体(X−2)95〜5重量%からなる組成物((X−1)および(X−2)の合計で100重量%とする。)から形成されること特徴とする表面保護フィルムに関する。
また、本発明は、上記粘着層(X)を形成する組成物の一部であるα−オレフィン(共)重合体(X−1)が、プロピレンと炭素数2〜10のα−オレフィン(プロピレンを除く)との共重合体であることを特徴とする表面保護フィルムに関する。
更に、本発明は、上記の表面層(A)および粘着層(X)の少なくとも2層をT−ダイから押出成形して得られる多層フィルムである表面保護フィルムである。
【0011】
次に本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の表面保護フィルムは、表面層(A)および粘着層(X)の少なくとも2層、または必要に応じて表面層(A)、基材層(B)および粘着層(X)の少なくとも3層からなる。ここで、粘着層(X)を最内層とした場合、表面層(A)は最外層に位置し、フィルムをロール状にする際には表面層(A)と粘着層(X)とが接触する。
【0013】
表面層(A)は、ポリオレフィン樹脂からなる。
【0014】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレンやポリエチレンなどの公知のポリオレフィン樹脂を挙げることができる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを挙げることができる。これらの中で、巻き戻し性の観点から高圧法低密度ポリエチレン、透明性、耐熱性の観点からホモポリプロピレンやブロックポリプロピレンが好ましく利用される。
【0015】
前記表面層(A)を形成する組成物中には、本発明の表面保護フィルムとしての特性を損なわない範囲で、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤、耐候剤、結晶核剤などの各種添加剤や、その他のポリオレフィン樹脂、ワックス、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー等の樹脂改質剤を添加することも可能である。
【0016】
本発明の表面保護フィルムの粘着層(X)は、融点が50℃未満または融点が観測されない炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン(共)重合体(X−1)5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、より好ましくは35〜75重量%、および融点が50〜130℃の範囲にあり、メタロセン触媒を用いて得られるプロピレン(共)重合体(X−2)95〜5重量%、好ましくは90〜10重量%、より好ましくは75〜35重量%からなる組成物((X−1)および(X−2)の合計で100重量%とする。)から形成される。
【0017】
粘着層(X)に使用されるα−オレフィン(共)重合体(X−1)の融点は50℃未満または融点が観測されない。ここで、融点は示差走査熱量計(DSC)で測定した値である。α−オレフィン(共)重合体(X−1)は、炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とする共重合体であり、具体的には例えばプロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1・1−ブテン共重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体であり、好ましくはプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体である。
【0018】
α−オレフィン(共)重合体(X−1)の230℃で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分の範囲にある。
【0019】
プロピレン(共)重合体(X−2)の融点は、50〜130℃の範囲、好ましくは55〜130℃の範囲、より好ましくは60〜125℃の範囲にある。プロピレン(共)重合体(X−2)は、メタロセン触媒の存在下にプロピレンの単独重合またはプロピレンと炭素数2〜10(プロピレンを除く)との共重合体であり、具体的には例えばプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体などを挙げることができる。より好ましくは、プロピレン・エチレン共重合体である。
【0020】
プロピレン(共)重合体(X−2)の230℃で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分の範囲にある。
【0021】
本発明の保護フィルムにおける粘着層(X)には、粘着力、経時粘着力の制御や巻き戻し力の制御を目的に、他の結晶性ポリオレフィン、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー、粘着付与剤を前記組成物に添加することもできる。
【0022】
前記結晶性ポリオレフィン、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー、粘着付与剤を本発明の保護フィルムの粘着層(X)の一成分として使用する際の含有量としては、(X−1)および(X−2)からなる組成物100重量部の対し、0.1〜100重量部、好ましくは0.3〜50重量部、より好ましくは0.5〜20重量部である。結晶性ポリオレフィン、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー、粘着付与剤を添加することにより、所望の粘着力を発現でき、また、種々の被着体に適した粘着特性を発現でき、好ましい。
【0023】
前記(X−1)および(X−2)からなる組成物および必要に応じて結晶性ポリオレフィン、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー、粘着付与剤を加えた組成物により、本発明の表面保護フィルムにおける粘着層(X)を形成することができる。また、本発明においては、さらには本発明の特性を損なわない範囲で、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂改質剤や、帯電防止剤、結晶核剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
本発明においては、さらに表面層(A)と粘着層(X)との間に少なくとも1層の基材層(B)を設けることも可能である。フィルムの機械強度や透明性制御を目的として、また、表面層(A)および粘着層(X)との接着力が不足する場合には、基材層としてポリオレフィン樹脂や接着性樹脂ないしは接着剤を使用しても良い。
基材層としては特に制限はないが、一般には、融点が100℃以上のポリプロピレンやポリエチレンなどの結晶性ポリオレフィンや、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン系エラストマーなどが使用できる。基材層を接着層として使用する場合には、変性ポリオレフィンや、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステルエラストマーなどが用いられる。これらの中で、生産性および透明性の点から、ポリプロピレンやポリオレフィンエラストマーを中間層として使用するのが好ましい。
【0025】
上記α−オレフィン(共)重合体(X−1)およびプロピレン(共)重合体(X−2)からなる組成物および必要に応じて結晶性ポリオレフィンおよび/またはオレフィン系エラストマー、更に必要に応じて樹脂改質剤または添加剤は、前記表面層(A)、必要に応じて基材層(B)と積層することにより、本発明の表面保護フィルムとすることができる。
【0026】
表面層(A)と粘着層(X)、必要に応じて基材層(B)を積層する方法については特に制限は無いが、あらかじめT−ダイ成形またはインフレーション成形にて得られた表面層フィルム上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により積層する方法や、基材層および粘着層を独立してフィルムとした後、各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、表面層、基材層、粘着層の各成分を多層の押出機に供して成形する共押出成形が好ましい。
【0027】
本発明の表面保護フィルムにおける表面層(A)の厚みとしては、0.1〜100μm、好ましくは0.3〜50μm、より好ましくは0.5〜30μm、さらに好ましくは1〜20μmである。粘着層(X)の厚みとしては、0.1〜50μ、好ましくは0.3〜40μ、より好ましくは0.5〜30μmである。
【0028】
本発明の表面保護フィルムの厚みとしては、1〜300μm、好ましくは2〜200μm、より好ましくは3〜100μmである。
【0029】
上記好ましい形態の表面層(A)、粘着層(X)および必要に応じて基材層(B)を使用することで、粘着特性、特には高凹凸の被着体に対して優れた粘着力が発現し、また透明性に優れた表面保護フィルムが得られ、特には建材用途、光学用途に対して好適に利用できる。
【0030】
以下に本発明を実施例により詳細説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもの
ではない。
【0031】
[評価法]
粘着力(アクリル板):
アクリル板を幅50mm、長さ125mmに切断し、この試験板に2kgのゴムローラーを用いて貼り付ける。次いで、300mm/分の速度で剥離(180度剥離)した時の剥離力を測定し、50mm幅あたりの剥離力を粘着力(N/50mm)とする。
【0032】
フィッシュアイ(FE):
A4サイズのフィルムサンプルを用意し、長さ0.05mm以上のフィッシュアイを目視にカウントする。単位面積あたりに換算したFEの数をFE数(個/m)とした。
【0033】
メルトフローレート(MFR):
ASTM D1238に準拠して、荷重2.16kg、温度230℃で測定した。
【0034】
実施例1
表面層、基材層および粘着層用に40mmφの単軸押出機を兼ね備えダイ幅500mmの3種3層T−ダイ成形機に以下樹脂組成物を供給し、表面層厚みを10μm、粘着層厚み10μm、基材層厚み30μm、トータル厚み50μmの表面保護フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表−1に示す。

表面層:
PP−1:ホモポリプロピレン
(融点160℃、MFR(230℃)7g/10分)

基材層:
PP−1:ホモポリプロピレン
(融点160℃、MFR(230℃)7g/10分)

粘着層:
PEBR:プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体
( エチレン含量13モル%、ブテン含量19モル%、融点は観測されない、
MFR=7g/10分)
MP−1:プロピレン・エチレン共重合体(メタロセン触媒で製造)
(融点=115℃、MFR=7g/10分)
PP−2:ホモポリプロピレン
(銘柄名:F107BV、融点=160℃、MFR=7g/10分、
プライムポリマー社製)
LL−1:エチレン・4−メチルペンテン−1共重合体
(融点115℃、密度0.915g/cm
MFR(190℃)2.4g/10分)
【0035】
実施例2、3および比較例1、2
各種層の樹脂組成を表1記載の樹脂組成とした以外は、実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表−1に示す。

【0036】

【表1】


【0037】
発明の効果
本発明の表面保護フィルムは、粘着特性および経時安定性、透明性、巻き戻し力および耐熱性に優れ、光学用途、建材用途、自動車部品用途との保護フィルムとして産業上の利用価値は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層(A)および粘着層(X)の少なくとも2層からなる表面保護フィルムであり、表面層(A)がポリオレフィン樹脂からなり、粘着層(X)が、融点が50℃未満または融点が観測されない炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン(共)重合体(X−1)5〜95重量%、および融点が50〜130℃の範囲にあり、メタロセン触媒を用いて得られるプロピレン(共)重合体(X−2)95〜5重量%からなる組成物((X−1)および(X−2)の合計で100重量%とする。)から形成されること特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
粘着層(X)を形成する組成物の一部であるα−オレフィン(共)重合体(X−1)が、プロピレンと炭素数2〜10のα−オレフィン(プロピレンを除く)との共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
表面層(A)および粘着層(X)の少なくとも2層をT−ダイから押出成形して得られる多層フィルムである請求項1または2のいずれかに記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2011−37039(P2011−37039A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183913(P2009−183913)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000220099)三井化学東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】