説明

表面保護フィルム

【課題】
保管時や加工時の部材保護性と、保護フィルムの剥離性に優れた積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
光学部材、自動車部材、電子・電気部材、建材用部材、文具・事務用品部材から選ばれる一つの部材に表面保護フィルムが貼合されてなる積層体であり、該表面保護フィルムを剥離する際の剥離強度が以下式1または式2を満たすことを特徴とする積層体。
式1 S30 ≧ S300
式2 S30 ≧ S1000 × 1.2
(ここで、S30は、剥離速度30mm/minでの剥離強度、S300は300mm/minでの剥離強度、S1000は1000mm/minでの剥離強度を示す)
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材、自動車部材、電子・電気部材、建材用部材、文具・事務用品部材から選ばれる一つの部材に表面保護フィルムが貼合されてなる積層体に関する。詳しくは、積層体の保管時及び保護フィルムを剥離する際に適度な剥離強度を有し、各部材の取り扱い性に優れた積層体に関する。また、積層体における保護フィルムは、粘着特性、特には被着体に対する粘着性及び粘着力の経時安定性に優れ、また、耐熱性に優れ、被着体等への汚染が少なく、またフィッシュアイ等の外観に優れ、被着体を傷つけることが無く部材の保護に適した表面保護フィルムを積層した積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは、主として建材用部材や光学部材の樹脂製品、金属製品、ガラス製品等の被着体に貼付して使用し、これらの輸送、保管や加工時の傷付きまたは異物混入を防ぐ役割を果たしている。これらの表面保護フィルムは、一般には粘着性の無い表面層と、前記被着体と粘着させるための粘着層とからなる。表面層は通常、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体から形成される。
【0003】
近年、液晶画面、プラズマディスプレイ(PDP)やリアプロジェクション画面等に用いる部材、いわゆる光学製品の開発が進んでいる。これら光学製品を保護するための表面保護フィルムに対し、傷付きや異物混入のみならず、表面保護フィルムを貼付した状態で製品検査ができる様な透明性や、高温状態で貼付や熱処理工程を経ても適度な粘着力が発現する等の特性が所望されている。
【0004】
また、光学製品については、例えば偏光板、位相差板、導光板、プリズム板のように光学特性が要求される部材が多々あり、これらの部材に対しても適度な粘着力及び経時でも安定した粘着力が発現できる保護フィルムが所望されている。
【0005】
一方、これらの光学部材に表面保護フィルムを使用した場合、表面保護フィルムを剥がした際に、糊残りや、表面保護フィルムにフィッシュアイが存在すると、光学部材に欠陥を生じることがあり、糊残りやフィッシュアイの無い表面保護フィルムが所望されている。
【0006】
また、比較的粘着力の高い表面保護フィルムでは、ロール状の製品から繰出すことが困難なため、粘着層に離型フィルムを貼り合わせた状態でロール状とし、被着体への貼付の際にこの離型フィルムを剥がして使用している。このような工程を採用すると、大量の廃棄物が発生することから、離型フィルムが無くても容易にロールから繰出すことのできる表面保護フィルムが求められている。
【0007】
表面保護フィルムの他の用途としては、例えばシリコンウェハーを研削加工する際の保護や、メガネレンズを研削、研磨加工する際の保護用としても使用されている。これらの加工時に使用される保護フィルムに対しては、切削、研削、研磨や折り曲げ等の部材を加工する際に保護フィルムが剥離しないことが要求される。
【0008】
特開2006−116769号公報には、ポリエチレン成分を主体とした表面保護フィルムが開示されている。しかしながら、同公報による方法では、一部用途部材に対しては適用可能であるが、粘着力が低く、また透明性も不充分で、被着体の用途には限りがあった。
【特許文献1】特開2006−116769号公報
【0009】
特開2007−126512号公報には、イソブチレン系ブロック共重合体であるスチレン系エラストマーと粘着付与樹脂とを含む粘着層からなる表面保護フィルムが開示されている。しかしながら、同公報による方法では、高凹凸の被着体に貼り合わせた場合、粘着特性や粘着力の経時安定性が不充分であり、さらなる改良が望まれている。
【特許文献2】特開2007−126512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、光学部材、建材用部材や自動車用部材等を安定的に保管、輸送、加工、検査できる積層体を提供することにある。特には、表面保護フィルムを貼合した積層体として要求される特性、特には、被着体との粘着特性、粘着力の経時安定性、透明性、耐熱性に優れ、被着体等への汚染が少なく、またフィッシュアイ等の外観に優れ、被着体を傷つけることが無い積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を鑑み、鋭意検討した結果、ある特定の樹脂組成物からなる粘着層を有する表面保護フィルムを特定の部材に貼合した積層体により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、光学部材、自動車部材、電子・電気部材、建材用部材、文具・事務用品部材から選ばれる一つの部材に表面保護フィルムが貼合されてなる積層体であり、該表面保護フィルムを剥離する際の剥離強度が以下式1または式2を満たすことを特徴とする積層体である。
式1 S30 ≧ S300
式2 S30 ≧ S1000 × 1.2
(ここで、S30は、剥離速度30mm/minでの剥離強度、S300は300mm/minでの剥離強度、S1000は1000mm/minでの剥離強度を示す)
さらに本発明は、光学部材、自動車部材、電子・電気部材、建材用部材、文具・事務用品部材から選ばれる一つの部材に表面保護フィルムが貼合されてなる積層体であり、該表面保護フィルムを剥離する際の剥離強度が以下式3を満たすことを特徴とする積層体である。
式3 S30 ≧ S300 ≧ S1000 × 1.2
(ここで、S30は、剥離速度30mm/minでの剥離強度、S300は300mm/minでの剥離強度、S1000は1000mm/minでの剥離強度を示す)
また、本発明の表面保護フィルムは、表面層(A)及び粘着層(X)の少なくとも2層とすることができ、表面層(A)がポリオレフィン樹脂からなる。
さらに、本発明の積層体において、粘着層(X)が、融点が50℃未満または融点が観測されない炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン(共)重合体(X−1)0〜50重量%、及び融点が50〜130℃の範囲にあり、メタロセン触媒を用いて得られるプロピレン(共)重合体(X−2)0.5〜50重量%、スチレン系エラストマー(X−3)10〜98重量%、重量平均分子量(Mw)が200〜9,000の範囲にあり、軟化点が60〜160℃の範囲にあるオリゴマー(X−4)0〜50重量%からなる組成物((X−1)、(X−2)、(X−3)及び(X−4)の合計で100重量%とする。)から形成されることが好適である。
本発明においては、上記スチレン系エラストマー(X−3)が、スチレン・イソブチレン共重合体であることが好適である。
さらに本発明において、上記表面保護フィルムは、表面層(A)及び粘着層(X)の少なくとも2層をT−ダイから押出成形して得られる多層フィルムとすることが好適である。
また、本発明の積層体の部材として、メガネレンズ用部材がある。
【0012】
次に本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明は、光学部材、自動車部材、電子・電気部材、建材用部材、文具・事務用品部材から選ばれる一つの部材に表面保護フィルムが貼合されてなる積層体である。
【0014】
光学部材としては、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)やリアプロジェクション用部材であり、具体的には例えば偏光板、プラズマ板、位相差板、導光板等を挙げることができる。その他には例えばカメラや複写機等に用いられる光学レンズやメガネレンズなども挙げることができる。
自動車部材としては、バンパーなどの外装材、インパネやドア材などの内装材等を挙げることができる。
電子・電気部材としては、シリコンウェハーなどの電子部材の他に、テレビ、冷蔵庫等の家電製品の外装部品も挙げることができる。
建材用部材としては、住宅用のドア材、壁材、天井材やキッチン、風呂部材等を挙げることができる。
文具・事務用品部材としては、机、椅子用部材や黒板、白板等を挙げることができる。
【0015】
本発明は、上記各種部材に表面保護フィルムが貼合された積層体であり、表面保護フィルムを部材から剥離する際の剥離強度が、以下式1もしくは式2を満たす。
式1 S30 ≧ S300
式2 S30 ≧ S1000 × 1.2
(ここで、S30は、剥離速度30mm/minでの剥離強度、S300は300mm/minでの剥離強度、S1000は1000mm/minでの剥離強度を示す)
好ましくは以下式3を満たし、より好ましくは以下式4を満たす。
式3 S30 ≧ S300 ≧ S1000 × 1.2
式4 S30 ≧ S300 × 1.2 ≧ S1000 × 1.2
さらに好ましくは、以下式5を満たす。
式5 S30 ≧ S300 × 1.3 ≧ S1000 × 1.3
ここで、剥離強度は、剥離角180°で測定した値(N/50mm)である。
上記式1〜5を満たすことで、本発明の積層体を保管または研削や研磨等の加工工程に供した際にも保護フィルムが剥がれることはなく安定的に次ぎの工程に移行することができる。また、保護フィルムを剥がす際にも容易に剥がすことができ、好ましい。
【0016】
上記各種部材に貼合される表面保護フィルムは、表面層(A)及び粘着層(X)の少なくとも2層、または必要に応じて表面層(A)、基材層(B)及び粘着層(X)の少なくとも3層からなる。
【0017】
表面層(A)は、ポリオレフィン樹脂からなる。
【0018】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレンやポリエチレンなどの公知のポリオレフィン樹脂を挙げることができる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを挙げることができる。これらの中で、巻き戻し性の観点から高圧法低密度ポリエチレン、透明性、耐熱性の観点からホモポリプロピレンやブロックポリプロピレンが好ましく利用される。
【0019】
前記表面層(A)を形成する組成物中には、本発明の表面保護フィルムとしての特性を損なわない範囲で、帯電防止剤、離型剤、酸化防止剤、耐候剤、結晶核剤などの各種添加剤や、その他のポリオレフィン樹脂、ワックス、ポリエステル、ポリアミド、エラストマー等の樹脂改質剤を添加することも可能である。
【0020】
粘着層(X)に使用されるα−オレフィン(共)重合体(X−1)の融点は50℃未満または融点が観測されない。ここで、融点は示差走査熱量計(DSC)で測定した値である。α−オレフィン(共)重合体(X−1)は、炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とする共重合体であり、具体的には例えばプロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1・1−ブテン共重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体であり、好ましくはプロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体である。
【0021】
α−オレフィン(共)重合体(X−1)の230℃で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分の範囲にある。
【0022】
プロピレン(共)重合体(X−2)の融点は、50〜130℃の範囲、好ましくは55〜130℃の範囲、より好ましくは60〜125℃の範囲にある。プロピレン(共)重合体(X−2)は、メタロセン触媒の存在下にプロピレンの単独重合またはプロピレンと炭素数2〜10(プロピレンを除く)との共重合体であり、具体的には例えばプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体などを挙げることができる。
【0023】
プロピレン(共)重合体(X−2)の230℃で測定したメルトフローレート(MFR)は、0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分の範囲にある。
【0024】
スチレン系エラストマー(X−3)としては、ポリスチレン相をハードセグメントとして有する公知のスチレン系エラストマーが使用できる。具体的には、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、スチレン・ビニルイソプレン・スチレン重合体等のスチレンとジエンとの共重合体及びそれらの水素化物(例えばスチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SEBS)等)やスチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)を挙げることができる。好ましくはスチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)である。
【0025】
上記スチレン系エラストマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(以下Mwと略記)は、10,000〜300,000の範囲、好ましくは15,000〜250,000の範囲、より好ましくは20,000〜200,000の範囲にある。Mwが10,000より小さい、または300,000より大きいと保護フィルムの生産性が悪く、好ましくない。
【0026】
粘着層(X)に使用するオリゴマー(X−4)としては、GPCで測定した重量平均分子量(Mw)が200〜9,000の範囲にあり、JIS K2207で測定した軟化点が60〜160℃の範囲にあるオリゴマーである。好ましくはMwが300〜7,000、軟化点が70〜150℃、より好ましくはMwが500〜5,000、軟化点が80〜140℃の範囲にある。
【0027】
オリゴマー(X−4)としては、上記分子量及び軟化点を有するものであれば特に制限はないが、具体的には石油樹脂、水添系石油樹脂、スチレン系樹脂、クロマン・インデン樹脂、ロジン誘導体、テルペン系樹脂などを挙げることができる。好ましくはスチレン系樹脂、水添石油樹脂、より好ましくはスチレン系樹脂である。スチレン系樹脂としては、例えばスチレン単独重合体、α−メチルスチレン単独重合体、スチレン/α−メチルスチレン共重合体、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合体、α−メチルスチレン/脂肪族系モノマー共重合体、スチレン系モノマー/α−メチルスチレン/脂肪族系モノマー共重合体を挙げることができる。
【0028】
本発明の表面保護フィルムの粘着層(X)は、α−オレフィン(共)重合体(X−1)0〜50重量%、プロピレン(共)重合体(X−2)0.5〜50重量%、スチレン系エラストマー(X−3)10〜98重量%、オリゴマー(X−4)0〜50重量%からなる組成物から形成される。好ましくはα−オレフィン(共)重合体(X−1)が0〜40重量%、プロピレン(共)重合体(X−2)1〜40重量%、スチレン系エラストマー(X−3)30〜96重量%、オリゴマー(X−4)1〜40重量%、より好ましくはα−オレフィン(共)重合体(X−1)が2〜30重量%、プロピレン(共)重合体(X−2)2〜30重量%、スチレン系エラストマー(X−3)50〜95重量%、オリゴマー(X−4)1〜30重量%の範囲((X−1)、(X−2)、(X−3)及び(X−4)の合計で100重量%とする。)にある。
【0029】
本発明の保護フィルムにおける粘着層(X)には、粘着力、経時粘着力の制御や巻き戻し力の制御を目的に、結晶性ポリオレフィン及び/またはオレフィン系エラストマーを前記組成物に添加することもできる。
【0030】
結晶性ポリオレフィンとしては、融点が110℃を超える公知の(前記(X−2)の構成要件をすべて満たすものを除く)ポリオレフィンであれば制限なく使用できるが、具体的には例えば、プロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1・1−ブテン共重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができる。
【0031】
オレフィン系エラストマーとしては、融点が110℃以下、好ましくは融点が100℃以下、さらに好ましくは融点が80℃以下または融点が観測されない炭素数2〜20のα−オレフィン重合体または共重合体、ないしはエチレンと不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体である(但し、前記(X−4)の構成要件をすべて満たす重合体は除く)。具体的には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチルペンテン−1共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、プロピレン単独共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1単独重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン共重合体、4−メチルペンテン−1・1−ブテン共重合体、4−メチルペンテン−1・プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができる。
【0032】
前記結晶性ポリオレフィン及び/またはオレフィン系エラストマーを本発明の保護フィルムの粘着層(X)の一成分として使用する際の含有量としては、前記(X−1)、(X−2)、(X−3)及び(X−4)からなる組成物((X−1)、(X−2)、(X−3)及び(X−4)の合計で100重量%とする。)100重量部の対し、0.5〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、より好ましくは1〜30重量部である。結晶性ポリオレフィン及び/またはオレフィン系エラストマーを添加することにより、所望の粘着力を発現でき、また、種々の被着体に適した粘着特性を発現でき、好ましい。
【0033】
前記(X−1)、(X−2)、(X−3)及び(X−4)からなる組成物及び必要に応じて結晶性ポリオレフィン及び/またはオレフィン系エラストマーを加えた組成物により、本発明の表面保護フィルムにおける粘着層(X)を形成することができる。また、本発明においては、さらには本発明の特性を損なわない範囲で、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂改質剤や、帯電防止剤、結晶核剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
本発明においては、さらに表面層(A)と粘着層(X)との間に少なくとも1層の基材層(B)を設けることも可能である。フィルムの機械強度や透明性制御を目的として、また、表面層(A)及び粘着層(X)との接着力が不足する場合には、中間層としてポリオレフィン樹脂や接着性樹脂ないしは接着剤を使用しても良い。
基材層としては特に制限はないが、一般には、融点が100℃以上のポリプロピレンやポリエチレンなどの結晶性ポリオレフィンや、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン系エラストマーなどが使用できる。基材層を接着層として使用する場合には、変性ポリオレフィンや、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステルエラストマーなどが用いられる。これらの中で、生産性及び透明性の点から、ポリプロピレンやポリオレフィンエラストマーを中間層として使用するのが好ましい。
【0035】
前記(X−1)、(X−2)、(X−3)及び(X−4)からなる組成物及び必要に応じて結晶性ポリオレフィン及び/またはオレフィン系エラストマー、及び必要に応じて樹脂改質剤または添加剤は、前記表面層(A)、必要に応じて基材層(B)と積層することにより、本発明における表面保護フィルムとすることができる。
【0036】
表面層(A)と粘着層(X)、必要に応じて基材層(B)を積層する方法については特に制限は無いが、あらかじめT−ダイ成形またはインフレーション成形にて得られた表面層フィルム上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により積層する方法や、基材層及び粘着層を独立してフィルムとした後、各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、表面層、基材層、粘着層の各成分を多層の押出機に供して成形する共押出成形が好ましい。
【0037】
本発明の積層体に使用される表面保護フィルムにおける表面層(A)の厚みとしては、0.1〜100μm、好ましくは0.3〜50μm、より好ましくは0.5〜30μm、さらに好ましくは1〜20μmである。粘着層(X)の厚みとしては、0.1〜50μ、好ましくは0.3〜40μ、より好ましくは0.5〜30μmである。
【0038】
表面保護フィルムの厚みとしては、1〜300μm、好ましくは2〜200μm、より好ましくは3〜100μmである。
【0039】
上記好ましい形態の表面層(A)、粘着層(X)及び必要に応じて基材層(B)を使用することで、部材の保護に必要な粘着特性、剥離時に必要な剥離強度が発現する。また、透明性、耐熱性に優れた表面保護フィルムが得られ、特には建材用途、光学用途に対して好適な積層体となる。
【0040】
以下に本発明を実施例により詳細説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
[評価法]
粘着力(アクリル板):
アクリル板を幅50mm、長さ125mmに切断し、この試験板に2kgのゴムローラーを用いて貼り付ける。次いで、300mm/minの速度で剥離(180度剥離)した時の剥離力を測定し、50mm幅あたりの剥離力を粘着力(N/50mm)とする。
粘着力(メガネレンズ)
ポリカーボネート製メガネレンズ原板(ベースカーブ0.5)に保護フィルムを貼り付け、30、mm/min、300mm/min、1000mm/minの速度で剥離(180度剥離)した時の剥離力を測定し、50mm幅あたりの剥離力を粘着力(N/50mm)とする。各剥離速度での剥離強度をそれぞれS30、S300、S1000と標記する。
【0042】
メルトフローレート(MFR):
ASTM D1238に準拠して、荷重2.16kg、温度230℃で測定した。
【0043】
実施例1
表面層、基材層及び粘着層用に40mmφの単軸押出機を兼ね備えダイ幅500mmの3種3層T−ダイ成形機に以下樹脂組成物を表−1に記載した組成比にて供給し、表面層厚みを10μm、粘着層厚み10μm、中間層厚み30μm、トータル厚み50μmの表面保護フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表−1に示す。

表面層:
LD−1:高圧法低密度ポリエチレン
(密度0.920g/cm、MFR(190℃)6g/10分)

基材層:
PP−1:ホモポリプロピレン
(融点160℃、MFR(230℃)7g/10分)
EL−1:エチレン・ブテン共重合体
(商品名:タフマー、銘柄名:A−4085S、MFR=3.6g/10分、
三井化学株式会社製)

粘着層:
SIBS:スチレン−イソブチレン−スチレントリブロックコポリマーとスチレン−
イソブチレン−スチレンジブロックコポリマーとの混合物
(MFR=14.0g/10分、A硬度=20、分子量(Mw)=48,000)
HSBR:スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素化物
(JSR社製、ダイナロン1320P)
OL−1:スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合体(オリゴマー)
(商品名:FTR、銘柄名:FTR6125、Mw=1950、
軟化点 125℃、三井化学社製)
MP−1:プロピレン・エチレン共重合体(メタロセン触媒で製造)
(融点=115℃、MFR=7g/10分)
PP−2:プロピレン・エチレン・ブテン共重合体(非メタロセン触媒で製造)
(融点=138℃、MFR=7g/10分)

【0044】
実施例2、比較例1
各種層の樹脂組成を表1記載の樹脂組成とした以外は、実施例1と同様にして表面保護フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表−1に示す。

【0045】
【表1】


【0046】
発明の効果
本発明の積層体は、貼合されている表面保護フィルムの粘着特性、経時安定性、透明性、耐熱性に優れ、光学部材、建材用部材、自動車部材用途として産業上の利用価値は極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部材、自動車部材、電子・電気部材、建材用部材、文具・事務用品部材から選ばれる一つの部材に表面保護フィルムが貼合されてなる積層体であり、該表面保護フィルムを剥離する際の剥離強度が以下式1または式2を満たすことを特徴とする積層体。
式1 S30 ≧ S300
式2 S30 ≧ S1000 × 1.2
(ここで、S30は、剥離速度30mm/minでの剥離強度、S300は300mm/minでの剥離強度、S1000は1000mm/minでの剥離強度を示す)
【請求項2】
光学部材、自動車部材、電子・電気部材、建材用部材、文具・事務用品部材から選ばれる一つの部材に表面保護フィルムが貼合されてなる積層体であり、該表面保護フィルムを剥離する際の剥離強度が以下式3を満たすことを特徴とする積層体。
式3 S30 ≧ S300 ≧ S1000 × 1.2
(ここで、S30は、剥離速度30mm/minでの剥離強度、S300は300mm/minでの剥離強度、S1000は1000mm/minでの剥離強度を示す)
【請求項3】
表面保護フィルムが、表面層(A)及び粘着層(X)の少なくとも2層からなり、表面層(A)がポリオレフィン樹脂からなり、粘着層(X)が、融点が50℃未満または融点が観測されない炭素数3以上のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン(共)重合体(X−1)0〜50重量%、及び融点が50〜130℃の範囲にあり、メタロセン触媒を用いて得られるプロピレン(共)重合体(X−2)0.5〜50重量%、スチレン系エラストマー(X−3)10〜98重量%、重量平均分子量(Mw)が200〜9,000の範囲にあり、軟化点が60〜160℃の範囲にあるオリゴマー(X−4)0〜50重量%からなる組成物((X−1)、(X−2)、(X−3)及び(X−4)の合計で100重量%とする。)から形成されること特徴とする請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
スチレン系エラストマー(X−3)が、スチレン・イソブチレン共重合体であることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
表面保護フィルムが、表面層(A)及び粘着層(X)の少なくとも2層をT−ダイから押出成形して得られる多層フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
【請求項6】
部材が、メガネレンズ用部材である請求項1又は2のいずれかに記載の積層体。

【公開番号】特開2011−37243(P2011−37243A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189512(P2009−189512)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000220099)三井化学東セロ株式会社 (177)
【Fターム(参考)】