説明

表面保護フィルム

【課題】 曲面を有する被着体に用いる際や被着体への貼付及び被着体からの剥離の際に屈曲状態で用いても帯電防止性が維持されると共に、製造時に乾燥等の処理を比較的低温で行った場合においても基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離が十分に防止される表面保護フィルムを提供すること。
【解決手段】 オレフィン系樹脂からなる厚さ20〜100μmの基材フィルム5と、
前記基材フィルム5上に形成され、導電性高分子微粒子と熱可塑性樹脂バインダーとを含有する導電性塗膜層6と、
前記導電性塗膜層6上に形成された粘着剤層7と、
を備えることを特徴とする表面保護フィルム4。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルムと導電性塗膜層とを備える表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチックや金属など、様々な材料に対する表面保護フィルムが提案されており、特に偏光板や位相差板等の光学材料や液晶表示装置等の電子機器に対して、表面への異物の吸着や静電気によって生じる不具合を抑制する目的で、帯電防止性を付した様々な表面保護フィルムが開発されている。
【0003】
例えば、特表2010−505024号公報(特許文献1)には、二軸延伸したポリオレフィン樹脂からなる基材フィルムと粘着剤層との間にウレタン系又はアクリル系樹脂と伝導性微粒子であるATO(Sb−SnO)とを含む基材フィルム裏側表面コーティング層が形成された表面保護フィルムが開示されている。
【0004】
また、特開2008−248038号公報(特許文献2)には、ポリオレフィン系樹脂の延伸フィルム上に合成樹脂バインダーとポリピロールとを含む導電性塗膜層が形成された帯電防止性ポリオレフィン系樹脂フィルムが記載されており、具体的には、厚さが300μmのポリオレフィン系樹脂の延伸フィルムが用いられた帯電防止フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−505024号公報
【特許文献2】特開2008−248038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の表面保護フィルムにおいては、帯電防止性を得るために無機粒子であるATOを用いているため、被着体が平面である場合には帯電防止性が確保できるものの、表面保護フィルムを曲面を有する被着体表面に沿って屈曲させた状態で用いる場合や、被着体への貼付及び被着体からの剥離の際に表面保護フィルムを屈曲させる場合には帯電防止性が低下するという課題があることを本発明者は見出した。
【0007】
また、特許文献2において開示されている帯電防止フィルムにおいては、屈曲時の帯電防止性はある程度維持されるものの、厚い基材フィルムを用いているために曲面を有する被着体との密着性が低く、他方、薄い基材フィルムを用いる場合には基材フィルムの変形を防ぐという観点から製造時に乾燥等の処理を比較的低温で行うことが有効であることが知られているが、特許文献2において開示されている帯電防止フィルムにおいては、製造時の乾燥等の処理を低温で行うと基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離が発生してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、曲面を有する被着体に用いる際や被着体への貼付及び被着体からの剥離の際に屈曲状態で用いても帯電防止性が維持されると共に、製造時に乾燥等の処理を比較的低温で行った場合においても基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離が十分に防止される表面保護フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、基材フィルムと導電性塗膜層とを備える表面保護フィルムにおいて、基材フィルム上に導電性微粒子として導電性高分子微粒子を用いると共に、厚さが20〜100μmの薄い基材フィルムを用い、さらに基材フィルムをオレフィン系樹脂からなるフィルムとし、且つ導電性塗膜層に熱可塑性樹脂バインダーを含有することによって、前記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の表面保護フィルムは、オレフィン系樹脂からなる厚さ20〜100μmの基材フィルムと、
前記基材フィルム上に形成され、導電性高分子微粒子と熱可塑性樹脂バインダーとを含有する導電性塗膜層と、
前記導電性塗膜層上に形成された粘着剤層と、
を備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記熱可塑性樹脂バインダーとしては、塩素化ポリオレフィン樹脂及び酸変性ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂からなるバインダーを用いることが好ましい。
【0012】
さらに、前記基材フィルムとしては、無延伸フィルムを用いることが好ましい。
【0013】
なお、本発明の表面保護フィルムによって屈曲状態で用いても帯電防止性が維持されると共に、製造時に乾燥等の処理を比較的低温で行った場合においても基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離が十分に防止される理由は必ずしも定かではないが、本発明者は以下のように推察する。すなわち、本発明の導電性塗膜層においては、図1Aに示すように、導電性塗膜層中において導電性高分子微粒子1の高分子鎖2同士が互いに複雑に絡み合った緻密な構造を形成している。よって、表面保護フィルムを屈曲あるいは延伸させることにより隣接する導電性高分子微粒子1がA方向に移動して粒子の中心間距離が離れても、分子同士の接触状態又は近接状態が維持されて電荷の輸送系統が途切れることがないため、屈曲前と同等の帯電防止性を得ることが可能となる。一方、従来の導電性無機微粒子3を用いた場合においては、図1Bに示すように、表面保護フィルムを屈曲あるいは延伸させると隣接する粒子同士が離れて電荷の輸送系統が途切れるため、帯電防止性が低下すると本発明者は推察する。
【0014】
また、本発明の表面保護フィルムにおいては、オレフィン系樹脂からなる基材フィルム上に熱可塑性樹脂バインダーを含む層を形成することで、オレフィン系樹脂と熱可塑性樹脂バインダーとの間の相互作用により基材フィルムと導電性塗膜層との結合がより強固となるため、製造時に乾燥等の処理を比較的低温で行った場合においても基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離が十分に防止される、すなわち優れた剥離防止性を有することが可能となると本発明者は推察する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、曲面を有する被着体に用いる際や被着体への貼付及び被着体からの剥離の際に屈曲状態で用いても帯電防止性が維持されると共に、製造時に乾燥等の処理を比較的低温で行った場合においても基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離が十分に防止される表面保護フィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】本発明の表面保護フィルムが屈曲、延伸したときの導電性高分子微粒子の状態変化の概念図である。
【図1B】従来の表面保護フィルムが屈曲、延伸したときの導電性無機微粒子の状態変化の概念図である。
【図2】本発明の表面保護フィルムの好適な一実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図2は、本発明の表面保護フィルムの好適な一実施形態を模式的に示す縦断面図である。図2中、表面保護フィルム4は、基材フィルム5と、基材フィルム5上に形成された導電性塗膜層6とを備えている。
【0019】
本発明にかかる基材フィルム5は、オレフィン系樹脂からなるフィルムであり、導電性塗膜層の支持体となるものである。
【0020】
前記オレフィン系樹脂としては、特に制限されず、公知のオレフィン系樹脂を適宜用いることができ、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ブロック−ランダムポリプロピレン等のポリプロピレン;ポリブテン;エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ−3−メチルブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等の2種類以上のオレフィンの共重合体又は1種類以上のオレフィンと該オレフィンと重合可能な1種類以上の重合性モノマーとの共重合体が挙げられる。これらのオレフィン系樹脂は1種を単独で用いても又は2種以上を併用してもよく、このようなオレフィン系樹脂からなる基材フィルム5としては、単層であってもよいし、上記の樹脂からなるフィルムの2種以上を組み合わせた積層フィルムであってもよく、また、表面にコロナ処理やプラズマ処理が施されたフィルムであってもよい。
【0021】
本発明にかかる基材フィルム5の厚さは、20〜100μmであり、好ましくは30〜70μmである。基材フィルム5の厚さが前記下限未満になると支持体としての強度が不足し、他方、前記上限を超えると、柔軟性が不足するため曲面を有する被着面に用いることが困難になる。
【0022】
また、本発明にかかる基材フィルム5としては、基材フィルム5と導電性塗膜層6との間の剥離防止性を高めるという観点並びに被着体の曲面への追従性を確保するという観点から、無延伸フィルムであることが好ましい。
【0023】
本発明にかかる導電性塗膜層6は、基材フィルム5上に形成され、導電性高分子微粒子と熱可塑性樹脂バインダーとを含有する。このような導電性塗膜層6は単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の層を2層以上積層した多層構造であってもよい。また、導電性塗膜層6の厚さとしては、0.05〜1.0μmであることが好ましい。導電性塗膜層6の厚さが前記下限未満になると十分な導電性が得られないため表面保護フィルムの帯電防止性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、柔軟性が不足するため曲面を有する被着面に用いることが困難になる傾向にある。
【0024】
本発明に用いられる導電性高分子微粒子は、導電性塗膜層6に導電性を付与する導電性高分子からなる微粒子である。
【0025】
前記導電性高分子としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェンが挙げられる。このような導電性高分子のうち、ポリアニリン及びポリピロールが好ましく、ポリピロールがより好ましい。
【0026】
本発明に用いられる導電性高分子微粒子としては、特に限定されないが、平均粒子径が10〜500nmの微粒子であることが好ましい。導電性高分子微粒子の平均粒子径を前記下限未満にすることは技術的に難しく、経済的にも不利になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると表面保護フィルムを屈曲あるいは延伸させる際に高分子微粒子同士が離れ、帯電防止性が低下する傾向にある。また、これらの導電性高分子微粒子は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂バインダーは、熱可塑性樹脂からなるバインダーである。このような熱可塑性樹脂バインダーとしては、特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂からなるバインダーが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂バインダーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。このような熱可塑性樹脂バインダーの中でも、基材フィルム5と導電性塗膜層6との間の剥離防止性をより高めるという観点から、オレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂及び酸変性ポリオレフィン樹脂といったポリオレフィン系樹脂からなるバインダーを用いることが好ましく、中でも塩素化ポリオレフィン樹脂及び酸変性ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂からなるバインダーを用いることが特に好ましい。
【0028】
前記塩素化ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン系共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等のプロピレン系共重合体等のポリオレフィン系樹脂を塩素化させた塩素化ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0029】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン系共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等のプロピレン系共重合体等のポリオレフィン系樹脂と、不飽和カルボン酸とを共重合させた酸変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0030】
本発明にかかる導電性塗膜層6において、前記導電性高分子微粒子の含有量は、前記熱可塑性樹脂バインダー100質量部に対して50〜500質量部であることが好ましい。導電性高分子微粒子の含有量が前記下限未満になると十分な導電性が得られないため表面保護フィルムの帯電防止性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基材フィルム5と導電性塗膜層6との間の剥離防止性が低下する傾向にある。
【0031】
また、本発明にかかる導電性塗膜層6においては、前記導電性高分子微粒子及び前記熱可塑性樹脂バインダーの他に、必要に応じて各種添加剤、例えば分散安定剤、増粘剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤を含んでいてもよい。
【0032】
本発明の表面保護フィルム4は、基材フィルム5と、導電性塗膜層6とを備えることを特徴とするが、さらに導電性塗膜層6上に形成された粘着剤層7を備えていることが好ましい。
【0033】
このような粘着剤層7は、粘着性を有する化合物(以下粘着剤と称する)を含む層であることが好ましく、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の層を2層以上積層した多層構造であってもよい。また、粘着剤層7の厚さとしては、3〜50μmであることが好ましい。粘着剤層7の厚さが前記下限未満になると表面保護フィルムと被着体との間の均一な密着性が得られ難くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、柔軟性が不足するため曲面を有する被着面に用いることが困難になる傾向にある。
【0034】
前記粘着剤としては、本発明の効果を損なわないものであればよく、特に制限されず、アクリルポリマー、シリコーンポリマー、ビニルエステルポリマー、合成ゴム(スチレン−ブタジエンゴム、イソブチレンゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等)、天然ゴムを用いることができる。また、このような粘着剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
また、粘着剤層7においては、必要に応じて例えば、粘着付与剤、軟化剤、導電性高分子微粒子、導電性無機微粒子、架橋剤、老化防止剤を含んでいてもよい。
【0036】
次に、本発明の表面保護フィルムを製造するために好適に利用可能な方法について説明する。本発明の表面保護フィルムの製造においては、基材フィルム5上に導電性塗膜層6を形成する。
【0037】
本発明にかかる導電性塗膜層6を形成する方法としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、前記導電性高分子微粒子と前記熱可塑性樹脂バインダーとを含有する導電性塗料を基材フィルム5の表面に塗布し、乾燥させることにより得られる。
【0038】
前記導電性高分子微粒子は、市販の導電性高分子微粒子を用いてもよく、公知の方法により適宜合成したものを用いてもよい。例えば、ポリピロールの合成方法としては、水と有機溶媒と界面活性剤とを混合攪拌してなる水中油滴型(O/W型)の乳化液(エマルジョン)中に、ピロール及び/又はピロール誘導体のモノマー及び酸化重合剤を添加して該モノマーを酸化重合させ、有機相又は水相を回収して導電性微粒子の分散液を得る方法が挙げられる。このような有機溶媒としては、疎水性であることが好ましく、中でもトルエンやキシレンがより好ましい。また、導電性高分子微粒子の分散液としては、有機相を回収して得られたものであることが好ましい。
【0039】
前記導電性塗料の固形分濃度は、適宜希釈溶媒を用いて調整することができる。前記希釈溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類;N−メチルピロリドン等の含窒素化合物;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類を用いることができる。なお、予め溶媒に分散された導電性高分子微粒子の分散液を用いる場合は、分散液に用いられている溶媒を導電性塗料の希釈溶媒の一部又は全部として用いることができる。これらの希釈溶媒は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。このような希釈溶媒としては、導電性塗膜層6と基材フィルム5との間の剥離防止性をより高めるという観点から、有機溶媒を用いることが好ましく、トルエンやメチルエチルケトンを用いることがより好ましい。また、このような導電性塗料の固形分濃度としては、0.5〜5質量%であることが好ましい。
【0040】
前記導電性塗料の塗布方法としては、公知の方法を制限なく用いることができ、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、コンマコート法、ナイフコート法、グラビア印刷法、ダイコート法,カーテンコート法、インクジェット法を採用することができる。また、前記導電性塗料の塗布量としては、乾燥後の導電性塗膜層6の厚さが上記導電性塗膜層6の厚さとなる塗布量であることが好ましい。
【0041】
前記導電性塗料の乾燥方法としては、特に限定されず、自然乾燥による方法や、所定の温度に設定したオーブン中で乾燥させる方法、赤外線ドライヤー等を用いる方法を採用することができる。このような乾燥の条件としては、採用する乾燥方法により適宜選択することできるが、例えば、1〜10分間、温度30〜130℃にて乾燥することが好ましく、基材フィルムの伸縮を防ぐという観点からは、60〜100℃にて乾燥することがより好ましい。
【0042】
本発明の表面保護フィルムの製造においては、導電性塗膜層6を形成した後、必要に応じて導電性塗膜層6上に粘着剤層7を形成することが好ましい。
【0043】
このような粘着剤層7を形成する方法としては、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、前記粘着剤を含有する粘着剤塗料を導電性塗膜層6上に塗布し、乾燥させることにより得られる。前記粘着剤塗料の固形分濃度は、適宜希釈溶媒を用いて調整することができる。前記希釈溶媒としては、例えば、導電性塗料の希釈溶媒として例示したものが挙げられる。このような希釈溶媒の中でも、導電性塗膜層6と粘着剤層7との間の剥離防止性を高めるという観点から、有機溶媒を用いることが好ましい。
【0044】
また、このような粘着剤塗料の塗布方法および乾燥方法については、導電性塗料の塗布方法及び乾燥方法で挙げた方法と同様の方法を適宜採用することができる。
【0045】
以上、本発明の表面保護フィルムの好適な一実施形態について説明したが、本発明の表面保護フィルムは上記実施形態に限定されるものではない。例えば、図2に示す実施形態において、表面保護フィルム4は、基材フィルム5と、導電性塗膜層6とを備え、さらに粘着剤層7を備えているが、用途や目的に応じて、着色層、紫外線吸収層、光学異方層等の各種機能層を備えていてもよい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
(合成例)
先ず、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルナトリウム1.5mmolをトルエン50mLに溶解し、さらにイオン交換水100mLを加え20℃に保持しつつ乳化するまで攪拌した。得られた乳化液にピロールモノマー21.2mmolを加え、30分間攪拌し、次いで0.12M過硫酸アンモニウム水溶液50mL(6mmol相当)を少量ずつ滴下しつつ4時間反応せしめた。反応終了後、有機相を回収し、イオン交換水で数回洗浄して得たポリピロール微粒子をトルエンに分散せしめ、ポリピロール微粒子の分散液(固形分濃度:2.0質量%)を得た。
【0048】
(実施例1)
前記合成例で調製したポリピロール微粒子分散液100質量部に、塩素化ポリオレフィン樹脂(日本製紙ケミカル社製、製品名「スーパークロン892L」、固形分:10質量%)5質量部を添加し、その後、トルエン100質量部で希釈した後、ディスパーミキサーで攪拌し、固形分濃度1.2質量%の導電性塗料を調製した。次いで、得られた導電性塗料をポリプロピレン系樹脂からなる無延伸フィルム(CPP)(サン・トックス社製、製品名「CP−MK12」、膜厚:40μm)の片面に、格子#150、深度60μmのグラビアロールを用いて速度20m/minの条件でダイレクトリバース法にて塗布し、80℃にて5分間乾燥させて導電性塗膜層を形成させた。得られた導電性塗膜層の厚さは0.1μmであった。
【0049】
次に、アクリル系粘着剤(ビックテクノス社製、製品名「AR−2158」)100質量部と硬化剤(ビックテクノス社製、製品名「L−55E」)3質量部とをトルエン50質量部で希釈して粘着剤塗料を調製した。次いで、得られた粘着剤塗料を導電性塗膜層上に塗布し、80℃にて5分間乾燥させて厚さ5μmの粘着剤層を形成させ、本発明の表面保護フィルムを得た。
【0050】
(実施例2)
導電性塗料の調製において、トルエンに代えてメチルエチルケトンを用いた以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
【0051】
(実施例3)
導電性塗料の調製において、塩素化ポリオレフィン樹脂に代えて酸変性ポリオレフィン樹脂(星光PMC社製、製品名「ZS−1426」、固形分:10質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
【0052】
(実施例4)
導電性塗料の調製において、ポリピロール微粒子分散液に代えてポリアニリン微粒子のキシレン分散液(日産化学工業(株)社製、製品名「ORMECON NX−B001X」)(固形分濃度:4.0質量%)を50質量部用いた以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
【0053】
(実施例5)
導電性塗料の調製において、塩素化ポリオレフィン樹脂に代えてポリオレフィン樹脂(三菱化学社製、製品名「モディックP565」、固形分:10質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
【0054】
(実施例6)
導電性塗料の調製において、塩素化ポリオレフィン樹脂に代えてアクリル樹脂(綜研化学社製、製品名「A−PET−3」、固形分:10質量%)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
【0055】
(実施例7)
ポリプロピレン系樹脂からなる無延伸フィルムに代えてポリエチレン系樹脂からなる延伸フィルム(PE)(大倉工業社製、製品名「F−6」、膜厚:60μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
【0056】
(比較例1)
導電性塗料の調製において、ポリピロール微粒子分散液に代えてアンチモン錫酸化物微粒子(ATO)(三菱マテリアル電子化成社製、製品名「T−1」)5質量部を用い、トルエン100質量部に代えてトルエン200質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
【0057】
(比較例2)
導電性塗料の調製において、塩素化ポリオレフィン樹脂に代えてメラミン樹脂(DIC社製、製品名「スーパーベッカミン J−820−60」、固形分:10質量%))を用いた以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
【0058】
(比較例3)
ポリプロピレン系樹脂からなる無延伸フィルムに代えてポリエチレンテレフタレート樹脂からなる延伸フィルム(PET)(東レ社製、製品名「ルミラーS−10」、膜厚:38μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、表面保護フィルムを得た。
【0059】
(試験例)
実施例1〜7及び比較例1〜3で得られた表面保護フィルムについて、表面抵抗値を測定することにより導電性の評価を行い、また、剥離試験を行うことにより基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離防止性の評価を行った。表面抵抗値の測定及び剥離試験は以下に示す方法で行った。得られた結果を表1に示す。
【0060】
<表面抵抗値の測定>
温度25℃、相対湿度50%、印加電圧10Vの条件で、抵抗率計(三菱化学社製、製品名「ハイレスタ−」)を用いて平面状態及び屈曲状態における表面抵抗値を測定した。上記屈曲状態における表面抵抗値は、直径10cmの円柱外側面に粘着層が外側になるように表面保護フィルムを巻きつけた状態で測定した。それぞれの表面保護フィルムについて、屈曲状態における表面抵抗値は以下の基準にて評価した。
○:屈曲状態における表面抵抗値が、平面状態における表面抵抗値と同等、若しくは1桁大きい。
×:屈曲状態における表面抵抗値が、平面状態における表面抵抗値より2桁以上大きい。
【0061】
<剥離試験>
JIS K 5600−5−6「塗料一般試験法−付着性」に記載の方法に準じて剥離試験を行った。基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離防止性は以下の基準にて評価した。
○:基材フィルムと導電性塗膜層との間において、剥がれなかった。
△:基材フィルムと導電性塗膜層との間において、テープを貼った一部分が剥れた。
×:基材フィルムと導電性塗膜層との間において、テープを貼った全面が剥がれた。
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の表面保護フィルムを用いた場合(実施例1〜7)は、表面保護フィルムを屈曲状態にしたときの導電性が十分に維持され、且つ基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離防止性が優れたものであった。特に、基材フィルムが無延伸フィルムであり、熱可塑性樹脂バインダーが塩素化ポリオレフィン樹脂又は酸変性ポリオレフィン樹脂からなる場合(実施例1〜4)においては、基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離防止性が非常に優れたものであった。一方、本発明にかかる導電性高分子微粒子に代えてATOを添加した場合(比較例1)においては、表面保護フィルムを屈曲状態にすると平面状態に比べて著しく導電性が低下し、屈曲状態での帯電防止性が劣ったものであった。また、本発明にかかる熱可塑性樹脂バインダーに代えてメラミン樹脂を添加した場合(比較例2)及びオレフィン系樹脂からなるフィルムに代えてPETを用いた場合(比較例3)においては、基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離防止性が劣ったものであった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、曲面を有する被着体に用いる際や被着体への貼付及び被着体からの剥離の際に屈曲状態で用いても帯電防止性が維持されると共に、製造時に乾燥等の処理を比較的低温で行った場合においても基材フィルムと導電性塗膜層との間の剥離が十分に防止される表面保護フィルムを提供することが可能となる。
【0065】
したがって、本発明の表面保護フィルムは、屈曲状態で用いられる帯電防止性表面保護フィルムとして非常に有用である。
【符号の説明】
【0066】
1…導電性高分子微粒子、2…高分子鎖、3…導電性無機微粒子、A…表面保護フィルムを屈曲、延伸させたときの粒子の移動方向、4…表面保護フィルム、5…基材フィルム、6…導電性塗膜層、7…粘着剤層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂からなる厚さ20〜100μmの基材フィルムと、
前記基材フィルム上に形成され、導電性高分子微粒子と熱可塑性樹脂バインダーとを含有する導電性塗膜層と、
前記導電性塗膜層上に形成された粘着剤層と、
を備えることを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂バインダーが、塩素化ポリオレフィン樹脂及び酸変性ポリオレフィン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つの熱可塑性樹脂からなるバインダーであることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記基材フィルムが無延伸フィルムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護フィルム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−11564(P2012−11564A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147353(P2010−147353)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】