説明

表面保護フィルム

【課題】
本発明は液晶ディスプレイ等の電子部品の表面が輸送中や製造ライン等で傷ついたりごみが付着して汚れるのを防止するために、該機器の表面に貼着して使用される表面保護フィルムに関するもので、該フィルムをロ−ルに巻き取ったり、ロールから繰り出す際、フィルムに発生するしわの発生、傷つきの抑制に効果があり、かつ、ディスプレイなどの表面に貼着した状態でも、ディスプレイの欠陥検査に支障をきたさないことを特徴とする。
【解決手段】
詳しくは、高分子支持体の一方の表面に、粘着層を有し、他方表面に、ポリマー架橋粒子を含有する層を有する積層フィルムからなる表面保護フィルムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶ディスプレイ等の電子部品の表面が輸送中や製造ライン等で傷ついたりごみが付着して汚れるのを防止するために、該機器の表面に貼着して使用される表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、ワープロ、電卓、テレビ等のディスプレイの製品およびその部材、例えば偏光板、導光板、前面板等には、製造、搬送、保管等の際に表面の損傷やゴミやほこり等が付着して汚染されるのを防止するために、表面にプラスチック性のシートが保護フィルムとして積層されている。この保護フィルムは一時的に製品表面に貼着され製品が使用される時点では該フィルムを剥離して使用するように、粘着剤が剥離可能に形成されている。製品表面に貼着された状態で、ディスプレイの欠陥の有無を検査するため、該保護フィルム自体に傷、異物、しわ、埃などがあると、その部分をディスプレイの欠陥と誤って検知してしまうことがあり、正確な検査が行えないことになる。
【0003】
従来の保護フィルムは、高分子基材からなるシートに粘着剤が積層された構成を有し、通常ロール状に巻き取られて供給され、貼着する際ロールから粘着剤が付いたフィルムを繰り出して、ディスプレイ等の所定の部分に保護フィルムを貼着して使用する。
そして、これらの従来の保護フィルムは、被着体の表面に貼着する際、剥離した保護フィルムの粘着剤層と、プラスチックフィルムの表面との間で剥離による静電気が発生して、保護フィルム自体が帯電してしまい、製品に貼りつけた際にゴミが付着したり保護フィルムと被着体との間に異物が挟まり、製品の表面を傷つける等の問題があった。
ぞ行き問題を解決するために、特許文献1、2には上記、ゴミ、埃等が付着することを防ぐため、フィルムの片面もしくは両面に、帯電防止機能のある粘着材を使用したり、高分子基材上に帯電防止機能のある材料を塗布したり、蒸着しさらに粘着層を設けることで、帯電防止性を付与することが記載されている。帯電防止性を付与することにより、埃、ゴミ等の付着は抑制できるが、貼着する際、ロールから繰り出す時のフィルム間の滑り性が不良なため、擦れによりしわ、傷等が発生し、ディスプレイの検査業務に支障をきたす恐れがあった。
一方、特許文献3 特開平3−36030号公報には、PETなどの高分子基材に滑り性を付与するため、シリカ粒子、アルミナ、酸化チタン、炭酸アルミニウム、カーボンブラックのような無機微粒子をフィルム表面に塗布することが知られている。滑り性は付与できるものの、無機粒子であるため、硬く、高分子基材が傷つきやすい。また、無機粒子は、粒子とバインダーおよびフィルムとの接着性が悪く、粒子の剥離が生じやすい。
一方、特許文献4 特開平6−287242号広報には、ポリマー架橋粒子を滑り性付与材として使用することが記載されている。しかしながら、本技術をそのまま用いただけでは、製品表面に貼着された状態で、ディスプレイの欠陥の有無を検査する際に、フィルムの透過性が十分でないため欠陥をみつけるのが難しいという問題があった、なお、特許文献3および4には、磁気テープ用、写真用、蒸着用、コンデンサー用、包装用などへの応用可能性の記載があるのみで、本発明のディスプレイ用表面保護フィルムへの応用に関する記載はない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−113128
【特許文献2】特開平9−207259
【特許文献3】特開平3−36030号
【特許文献4】特開平6−287242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来の問題点を解消し、フィルム自体に傷、埃、しわ等が付き難く、また透明性に優れ、製品表面に貼着された状態でも、ディスプレイの欠陥の有無を検査できる表面保護フィルムを提供するものである
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高分子支持体の一方の表面に粘着層を有し、もう一方の表面にポリマ−架橋粒子を含有する層を有する積層フィルムであることを特徴とするディスプレイ表面保護フィルム、
ならびに高分子支持体の一方の表面に粘着層を有する積層フィルムであって高分子支持体中に、ポリマー架橋粒子が分散してることを特徴とするディスプレイ表面保護フィルムを提供するものである。
【0007】
1.高分子基材(基材フィルム)
本発明において使用される基材フィルムの種類は特に制限されるものではないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン)、トリアセチルセルロース樹脂、ポリカーボネート樹脂、アリルカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ノルボルネン樹脂、アクリルスチレン樹脂、およびガラス等からなる基材を挙げることができる。
本発明において、上記基材のなかでもポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン樹脂、例えばポリエチレンのような汎用の基材フィルムを使用することができる。
本発明において、基材フィルムの厚さは、通常5〜100μm、好ましくは15〜50μmである。
なお、これらの基材フィルムは、コロナ放電処理など、種々の表面処理がされていてもよい。また、その形態は、何ら制限されるものではないが、量産性を考慮すれば、ロール形態が好ましい。
【0008】
2.ポリマー架橋粒子を含む層
本発明において、ポリマー架橋粒子を含む層には、主としてポリマー架橋粒子およびバインダ−樹脂が含まれる。ポリマー架橋粒子としては、例えば、特開昭63−189413、特開平6−287242号公報などに記載されている架橋粒子であって、平均粒子径が0.05〜0.5μmである。
本発明のポリマー架橋粒子は、通常、(1)シード粒子存在下に、架橋性モノマ−および必要に応じて非架橋性モノマ−混合物を乳化剤、重合開始剤の存在下、乳化重合させる方法、(2)シ−ド粒子なして、架橋性モノマ−および必要に応じて非架橋性モノマ−混合物を、乳化剤、重合開始剤の存在下、乳化重合させる方法などにより製造することができる。
【0009】
本分子中に重合性二重結合を含む基を2個以上有する架橋性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミドを例示することができ、特にジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートが好ましい。これらは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0010】
非架橋性モノマーとしては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、フルオロスチレン、ビニルピリジンなどの芳香族モノビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、N,N′−ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアクリル酸エステルモノマー、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N′−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルモノマー、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸およびジカルボン酸の酸無水物、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなどのアミド系モノマー、さらにスチレンスルホン酸ナトリウム、スルホン化イソプレンなどのイオン性モノマーなどを用いることができる。また、重合速度および重合安定性の点で許容される範囲内において、ブタジエン、イソプレンなどの共役二重結合化合物や酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物、4−メチル−1−ペンテン、その他のα−オレフィン化合物も使用することができる。
【0011】
本発明において用いられる上記単量体を乳化重合する際の乳化剤としては、通常の乳化重合で使用されるものを用いることができ、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩などのアニオン系界面活性剤を例示することができ、さらにポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレートなどのノニオン系界面活性剤を例示することができる。さらに、市販の乳化剤であるニューフロンティアA−229E、同N177E、アクアロンKH−10、同HS−10〔第一工業製薬(株)製〕やエレミノールJS−2、同RS−30〔三洋化成工業(株)製〕、ラテムルS−120A、同S−180〔花王(株)製〕などを使用することもできる。これら乳化剤としては1種類でもよいが、2種類以上を組み合わせて使用すれば、さらに安定性の点で効果がある。さらに好ましい組み合わせとしては、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤との組み合わせがある。また、必要に応じてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性高分子を安定剤として使用してもよい。
【0012】
本発明において使用される重合開始剤としては、通常の乳化重合、分散重合で用いられるものであれば特に制限されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤および過酸化水素、有機過酸化物などを単独で、あるいはアスコルビン酸などの各種還元剤と組み合わせて使用してもよい。
【0013】
なお、シ−ド粒子としては、前記非架橋性モノマ−必要に応じて前記架橋性モノマ−から選ばれるモノマ−を用いて、前記乳化剤、重合開始剤等を用いて乳化重合することにより得られる。シード粒子の好ましい粒子径は0.03〜0.4μmの粒子である。シ−ド粒子としては、ポリスチレン系粒子、ポリメタクリル酸メチル系粒子が好ましい。
【0014】
本発明においてモノマ−の重合は、前記シード粒子の存在下において重合を行なう、いわゆるシード重合法を採用することもできる。本発明においては、単量体を反応容器に一括して添加し重合する方法、モノマー単量体を連続的または間欠的に連続添加する方法などが挙げられる。
上記ポリマー架橋粒子は、乳化重合により得られた水分散系で、以下記載するバインダ−樹脂と混合して塗工に使用しても良いし、水分散体から水を除去した粉体として、有機溶剤、バインダ−などに分散して使用してもよい。
本発明のポリマー架橋粒子の平均粒子径が0.05〜0.5μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.07μm〜0.4μmである。平均粒子径が0.5μmを超えると、フィルムの透過率が低下し、検査業務に支障をきたし、0.05μm未満では、保護フィルムとして使用した際のスベリ性が十分でなく、傷つきが発生することがあり好ましくない。
【0015】
本発明において、架橋性モノマーの使用割合は10重量%以上、好ましくは15重量%以上とする必要がある。架橋性モノマーが10重量%未満では、フィルム間の擦れなどにより、粒子の変形もしくは割れが生じるため、本発明のポリマー架橋粒子として適さない。
【0016】
バインダ−樹脂成分としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ニトロセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ビニルエーテル樹脂等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、分子内の(メタ)アクリル基を一つあるいは二つ以上有する(メタ)アクリレート化合物、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂等の活性エネルギー線を照射することで硬化可能な硬化性樹脂などを挙げることができる。これらの成分は、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、上記バインダ−樹脂がエマルジョンタイプであるものが好ましい。
【0017】
ポリマー架橋粒子とバインダ−樹脂以外に、層を形成するために、有機溶媒などを併用できる。例えば、水、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル等を挙げることができる。なお、これらは、一種単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
ポリマー架橋粒子の割合は、ポリマー架橋粒子とバインダ−樹脂の合計量100部(固形分換算)に対して、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.2%〜15%、さらに好ましくは、0.4%〜10%である。0.1%未満では、保護フィルムとして使用した際のスベリ性が十分でなく、フィルムの傷つきが発生し、20%を超えるとフィルムの透過率が低下し検査業務に支障をきたすため好ましくない。
【0019】
有機溶媒の割合は、ポリマー架橋粒子の固形分量100重量部に対して、2,000重量部以下であることが好ましく、1,000重量部以下であることが更に好ましい。
本発明において、ポリマー架橋粒子を含む層の最適な厚さは、使用するポリマー架橋粒子の平均粒子によって変わってくる。通常0.05〜2μmであるが、好ましくは
ポリマー架橋粒子を含有する層の平均膜厚(T(μm)と、ポリマー架橋粒子の平均粒子径(D(μm))が、以下の条件を満たすことが好ましい。
(D−0.2)≦T≦D+0.5
系金膜厚が2μmを超えると、ポリマー架橋粒子が層表面の凸凹が十分形成されず、すべり性が十分でなく、0.05μm未満では、粒子の脱落が生じ易く好ましくない。
【0020】
3.粘着層
本発明における粘着剤層は粘着性樹脂から形成される。
粘着性樹脂は、粘着剤として作用しうる粘着力を有する樹脂であり、その例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂、エチレン/酢酸ビニル系共重合等を主成分とする樹脂を挙げることができ、これらのうち、特に(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂が好ましい。
以下、粘着性樹脂について、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂を中心として詳細に説明する。
本発明における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類を主成分とし、粘着性を有する樹脂からなるものである。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、i−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、これらのうち、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類が好ましく、さらに好ましくはアルキル基の炭素数が6〜12のアクリル酸アルキルエステル類である。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル類は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂においては、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル類と共に、前記非架橋性モノマ−あるいは架橋性モノマーを併用することができる。
【0021】
本発明において、粘着性樹脂は、単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類のみの単独重合体あるいは共重合体、あるいは(メタ)アクリル酸アルキルエステル類と他の重合性モノマー(i)との共重合体からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂を含有する粘着性樹脂が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂を含有する粘着性樹脂において、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂の含有割合は、粘着性樹脂全体の、好ましくは60〜100重量%、さらに好ましくは80〜100重量%である。
本発明において、粘着剤層の厚さは通常5〜50μm、好ましくは10〜30μmである。
本発明においては、基材フィルムの粘着剤層形成面の反対側の面に、例えば防汚剤などを塗布することができる。
【0022】
4.帯電防止剤成分
本発明の表面保護フィルムのポリマー架橋粒子または粘着層には、静電気障害によりゴミ等の付着を防止するため、帯電防止剤を併用しても良い。
帯電防止剤としては、前記に記載したアニオン、カチオン、ノニオン、両性の乳化剤あるいは界面活性剤、ポリスチレンスルホン酸塩などの高分子スルホン酸塩、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリセレノフェン、3,4−(ポリメチレン)ジオキシチオフェンのポリマー、例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びこれらの誘導体並びにこれらの導電性ポリマーが挙げられる。
好ましくは、帯電防止性が持続するという観点から、高分子系の界面活性剤が好ましく、ポリスチレンスルホン酸塩が好ましい。
また、高分子基材とポリマー架橋粒子を含む層の間あるいは、高分子基材と粘着層の間に、別に帯電防止機能をもつ層などを設けても構わない。
少なくとも粘着層あるいはポリマー架橋粒子を有する層のどちらか一方の表面の表面固有抵抗値は、1×1012(Ω/□)以下であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の粘着剤組成物は、所望によりさらに粘着付与剤、湿潤剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防腐防カビ剤、界面活性剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。
【0024】
粒子を塗布する工程および粘着層を形成する方法としては、公知の方法が適用できる。例えば、スプレーコート法、エアーナイフ法、リバースコート法、キスコート法、グラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法などが適用できる。
【0025】
本発明においては、基材フィルム上にポリマー架橋粒子を含む層を形成することが好ましいが、基材フィルムを構成する高分子基材にポリマー架橋粒子を混合しておき、フィルムに成形した後、一方の面に粘着層を形成することによってもディスプレイ表面保護フィルムを製造することができる。
【0026】
(実施例)
(評価方法)
1)平均粒子径
大塚電子(株)社製,FPAR−1000を用いて、ポリマー架橋粒子の平均粒子径を測定した。
2)全光線透過率
日本電色工業(株)製ヘ−ズメ−タ−(NDH5000)を用いて、離型PETをはがした状態で、表面保護フィルムのヘーズ、全光線透過率を測定した。
【0027】
3)表面固有抵抗
ハイレジスタンスメーター(ヒューレット・パッカード社製造HP4339)並びに三菱化学製ロレスターEPを用い、離型PETをはがした状態で、表面保護フィルムの粘着面の表面抵抗値を、25℃、湿度50%で測定した。
4)フィルム表面の傷つき性
作製したフィルムの剥離PET面とポリマー架橋粒子層面を合わせた状態で重ね合わせ(いずれもA4サイズ)、その上に厚さ5mmのA4サイズの平面ガラス板を置き、さらに200gの荷重をかけた。フィルムの一方を固定、もう一方を100mm/分で引っ張るという操作を5回繰り返した。その後、剥離PETをはがし、ポリマー架橋粒子層面の傷つき状態を目視で観察し、以下の判断に基づき評価した。
○:点状傷(径0.2mm以上)、線状傷(長さ10mm以上)の両方が観察されない
×:点状傷(径0.2mm以上)、線状傷(長さ10mm以上)のどちらか2つ以上が観察される
(ポリマー架橋粒子エマルジョンの合成)
【0028】
参考例1
1Lのセパラブルフラスコに、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸Na1.3g、イオン交換水400gを仕込み、内温を80℃とした。過硫酸Na0.3gを添加後、ジビニルベンゼン〔純度80%、新日鐵化学(株)製〕30g、スチレン60g、アクリル酸1g、メチルメタクリレート9gの混合物を、撹拌下80℃で2時間にわたり連続的に添加した。その後、80℃で2時間攪拌し、重合を完結させ、ポリマー架橋粒子を製造した。
得られたポリマー粒子の平均粒子径は、0.10μmであった。
【0029】
参考例2〜6 比較例1〜3
表1に示すモノマ−、乳化剤を用いた以外は、参考例1と同様に行った。








【0030】
【表1】

*1 ジビニルベンゼンの純度=80%
*2 エチレングリコ−ルジアクリレ−トの純度=95%
【0031】
(バインダ−樹脂エマルジョンの合成)
容量1リットルの重合容器に、脱イオン水340g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.5g、過硫酸カリウム3.5gを仕込んで、窒素ガス置換を行ったのち、攪拌しつつ80℃に昇温した。
別に、容量1リットルのビーカーに、メチルメタクリレート185g、スチレン50g、ブチルアクリレ−ト130g、アクリロニトリル10g、アクリル酸4g、脱イオン水175g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル1.5gを仕込み、十分攪拌して、モノマーエマルジョンを調製した。
次いで、80℃に保持した重合容器に、攪拌下で、前記モノマーエマルジョンを4時間かけて連続的に滴下しつつ重合し、滴下終了後80℃でさら2時間攪拌して重合を完結させることにより、樹脂エマルジョンを得た。
この樹脂エマルジョンは、固形分が42重量%であり、樹脂のTgが55℃であった。バインダ−樹脂A称する。
【0032】
(粘着剤層形成用樹脂エマルジョンの合成)
容量1リットルの重合容器に、脱イオン水140g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.5g、過硫酸カリウム3.5gを仕込んで、窒素ガス置換を行ったのち、攪拌しつつ80℃に昇温した。
別に、容量1リットルのビーカーに、2−エチルヘキシルアクリレート315g、アクリロニトリル10g、アクリル酸4g、脱イオン水175g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3.5g、ポリオキシエチレンアルキルエーテル4.5gを仕込み、十分攪拌して、モノマーエマルジョンを調製した。
次いで、80℃に保持した重合容器に、攪拌下で、前記モノマーエマルジョンを4時間かけて連続的に滴下しつつ重合し、滴下終了後80℃でさら2時間攪拌して重合を完結させることにより、樹脂エマルジョンを得た。
この樹脂エマルジョンは、固形分が52重量%であり、樹脂のTgが−65℃であった。
【0033】
(塗工液の調製および塗工フィルムの作製)
得られたポリマー架橋粒子を0.1重量%、前記バインダ−樹脂を2.0重量%(いずれも固形分換算)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル5重量%、帯電防止剤としてポリスチレンスルホン酸Na0.2%を含む水分散液を調製した。
PETフィルム(東レ(株)製−38T60、膜厚38μm)にコロナ処理を施した後、各水分散液をバーコーターを用いて、乾燥後に表2に記載の膜厚になるように、片面に塗布した。塗布後、130℃で10分間乾燥して、片面にポリマー架橋粒子を含んだ層を有するPETフィルムを得た。この塗工フィルムの反対側に、前記粘着層形成用エマルジョン(固形分濃度35%に調整)を、乾燥後の膜厚が20μmになるように塗工した。塗工後、130℃で10分間乾燥した。乾燥後、粘着層面にシリコン離型フィルム(厚み25μm)を貼り合わせ、評価用フィルムとした。
【0034】
【表2】

【0035】
発明の効果
特定のポリマー架橋粒子を含む層を有する実施例1〜4では、全光線透過率が高く、ヘ−ズが低く、かつフィルムが擦れ合っても傷つきがないことから、ディスプレイに貼着したままの状態で、ディスプレイ表面欠陥の有無につき正確な検査が可能なものである。一方、比較例1や比較例3の粒子径が小さいものあるいは粒子を含まないものでは、傷がつきやすい。比較例2の粒子径が大きいものでは、全光線透過率が低く、ヘーズが高いことから、ディスプレイ表面欠陥の有無を正確に検査することが難しい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子支持体の一方の表面に粘着層を有し、もう一方の表面にポリマ−架橋粒子を含有する層を有する積層フィルムであることを特徴とするディスプレイ表面保護フィルム。
【請求項2】
ポリマー架橋粒子を構成する構成モノマーの15モル%以上が、架橋性モノマ−であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ表面保護フィルム。
【請求項3】
ポリマー架橋粒子を含有する層がバインダ−樹脂とポリマー架橋粒子を主成分とし、ポリマー架橋粒子の割合が0.1〜10重量%であることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ表面保護フィルム。
【請求項4】
ポリマー架橋粒子の平均粒子径が0.05μmから0.5μmであり、かつポリマー架橋粒子を含有する層の平均膜厚(T(μm)と、ポリマー架橋粒子の平均粒子径(D(μm))が、以下の条件を満たすことを特徴とする、ディスプレイ表面保護フィルム。
(D−0.2)≦T≦D+0.5
【請求項5】
少なくとも粘着層あるいはポリマー架橋粒子を有する層のどちらか一方の表面の表面固有抵抗値が、1×1012(Ω/□)以下である、請求項1に記載のディスプレイ表面保護フィルム。
【請求項6】
高分子支持体の一方の表面に粘着層を有する積層フィルムであって高分子支持体中に、ポリマー架橋粒子が分散してることを特徴とするディスプレイ表面保護フィルム。

【公開番号】特開2012−218401(P2012−218401A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89371(P2011−89371)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】