説明

表面保護フィルム

【課題】耐熱性、低温成形性およびロールからの繰出し性に優れた表面保護フィルムを提供すること。
【解決手段】下記(i)〜(iv)の要件を満たす4−メチル−1−ペンテン系共重合体を多層フィルムの表面層(A)の一部に含むことによって上記課題が解決される。
(i)4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位が80モル%〜99モル%であり、プロピレンから導かれる構成単位が1モル%〜20モル%である
(ii)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0(dl/g)である
(iii)DSCで測定した融点(Tm)が160℃〜240℃の範囲にある
(iv)密度が820〜850(kg/m)である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−メチル−1−メチルペンテン系共重合体を含む層を表面層に有する表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは、主として建材用や光学用途用の樹脂製品、金属製品、ガラス製品等の被着体に貼付して使用し、これらの輸送、保管や加工時の傷付きまたは異物混入を防ぐ役割を果たしている。これらの表面保護フィルムは、一般には粘着性の無い表面層と、前記被着体と粘着させるための粘着層とを含んでなる。表面層は通常、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体から形成される。例えば特許文献1には、ポリエチレン成分を主体とした表面保護フィルムが開示されている。しかしながら、同文献に記載の表面保護フィルムは、一部用途部材に対しては適用可能であるが、透明性も不充分で、被着体の用途には限りがあった。
【0003】
また、表面保護フィルムを建材用途や自動車部品用途に使用するに当たっては、該表面保護フィルムを貼付した状態で熱成形する場合があるため、該表面保護フィルムには高い耐熱性が要求されている。この要請から、例えば特許文献2、3には、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体または4−メチル−1−ペンテンと炭素原子数の大きいα−オレフィン、例えば炭素原子数10や14のα−オレフィンからなる共重合体を主体とした離型フィルムが開示されている。しかしながら、同文献に記載された材料はその融点が高く、フィルム成形時の押出機またはT−ダイの設定温度を高温(実施例では300℃)にして成形しなければならないことから、低温での成形性に困難であった。
【0004】
さらに、表面保護フィルムを、凹凸構造のある被着体など接着力が発現しにくい基材へ使用する場合には、表面保護フィルムと被着体との接着性を高める必要があり、粘着層へ粘着力が高い材料を使用することが行われている。しかしながら、このような構成の表面保護フィルムでは、ロール状の製品からフィルムを繰出すことが困難、すなわち、粘着層と該粘着層と接触する次の面の表面層との接着力が強くロールからフィルムを出す際に、剥がれにくくなってしまう(フィルム巻き戻り力が強い)。例えば、特許文献4には、ポリプロピレン成分を主体とし4−メチル−1−ペンテンと1−デセンとのオリゴマーを含む樹脂組成物を表面層に用いた表面保護フィルムにより、フィルム繰出しの問題の解決を検討している。しかしながら、同文献による表面保護フィルムは、このような構成においてもなお、ロールからのフィルムの繰出し性が悪いという問題が生じていた。また、このように繰出し性の悪いフィルムを使用する場合には、粘着層側にさらに離型フィルムを貼り合わせた状態でロール状とし、被着体への貼付の際にこの離型フィルムを剥がして使用することが行われるため、該離形フィルムが大量の廃棄物となって発生するという問題も存在していた。
【0005】
なお、例えば特許文献2、3に記載されているような、4−メチル−1−ペンテン共重合体は、共押出成形した際に他樹脂からなる層との接着性が悪い事が知られている。特許文献5には、このような4−メチル−1−ペンテン共重合体とポリエステル樹脂との積層フィルムにおいて層間の接着性を検討しているが、接着性は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−116769号公報
【特許文献2】特開2007−284501号公報
【特許文献3】特開2008−081709号公報
【特許文献4】特開2010−275340号公報
【特許文献5】特開2007−210175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上述した背景技術の種々の問題点に鑑み、耐熱性、低温成形性およびロールからの繰出し性(離型性)に優れ、かつ積層フィルムにした際の積層フィルム層内の剥離を抑えた表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の物性を有する4−メチル−1−ペンテン系共重合体を含む層を表面層に有する表面保護フィルムによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明にかかる表面保護フィルムは、
表面層(A)と粘着層(B)の少なくとも2層からなる多層フィルムであって、表面層(A)が下記(i)〜(iv)の要件を満たす4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)を含む層であることを特徴としている。
(i)4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位が99モル%〜80モル%であり、プロピレンから導かれる構成単位が1モル%〜20モル%である
(ii)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0(dl/g)である
(iii)DSCで測定した融点(Tm)が160℃〜240℃の範囲にある
(iv)密度が820〜850(kg/m)である
前記表面層(A)は、前記4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)5〜100重量%と、エチレンおよび炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合して得られるオレフィン系重合体(a−2)(前記4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)を除く)0〜95重量%((a−1)と(a−2)の合計が100重量%)を含む層であることが好ましい。
【0010】
さらに、前記多層フィルムは、表面層(A)と粘着層(B)の間に基材層(C)を有することが好ましい。
【0011】
また、前記多層フィルムは、表面層(A)と粘着層(B)および必要に応じて基材層(C)をT−ダイから押出成形して得られ、前記押出成形の温度が250℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面保護フィルムは、表面層(A)が4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)を必須の構成成分として含むことにより、耐熱性、ロールからの繰出し性(離型性)に優れ、従来市販されている4−メチル−1−ペンテン系共重合体では困難であった250℃以下での成形温度にて成形されるという、顕著な効果を奏する。
【0013】
さらに、本発明の表面保護フィルムが、基材層(C)を有する場合、表面層(A)中に含まれる4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)がプロピレンを必須の構成単位として含むことにより、基材層(C)を構成する重合体とのなじみがよく、積層フィルム内(特に(A)−(C)層間)の密着性に優れるという顕著な効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明にかかる表面保護フィルムおよび当該表面保護フィルムの製造方法について詳説する。
<表面保護フィルム>
本発明の表面保護フィルムは、表面層(A)と粘着層(B)の少なくとも2層からなる多層フィルム、必要に応じて表面層(A)と粘着層(B)の間に基材層(C)を有し、表面層(A)−基材層(C)−粘着層(B)の順番で並んだ少なくとも3層からなる多層フィルムから構成される。これらのうち、表面層(A)、粘着層(B)、基材層(C)を1層ずつ有する3層の積層フィルムであることがより好ましい。ここで、粘着層(B)を最内層とした場合、表面層(A)は最外層に位置し、フィルムをロール状にする際には表面層(A)と粘着層(B)とが接触する。
【0015】
以下、本発明に係る表面保護フィルムを構成する各層について説明する。
〔表面層(A)〕
表面層(A)は、後述する(i)〜(iv)の要件を満たす4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)を必須の構成成分として含み、さらに必要に応じてオレフィン系重合体(a−2)を含む層である。
【0016】
したがって、表面層(A)を構成する成分としては、後述する「その他成分」を除いた場合、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)単独、もしくは、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)とオレフィン系重合体(a−2)の混合物(アロイ)となる。
○4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)
前記表面層(A)の必須の構成成分である4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)は下記(i)〜(iv)の要件を満たすことを特徴とする。
(i)4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位が99モル%〜80モル%であり、プロピレンから導かれる構成単位が1モル%〜20モル%である。
(ii)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)が0.5〜5.0である。
(iii)DSCで測定した融点(Tm)が160℃〜240℃の範囲にある。
(iv)密度が820〜850(kg/m)である。
【0017】
以下に、(i)〜(iv)の各要件について説明する。
[要件(i)]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位を99モル%〜80モル%、プロピレンから導かれる構成単位を1モル%〜20モル%の割合で含む重合体である。
【0018】
ここで、4−メチル−1−ペンテン共重合体(a−1)は、4−メチル−1−ペンテンとプロピレンを含むランダム共重合体であっても、4−メチル−1−ペンテンとプロピレンを含むブロック共重合体であってもよいが、耐熱性、機械物性の観点から好ましくは4−メチル−1−ペンテンとプロピレンのランダム共重合体であることが好ましい。また、プロピレンを4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)の構成要素とすることで、積層フィルムにした際に基材層(C)や粘着層(B)で利用される各種重合体との密着性が良くなることが期待できる。
【0019】
4−メチル−1−ペンテンとプロピレンの構成単位の割合は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位として好ましくは99モル%〜83モル%であり、より好ましくは99モル%〜85モル%であり、さらに好ましくは99モル%〜90モル%である。一方、プロピレンから導かれる構成単位は、上記4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位に対応する形として、好ましくは1モル%〜17モル%であり、より好ましくは1モル%〜15モル%であり、さらに好ましくは1モル%〜10モル%である。
【0020】
4−メチル−1−ペンテンとプロピレンの構成単位の割合が上記範囲内にある場合には、得られる共重合体の融点を下記要件(iii)に示すとおり、4−メチル−1−ペンテンホモ重合体に比して下げることができる。そのため、当該共重合体を含む層からなるフィルムを製造する際、従来使用されている4−メチル−1−ペンテン系の重合体に比べて成型温度を下げることができる傾向にある。さらに構成単位の割合を上記範囲内とすることにより、当該共重合体の耐熱性を高いレベルで維持することが可能となる傾向にある。
[要件(ii)]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、0.5〜5.0(dL/g)である。
【0021】
ここで、極限粘度[η]は、好ましくは1.0〜4.0(dL/g)であり、さらに好ましくは1.2〜3.5(dL/g)である。
【0022】
上記、極限粘度[η]の値は、重合時の水素の添加量により調整することが可能である。
【0023】
極限粘度[η]の値が上記範囲にある4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)は、フィルム成形工程では良好な流動性を示し、機械物性、離型性に優れたフィルムが得られる傾向にある。
[要件(iii)]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)のDSCで測定した融点(Tm)は、160℃〜240℃である。
【0024】
ここで、融点(Tm)は、好ましくは160℃〜220℃であり、さらに好ましくは160℃〜200℃である。
【0025】
上記、融点(Tm)の値は、重合体を構成するモノマー種およびその構成割合や、重合体の立体規則性に依存して変化する値であり、所望の構成割合となるように原料モノマーのフィード量を変化させたり、所望の立体規則性重合体を与える重合用触媒を用いたりすることにより、調整することが可能である。
【0026】
融点(Tm)の値が上記範囲にある4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)は、耐熱性と低温成形性の観点から好ましい。
[要件(iv)]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)の密度は、820〜850(kg/m)である。
【0027】
ここで、密度は、好ましくは825〜850(kg/m)であり、さらに好ましくは825〜845(kg/m)である。
【0028】
上記、密度の値は、4−メチル−1−ペンテンと共に重合する他のモノマー種の種類や配合量を選択することにより、調整することが可能である。
【0029】
密度の値が上記範囲にある4−メチル−1−ペンテン系共重合体は、耐熱性の観点から好ましい。
○4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)の製造方法
上記の4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)は、従来公知の触媒、例えば、バナジウム系触媒、チタン系触媒、マグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3−193796号公報、特開平02−41303号公報中あるいは国際公開第2006/025540号パンフレット中に記載のメタロセン触媒などを用いて、4−メチル−1−ペンテンとプロピレンを共重合することにより製造することができる。
【0030】
本発明において、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)を、メタロセン触媒を用いて製造すると、分子量分布が狭く低分子量成分が少なくフィルム成形にて得られるべた付きがない点で好ましい。
【0031】
なお、本発明における4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)は、4−メチル−1−ペンテンとプロピレンを、1段で共重合することにより得ることができるが、別々の工程で製造した4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1−A)および4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1−B)を混合することにより得ることもできるし、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1−A)および4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1−B)を多段で連続して重合することにより得ることもできる。いずれの場合も、樹脂全体の物性が前記範囲になるように調製する。
○オレフィン系重合体(a−2)
前記表面層(A)の任意の構成成分であるオレフィン系重合体(a−2)は、エチレンおよび炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合して得られる(前記4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)を除く)ことを特徴とする。
【0032】
前記オレフィン系重合体(a−2)として、好ましくは、エチレンおよび炭素原子数3〜8のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合して得られる重合体である。当該オレフィン系重合体(a−2)として具体的には、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体など従来公知のオレフィン系重合体を挙げることができる。エチレン系重合体として、より具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを挙げることができる。プロピレン系重合体として、より具体的には、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレンを挙げることができる。ブテン系重合体として、ホモポリブテンを挙げることができる。
【0033】
これらの中で、耐熱性の観点からホモポリプロピレンやランダムポリプロピレンが好ましく利用され得る。
○4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)とオレフィン系重合体(a−2)の配合割合
前記表面層(A)は、前述のとおり、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)を必須の構成成分とし、さらに必要に応じてオレフィン系重合体(a−2)を含む層である。
【0034】
ここで、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)とオレフィン系重合体(a−2)の配合割合は、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)とオレフィン系重合体(a−2)の合計を100重量%とした場合、(a−1)が5〜100重量%、(a−2)が0〜95重量%である。
【0035】
当該配合割合は、機械物性、フィルム間密着性、フィルム巻き戻し性の物性上の観点から、および低温での押出成形性の成形上の観点から定められる範囲であり、好ましくは、(a−1)が5〜100重量%および(a−2)が0重量%〜95重量%、より好ましくは(a−1)が5〜50重量%および(a−2)が50重量%〜95重量%、更に好ましくは(a−1)が10〜50重量%および(a−2)が50重量%〜90重量%((a−1)および(a−2)の合計を100重量%とした場合とする。)である。
○その他成分
前記表面層(A)は、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)および必要に応じてオレフィン系重合体(a−2)を含むほかに、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、核剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤などを配合することができる。
【0036】
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、イオウ系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物、あるいはこれらを数種類組み合わせたものが使用できる。
【0037】
滑剤としては、例えばラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。またかかる滑剤の配合量は、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)とオレフィン系重合体(a−2)の合計100重量部に対して通常0.1〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部程度であることが望ましい。
【0038】
核剤としては、例えばジベンジリデンソルビトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤、フッ素化ポリエチレン、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ピメリン酸やその塩、2,6−ナフタレン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド等が挙げられ、配合量は特に制限はないが、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)とオレフィン系重合体(a−2)の合計100重量部に対して0.1〜1重量部程度があることが好ましい。
【0039】
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれらの飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることが好ましい。これらのうちでは、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアロアマイドが特に好ましい。これらの脂肪酸アミドは4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)とオレフィン系重合体(a−2)の合計100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲で配合することが好ましい。
【0040】
アンチブロッキング剤としては、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状、もしくは液状のシリコン樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、微粉末架橋樹脂、例えば架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末等をあげることができる。これらのうちでは、微粉末シリカおよび架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末が好ましい。これらのアンチブロッキング剤は4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)とオレフィン系重合体(a−2)の合計100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲で配合することが好ましい。
【0041】
さらに、本発明においては、表面層(A)に柔軟性を付与させるために、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)および必要に応じてオレフィン系重合体(a−2)を含むほかに、さらにオレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーを一部に含んでいても良い。
【0042】
オレフィン系エラストマーとしては、炭素数2〜20のα−オレフィン重合体または共重合体、ないしはエチレンと不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体である。オレフィン系エラストマーの融点は110℃以下、好ましくは融点が100℃以下、さらに好ましくは融点が80℃以下または融点が観測されない。オレフィン系エラストマーとして具体的には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、1−ブテン・エチレン共重合体、1−ブテン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等を挙げることができる。
【0043】
スチレン系エラストマーとしては、ポリスチレン相をハードセグメントとして有する公知のスチレン系エラストマーが使用できる。具体的には、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SEBS)、およびこれらの水素化物、スチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)を挙げることができる。
【0044】
上記、オレフィン系エラストマーまたはスチレン系エラストマーは、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)とオレフィン系重合体(a−2)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲で配合することが好ましい。
○混合
前記表面層(A)が上記4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)のほかに、オレフィン系重合体(a−2)やその他成分を含む場合、それらを配合するには、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)と、オレフィン系重合体(a−2)やその他成分とをヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダーなどを用いて混合したブレンド物を用いる他、上記で混合したブレンド物を単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混合することによって、上記各成分が均一に分散混合された樹脂組成物を得ることができる。
〔粘着層(B)〕
本発明の表面保護フィルムの粘着層(B)としては、表面保護フィルムの粘着層として使用されている公知の粘着剤を使用することが可能であるが、フィッシュアイの発生による被着体損傷や、粘着剤の被着体への移行(いわゆる糊残り)を抑制する観点から、オレフィン系エラストマーおよび/またはスチレン系エラストマーであることが好ましい。
【0045】
当該オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーとしては、上述した表面層(A)のその他成分において記載したものと同様のオレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーから選ばれるものが用いられ得る。
【0046】
上記オレフィン系エラストマーおよび/またはスチレン系エラストマーを、単独または各々異なる組成の成分をブレンド使用することで、本発明の表面保護フィルムにおける粘着層(B)を形成することができる。また、本発明においては、粘着力の制御を目的として、さらには本発明の特性を損なわない範囲で、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂改質剤や、帯電防止剤、結晶核剤、酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
〔基材層(C)〕
本発明にかかる表面保護フィルムにおいては、表面層(A)と粘着層(B)との間にさらに少なくとも1層の基材層(C)を設けることが可能である。
【0047】
当該基材層(C)としては、表面保護フィルムの機械強度向上や透明性制御を目的とする場合や、表面層(A)と粘着層(B)の接着力が不足する場合などに配置されることがある。
【0048】
当該基材層(C)を、表面保護フィルムの機械強度向上や透明性制御を目的として配置する場合には、一般に、融点が100℃以上のポリプロピレンやポリエチレン、ポリブテンなどの結晶性ポリオレフィンや、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン系エラストマーなどが使用できる。
【0049】
また、当該基材層(C)を表面層(A)と粘着層(B)の接着層として使用する場合には、変性ポリオレフィンや、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステルエラストマーなどが用いられる。
【0050】
本発明において、表面層(A)に含まれる4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)はプロピレンを構成要素として含むことから、これらの基材層(C)を構成し得る材料の中で、当該4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1中のプロピレン重合部分との親和性の観点から、オレフィン系重合体であることが好ましく、より詳細には、エチレンおよび炭素原子数3〜20の直鎖状または分岐状のオレフィン(共)重合体であることが好ましく、さらには、表面保護フィルムの生産性および透明性の点から、ポリプロピレンやオレフィン系エラストマーを使用することが特に好ましい。
〔表面保護フィルムの厚み〕
本発明の表面保護フィルムにおける表面層(A)の厚みは0.05〜200μm、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜30μm、さらに好ましくは1〜15μmである。一方、粘着層(B)の厚みは0.05〜50μm、好ましくは0.3〜40μm、より好ましくは0.5〜30μmである。
【0051】
表面保護フィルムの厚みは、必要により設けることもある基材層(C)を含めて、0.1〜500μm、好ましくは0.5〜400μm、より好ましくは3〜300μmである。
<表面保護フィルムの製造方法>
表面層(A)と粘着層(B)、必要に応じて基材層(C)を積層する方法については特に制限は無いが、あらかじめT−ダイ成形またはインフレーション成形にて得られた表面層フィルム上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により積層する方法や、基材層および粘着層を独立してフィルムとした後、各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、表面層、基材層、粘着層の各成分を多層の押出機に供して成形する共押出成形が好ましい。
【0052】
上記好ましい形態の表面層(A)、粘着層(B)および必要に応じて基材層(C)を使用することで、離型性に優れたポリオレフィン系多層フィルムが特には表面保護フィルム、離型フィルムに対して好適に利用できる。
<表面保護フィルムの用途>
本発明の表面保護フィルムは、保護の対象物である被着体に、貼り付けて用いることができる。被着体の貼り付け面の物性、例えば表面の凹凸(表面粗さ)などに応じて、粘着層(B)の成分を調整する。一般的に、被着体の貼り付け面の表面粗さが粗い場合には、粘着層(B)を強粘着タイプの材質とする。本発明の表面保護フィルムは、ロール状に巻き取られて保存されることがあるが、表面層(A)の剥離性が高いので、粘着層(B)の粘着力が強くても、ロール状に巻き取られたフィルム同士がブロッキングしにくい。
【0053】
また、本発明の表面保護フィルムは、透明性を高くすることもできる。透明性が高ければ、光学フィルムとして好ましく用いられ得る。透明性を高めるには、例えば表面層(A)を構成する4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)中の4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位の含有率を高めればよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において各物性は以下のように測定した。
〔モノマー組成〕
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)中の4−メチル−1−ペンテンおよびプロピレン含量の定量化は、13C−NMRにより測定した。
【0055】
日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。
〔極限粘度[η]〕
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)をデカリンに溶解させて、温度135℃のデカリン中で常法に従い測定した。
〔融点(Tm)〕
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)および実施例・比較例で作製した積層フィルムの融点(Tm)は、セイコーインスツルメンツ社製DSC測定装置(DSC220C)を用い、測定用アルミパンに約5mgの試料をつめて、100℃/minで290℃まで昇温し、290℃で5分間保持した後、10℃/minで0℃まで降温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点から融点(Tm)を算出した。このとき、4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)は得られたポリマーを、積層フィルムは成形したフィルムを測定用アルミパンに詰めて測定を実施した。
〔分子量(Mw、Mn)、分子量分布(Mw/Mn)〕
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)の分子量は、液体クロマトグラフ(Waters製ALC/GPC 150−C plus型、示唆屈折計検出器一体型)を用い,カラムとして東ソー株式会社製GMH6−HT×2本およびGMH6−HTL×2本を直列接続した。移動相媒体はo−ジクロロベンゼンを用い、流速1.0ml/分、140℃で測定を行った。得られたクロマトグラムを公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを使用した検量線を用いて解析することで、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
〔各種測定用プレスシートの作製〕
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)および、実施例・比較例で作製した評価用ペレットを、神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、温度200℃、圧力10MPaで、プレスシート成形した。
【0056】
0.5〜3mm厚のシート(スペーサー形状;240×240×2mm厚の板に80×80×0.5〜3mm、4個取り)の場合、余熱を5〜7分程度とし、10MPaで1〜2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板として、5mm厚の真鍮板を用いた。得られたサンプルを用いて、各種物性評価を行った。
〔ヤング率(引張弾性率)(YM)、引張破断伸び(EL)、引張破断点応力(TS)〕
引張特性であるヤング率(YM)、引張破断点伸(EL)および引張破断点応力(TS)の評価は、上記プレスシートの作製法で得られた厚さ1mmプレスシートから打ち抜いたJIS K7113の2号型試験片1/2を評価用試料とし、インストロン社製引張試験機Instron1123を用いて23℃の雰囲気下で引張速度30mm/minで実施した。
〔内部ヘイズ(%)〕
上記プレスシートの作製法で得られた厚さ1mmプレスシートを試験片として用いて、ベンジルアルコール中で日本電色工業(株)製のデジタル濁度計(NDH−20D)にて測定した。
〔密度〕
密度測定は、上記プレスシートの作製法で得られた1mm厚プレスシートを30mm角に切り取り、JIS K6268に準拠して、電子比重計を用いて水中置換方法で測定した。
〔MFR〕
MFRは、JIS K−6721に準拠して、260℃で5kgの荷重、または230℃、および190℃、2.16kgの荷重にて測定した。
〔フィルムサンプルの成形〕
30mmφ単軸押出機を兼ね備えた、ダイ幅300mmの3種3層T−ダイ成形機を用い、表面層(A)、基材層(C)、粘着層(B)にそれぞれ連結する樹脂供給ホッパーより樹脂ペレットを投入し、単軸押出機内のシリンダーを通して樹脂ペレットを融解させた後にT−ダイより押出成形を行い、表面層(A)厚みを10μm、粘着層(B)厚み10μm、基材層(C)厚み30μm、トータル厚み50μmの多層フィルムを得た。この際、押出機およびT−ダイの設定温度を230℃として、押出成形性を確認した。
【0057】
押出成形性は以下の観点で評価した。
【0058】
○:フィルム成形が出来た場合
×:該当温度ではフィルム成形が出来なかった場合
〔フィルム巻き戻り力〕
上記フィルムサンプルの成形によって得られたロール状サンプルを23℃で1時間保持させた後、300mm/分の速度でロールから引き剥がす時の、粘着層(B)と該粘着層(B)と接触する表面層(A)との間の剥離力をフィルム巻き戻り力(N/50mm)とした。
〔積層フィルム層内密着性確認〕
上記フィルムサンプルを用い、粘着層側(B)と表面層(A)側のそれぞれを高粘着性のシートでつかみ、インストロン社製引張試験機Instron1123を用いて23℃の雰囲気下で引張速度300mm/minで180°方向に引っ張り、フィルムサンプルを構成する層間を引き剥がした際の密着状態を確認した。
【0059】
剥離状態は以下の観点で評価した。
【0060】
材料破壊:剥離に伴い積層フィルムが破壊された(層間で十分密着している)
一部材料破壊:部分的にフィルムが破壊された(一部層間で密着している)
界面剥離:積層フィルムの層間にて剥離が発生(層間で密着していない)
〔積層フィルム層内剥離力〕
フィルム内剥離力は、上記フィルムサンプルの成形に記載の方法に基づき、表面層(A)および基材層(C)をそれぞれ別個に、30mmφ単軸押出機を兼ね備えたダイ幅300mmの3種3層T−ダイ成形機を用いて成形した。得られた表面層(A)のフィルムと基材層(C)のフィルムを、ヒートシーラーを用いて幅5mmの部分をシール圧力0.2MPa、ヒートシール温度180℃で5秒間シールした。
【0061】
シールしたサンプルを、インストロン社製引張試験機Instron1123を用いて23℃の雰囲気下で引張速度300mm/minで剥離強度(N/15mm)を求めた。
[重合例1]
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌を開始した。
【0062】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.20MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.005mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
【0063】
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を130℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた共重合体の重量は55.9gで、共重合体中の4−メチル−1−ペンテン含量は、90.1mol%、プロピレン含量は、9.9mol%であった。共重合体のTmは160℃であり、極限粘度[η]は1.36dl/g、密度は835kg/mであった。
【0064】
該共重合体100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量部、耐熱安定剤としてのn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒して評価用ペレットを得た。
【0065】
当該評価用ペレットを用いて各種測定用プレスシートを作成したのち、各種評価を行った結果を表1に示す。
[重合例2]
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌を開始した。
【0066】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.18MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.005mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
【0067】
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を130℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた共重合体の重量は45.9gで、共重合体中の4−メチル−1−ペンテン含量は、91.3mol%、プロピレン含量は、8.7mol%であった。共重合体のTmは170.0℃であり、極限粘度[η]は1.33dl/g、密度は834kg/mであった。
【0068】
該共重合体100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量部、耐熱安定剤としてのn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒して評価用ペレットを得た。
【0069】
当該評価用ペレットを用いて各種測定用プレスシートを作成したのち、各種評価を行った結果を表1に示す。
[重合例3]
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌を開始した。
【0070】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.17MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.005mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
【0071】
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を130℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた共重合体の重量は35.2gで、共重合体中の4−メチル−1−ペンテン含量は、93.0mol%、プロピレン含量は、7.0mol%であった。重合体のTmは180.2℃であり、極限粘度[η]は1.66dl/g、密度は832kg/mであった。
【0072】
該共重合体100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量部、耐熱安定剤としてのn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒して評価用ペレットを得た。
【0073】
当該評価用ペレットを用いて各種測定用プレスシートを作成したのち、各種評価を行った結果を表1に示す。
[重合例4]
国際公開2006/054613号パンフレットの比較例7や比較例9の方法に準じ、4−メチル1−ペンテン、水素の割合を変更することによって、表1に示す物性を有する4−メチル−1−ペンテン重合体を得た。
該共重合体100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量部、耐熱安定剤としてのn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒して評価用ペレットを得た。
【0074】
当該評価用ペレットを用いて各種測定用プレスシートを作成したのち、各種評価を行った結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
[実施例1]
表面層(A)に上記重合例3で得られた4−メチル−1−ペンテン系共重合体を用い、
基材層(C)としてランダムポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 品番:F327、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分、融点145℃)90重量部とエチレン・ブテン共重合体(三井化学株式会社製 品番:A−4085S、MFR(190℃、2.16kg荷重)=3.6g/10分、融点60℃)10重量部とを(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒した樹脂組成物を用い、
粘着層(B)として、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体(エチレン含量13モル%、ブテン含量19モル%、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7.0g/10分)80重量部と、ホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 品番:F107、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分、融点160℃)20重量部とを(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒した樹脂組成物を用い、表面層(A)−基材層(C)−粘着層(B)の層構成にて、3種3T−ダイ押出成形を行い、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムの評価結果を表2に示す。
[実施例2]
表面層(A)に上記重合例1で得られた4−メチル−1−ペンテン系共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
[実施例3]
表面層(A)に上記重合例2で得られた4−メチル−1−ペンテン系共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
[実施例4]
表面層(A)として、上記重合例3で得られた4−メチル−1−ペンテン系共重合体10重量部とホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 品番:F107、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分、融点160℃)90重量部とを(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
[実施例5]
表面層(A)として、上記重合例3で得られた4−メチル−1−ペンテン系共重合体50重量部とホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 品番:F107、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分、融点160℃)50重量部とを(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
[実施例6]
表面層(A)として、上記重合例3で得られた4−メチル−1−ペンテン系共重合体30重量部とホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 品番:F107、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分、融点160℃)70重量部とを(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
[比較例1]
表面層(A)として、ホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 品番:F107、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分)を用いた以外は、実施例1と同様にして多層フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
[比較例2]
表面層(A)として、市販のポリ4−メチル−1−ペンテン共重合体(三井化学株式会社製 品番:MX002、MFR(260℃、5kg荷重)=20g/10分、融点224℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて多層フィルム製造を行ったが、230℃でT−ダイ押出成形が出来ず、フィルムが得られなかった。
[比較例3]
特開2008−81709号公報の実施例1に記載の方法に準じて、表面層(A)として、重合例4で得られた4−メチル−1−ペンテン系共重合体30重量部とホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 品番:F107、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分)70重量部とを(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒した樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法にて多層フィルム製造を行ったが、230℃でT−ダイ押出成形が出来ず、フィルムが得られなかった。
【0077】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る表面保護フィルムは、耐熱性、機械物性、離型性に優れ、また従来知られ市販されている4−メチル−1−ペンテン共重合体ではなし得ることの出来なかった低温成形により得ることが可能である。
【0079】
さらに当該表面保護フィルムの表面層(A)に含まれる4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)の作用により、当該表面保護フィルムは耐熱性、巻き戻し性に優れ、さらに市販されている4‐メチル−1−ペンテン共重合体ではなしえなかった耐フィルム間剥離性に優れるため光学用途、建材用途、自動車部品用途などの離型フィルム等、特にFPC製造時の表面保護フィルムとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層(A)と粘着層(B)の少なくとも2層からなる多層フィルムであって、表面層(A)が下記(i)〜(iv)の要件を満たす4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)を含む層である表面保護フィルム。
(i)4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位が99モル%〜80モル%であり、プロピレンから導かれる構成単位が1モル%〜20モル%である
(ii)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0(dl/g)である
(iii)DSCで測定した融点(Tm)が160℃〜240℃の範囲にある
(iv)密度が820〜850(kg/m)である
【請求項2】
前記表面層(A)が、前記4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)5〜100重量%と、エチレンおよび炭素原子数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合して得られるオレフィン系重合体(a−2)(前記4−メチル−1−ペンテン系共重合体(a−1)を除く)0〜95重量%((a−1)と(a−2)の合計が100重量%)を含む層である請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
前記多層フィルムが、表面層(A)と粘着層(B)の間に基材層(C)を有する、請求項1または2に記載の表面保護フィルム。
【請求項4】
表面層(A)と粘着層(B)および必要に応じて基材層(C)をT−ダイから押出成形して得られ、前記押出成形の温度が250℃以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2013−32005(P2013−32005A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150113(P2012−150113)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】