説明

表面保護フィルム

【課題】フィルム成形後の巻き取り時にエアーの巻き込みが殆ど見られないので、歩留まりの飛躍的な向上が期待でき、しかも被着体への貼り付け作業が容易な、優れた成形性、帯電防止性および粘着性を兼ね備えた表面保護フィルムを提供する。
【解決手段】(A)基材層と(B)粘着層とからなる表面保護フィルムであって、(i)低密度ポリエチレンと(ii)高密度ポリエチレンとを重量比で17:3〜3:17の配合割合で含み、かつ(i)と(ii)のMFRの差が0.3以上であり、(B)粘着層は、直鎖状低密度ポリエチレンからなることを特徴とする。このとき、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体が、(A),(B)いずれの層にも10〜30重量%配合されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性と帯電防止性に優れた表面保護フィルムに関し、特に、成形(製膜)後のフィルム巻き取り時にエアーの巻き込みが殆ど見られず、歩留まりの高い表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは、金属板、樹脂板、塗装板、化粧鋼板、ガラス、液晶パネルなどの運搬や加工工程において、これら被着体表面の汚れや傷を防止するために用いられ、使用後は当該被着体から剥がすことを前提としたものである。
このような表面保護フィルムとしては、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂からなる基材層と、アクリル系接着剤あるいは合成ゴム系接着剤(スチレン系ブロックポリマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)からなる粘着層とから構成されたものが多く流通している(特許文献1〜3参照)。
【0003】
しかし、粘着層がスチレン系ブロックポリマーからなる場合は、屋外での使用の場合、紫外線劣化によりフィルム自体が黄変しやすい問題があり、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる場合には、ハンドリング時の酢酸臭が嫌われる等の問題があった。
加えて、基材層と粘着層とが異素材で構成されていると、被着体に貼り付ける際に、基材層を内側もしくは粘着層を内側にしてカールが発生しやすい傾向がある。
【0004】
一方、粘着層として、密度が0.925g/cm3以下の直鎖状低密度ポリエチレンを用いた光学製品用ポリエチレン表面保護フィルムが提案されている(特許文献4参照)。
しかし、特許文献4に記載の表面保護フィルムは、被着体の種類によっては、貼り付け後にフィルムの浮きなどが見られ、粘着力において満足できるものではなかった。とはいうものの、粘着力が強すぎると、製膜後、ロール状に巻き取る際に離型紙が必要になったり、被着体から剥がす際に保護フィルムの糊残り等の汚染が生じるおそれがあるため、単純に粘着力を強くすればよいというものではない。
【0005】
他方、近年では、被着体への埃の付着や、被着体から剥がす際の帯電発生などを防ぐために、それら表面保護フィルムに帯電防止性能が要求されてきている。
【0006】
また、一般的なフィルムは、製膜後、打粉あるいは表面エンボス加工などでフィルム間に巻き込んだエアーを逃しながらロール状に巻き取られて保管・出荷される。
ところが、上記したような表面保護フィルムは、粘着層を有するがゆえ、打粉処理は行えず、透明性を必要とする場合にはエンボス加工も行えないために、フィルム間にエアーを巻き込んだ状態になりやすい。エアーの抜けが十分になされないと、主にフィルムロールの幅方向における両端部付近に、巻き込まれたエアーがドットあるいは斑点状に残ってしまい、エアーを巻き込んだまま巻かれてしまった部分は、シワになりやすく、性能上や外観上の問題から、両端部付近を不良箇所として取り除くために、歩留まり低下の一因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−239420号公報
【特許文献2】特開2004−143327号公報
【特許文献3】特開2010−111721号公報
【特許文献4】特開2006−116769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような現状を考慮し、フィルム成形後の巻き取り時にエアーの巻き込みが殆ど見られず、歩留まりの飛躍的な向上が期待でき、しかも被着体への貼り付け作業が容易な、優れた成形性、帯電防止性および粘着性を兼ね備えた表面保護フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するために、
まず、粘着層として、現在流通しているものの中でも密度がかなり低いとされる直鎖状低密度ポリエチレンを用いることで、表面保護フィルム用途として最適な粘着力が得られることに着目し、
次いで、このような粘着層とのバランスがよく、現行のタッチロールの使用のみで十分にエアーが抜ける基材層の配合について、さらなる検討を重ねた結果、
基材層として、低密度ポリエチレン(以下、「LDPE」とも言う)と高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」とも言う)とを特定の割合で配合し、かつ両ポリエチレンのメルトフローレート(MFR)の差を特定化することで、フィルムの表面上に両ポリエチレンの適宜な凹凸構造が形成され、フィルム巻き取り時にエアーが抜けやすく、エアー巻き込みが殆ど見られない、成形性に優れた表面保護フィルムが得られることを見出した。
【0010】
本発明は、このような知見の下でなし得たものであり、以下を要旨とする。
(1)(A)基材層と(B)粘着層とからなる表面保護フィルムであって、(A)基材層は、(i)低密度ポリエチレンと(ii)高密度ポリエチレンとを重量比で17:3〜3:17の配合割合で含み、かつ(i)と(ii)のMFRの差が0.3以上であり、(B)粘着層は、直鎖状低密度ポリエチレンからなることを特徴とする表面保護フィルム。
(2)ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体が、(A),(B)いずれの層にも10〜30重量%配合されることを特徴とする前記(1)に記載の表面保護フィルム。
(3)(i)低密度ポリエチレンと(ii)高密度ポリエチレンのMFRは、それぞれ5.0以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面保護フィルム。
【0011】
なお、本明細書におけるMFR(g/10分)とは、JIS K 6922−2に基づき190℃×2.16kg荷重で測定したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表面保護フィルムは、フィルム間にエアー巻き込みの防止のための打ち粉処理等を用いることなく、現行のタッチロールの使用のみで十分にエアーが抜けるので、巻き取り時に、フィルムロールの両端部付近にもエアーの巻き込みが殆ど見られず、優れた成形性を有するものである。エアーの巻き込み発生が殆ど無いためにフィルムロールの両端部を除去する必要もなく、フィルムのシワ等の発生も少ないので歩留まりの優れた表面保護フィルムである。
また、被着体への貼り付け作業が容易であり、かつ貼り付け後に端部から剥がれたり浮きが生じたりすることもなく、必要に応じて、優れた帯電防止性をも兼ね備えているので、産業上の利用価値は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の表面保護フィルムは、(A)基材層と(B)粘着層とからなる。
【0014】
A)基材層
本発明の基材層は、(i)LDPEと(ii)HDPEとから構成され、(i)と(ii)との配合割合が重量比で17:3〜3:17、(i)と(ii)のMFRの差が0.3以上である。
(i)LDPEと(ii)HDPEのMFRの差を0.3以上とすることで、製膜後のフィルムの基材層側の表面に、(i),(ii)両者の凹凸構造が適宜に形成されるので、フィルムを巻き取っていく際にタッチロールを使用するだけで、フィルムロール両端部付近からもエアーが良好に抜けていき、巻き取り時のエアー巻き込みを低減することができる。一方、上記MFRの差が0.3未満であると、(i),(ii)両者が均一に混ざりすぎ、相溶状態、すなわち、基材層の表面における凹凸構造が不十分な状態となるため、タッチロールを使用するだけでは、エアーが抜けにくくなり、フィルムロール両端部付近にフィルム間のエアー巻き込みが発生してしまい好ましくない。
前記MFRの差の上限値については、特に制限されないが、成形性などを考慮すると、5.0程度とすることができる。
【0015】
なお、(i)LDPEのMFRも、(ii)HDPEのMFRも、5.0以下であることが好ましい。
(i)のMFRおよび/または(ii)のMFRが、5.0を超えると、成形不良になりやすく、特にインフレーション成形において均一な製膜性を得ることが難しい。
各MFRの下限値についても、特に制限はされないが、成形性などを考慮すると、実質上0.1以上程度とすればよい。
【0016】
(i)LDPEとしては、JIS K6922−2の方法に従って測定した密度が、0.910〜0.930g/cm3の範囲内のものが好ましい。密度が0.910g/cm3未満であると、得られる表面保護フィルムの引張弾性率が低くなりすぎ、被着体の表面に引き伸ばされた状態で貼り付けられたフィルムにあっては、貼り付け後一定期間が経過したときにフィルムの収縮が起こり被着体から自然剥離してしまうことがある。0.930g/cm3を超えると、HDPEとの密度差が小さくなりすぎ、HDPEと組み合わせてLDPEを配合する技術上の意義が発現しにくい。
このような(i)LDPEとしては、市販されているものを用いることができ、例えば、東ソー(株)社製のペトロセン180R、ペトロセン170R、ペトロセン173R、ペトロセン204、住友化学(株)社製のスミカセンF218−0、スミカセンF200、スミカセンG401、日本ポリエチレン(株)社製のノバテックLF640MA、ノバテックLF443、ノバテックLF280H、ノバテックLF448Kなどが挙げられるが、中でも、前記したように、MFRが5.0以下のものが好適である。
【0017】
(ii)HDPEとしては、JIS K6922−2の方法に従って測定した密度が、0.942〜0.970g/cm3の範囲内のものが好ましく、0.950〜0.960g/cm3の範囲内のものがより好ましい。密度が0.942g/cm3未満であると、LDPEとの密度差が小さくなりすぎ、LDPEと組み合わせてHDPEを配合する技術上の意義が発現しにくい。0.970g/cm3を超えると、フィルムの成形性が著しく低下し、成形が困難となる。
このような(ii)HDPEとしては、市販されているものを用いることができ、例えば、東ソー(株)製のニポロンハード5700、ニポロンハード4000、ニポロンハード6100A、日本ポリエチレン(株)社製のノバテックHJ580、ノバテックHF580、ノバテックHJ362N、ノバテックHY540、(株)プライムポリマー社製のハイゼックス3300F、ハイゼックス5000SF、ハイゼックス232J、ハイゼックス2100Jなどが挙げられ、中でも、前記したように、MFRが5.0以下のものが好適である。
【0018】
(i)LDPEと(ii)HDPEとの配合割合は、重量比で17:3〜3:17であることが好ましく、1:1程度が特に好ましい。
LDPEとHDPEとの配合割合が上記範囲内から外れてしまうと、すなわち、上記配合割合より、LDPEが多すぎても、HDPEが多すぎても、相溶状態となりやすく、製膜したフィルムの表面に、所望の凹凸構造が十分に形成されず、エアーが抜けにくくなる。
本発明では、前記したように(i)と(ii)のMFRの差を0.3以上とし、さらに、(i)と(ii)の配合割合を上記範囲内とすることで、フィルム成形後の巻き取り時におけるエアーの巻き込みをより一層確実に防止することができ、切り落とし廃棄分が少なくなって歩留まりが向上するばかりか、シワのない外観美麗な保護フィルムを得ることができる。
【0019】
本発明の表面保護フィルムに帯電防止効果を持たせるために、基材層に帯電防止剤を配合してもよい。帯電防止剤としては、高分子系帯電防止剤が好ましく、基材層を構成する樹脂との相溶性等を考慮するとポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体が特に好ましい。
ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体は、半永久的に帯電防止性能を付与することができるものであり、従来一般的な界面活性タイプの帯電防止剤と異なり、経時でフィルム表面にブリードアウトすることがない。
ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体の具体例としては、三洋化成工業(株)製のペレスタット230、ペレスタット201、ペレスタット303、ペレスタット300、ペレスタットVH230、ペレスタット212などが挙げられる。
【0020】
上記ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体は、(i)LDPE、(ii)HDPEと共に基材層に配合されることで、基材層に好適な帯電防止性能を発現させることができ、このような性能を得るためには、基材層におけるポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体の配合量を、10〜30重量%程度とすることが好ましい。
10重量%未満だと、基材層に好適な帯電防止性能が十分に発現せず、30重量%を超えると、得られる帯電防止効果は飽和しコスト高である。
【0021】
基材層には、上記(i)LDPE、(ii)HDPE、帯電防止剤の他に、本発明から得られる効果を損なわない範囲内で、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、無機充填剤、顔料、滑剤、シランカップリング剤などを添加してもよい。また、透明性が要求されない場合など、必要に応じて、粘着層と接しない側にエンボス加工を施すこともできる。
【0022】
また、基材層は多層構造としてもよい。
例えば、基材層を2層とした場合、粘着層と接しない側の最表層を、前記したような「(i)LDPEと、(ii)HDPEとを重量比で17:3〜3:17の配合割合で含み、かつ(i)と(ii)のMFRの差が0.3以上であるもの」とすれば、粘着層に接する側の層については、熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、MFRが5.0以下のものが好適である。中でも、加工性が優れ、粘着層を構成する樹脂との接着性に優れる低密度ポリエチレンがより好ましい。
このように、基材層を多層化した場合、最表層以外の層について、その厚みや、その構成樹脂の種類や配合比などを適宜調製することで、最表層のみに帯電防止性能を発現する比較的高価な化合物(例えば、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体など)を配合し、他層へは配合することなく、全体としての添加量を低減したり、あるいは、別の機能性を付与したり、カールの発生を起こりにくいものとしたりすることができる。
【0023】
B)粘着層
本発明の粘着層は、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、「LLDPE」とも言う)からなる。
LLDPEは、C4系(コモノマーがブテン−1)、C6系(コモノマーがヘキセン−1)など、エチレンと共重合するα−オレフィンの種類によって、いくつかに分類されるが、本発明においては、保護フィルムの粘着層として、用途に応じて適宜選定される。
本発明に使用されるLLDPEとしては、JIS K6922−2の方法に従って測定した密度が0.800〜0.900g/cm3のものが好ましい。
密度0.900g/cm3以下のLLDPEからなる粘着層は、保護フィルム用途として最適な粘着性を有し、また、前述の(A)基材層とのバランスが良く、得られる表面保護フィルムにおいてカールの発生をより防ぐことができる。密度が0.900g/cm3を超えるLLDPEでは、被着体に貼り付けた後にフィルムの浮きなどが見られ、表面保護フィルム用途としては粘着力が不十分なものになりやすい。
【0024】
このようなLLDPEとしては、市販されているものを用いることができ、例えば、日本ポリエチレン(株)社製のカーネルKF360T、カーネルKS240T、カーネルKS340T、東ソー(株)社製のLUMITAC 08L54A、LUMITAC 08L55Aなどが挙げられる。
なお、LLDPEのMFRについては、(A)基材層を構成する(i)LDPEや(ii)HDPEのそれぞれのMFRと同程度とすることが好適であり、5.0以下とすることが好ましい。
【0025】
本発明の表面保護フィルムに帯電防止効果を持たせるために、粘着層に帯電防止剤を配合してもよい。帯電防止剤としては、高分子系帯電防止剤が好ましく、粘着層を構成する樹脂との相溶性等を考慮するとポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体が特に好ましい。
粘着層におけるポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体としては、前記基材層におけるポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体の具体例として挙げたものを用いればよい。基材層に配合したポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体と同じものでも、異なるものでも使用できる。
また、このポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体は、LLDPEと共に粘着層に配合されることで、粘着層に好適な帯電防止性能を発現させることができ、このような性能を得るためには、粘着層におけるポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体の配合量を、10〜30重量%程度とすることが好ましい。10重量%未満だと、帯電防止性能が十分に発現しない。30重量%を超えると、相対的にLLDPEの配合割合が減少し、これに伴って粘着機能が減殺され、本発明の保護フィルムの被着体への貼り付け性が悪化する。
なお、基材層と粘着層へのポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体の配合量は、同じでも、異なっていてもよい。
【0026】
粘着層には、上記LLDPEに、本発明から得られる効果を損なわない範囲内で、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、無機充填剤、顔料、滑剤、シランカップリング剤などを添加することができる。
本発明の表面保護フィルムを構成する、(A)基材層の樹脂組成物、(B)粘着層の樹脂組成物を得るためのブレンド方法は、特に限定されるものではなく、通常の混合操作、例えば、ドライブレンド法、ヘンシェルミキサー法、バンバリーミキサー法または押出造粒法などが挙げられる。
【0027】
本発明の表面保護フィルムでは、以上のような(A)基材層と(B)粘着層との層比が5:1〜1:1であることが好ましく、より好ましくは2:1である。
粘着層に対する基材層の厚みが、これより大きいと、本発明の保護フィルムの粘着層の機能が減殺され、被着体から剥がれることがある。粘着層に対する基材層の厚みが、これより小さいと、コスト高となる。
【0028】
本発明の(A)基材層と(B)粘着層とからなる表面保護フィルムの適正厚みは、用途によって適宜設定されるが、例えば0.03〜0.20mm程度とすればよい。
【0029】
本発明の表面保護フィルムは、(A)基材層を製膜した後、別工程で(A)基材層上に(B)粘着層を塗布乾燥して製造してもよいし、(A)基材層と(B)粘着層をそれぞれ別工程で成膜した後に、積層一体化してもよい。また、一般的な溶融共押出法で(A)基材層と(B)粘着層とを同時に製膜積層一体化してもよく、例えば、基材層と粘着層との十分な密着性を得ることや、コスト面などを考慮すると、共押出法、共押出し/インフレーション法、共押出し/T−ダイ押出し法等による製法が好適である。
【0030】
本発明の表面保護フィルムは、帯電防止性能を付与する場合、表面と裏面の表面抵抗値(JIS K 6911に準拠して測定)がいずれも1.0×107〜9.9×1011Ω/sqであることが好ましい。
表面抵抗値が9.9×1011Ω/sqを超えるものでは、被着体へ埃などが付着しやすく、また使用後に剥がす際の帯電発生を防ぐことが困難である。
【0031】
本発明の表面保護フィルムは、被着体との貼り合わせ性に優れ、剥離後も糊残りのないものであり、粘着力は用途に応じて適宜設定される。例えば、JIS Z−0237に準拠して測定される粘着力が、0.01〜0.30N/25mmに設定されることが好ましい。
【実施例】
【0032】
実施例1〜8、比較例1〜3
下記に示す(i)LDPE、(ii)HDPE、(iii)ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体を、表1に示す比率にて混合して基材層用の素材とした。また、下記に示す(iv)LLDPEと(iii)ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体とを、表1に示す比率にて混合して粘着層用の素材とした。
両素材をインフレーションフィルム成形機のそれぞれの押出機に送り共押出して、製膜幅が1100mm、基材層40μmと粘着層20μmとからなる、厚さ60μmの積層体、すなわち、実施例1〜8および比較例1〜3の表面保護フィルムを得た。
【0033】
なお、実施例4,5については、基材層を2層とした場合であり、粘着層に接する側の層(A)’を、表1に示す(i)LDPEで構成し、上記同様、インフレーションフィルム成形機を用いて、製膜幅1100mm、厚さ60μmの3種3層の積層体(基材層(A)10μm、基材層(A)’30μm、粘着層(B)20μm)とした。
【0034】
【表1】

【0035】
≪使用原料≫ 表1〜2中の配合比率に関する数値は、重量部で示す。また、MFR(g/10分)に関しては、前述した通り、JIS K 6922−2に基づき190℃×2.16kg荷重で測定したものである。

A)基材層
(i)LDPE
・(i)−1:MFR=2.0(東ソー(株)製 商品名“ペトロセン180R”)
・(i)−2:MFR=1.0(東ソー(株)製 商品名“ペトロセン170R”)
・(i)−3:MFR=7.0(東ソー(株)製 商品名“ペトロセン204”)
・(i)−4:MFR=5.0(日本ポリエチレン(株)製 商品名“ノバテックLF640MA”)

(ii)HDPE
・(ii)−1:MFR=1.0(東ソー(株)製 商品名“ニポロンハード5700”)
・(ii)−2:MFR=5.0(東ソー(株)製 商品名“ニポロンハード4000”)
・(ii)−3:MFR=0.66((株)プライムポリマー製 商品名“ハイゼックス5000SF”)
・(ii)−4:MFR=1.1((株)プライムポリマー製 商品名“ハイゼックス3300F”)
・(ii)−5:MFR=7.0(日本ポリエチレン(株)製 商品名“ノバテックHF560”)

(iii)ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(三洋化成工業(株)製 商品名“ペレスタット230”)
【0036】
B)粘着層
(iv)LLDPE
・(iv)−1:密度0.898g/cm3(日本ポリエチレン(株)製 商品名“カーネルKF360T”)
・(iv)−2:密度0.880g/cm3(日本ポリエチレン(株)製 商品名“カーネルKS240T”)
・(iv)−3:密度0.901g/cm3(日本ポリエチレン(株)製 商品名“カーネルKF260T”)

(iii)ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体(三洋化成工業(株)製 商品名“ペレスタット230”)
【0037】
≪評価方法≫
・「エアー巻き込み」
得られた各表面保護フィルムを、ロール状物に巻き取ったあと、フィルム幅方向における両耳部(左右両端)のエアー巻き込み具合について、フィルム端部からのエアー巻き込みが観察される幅(以下、端幅と記すこともある)を数値化した。なお、下記の数値は、左右両端幅の合計値である。
◎:0mm以上10mm未満においてエアーの巻き込みが殆ど見られない状態
○:10mm以上100mm未満においてエアーの巻き込みがやや確認される状態
×:100mm以上にわたってエアーの巻き込みが散見される状態
【0038】
・「<初期>表面抵抗値(Ω/sq)」
得られた各表面保護フィルムをロール状に巻き取った状態で1週間養生させた後、10cm×10cmにカットしたサンプルについて、三菱化学(株)製のHirester−UP「MCP−HT540」を用いて、24℃×56%RHの雰囲気下で、基材層及び粘着層のそれぞれの表面抵抗値(Ω/sq)を求めた。
【0039】
・「被着体貼り付け性」
上記状態で1週間養生させた後のフィルムを、幅25mm×長さ200mmにカットしてサンプルとし、23℃、50%RHの条件下において、厚さ3mm×幅30mm×長さ200mmのポリカーボネート板へ、手動式圧着ロール(※)にて貼り付けを行った。
貼り付け後のフィルムの様子を目視にて観察し、ポリカーボネート板への貼り付けが問題なくスムーズに行われ、フィルムの浮き等が無く良好なものを「○」、貼り付け性が困難もしくはフィルムに浮きが確認されたものを「×」とした。
(※)圧着ローラーとしては、その表面がJIS K6301(加硫ゴム物理試験方法)に規定するスプリング硬さが80±5Hsのゴム層を、約6mmの厚さで被覆した、幅約45mm、直径約83mm、質量2000±50gを用いた。
【0040】
結果は、表1に示すとおりであった。
なお、実施例7,8については、基材層に使用する低密度ポリエチレンまたは高密度ポリエチレンのいずれか一方のMFRが5.0を超えているために、エアー巻き込み、表面抵抗値、被着体への貼り付け性において、評価的には満足する結果は得られたが、インフレーション成形時に成形性が悪く、インフレーション成形機を用いる生産にはあまり適さないものであった。
比較例1,2においては、低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとのMFRの差が0.1、0であったためにフィルムロールの両端にエアー巻き込みが多数発生してしまった。また、比較例3においては、エアー巻き込みの点で問題無かったが、粘着層の直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.900g/cm3を超えているために粘着力が不十分なものであった。
【0041】
実施例9〜17、比較例4〜6
表2に示す配合にした以外は、前記実施例1〜8および比較例1〜3と同様に作成することで、製膜幅が1100mm、厚さが60μmの実施例9〜17および比較例4〜6の表面保護フィルムを得、同様の評価を行った。
なお、実施例12,13および比較例5については、実施例4,5と同様に、基材層を2層とした。
【0042】
【表2】

【0043】
評価結果は、表2に示すとおりであった。
なお、比較例4,5に関しては基材層の低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの配合割合が17:3〜3:17の範囲から外れているために、フィルムロールの両端にエアー巻き込みが多数発生してしまった。
実施例17は、エアーの巻き込みや粘着性に問題無いものであったが、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体の添加量が少ないために、表面保護フィルムとしては問題無いものであったが、帯電防止性能は不十分であった。比較例6は、ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体の添加量が多すぎるために、粘着性が不十分であった。
【0044】
比較例8
粘着層において、前記(iv)LLDPEの代わりにエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井デュポンポリケミカル社製の「P1403」)を配合した以外は、実施例4と同様の方法で得たフィルムを比較例8とした。
比較例8の評価は、表2には記載しないが、「エアー巻き込み」と「表面抵抗値」については、所望の結果が得られたものの、被着体に貼り付ける際に、酢酸臭が若干感じられ、被着体への貼り付け性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の表面保護フィルムは、優れた成形性、帯電防止性および粘着性とを兼ね備えているため、被着体への埃の付着や剥がす際の帯電発生を防ぐ場合に非常に有効である。例えば、自動車用保護フィルムをはじめとして、金属板、樹脂板、塗装板、化粧鋼板、ガラス、液晶パネル、各種液晶部材などの運搬や加工工程における保護用途として好適なものである。
また、本発明の表面保護フィルムは、樹脂成分として全てポリエチレンからなり、使用後はポリエチレン樹脂として回収し、再生樹脂の使用が可能な用途に再利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)基材層と(B)粘着層とからなる表面保護フィルムであって、
(A)基材層は、(i)低密度ポリエチレンと(ii)高密度ポリエチレンとを重量比で17:3〜3:17の配合割合で含み、かつ(i)と(ii)のMFRの差が0.3以上であり、
(B)粘着層は、直鎖状低密度ポリエチレンからなる
ことを特徴とする表面保護フィルム。
【請求項2】
ポリエーテル−ポリオレフィンブロック共重合体が、(A)基材層、(B)粘着層いずれの層にも10〜30重量%配合されることを特徴とする請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
(i)低密度ポリエチレンと(ii)高密度ポリエチレンのMFRは、それぞれ5.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2013−53184(P2013−53184A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190476(P2011−190476)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】