説明

表面修飾基板、表面修飾基板の製造方法及び表面修飾基板の製造システム

【課題】基板表面に光不透過層を介して修飾層が設けられた表面修飾基板、その用途によらない効率的な製造方法及びその製造システムの提供。
【解決手段】基板表面11aを修飾剤で被覆して修飾層13を設ける工程と、修飾層13の所定箇所が露出するように、修飾層13上にフォトレジスト層14をパターニングする工程と、露出された修飾層13を除去し、基板表面11aの所定箇所を露出させる工程と、露出された基板表面11aをエッチングして、基板表面11aに凹部110を形成する工程と、基板11上に残存しているフォトレジスト層14を除去する工程と、を有する表面修飾基板1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に修飾層が設けられた表面修飾基板、該表面修飾基板の製造方法及び該表面修飾基板の製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の生産技術及び解析技術の進展に伴い、より高度な機能を有する基板が、各分野において精力的に開発されている。このような基板は、その表面上に化学物質や組成物を配置してパターニングすることにより、微小なパターンが多数設けられたものが主流である。
【0003】
例えば、医学・薬学分野では、動物細胞や植物細胞を長期間培養して解析する技術は、細胞の分化過程、RNA干渉(RANi)、化学物質に対する応答等、細胞機能を理解する上で重要なものである。
一方、多くの細胞、特に動物細胞は、何かに接着して生育する接着依存性を有しており、生体外において浮遊状態で長期間生存させることが困難である。したがって、培養の有無によらず、細胞を基板上に接着させて生育させる技術は重要であり、これまでに種々の方法が検討され、コラーゲンやフィブロネクチン等の接着性タンパク質を塗布した基板上に細胞を接着する方法が開示されている。一般的には、このような解析を行う上で、培養細胞を使用することが多い。
【0004】
このような中、従来は、シャーレや基板表面の全面を細胞培養領域として、ここに細胞を吸着させて培養し、任意の細胞を追跡観察する等の手段が採用されてきた。しかし、細胞は培養中に同じ位置で静止している訳ではなく、時々刻々とその姿を変えたり、移動したりしている。そこで、単一細胞毎に又は特定の複数細胞からなる細胞群を、所定の領域で培養し、長期間に渡って解析を継続しようとする動きが活発化してきている。
具体的には、特定の一細胞のみを選択し、その一細胞を細胞株として培養する技術、細胞を観察する時に、細胞の溶液環境条件を制御し、かつ、容器中での細胞濃度を一定に制御する技術、及び相互作用する細胞を特定しながら培養観察する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また近年は、上記目的で細胞を解析するに際し、解析方法の機能の多様化や効率化が求められており、細胞を基板上の微小領域に配置して接着させる技術の開発が望まれている。このような接着技術により、例えば、培養細胞を利用した人工臓器、バイオセンサ、バイオリアクター等の開発が大きく進展すると期待されている。そこで、基板表面に細胞接着性が異なる微小領域をパターニングし、細胞接着性が高い領域に細胞を選択的に接着させることで、基板上の微小領域に細胞を配置する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
一方、基板上に細胞を恣意的に配置して、細胞ネットワークを構築するための技術も提案されている。例えば、高さ10μm以上の障壁で区画した空間内で細胞を培養することで、細胞の伸張や移動を制御する技術が提案されている(非特許文献1参照)。また、ラミリン等の細胞接着性基質で基板上にパターンを描くと、神経細胞の突起がそのパターンに沿って伸張することが報告されている(非特許文献2参照)。
そして、上記のような技術を組み合わせて適用することで、特定の細胞を基板上に配置して、さらにはネットワークを構築することが可能であると考えられる。
【0007】
ここまでは、各種細胞アレイチップについて主に述べたが、例えば、基板表面に光不透過層を介して修飾層がパターニングされた表面修飾基板は、細胞アレイチップのみならず、ディスプレイ等、様々な分野で大きな需要がある。したがって、このような基板と、その用途によらない効率的な製造方法の開発が強く望まれるようになってきている。
【特許文献1】特開2004−81085号公報
【特許文献2】特開平5−176753号公報
【非特許文献1】Stopak D.et,al.,Dev.Biol.,90,383−398(1982)
【非特許文献2】Letourneau P.C.,Dev.Biol.,66,183−196(1982)
【非特許文献3】Tamaki E.et.al.,Bioconjugate Chem.,19,1017−1024(2008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし従来は、このような基板で、十分に実用性を備えたものは実現されておらず、さらにこのような基板を、用途によらず、効率的に製造する技術も確立されていないのが実情である。
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、基板表面に修飾層が設けられた表面修飾基板、その用途によらない効率的な製造方法及びその製造システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、基板表面に修飾層が設けられた表面修飾基板の製造方法であって、基板表面を修飾剤で被覆して修飾層を設ける工程と、前記修飾層の所定箇所が露出するように、該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする工程と、露出された前記修飾層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる工程と、露出された前記基板表面をエッチングして、基板表面に凹部を形成する工程と、基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する工程と、を有することを特徴とする表面修飾基板の製造方法である。
請求項2に記載の発明は、CF、C、C、C、C、C、CHF、CH及びSFからなる群から選択される少なくとも一種のガスから生成されるプラズマを使用したドライエッチングで前記凹部を形成することを特徴とする請求項1に記載の表面修飾基板の製造方法である。
請求項3に記載の発明は、露出された前記修飾層の除去と、露出された前記基板表面のエッチングとを、同一手段で段階的又は同時に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面修飾基板の製造方法である。
請求項4に記載の発明は、露出された前記修飾層を、酸素ガスから生成されるプラズマでの処理、又は紫外光の照射により除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の表面修飾基板の製造方法である。
請求項5に記載の発明は、前記修飾剤として、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を使用し、前記修飾層を撥液層とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面修飾基板の製造方法である。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Rは炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;Rは下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のRは互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Rは水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;Rは水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のRは互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のRは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0014】
請求項6に記載の発明は、基板表面に光不透過層を介して修飾層が設けられた表面修飾基板の製造方法であって、基板表面に光不透過層を設ける工程と、前記光不透過層上を修飾剤で被覆して修飾層を設ける工程と、該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする工程と、パターニングされた前記フォトレジスト層をマスクとして、前記修飾層及び光不透過層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる工程と、基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する工程と、を有することを特徴とする表面修飾基板の製造方法である。
請求項7に記載の発明は、前記修飾層及び光不透過層の除去を、同一手段で段階的又は同時に行うことを特徴とする請求項6に記載の表面修飾基板の製造方法である。
請求項8に記載の発明は、前記光不透過層が、クロム、ニッケル、アルミニウム、タンタル及びチタンからなる群から選択される一種以上の金属からなる金属層であることを特徴とする請求項6又は7に記載の表面修飾基板の製造方法である。
請求項9に記載の発明は、前記修飾剤として、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を使用し、前記修飾層を撥液層とすることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の表面修飾基板の製造方法である。
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Rは炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;Rは下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のRは互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、Rは水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;Rは水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のRは互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のRは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法で製造されたことを特徴とする表面修飾基板である。
請求項11に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法で使用する表面修飾基板の製造システムであって、基板表面を修飾剤で被覆して修飾層を設ける装置aと、前記修飾層の所定箇所が露出するように、該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする装置bと、露出された前記修飾層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる装置cと、露出された前記基板表面をエッチングして、基板表面に凹部を形成する装置dと、基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する装置eと、を備え、前記装置a、b、c、d及びeを、この順で使用することを特徴とする表面修飾基板の製造システムである。
請求項12に記載の発明は、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法で使用する表面修飾基板の製造システムであって、基板表面に光不透過層を設ける装置iと、前記光不透過層上を修飾剤で被覆して修飾層を設ける装置iiと、該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする装置iiiと、パターニングされた前記フォトレジスト層をマスクとして、前記修飾層及び光不透過層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる装置ivと、基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する装置vと、を備え、前記装置i、ii、iii、iv及びvを、この順で使用することを特徴とする表面修飾基板の製造システムである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基板表面に修飾層が設けられた表面修飾基板を、その用途によらず効率的に製造でき、該表面修飾基板を様々な分野に提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳しく説明する。
なお、本発明において修飾層とは、基板上にパターニングされ、基板表面とは異なる性質を有する層のことを指す。
【0022】
<表面修飾基板の製造方法>
[第一の実施形態]
本発明の第一の実施形態に係る表面修飾基板の製造方法は、基板表面に修飾層が設けられた表面修飾基板の製造方法であって、基板表面を修飾剤で被覆して修飾層を設ける工程と、前記修飾層の所定箇所が露出するように、該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする工程と、露出された前記修飾層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる工程と、露出された前記基板表面をエッチングして、基板表面に凹部を形成する工程と、基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する工程と、を有することを特徴とする。
【0023】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る表面修飾基板の製造方法を説明するための断面図である。
まず、図1(a)に示すように、基板11の表面11aを修飾剤で被覆して修飾層13を設ける。
【0024】
基板11の材質は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すれば良く、例えば、光透過性を有するもの及び有さないもののいずれでも良い。具体的には、石英(SiO)、ガラス、樹脂、金属、セラミックが例示でき、なかでも石英(SiO)及びガラスが特に好ましい。ここで「光透過性を有する」とは、「少なくとも可視光および紫外光に対して透過性を有する」ことを指す。
【0025】
光透過性を有する材質としては、石英(SiO)、ガラス、窒化ケイ素(SiN)、サファイア及び樹脂等が例示でき、石英及びガラスが特に好ましい。また、石英(SiO)、ガラス、窒化ケイ素(SiN)、サファイア及び樹脂等の基材に、窒化ケイ素膜(SiN);酸化ケイ素膜(SiO);インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明電極膜;サファイアが成膜されたものを基板11として使用しても良い。そして、基板11の材質は、光透過性が高いものほど好ましい。
【0026】
基板11の厚さ及び表面積は、目的に応じて適宜選定すれば良い。本発明は、特に微細な修飾パターンを有する表面修飾基板の製造に好適であるが、細胞アレイチップ等への適用を考慮すると、例えば厚さであれば、通常、0.1〜10mmであることが好ましく、0.15〜1.5mmであることがより好ましい。このような範囲であれば、基板11の微細加工性や得られた表面修飾基板の使用性に特に優れたものとなる。
【0027】
本発明において、修飾剤とは、基板上を被覆して、基板表面とは異なる性質を発現するものを指す。ここで「基板上を被覆する」とは、「基板表面を直接又は間接的に被覆する」ことを指す。そして、基板表面を間接的に被覆する場合としては、後述するような基板上の光不透過層や別途予め形成された修飾層を被覆する場合が例示できる。修飾剤として具体的には、基板と化学結合を形成することなく単に基板上に積層されるもの、基板と化学結合を形成して基板上に固定化されるものが例示できる。ここで「基板と化学結合を形成する」とは、「基板表面と化学結合を形成する、あるいは基板上の光不透過層や別途予め形成された修飾層と化学結合を形成する」ことを指す。いずれの場合も、修飾剤としては、通常、基板上を被覆する前の段階で所望の性質を有しているものが使用できる。また、基板と化学結合を形成する修飾剤の場合には、該化学結合形成後に所望の性質を有するようになるものでも良い。なお、ここで化学結合とは、共有結合等を指す。
【0028】
修飾剤の被覆方法は、修飾剤の種類に応じて適宜選択すれば良いが、ディップ塗布法、スピンコート法、真空蒸着法、CVD(化学気相蒸着)法、プラズマ重合法が例示できる。例えば、ディップ塗布法の場合には、修飾剤溶液を調製し、これを塗布して乾燥することにより、溶媒成分を除去することが好ましい。
修飾層13が積層された基板11は、必要に応じて洗浄及び乾燥させる。洗浄は、メタノールやエタノール等のアルコールを使用しても良いし、例えば、修飾剤溶液がフッ素系溶媒を含有する場合には、フッ素系溶媒を使用しても良い。
【0029】
修飾層13の厚さは、目的に応じて適宜設定すれば良い。また、修飾層13の厚さは、修飾剤の分子の大きさや使用量で調整できる。
【0030】
次いで、図1(b)に示すように、修飾層13の所定箇所が露出するように、該修飾層13上にフォトレジスト層14をパターニングする。
フォトレジスト層14は特に限定されず、公知のもので良く、ポジ型フォトレジスト及びネガ型フォトレジストのいずれから形成しても良い。
【0031】
次いで、図1(c)に示すように、パターニングされたフォトレジスト層14をマスクとして、露出された修飾層13を除去してパターニングし、基板表面11aの所定箇所を露出させる。
露出された修飾層13はドライエッチングで除去することが好ましく、酸素ガスから生成されるプラズマでの処理、又は紫外光の照射により除去することが特に好ましい。また、後述するような、フッ素系ガスから生成されるプラズマでの処理による除去も好ましい。
【0032】
紫外光の照射により除去する場合には、200nm以下の波長を有する紫外光であることが好ましい。このようにすることで、修飾層を効率的に変性させることができる。なかでも、実用性も考慮すると、172nm付近を中心波長帯とする所謂エキシマ光が好ましい。
紫外光の照射条件は、使用した修飾剤の種類に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、酸素ガス存在下で照射するのが好ましく、酸素ガス濃度が5%程度の雰囲気下で照射するのがより好ましく、酸素ガス濃度が5%程度の窒素ガス雰囲気下で照射するのが特に好ましい。これにより、修飾層13を効率的に変性させることができる。これは、紫外光だけでなく、照射領域で発生した活性酸素やオゾン(図示略)により、さらに修飾層13が変性される、相乗効果によるものと推測される。
【0033】
次いで、図1(d)に示すように、パターニングされたフォトレジスト層14をマスクとして、露出された基板表面11aをエッチングして、基板表面に凹部110を形成する。
エッチング方法は、基板11の材質に応じて適宜選択すれば良い。例えば、基板11の材質が石英又はガラスである場合には、ウェットエッチングであれば、バッファードフッ酸(BHF)を使用したエッチングが好ましい。また、ドライエッチングであれば、フッ素原子を含有するガスから生成されるプラズマを使用したエッチングが好ましい。このようなガスとして好ましいものとしては、CF、C、C、C、C、C、CHF、CH及びSFからなる群から選択される少なくとも一種が例示できる。また、必要に応じて、アルゴン(Ar)、水素(H)、酸素(O)及び一酸化炭素(CO)からなる群から選択される少なくとも一種のガスを併用しても良い。
【0034】
ドライエッチングは、例えば、以下のように行うことができる。すなわち、真空槽内に搬入した基板を静電チャック上に載置して密着させ、真空槽内を好ましくは0.01Pa以下の圧力となるように真空排気すると共に、基板裏面11b側に冷却用不活性ガスを導入して、放電時の基板表面温度が80〜100℃程度となるように冷却する。次いで、プラズマを生成させるガスを導入して、真空槽内の圧力が0.5Pa程度となるように調整し、アンテナに500〜2000Wの電力を、基板にバイアスパワーとして50〜500Wの電力をそれぞれ印加することで、所定の形状となるように基板をドライエッチングする。該ドライエッチング前には、必要に応じて、アルゴン等から生成されたプラズマを使用して基板上をプリエッチングすることで、クリーニングしても良い。また、該ドライエッチング後にも、必要に応じて、酸素等から生成されたプラズマを使用して、基板上に付着した不純物ポリマーをアッシングすることで、クリーニングしても良い。
【0035】
凹部110の形状は目的に応じて適宜設定すれば良く、角柱状、円柱状、角錐台状、円錐台状等、いずれでも良い。ここでは図示を省略するが、椀状等でも良い。
凹部110の大きさは、目的に応じて適宜調整すれば良い。例えば、細胞アレイチップ等の微細な修飾パターンを有する表面修飾基板の場合には、凹部110の最大幅Xは5〜500μmであることが好ましく、15〜200μmであることがより好ましい。また、凹部110の深さYは0.1〜7μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましい。
【0036】
露出された修飾層13の除去と、露出された基板表面11aのエッチングは、同一手段で段階的又は同時に行っても良い。このような場合、例えば、ドライエッチングで修飾層13の除去と、基板表面11aのエッチングを一括して行うことが好ましく、この時のドライエッチングとしては、先に述べたフッ素原子を含有するガスから生成されるプラズマを使用したエッチングが特に好ましい。
【0037】
次いで、基板11上に残存しているフォトレジスト層14を除去することで、図1(e)に示すように、表面11aの所定箇所に凹部110が設けられ、該凹部110が設けられていない部位に修飾層13がパターニングされた表面修飾基板1が得られる。
フォトレジスト層14の除去は、ウェット条件下で行うのが好ましく、フォトレジスト層14の種類に応じて、アセトンやN−メチルピロリドン(NMP)等の各種有機溶媒、酸又はアルカリを使用して行なうのがより好ましい。
【0038】
ここでは、修飾層13が単層構造であるものについて説明したが、本実施形態においては、修飾層を、異なる修飾剤を積層してなる複数層構造としても良い(図示略)。修飾層を複数層構造とする場合には、その層数は目的に応じて任意に選択できる。そして、それぞれの層の厚さは、その合計の厚さが、単層である前記修飾層13の厚さと同じになるようにすれば良い。
【0039】
本実施形態によれば、上記のように、修飾層13のパターニングと凹部110の形成は、フォトレジスト層14を共通のマスクとして行うので、基板11の上方から平面視した時の凹部110のパターンと、修飾層13で被覆されていない非修飾部のパターンとが高精度に一致した表面修飾基板1が容易に得られる。そして、基板表面に微細で高精度な修飾パターン及び非修飾部を形成できる。
【0040】
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態に係る表面修飾基板の製造方法は、基板表面に光不透過層を介して修飾層が設けられた表面修飾基板の製造方法であって、基板表面に光不透過層を設ける工程と、前記光不透過層上を修飾剤で被覆して修飾層を設ける工程と、該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする工程と、パターニングされた前記フォトレジスト層をマスクとして、前記修飾層及び光不透過層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる工程と、基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する工程と、を有することを特徴とする。
【0041】
図2は、本発明の第二の実施形態に係る表面修飾基板の製造方法を説明するための断面図である。なお、図2に示す各構成のうち、図1で説明した構成と同様のものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。これは、さらに後述するその他の実施形態においても同様である。
まず、図2(a)に示すように、基板11の表面11a上に光不透過層12を設け、さらに、該光不透過層12上を修飾剤で被覆して修飾層13を設ける
【0042】
本実施形態においては、基板11の材質は第一の実施形態と同様で良いが、光透過性を有するものが好ましく、光透過性が高いものほど好ましい。
【0043】
光不透過層12は、光透過性が低いものほど好ましい。なかでも、金属層であることが好ましく、特に好ましい具体的な材質としては、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、タンタル(Ta)又はチタン(Ti)が例示できる。これら金属は、合金を形成し易く、密着性に優れる。また、各種金属酸化物や二酸化ケイ素(SiO)等の酸化膜も容易に形成できるので、例えば、修飾層として後記する撥液性を有する層を容易に形成できる。さらに、これら金属層を接着層として基板11表面上に堆積させ、その表面上にさらに金(Au)、銀(Ag)又は白金(Pt)を積層させた二層構造の金属層としても良い。光不透過層12は、後記する露光工程における露光光の波長に応じて、該露光光を透過させない材質を、適宜選択することが好ましい。
【0044】
光不透過層12の厚さは、基板11の厚さ等を考慮して適宜調整すれば良いが、基板11の厚さが上記範囲内である場合には通常、20nm以上であることが好ましく、50〜500nmであることがより好ましい。光不透過層12が上記のような二層構造等の複数層構造である場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記範囲内となるようにすれば良い。
【0045】
光不透過層12は、例えば、スパッタリング等により、基板表面11a上に薄膜を成膜することで設けることができる。
【0046】
修飾層13とこれを設ける方法は、第一の実施形態の場合と同様である。
【0047】
次いで、図2(b)に示すように、修飾層13の所定箇所が露出するように、該修飾層13上にフォトレジスト層14をパターニングする。
フォトレジスト層14とこれを設ける方法は、第一の実施形態の場合と同様である。
【0048】
次いで、図2(c)に示すように、パターニングされたフォトレジスト層14をマスクとして、修飾層13及び光不透過層12を除去し、基板表面11aの所定箇所を露出させる。
【0049】
修飾層13を除去する方法は、第一の実施形態の場合と同様である。
光不透過層12を除去する方法としては、ウェットエッチング、ドライエッチング等、公知の方法から適宜選択すれば良い。
修飾層13及び光不透過層12の除去は、それぞれ異なる手段で段階的に行っても良いし、同一手段で段階的又は同時に行っても良い。例えば、修飾層が後記する撥液層である場合など、その厚さが10nm以下程度と極めて薄い場合には、光不透過層12の除去方法で、光不透過層12と同時に除去することもできる。
【0050】
次いで、基板11上に残存しているフォトレジスト層14を除去することで、図2(d)に示すように、表面11aの所定箇所に、光不透過層12を介して修飾層13がパターニングされた表面修飾基板2が得られる。
フォトレジスト層14を除去する方法は、第一の実施形態の場合と同様である。
【0051】
図2(d)において、基板表面11aの露出部位の最大幅X、並びに光不透過層12及び修飾層13の合計の厚さYは、表面修飾基板1の用途に応じて、適宜調整すれば良い。
【0052】
本実施形態においては、修飾層を、異なる修飾剤を積層してなる複数層構造としても良い(図示略)。例えば、所望の修飾層(第一の修飾層)を光不透過層上に直接積層させることが困難な場合には、これらの間に第二の修飾層を介在させることで、安定して第一の修飾層を積層させることができる。
修飾層を複数層構造とする場合には、三層以上としても良いが、製造効率と本発明の効果とを考慮すれば、二層であることが好ましい。
修飾層を複数層構造とする場合、それぞれの層の厚さは、その合計の厚さが、単層である前記修飾層13の厚さと同じになるようにすれば良い。
【0053】
本実施形態によれば、上記のように、所望の部位が光透過性、それ以外の部位が光不透過性とされ、光不透過性部位と修飾部位とが一致した表面修飾基板が容易に得られる。そして、基板表面に微細で高精度な修飾パターン及び非修飾部を形成できる。
【0054】
(修飾層)
本発明においては、特定の性質を有する修飾層を適宜選択して形成することにより、当該性質を反映した種々の表面修飾基板を製造できる。修飾層は、所望の性質を発現するような修飾剤を適宜選択して形成する。そして本発明は、微細な修飾パターンを有する表面修飾基板の製造に特に好適である。例えば、生体関連物質検出用センサ、細胞接着用基板、細胞培養用基板、細胞電位計測用の微小電極アレイデバイス等の各種細胞アレイチップでは、基板上の所定箇所に微小な撥液性を有する層(以下、撥液層と略記する)を形成するが、このような表面修飾基板の製造に、本発明は特に好適である。なお、ここで「撥液」とは、「撥水」及び/又は「撥油」を指す。
以下、一例として、微小な撥液層の形成について説明する。
【0055】
撥液層は、修飾剤として撥液処理剤を使用し、これで基板上の所望の箇所を被覆することで形成できる。
例えば、細胞アレイチップを製造する場合には、撥液層表面は、水の接触角が100°以上である撥水性を有することが好ましく、ヘキサデカンの接触角が50°以上である撥油性を有することが好ましい。撥水性及び撥油性の大きさは、撥液処理剤の種類により調整できる。
このような撥液性を有することにより、撥液層表面においては生体関連物質の吸着が抑制されるので、該生体関連物質に特異的に結合する物質を、撥液層が形成されていない非修飾部に選択的に固定化することで、生体関連物質検出用センサ等を製造できる。また、撥液層表面において生体関連物質の吸着が抑制されることで、細胞が吸着する際の足場が形成されないので、撥液層が形成されていない非修飾部に細胞を選択的に吸着させて固定化することで、細胞接着用基板、細胞培養用基板、細胞電位計測用の微小電極アレイデバイス等を製造できる。
【0056】
撥液層は、如何なる材質でも良い。例えば、ポリテトラフオロエチレン等、従来より汎用されている撥液処理剤で形成できる。
しかし、本発明において撥液層は、光透過性を有するものが好ましい。ここで言う「光透過性を有する」とは、例えば、多岐波長領域に対して十分な透過性を有することを指し、基板の場合と同様に、紫外光及び可視光に対して十分な透過性を有することが好ましく、特に可視光に対して透過性を有することが好ましい。このようにすることで、例えば、顕微鏡等を使用して計測対象の細胞を光学的に解析する際に、効果的にノイズを低減でき、より高感度に解析できる。特に、顕微鏡観察下でレーザを照射し、通常光ピンセットと呼ばれる技術を適用したり、細胞に光刺激を与えて解析するのに好適である。そして、撥液層は、透明ガラスや石英(SiO)と同等の透明度であることが好ましい。撥液層をこのような光透過性とするためには、酸化ケイ素膜、石英(SiO)、およびガラスと同様の屈折率を有し、かつ紫外光、可視光等の波長に対して十分薄い厚さで成膜できる撥液処理剤を使用すれば良い。このような撥液処理剤としては好ましいものとしては、撥液性及び光透過性を有するフッ素含有化合物が例示できる。
【0057】
前記フッ素含有化合物としては、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を分子の一端に有する化合物が好ましく、より好ましいものとして、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(1)、化合物(2)と略記する)が例示できる。
【0058】
【化5】

【0059】
(式中、Rは炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;Rは下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のRは互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0060】
【化6】

【0061】
(式中、Rは水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;Rは水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のRは互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のRは互いに同一でも異なっていても良い。)
【0062】
は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基である。ここで「パーフルオロアルキル基」とは、「アルキル基の水素原子がすべてフッ素原子に置換されたもの」を指す。また、「パーフルオロアルキルエーテル基」とは、「前記パーフルオロアルキル基が酸素原子に結合した一価の基」を指す。
における前記アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシルが例示できる。
の炭素数は、3〜12であることが好ましく、6〜10であることがより好ましい。
また、Rは直鎖状であることが好ましく、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0063】
’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表す。具体的には、前記Rから一つのフッ素原子を除いた二価の基が例示できる。R’の炭素数が2以上である場合には、前記Rの「Z」に結合している炭素原子とは反対側の末端の炭素原子に結合しているフッ素原子を一つ除いた二価の基が好ましい。
【0064】
は前記式(11)〜(16)で表される基のいずれかである。そして、複数のRは互いに同一でも異なっていても良く、例えば、化合物(2)における両分子末端のRは互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるRと化合物(2)におけるRとは互いに同一でも異なっていても良い。
【0065】
は水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表す。
の水酸基に置換可能な原子としては、好ましいものとしてフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、なかでも塩素原子が特に好ましい。
また、水酸基に置換可能な基としては、好ましいものとして、炭素数が1〜6のアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基及びアシルオキシ基が挙げられる。
炭素数が1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基及びヘキシルオキシ基が例示できる。
アリールオキシ基としては、フェノキシ基及びナフトキシ基が例示できる。
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基及びフェネチルオキシ基が例示できる。
アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、バレリルオキシ基、ピバロイルオキシ基及びベンゾイルオキシ基が例示できる。
これらのなかでもRとしては、塩素原子、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0066】
は水素原子又は1価の炭化水素基を表す。
の1価の炭化水素基は特に限定されず、鎖状構造及び環状構造のいずれでも良く、飽和及び不飽和のいずれでも良い。鎖状構造の場合には、直鎖状及び分岐鎖状のいずれでも良く、環状構造である場合には、単環構造及び多環構造のいずれでも良い。
なかでも、好ましいものとして、炭素数が1〜6のアルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。
炭素数が1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が例示できる。
アリール基としては、フェニル基及びナフチル基が例示できる。
アラルキル基としては、ベンジル基及びフェネチル基が例示できる。
これらのなかでもRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0067】
Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基である。すなわち、隣り合うメチレン基及び酸素原子とは、以下のように結合する。
「−(CH−(NH−C(=O))−(O)−」
「−(CH−(C(=O))−(O)−」
そして、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く、例えば、化合物(2)において「R’」を挟んで対峙しているY同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるYと化合物(2)におけるYとは互いに同一でも異なっていても良い。
【0068】
Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基である。前記エチレンオキシ基の末端の酸素原子が隣り合うRに結合する。
前記エチレンオキシ基の置換されていても良い水素原子の数は、一つであることが好ましい。また、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良い前記アルキル基又はアルキルオキシアルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。そして、炭素数は1〜16であることが好ましい。
そして、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く、例えば、化合物(2)において「R’」を挟んで対峙しているZ同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるZと化合物(2)におけるZとは互いに同一でも異なっていても良い。
【0069】
j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、0であることが特に好ましい。また、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良い。例えば、化合物(2)において「R’」を挟んで対峙しているYにかかるj同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるYにかかるjと化合物(2)におけるYにかかるjとは互いに同一でも異なっていても良い。kについても同様である。
【0070】
l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数である。
そして、lは0であることが特に好ましい。
mは0〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。
また、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良い。例えば、化合物(2)において「R’」を挟んで対峙しているZにかかるl同士は互いに同一でも異なっていても良いし、化合物(1)におけるZにかかるlと化合物(2)におけるZにかかるlとは互いに同一でも異なっていても良い。mについても同様である。
さらに、lが2以上の整数である場合には、l個のZは互いに同一でも異なっていても良い。
【0071】
nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合には、n個のRは互いに同一でも異なっていても良く、nが1である場合には、2個のRは互いに同一でも異なっていても良い。
【0072】
化合物(1)又は(2)としては、より好ましいものとして、下記一般式(3)又は(4)で表されるものが挙げられる。
【0073】
【化7】

【0074】
(式中、R、R’、R、mは前記と同様である。)
【0075】
また、前記一般式(1)又は(2)において、Zが「−(CHR−CHR−O)l’−(CHR−CHR−O)l’’」で表される化合物も、より好ましいものとして挙げられる。
ここで、R及びRの一方は水素原子を表し、他方はメチル基の一つの水素原子が、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のフルオロアルキル基又はフルオロアルキルエーテル基に置換された基を表す。ここで「フルオロアルキルエーテル基」とは、「前記炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のフルオロアルキル基が酸素原子に結合した一価の基」を指す。
また、R及びRの一方は水素原子を表し、他方は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はアルキルエーテル基を表す。ここで「アルキルエーテル基」とは、「前記炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基が酸素原子に結合した一価の基」を指す。
【0076】
l’は、2以上の整数であり、2〜20であることが好ましく、5〜10であることがより好ましい。
l’’は、0以上の整数であり、0〜20であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0077】
及びRにおける、メチル基の一つの水素原子が置換された前記フルオロアルキル基としては、CF−、CHF−、CClF−、C−、CHFCF−、CClFCF−、(CFCF−、CFCFCF−、(CHFCF−、(CF)(CHF)CF−、(CFCFCFCF−、(CFCF(CFCF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF−、CF(CF11−、CF(CF13−、CF(CF15−が例示できる。
そしてR及びRにおける、メチル基の一つの水素原子が置換された前記フルオロアルキルエーテル基としては、これらフルオロアルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
【0078】
及びRにおける前記アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシルが例示できる。
そしてR及びRにおける前記アルキルエーテル基としては、これらアルキル基が酸素原子に結合した一価の基が例示できる。
【0079】
撥液処理剤は、市販品を使用しても良い。
撥液処理剤を基板に結合させて撥液層を形成する場合においては、例えば、基板上の所定箇所が水酸基を有する場合、前記化合物(1)又は(2)として、Rが前記式(11)、(12)又は(16)等で表される基を有するものを使用することが好ましい。
なかでも、前記式(16)等で表される有機シリル基を有する化合物(1)又は(2)は、市販品の入手が容易であり好適である。このような市販品としては、例えば、サイトップシリーズ(商標、旭硝子株式会社製)、メガファック(商標、大日本インキ化学工業株式会社製)、ディックガード(商標、大日本インキ化学工業株式会社製)、FPX−30G(商標、JSR株式会社製)、ノベックEGC−1720(商標、住友スリーエム株式会社製)、Patinalシリーズ(substance WR1,WR2,WR3)(商標、メルク株式会社製)、オプツールDSX(商標、ダイキン工業株式会社製)が例示できる。
【0080】
また、Rが前記式(11)、(12)及び(16)以外の基、例えば、前記式(13)、(14)又は(15)等で表される基を有するものである場合には、これらの基と反応可能な官能基を有するように基板上の所定箇所を処理しても良い。
例えば、Chembiochem,2,686−694(2001)(Benters R. Et al.)に記載の方法によれば、Rとして前記式(14)で表される基(すなわち、アミノ基)を有する化合物(1)又は(2)を、基板に結合させることができる。
また、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン等のアミノ基を有する有機シラン化合物を基板に結合させておけば、Rとして前記式(13)で表される基(すなわち、カルボキシル基)又は前記式(15)で表される基(すなわち、エポキシ基)を有する化合物(1)あるいは(2)を、基板に結合させることができる。前記有機シラン化合物は、入手も容易である。
【0081】
撥液層において、撥液処理剤は、少なくとも分子の一部、好ましくは分子の一端が基板上の特定の原子や官能基と結合する一方、撥液性を有する部位が基板の外側へ向けて露出するように配向すると推測される。例えば、撥液処理剤として前記化合物(1)を使用した場合には、そのRが基板と結合する一方、Rが基板の外側へ向けて露出するように配向する。また、前記化合物(2)を使用した場合には、その一つ又は二つのRが基板と結合する一方、R’が基板の外側へ向けて露出するように配向すると推測される。
このように、撥液性を有する部位が配向することで、撥液層が撥液効果を発現すると推測される。したがって、前記化合物(1)又は(2)のように、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を有する化合物を使用することで、基板により高い撥液効果を発現させることが可能となる。
【0082】
また、前記化合物(1)又は(2)を使用して形成した撥液層は、従来のポリテトラフオロエチレンなどを含む層よりも、透明度に優れ、薄い単層薄膜とするのに好適であり、パターニングや除去などの微細加工性に優れる。透明度が優れているので、例えば、細胞や物質を光学的に計測する場合には、ノイズの大幅な低減が可能であり、高感度な解析が可能である。また、微細加工性に優れているので、基板上に微小な非修飾部を多数形成できる。これにより、表面修飾基板上での解析対象物の配置密度を高くできるので、高い効率で解析できる。
【0083】
撥液層中の撥液処理剤は一種でも良いし、二種以上でも良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率等は目的に応じて適宜選択できる。
また、撥液層は、本発明の効果を妨げない範囲で、撥液処理剤以外の如何なる成分を含んでいても良い。
【0084】
撥液層の厚さは、基板の用途等に応じて適宜調整することが好ましい。例えば、各種細胞アレイチップの場合であれば、通常は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。このような範囲とすることで、撥液層は微細加工性に優れたものとなる。さらに、例えば、高感度に解析可能な細胞アレイチップ等が作製できる。なかでも、前記化合物(1)又は(2)を使用して基板上に単分子膜を形成することで、撥液層の厚さを10nm以下とすることができ、特に優れた効果を奏する表面修飾基板が得られる。
【0085】
また、ここに示すように修飾層が撥液層である場合、図2(d)におけるXは、5〜500μmであることが好ましく、15〜200μmであることがより好ましい。また、Y(光不透過層及び撥液層の合計の厚さ)は、20〜500nmであることが好ましく、50〜300nmであることがより好ましい。
【0086】
表面修飾基板を細胞アレイチップとして使用する場合には、基板上の修飾層を撥液層とし、修飾層が設けられていない部位(非修飾部)を細胞配置部とすることが好適である。特に、第二の実施形態により光不透過層を設け、細胞配置部を光透過性とし、その他の部位を光不透過性として、細胞配置部を明瞭に区別できるようにすると非常に有用である。このようにすることで、基板上へ細胞を容易に配置したり、配置した細胞を高精度に解析できるためである。
【0087】
例えば、細胞の配置が容易になれば、多数の細胞を短時間で正確に配置することで、解析の効率と精度が大幅に向上する。
また、特定の細胞を光励起して、機能発現を制御する手法へ表面修飾基板を利用でき、例えば、蛍光標識したRNAキャリアを使用して任意のsiRNAやshRANを細胞内へ取り込ませ、蛍光標識物質を光励起することで、細胞内でRNAiを誘発する解析が可能となる。この時の光励起のような光刺激を行う際には、標的とする細胞の配置部のみを光透過性としておくことで、解析を高精度に行うことができる。
【0088】
本発明によれば、基板表面に修飾層が設けられた表面修飾基板を、その用途によらず効率的に製造できる。そして、所望の修飾剤を選択し、特定の性質を有する修飾層を適宜選択して形成することにより、当該性質を反映した種々の表面修飾基板を製造できるので、用途に応じて、細胞アレイチップやディスプレイ等、様々な表面修飾基板を提供できる。
【0089】
<表面修飾基板の製造システム>
本発明の表面修飾基板の製造システムは、第一の実施形態に係る表面修飾基板の製造方法で使用する表面修飾基板の製造システムであって、基板表面を修飾剤で被覆して修飾層を設ける装置aと、前記修飾層の所定箇所が露出するように、該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする装置bと、露出された前記修飾層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる装置cと、露出された前記基板表面をエッチングして、基板表面に凹部を形成する装置dと、基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する装置eと、を備え、前記装置a、b、c、d及びeを、この順で使用することを特徴とする。
前記装置a〜eは、例えば、フォトリソグラフィープロセスを含む半導体の製造で使用する装置で良く、必要に応じて適宜変更し、本発明の製造方法に適した形態に配置されていれば良い。そして、前記装置a〜eは、コンピュータと電気的に接続され、自動で制御可能とされていることが好ましい。
【0090】
また、本発明の表面修飾基板の製造システムは、第二の実施形態に係る表面修飾基板の製造方法で使用する表面修飾基板の製造システムであって、基板表面に光不透過層を設ける装置iと、前記光不透過層上を修飾剤で被覆して修飾層を設ける装置iiと、該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする装置iiiと、パターニングされた前記フォトレジスト層をマスクとして、前記修飾層及び光不透過層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる装置ivと、基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する装置vと、を備え、前記装置i、ii、iii、iv及びvを、この順で使用することを特徴とする。
前記装置i〜vは、例えば、フォトリソグラフィープロセスを含む半導体の製造で使用する装置で良く、例えば、前記装置ii及びiiiは、前記装置a及びbと同様で良く、必要に応じて適宜変更し、本発明の製造方法に適した形態に配置されていれば良い。そして、前記装置i〜vは、コンピュータと電気的に接続され、自動で制御可能とされていることが好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図1で説明した第一の実施形態に係る方法で、表面修飾基板を製造した。
基板としては、イーグル2000(登録商標)(コーニングインターナショナル株式会社製)のガラス基板(厚さ;0.5mm)を使用し、その表面にオプツールDSX(商標、ダイキン工業株式会社製)をディップ塗布して一晩乾燥させた後、100℃で1時間加熱し、フッ素系溶媒であるノベックHFE(商品名、住友スリーエム株式会社製)を使用して洗浄することで、厚さ3.8nmの撥液層を設けた。
次いで、撥液層上にフォトレジスト層をパターニングした。
次いで、レジスト層を除去することなく、酸素ガス濃度が5%の窒素ガス雰囲気下で、基板の表面側からエキシマ光を15分間照射して、露出された撥液層を除去し、基板表面を露出させた。
次いで、露出された基板表面に対して、バッファードフッ酸(BHF)を使用したウェットエッチングを行った。これにより、図1と同様の形状で、Xが35μm、Yが0.7μmである凹部を基板表面に形成した。
次いで、基板上に残存しているフォトレジスト層を、アセトン及びNMPを使用して除去し、基板表面の所定箇所に凹部が設けられ、該凹部が設けられていない箇所に撥液層がパターニングされた表面修飾基板を得た。
【0092】
(実施例2)
図1で説明した第一の実施形態に係る方法で、表面修飾基板を製造した。
基板としては、石英ガラス基板(厚さ;0.4mm)を使用し、その表面を、WR1 Partinal(商品名、メルク株式会社製)を蒸着源とした真空蒸着法にて、撥液処理剤で被覆し、厚さ10nm以下の撥液層を設けた。この時は、圧力を1×10−3Pa、蒸着源の温度を360〜450℃、蒸着時間を30秒間として蒸着を行った。
次いで、撥液層上にフォトレジスト層をパターニングした。
次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして、ドライエッチングを行い、撥液層の除去と凹部の形成を一括して行った。これにより、図1と同様の形状で、Xのが40μm、Yが1.0μmである凹部を基板表面に形成した。この時のドライエッチングの条件は、先に図1において説明した通りであり、Cガスから生成されたプラズマを使用して行った。
次いで、基板上に残存しているフォトレジスト層を、有機溶媒を使用して除去し、基板表面の所定箇所に凹部が設けられ、該凹部が設けられていない箇所に撥液層がパターニングされた表面修飾基板を得た。
【0093】
(実施例3)
図2で説明した第二の実施形態に係る方法で、表面修飾基板を製造した。
基板としては、石英ガラス基板(厚さ;0.7mm)を使用し、その表面にスパッタリングにより、金属層として厚さ100nmのAl薄膜を成膜した。
次いで、前記Al薄膜上を、WR1 Partinal(商品名、メルク株式会社製)を蒸着源とした真空蒸着法にて、撥液処理剤で被覆し、厚さ10nm以下の撥液層を設けた。この時は、圧力を1×10−3Pa、蒸着源の温度を360〜450℃、蒸着時間を30秒間として蒸着を行った。
次いで、撥液層上にフォトレジスト層をパターニングした。
次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして、酸素ガスから生成されたプラズマで処理することで、露出された撥液層を除去した。
次いで、パターニングされたフォトレジスト層をマスクとして、塩素系ガスを使用して、Al薄膜を除去した。
次いで、基板上に残存しているフォトレジスト層を、有機溶媒を使用して除去し、Al薄膜を介して撥液層がパターニングされた表面修飾基板を得た。得られた表面修飾基板の図2におけるXは30μmであった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、細胞アレイチップやディスプレイ等、医学・薬学の分野や電器分野をはじめ、種々の分野で利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る表面修飾基板の製造方法を説明するための断面図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る表面修飾基板の製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1,2・・・表面修飾基板、11・・・基板、11a・・・基板表面、12・・・光不透過層、13・・・修飾層、14・・・フォトレジスト層、110・・・凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に修飾層が設けられた表面修飾基板の製造方法であって、
基板表面を修飾剤で被覆して修飾層を設ける工程と、
前記修飾層の所定箇所が露出するように、該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする工程と、
露出された前記修飾層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる工程と、
露出された前記基板表面をエッチングして、基板表面に凹部を形成する工程と、
基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する工程と、
を有することを特徴とする表面修飾基板の製造方法。
【請求項2】
CF、C、C、C、C、C、CHF、CH及びSFからなる群から選択される少なくとも一種のガスから生成されるプラズマを使用したドライエッチングで前記凹部を形成することを特徴とする請求項1に記載の表面修飾基板の製造方法。
【請求項3】
露出された前記修飾層の除去と、露出された前記基板表面のエッチングとを、同一手段で段階的又は同時に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面修飾基板の製造方法。
【請求項4】
露出された前記修飾層を、酸素ガスから生成されるプラズマでの処理、又は紫外光の照射により除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の表面修飾基板の製造方法。
【請求項5】
前記修飾剤として、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を使用し、前記修飾層を撥液層とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面修飾基板の製造方法。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;Rは下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のRは互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【化2】

(式中、Rは水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;Rは水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のRは互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のRは互いに同一でも異なっていても良い。)
【請求項6】
基板表面に光不透過層を介して修飾層が設けられた表面修飾基板の製造方法であって、
基板表面に光不透過層を設ける工程と、
前記光不透過層上を修飾剤で被覆して修飾層を設ける工程と、
該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする工程と、
パターニングされた前記フォトレジスト層をマスクとして、前記修飾層及び光不透過層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる工程と、
基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する工程と、
を有することを特徴とする表面修飾基板の製造方法。
【請求項7】
前記修飾層及び光不透過層の除去を、同一手段で段階的又は同時に行うことを特徴とする請求項6に記載の表面修飾基板の製造方法。
【請求項8】
前記光不透過層が、クロム、ニッケル、アルミニウム、タンタル及びチタンからなる群から選択される一種以上の金属からなる金属層であることを特徴とする請求項6又は7に記載の表面修飾基板の製造方法。
【請求項9】
前記修飾剤として、下記一般式(1)又は(2)で表される化合物を使用し、前記修飾層を撥液層とすることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載の表面修飾基板の製造方法。
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し;R’は炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐鎖状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基から一つのフッ素原子を除いた基を表し;Rは下記式(11)〜(16)で表される基のいずれかであり、複数のRは互いに同一でも異なっていても良く;Yは式「−NH−C(=O)−」で表される基又はカルボニル基であり、複数のYは互いに同一でも異なっていても良く;Zは、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されていても良いアルキル基又はアルキルオキシアルキル基に、一つの水素原子が置換されたエチレンオキシ基であり、複数のZは互いに同一でも異なっていても良く;j及びkはそれぞれ独立して0又は1であり、複数のj又はkは互いに同一でも異なっていても良く;l及びmはそれぞれ独立して0以上の整数であり、複数のl又はmは互いに同一でも異なっていても良く;lが2以上の整数である場合にはl個のZは互いに同一でも異なっていても良い。)
【化4】

(式中、Rは水酸基あるいは水酸基に置換可能な原子又は基を表し;Rは水素原子又は1価の炭化水素基を表し;nは1、2又は3であり、nが2又は3である場合にはn個のRは互いに同一でも異なっていても良く;nが1である場合には2個のRは互いに同一でも異なっていても良い。)
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法で製造されたことを特徴とする表面修飾基板。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法で使用する表面修飾基板の製造システムであって、
基板表面を修飾剤で被覆して修飾層を設ける装置aと、
前記修飾層の所定箇所が露出するように、該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする装置bと、
露出された前記修飾層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる装置cと、
露出された前記基板表面をエッチングして、基板表面に凹部を形成する装置dと、
基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する装置eと、
を備え、
前記装置a、b、c、d及びeを、この順で使用することを特徴とする表面修飾基板の製造システム。
【請求項12】
請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法で使用する表面修飾基板の製造システムであって、
基板表面に光不透過層を設ける装置iと、
前記光不透過層上を修飾剤で被覆して修飾層を設ける装置iiと、
該修飾層上にフォトレジスト層をパターニングする装置iiiと、
パターニングされた前記フォトレジスト層をマスクとして、前記修飾層及び光不透過層を除去し、基板表面の所定箇所を露出させる装置ivと、
基板上に残存している前記フォトレジスト層を除去する装置vと、
を備え、
前記装置i、ii、iii、iv及びvを、この順で使用することを特徴とする表面修飾基板の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−94029(P2010−94029A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−265029(P2008−265029)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】