説明

表面処理されたナノ結晶粒子を含む、実質的に透明な耐摩耗性フィルム

【課題】架橋性樹脂中に分散された、表面処理されたナノ結晶粒子を含む、フィルム形成組成物及び組成物より製造される耐摩耗性フィルムを提供する。
【解決手段】実質的に透明であり、耐摩耗性であるフィルムが、架橋性樹脂中に分散された表面処理されたナノ結晶粒子を含むフィルム形成組成物から作られる。シロキサンスターグラフトポリマーコーティングのような1またはそれ以上のシロキサン種で表面処理されたナノ結晶粒子を含有するフィルム形成組成物の製造方法、及び実質的に透明であり、耐摩耗性であるフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ナノ結晶粒子を含む、実質的に透明で耐摩耗性のフィルムに関する。さらに詳しくは、ポリマーをベースとした架橋性樹脂中により分散されやすいように、またそのような架橋性樹脂から作られたフィルムの透明性と耐摩耗性、硬度、及び/または耐スクラッチ性を改良するために、処理されたナノ結晶粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
実質的に透明なフィルムは、床やカウンタートップのカバーリングや、自動車の塗料のように、表面に保護及び/または装飾的なコーティングを与えるために、様々な産業界で使用される。このようなフィルムは、環境ストレス、放射線、温度、スクラッチ、剥離等によるダメージから、被覆された基材を保護する役目をすることができる。耐摩耗性床被覆剤の例としては、Perstop Flooing AB(スウェーデン)によって登録商標「PERGO」として市販されているものがある。
【0003】
光学的な透明性を保ったまま、架橋性樹脂から作成したフィルムの硬さを改良するための他の試みでは、ナノメーターからミクロンまで直径を変えながら、あるいは固体の形状を変えながら、無機微粒子を含ませてきた。
【0004】
しかしながら、これまで試みで使用されたナノメーター範囲の粒子(例えば、コロイダルシリカ)は、一般的には本質的に結晶化せず、ナノ結晶粒子を形成しない。その結果、そのような粒子は、ナノ結晶粒子と同程度の濃度を用いても、ナノ結晶粒子ほどには架橋樹脂フィルムの物理的特性を改良することはできない。さらに、ミクロン範囲の粒子は、ナノ結晶粒子と同程度の濃度を用いた場合、より大きなミクロン範囲の粒子によって引き起こされる光の反射によって、ナノ結晶粒子程度に架橋樹脂フィルムの透明性を与えることができない。
【0005】
架橋樹脂フィルム中に分散される無機微粒子の分散の程度は、光学的透明性の維持に影響を与える。不十分な粒子の分散は、凝集を起こし、結果として粒子を含むフィルムに、高い透過、反射ヘイズと、低い透明性をもたらす原因となる。
【0006】
高い分散性は、粒子と、環境あるいは分散されるフィルム基質との間の混和性を与えるために、粒子の表面を処理することにより達成される。分散無機微粒子を使用するために、様々な表面処理が使用されてきた。これらは結果として様々なフィルム/微粒子組成となった。
【0007】
特許文献1には、塗料組成物中に反応性で無色の無機微粒子が分散された透明塗料組成物が開示されている。これらの無機微粒子は、平均直径約1.0〜1000ナノメーターの範囲であり、好ましくは約2〜200ナノメーターであり、最も好ましくは約4〜50ナノメーターである。この塗料組成物は、透明フィルムを形成するための架橋性樹脂と、樹脂に無機微粒子を結合させる役目を持つシランカップリング剤のような多価の架橋剤を有する、バインダーシステムを含んでいる。コロイダルシリカが微粒子として好ましく用いられ、このようなシリカはコロイド状、ヒュームド状、もしくはアモルファス状で存在する。この特許はナノ結晶粒子を使用することに関して何ら開示しておらず、またシリカと全く異なるアルミナ、チタニア、セリア、もしくは酸化亜鉛よりなる微粒子について、何ら開示していない。また、この特許は、ナノ結晶粒子が架橋性樹脂に添加される前に表面処理されることや、そのように処理されたナノ結晶粒子が透明塗料組成物に有益であるということについて、開示していない。
【0008】
特許文献2には、セラミック粒子とシロキサンのスターグラフトポリマーコーティング剤からなる、コーティングされたセラミックパウダーとその製造方法について開示されている。特許文献3には、複数のセラミック粒子へ塗布するために、特許文献2に開示されているコーティング組成物及びその調整方法を使用することが開示されている。特許文献2と特許文献3の内容は、本発明の中にとり入れられている。
【0009】
特許文献4には、エポキシ官能性シラン、4官能性シラン、カルボン酸基と無水物基から得た多官能性化合物、を含む水−有機溶媒混合物から得た透明コーティング剤が開示されている。この特許はシロキサン組成物が、透明コーティングを形成するために基材に塗布されうるということについて開示しているが、シロキサン組成物は粒子のコーティング剤や修飾剤というよりも、むしろフィルム形成組成物として開示されている。この特許はナノ結晶粒子の使用や、そのような粒子の表面処理について述べていない。
【0010】
無機あるいは有機微粒子は、吸着、イオン交換、共有結合によって修飾される。吸着やイオン交換による表面修飾には、粒子表面が適当な化学的性質を有していることが必要である。無機粒子への共有結合を可能にする反応は、一般的に水酸基性表面上での反応を必要とする。
【0011】
無機粒子は、グラフト重合やカプセル化によって被覆することができる。無機粉末は浮遊粉末の存在下での粉末の析出や、粉末を含むポリマー溶液の噴霧乾燥によって被覆することができる。しかし、これらの簡便な方法は、不均一な被覆と被覆された凝集物の形成を生じさせる。
【特許文献1】米国特許5853809号
【特許文献2】米国特許5993967号
【特許文献3】米国特許6033781号
【特許文献4】米国特許6001163号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
改良された硬さ、耐スクラッチ性、耐摩耗性、光学的透明性を有する透明フィルムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
架橋性樹脂の中に分散された表面処理されたナノ結晶粒子を含む、フィルム形成組成物を作るための方法が提供される。その方法は、媒体に、セラミックと金属からなる群から選択されるナノ結晶粒子を添加する工程を含む。それから、ナノ結晶粒子と媒体は分散物を形成するために混合される。表面処理液は、ナノ結晶分散物に添加される。この表面処理液は、1もしくはそれ以上のシロキサン種を含み、ナノ結晶分散物は、この1もしくはそれ以上のシロキサン種が、複数の粒子の少なくともいくつかの表面に配されるように、表面処理液と混合される。その結果、表面処理されたナノ結晶粒子が得られる。次いで、この表面処理されたナノ結晶粒子が、フィルム形成組成物を作るための架橋性樹脂に付加される。これにより、架橋性フィルム形成組成物が作られる。
【0014】
もう一つの側面として、フィルム形成組成物が提供される。フィルム形成組成物は、架橋性樹脂と、架橋性樹脂中に分散された、表面処理された複数のナノ結晶粒子を含む。表面処理されたナノ結晶粒子は、ナノ結晶粒子と、複数の粒子の少なくともいくつかの表面に配された少なくとも1種のシロキサン種を含む。ナノ結晶粒子はセラミックと金属からなる群から選択される。また、フィルム形成組成物は、公知の方法によって作られる。
【0015】
さらに、透明で耐摩耗性のフィルムを、フィルム形成組成物から形成する方法が提供される。このようなフィルムは、フィルム形成組成物を基材に塗布することによって作られ、基材上に、実質的に透明で耐摩耗性のフィルムが、フィルム形成組成物から作られる。組成物と樹脂からフィルムを形成するために、いかなる適当な手段をも用いることができる。フィルム形成組成物は、基材に約2mil(ミル)未満の厚さになるように塗布されるが、好ましくは約1mil(ミル)の厚さである。
【0016】
加えて、実質的に透明で、耐摩耗性のフィルムが提供される。フィルムは、架橋樹脂と、架橋樹脂中に分散された、複数の表面処理されたナノ結晶微粒子を含んでいる。
【0017】
上述した方法と組成物において、シロキサン種は好ましくは1またはそれ以上のシロキサンが主成分のポリマーを含み、さらに好ましくは1またはそれ以上のシロキサンスターグラフトコーティングポリマーを含む。
【発明の効果】
【0018】
改良されたフィルムは、表面処理されたナノ結晶粒子をその中に有する、架橋性樹脂から形成される。このようなフィルムは、表面処理されたナノ結晶粒子を含まない架橋性樹脂から形成されたフィルムと比べて、改良された硬さ、耐スクラッチ性、耐摩耗性を示す。また、これらのフィルムは、平均粒径が大きい、あるいはナノ結晶粒子より結晶性が低い、無機粒子を含む架橋性樹脂から形成されるフィルムと比べて、改良された光学的透明性も示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
まず図1を見ると、本発明の、実質的に透明で耐摩耗性のフィルムと、そのようなフィルムを作るのに適したフィルム形成組成物を作るための方法の具体的な流れ図が示されている。
【0020】
第一の段階として、ナノ結晶粒子の分散を生じさせる適切な方法により、ナノ結晶粒子が適当な媒体と混合される。このとき、ナノ結晶粒子には凝集がない。分散物を調整するために適切な混合技術として、撹拌、高剪断混合、超音波振動、メディアミル中での混合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
「ナノ結晶粒子」とは、平均粒子直径が約100ナノメーター未満であり、バルク相がノンポーラスな結晶格子からなる材料をいう。ナノ結晶粒子としては、セラミック(金属酸化物、混合金属酸化物、非金属酸化物等)や金属が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくはナノ結晶粒子は、アルミニウム、チタン、亜鉛、セリウム、スズ、アンチモン、インジウム、鉄、ストロンチウム、バリウム、イットリウムから選ばれる金属の酸化物、混合酸化物、これらの酸化物のいくつかからなる化合物や混合物、からなる群から選択される材料を含む。「混合酸化物」とは、酸素に付加する元素をもう1種以上有する酸化物である。さらに好ましくは、ナノ結晶粒子はアルミニウム、チタン、亜鉛、セリウムから選ばれる金属の酸化物、それらの混合酸化物、またはこれら酸化物の化合物もしくは混合物、からなる群から選択される材料からなる。ここで使っているように、「セラミック」という言葉は、金属酸化物のことであり、これらに限定されるものではないが、例えば、二酸化チタン(TiO、チタニア)、アルミナ(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉄類(γ−Fe(茶色)、α−Fe(赤色)、酸化第一鉄(Fe(茶色)、マグネタイト))、混合金属酸化物等があげられる。また、金属酸化物ほどではないが、二酸化ケイ素(SiO、シリカ)等の非金属酸化物も好ましい。セラミックは結晶であるため、本発明においては、コロイダルシリカはセラミックと異なる。
【0022】
好ましい方法では、ナノ結晶粒子はTiO、Al、ZnO、Fe、SiOである。ナノ結晶粒子がTiOの場合、ナノ結晶粒子は、好ましくはTiO粉末に表面欠陥を与えるためにさらにAl3+中心を含むのがよい。これによって、処理されたTiO粉末を光不活性にすることができる。
【0023】
あるいは、分散物が作られるとき、必要に応じて、TiO粉末を含む反応容器中に、TiO粉末に表面欠陥を導入するため、アルミニウムトリ−sec−ブトキシドをさらに添加することができる。これによって、被覆されたTiO粉末を光不活性にすることができる。
【0024】
分散物は、平均粒子直径100nm未満のナノ結晶粒子100%、もしくは90%からなる。本発明においては、粒子が完全な球状の形でなくても、光散乱、気体吸着、または他の適当な技術を用いた粒子サイズ測定装置によって出された平均等球径を、平均粒子径とみなせばよい。実際、このような粒子サイズ測定装置は、本発明のようなアスペクト比が比較的大きい材料の平均粒子径を測定するのに適している。
【0025】
ナノ微粒子分散物の媒体は、ナノ結晶粒子を分散した状態にしておけるものならどのようなものでもよい。そのような媒体は当業者に公知である。媒体は、表面処理液の溶媒と単一の相を形成する必要がある。ナノ結晶粒子分散物を含ませるのに適した媒体は、水、炭化水素の他、アルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、エポキシド、及びこれらの混合物等の少なくとも一つの酸素原子を含む炭化水素類、少なくとも一つの窒素原子を含む炭化水素類、少なくとも一つの酸素原子と窒素原子を含む炭化水素類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、媒体は極性の液体であり、最も好ましくは水で
ある。
【0026】
分散物中のナノ結晶粒子の濃度は約0.1〜75質量%の範囲であり、好ましくは約1〜50%であり、最も好ましくは約5〜40質量%である。
【0027】
高濃度のナノ結晶粒子の分散物を得ることもでき、これは十分安定である。十分安定であるということは、粒子が容易に凝集、集合をせず、また実質的に化学活性がないということを意味する。言い換えれば、分散物中のナノ結晶粒子間で、実質的に潜在的な化学活性を有さない。
【0028】
表面処理溶液は、ナノ結晶粒子の表面処理のために用意される。表面処理液と塗布物は、ナノ結晶粒子と架橋樹脂との相溶性を改良する。表面処理液は、ナノ結晶粒子の表面に付着する、1またはそれ以上のシロキサン種を含む。好ましくは、シロキサン種はシロキサンを主成分とするポリマーであり、さらに好ましくは、シロキサンスターグラフトポリマーである。図2は、フラクタルなシロキサンスターグラフトポリマーの概略図である。その構造は2次元的に表されているが、実際は3次元構造である。
【0029】
表面処理液は、水、適切な触媒、適切な溶媒と共に、官能基を有する1またはそれ以上のシランを混合することによって作られる。シランの官能基は1またはそれ以上のヒドロキシル基もしくはアルコキシ基、または重合性の他の基を含む。表面処理液に有用なシランとして見いだしたものとしては、RSi(OR’)4−nタイプのものが挙げられる。ここで、RとR’はヒドロカルビル基であり、1またはそれ以上の他の置換基を有していても良い。他の置換基としては、アルキル、不飽和アルキル、芳香族、アルコール、アルデヒド、エステル、エポキシド、カルボン酸、エーテル、ケトン、アミン、スルホネート、チオール、ホスフィン、ホスフェート、シアネート、イソシアネート、フルオロ、クロロ、ブロモ、ピリジン基等が挙げられるが、これらに限定されない。nは0,1,2,3である。R’は好ましくはアルキル基である。好ましくは、表面処理液は、少なくとも4つのシランの組み合わせから作られ、その中のシランのうち少なくとも1つはnが0である群から選ばれるシランであり、少なくとも一つはnが1である群から選ばれるシランであり、少なくとも一つはnが2である群から選ばれるシランであり、少なくとも一つはnが3である群から選ばれるシランであるものである。さらに好ましくは、U.S.特許5993967号とU.S.特許6033781号に記載の表面処理組成物と表面処理方法が用いられる。
【0030】
表面処理液は、好ましくはシランモノマーを溶液中で反応させることにより形成した、シロキサンを主成分とするポリマーを含む。シロキサンを主成分とするポリマーは、ナノ結晶粒子の表面に配され、好ましくは、粒子を被包する。この場合、処理されたナノ結晶粒子は、複数のナノ結晶粒子と、少なくともいくつかの粒子を被包するコーティング剤、好ましくはシロキサンスターポリマーコーティン剤とを含む。シロキサンスターグラフトポリマーのコーティング剤は、好ましくは、4官能性と3官能性と2官能性と1官能性のシランモノマーの反応生成物からなる。ここで使用するw、x、y、zの文字は、それぞれ4官能性、3官能性、2官能性、1官能性のモノマー単位のモルパーセントを意味する。好ましくは、wは約20〜100であり、xは約0〜30であり、yは約0〜50であり、zは約0〜10であり、x、y、zのうち、少なくとも1つは0より大きいものである。本発明の方法と組成物において、シランモノマーを述べる際に使う「官能性」という言葉は、重合可能な基を意味し、例えば、これらに限定されるものではないが、アルコキシ、ハライド、シアノ、アミド基等が挙げられる。
【0031】
一般的に、Rがアルキル基の場合、「官能性」基とはみなさない。一般的に、重合にほとんど、あるいは全く影響されない基だからである。
【0032】
好ましい表面処理溶液は以下の成分の反応物であるシロキサンを主成分とするポリマーを含む。4官能性シランであるテトラエチルオルソシリケート;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1つの3官能性シラン;ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジクロロシラン、n−ヘキシルメチルジクロロシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、ネオフィルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1つの2官能性シラン;n−オクタデシルジメチルメトキシシラン、トリエチルシラノール、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも1つの1官能性シラン。
【0033】
表面処理液には、触媒を加えても良い。あるいは、触媒を表面処理液とナノ結晶分散物の混合物に添加しても良い。好適な触媒としては、無機酸、有機酸等が挙げられ、好ましくは無機酸であり、最も好ましくは塩酸である。
【0034】
表面処理液に使用される溶媒は、アルコール基を有し、ナノ結晶粒子を分散するのに用いた媒体と良く混合されるものがよい。好ましくは溶媒はメタノール、エタノール、あるいはこれらの混合物である。
【0035】
ナノ結晶粒子の分散物は、表面処理されたナノ結晶粒子を形成するために、表面処理液と混合される。理想的には、粒子は部分的に、あるいは全体的に、シロキサンで覆われる。ナノ結晶分散物に対する表面処理液の割合は、全粒子質量に対するシランもしくはシロキサンの質量パーセントで、約0.1〜50質量パーセントであり、好ましくは約0.5〜30質量パーセントであり、最も好ましくは約2〜20質量パーセントである。
【0036】
また、表面処理方法においては、イオン電荷の付与を含んでいてもよい。イオン電荷の種類としては、例えば、荷電粒子の懸濁液の他にも、有機酸や無機酸、塩基、塩等が使用されるが、これらに限定されるものではない。好ましくはイオン電荷は、硫酸水素ナトリウム(またはメタ重亜硫酸ナトリウム)として、または帯電したシリカ粒子のアルコール溶液として加えられる。加えられるイオン電荷の量は、全シランに1モルに対し、0〜10モルであり、好ましくは0〜2モルである。
【0037】
表面処理されたナノ結晶粒子は、架橋性樹脂と混合される。「架橋性樹脂」は、水または有機溶媒を主成分とした組成物の中で使用するのに適しているものであればいかなる架橋性樹脂でもよく、架橋能力のある樹脂を含む意味である。そのような架橋性樹脂の例としては、アクリル、アミノプラスト、ウレタン、カルバメート、カーボネート、ポリエステル、エポキシド、シリコーン、ポリアミド等が挙げられる。本発明の方法及び組成物においては、好ましい樹脂はメラミンのようなアミノプラスト、ホルムアルデヒド、ウレタン、カルバメート、カーボネート、ポリエステル、シリコーン、ポリアミドであり、アミノプラストが特に好ましい。これらの樹脂は、例えば、ポリエステルアミド、ウレタンアクリレート、カルバメートアクリレート等の特徴的な1種以上の官能基を持っていても良い。架橋性樹脂と処理されたナノ結晶粒子の組み合わせは、実質的に透明で、耐摩耗性のフィルムを作るのに使用されるフィルム形成組成物を形成する。
【0038】
フィルム形成組成物は単一の連続層あるいは、不連続層を含むものであってもよい。例えば、フィルム形成組成物はエマルジョンであってもよい。同様に、架橋性樹脂は連続層であるか、不連続層の中に存在するものであったもよい。一般的には、処理されたナノ結晶粒子は、樹脂エマルジョンが調製される前に架橋性樹脂の中に分散される。
【0039】
必要ならば、一般的に知られる架橋剤を添加することもできる。架橋剤の選択は、架橋性樹脂との相性のような要素に依存する。架橋剤は、縮合反応、フリーラジカル付加反応、あるいはこれらのコンビネーションいずれによる樹脂の架橋にも使用される。架橋剤の例としては、ブロック化及び/または非ブロック化ジイソシアネート、ジエポキシド、アミノプラスト、フェノール/ホルムアルデヒド付加物、カルバメート、シロキサン基、環状カーボネート基、無水物基が挙げられる。
【0040】
処理されたナノ結晶粒子を含むように架橋性樹脂が調製された後、フィルムが架橋性樹脂から作られる。
【0041】
樹脂と混合する処理されたナノ結晶粒子の濃度は、約0.1〜50質量パーセントであり、好ましくは約1〜40質量パーセントであり、さらに好ましくは約5〜25質量パーセントである。これらの質量は処理されたナノ結晶粒子自体の質量により決定され、処理されたナノ結晶粒子分散物の質量を基準にするものではない。処理されたナノ結晶粒子が分散物中に添加されるとき、質量パーセントは粒子に基づき決定される。
【0042】
表面処理のためのシロキサンを主成分とするポリマーの作成において、w、x、y、zの文字は、それぞれシロキサンを主成分とするポリマーを作成する際に使用される、4官能性、3官能性、2官能性、1官能性のシランモノマーのモルパーセントを意味する。シロキサンを主成分とするポリマーの作成におけるw、x、y、zの値は、それぞれ約20〜100、約0〜30、約0〜50、約0〜10の範囲であり、または、それぞれ約45〜75、約5〜25、約5〜45、約5〜10である。これらのモルパーセントはおおよその値であり、本発明から逸脱することなく変更しても良い。シロキサン骨格のフラクタルな特性と化学的特性を制御するために、様々な組み合わせが使用された。すなわち、コーティング分子の特定の希釈剤を使用して熱力学的適合性の程度を制御するためである。置換基の化学的同一性も様々に変えることができる。同様に、トータルのシリコンのモルに対する水のトータルモル比も、1から6まで変えられ、また重合媒体の酸特性も広く変えられた。表面処理液を形成するために用いられるモノマーの例は、表1に挙げられれているが、これらに限定されるものではない。
【0043】
【表1】

【0044】
A.表面処理液のためのシロキサンを主成分とするポリマー合成のための一般的手順
以下は、表面処理液のためのシロキサンを主成分とするポリマー合成のための一般的手順である。
(1)乾燥窒素を充填した反応容器の中へ以下の薬品を加え、撹拌する。
(a)61mlの無水エタノール(Aldrich#27764.9もしくは同等品);
(b)43.04mlのテトラヒドロオルソシリケート(TEOS、分子量208.33、Aldrich#33385−9、もしくは同等品);
(c)15.45mlのn−オクタデシル−トリメチルオキシシラン(n−ODTMS、分子量374.68、Petrach#09780もしくは同等品);
(d)3.84mlのジフェニルジメトキシシラン(DPDMS、分子量244.36、Petrach#D6010もしくは同等品);
(e)2.15mlのトリメチルエトキシシラン(TMES、分子量118.25、Petrach#T2970もしくは同等品);
(f)3.67mlの脱イオン水;
(g)2.0mlの0.1N塩酸(VWRカタログNo.VW3200−1もしくは同等品);
(2)混合物を60℃で1.5時間加熱する。
(3)調整した溶液を5℃で保存しておく。
(4)使用する準備ができたら、必要量の水もしくは有機溶媒を加える。例えば、粘度を減らしたり、ポリマーによって粒子を被覆するのに適当にするために、水もしくは有機溶媒を十分に加えるのが好ましい。表面処理液中のシロキサンを主成分とするポリマーの濃度を減らすことにより、粒子表面を処理するための単位体積当たりのポリマーが少なくなる。低濃度は粒子全体を被覆したくないときに好ましい。
【0045】
B.処理されたナノ結晶微粒子のバッチ操作
以下は、高剪断混合で最適化された10ガロンバッチでの表面処理されたナノ結晶粒子の製法である。
(1)表面処理液の調整
(a)10Lの反応容器の中へ乾燥窒素を充填し、撹拌する。
(b)以下のものを添加:
1527mlの無水エタノール
1039mlのテトラエチルオルソシリケート
387mlのn−オクチルデシルトリメトキシシラン
156mlのジフェニルジメトキシシラン
81mlのトリメチルエトキシシラン
93mlの脱イオン水
50mlの0.1N塩酸
(c)60℃で1、5時間加熱する。
(d)5℃で保存しておく。
(e)使用する準備ができたら、必要量の水または有機溶媒を加える。
上記バッチ操作で作成された生成物は、約15質量%のシロキサンを主成分としたポリマーを含む。
(2)処理されたTiOポリマーの調整
(a)ウエット粉末;Al−アンダーコートの付与:
50Lの不活性化された容器にアルゴンを充填し、撹拌する。
20Lの適当な反応溶媒(例えば無水エタノール、エタノールおよび/またはイソプロパノール)と、5kgのTiO粉末を添加する。555mlの適当な反応溶媒(例えば無水エタノール、エタノールおよび/またはイソプロパノール等)、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド(ASTB)、そして約500mlのイソプロパノールを混合する。
アルゴン圧置換により、キャヌラーを用いて少量づつASTB溶液を加える。このASTB溶液の添加で、TiO粉末中にAl+3中心の表面欠陥が導入され、これにより粉末を光不活性に変えることができる。
(b)希釈;被覆粉末:
4Lの反応溶媒を添加する。7000rpmで30分間、高剪断混合する。コーティング反応が進むにつれて温度が上昇する;温度が50℃以上にいくようならば、冷却のために大スケールの反応が必要である。
3333mlの15質量%コーティングポリマーを添加する。7000rpmで30分間、高剪断混合する。
(c)分離と精製:
6Lの脱イオン水を加える。7000rpmで20分間、高剪断混合する。遠心沈殿法により集める。
(d)状況に応じて、操作(c)を繰り返すことにより洗浄する。
(e)状況に応じてウエットケーキを乾燥する。
(3)処理されたナノ結晶粒子分散物の調整:
乾燥粉末もしくはウエットケーキを、例えば1−メトキシ−2−プロパノールアセテートのような有機分散媒に添加する。
必要ならば反応溶媒を除く。
十分に混合する。
【0046】
C.具体例
以下の例は、本発明の方法と操作の具体的実施例を述べている。請求の範囲、あるいはその均等物に定義されるように、これらの具体例は本発明の範囲の限定を意図するものではない。
【0047】
例1
この例では、表面処理されたナノ結晶アルミナ粒子は、以下の方法により調整される。250gの分量のナノ結晶アルミナ粒子(BETによる表面積35m/g)は、十分に脱イオン化された水と混合され、35質量%のスラリーとなった。その後、ローター/ステーターミキサーで30分、4500rpmの高剪断混合され、さらに30分超音波処理された。スラリーは30分静置された後、デカントされ、上澄みは2500rpmで20分間遠心分離された。遠心分離段階で回収した上澄みは、ナノ結晶アルミナ粒子の水分散物を含み、少なくとも粒子の90%以上が平均直径が100ナノメーター未満であった。このナノ結晶粒子分散物は、ここでは分散物A1と呼ぶ。
【0048】
表面処理液は、8.305gのテトラエチルオルソシリケート、11.782gの(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、1.218gのジフェニルジメトキシシラン、0.589gのトリメチルエトキシシラン、15.905gの無水エタノール、0.661gの0.1N塩酸、1.458gの脱イオン水をフラスコの中で混合し、アルゴン雰囲気下、1.5時間、60℃で加熱する。その後、室温まで冷却されたものを溶液Bと表す。
【0049】
溶液Bは分散物A1に添加され、その混合物は45分間3500rpmで高剪断混合される。これによりできたものを分散物C1とする。高剪断混合に続き、分散物C1は、4.737gのメタ重亜硫酸ナトリウムの6.000gの脱イオン水が溶解物が添加される間、メカニカルパドル/ブレードミキサーにより高速撹拌される。できた生成物は、分散物D1と表す。
【0050】
62.5gの分量のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂(50質量%ポリマー)の水溶液に、19.841gの分散物D1が添加され、混合物は5分間メディアミルで混合される。出来た生成物は混合物1と表す。混合物1の不揮発性成分中のアルミナ含量は20質量%であった。
【0051】
混合物1の1ミルフィルムをガラス板に塗布し、165℃で10分間硬化させた。実質的に透明で、耐摩耗性のフィルムが形成された。フィルムの透明性と硬さは、表2と表3に示す。パーセントヘイズは0.65%であり、鉛筆硬度はB(50g)と2B(100g)であった。
【0052】
例2(比較例)
アルミナ粒子を含まないメラミン−ホルムアルデヒド樹脂(50質量%ポリマー)の1ミルフィルムをガラス板に塗布し、165℃で10分間硬化させた。フィルムの透明性と硬さは、表2と表3に示す。パーセントヘイズは0.45%であり、鉛筆硬度は6B(50g)と<6B(100g)であった。これは、例1のフィルムに比べて、ナノ結晶粒子を有さない樹脂から作られたフィルムが同程度のヘイズ値を持つ一方、鉛筆硬度試験により測定されたように、相当柔らかいことを示している。
【0053】
例3(比較例)
250gの分量の溶融アルミナ粒子(平均直径25μm)を十分な脱イオン水と混合し、35質量%のスラリーを作った。これを分散物3Aとする。これらのアルミナ粒子は粒子サイズが大きく、ナノ結晶粒子でない点で、例1で使用された粒子と異なる。
【0054】
8.305gのテトラエチルオルソシリケート、11.782gの3−(グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、1.218gのジフェニルジメトキシシラン、0.589gのトリメチルエトキシシラン、15.905gの無水エタノール、0.661gの0.1N塩酸1.458gの脱イオン水をフラスコの中で、混合し、アルゴン雰囲気下、1.5時間、60℃で加熱する。その後、室温まで冷却されたものを溶液Bと表す。
【0055】
5.07gの溶液Bは分散物A3に添加され、その混合物は45分間3500rpmで高剪断混合される。これによりできたものを分散物C3とする。
【0056】
125gの分量のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂水溶液(50質量%ポリマー)へ、44.643gの分散物C3が添加され、その混合物はメディアミルで5分間混合される。これを混合物B3とする。混合物B3の不揮発性分中のアルミナ含量は、10質量%であった。
【0057】
混合物3の1ミルフィルムをガラス板に塗布し、165℃で10分間硬化させた。フィルムのヘイズは14.6%であり、例3のフィルムは例1のフィルムの2分の1の量のアルミナしか含んでいないにもかかわらず、これはかなり例1よりも高い値であった。
【0058】
例4(比較例)
25μmの直径のアルミナ粒子の代わりに、平均粒子直径が60μmの溶融アルミナを使用したことを除いては、例3で述べたのと同様の方法で混合物4を得、これに2.247gの溶液Bを加えて分散物A4とする。これらのアルミナ粒子も粒子サイズが大きいためナノ結晶粒子ではない。混合物4の不揮発性分中のアルミナ含量は10質量%であった。混合物4の1ミルフィルムをガラス板に塗布し、165℃で10分間硬化させた。このフィルムの%ヘイズは14.4%であった。例4のフィルムは例1のフィルムの2分の1の量のアルミナしか含んでいないにもかかわらず、これはかなり例1よりも高い値であった。
【0059】
ホルムアルデヒド−メラミン架橋性樹脂中に表面処理されたナノ結晶アルミナ粒子を混合したものからなる、フィルム形成組成物から作成されたフィルムの透明性は、ガラス板上にキュアされたフィルムのパーセントヘイズを測定し、ニートのホルムアルデヒド−メラミン樹脂から作られたフィルムのパーセントヘイズと比較した。
【0060】
ホルムアルデヒド−メラミン架橋性樹脂中に表面処理されたナノ結晶アルミナ粒子を混合したものからなる、フィルム形成組成物から作成されたフィルムの硬さは、鉛筆試験(ASTM D3363)により評価し、ニートのホルムアルデヒド−メラミン樹脂から作られたフィルムと比較した。鉛筆試験では、硬さはテスト荷重における傷の出だしにより決定された。鉛筆の芯の硬度に換算された鉛筆試験のスケールを以下に示す。隣接する鉛筆の芯の間の違いは、硬度の一単位として定義される。この試験の結果は、20質量%の被覆され、帯電されたナノ結晶アルミナ粒子を含むフィルムが、少なくとも5単位分、このような粒子を含んでいないフィルムに比べて固いということを示している。硬度のスケールは以下の値からなる。柔らかい方から固い方へ並べると:6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6Hである。
【0061】
樹脂は、ガラス板へ1ミルの厚さで塗布され、硬化フィルムの厚さは9.6μmである。
【0062】
表2は、4つの例すべてのパーセントヘイズを示している。表2の最初の列はフィルムを形成するのに使った材料を述べている。2番目の列は、被覆された/帯電したアルミナについて、質量パーセントで表している。3番目の列は、添加された粒子のテスト荷重をグラムで表している。4番目の列は、パーセントヘイズを表している。表2に示すように、本発明の表面処理されたナノ結晶粒子を含む組成物で形成されたフィルムが、14%以下のパーセントヘイズをもつ、粒子が添加された唯一のフィルム(言い換えれば、ニートの樹脂から作られたフィルム以外の唯一のフィルム)であった。実際、例1はパーセントヘイズが1%未満であり、かなりの改善となっている。
【0063】
【表2】

【0064】
表3のカラム1は、フィルムを形成するために使われた架橋性材料である。カラム2は、被覆された/帯電したアルミナについて、質量パーセントで表している。カラム3は、テスト荷重をグラムで表している。カラム4は、ASTM D3363によって測定された、鉛筆の芯番号で表現された硬度である。カラム5は、観察結果である。
【0065】
【表3】

【0066】
その結果、実験より、表面処理されたナノ結晶粒子が、このような粒子を含む架橋性樹脂から形成されたフィルムの耐摩耗性と硬度を改良し、また、特にミクロン範囲の粒子を同等、あるいはそれ以上の濃度含む架橋性樹脂と比べた際に、透明性と光学特性を改良することが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】フィルム形成組成物と、透明で耐摩耗性のフィルムの製法の具体的な流れ図である。
【図2】フラクタルなシロキサンスターグラフトポリマーの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性樹脂中に表面処理されたナノ結晶粒子が分散されたフィルム形成組成物から、実質的に透明で、耐摩耗性であるフィルムを製造する、以下のステップを含む製造方法。
(a)媒体に、セラミックと金属からなる群から選択される、ナノ結晶粒子を添加する工程;
(b)分散物を形成するために非凝集状態のナノ結晶粒子と媒体を混合する工程;
(c)ナノ結晶分散物に、1もしくはそれ以上のシロキサン種を含む表面処理液を添加する工程;
(d)前記1もしくはそれ以上のシロキサン種が少なくとも前記粒子のいくつかの表面に配されることにより、少なくともいくつかの表面処理されたナノ結晶粒子を得るために、ナノ結晶粒子分散物を表面処理液と混合する工程;
(e)フィルム形成組成物を作るために、前記表面処理されたナノ結晶粒子を架橋性樹脂に添加する工程;
(f)基材に前記フィルム形成組成物を塗布する工程;
(g)前記基板上に、前記フィルム形成組成物から、実質に透明で、耐摩耗性フィルムを形成する工程。
【請求項2】
前記ナノ結晶粒子が、アルミニウム、チタン、亜鉛、セリウム、スズ、アンチモン、インジウム、鉄、ストロンチウム、バリウム、イットリウムから選ばれる元素の酸化物、前記元素のいくつかからなる混合酸化物、前記酸化物、混合酸化物のいくつかからなる化合物と混合物、からなる群から選ばれる材料を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ナノ結晶粒子が、アルミニウム、チタン、亜鉛、セリウム、スズから選ばれる元素の酸化物、前記元素のいくつかからなる混合酸化物、前記酸化物、混合酸化物のいくつかからなる化合物と混合物、からなる群から選ばれる材料を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ナノ結晶分散物が、ナノ結晶粒子を、0.1質量%〜75質量%の範囲の濃度で有していることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ナノ結晶分散物が、ナノ結晶粒子を、1質量%〜50質量%の範囲の濃度で有していることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ナノ結晶分散物が、ナノ結晶粒子を、5質量%〜40質量%の範囲の濃度で有していることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記フィルム形成組成物が、基材に2ミル未満の厚さで塗布されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記フィルム形成組成物が、基材に1ミルの厚さで塗布されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記表面処理液が、式Iで定義される1またはそれ以上のシランモノマーから作られたものであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。ここで、式IはRSi(OR’)4−nであり、Rは、任意に1もしくはそれ以上の置換基を含むヒドロカルビル基であり、R’は、任意に1もしくはそれ以上の置換基を含むヒドロカルビル基であり、nは0、1、2、3のいずれかである。
【請求項10】
前記表面処理液が、シロキサンスターグラフトポリマーを含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
透明かつ耐摩耗性のフィルムを形成するのに適しているとともに、架橋性樹脂中に分散された表面処理されたナノ結晶粒子を含んでいる、フィルム形成組成物を製造する下記ステップからなる方法。
(a)媒体に、セラミックと金属からなる群から選択される、ナノ結晶粒子を添加する工程;
(b)分散物を形成するために非凝集状態のナノ結晶粒子と媒体を混合する工程;
(c)ナノ結晶分散物に、少なくとも1つのシロキサン種を含む表面処理液を添加する工程;
(d)前記少なくとも1つのシロキサン種が前記多数の粒子の少なくともいくつかの表面に配されることにより、少なくともいくつかの表面処理されたナノ結晶粒子を得るために、ナノ結晶粒子分散物を表面処理液と混合する工程;
(e)フィルム形成組成物を作るために、前記表面処理されたナノ結晶粒子を架橋性樹脂に添加する工程。
【請求項12】
前記ナノ結晶粒子と媒体が、撹拌、高剪断混合、超音波振動、メディアミル混合から選択される方法により混合されることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ナノ結晶分散物が、ナノ結晶粒子を1質量%から50質量%の範囲の濃度で有することを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
架橋性樹脂と、前記架橋樹脂中に非凝集状態で分散された多数の表面処理されたナノ結晶粒子を含む、フィルム形成組成物。ここで、前記表面処理されたナノ結晶粒子は、ナノ結晶粒子と、前記複数の粒子の少なくともいくつかの表面に配された少なくとも1つのシロキサン種とを含み、前記ナノ結晶粒子はセラミックと金属からなる群から選択されるものである。
【請求項15】
前記シロキサン種がシロキサンを主成分とするポリマーを含むことを特徴とする請求項14に記載のフィルム形成組成物。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−283030(P2006−283030A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−129001(P2006−129001)
【出願日】平成18年5月8日(2006.5.8)
【分割の表示】特願2002−547200(P2002−547200)の分割
【原出願日】平成13年11月27日(2001.11.27)
【出願人】(503194691)ナノフェイズ テクノロジーズ コーポレイション (4)
【氏名又は名称原語表記】NANOPHASE TECHNOLOGIES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】1319 Marquette Drive, Romeoville, IL 60446, United States of America
【Fターム(参考)】