説明

表面処理ポリイミドフィルムの製法

【課題】 本発明は、製造途中においてフィルム表面の塗工ムラ・塗工スジといった欠陥を早期に発見し、その結果を利用して塗工ムラ原因の特定、対策を取ることで、塗工ムラや塗工スジ発生の防止を行い、欠陥の無いポリイミドフィルムの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】 ポリイミド前駆体(a)溶液から得られる自己支持性フィルムの少なくとも片面に、表面処理剤を含む塗工液を塗布し、加熱イミド化して得られる表面処理ポリイミドフィルムの製法であり、塗布溶媒の乾燥工程と加熱炉との間で、シュリーレン法およびシャドーグラフ法から選択される方法により、塗布乾燥した自己支持性フィルムの表面処理剤の塗工部分の厚みムラを観察することを特徴とする表面処理ポリイミドフィルムの製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自己支持性フィルム表面を塗工法により表面処理して得られるポリイミドフィルムの製法に関するもので、安定した製品もしくは生産性を向上させたポリイミドフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルムは、熱的性質及び電気的性質が優れているため、電子機器類への用途に広く使用されている。またポリイミドフィルムは要求される性能に応じて表面改質されて使用されている。
フィルムの検査法として、特許文献1には、防眩フィルム等の検査対象フィルムを照明光で照らし検査員がフィルムのムラなどを目視で観察する目視検査用観察装置を目的として、検査対象フィルムの目視検査用観察装置において、前記検査対象フィルムを曲面状態で支持する曲面支持手段と、曲面状態で支持された前記検査対象フィルムを照明する光源とを備えることを特徴とするフィルムの目視検査用観察装置が開示されている。
また特許文献2には、フィルムの評価方法およびその評価結果に基づくスリットフィルムの品質管理方法に関し、詳しくはフィルムに存在する欠陥の幅方向の位置を高精度でかつ簡便に特定できるフィルムの評価方法、およびその評価結果に基づいてスリットフィルムの品質を管理する方法を目的として、フィルムの欠陥を検出することにより前記フィルムを評価する方法において、(1)前記フィルムの一方の面側に光源を配置するとともに、他方の面側にCCDカメラを配置することにより、前記フィルムの欠陥検出部を形成し、(2)前記欠陥検出部にゲージを設置し、そのゲージラインを所定位置に固定したCCDカメラを用いて撮影し、前記ゲージラインとCCD素子との位置関係に係る情報を前記コンピュータに記録し、(3)前記ゲージを除去した後前記欠陥検出部にフィルムを走行させ、前記CCDカメラを用いて欠陥を撮影し、その情報を前記コンピュータに記録し、(4)前記コンピュータに記録した 前記ゲージラインと前記CCD素子との位置関係に係る情報および前記欠陥に係る情報に基づいて、前記欠陥のフィルム幅方向の位置を特定することを特徴とするフィルムの評価方法が開示されている。
【0003】
また、シュリーレン法を用いたフィルムの製法としては、
特許文献3には、検査用透明板の光透過特性の均質度を、シュリーレン光学系を用いることによって、高精度に効率よく求め評価することのできる装置および方法の提供を課題として、シュリーレン光学系で得られる可視化像を撮像手段によって読み取り、得られた画像データに低周波数成分除去処理を施した後、検査領域の画像データの平均値を求め評価値とすることによって前記課題を解決する方法が開示され、
特許文献4には、デジタル写真プリンタの入力機において、シュリーレン光学系を利用した簡易な装置でフィルムの傷を検出することを目的として、光源と、該光源から発せられた光を平行光束に変換してフィルムを透過させる手段と、前記フィルムの画像部分を透過した前記平行光束を微小面積のマスクに集束させる手段と、前記マスクの背後に配置された撮影手段と、該撮影手段によって撮影された画像を処理する手段と、を備えていることを特徴とするフィルム傷検出装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−250551号公報
【特許文献2】特開2002−228429号公報
【特許文献3】特開2001−183309号公報
【特許文献4】特開2000−275188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリイミドフィルムは使用する目的に応じて表面処理されて使用される場合がある。ポリイミドフィルムの表面処理方法として、自己支持性フィルムの表面に表面処理剤を塗工する方法が用いられている。自己支持性フィルムの表面に表面処理剤を塗工する場合、様々な要因により塗工ムラが発生する場合がある。そのためポリイミドフィルムの表面処理剤の処理状況を確認するため、一般的には得られたポリイミドフィルムの一部を切り取り、目視外観検査や接着性・ぬれ性などの表面特性を評価することで行われ、全面の塗工状況を確認することは非常に手間がかかりかつ生産性が低下するために困難である。さらに表面処理剤の塗工ムラや塗工スジが発生すると一部もしくは全量廃棄することになり廃棄物が増える原因になる。
そのため塗工欠陥による製品不良発生の抑制、塗工欠陥製品の廃棄による産業廃棄物発生の抑制および無駄なエネルギー消費の抑制などを行う観点から、製造途中においてフィルム表面の塗工ムラ・塗工スジといった欠陥を早期に発見し、その結果を利用して塗工ムラ原因の特定、対策を取ることで、塗工ムラや塗工スジ発生の防止を行い、欠陥の無いポリイミドフィルムの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一は、ポリイミド前駆体(a)溶液を支持体上にキャストして乾燥し、支持体より剥がして得られる自己支持性フィルムの少なくとも片面に、表面処理剤を含む塗工液を塗布し、さらにその塗布した自己支持性フィルムを加熱炉に入れて加熱イミド化して得られる表面処理ポリイミドフィルムの製法であり、塗工装置と加熱炉との間に、塗布自己支持性フィルムの塗布溶媒の一部もしくは全部を除去するための乾燥工程を有し、塗布自己支持性フィルムの塗布溶媒を除去するための乾燥工程と加熱炉との間で、シュリーレン法およびシャドーグラフ法から選択される方法により、塗布して乾燥した自己支持性フィルムの表面処理剤の塗工部分の厚みムラを観察することを特徴とする表面処理ポリイミドフィルムの製法に関する。
本発明の第ニは、ポリイミド前駆体(a)溶液を支持体上にキャストして乾燥し、支持体より剥がして得られる自己支持性フィルムの少なくとも片面に、表面処理剤を含む塗工液を塗布し、さらにその塗布した自己支持性フィルムを加熱炉に入れて加熱してイミド化して、ロール状に巻き取り得られる表面処理ポリイミドフィルムの製法であり、加熱炉とロールに巻き取る間で、シュリーレン法およびシャドーグラフ法から選択される方法により表面処理剤の塗工部分の厚みムラを観察することを特徴とする表面処理ポリイミドフィルムの製法に関する。
【0007】
本発明の第一もしくは第二の表面処理ポリイミドフィルムの製法の好ましい態様を以下に示す。これら態様は複数組み合わせることができる。
1)表面処理剤の塗工部分の塗工ムラや塗工スジの測定結果を利用して、表面処理剤の塗工液の塗布方法を制御すること、制御する塗工液の塗布方法の制御が、塗工する自己支持性フィルムの走行速度を制御すること、塗工装置の塗工液の幅方向の一部もしくは全部の塗布量を制御すること。
塗工方法を制御することにより、塗工不良による塗工ムラや塗工スジ発生の抑制、塗工不良の発生した製品の廃棄による産業廃棄物発生の抑制および無駄なエネルギー消費の抑制などを行うことができる。
2)表面処理剤が、ポリイミド前駆体(b)、シランカップリング剤、ボランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤、鉄カップリング剤、銅カップリング剤などのカップリング剤または、アルミニウムキレート剤などのキレート剤であること。
【0008】
なお、本発明では、表面処理剤を塗布するための自己支持性フィルムを与えるポリイミド前駆体をポリイミド前駆体(a)とし、該ポリイミド前駆体(a)をイミド化して得られるポリイミドをポリイミド(a)とする。
【0009】
前記のポリイミド前駆体(b)塗工液は、前記自己支持性フィルムに塗布する表面処理剤である。該ポリイミド前駆体(b)の種類は、前記ポリイミド前駆体(a)と同一もしくは異なる種類のポリイミド前駆体であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、シュリーレン法およびシャドーグラフ法から選択される方法により、ポリイミドフィルム製造ラインで塗工液を塗布して乾燥した後もしくは加熱してイミド化後直ぐに、フィルム表面の塗工ムラや塗工スジといった不良部分を観察するため、フィルム表面の塗工による不良部分について、早期に発見することができる。
更に、前記の結果を利用して塗工する自己支持性フィルムの走行速度を制御すること、塗工部分の塗工液の幅方向の一部もしくは全部の塗布量を制御することで、塗工ムラや塗工スジ発生の抑制、塗工ムラの発生した製品の廃棄による産業廃棄物発生の抑制および無駄なエネルギー消費の抑制などを行う事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第一の表面処理ポリイミドフィルムの製法の工程の一例を説明する。
(A−1)ポリイミド前駆体(a)溶液をエンドレスベルトなどの支持体上にキャストして乾燥し、フィルムを支持体より剥がして自己支持性フィルムを得る工程。
(A−2)自己支持性フィルムの片面もしくは両面に、表面処理剤を含む塗工液を塗布して塗布の自己支持性フィルムを得る工程。
(A−3)必要に応じて塗布した自己支持性フィルムより塗布溶媒の一部もしくは全部を乾燥し除去して塗布して乾燥した自己支持性フィルムを得る工程。
(A−4)シュリーレン法およびシャドーグラフ法から選択される方法により、塗布して乾燥した自己支持性フィルムの表面部分の表面処理剤の塗工部分の塗工過剰、塗工不足、塗工ムラ、塗工スジ、微細な傷といった不良部分を観察する工程。
(A−5)塗布して乾燥した自己支持性フィルムの表面部分の表面処理剤の塗工不良の有無を判断する工程。
(A−6)塗布の自己支持性フィルムあるいは塗布して乾燥した自己支持性フィルムの表面部分の表面処理剤の塗工不良部分の観察後、加熱炉に入れて加熱してイミド化を行う工程。
(A−7)加熱してイミド化したポリイミドフィルムをロール状に巻き取り、表面処理ポリイミドフィルムを得る工程など、である。
上記工程は、逐次に又は連続して行うことができる。
【0012】
本発明の第ニの表面処理ポリイミドフィルムの製法の工程の一例を説明する。
(B−1)ポリイミド前駆体(a)溶液を支持体上にキャストして乾燥し、フィルムを支持体より剥がして自己支持性フィルムを得る工程。
(B−2)自己支持性フィルムの片面もしくは両面に、表面処理剤を含む塗工液を塗布して塗布の自己支持性フィルムを得る工程。
(B−3)必要に応じて塗布の自己支持性フィルムより塗布溶媒の一部もしくは全部を乾燥し除去し塗布して乾燥した自己支持性フィルムを得る工程。
(B−4)塗布の自己支持性フィルムあるいは塗布して乾燥した自己支持性フィルムを加熱してイミド化して表面処理ポリイミドフィルムを得る工程。
(B−5)シュリーレン法およびシャドーグラフ法から選択される方法により、表面処理ポリイミドフィルムの表面部分の表面処理剤の塗工部分の塗工過剰、塗工不足、塗工ムラや塗工スジ、微細な傷といった不良部分を観察する工程。
(B−6)表面処理ポリイミドフィルムの表面処理剤の塗工不良の有無を判断する工程。
(B−7)表面処理ポリイミドフィルムをロールに巻き取り、ロール状の表面処理ポリイミドフィルムを得る工程など、である。
上記工程は、逐次に又は連続して行うことができる。
【0013】
前記(A−5)工程または(B−6)工程での評価の結果、塗工過剰、塗工不足、塗工ムラ、塗工スジ、微細な傷が無い場合は、(A−7)工程または(B−7)工程でロールに巻き取る。
【0014】
また前記(A−5)工程または(B−6)工程での評価の結果、塗工処理された自己支持性フィルムまたは、表面処理ポリイミドフィルムの表面処理剤の塗工過剰、塗工不足、塗工ムラ、塗工スジ、微細な傷が確認できた場合、観察結果を利用して、前記(A−2)工程または(B−2)工程で、塗工装置の塗工液の幅方向の一部もしくは全部の塗布量の調整及び/又は塗工する自己支持フィルムの走行速度の調整などを行い、塗工ムラや塗工スジの発生などの塗工不良の発生を抑制又は無くする。
もしくは、傷発生原因の特定を行い、ローラーの交換他の対処を行うことで微細な傷の発生を抑制又は無くする。
【0015】
表面処理剤の塗工不良な部分については、(A−7)工程または(B−7)工程で、加熱イミド化の後、不良部分にマーキングを行い巻き取ることもできる。その後ロール状に巻き取ったロール状の表面処理ポリイミドフィルムのマーキング部分をカットし、ロール状の表面処理ポリイミドフィルムから塗工不良の部分を取り除くことが好ましい。
【0016】
なお、塗工ムラとは、塗工処理される自己支持性フィルムに塗工液が不均一もしくは一部塗布されていないことを意味し、塗工スジとは、塗工処理される自己支持性フィルムに塗工液が局所的に不均一になり、スジ状に見えることを意味する。
【0017】
(A−4)工程または(B−5)工程でのフィルムの表面の塗工不良な部分を観察するシュリーレン法およびシャドーグラフ法について説明する。
本発明では、市販のシュリーレン可視化装置及びシャドーグラフ可視化装置を用いて、公知のシュリーレン法およびシャドーグラフ法により、塗工処理されたフィルムの表面状態を観察することができる。なお、シュリーレン可視化装置の原理であるシュリーレン現象とは、透明物質中にある屈折率のわずかな変化を、受光部側で明暗の差として観察できる光学的現象のことである。シュリーレン可視化装置では、この現象を利用して、厚さや屈折率のわずかな違いをコントラストの違いとして可視化するため、従来の観察方法である、目視検査やCCDの画像解析などで見落とすようなポリイミドフィルムの表面塗工層の塗工ムラや塗工スジ、および微細な傷を観察することができる。
【0018】
(A−2)工程または(B−2)工程で得られる自己支持性フィルム又は塗布して乾燥した自己支持性フィルムは、その加熱減量が20〜40質量%の範囲にあること、さらに加熱減量が20〜40質量%の範囲でかつイミド化率が8〜40%の範囲にあることが、自己支持性フィルムの力学的性質が十分となる。なお、前記の塗布して乾燥した自己支持性フィルムの加熱減量とは、測定対象のフィルムを420℃で20分間乾燥し、乾燥前の重量W1と乾燥後の重量W2とから数式1に従って算出した値である。
【0019】
【数1】

【0020】
(A−2)工程または(B−2)工程で自己支持性フィルムの片面もしくは両面に、塗布する塗工液に含まれる表面処理剤としては、ポリイミド前駆体(b)、シランカップリング剤、ボランカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、チタネートカップリング剤、鉄カップリング剤、銅カップリング剤などのカップリング剤、アルミニウムキレート剤などのキレート剤を使用することができる。
これらの表面処理剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記のポリイミド前駆体(b)の塗工液は、極性有機溶媒溶液のポリマー濃度が0.1〜5重量%程度であることが好ましい。また、塗工液にはそれ自体公知の添加剤、例えば必要量の無機充填材を加えてもよい。この添加剤の種類と量とは、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0022】
カップリング剤やキレート剤の表面処理液は、前記のカップリング剤やキレート剤を0.5〜50重量%含む低級アルコール、アミド系溶媒などの有機極性溶媒溶液として使用でき、目的に応じて選ぶことができる。
【0023】
前記のポリイミド前駆体(b)塗工液を塗布した自己支持性フィルムは、温度100〜180℃、好ましくは120〜150℃で1〜60分間、好ましくは5〜30分間乾燥し、塗布して乾燥した自己支持性フィルムとすることが好ましい。
【0024】
ポリイミド前駆体(b)塗工液または各種カップリング剤もしくはキレート剤またはポリイミド前駆体(b)を併用した塗工液の塗工厚さは、加熱乾燥イミド化後の塗布層の厚みが0.1〜10μmで自己支持性フィルムの厚みの半分以下であることが好ましい。
【0025】
各種カップリング剤やキレート剤を塗布した自己支持性フィルムは、温度10〜150℃、好ましくは80〜110℃で0.5〜100分間、好ましくは3〜20分間乾燥し、塗布して乾燥した自己支持性フィルムとすることが好ましい。
【0026】
各種カップリング剤やキレート剤のみの塗工厚さは加熱してイミド化後の塗工厚さで1〜600nm、好ましくは10〜300nmであることが好ましい。
【0027】
各種カップリング剤もしくはキレート剤またはポリイミド前駆体(b)を併用した塗工液を使用する場合、
ポリイミド前駆体(b)の塗工液と、カップリング剤もしくはキレート剤の塗工液とは、同時に或いは逐次に塗布することができ、例えば自己支持性フィルムにポリイミド前駆体(b)の塗工液を塗布し、乾燥し、その後カップリング剤もしくはキレート剤の塗工液を塗布し乾燥する、などを挙げることが出来る。
【0028】
表面処理剤を含む塗工液を自己支持性フィルムに塗布する方法は、公知の塗工方法を用いることができ、例えば、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などを挙げることが出来る。
【0029】
シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(アミノカルボニル)−γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−〔β−(フェニルアミノ)−エチル〕−γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピル−トリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン系や、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチル−トリメトキシシラン、γ−グリシリドキシプロピル−トリメトキシシランなどのエポキシシラン系が使用できる。
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等があげられる。
アルミニウム系キレート剤としては、アルミニウムモノエチルアセテートジイソプロピレート、アルミニウムジエチルアセテートモノイソプロピレート、アルミニウムトリアセチルアセトネート、アルミニウムトリエチルアセトアセテート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムブチレートなどの有機アルミニウム化合物があげられ、特に有機アルミニウム化合物としてはアルミニウムトリアセチルアセトナートを挙げることが出来る。
【0030】
ポリイミド前駆体(a)もしくはポリイミド前駆体(b)は、有機溶媒中で、略等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとをランダム重合またはブロック重合することによってポリイミド前駆体(a)もしくはポリイミド前駆体(b)を合成することができる。
また、予めどちらかの成分が過剰である2種類以上のポリイミド前駆体を合成しておき、各ポリイミド前駆体溶液を一緒にした後反応条件下で混合してもよい。このようにして得られたポリイミド前駆体(a)もしくはポリイミド前駆体(b)溶液はそのまま、もしくは必要であれば溶媒を除去または加えて、自己支持性フィルムの製造もしくは表面処理液に使用することができる。
【0031】
ポリイミド前駆体(a)もしくはポリイミド前駆体(b)を製造するための極性有機溶媒としては、ポリアミック酸などのポリイミド前駆体を溶液にて合成して溶解できる溶媒であれば公知のものを用いることが出来、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ポリイミド前駆体は、公知の方法で合成することができ、ランダム重合、ブロック重合、或いはあらかじめ複数のポリイミド前駆体溶液或いはポリイミド溶液を合成しておき、その複数の溶液を混合後反応条件下で混合して均一溶液とする、いずれの方法によっても達成される。
ポリアミック酸などのポリイミド前駆体の重合度は、ポリイミド前駆体を有機溶媒に溶解して、キャストが出来、自己支持フィルムが製造でき、加熱してイミド化することでフィルムが製造できる重合度であればよい。
【0033】
ポリイミド前駆体の溶媒溶液は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、有機溶媒中、約100℃以下、さらに80℃以下、さらに0〜60℃の温度で、特に20〜60℃の温度で、約0.2〜100時間反応させてポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体の溶媒溶液を製造することが出来、このポリアミック酸溶媒溶液をドープ液(キャスト液)として使用することができる。
【0034】
ポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体(a)又はポリイミド前駆体(b)の溶媒溶液の重合反応を実施するに際して、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度は、使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよく、有機極性溶媒中の全モノマーの濃度が、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは13〜25質量%、特に好ましくは16〜22質量%であることが好ましい。
ポリイミド前駆体(b)の溶媒溶液は上記濃度で合成したものを希釈して用いることができる。
【0035】
ポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体(a)の溶媒溶液の重合反応を実施するに際して、溶液粘度は、ポリイミド前駆体を有機溶媒に溶解して、キャストが出来、自己支持フィルムが製造でき、加熱してイミド化することでフィルムが製造できればよく、ポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体の溶媒溶液は、30℃で測定した回転粘度が、好ましくは500〜5000ポイズ、より好ましくは1000〜4000ポイズ、さらに好ましくは1500〜3000ポイズ、特に好ましくは1600〜2500ポイズのものであることが、このポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体の溶媒溶液を取り扱う作業性の面から好ましい。したがって、前記の重合反応は、生成するポリアミック酸溶媒溶液などのポリイミド前駆体の溶媒溶液が上記のような粘度を示す程度にまで実施することが望ましい。
【0036】
テトラカルボン酸二無水物の具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、p−ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、m−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス〔(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるテトラカルボン酸二無水物は、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
【0037】
ジアミンの具体例として、
1)1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエンなどのベンゼン核1つのジアミン、
2)4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、2,2’−ジメトキシベンジジン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシドなどのベンゼン核2つのジアミン、
3)1,3−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゼン、3,3’−ジアミノ−4−(4−フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジ(4−フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(3−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(4−アミノフェニル)イソプロピル〕ベンゼンなどのベンゼン核3つのジアミン、
4)3,3’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ケトン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔3−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔3−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなどのベンゼン核4つのジアミン、などを挙げることができる。これらは単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。用いるジアミンは、所望の特性などに応じて適宜選択することができる。
ポリイミド前駆体(a)もしくはポリイミド前駆体(b)としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとから製造されるものが好ましい。
【0038】
前記ポリイミド(a)の厚みは、目的に応じて適宜選択すればよく、好ましくは厚みが5〜200μmの範囲にあることが好ましい。
【0039】
ポリイミド前駆体(a)溶液の自己支持性フィルムは、ポリイミド前駆体(a)の有機溶媒溶液、もしくはこれにイミド化触媒、脱水助剤、有機リン含有化合物、無機微粒子などを加えたポリイミド前駆体(a)溶液組成物を支持体上にキャストし、自己支持性となる程度(通常のキュア工程前の段階を意味する)、例えば支持体上より剥離することができる程度であり、温度100〜180℃、好ましくは100〜160℃、さらに好ましくは100〜140℃で2〜60分間、好ましくは2〜30分間、より好ましくは2〜10分間、さらに好ましくは2〜5分間程度加熱して製造される。
【0040】
ポリイミド前駆体(a)溶液は、ポリイミド前駆体(a)を8〜30質量%程度、8〜25質量%程度含むものが好ましい。
【0041】
ポリイミド前駆体(b)塗工液は、必要であればイミド化触媒、有機リン化合物や無機微粒子を加えたものを使用することができる。
【0042】
支持体としては、公知の材料を用いることが出来るが、表面がステンレス材料からなるものが好ましく、ステンレスベルト、ステンレスのロールなどが使用される。
支持体の表面は、溶剤の薄膜が均一に形成できること、平滑なものが好ましい。
【0043】
イミド化触媒としては、置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物、該含窒素複素環化合物のN−オキシド化合物、置換もしくは非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物が挙げられ、特に1,2−ジメチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−イミダゾール、5−メチルベンズイミダゾールなどの低級アルキルイミダゾール、N−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどのベンズイミダゾール、イソキノリン、3,5−ジメチルピリジン、3,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、4−n−プロピルピリジンなどの置換ピリジンなどを好適に使用することができる。イミド化触媒の使用量は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01−2倍当量、特に0.02−1倍当量程度であることが好ましい。イミド化触媒を使用することによって、得られるポリイミドフィルムの物性、特に伸びや端裂抵抗が向上するので好ましい。
【0044】
有機リン含有化合物としては、例えば、モノカプロイルリン酸エステル、モノオクチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノミリスチルリン酸エステル、モノセチルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのモノリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのモノリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのモノリン酸エステル、ジカプロイルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、ジカプリルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジミリスチルリン酸エステル、ジセチルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのジリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのジリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのジリン酸エステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのジリン酸エステルなどのリン酸エステルや、これらリン酸エステルのアミンなどが挙げられる。アミンとしてはアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0045】
脱水助剤としては、公知のポリイミド前駆体をイミドにするための脱水を助けるものであればよく、例えばピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、イソキノリンなどを用いることが出来る。
【0046】
無機微粒子としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末を挙げることができる。これらの無機微粒子は二種以上を組合せて使用してもよい。これらの無機微粒子を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
【0047】
(A−6)工程または(B−5)工程で、塗布した自己支持性フィルムあるいは塗布して乾燥した自己支持性フィルムは、加熱処理により、イミド化を行い表面処理ポリイミドフィルムとする。
自己支持性フィルム、塗布の自己支持性フィルム及び塗布して乾燥した自己支持性フィルムのイミド化率は、IR(ATR)で測定し、塗布乾燥自己支持性フィルムとフルキュア品である表面処理ポリイミドフィルムとの振動帯ピーク面積の比を利用して、イミド化率を算出することができる。振動帯ピークとしては、イミドカルボニル基の対称伸縮振動帯やベンゼン環骨格伸縮振動帯などを利用する。またイミド化率測定に関し、特開平9−316199号公報に記載のカールフィッシャー水分計を用いる手法もある。
【0048】
自己支持性フィルム、塗布の自己支持性フィルム及び塗布して乾燥した自己支持性フィルムの加熱処理は、ピン式テンター、クリップ式テンター、金属などで固定して、加熱することが好ましい。
自己支持性フィルムの加熱処理は、目的に応じて温度及び時間を選択すればよく、例えばまず100℃から300℃未満の温度で1分〜60分間第一次加熱処理した後に、300℃から370℃未満の温度で1分〜60分間第二次加熱処理し、そして最高加熱温度350℃〜580℃の温度、好ましくは370〜550℃で1分〜30分間第三次加熱処理することが望ましい。上記加熱処理は、熱風炉、赤外線加熱炉などの公知の種々の装置を使用して行うことができる。
【0049】
本発明のポリイミドフィルムは、熱イミド化、化学イミド化、もしくは熱イミド化と化学イミド化とを併用した方法で製造することが出来る。
【0050】
本発明は、好適には、テトラカルボン酸二無水物100モル%中s−BPDAを70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上を成分として含むテトラカルボン酸二無水物と、ジアミン100モル%中p−PPDを70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上を成分として含むジアミン成分とから得られる、優れた耐熱性と高い寸法安定性を有し、またフィルム表面に他の材料を直接積層するにはその表面を塗工等により改質して使用する芳香族ポリイミドフィルムに適応することができる。
【0051】
本発明の製法により製造されるポリイミドフィルムは、電子・電気用などの基板、液晶ディスプレー用、有機エレクトロルミネッセンスディスプレー用、電子ペーパー用、太陽電池用などのベース基材、各種テープ基材などに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体(a)溶液を支持体上にキャストして乾燥し、支持体より剥がして得られる自己支持性フィルムの少なくとも片面に、表面処理剤を含む塗工液を塗布し、さらにその塗布した自己支持性フィルムを加熱炉に入れて加熱イミド化して得られる表面処理ポリイミドフィルムの製法であり、塗工装置と加熱炉との間に、塗布自己支持性フィルムの塗布溶媒の一部もしくは全部を除去するための乾燥工程を有し、塗布自己支持性フィルムの塗布溶媒を除去するための乾燥工程と加熱炉との間で、シュリーレン法およびシャドーグラフ法から選択される方法により、塗布して乾燥した自己支持性フィルムの表面処理剤の塗工部分の厚みムラを観察することを特徴とする表面処理ポリイミドフィルムの製法。
【請求項2】
ポリイミド前駆体(a)溶液を支持体上にキャストして乾燥し、支持体より剥がして得られる自己支持性フィルムの少なくとも片面に、表面処理剤を含む塗工液を塗布し、さらにその塗布した自己支持性フィルムを加熱炉に入れて加熱してイミド化して、ロール状に巻き取り得られる表面処理ポリイミドフィルムの製法であり、加熱炉とロールに巻き取る間で、シュリーレン法およびシャドーグラフ法から選択される方法により表面処理剤の塗工部分の厚みムラを観察することを特徴とする表面処理ポリイミドフィルムの製法。
【請求項3】
表面処理剤の塗工部分の厚みムラの観察結果を利用して、塗工部分の厚みが均一になるように、塗工する自己支持性フィルムの走行速度を制御するか、または塗工部分の塗工液の幅方向の一部もしくは全部の塗布量を制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面処理ポリイミドフィルムの製法。

【公開番号】特開2009−280694(P2009−280694A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134012(P2008−134012)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】