Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
表面処理剤、導電性モノマー含有組成物及びそれを用いた導電性高分子膜
説明

表面処理剤、導電性モノマー含有組成物及びそれを用いた導電性高分子膜

【課題】導電性高分子膜の密着性が向上する、特定の構造を有する表面処理剤、及びそれを含む導電性モノマー含有組成物並びに導電性高分子膜を提供する。
【解決手段】α−ヒドロキシカルボン酸を部分構造として有する下記一般式(1)で表される表面処理剤、それを含む導電性モノマー含有組成物及び導電性モノマー含有組成物を用いることによる密着性に優れる導電性高分子膜。


(式中、Arは、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基を有してもよいチエニル基又はフェニル基であり、Lは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基を表す。又、nは、0又は1を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な表面処理剤、それを含む導電性モノマー含有組成物及び該組成物を用いた導電性高分子膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロニクス材料を用いた電子デバイスの開発が活発化してきており、有機系材料を用いた透明導電性膜や固体電界コンデンサ等の分野で、一部実用化されてきている。しかし、例えば、固体電解コンデンサのように、アルミナ又は酸化タンタル等の金属酸化物表面に導電性のポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)やポリピロールをはじめとする有機系材料を塗布することで得られる導電性高分子被膜を含む電子デバイスは、より一層の基板に対する密着性の向上が求められている。密着性の低下は、導電性の低下や表面抵抗及び漏れ電流の増大をもたらす。
【0003】
このような背景から、従来、基板への導電性有機材料の密着性を向上させる技術として、アルコキシシラン及びシロキサン系材料(例えば、特許文献1,2参照)、ホスホン酸系材料(例えば、特許文献3参照)、芳香族ジカルボン酸系材料(例えば、特許文献4参照)を基板にあらかじめ塗布する若しくは同時に添加して導電性膜を作製する技術が報告されている。又、密着性改善のため、PEDOT骨格中に水酸基等の親水基を付与した化合物の報告例がある(例えば、特許文献5、6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−157456号公報
【特許文献2】特開2005−286251号公報
【特許文献3】特開2010−103489号公報
【特許文献4】特開2008−34440号公報
【特許文献5】米国5111327号公報
【特許文献6】特許第4225820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルコキシシラン、シロキサン系材料及び芳香族ジカルボン酸は、確かに金属酸化物表面と導電性高分子膜との濡れ性を向上できるものの、殆どが、二段階で調製するものであった。即ち、あらかじめ、金属酸化物表面にアルコキシシラン、シロキサン系材料及び芳香族ジカルボン酸を塗布したのち、導電性高分子膜を塗布する方法であった。
【0006】
ホスホン系材料は、これらを導電性モノマーに添加した液を金属酸化物表面に塗布・加熱処理することにより一段で導電性高分子膜が得られる点でアルコキシシラン及びシロキサン系材料等より有利と考えられる。しかし、例えば、固体電界コンデンサ等の電子デバイスにおける要求特性(更なる低漏れ電流、低表面抵抗、高導電率等)に高度化に対応するためには、更なる改善が必要である。
【0007】
本発明は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)やポリピロールをはじめとする有機系材料と金属酸化物表面の密着性を向上させるのに有効な表面処理剤とそれを含む導電性モノマー含有組成物、並びにそれを用いた導電性高分子膜に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のα−ヒドロキシカルボン酸を部分構造として有する化合物が、導電性高分子膜の密着性を向上させることから表面処理剤として有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
<表面処理剤>
本発明の表面処理剤は、金属酸化物表面の改質に有効なα−ヒドロキシカルボン酸を部分構造として有する下記一般式(1)で表される表面処理剤である。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Arは、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基が置換してもよいチエニル基又はフェニル基であり、Lは、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表す。又、nは、0又は1を表す。)
上記一般式(1)で表される表面処理剤において、Arは、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基を有してもよいチエニル基又はフェニル基である。
【0012】
炭素数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルブチル基、4−メチルペンチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチロキシ基、シクロペンチルオキシ基、3−メチルブチロキシ基、2,2−ジメチルプロピロキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−エチルブチロキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。
【0013】
中でも、下記一般式(2)で表されるジアルコキシチエニル基が好ましい。
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R、Rは、各々独立して炭素数1〜8のアルキル基であり、RとRは結合して環を形成してもよい。)
ここで、一般式(2)におけるR、Rは、各々独立して炭素数1〜8のアルキル基であり、RとRは結合して環を形成してもよく、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。これらの中でも一般式(2)で表されるジアルコキシチエニル基としては、RとRが結合して環を形成した3,4−エチレンジオキシチオフェン−2−イル基がより好ましい。
【0016】
具体的な一般式(1)で表される表面処理剤におけるArとしては、フェニル基、p−トリル、p−プロピルフェニル基、p−ヘキシルフェニル基、p−オクチルフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−プロポキシフェニル基、p−ヘキシルオキシフェニル基、p−オクチルオキシフェニル基、チエニル基、3,4−エチレンジオキシチオフェン−2−イル基、3,4−ジメトキシチオフェン−2−イル基、3,4−ジエトキシチオフェン−2−イル基、3−ペンチルチオフェン−2−イル基、3−ヘキシルチオフェン−2−イル基、3−オクチルチオフェン−2−イル基、3−(2−エチルヘキシル)チオフェン−2−イル基等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)におけるLは、単結合、又は炭素数1〜8のアルキレン基を表す。具体的な炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等が挙げられる。
【0018】
具体的な一般式(1)で表される表面処理剤としては、例えばA1〜A6又はB1〜B14の化合物が挙げられる。
【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
上記一般式(1)で表される表面処理剤の合成法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0022】
第一の方法は、ハロゲン置換誘導体からグリニア試薬を調製後、シュウ酸ジエステルと反応させα−ケトエステルとした後、ソジウムシアノボロハイドライド等の還元剤を用いてα−ヒドロキシエステル体を得る。更に続けて、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を用いて反応させることにより目的とするα−ヒドロキシカルボン酸を得ることができる。尚、ハロゲン置換誘導体は、対応するAr−Li又はAr−MgX(Xは、ハロゲン原子を表す。Arは、上記一般式(1)中のArと同じ置換基を表す。)のような有機金属錯体とジハロアルカンから合成することができる。
【0023】
第二の方法として、アセチルチオフェン又はアセトフェノン誘導体を原料に、グリオキシ酸を加えて加熱することによっても合成することができる。
【0024】
【化5】

【0025】
<導電性モノマー含有組成物>
導電性モノマー含有組成物は、導電性モノマー、酸化剤、上記一般式(1)で表される表面処理剤を含む。
【0026】
導電性モノマーとしては、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン等の3,4−ジアルコキシチオフェン類のチオフェン誘導体が挙げられ、好ましくは、3,4−ジアルコキシチオフェン類、より好ましくは3,4−エチレンジオキシチオフェンが挙げられる。
【0027】
酸化剤としては、例えば有機基を含有する鉄(III)塩又は鉄(II)塩を挙げることができる。具体的な有機基を含有する鉄(III)塩又は鉄(II)塩としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、オクタデシル基等の炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルスルホン酸の鉄(III)塩、アルキルカルボン酸の鉄(III)塩又は鉄(II)塩;シュウ酸、コハク酸のような脂肪族ジカルボン酸の鉄(III)塩又は鉄(II)塩;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸のような炭素数1〜20のアルキル基が置換した芳香族スルホン酸の鉄(III)塩又は鉄(II)塩を挙げることができる。これらの上記の有機酸の鉄(III)塩又は鉄(II)塩の混合物を用いることもできる。
【0028】
導電性モノマー含有組成物は、さらに塩基を含むことが好ましく、該塩基としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、N−メチルイミダゾール等のイミダソール誘導体;ピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、4−プロピルピリジン、4−ブチルピリジン、2−メチルピリジン、2−エチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸等のピリジン誘導体を挙げることができる(例えば、Synthetic,Metals,Vol.66,263(1994),又は、特開2010−103489号公報)。中でも、安価な塩基であるイミダゾールが好ましい。
【0029】
導電性モノマー含有組成物は、反応条件下に不活性である有機溶媒で希釈することが好ましい。有機溶媒としては例えば、メタノール、エタノール及びi−プロパノールのような脂肪族アルコール;アセトン及びメチルエチルケトンのような脂肪族ケトン;酢酸エチル及び酢酸ブチルのような脂肪族カルボン酸エステル;トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサンのような脂肪族炭化水素;ジクロロメタン及びジクロロエタンのような塩素化炭化水素;アセトニトリルのような脂肪族ニトリル;ジメチルスルホキシド及びスルホランのような脂肪族スルホキシド及びスルホン;メチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドのような脂肪族カルボキシアミド;ジエチルエーテル及びアニゾールのような脂肪族及び芳香脂肪族エーテルを挙げることができる。更に、これら有機溶剤の混合物も用いることができる。
【0030】
酸化剤の配合量は、導電性モノマー1モルに対して、1.5〜10倍モルが好ましく、特に好ましくは2〜3倍モルであり、好ましく用いる塩基の配合量は、導電性モノマー1モルに対して、0.1〜3倍モルが好ましく、特に好ましくは、0.5〜2倍モルである。
【0031】
表面処理剤の配合量は、導電性モノマー1モルに対して0.0001〜1倍モルが好ましく、特に好ましくは、0.005〜0.1倍モルである。
<導電性高分子膜>
上記一般式(1)で表される表面処理剤は、金属酸化物表面の吸着力が強く、更に、金属酸化物表面への濡れ性が向上できるため、一般式(1)で表される表面処理剤用いることにより密着性に優れた導電性高分子膜を得ることができる。
【0032】
導電性高分子膜は、使用する酸化剤、表面処理剤及び塩基により異なり、ガラス、サファイア等の金属酸化物基板に上記導電性モノマー含有組成物を塗布し、好ましくは20〜300℃、特に好ましくは20〜200℃の温度で酸化重合することで得ることができる。
【0033】
酸化重合で用いる酸化剤としては、導電性モノマー含有組成物中の酸化剤を用いることができる。
【0034】
導電性高分子膜は、更に過剰の酸化剤を除去するために、水又は/及びアルコールで洗浄しても良い。
【0035】
このように得られた導電性高分子膜は、下記一般式(5)〜(7)で表される構造を有する。
【0036】
【化6】

【0037】
(式中、Mは前記導電性モノマーであり、nは0又は1、mは5以上5000以下の整数を表す。Ar及びLは、一般式(1)中のAr及びL同意義を表す。)
上記一般式(6)及び(7)で表される導電性高分子膜は、導電性モノマーの重合物の末端に上記一般式(1)で表される表面処理剤が結合したものであり、上記一般式(5)で表される導電性高分子膜は、導電性モノマーの重合物と上記一般式(1)で表される表面処理剤の混合物である。
【発明の効果】
【0038】
特定のα−ヒドロキシカルボン酸を部分構造として有する表面処理剤は、導電性高分子膜の密着性を向上させる上で非常に有用である。
【実施例】
【0039】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0040】
[ガスクロマトグラフィー測定]
装置:島津製作所製 GC−17A
カラム:キャピラリーカラム(GL Science社製 NB−5)
キャリアガス:ヘリウム
カラム温度:50℃(5分保持)→10℃/min → 280℃
インジェクション:280℃
検出器:FID
[NMR測定]
測定装置 : バリアン社製 Gemini200
[簡易基板密着性試験]
表面改質材1重量%を含むメタノール−酢酸エチル(1/1重量比)溶液を調製したのち、関東化学製中性アルミナシートを用い、Rf値(=(原点からスポット中心までの距離)/(原点から溶媒の展開前線までの距離))を算出した。
【0041】
[濡れ性評価試験]
表面改質材1mol%又は2mol%を含むEDOT溶液の接触角(=a値)、及びEDOT単独での接触角(=b値)から、接触角の変化率=(b−a)/b×100を算出した。変化率が大きいほど、基板との濡れ性が良好であることを示す。尚、使用した基板は、硫酸で酸化処理したアルミナ基板であり、接触角測定は、協和界面科学(株)製 接触角計CA−X150型を用いて行った。
【0042】
[表面抵抗値測定]
測定装置:三菱油化製、Loresta IP MCP−250
合成例1(4−(2−チエニル)−4−オキソ−2−ヒドロキシ酪酸の合成)
アセチルチオフェン10.0g(79mmol)、グリオキシ酸一水和物2.45g(27mmol)を窒素雰囲気下100mlナス型フラスコに加え、105℃で2.5時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、水10ml、28%アンモニア水4mlを加えて反応を終了した。その後、反応液にジクロロメタン15mlを加えて抽出した。上層の水層は、2N塩酸水溶液16mlを加えて酸性として、酢酸エチル20mlで2回抽出した。酢酸エチル層は、濾過ののち、濃縮することで1.0gの淡褐色固体を得た。13C−NMR測定(DMSO)の結果、得られた淡褐色固体は4−(2−チエニル)−4−オキソ−2−ヒドロキシ酪酸であることを確認した。
13C−NMR(ppm,DMSO−d):190.15,174.66,143.88,134.98,133.68,128.66,66.71,43.07。
【0043】
合成例2(4−フェニル−4−オキソ−2−ヒドロキシ酪酸の合成)
2−アセチルチオフェンをアセトナフトン9.48g(79mmol)に変え、合成例1と同様な操作を行い4−フェニル−4−オキソ−2−ヒドロキシ酪酸を合成した。
13C−NMR(ppm,DMSO−d)δ ppm;197.20,174.79,136.57,133.15,128.60,127.66.64.42.63。
【0044】
合成例3(5−(2−チエニル)−2−ヒドロキシ吉草酸の合成)
[反応式]
【0045】
【化7】

【0046】
[第一工程]
チオフェン3.34g(39.7mmol)及びテトラハイドロフラン100mlを、窒素雰囲気下200mlシュレンク管に加え、反応液を−78℃に冷却した。その後、1.6Mn−BuLi溶液(関東化学製)27ml(43.2mmol)を滴下し、更に室温で1時間攪拌した。次に、1,3−ジブロモプロパン8.0g(39.6mmol)をテトラハイドロフラン20mlに溶解した溶液を−30℃で滴下し、更に、室温で一晩攪拌したのち、HO50mlを加えて反応を終了した。飽和食塩水で洗浄後、濃縮することで6.69gの淡黄色油状物を得た。シリカゲルクロマトグラフィー及びクーゲル蒸留(110〜130℃/6mmHg)を行うことにより、2−(3−ブロモプロピル)チオフェンを無色透明油状物として2.75g(収率=33.8mol%、GC純度=94.5%)得た。化合物の同定は、H,13C−NMRで行った。
H−NMR(CDCl);7.13(1H,dd,J=5.2,1.4Hz),6.93(1H,dd,J=5.2,5.0Hz),6.83(1H,m),3.43(2H,t),3.00(2H,t),2.20(2H,quintet)
13C−NMR(CDCl);142.89,126.79,124.81,123.38,34.32,32.69,28.09。
【0047】
[第ニ工程]
次に、50mlシュレンク管に、マグネシウム0.31g(12.8mmol)及びテトラハイドロフラン5mlを加えたのち、得られた2−(3−ブロモプロピル)チオフェン2.75g(12.7mmol)及びテトラハイドロフラン10mlを室温で徐々に加えたのち、室温で3時間攪拌して対応するグリニア溶液を調製した。次に、50mlシュレンク管に、シュウ酸ジエチル1.54g(10.5mmol)、ジエチルエーテル10ml及びテトラハイドロフラン10mlを加えた。−78℃に冷却後、上記グリニア溶液をシリンジで滴下し、同温度で0.5時間、−60℃で1時間攪拌した。反応液を室温まで戻した後、2N硫酸水溶液16mlを滴下し、反応を終了した。HO25mlで4回有機層を洗浄した。飽和食塩水処理、硫酸マグネシウム処理を行ったのち、シリカゲルクロマトグラフィ(ヘキサン/酢酸エチル=5/1体積比)で精製することにより、目的とする5−(2−チエニル)−2−オキソ−吉草酸エチルエステルを2.08g単離した(収率=75.8mol%)。化合物の同定は、H−NMR、13C−NMRで行った。
H−NMR(CDCl);7.13(1H,dd,J=5.2,1.2Hz),6.92(1H,dd,J=5.2,3.4Hz),6.80(1H,dd,J=3.4,1.2Hz),4.31(2H,q),2.89(4H,t),2.02(4H,quintet),1.36(3H,t)
13C−NMR(CDCl);193.96,160.90,143.67,126.73,124.59,123.31,62.44,38.27,28.86,24.92,14.04。
【0048】
[第三工程]
次に、20mlシュレンク管に5−(2−チエニル)−2−オキソ−吉草酸エチルエステル0.50g(2.22mmol)、エタノール10ml、HO3.5ml及び酢酸1.5mlを加え、ソジウムシアノボロハイドライド0.145g(2.22mmol)を加え、室温下1時間攪拌した。2N塩酸水溶液を1ml加え反応液のpHを1とし、その後、反応液を濃縮してから、酢酸エチル20mlで2回有機層を抽出した。飽和食塩水による洗浄、及び硫酸マグネシウムによる乾燥ののち、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/1体積比)で精製することにより、0.38g(収率=76%)の5−(2−チエニル)−2−ヒドロキシ吉草酸エチルエステルを無色油状物として得た。化合物の同定は、H−NMR、13C−NMRで行った。
H−NMR(CDCl);7.11(1H,dd,J=5.1,1.1Hz),6.91(1H,dd,J=5.1,3.2Hz),6.79(1H,dd,J=3.2,1.1Hz),4.17−4.29(3H,m,−COCH and −C(OH)−),2.861−2.90(3H,m,−O and−C−),1.67−1.95(4H,m),1.29(3H,t)
13C−NMR(CDCl);174.99,144.63,126.59,124.12,122.91,70.15,61.71,33.68,29.54,26.90,14.23。
【0049】
[第四工程]
50mlナス型フラスコに、上記第四工程で得られた5−(2−チエニル)−2−ヒドロキシ吉草酸エチルエステル0.38g(1.67mmol)、及び75重量%メタノール水溶液11gを加えた。反応液が5℃以下になるよう氷浴で冷却しながら、水酸化リチウム0.16gを含む75重量%メタノール水溶液4.2gを加え氷浴中で4時間反応させた。その後、5%塩酸水溶液を加えてpH=7とし、反応液を減圧濃縮した。得られた濃縮物に、HO15mlを加えたのち、10%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=11としたのち、ジエチルエーテル15mlで抽出した。得られた水層は、5%塩酸水溶液でpH=1としたのち、酢酸エチル20mlで3回抽出した。有機層は、飽和食塩水による洗浄、硫酸マグネシウムによる乾燥ののち、濃縮することで無色結晶を得た(0.31g,収率=93%)。H−NMR、13C−NMRにより、目的物である5−(2−チエニル)−2−ヒドロキシ吉草酸であることを確認した。尚、5−(2−チエニル)−2−ヒドロキシ吉草酸の融点は、54〜56℃であった。
H−NMR(CDCl);7.11(1H,dd,J=5.1,1.0Hz),6.91(1H,dd,J=5.1,3.3Hz),6.79(1H,dd,J=3.3,1.0Hz),6.15(1H,br s),4.28(1H,t),2.88(2H,t),1.6−2.0(4H,m)
13C−NMR(CDCl);179.36,144.37,126.68,124.26,123.05,69.99,33.46,29.48,26.95。
【0050】
実施例1〜3、比較例1,2(密着性試験及び濡れ性評価試験)
合成例1〜3で合成した化合物を表1記載の濃度になるようEDOTとの混合溶液を調製し、密着性試験及び濡れ性評価試験を行った。結果を表1に纏める。
【0051】
4−(2−チエニル)酪酸(比較例1)、ヘキシルトリエトキシチオフェン(比較例2、3)を表1記載の濃度になるようEDOTとの混合溶液を調製し、密着性試験及び濡れ性評価試験を行った。結果を表1に纏める。
【0052】
一般式(1)で表されるα−ヒドロキシカルボン酸構造を有する化合物は、Rf値が0であることから、アルミナ酸化膜に強く吸着し、更に、大きな接触角の変化率を示し、高い濡れ性を有していることから、表面処理剤として好適である。
【0053】
一般式(1)で表されるα−ヒドロキシカルボン酸構造を有さない4−(2−チエニル)酪酸(比較例1)は、接触角が小さく、ヘキシルトリエトキシチオフェン(比較例2、3)では、接触角が小さい(比較例2)あるいはRf値が大きく、比較例1〜3の一般式(1)で表されるα−ヒドロキシカルボン酸構造を有さない化合物は表面処理剤として不適である。
【0054】
【表1】

【0055】
(表面処理剤を含む膜の調製)
実施例4
導電性モノマーとして3,4−エチレンジオキシチオフェン0.5g(3.5mmol)、酸化剤として鉄(III)トシレート4.5g(7.9mmol)、実施例1の表面処理剤7mg(0.035mmol)および有機溶媒としてブタノール6.75g(91mmol)を含む導電性モンマー含有組成物を製造し、溶液の一部(パスツールピペットで8滴)をスピンコーターを用いて2000r.p.m.で5秒間ガラス基板に塗布し、25℃で15分間酸化重合を行った。その後、引き続きメタノール中で15分間洗浄し、過剰の酸化剤を除去し膜を得、乾燥後、表面抵抗値を測定した。結果を表2に纏める。
【0056】
実施例5〜6
表面処理剤を、実施例3の表面処理剤0.035mmol、実施例1の表面処理剤0.017mmolに変更して実施例4と同様に膜を作製した。表面抵抗値の結果を表2に表す。
【0057】
実施例7
実施例4の導電性モノマー含有組成物に塩基としてイミダゾール0.24g(3.5mmol)を添加して、実施例4と同様に膜を作製した。表面抵抗値の結果を表2に表す。
【0058】
比較例4
3,4−エチレンジオキシチオフェン0.5g(3.5mmol)、鉄(III)トシレート4.5g(7.9mmol)及びブタノール6.75g(91mmol)からなる溶液を製造し、実施例4と同様に膜を作製した。表面抵抗値の結果を表2に表す。
【0059】
比較例5
表面処理剤としてヘキシルトリエトキシシラン0.035mmolを用い実施例4と同様に膜を作製した結果についても表2に示す。
【0060】
実施例4〜7のように、本発明の表面処理剤を添加することによって得られる膜は密着性が向上しているため表面抵抗値が小さく、導電性高分子膜として好適である。
【0061】
表面処理剤を用いなかった比較例4、一般式(1)で表されるα−ヒドロキシカルボン酸を部分構造として有さない表面処理剤を用いた比較例5では、いずれも表面抵抗値が高く、導電性高分子膜として不適である。
【0062】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−ヒドロキシカルボン酸を部分構造として有する下記一般式(1)で表されることを特徴とする表面処理剤。
【化1】

(式中、Arは、炭素数1〜8のアルキル基、アルコキシ基を有してもよいチエニル基又はフェニル基であり、Lは単結合、炭素数1〜8のアルキレン基を表す。又、nは、0又は1を表す。)
【請求項2】
導電性モノマー、酸化剤、請求項1記載の表面処理剤を含むことを特徴とする導電性モノマー含有組成物。
【請求項3】
さらに塩基を含むことを特徴とする請求項2に記載の導電性モノマー含有組成物。
【請求項4】
塩基がイミダゾールであることを特徴とする請求項3に記載の導電性モノマー含有組成物。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の導電性モノマー含有組成物を用いることを特徴とする導電性高分子膜。

【公開番号】特開2013−6969(P2013−6969A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141000(P2011−141000)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】