説明

表面処理剤組成物、その製造方法、印刷回路基板用銅箔及び軟性銅箔積層フィルム

本発明は、化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第1シラン系化合物;シラン系化合物と異なる構造を持つ一つ以上のシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第2シラン系化合物;第1シラン系化合物と第2シラン系化合物との加水分解物;及び水系溶媒を含む表面処理剤組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理剤組成物、その製造方法、前記表面処理剤組成物から得られる表面処理膜を含む印刷回路基板用銅箔及び前記印刷回路基板用銅箔を含む軟性銅箔積層フィルムに係り、さらに詳細には、新たなシラン系化合物及び/またはその加水分解物を含む表面処理剤組成物、その製造方法及び前記表面処理剤組成物から得られる表面処理膜を含む印刷回路基板用銅箔、及び前記印刷回路基板用銅箔を含む軟性銅箔積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、需要が増加している印刷回路基板のうち一つである軟性銅箔積層フィルムは、銅箔上にポリイミドが積層された2層または3層の複数層フィルムである。前記軟性銅箔積層フィルムに印刷された配線の精度が向上するにつれて、エッチングの精度向上に対応するために銅箔の表面粗度が低くなることが要求される。しかし、銅箔表面の粗度が低くなれば、銅箔と基材(例えば、ポリイミドフィルム)との接着力が低下するので、これを補完するための手段が要求される。
【0003】
従来に使われる銅箔と基材間の接着力強化手段として、シランカップリング剤を銅箔の表面処理剤として使用して処理された印刷回路用銅箔が特開1990−026097号などに開示されている。
【0004】
しかし、印刷回路基板に使われる銅箔に要求される物性が厳しくなるにつれて、さらに向上した物性を持つ表面処理膜が形成された印刷回路基板用銅箔が依然として要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであって、基材と銅箔間の向上した接着力を提供する新たなシラン系化合物及び/またはこれらの加水分解物を含む表面処理剤組成物及びその製造方法、前記表面処理剤組成物から得られる表面処理膜が含まれた印刷回路基板用銅箔、及び前記印刷回路基板用銅箔にポリイミド層が付加された軟性銅箔積層フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために本発明は、まず、下記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第1シラン系化合物;下記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物と異なる構造を持つ一つ以上のシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第2シラン系化合物;前記第1シラン系化合物と第2シラン系化合物との加水分解物;及び水系溶媒を含む表面処理剤組成物を提供する。
[化1]

[化2]

[化3]

[化4]

前記式で、R、R、及びRは互いに独立的に、C−Cアルキル基であり;R及びRは互いに独立的に、水素またはC−Cアルキル基である。
【0007】
次いで、前記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第1シラン系化合物、下記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物と異なる構造を持つ一つ以上のシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第2シラン系化合物、及び水系溶媒を混合する段階を含む表面処理剤組成物の製造方法を提供する。
【0008】
次いで、銅箔層;前記銅箔層上に形成された防錆層;及び前記防錆層上に形成された前記表面処理剤組成物をコーティングして得られる表面処理膜;を含む印刷回路基板用銅箔を提供する。
【0009】
次いで、前記印刷回路基板用銅箔、及び前記銅箔の表面処理膜上に形成されたポリイミド層を含む軟性銅箔積層フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表面処理剤組成物は、水系における分散性に優れ、前記表面処理剤組成物を使用して得られる表面処理膜を含む印刷回路基板用銅箔は、前記表面処理膜が形成されていないか、あるいは従来の一般的なシラン系化合物から得られる表面処理膜が形成された印刷回路基板用銅箔に比べて向上した接着力を持つ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、望ましい具現例による表面処理剤組成物、その製造方法、印刷回路基板用銅箔及び軟性銅箔積層フィルムについてさらに詳細に説明する。
【0012】
一具現例による表面処理剤組成物は、前記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第1シラン系化合物;下記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物と異なる構造を持つ一つ以上のシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第2シラン系化合物;前記第1シラン系化合物と第2シラン系化合物との加水分解物;及び水系溶媒を含む。
【0013】
前記式で、R、R、及びRは互いに独立的に、C−Cアルキル基であり、R及びRは互いに独立的に、水素またはC−Cアルキル基である。
【0014】
例えば、前記R、R、及びRは互いに独立的に、メチルまたはエチルであり、R及びRは水素でありうる。
【0015】
新たな構造を持つ前記第1シラン系化合物は、従来の一般的なシラン系化合物である前記第2シラン系化合物と混合されることで、水系溶媒が使われる表面処理剤組成物における分散性が向上する。このような向上した分散性は、さらに均一なコーティング膜の形成を可能にする。
【0016】
前記表面処理剤組成物で前記第2シラン系化合物は、例えば、ビニル系シラン化合物、アミン系シラン化合物、エポキシシラン化合物、カルボン酸エステル系シラン化合物、メタクリル系シラン化合物、イミダゾール系シラン化合物、アクリル系シラン化合物またはこれらの混合物であるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、前記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物ではない化合物であって、当業界で使用可能なものならば特別に限定されない。
【0017】
前記表面処理剤組成物で前記第2シラン系化合物は、例えば、下記化学式5ないし7で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上でありうる。
[化5]

[化6]

[化7]

【0018】
前記表面処理剤組成物で前記水系溶媒の含有量は、前記組成物総重量の95ないし99.99重量%でありうる。前記溶媒含有量が99.99重量%超ならば、表面処理膜が十分に銅箔表面に塗布されずに接着力を向上させられなくなり、前記含有量が95重量%未満ならば、表面処理剤有機膜の厚さが増大して銅箔表面のノジュール(突起状)を覆うようになって接着力を向上させられなくなる。
【0019】
前記表面処理剤組成物で前記水系溶媒は、水と有機溶媒との混合溶媒であり、前記水系溶媒中の水の含有量は水系溶媒総体積の50%以上であり、例えば、70ないし90体積%であり、例えば、75ないし85体積%でありうる。前記水の含有量範囲で表面処理剤組成物の分散性がさらに向上する。
【0020】
前記有機溶媒はメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチルアセテート、ベンゼンまたはこれらの混合物であり、例えば、エタノールであるが、これらに限定されず、当業界で使用できる有機溶媒ならば、いずれも使われうる。
【0021】
前記第1シラン系化合物及び第2シラン系化合物は、水と反応して加水分解物を形成できる。前記加水分解物は多様な構造を持つことができる。本明細書で前記加水分解物は、前記第1シラン系化合物及び第2シラン系化合物が水と反応して得られるあらゆる生成物を意味する。例えば、シラン基に結合されたアルコキシ基のうち一つ以上が水と反応してヒドロキシ基に置換されたシラン系化合物、前記ヒドロキシ基置換基を含むシラン系化合物が互いに連結されて形成されたオリゴマー、ポリマーなどをいずれも含む。また、前記加水分解物は、前記第1シラン系化合物と第2シラン系化合物とが互いに結合して形成された結合物(adduct)、及び前記第1シラン系化合物の加水分解物と前記第2シラン系化合物の加水分解物とが互いに結合して形成された結合物も含む。例えば、前記結合物は、次のような構造を持つ。
【0022】
[化8]

[化9]

[化10]

[化11]

【0023】
前記式で、R、Rは、互いに独立的にC−Cアルキレン基であり、X及びYは、互いに独立的にハロゲン、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、C−C10アリール基、C−C20ヘテロアリール基、アミノ基、オクセタン基、エポキシド基、グリシドキシ基である。具体的には、イミダゾール、ピリジンまたは芳香族を含む前記化学式1−7で明示した構造である。前記のn、mは、互いに独立的に1ないし500である。
【0024】
例えば、前記R、Rは、互いに独立的にメチレン、エチレンまたはプロピレンであり、前記X及びYは、グリシドキシ基、イミダゾリル基、アミノ基などでありうる。
【0025】
他の一具現例による表面処理剤の製造方法は、前記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第1シラン系化合物、前記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物と異なる構造を持つ一つ以上のシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第2シラン系化合物、及び水系溶媒を混合する段階を含む。
【0026】
前記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物で、例えば、前記R、R、及びRは、互いに独立的にメチルまたはエチルであり、R及びRは、水素でありうる。
【0027】
前記表面処理剤組成物の製造方法で、前記組成物に混合される第1シラン系化合物と第2シラン系化合物との含有量は、前記組成物の総重量を基準として0.01ないし5重量%でありうる。前記含有量が0.01重量%未満ならば、表面処理膜が十分に銅箔表面に塗布されなくて接着力を向上させられず、前記含有量が5重量%を超過すれば、表面処理剤有機膜の厚さが増大して銅箔表面のノジュール(突起状。Nodule)を覆うようになって、接着力を向上させられない恐れがある。
【0028】
前記含有量の範囲で前記表面処理剤分散剤の分散性がさらに向上する。
【0029】
前記表面処理剤組成物の製造方法で、前記第1シラン系化合物と第2シラン系化合物とが75:25ないし25:75の重量比で混合される。前記混合比の範囲で前記表面処理剤組成物から得られる表面処理層のポリイミドへの接着力がさらに向上する。
【0030】
前記表面処理剤組成物の製造方法で、前記第2シラン系化合物は、ビニル系シラン化合物、アミン系シラン化合物、エポキシシラン化合物、カルボン酸エステル系シラン化合物、メタクリル系シラン化合物、イミダゾール系シラン化合物、アクリル系シラン化合物またはこれらの混合物であるが、必ずしもこれらに限定されるものではなく、前記化学式1ないし4で表示されるシラン系化合物でない化合物として、当該技術分野で使用可能なものならば特に限定されない。
【0031】
前記表面処理剤組成物の製造方法で、前記第2シラン系化合物は、例えば、前記化学式5ないし7で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上である。
【0032】
前記表面処理剤組成物の製造方法で、前記水系溶媒は水と有機溶媒との混合溶媒でありうる。前記水系溶媒中の水の含有量は、水系溶媒総重量の70ないし90重量%でありうる。例えば、75ないし85重量%でありうる。前記水の含有量範囲で前記表面処理剤組成物の分散性がさらに向上する。
【0033】
さらに他の一具現例による印刷回路基板用銅箔は、銅箔層;前記銅箔層上に形成された防錆層;及び前記防錆層上に形成された前記表面処理剤組成物及び/または前記方法で製造された表面処理剤組成物をコーティングして得られる表面処理膜を含む。
【0034】
前記による表面処理剤組成物に含まれた第1シラン系化合物及びこれらの加水分解物は、その末端に銅箔とシロキサン共有結合を形成できるヒドロキシ基を含み、他の一末端にポリイミドフィルムと構造が類似して結合力が向上できるイミダゾール基及び/またはイミド基を持つことで、銅箔とポリイミドフィルム間の接着力を向上させる。また、前記表面処理剤組成物が第2シラン系化合物及びこれらの加水分解物をさらに含むことで、接着力をさらに向上させる。
【0035】
具体的に、前記第1及び第2シラン系化合物に含まれていたアルコキシ基(−OR)またはこれらの加水分解物に含まれているヒドロキシ基(−OH)は、金属表面に存在するヒドロキシ基などと反応して金属表面とシロキサン結合を形成できる。前記シラン系化合物に含まれているシロキサン基も金属表面とシロキサン結合を形成できる。これらのシロキサン結合によって防錆層上に表面処理膜が形成される。
【0036】
前記印刷回路基板用銅箔は、前記銅箔層と防錆層との間に形成された熱遮断層をさらに含む。前記熱遮断層は、例えば、亜鉛合金であり、厚さは数十ないし数百nmでありうる。前記熱遮断層を形成する金属または合金の種類は特に限定されず、当技術分野で熱遮断層として使われうるものならば、いかなるものでも使われうる。
【0037】
前記印刷回路基板用銅箔は、前記銅箔と熱遮断層との間に形成された突起状(ノジュール)をさらに含む。前記突起状は、銅金属1〜40g/L、硫酸30〜250g/L、温度10〜40℃の条件で電流密度10〜150A/dmの電流を流して形成される。
【0038】
前記防錆層は、防錆物質として三酸化クロム、クロム酸、重クロム酸、重クロム酸ナトリウム、クロム酸塩などを使用でき、これらの濃度0.1〜10g/L、温度15〜50℃、電流密度0.01〜10A/dmの条件で数ないし数十nmの厚さに形成できる。前記熱遮断層は亜鉛合金、ニッケル合金、コバルト合金などからなり、前記熱遮断層は数ないし数百nmの厚さに形成できる。
【0039】
前記銅箔は一般的に基材上に形成されるが、基材は当業界で公知であるため、本明細書で追加の説明を省略するが、その使用を排除するものではない。
【0040】
また、他の一具現例による印刷回路基板用銅箔の製造方法は、銅箔上に防錆層を形成する段階;及び前記防錆層が形成された銅箔を洗浄及び乾燥した後、前記防錆層の上部に前記表面処理剤組成物をコーティング及び乾燥して表面処理膜を形成する段階;を含む。
【0041】
前記印刷回路基板用銅箔の製造に使われる銅箔は、被メッキ素材または基材に銅メッキを施して製造できる。前記銅メッキには、酸性またはアルカリ性メッキ液を使用できる。酸性メッキ液には、硫酸銅、ホウフッ化銅またはスルファミン酸銅メッキ液があり、アルカリ性メッキ液には、シアン化銅またはピロリン酸銅メッキ液がある。前記印刷回路基板用銅箔の製造に使われるメッキ液は特に限定されず、当技術分野で使用可能なメッキ液ならば、いずれも使用できる。
【0042】
前記防錆層は、クロムを銅箔表面に電着させて形成する。使われるクロム化合物は、例えば、三酸化クロム、クロム酸、重クロム酸カルシウム、重クロム酸ナトリウム、クロム酸塩などであり、これらの濃度は0.1ないし10g/Lが望ましく、さらに望ましくは、1.0ないし10g/Lである。前記防錆層の形成時にクロム化合物の電着効率を向上させるために効力増強剤が添加される。例えば、アセト酸亜鉛、塩化亜鉛、シアン化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛などの亜鉛化合物;燐酸、多重燐酸ピロリン酸、燐酸塩、ピロリン酸塩などの燐酸化合物;またはベンゼントリアゾールなどの有機化合物である。防錆層の厚さは0.1ないし10nmが望ましい。
【0043】
前記印刷回路基板用銅箔の製造方法で、前記防錆層を形成する前に、前記銅箔上に熱遮断層を形成する段階をさらに含むことが望ましい。防錆層の形成に関する具体的な事項は、前記印刷回路基板用銅箔部分で説明した事項と同一である。
【0044】
前記印刷回路基板用銅箔の製造方法で、前記熱遮断層を形成する前に、前記銅箔上に突起状処理をする段階をさらに含むことが望ましい。前記突起状(nodulation)処理は、酸化銅粉末を利用して前記銅箔の表面に突起状を形成して銅箔と追加コーティング層との接触面積を増大させることで、銅箔と追加コーティング層との接着力を向上させる。
【0045】
さらに他の一具現例による軟性銅箔積層フィルムは、前記の印刷回路基板用銅箔、及び前記銅箔の表面処理膜上に形成されたポリイミド層を含む。
【0046】
前記軟性銅箔積層フィルムは、用途によって2層、3層などの多様な形態を持つ。
【0047】
前記ポリイミド層は、ポリアミド酸溶液の硬化物であり、前記ポリアミド酸は、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェノンテトラカルボン酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及び3,3’,4,4’−オキシジフタル酸無水物からなる群から選択された一つ以上の二無水物単量体と4,4’−オキシジアニリン、パラ−フェニレンジアミン、シロキサンジアミン、3,4−オキシジアニリン及びメタ−フェニレンジアミンからなる群から選択された一つ以上のジアミン単量体の反応物でありうる。
【0048】
前記シロキサンジアミン(SD)は、例えば、次のような構造を持つ。

前記SDのnは、2ないし12である。
【0049】
ポリアミド酸は、前記二無水物単量体とジアミン単量体とが反応して−C(=O)−NH−結合によって連結された化合物であって、例えば、ピロメリット酸無水物とオキシジアニリンとが反応して得られるポリアミド酸は、次のような構造を持つ。

【0050】
前記ポリアミド酸を熱処理すれば、次のような構造のポリイミドが得られる。


【0051】
前記ポリアミド酸の熱処理温度は、例えば、約60℃ほどから始まって最終的に約400℃ほどの窒素雰囲気の高温で終結される。前記ポリアミド酸とポリイミドとのn値は、例えば、40ないし500である。
【0052】
ポリアミド酸ワニスは、例えば、PMDA/ODA混合物、BTDA/PDA混合物、BTDA/PMDA/ODA/PDA混合物、PMDA/ODA−SD混合物などである。これらの混合比は、用途によって適当に選択できる。
【実施例】
【0053】
以下、望ましい実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。以下、実施例で合成された化合物の構造確認は、Brucker
DRX−300MHz H−NMR、及びJasco 610 FT−IRを使用して行った。
【0054】
(シラン系化合物の合成)
製造例1:化合物1の合成
下記反応式1の経路によって、下記化学式12で表示される化合物1(BTCA−TEOS,2,4−ベンゼン−ジカルボン酸−1−(3−プロピルトリエトキシシラン)アミドを合成した。
<反1>


【0055】
[化12]
前記反応式で、Rは、エチルである。
【0056】
反応基にテトラヒドロフラン125.712g、3−アミノプロピルトリエトキシシラン11.0685g(0.05mol)及び1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物(2,3−ピリジンジカルボン酸無水物)9.6065g(0.05mol)を入れた後、窒素雰囲気下で反応基の温度を−5〜5℃に維持しつつ、機械式攪拌器を250rpmで回転させながら6時間反応させた。反応が終了すれば、回転式蒸発器で1時間溶媒を除去し、真空オーブンで48時間乾燥させて、前記化学式12で表示される化合物1を20.6g(収率99%)得た。
【0057】
H NMR(300MHz):δ0.71〜0.73(t,1H),1.14〜1.23(m,Si−CH),1.71〜1.74(m,2H),3.58〜3.60(t,3H),3.79〜3.86(m,Si−CH),8.55(s,NH)
IR(neat,cm−1):3650〜3200(νOH),3300〜3200(νNH),1650(νCONH),1120〜1050(νSi−(alkoxy)
【0058】
製造例2:化合物2の合成
3−アミノプロピルトリエトキシシランの代りに、3−アミノプロピルトリメトキシシランを使用したことを除いては、製造例1と同じ方法で、下記の化学式13で表示される化合物2(BTCA−TMOS,2,4−ベンゼン−ジカルボン酸−1−(3−プロピルトリメトキシシラン)アミドを合成した。
<反2>

【0059】
[化13]
前記反応式で、Rは、メチルである。
【0060】
(銅箔用表面処理剤組成物の製造)
実施例1
前記製造例1で製造された化合物1(BTCA−TEOS)と、3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルトリエトキシシラン(ITEOS)とを8:2重量比で混合し、水とメタノールとの8:2体積比混合溶媒と混合して、前記シラン系化合物の総含有量0.5重量%の表面処理剤組成物を製造した。
【0061】
実施例2
化合物1と、3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルトリエトキシシラン(ITEOS)とを5:5に混合したことを除いては、実施例1と同じ方式で表面処理剤組成物を製造した。
【0062】
実施例3
化合物1と、3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルトリエトキシシラン(ITEOS)とを2:8で混合したことを除いては、実施例1と同じ方式で表面処理剤組成物を製造した。
【0063】
実施例4
前記製造例1で製造された化合物1(BTCA−TEOS)と、(3−グリシジルオキシプロピル)トリエトキシシラン(3GTES)とを5:5重量比で混合し、水とメタノールとの8:2体積比混合溶媒と混合して、前記シラン系化合物の総含有量0.5重量%の表面処理剤組成物を製造した。
【0064】
実施例5
前記製造例1で製造された化合物1(BTCA−TEOS)と、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3APrTEOS)とを5:5重量比で混合し、水とメタノールとの8:2体積比混合溶媒と混合して、前記シラン系化合物の総含有量0.5重量%の表面処理剤組成物を製造した。
【0065】
実施例6
前記製造例2で製造された化合物2(BTCA−TMOS)と、3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルトリエトキシシラン(ITEOS)とを5:5重量比で混合し、水とメタノールとの8:2体積比混合溶媒と混合して、前記シラン系化合物の総含有量0.5重量%の表面処理剤組成物を製造した。
【0066】
実施例7
前記製造例2で製造された化合物2(BTCA−TMOS)と、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3APrTEOS)とを5:5重量比で混合し、水とメタノールとの8:2体積比混合溶媒と混合して、前記シラン系化合物の総含有量0.5重量%の表面処理剤組成物を製造した。
【0067】
比較例1
化合物1を単独で使用することを除いては、実施例1と同じ方式で表面処理剤組成物を製造した。
【0068】
比較例2
3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルトリエトキシシラン(ITEOS)を単独で使用することを除いては、実施例1と同じ方式で表面処理剤組成物を製造した。
【0069】
(印刷回路基板用銅箔及び2層軟性銅箔積層フィルムの製造)
実施例8
前記実施例1で、表面処理剤組成物を60分間常温に放置して加水分解を完全に進行させた後、前記組成物に銅箔層、突起状、熱遮断層及び防錆層が順次に形成された圧延銅箔(韓国の日進素材、IL−2)を浸漬させて表面処理剤をコーティングさせた。前記圧延銅箔の突起状は銅(Cu)からなり、熱遮断層は亜鉛合金であり、防錆層はクロムを含む。コーティングされた銅箔をオーブンで120℃の温度で30分間乾燥させて、表面処理膜を形成させた。
【0070】
前記表面処理剤組成物で処理された銅箔にKRICT−PAAワニス(BPDA:PMDA:PDA:ODA=3:7:6:4)を塗布した後、ドクターブレードを使用してコーティングした。コーティングされたポリアミド酸を60℃;30分、120℃;30分、250℃;30分400℃;10分と窒素雰囲気条件で硬化して、ポリイミドフィルムのコーティングされた銅箔を製造した。これを試片1という。
【0071】
実施例9
実施例1で製造された表面処理剤組成物の代りに、実施例2で製造された表面処理剤組成物を使用したことを除いては、実施例8と同じ方法で印刷回路基板用銅箔及び2層軟性銅箔積層フィルムを製造した。これを試片2という。
【0072】
実施例10
実施例1で製造された表面処理剤組成物の代りに、実施例3で製造された表面処理剤組成物を使用したことを除いては、実施例8と同じ方法で印刷回路基板用銅箔及び2層軟性銅箔積層フィルムを製造した。これを試片3という。
【0073】
実施例11−14
実施例1で製造された表面処理剤組成物の代りに、実施例4ないし7で製造された表面処理剤組成物をそれぞれ使用したことを除いては、実施例8と同じ方法で印刷回路基板用銅箔及び2層軟性銅箔積層フィルムを製造した。これを試片4ないし7という。
【0074】
比較例3
実施例1で製造された表面処理剤組成物の代りに、比較例1で製造された表面処理剤組成物を使用したことを除いては、実施例8と同じ方法で印刷回路基板用銅箔及び2層軟性銅箔積層フィルムを製造した。これを比較試片1という。
【0075】
比較例4
実施例1で製造された表面処理剤組成物の代りに、比較例2で製造された表面処理剤組成物を使用したことを除いては、実施例8と同じ方法で印刷回路基板用銅箔及び2層軟性銅箔積層フィルムを製造した。これを比較試片2という。
【0076】
比較例5
表面処理剤組成物を適用する段階を省略したことを除いては、実施例8の圧延銅箔(印刷回路基板用銅箔、韓国の日進素材IL−2)をそのまま使用して2層軟性銅箔積層フィルムを製造した。これを比較試片3という。
【0077】
評価例1:水分散安定性
前記実施例1ないし3及び比較例1ないし2で製造された表面処理剤組成物を、それぞれバイアルに入れて常温で2日経過後及び3日経過後、沈殿如何を肉眼で観察した。
【0078】
2日経過後、実施例1ないし3及び比較例2で製造された表面処理剤組成物には沈殿がなかったが、比較例1で製造された表面処理剤組成物には、バイアル底部に白色沈殿が発生したことを肉眼で確認した。
【0079】
3日経過後にも前記2日経過後と同じ結果を得た。
【0080】
したがって、前記第1シラン系化合物は単独で水系溶媒に使われる場合に水分散安定性が低下するが、第2シラン系化合物と混合される場合に水分散安定性が向上するということが分かる。
【0081】
評価例2:接着性試験
前記実施例8ないし14で製造された試片1ないし7、前記比較例3ないし5で製造された比較試片1ないし3に対して、ASTMD−638で規定する方法によって接着強度(peel
strength)を測定した。Cross−Head speedは25mm/minであり、試料の幅は5mmであった。使われた機器はInstron 8516であった。測定結果を下記の表1に表した。
【0082】
【表1】

【0083】
前記表1に示したように、本発明の具現例による、混合されたシラン系化合物を含む表面処理剤組成物を使用して製造された試片1ないし3は、製造例1のシラン系化合物を単独で使用して製造された比較試片1、既存のシラン系化合物(ITEOS)を使用して製造された比較試片2、及び表面処理剤組成物を使用しない比較試片3いずれにも比べて、ポリイミドフィルムと銅箔間の接着強度が顕著に向上した。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の表面処理剤組成物は、水系における分散性に優れ、前記表面処理剤組成物を使用して得られる表面処理膜を含む印刷回路基板用銅箔は、前記表面処理膜が形成されていないか、従来の一般的なシラン系化合物から得られる表面処理膜が形成された印刷回路基板用銅箔に比べて向上した接着力を持つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式21ないし24で表示されるシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第1シラン系化合物と、
下記化学式21ないし24で表示されるシラン系化合物と異なる構造を持つ一つ以上のシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第2シラン系化合物と、
前記第1シラン系化合物と第2シラン系化合物との加水分解物と、
水系溶媒を含む表面処理剤組成物。
[化21]

[化22]

[化23]

[化24]

前記式で、
、R、及びRは互いに独立して、C−Cアルキル基であり、
及びRは互いに独立的に、水素またはC−Cアルキル基である。
【請求項2】
前記R、R、及びRは互いに独立的に、メチルまたはエチルであり、R及びRは水素である請求項1に記載の表面処理剤組成物。
【請求項3】
前記第2シラン系化合物が、ビニル系シラン化合物、アミン系シラン化合物、エポキシシラン化合物、カルボン酸エステル系シラン化合物、メタクリル系シラン化合物、イミダゾール系シラン化合物及びアクリル系シラン化合物からなる群から選択される一つ以上の化合物である請求項1に記載の表面処理剤組成物。
【請求項4】
前記第2シラン系化合物が、下記化学式25ないし27で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上である請求項1に記載の表面処理剤組成物。
[化25]

[化26]

[化27]

【請求項5】
前記水系溶媒の含有量は、前記組成物総重量の95ないし99.99重量%である請求項1に記載の表面処理剤組成物。
【請求項6】
前記水系溶媒は、水と有機溶媒との混合溶媒である請求項1に記載の表面処理剤組成物。
【請求項7】
前記水系溶媒中の水の含有量は、水系溶媒総体積の70ないし90体積%である請求項1に記載の表面処理剤組成物。
【請求項8】
下記化学式31ないし34で表示されるシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第1シラン系化合物、下記化学式31ないし34で表示されるシラン系化合物と異なる構造を持つ一つ以上のシラン系化合物からなる群から選択される一つ以上の第2シラン系化合物、及び水系溶媒を混合する段階を含む表面処理剤組成物の製造方法。
[化31]

[化32]

[化33]

[化34]

前記式で、
、R、及びRは互いに独立的に、C−Cアルキル基であり、
及びRは互いに独立的に、水素またはC−Cアルキル基である。
【請求項9】
前記R、R、及びRは互いに独立的に、メチルまたはエチルであり、R及びRは、水素である請求項8に記載の表面処理剤組成物の製造方法。
【請求項10】
前記組成物に混合される第1シラン系化合物と第2シラン系化合物との含有量は、前記組成物の総重量を基準として0.01ないし5重量%である請求項8に記載の表面処理剤組成物の製造方法。
【請求項11】
前記第1シラン系化合物と第2シラン系化合物が、75:25ないし25:75の重量比で混合される請求項8に記載の表面処理剤組成物の製造方法。
【請求項12】
前記第2シラン系化合物は、ビニル系シラン化合物、アミン系シラン化合物、エポキシシラン化合物、カルボン酸エステル系シラン化合物、メタクリル系シラン化合物、イミダゾール系シラン化合物及びアクリル系シラン化合物からなる群から選択される一つ以上の化合物である請求項8に記載の表面処理剤組成物の製造方法。
【請求項13】
前記第2シラン系化合物は、下記化学式35ないし37で表示される化合物からなる群から選択された一つ以上である請求項8に記載の表面処理剤組成物の製造方法。
[化35]

[化36]

[化37]

【請求項14】
前記水系溶媒は、水と有機溶媒との混合溶媒である請求項8に記載の表面処理剤組成物の製造方法。
【請求項15】
前記水系溶媒中の水の含有量は、水系溶媒総重量の70ないし90重量%である請求項8に記載の表面処理剤組成物の製造方法。
【請求項16】
銅箔層と、
前記銅箔層上に形成された防錆層と、
前記防錆層上に形成された前記請求項1ないし7のうちいずれか1項に記載の表面処理剤組成物をコーティングして得られる表面処理膜と、を含む印刷回路基板用銅箔。
【請求項17】
請求項16に記載の印刷回路基板用銅箔と、
前記銅箔の表面処理膜上に形成されたポリイミド層と、を含む軟性銅箔積層フィルム。

【公表番号】特表2013−500378(P2013−500378A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522746(P2012−522746)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/KR2010/004523
【国際公開番号】WO2011/013922
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(509181932)イルジン カッパー ホイル カンパニー リミテッド (8)
【出願人】(510122175)コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー (2)
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL TECHNOLOGY
【Fターム(参考)】