説明

表面処理方法およびそれを用いる電子部品の製造方法

【課題】 複雑な形状に加工された基体に対しても、加熱による損傷などを与えることなく、所望の部分にめっきを施すことのできる表面処理方法を提供する。
【解決手段】 基体14の長手状部分7の全表面に電着塗装によってレジスト層15を形成した後、低濡れ性領域形成予定部23に形成されたレジスト層15を長手状部分7の周方向全周にわたって露光して現像することによってレジストパターン16を形成し、基体14の長手状部分7のレジスト層15で覆われていない部分22にめっきを施す。これによって、複雑な形状に加工された基体14に対しても、また基体14のピッチTが0.1mm程度と狭い場合であっても、基体14の長手状部分7の所望の部分に周方向全周にわたってめっきを施すことができるので、長手状部分7の周方向全周にわたって、はんだ接合部とコネクタ嵌合部との間に低濡れ性領域が形成されたコネクタピンなどの接点部品を容易に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体の所望の部分にめっきを施すための表面処理方法およびそれを用いる電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタなどの電子部品の接点部品には、回路基板または他の電子部品との電気的な接触の信頼性を得るためにめっき層が設けられる。コネクタの接点部品は、たとえば、板材を、帯状などの目的の形状を有する基体と支持フレームとを含む形状に予め打ち抜き加工した後(以後、このように加工された板材を条材と称する)、基体の全面または一部分にめっきを施し、その後、コネクタの接点部品として使用される必要部分を条材の支持フレームから切り離すことによって得られる。
【0003】
コネクタには多くの種類があるが、例えば、基板実装用コネクタは、基板とのはんだ付けに使用されるはんだ接合部と、はんだ接合部から突出して延びて設けられ、別の対になるコネクタとの嵌合に使用される長手状のコネクタ嵌合部とを含んで構成される。基板実装用コネクタの基板への実装は、はんだ接合部をはんだ付けすることによって行われる。このはんだ接合の際に、溶融したはんだがコネクタ嵌合部にまで達する、いわゆるはんだ上がりが発生し、基板とコネクタとの電気的接触の信頼性を損なうという問題がある。最近では、情報家電機器などの電子機器の小型化および高機能化に伴い、電子部品の接点部品の微細化が進んでおり、はんだ接合工程において、はんだ上がりに起因する不良が一層発生しやすくなっている。
【0004】
また、はんだ接合時に、はんだ上がりが発生すると、溶融したはんだがコネクタの樹脂ケースに付着し、その温度によって樹脂ケースに変形などの悪影響を与えることがある。ここで用いられるはんだとしては、従来、錫と鉛とから成るSn−Pb系はんだが用いられていたけれども、地球環境への影響などを考慮して、鉛を含まない、いわゆる鉛フリーはんだが用いられるようになっている。鉛フリーはんだは、Sn−Pb系はんだに比べて、融点が高いので、はんだ接合時のはんだ上がりによるコネクタの樹脂ケースへの悪影響が大きい。
【0005】
このはんだ上がりによる上述の問題を解決するための技術として、コネクタのはんだ接合部とコネクタ嵌合部との間に、はんだ接合部に比べてはんだとの濡れ性が劣る領域(以後、低濡れ性領域と称する)を形成することが提案されている。このような低濡れ性領域を有するコネクタは、たとえば、コネクタの基材となる条材の基体部分全面に、ニッケルなどのはんだとの濡れ性に劣る金属(以後、低濡れ性金属と称する)でめっきを施した後、はんだ接合部を形成するべく予め定める部分に、金などのはんだとの濡れ性に優れる金属(以後、高濡れ性金属と称する)で部分めっきを施すことによって形成される。この高濡れ性金属でめっきされた部分がはんだ接合部として使用される高濡れ性領域となり、高濡れ性金属によるめっきが施されず、低濡れ性金属が露出している部分が低濡れ性領域となる。
【0006】
このようなコネクタでは、はんだ接合部にはんだ付けを行なう際、溶融したはんだは、低濡れ性領域によってはみ出しが防止され、コネクタ嵌合部には達しないので、コネクタ嵌合部にはんだ上がりを生じさせること無く実装を行なうことができる。
【0007】
このような低濡れ性領域を有する接点部品の製造に用いられる部分めっきの方法としては、めっき液の液面の高さを制御して、めっきを施す部分のみをめっき液に浸漬させてめっきを行なう液面管理法がある。液面管理法では、基体の長手状部分の全表面に一度に部分めっきを施すことができるけれども、形成されるめっき層の幅の公差が±1.0mm程度と大きいので、微細な接点部品のめっきには使用できないという問題がある。
【0008】
別の方法としては、めっきを施さない部分(以後、めっき不要部分とも称する)を覆う、いわゆるマスキングをしてめっき加工を行なうマスキング法がある。マスキング法には、めっき不要部分にめっき液に対して耐性を有するテープを貼り付けてめっきを行なうテープマスキング法、めっき不要部分に対応する部分が開口されたベルト状のマスクを基体に押し当てて、マスクの開口部からめっき液を噴射してめっきを行なうベルトマスキング法などがある。形成されるめっき層の幅の公差は、テープマスキング法が±0.1mm程度、ベルトマスキング法が±0.2mm程度であり、いずれの方法においても液面管理法よりも精度の高い部分めっきが可能である。しかしながら、複雑な形状に加工された基体に対しては、精度良くマスキングを行なうことが困難であり、これらの方法を使用することはできない。また、最近の接点部品の微細化に伴い、マスキングされるめっき不要部分の幅はたとえば1mm以下と狭小化しており、そのような幅の狭い部分をテープまたはベルト状のマスクでマスキングすることは困難である。
【0009】
前述のような幅の狭い部分についても精度良くマスキングすることのできる方法として、めっき不要部分を覆うレジストマスクをインクジェットプリントによって形成する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1には、インクジェットプリントでレジストマスクを形成することによって、幅が1mm程度と狭い部分であっても精度良くマスキングできることが開示される。
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、はんだ上がりを防止するための低濡れ性領域が、基体の長手状部分の周方向一表面のみにしか設けられていないので、はんだ上がりの防止効果が充分に得られないという問題がある。はんだ上がりの防止効果を充分に発揮させるためには、基体の長手状部分の周方向全周にわたって精度良く部分めっきを施すことが求められるけれども、特許文献1に開示の方法では、レジスト液を基体に向けて吐出させてレジストマスクを形成するので、基体の周囲に複数の吐出部を設けることが必要であり、装置が大型化するとともに複雑化するという問題がある。また、複雑な形状の基体の場合、基体の長手状部分の周方向全周にわたってレジスト液を均一に付着させることは困難である。
【0011】
基体の全表面にレジスト層を形成するための技術としては、電着塗装によってレジスト層を形成することが提案されている(たとえば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に開示の方法では、基体の全表面に電着塗装でレジスト層を形成した後、ボンディング面として使用される一表面に形成されたレジスト層の一部分を露光および現像によって除去し、ボンディング面の露出された部分にめっきを施している。めっきの際、基体の他の表面は、全体がレジスト層で覆われて露出していないので、めっきが施されない。すなわち、特許文献2に係る発明は、基体のボンディング面となる1つの表面に部分めっきを施すためになされたものであり、基体の長手状部分の周方向全周にわたって部分めっきを施す方法については特許文献2には開示されていない。
【0012】
別の先行技術では、部分めっきに依らずに、前述の高濡れ性領域と低濡れ性領域とを形成する方法が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。特許文献3に開示の技術では、基体の長手状部分の全表面にニッケルめっき層と金めっき層とを順次形成した後、所定の領域にレーザ光を照射して金めっき層の一部を除去することによって、長手状部分の周方向全周にわたって露出したニッケルめっき層で低濡れ性領域を形成し、残存する金めっき層で高濡れ性領域を形成している。
【0013】
しかしながら、特許文献3に開示の技術において、基体の長手状部分の周方向全周にわたってレーザー光を照射するためには、基体の周囲に複数のレーザー光源を設けるか、または複数個の基体が接続された支持フレームをS字形状に折り曲げて搬送し、支持フレームが折れ曲がった部分二箇所でレーザー光を照射するなどの装置構成の変更が必要であり、装置の大型化および複雑化が避けられない。また、特許文献3に開示の技術では、ニッケルめっき層表面から除去された金めっき層が、周辺部に飛散して堆積し、他の部分を汚染する恐れもある。
【0014】
また、特許文献3に開示の技術では、レーザー光の照射による加熱によって直接金めっき層を蒸発除去するので、基体が加熱による損傷を受け、作製された接点部品のばね特性、機械的強度などが低下するという問題もある。この機械的強度などの低下は、コネクタのように繰返し抜き差しされて使用される電子部品の接点部品において特に問題となる。また、金めっき層を除去する際には、下地のニッケルめっき層に対してもレーザー光の照射による熱が加わるので、ニッケルめっき層が基体表面から剥離しやすくなり、電子部品としての長期的な信頼性も低くなる。また、特許文献3に開示のように、ニッケルめっき層の表面全体に金めっき層を形成した後で不要な部分の金めっき層を除去することは、製造原価の大幅な上昇を招くので、汎用される接点部品の製造方法として現実的でない。
【0015】
また、レーザー光の照射による金めっき層の除去には時間を要するので、生産性が悪いという問題もある。特許文献3に開示の技術は、レーザー光の照射時間を短縮するための方法として、低濡れ性領域となるニッケルめっき層表面の金めっき層の一部を残し、ニッケルと金との混合層で低濡れ性領域を形成することを提案する。しかしながら、低濡れ性領域をニッケルと金との混合層で形成すると、ニッケル単体層で低濡れ性領域を形成する場合に比べて、はんだ上がりの防止効果が低くなるという、本来の目的と異なる結果を招く。
【0016】
【特許文献1】特開2004−43852号公報(第3−4頁,第1図)
【特許文献2】特開平6−173076号公報(第3−4頁)
【特許文献3】特開2004−277837号(第5−7頁,第2−4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、複雑な形状に加工された基体に対しても、加熱による損傷などを与えることなく、所望の部分にめっきを施すことのできる表面処理方法およびそれを用いる電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、長手状部分を有する基体の表面処理方法であって、基体の長手状部分の全表面にわたって電着塗装によってレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、形成されたレジスト層の少なくとも一部分を基体の長手状部分の周方向全周にわたって露光する露光工程と、露光されたレジスト層を現像してレジストパターンを形成する現像工程と、基体の長手状部分のレジスト層で覆われていない部分にめっきを施すめっき工程とを含むことを特徴とする表面処理方法である。
【0019】
また本発明は、前記レジスト層形成工程では、レジスト層を厚さが3μm以上30μm以下になるように形成することを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記露光工程では、基体の長手状部分に対して少なくとも2つの方向から光が照射されることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記露光工程では、基体を挟んで対向するように設けられる2つ以上の光源によって露光を行なうことを特徴とする。
【0022】
また本発明は、基体の長手状部分は、少なくとも表面がはんだに対する濡れ性の低い低濡れ性金属を含有する低濡れ性金属層で構成され、前記めっき工程では、基体の長手状部分のレジスト層で覆われていない部分に、はんだに対する濡れ性の高い高濡れ性金属を含有する高濡れ性金属層をめっきによって形成し、前記めっき工程の後には、残存するレジスト層を除去するレジスト除去工程をさらに含むことを特徴とする。
【0023】
また本発明は、基体の長手状部分は、少なくとも表面がはんだに対する濡れ性の高い高濡れ性金属を含有する高濡れ性金属層で構成され、前記めっき工程では、基体の長手状部分のレジスト層で覆われていない部分に、はんだに対する濡れ性の低い低濡れ性金属を含有する低濡れ性金属層をめっきによって形成し、前記めっき工程の後には、残存するレジスト層を除去するレジスト除去工程をさらに含むことを特徴とする。
【0024】
また本発明は、低濡れ性金属が、ニッケル、コバルト、タングステンおよび鉄から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする。
【0025】
また本発明は、高濡れ性金属が、金、金−ニッケル合金、金−コバルト合金、金−ニッケル−コバルト合金、金−銀合金、銀、銅、パラジウム、パラジウム−ニッケル合金、ロジウム、ルテニウム、錫、錫−亜鉛合金、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−鉛合金、ならびに錫と亜鉛、銀、銅およびビスマスのうちの少なくとも2種との合金から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする。
【0026】
また本発明は、前記本発明の表面処理方法を用いて電子部品を製造することを特徴とする電子部品の製造方法である。
【0027】
また本発明は、電子部品がコネクタであり、コネクタの接点部品が前記本発明の表面処理方法によって形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、長手状部分を有する基体に対して、その長手状部分の全表面にわたって電着塗装によってレジスト層を形成し、形成されたレジスト層の少なくとも一部分を基体の長手状部分の周方向全周にわたって露光して現像することによってレジストパターンを形成し、基体の長手状部分のレジスト層で覆われていない部分(以後、レジスト非被覆部と称する)にめっきを施す。レジスト層を露光する際には、レジスト層を基体の長手状部分の周方向全周にわたって露光するので、現像後には基体の長手状部分の周方向全周にわたって連続してレジストパターンを形成することができる。したがって、複雑な形状に加工された基体に対しても、その長手状部分の所望の部分に周方向全周にわたってめっきを施すことができる。また、このように必要な部分のみにめっきを施すことができるので、基体の長手状部分の全表面をめっきした後で不要な部分のめっき層を除去する場合に比べて、製造原価を大幅に低減することができる。さらに、不要な部分のめっき層をレーザ光の照射によって除去する場合のように基体に熱が加わることがないので、基体のばね特性、機械的強度などの低下および基体表面層の剥離を抑えることができる。
【0029】
また本発明によれば、レジスト層は、厚さが3μm以上30μm以下になるように形成されることが好ましい。レジスト層の厚さを前記範囲に選択することによって、基体の長手状部分の全表面に形成されたレジスト層に対して容易に精度良く露光を施すことができるので、レジストパターンを精度良く形成することができる。
【0030】
また本発明によれば、レジスト層を露光する際には、基体の長手状部分に対して少なくとも2つの方向から光を照射することが好ましく、基体を挟んで対向するように設けられる2つ以上の光源によって露光を行なうことがさらに好ましい。このようにして露光を行なうことによって、レジスト層を容易に長手状部分の周方向全周にわたって露光することができる。また、このような露光は、簡単な構造の露光装置を用いて行なうことができるので、インクジェットプリントでレジストマスクを形成する場合に比べて、製造装置を小型化および簡略化することができる。
【0031】
また本発明によれば、基体の長手状部分のレジスト非被覆部にめっきを施した後には、残存するレジスト層を除去する。基体の長手状部分の表面が低濡れ性金属層で構成され、長手状部分のレジスト非被覆部に高濡れ性金属層が形成される場合、レジスト層を除去した後には、長手状部分の表面を構成する低濡れ性金属層が露出する。また、基体の長手状部分の表面が高濡れ性金属層で構成され、長手状部分のレジスト非被覆部に低濡れ性金属層が形成される場合、レジスト層を除去した後には、長手状部分の表面を構成する高濡れ性金属層が露出する。したがって、基体の長手状部分の周方向全周にわたって、はんだに対する濡れ性の低い低濡れ性領域と、はんだに対する濡れ性の高い高濡れ性領域とを、長手状部分の長手方向に並べて形成することができる。
【0032】
また本発明によれば、低濡れ性金属としては、ニッケル、コバルト、タングステンおよび鉄から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0033】
また本発明によれば、高濡れ性金属としては金、金−ニッケル合金、金−コバルト合金、金−ニッケル−コバルト合金、金−銀合金、銀、銅、パラジウム、パラジウム−ニッケル合金、ロジウム、ルテニウム、錫、錫−亜鉛合金、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−鉛合金、ならびに錫と亜鉛、銀、銅およびビスマスのうちの少なくとも2種との合金から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。これらの金属は、はんだに対する濡れ性に優れるとともに、電気的な接触抵抗が他の金属に比べて低く、かつ耐食性にも優れる。よって、これらの金属を用いることによって、高濡れ性領域とともに、電気的な接触抵抗が低く、かつ耐食性に優れる低接触抵抗領域を形成することができる。
【0034】
また本発明によれば、電子部品は前記本発明の表面処理方法を用いて製造される。本発明の表面処理方法を用いることによって、前述のように複雑な形状に加工された基体に対しても、その長手状部分の所望の部分に周方向全周にわたってめっきを施すことができる。したがって、所望の形状を有し、かつ所望の部分にめっきが施された電子部品を容易に製造することができる。
【0035】
また本発明によれば、コネクタの接点部品は前記本発明の表面処理方法によって形成される。このことによって、レーザー光による加熱などでばね特性や機械的強度などを低下させることなく、低濡れ性領域と高濡れ性領域とを有する接点部品を作製することができる。このような接点部品を用いてコネクタを製造することによって、はんだ付け時のコネクタ嵌合部へのはんだ上がりが抑えられ、はんだ上がりによる不良がなく、かつ耐久性に優れるコネクタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1は、本発明の電子部品の製造方法によって製造される電子部品に備わる接点部品の一例であるコネクタピン1の構成を簡略化して示す図である。図1(a)はコネクタピン1を長手状部分6側から見て示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)に示すコネクタピン1のコネクタ嵌合部5を切断面線I−Iから見て示す断面図である。図1(c)は、図1(a)に示すコネクタピン1の低濡れ性領域3を切断面線II−IIから見て示す断面図である。図1(d)は、図1(a)に示すコネクタピン1のはんだ接合部4を切断面線III−IIIから見て示す断面図である。なお、2つのコネクタ嵌合部5は同様の構成を有するので、図1(b)では、2つのコネクタ嵌合部5のうち、一方のみを示す。また、2つの低濡れ性領域3は同様の構成を有するので、図1(c)では、2つの低濡れ性領域3のうち、一方のみを示す。
【0037】
コネクタピン1は、はんだ接合部4と、はんだ接合部4から互いに略平行に突出して延びる一対の長手状部分6とを含む。長手状部分6の有端側部分によってコネクタ嵌合部5が構成されている。本実施形態では、2つの長手状部分6は、いずれも略角柱形状である。
【0038】
コネクタピン1は、はんだ接合部4ではんだ付けされて図示しない基板に実装され、コネクタ嵌合部5によって別の対になる図示しないコネクタと嵌合されて使用される。コネクタ嵌合部5に嵌合される別の対になるコネクタは、コネクタピン1が実装される基板と別の基板に実装される。コネクタ嵌合部5で別の対になるコネクタと嵌合することによって、コネクタピン1が実装される基板と、別の対になるコネクタが実装される基板とを電気的に接続することができる。
【0039】
はんだ接合部4は、はんだ濡れ性に優れる高濡れ性領域2bを有する。本実施形態では、はんだ接合部4全体が高濡れ性領域2bとして形成される。コネクタ嵌合部5は、接触抵抗がたとえば1〜10mΩ(接触荷重25g)と低く、耐食性に優れる低接触抵抗領域2aを有する。本実施形態では、コネクタ嵌合部5全体が低接触抵抗領域2aとして形成される。はんだ接合部4とコネクタ嵌合部5との間には、はんだとの濡れ性に劣る低濡れ性領域3が設けられる。本実施形態では、低濡れ性領域3は、2つの長手状部分6の長手方向中間部に、長手状部分6の周方向全周にわたってそれぞれ形成される。また、長手状部分6のはんだ接合部4に連なる基端部には、はんだ接合部4から連続して高濡れ性領域2bが形成されている。すなわち、本実施形態では、高濡れ性領域2b、低濡れ性領域3および低接触抵抗領域2aは、この順に、コネクタピン1の長手状部分6の長手方向に並んで形成される。
【0040】
本実施形態のように、はんだ接合部4とコネクタ嵌合部5との間に低濡れ性領域3を設けることによって、はんだ接合部4にはんだ付けを行なう際のコネクタ嵌合部5へのはんだ上がりを防止することができる。具体的には、はんだ接合部4にはんだ付けを行なう際、溶融したはんだは、はんだ接合部4からコネクタ嵌合部5に向かって流れるけれども、はんだ接合部4とコネクタ嵌合部5との間には低濡れ性領域3が設けられているので、低濡れ性領域3によってコネクタ嵌合部5方向への流動が阻止され、コネクタ嵌合部5には達しない。したがって、はんだ接合部4からコネクタ嵌合部5へのはんだ上がりを防止することができる。特に、本実施の形態では、低濡れ性領域3が、長手状部分6の周方向全周にわたって形成されているので、はんだ上がりを確実に防ぐことができる。
【0041】
コネクタピン1は、基体14と、基体14の表面に形成される高濡れ性金属層13bおよび低接触抵抗金属層13aとを含む。基体14は、基体本体11と、基体本体11の表面に形成される低濡れ性金属層12とを含む。低濡れ性金属層12は、はんだとの濡れ性の低い低濡れ性金属を含有する。高濡れ性金属層13bは、はんだとの濡れ性の高い高濡れ性金属を含有する。低接触抵抗金属層13aは、接触抵抗がたとえば1〜10mΩ(接触荷重25g)と低く、かつ耐食性に優れる低接触抵抗金属を含有する。
【0042】
低濡れ性金属層12は、基体本体11の表面全体に形成され、基体14の表面層を構成する。はんだ接合部4では、基体14の表面に高濡れ性金属層13bが形成される。高濡れ性金属層13bが形成されている部分が高濡れ性領域2bを構成する。コネクタ嵌合部5では、基体14の表面に低接触抵抗金属層13aが形成される。低接触抵抗金属層13aが形成されている部分が低接触抵抗領域2aを構成する。低濡れ性領域3では、基体14の表面に低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bが形成されず、低濡れ性金属層12が露出している。この低濡れ性金属層12が露出した部分が低濡れ性領域3を構成する。
【0043】
本実施形態では、低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bは同一の材料で形成される。低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bは、異なる材料で形成されてもよいけれども、本実施態様のように同一の材料で形成されることが好ましい。これによって、後述するめっき工程において、低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bを同時に形成することができるので、製造工程を簡略化することができる。
【0044】
図1に示すコネクタピン1などの接点部品を含む電子部品を製造する本発明の電子部品の製造方法は、本発明の表面処理方法を用いるものであり、以下ではまず本発明の表面処理方法について説明する。本発明の表面処理方法は、少なくとも、レジスト層形成工程と、露光工程と、現像工程と、めっき工程とを含む。本発明の実施の一態様である表面処理方法は、下地めっき工程と、レジスト層形成工程と、露光工程と、現像工程と、めっき工程と、レジスト除去工程とを含む。
【0045】
[下地めっき工程]
図2は、基体本体11の表面に低濡れ性金属層12を形成した状態を示す図である。図2(a)は条材9を厚み方向一方側から見て示す側面図であり、図2(b)は基体14を長手状部分7側から見て示す斜視図である。なお、図2(b)では、図2(a)に示す条材9に含まれる基体14の1つを拡大して示す。本実施態様の表面処理方法では、まず、基体本体11に対してめっきを施し、基体本体11の表面全体にわたって低濡れ性金属層12を形成する。これによって、基体本体11と低濡れ性金属層12とから成る基体14が形成される。
【0046】
本実施態様では、複数の基体本体11を、基体支持部8を介して支持フレーム10に支持した条材9aの状態で、基体本体11の厚み方向に垂直な方向であって長手状部分6の長手方向に垂直な方向である矢符16方向に搬送しながら、連続して表面処理を行なう。条材9aには、複数の基体本体11および基体支持部8aと、支持フレーム10とが含まれる。本実施態様では、基体本体11は、基体支持部8aおよび支持フレーム10と一体的に形成され、低濡れ性金属層12は、基体本体11および基体支持部8aに形成される。低濡れ性金属層12が形成されてなる基体14は、基体支持部8を介して支持フレーム10に接続された条材9の状態で次のレジスト形成工程に供される。
【0047】
本実施形態では、基体14は、その表面として、図2(a)の紙面に平行な表面であって基体14の厚み方向一方側の表面である第1表面14aと、第1表面14aに連なる表面であって図2(a)の紙面に向かって第1表面14aの右側にある表面である第2表面14bと、図2(a)の紙面に平行な表面であって基体14の厚み方向他方側の表面である第3表面14cと、第1表面14aに連なる表面であって図2(a)の紙面に向かって第1表面14aの左側にある側面である第4側面14dと、2つの長手状部分7同士の対向する表面である第5表面14eおよび第6表面14fとを有する。
【0048】
基体本体11を構成する材料としては、公知の導電材料を用いることができ、その中でも、銅、銅−ニッケル合金、チタン−銅合金、りん青銅、真鍮などの銅合金、ニッケル−鉄合金などが好適に用いられる。これらの材料は、打ち抜き加工などによって所望の形状に加工されて基体本体11として使用される。基体本体11の形状は、製造するコネクタピン1の形状に応じて適宜選択される。支持フレーム10および基体支持部8は、打ち抜き加工などによって基体本体11と一体的に形成することができる。
【0049】
低濡れ性金属層12は、たとえばニッケルめっき層で形成される。低濡れ性金属層12は、これに限定されず、はんだに対する濡れ性の低い低濡れ性金属を含有するものであればよい。低濡れ性金属としては、ニッケル、コバルト、タングステンおよび鉄から選ばれる1種または2種以上を含む単体金属または合金を用いることが好ましく、その中でもニッケルが特に好ましい。ここで、はんだに対する濡れ性の高低は、相対的なものであり、低濡れ性金属とは、高濡れ性金属層13bに含有される高濡れ性金属と比較して、はんだに対する濡れ性が低い金属のことである。したがって、低濡れ性金属は、高濡れ性金属として使用される金属の種類に応じて適宜選択して使用される。低濡れ性金属層12の厚さは、たとえば0.5〜5μmである。
【0050】
低濡れ性金属層12を形成するための基体本体11のめっきは、たとえば、電解めっき、化学めっきなどを用いて行なうことができる。電解めっきを用いる場合、基体本体11のめっきは、基体本体11を、低濡れ性金属層12を形成する金属イオンを含むめっき浴に浸漬して通電することによって行なうことができる。めっき浴としては、ニッケルめっきを施す場合には、たとえばワット浴、スルファミン酸浴などを用いることができる。ワット浴としては、たとえば、硫酸ニッケル200〜300g/L、塩化ニッケル30〜60g/L、硼酸20〜50g/Lおよびサッカリン0.1〜3g/Lを含むものなどが挙げられる。スルファミン酸浴としては、たとえば、結晶スルファミン酸ニッケル300〜450g/L、硼酸20〜50g/Lおよび界面活性剤0.1〜1g/Lを含むもの、ならびにこれらに塩化ニッケル5〜30g/Lを添加したものなどが挙げられる。
【0051】
以上のようにして基体本体11表面に低濡れ性金属層12を形成してなる基体14の長手状部分7の長さと基体支持部8の長手方向の長さとの和Lは、たとえば1〜20mmである。基体14の第1長手状部分7aと第2長手状部分7bとの最短距離(以後、間隔と称する)Wは、たとえば0.5〜5mmである。基体14の厚さ、すなわち長手状部分7の長手方向に垂直な方向であって搬送方向16に垂直な方向の長さSは、たとえば0.1〜0.3mmである。また、隣合う基体14の対向する長手状部分7同士の間隔(以後、ピッチと称する)Tは、たとえば0.1〜5mmである。
【0052】
なお、前述のように低濡れ性金属層12の厚さは0.5〜5μmと薄いので、基体本体11の長手状部分7となる部分の長手方向の長さと基体支持部8aの長手方向の長さとの和L’、第1長手状部分7aとなる部分と第2長手状部分7bとなる部分との間隔W’および厚さS’は、それぞれ、基体14の長手状部分7の長さと基体支持部8の長手方向の長さとの和L、第1長手状部分7aと第2長手状部分7bとの間隔Wおよび厚さSと略等しい。また、隣合う基体本体11の対向する長手状部分7となる部分同士の間隔であるピッチT’は、基体14における前記ピッチTと略等しい。
【0053】
次いで、レジスト層形成工程および露光工程を行なう。図3は、露光工程における基体14の状態を簡略化して示す断面図である。図3は、図2(a)に示す基体14の第1長手状部分7aを搬送方向16に垂直な切断面線IV−IVから見て示す断面図であり、図2(a)に示す基体14の搬送方向16は、図3の紙面に垂直な方向に相当する。なお、図3では、レジスト層15を後述するネガ型レジスト電着塗料で形成する場合を示す。
【0054】
[レジスト層形成工程]
レジスト層形成工程では、前述の基体本体11に低濡れ性金属層12が形成されてなる基体14に対して、少なくともその長手状部分7の全表面にわたって、電着塗装によってレジスト層15を形成する。本実施態様では、基体14の長手状部分の全表面を含む露出する表面全体と、基体支持部8の表面全体とにわたって、連続してレジスト層15を形成する。電着塗装によってレジスト層15を形成することによって、基体14の全表面および基体支持部8の全表面に均一な厚みでレジスト層15を形成することができる。具体的には、隣合う基体14に対向する表面である基体14の第2表面14bおよび第4表面14dに対しても、基体14の厚み方向一方側の表面である第1表面14aおよび厚み方向他方側の表面である第3表面14cと同じ均一な厚みのレジスト層15を容易に形成することができる。また、2つの長手状部分7aおよび7bの互いに対向する表面である第5表面14eおよび第6表面14fに対しても、第1表面14aおよび第4表面14dと同じ均一な厚みのレジスト層15を形成することができる。このように、本実施態様では、長手状部分7の表面全体にわたって、均一な厚さのレジスト層15を容易に形成することができる。
【0055】
レジスト層15の厚さdは、3μm以上30μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上20μm以下である。この理由については後述する。本実施態様では、電着塗装によってレジスト層15を形成するので、厚さの調整が容易であり、厚さが前記範囲内にあるレジスト層15を容易に形成することができる。
【0056】
基体14に対する電着塗装は、公知の方法に従い、たとえば、電着塗料を満たした通電槽中に基体14を浸漬し、この状態で通電することによって実施される。電着塗料としては、レジスト層15として感光性を有する塗膜を形成することのできるレジスト電着塗料が用いられる。レジスト電着塗料としては、露光された部分が硬化して現像液に不溶性または難溶性となる塗膜を形成することのできるネガ型レジスト電着塗料、露光された部分が分解して現像液に可溶性となる塗膜を形成することのできるポジ型レジスト電着塗料のいずれを用いてもよい。また、これらのレジスト電着塗料は、カチオンタイプおよびアニオンタイプのいずれであってもよい。
【0057】
ネガ型レジスト電着塗料としては、たとえば、アクリル酸エステル共重合体と、アクリロイル基、メタクリロイル基などの官能基を複数有する多官能不飽和アクリレートとの混合物を、適当な中和剤で中和させて水中に分散させたものなどが挙げられる。ポジ型レジスト電着塗料としては、たとえば、キノンジアジド基を有するアクリル酸エステル共重合体を適当な中和剤で中和させて水中に分散させたものなどが挙げられる。これらのレジスト電着塗料は、含有されるアクリル酸エステル共重合体などの樹脂に、適当な官能基を導入することによって、カチオンタイプまたはアニオンタイプに調整することができる。
【0058】
アニオンタイプのレジスト電着塗料を用いる場合、基体14を陽極とし、陰極として、たとえばカーボン板、ステンレス鋼板などを使用する。カチオンタイプのレジスト電着塗料を用いる場合には逆に、基体14を陰極とし、カーボン板、ステンレス鋼板などを陽極として使用する。カチオンタイプおよびアニオンタイプのいずれのレジスト電着塗料を用いるかは、基体本体11および低濡れ性金属層12を構成する材料などに応じて適宜選択される。形成されるレジスト層15の厚さdは、電極間に印加する印加電圧および電圧印加時間などによって容易に調整することができる。電着塗装条件は、形成しようとするレジスト層15の厚さd、使用するレジスト電着塗料の組成、基体14の表面層である低濡れ性金属層12を構成する金属の種類、通電槽の大きさおよび形状などの各種条件に応じて広い範囲から適宜選択でき、たとえば、レジスト電着塗料の液温10〜50℃程度、印加電圧10〜250V程度、電圧印加時間5秒〜5分間程度である。
【0059】
[露光工程]
露光工程では、基体14の長手状部分7に形成されたレジスト層15の少なくとも一部分を、長手状部分7の周方向全周にわたって露光する。このようにレジスト層15を長手状部分7の周方向全周にわたって露光を施すことによって、基体14が図2に示すように複雑な形状の場合であっても、現像後には、後述する図6に示すように基体14の長手状部分7の周方向全周にわたってレジストパターン16を形成することができる。したがって、後述するめっき工程において、基体14の長手状部分7の周方向全周にわたって、精度よく部分めっきを施すことができる。
【0060】
レジスト層15に対する露光は、本実施態様では、前述の図1に示す低濡れ性領域3を形成するべく予め定める部分(以後、低濡れ性領域形成予定部と称する)23に形成されたレジスト層15aが、現像後において残存するように行われる。たとえば、レジスト層15をネガ型レジスト電着塗料で形成する場合には、図3に示すように、基体14の長手状部分7の低濡れ性領域形成予定部23に形成されたレジスト層15を、長手状部分7の周方向全周にわたって露光して硬化させる。また、レジスト層15をポジ型レジスト電着塗料で形成する場合には、基体14の長手状部分7の低濡れ性領域形成予定部23を除く部分22に形成されたレジスト層15bを露光して、現像液に対して可溶性に変化させる。
【0061】
レジスト層15に対する露光は、具体的には基体14の長手状部分7に対して少なくとも2つの方向から光を照射することによって行なうことができる。本実施態様では、図3に示すように、基体14を挟んで対向するように設けられる2つの光源18,19を用いて、基体14を図3の紙面手前側から奥側に向かって搬送しながら、矢符20および矢符21で示される2つの方向から光を照射することによって露光を行なう。光源18,19としては、本実施形態では、拡散光を照射することのできるものを用いる。
【0062】
光源18,19から出射される光は、露光マスク17の開口部を通して基体14表面のレジスト層15に照射される。この露光において、基体14が、第1光源18と第2光源19とを結ぶ仮想平面に関して基体14の搬送方向上流側に位置するとき、基体14の搬送方向下流側の表面、具体的には長手状部分7の第4表面14dおよび第6表面14fに対して光が照射される。基体14が搬送されて、第1光源18と第2光源19とを結ぶ仮想平面近傍に位置するとき、基体14の厚み方向両方の表面部である長手状部分7の第1表面14aおよび第3表面14cに対して光が照射される。基体14がさらに搬送されて、第1光源18と第2光源19とを結ぶ仮想平面に関して基体14の搬送方向下流側に位置するとき、基体14の搬送方向上流側の表面、具体的には長手状部分7の第2表面14bおよび第5表面14eに対して光が照射される。このように、本実施態様では、基体14と、間隔を空けて設けられる2つ以上の光源、具体的には2つの光源18,19とを相対的に変位させながら露光するので、レジスト層15を容易に長手状部分7の周方向全周にわたって露光することができる。また、このような露光は、簡易な構造の露光装置を用いて行なうことができるので、インクジェットプリントでレジストマスクを形成する場合に比べて、製造装置を小型化および簡略化することができる。
【0063】
なお、レジスト層15をポジ型レジスト電着塗料で形成する場合には、低濡れ性領域形成予定部23を除く部分22全体を露光する必要があるけれども、本実施態様では、はんだ接合部4となる部分のうち、前述の図2に示す長手状部分7を連結する連結部4aに形成されたレジスト層15に対しても、連結部4aの周方向全周にわたって露光することができる。すなわち、連結部4aの支持フレーム10を臨む表面および長手状部分7同士によって形成される空間に臨む表面に形成されたレジスト層15に対しても確実に露光を施すことができる。
【0064】
レジスト層15に対する露光精度を向上させるためには、レジスト層15の厚さdは、前述のように3μm以上30μm以下であることが好ましく、5μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。レジスト層15を厚さdが前記範囲内になるように形成することによって、基体14の第1表面14aおよび第3表面14cだけでなく、第2表面14bおよび第4表面14d、ならびに長手状部分7同士の対向する表面である第5表面14eおよび第6表面14fに対しても、容易に精度の良い露光を施すことができる。
【0065】
特に、本実施態様のように、レジスト層15に対して、基体14を搬送するとともに、基体14を挟んで対向する2つの光源18,19から光を照射することによって露光を行なう場合には、レジスト層15の厚さdを前記範囲にすることが好ましい。これによって、形成されたレジスト層15に対して長手状部分7の周方向全周にわたって確実に露光を施すことができる。したがって、現像後には、基体14の長手状部分7の周方向全周にわたって、レジストパターン16を精度良く形成することができる。
【0066】
レジスト層15の厚さdが30μmを超えると、露光精度が低下し、レジストパターン16の精度が低下する可能性がある。また、本実施態様のように基体14を挟んで対向する2つの光源18,19から光を照射して露光する場合には、基体14の表面のうち、光源18,19を臨まない表面である第2表面14bおよび第4表面14d、ならびに長手状部分7同士の対向する表面である第5表面14eおよび第6表面14fに形成されたレジスト層15に対する露光が不充分となり、レジスト層15を長手状部分7の周方向全周にわたって露光できなくなるおそれがある。レジスト層15の厚さが3μm未満であると、後述する現像工程において、残存すべきレジスト層15、たとえばネガ型レジスト電着塗料で形成されるレジスト層15の場合には露光された部分のレジスト層15が剥離する恐れがあり、後述するめっき工程において精度の良い部分めっきを施すことができなくなる可能性がある。
【0067】
本実施態様によるレジスト層15の露光に好適に使用される露光装置としては、たとえば図4に示す露光装置24などが挙げられる。図4は、レジスト層15の露光に好適に使用される露光装置24の構成を簡略化して示す側面図である。図5は、露光装置24に備わる第1マスク部25を鉛直上方向から見て示す斜視図である。なお、図4では、図3に示すレジスト層15は、図が錯綜して理解が困難になるので、記載を省略する。露光装置24は、第1マスク部25、第2マスク部26、第1光源18および第2光源19を含んで構成される。
【0068】
第1マスク部25は、第1上側マスク27と、第1上側マスク27の鉛直下方に設けられる第1下側マスク28と、第1上側マスク27を支持する第1上側支持体29と、第1下側マスク28を支持する第1下側支持体30と、第1上側支持体29および第1下側支持体30を支持する第1支持基体31とを含む。第1上側支持体29および第1下側支持体30は、互いに独立して、図4の紙面に向かって上下方向である鉛直方向に移動可能に第1支持基体31に支持される。
【0069】
第2マスク部26は、第1マスク部25と同様の構成を有し、第2上側マスク32と、第2上側マスク32の鉛直方向に設けられる第2下側マスク33と、第2上側マスク32を支持する第2上側支持体34と、第2下側マスク33を支持する第2下側支持体35と、第2上側支持体34および第2下側支持体35を支持する第2支持基体36とを含む。第2上側支持体34および第2下側支持体35は、互いに独立して、図4の紙面に向かって上下方向である鉛直方向に移動可能に第2支持基体36に支持される。
【0070】
第1上側マスク27、第1下側マスク28、第2上側マスク32および第2下側マスク33は、前述の図3に示す露光マスク17として機能する。第1上側マスク27、第1下側マスク28、第2上側マスク32および第2下側マスク33は、互いに独立した部材であり、これらのマスクが支持される第1上側支持体29、第1下側支持体30、第2上側支持体34または第2下側支持体35を移動させることによって、図4の紙面に向かって上下方向である鉛直方向にそれぞれ移動させることができる。これによって、第1上側マスク27と第1下側マスク28との間隔、すなわち第1上側マスク27と第1下側マスク28とによって形成される開口部(以後、第1マスク開口部と称する)37の幅D1、および第2上側マスク32と第2下側マスク33との間隔、すなわち第2上側マスク32と第2下側マスク33とによって形成される開口部(以後、第2マスク開口部と称する)38の幅D2を、それぞれ調整することができる。
【0071】
第1マスク部25と第2マスク部26とは、第1上側マスク27と第2上側マスク32とが対向し、第1下側マスク28と第2下側マスク33とが対向するように、間隔を空けて設けられる。露光に際し、基体14は、この第1マスク部25と第2マスク部26とによって形成される開口部(以後、マスク間開口部と称する)39を図4の紙面手前側から奥側に向かって搬送される。
【0072】
図4に示す露光装置24では、第1下側マスク28は、第2下側マスク33を臨む表面の鉛直下方側端部に連なる部分が凹曲面状に形成され、鉛直下方側端部が鉛直上方側端部よりも幅が狭くなっている。第2下側マスク33も同様に、第1下側マスク28を臨む表面の鉛直下方側端部に連なる部分が凹曲面状に形成され、鉛直下方側端部が鉛直上方側端部よりも幅が狭くなっている。このため、鉛直下方側端部では、鉛直上方側端部に比べて、第1下側マスク28と第2下側マスク33との間隔が広くなっている。この間隔の広がった部分は、基体14を支持フレーム10に接続して搬送する際に、支持フレーム10を支持して搬送する基体搬送用ベルト40が通過する部分として使用される。
【0073】
このように間隔を広げた部分を設け、この部分を基体搬送用ベルト40の通過部として使用することによって、基体14の移動を妨げることなく、第1マスク部25と基体14との距離および第2マスク部26と基体14との距離を狭めることができる。これによって、基体14に形成されたレジスト層15に対する露光精度を向上させることができるので、レジストパターン16を精度良く形成することができる。なお、マスク間開口部39の幅の最小値、すなわち第1マスク部25と第2マスク部26との間隔(以後、この値をマスク間開口部39の幅と称する)D3は、基体14の厚さSに応じて適宜選択される。
【0074】
第1光源18は、第1上側マスク27および第1下側マスク28を臨み、第1マスク開口部37に向けて光を照射可能に設けられる。第2光源19は、第2上側マスク32および第2下側マスク33を臨み、第2マスク開口部38に向けて光を照射可能に設けられる。露光光としては、たとえば波長150〜400nmの紫外線を用いることができる。このような紫外線を出射することのできる第1および第2光源18,19としては、たとえば高圧水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。レジスト層15に対する露光光の照射量は、たとえば50〜1000mJ/cmである。露光光の波長および照射量は、レジスト層15を形成するレジスト電着塗料の感光性に応じて適宜選択される。
【0075】
露光装置24は、第1および第2光源18,19から第1および第2マスク開口部37,38に向けて光を照射することによって、基体14に形成されたレジスト層15のうち、第1および第2マスク開口部37,38に対応する部分のレジスト層15に対して、前述の図3に示すように長手状部分7の周方向全周にわたって露光を施すことができる。また、露光装置24では、第1マスク開口部37の幅D1および第2マスク開口部38の幅D2を調整することによって、レジスト層15の長手状部分7の長手方向における露光される部分の幅を容易に調整することができる。
【0076】
なお、本実施態様では、2つの光源18,19を用いて露光を行なうけれども、3つ以上の光源を用いて露光を行なってもよい。この場合には、各光源を、基体14を挟んで互いに対向するように、基体14の搬送方向に順に並べて設ける。たとえば、4つの光源を用いる場合、基体14に関して反対側に、基体14の搬送方向に並べて2つずつ光源を設ける。このように、基体14に関して反対側に複数個の光源を基体14の搬送方向に並べて設けることによって、より確実にレジスト層15を長手状部分7の周方向全周にわたって露光することができる。
【0077】
また、本実施態様では、基体14を搬送しながら露光を行なうけれども、基体14を固定し、光源18,19を含む露光装置を搬送しながら露光するようにしてもよい。
【0078】
[現像工程]
図6は、レジスト層15の現像後の状態を示す図である。図6(a)は基体14を厚み方向一方側から見て示す側面図であり、図6(b)は基体14を長手状部分7側から見て示す斜視図である。なお、図6(b)では、図6(a)に示す基体14の1つを拡大して示す。現像工程では、前述のようにして露光されたレジスト層15を現像する。これによって、低濡れ性領域形成予定部23を除く部分22に形成されたレジスト層15が除去され、低濡れ性領域形成予定部23のみにレジスト層15が存在するレジストパターン16が形成される。本実施態様では、前述のように低濡れ性領域形成予定部23のレジスト層15を長手状部分7の周方向全周にわたって露光するので、基体14の長手状部分7の周方向全周にわたってレジストパターン16を形成することができる。
【0079】
レジスト層15の現像には、公知の現像液を用いるができる。たとえば、レジスト層15をネガ型レジスト電着塗料で形成する場合には、乳酸、蟻酸、酢酸、クエン酸等の有機酸0.5〜20重量%と界面活性剤0.5〜20重量%とを含む水溶液などを用いることができる。また、レジスト層15をポジ型レジスト電着塗料で形成する場合には、5重量%メタケイ酸ナトリウム水溶液や1〜2重量%水酸化ナトリウム水溶液などを用いることができる。
【0080】
[めっき工程]
めっき工程では、レジストパターン16が形成された基体14に対してめっきを施す。これによって、基体14のレジスト非被覆部22、すなわち長手状部分7のレジスト層15で覆われていない表面とはんだ接合部4となる部分の表面とにめっきが施され、前述の図1に示すように低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bが形成される。この低接触抵抗金属層13aが形成された部分が低接触抵抗領域2aとなり、高濡れ性金属層13bが形成された部分が高濡れ性領域2bとなる。
【0081】
このようにして形成される低接触抵抗金属層13aと高濡れ性金属層13bとは同一の材料からなる。このように、低接触抵抗金属層13aと高濡れ性金属層13bとを同一の材料で形成することによって、1回のめっきで低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bを同時に形成することができるので、低接触抵抗金属層13aと高濡れ性金属層13bとを異なる材料で形成する場合に比べて製造工程を簡略化することができる。
【0082】
低接触抵抗金属層13aと高濡れ性金属層13bとを同一の材料で形成する場合、低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとなる金属層は、たとえば金めっき層で形成される。低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとなる金属層は、これに限定されず、前述の低接触抵抗金属の性質と高濡れ性金属の性質とを兼ね備えるものであれば、どのような金属で形成されてもよい。
【0083】
低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとなる金属層を形成する金属、すなわち接触抵抗が低く、耐食性に優れ、かつはんだとの濡れ性に優れる金属としては、金、金−ニッケル合金、金−コバルト合金、金−ニッケル−コバルト合金、金−銀合金、銀、銅、パラジウム、パラジウム−ニッケル合金、ロジウム、ルテニウム、錫、錫−亜鉛合金、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−鉛合金、ならびに錫と亜鉛、銀、銅およびビスマスのうちの少なくとも2種との合金から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましく、その中でも、金、金−ニッケル合金、金−コバルト合金、パラジウム−ニッケル合金、錫−銀合金、錫−銅合金が好ましく、金が特に好ましい。
【0084】
低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bを形成するための基体14のめっきは、たとえば、電解めっき、化学めっきなどを用いて行なうことができる。電解めっきを用いる場合、基体14のめっきは、レジストパターン16が形成された基体14を、低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bを形成する金属イオンを含むめっき浴に浸漬して通電することによって行なうことができる。めっき浴としては、金めっきを施す場合には、公知の酸性、中性またはアルカリ性の金めっき浴を用いることができ、たとえば、シアン化金カリウム、クエン酸、コバルト塩を含む酸性の金めっき浴、シアン化金カリウム、リン酸ナトリウム塩を含む中性の金めっき浴などが挙げられる。また、錫−銅合金めっきを施す場合には、公知の酸性、中性またはアルカリ性の錫−銅合金めっき浴を用いることができ、たとえば、メタンスルホン酸スズ、硫酸銅、メタンスルホン酸を含む酸性の錫−銅合金めっき浴などが挙げられる。
【0085】
前述のように、低接触抵抗金属層13aを構成する金属と高濡れ性金属層13bを構成する金属とは、同一のものであることが好ましいけれども、異なるものであっても構わない。この場合、低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bを構成する金属としては、前述の低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとなる金属層を形成する金属として例示したものから、それぞれ選択することができる。低接触抵抗金属層13aを構成する材料は、これに限定されず、接触抵抗が低く、かつ耐食性に優れる金属であればよい。また、高濡れ性金属層13bを構成する材料は、これに限定されず、はんだとの濡れ性に優れる金属であればよい。低接触抵抗金属層13aと高濡れ性金属層13bとを異なる材料で形成する場合には、たとえば、低接触抵抗金属層13aを形成するべく予め定められる部分の低濡れ性金属層12をめっきマスクで覆った状態でめっきを行なって高濡れ性金属層13bを形成した後、高濡れ性領域13bの表面をめっきマスクで覆い、この状態でめっきを行なって低接触抵抗金属層13aを形成する。
【0086】
[レジスト除去工程]
前述のようにして基体14のレジスト非被覆部にめっきを施した後、レジスト除去工程において、残存するレジスト層15を除去する。これによって、レジスト層15で覆われていた低濡れ性金属層12が露出し、前述の図1に示す低濡れ性領域3が形成される。レジスト層15の除去は、たとえば、めっき後の基体14をレジスト剥離液に浸漬させてレジスト層15を剥離させることによって行なうことができる。レジスト剥離液としては、レジスト層15をネガ型レジスト電着塗料で形成する場合には、乳酸、蟻酸、酢酸、クエン酸等の有機酸0.5〜20重量%と、界面活性剤0.5〜20重量%と、ベンジルアルコールなどの有機溶剤0.5〜50重量%とを含む水溶液などを用いることができる。また、レジスト層15をポジ型レジスト電着塗料で形成する場合には、5〜25重量%の水酸化ナトリウム水溶液などを用いることができる。
【0087】
このようにして低濡れ性領域3を形成した後、基体14と基体支持部8とを仮想平面41の部分で切断し、基体14を支持フレーム10から切り離す。これによって、はんだ接合部4とコネクタ嵌合部5との間に低濡れ性領域3が形成された前述の図1に示すコネクタピン1が得られる。
【0088】
以上のように、本実施態様では、露光工程において、図3に示すようにレジスト層15の少なくとも一部分を長手状部分7の周方向全周にわたって露光するので、現像後に基体14の長手状部分7の周方向全周にわたってレジストパターン16を形成することができる。したがって、複雑な形状に加工された基体14に対しても、基体14の長手状部分7の所望の部分に周方向全周にわたってめっきを施すことができるので、図1に示すコネクタピン1のように、長手状部分6の周方向全周にわたって低濡れ性領域3が形成された接点部品を容易に製造することができる。
【0089】
また、本実施態様の表面処理方法では、隣合う基体14の対向する長手状部分7同士の間隔であるピッチTが前述のように0.1〜5mmと狭い場合であっても、隣合う基体14の長手状部分7に対向する面である基体14の第2表面14bおよび第4表面14dにおいて、所望の部分に精度良くめっきを施すことができる。このように、本発明の表面処理方法は、ピッチTが0.1〜5mmと狭い場合に好適に用いることができる。
【0090】
また、本実施態様の表面処理方法では、図1に示す低濡れ性領域3の長手状部分6の長手方向における幅A1は、図6に示す現像後に残存するレジスト層15の長手状部分7の長手方向における幅A3と略等しく、露光工程において使用する露光マスクの開口部の幅によって容易に調整することができる。たとえば、レジスト層15をネガ型レジスト電着塗料で形成する場合には、図3に示す露光工程において使用する露光マスク17の開口部の幅A2、具体的には図4に示す露光装置24における第1マスク開口部37の幅D1および第2マスク開口部38の幅D2を調整することによって、所望の幅A1を有する低濡れ性領域3を容易に形成することができる。したがって、前記幅A1が100μm以下と狭い低濡れ性領域3であっても、容易に基体14の長手状部分7の周方向全周にわたって形成することができる。
【0091】
また、本実施態様の表面処理方法では、基体14の長手状部分7の必要な部分のみにめっきを施すことができるので、長手状部分7の全表面にめっきを施して低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとなる金属層を形成した後で該金属層の不要な部分を除去する場合に比べて、製造原価を大幅に低減することができる。特に、低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとなる金属層として金めっき層を形成する場合には、製造原価の大幅な低減が可能である。
【0092】
また、不要な部分の金属層をレーザ光の照射によって除去する場合のように基体14に熱が加わることがないので、基体14のばね特性、機械的強度などの低下を抑えることができる。また基体14の表面層である低濡れ性金属層12が、レーザ光の照射時に発生する熱によって基体本体11から剥離することを防ぐこともできる。したがって、コネクタピン1などの接点部品を用いた電子部品の長期的な信頼性を向上させることができる。
【0093】
本実施態様の表面処理方法は、コネクタの接点部品に低濡れ性領域を形成するための部分めっきに限定されず、種々の電子部品の接点部品を形成する際の部分めっきに用いることができる。たとえば、リードフレームの接点部品であるリード部に低濡れ性領域を形成するためにも用いることができる。前述のように、本実施態様では、複雑な形状に加工された基体14に対しても、その長手状部分7の所望の部分に周方向全周にわたってめっきを施すことができるので、所望の形状を有し、かつ所望の部分にめっきが施されたリードフレームなどの電子部品を容易に製造することができる。
【0094】
以上に述べたように、本実施態様では、基体14として、基体本体11の表面全体に低濡れ性金属層12が形成されたものを用い、めっき工程において、基体14のレジスト層15で覆われていない部分に低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bを形成するけれども、これに限定されず、基体14として、基体本体11の表面全体に低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとなる金属層が形成されたものを用い、めっき工程において、基体14のレジスト層15で覆われていない部分に低濡れ性金属層12を形成するようにしてもよい。
【0095】
この場合には、露光工程において、レジスト層15に対して、低濡れ性領域形成予定部23のレジスト層15が現像によって除去され、低濡れ性領域形成予定部23を除く部分22のレジスト層15が残存するように露光を施す。このように露光されたレジスト層15を現像することによって、低濡れ性領域形成予定部23を除く部分22にレジスト層15が存在するレジストパターンが形成され、めっき工程において、低濡れ性領域形成予定部23のみにめっきが施される。これによって、レジスト層15の除去後には、低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとなる金属層が露出して低接触抵抗領域2aと高濡れ性領域2bが形成され、低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとなる金属層の表面に低濡れ性金属層12が形成されてなる低濡れ性領域3が形成される。
【0096】
また、基体14としては、基体本体11そのものを用いてもよい。この場合、前述の下地めっき工程を省略し、基体本体11の表面全体にレジスト層15を形成した後、本実施態様と同様に、露光工程、現像工程、めっき工程およびレジスト除去工程を行なう。たとえば、銅または銅合金からなる基体本体11を用いる場合には、基体本体11の表面が低濡れ性金属層として機能するので、めっき工程では、本実施態様と同様に、低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bを形成する。これとは逆に、基体本体11の表面を低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとして用い、前述のようにめっき工程において低濡れ性金属層12を形成するようにしてもよい。
【0097】
本発明の実施の他の態様である電子部品の製造方法は、本実施態様の表面処理方法を含み、さらに以下の工程を付帯するものである。すなわち、本実施態様による表面処理が施されてなるコネクタピン1は樹脂ケースなどでパッケージングされて基板実装用コネクタとして組み立てられ、はんだ接合部4において回路基板とのはんだ付けが行なわれる。次いで、コネクタ嵌合部5において、他の回路基板にはんだ付けされた別の対になるコネクタと嵌合される。これによって、各回路基板に形成された電子回路同士の導通が行われ、電子部品の製造が終了する。
【0098】
コネクタピン1は、長手状部分6の周方向全周にわたって、はんだ接合部4とコネクタ嵌合部5との間に低濡れ性領域3を有するので、はんだ付け時のコネクタ嵌合部5へのはんだ上がりは生じず、樹脂ケースの変形などを防ぐことができる。また、コネクタピン1は、本実施態様の表面処理方法によって形成され、前述の低接触抵抗金属層13aおよび高濡れ性金属層13bとなる金属層の不要な部分をレーザ光の照射によって除去する場合のようにレーザ光の照射による加熱を受けていないので、ばね特性、機械的強度などの低下がなく、また低濡れ性金属層12の剥離も発生しない。このようなコネクタピン1を用いることによって、耐久性に優れるコネクタを得ることができる。
【実施例】
【0099】
(実施例1)
厚さ0.2mmの銅板を打ち抜き加工して、図2に示す略角柱形状の長手状部分を有する複数の基体本体11、基体支持部8aおよび支持フレーム10を一体的に形成して、条材9aを得た。基体本体11の長手状部分7となる部分の長手方向の長さと基体支持部8aの長手方向の長さとの和L’を3mmとし、長手状部分7となる部分同士の間隔W’を1mmとし、隣合う基体本体11のピッチT’を1mmとした。作製した基体本体11に、電解めっきによってニッケルめっきを施し、低濡れ性金属層12として、厚さ2μmのニッケルめっき層を形成した。めっき浴としては、ワット浴を用いた。以上のようにして、銅からなる基体本体11の表面にニッケルめっき層が形成されてなる前述の図2に示す基体14を得た。
【0100】
次いで、ニッケルめっき層の表面全体に、電着塗装によって厚さ8μmのレジスト層15を形成した。電着塗料には、紫外線照射によって硬化するカチオンタイプのネガ型レジスト電着塗料(商品名:エレコートEU−XC、株式会社シミズ製)を用いた。形成されたレジスト層15を乾燥させた後、前述の図4に示す露光装置24を用い、第1マスク開口部37の幅D1および第2マスク開口部38の幅D2をそれぞれ250μmに設定して、基体14の長手状部分7の低濡れ性領域形成予定部23に形成されたレジスト層15を長手状部分7の周方向全周にわたって露光して硬化させた。露光には波長365nmの紫外線を用い、レジスト層15に対する露光光の照射量が150mJ/cmになるように設定した。
【0101】
次いで、基体14を現像液(商品名:DLP−1、株式会社シミズ製)に浸漬してレジスト層15を現像し、レジストパターン16を形成した。形成されたレジストパターン16を電子顕微鏡で観察したところ、レジスト層15は、基体14の長手状部分7の中間部に、周方向全周にわたって連続して残存していた。
【0102】
レジストパターン16が形成された基体14に電解めっきによって金めっきを施し、ニッケルめっき層のレジスト層15で覆われていない部分に、高濡れ性金属層13として、厚さ0.1μmの金めっき層を形成した。めっき浴には、酸性金めっき浴を用いた。
【0103】
次いで、レジスト剥離液(商品名:DLP−2、株式会社シミズ製)を用いて残存するレジスト層15を剥離させ、ニッケルめっき層を露出させた。その後、支持フレーム10から基体14を切り離し、図1に示すコネクタピン1を得た。
【0104】
得られたコネクタピン1を電子顕微鏡で観察したところ、コネクタピン1の長手状部分6の周方向全周にわたって連続してニッケルめっき層が露出し、低濡れ性領域3が形成されていた。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の電子部品の製造方法によって製造される電子部品に備わる接点部品の一例であるコネクタピン1の構成を簡略化して示す図である。
【図2】基体本体11の表面に低濡れ性金属層12を形成した状態を示す図である。
【図3】露光工程における基体14の状態を簡略化して示す断面図である。
【図4】レジスト層15の露光に好適に使用される露光装置24の構成を簡略化して示す側面図である。
【図5】露光装置24に備わる第1マスク部25を鉛直上方向から見て示す斜視図である。
【図6】レジスト層15の現像後の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0106】
1 コネクタピン
2a 低接触抵抗領域
2b 高濡れ性領域
3 低濡れ性領域
4 はんだ接合部
5 コネクタ嵌合部
6,7 長手状部分
8 基体支持部
9 条材
10 支持フレーム
11 基体本体
12 低濡れ性金属層
13a 低接触抵抗金属層
13b 高濡れ性金属層
14 基体
15 レジスト層
17 露光マスク
18 第1光源
19 第2光源
23 低濡れ性領域形成予定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手状部分を有する基体の表面処理方法であって、基体の長手状部分の全表面にわたって電着塗装によってレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、形成されたレジスト層の少なくとも一部分を基体の長手状部分の周方向全周にわたって露光する露光工程と、露光されたレジスト層を現像してレジストパターンを形成する現像工程と、基体の長手状部分のレジスト層で覆われていない部分にめっきを施すめっき工程とを含むことを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】
前記レジスト層形成工程では、レジスト層を厚さが3μm以上30μm以下になるように形成することを特徴とする請求項1記載の表面処理方法。
【請求項3】
前記露光工程では、基体の長手状部分に対して少なくとも2つの方向から光が照射されることを特徴とする請求項1または2記載の表面処理方法。
【請求項4】
前記露光工程では、基体を挟んで対向するように設けられる2つ以上の光源によって露光を行なうことを特徴とする請求項3記載の表面処理方法。
【請求項5】
基体の長手状部分は、少なくとも表面がはんだに対する濡れ性の低い低濡れ性金属を含有する低濡れ性金属層で構成され、前記めっき工程では、基体の長手状部分のレジスト層で覆われていない部分に、はんだに対する濡れ性の高い高濡れ性金属を含有する高濡れ性金属層をめっきによって形成し、前記めっき工程の後には、残存するレジスト層を除去するレジスト除去工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の表面処理方法。
【請求項6】
基体の長手状部分は、少なくとも表面がはんだに対する濡れ性の高い高濡れ性金属を含有する高濡れ性金属層で構成され、前記めっき工程では、基体の長手状部分のレジスト層で覆われていない部分に、はんだに対する濡れ性の低い低濡れ性金属を含有する低濡れ性金属層をめっきによって形成し、前記めっき工程の後には、残存するレジスト層を除去するレジスト除去工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の表面処理方法。
【請求項7】
低濡れ性金属が、ニッケル、コバルト、タングステンおよび鉄から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項5または6記載の表面処理方法。
【請求項8】
高濡れ性金属が、金、金−ニッケル合金、金−コバルト合金、金−ニッケル−コバルト合金、金−銀合金、銀、銅、パラジウム、パラジウム−ニッケル合金、ロジウム、ルテニウム、錫、錫−亜鉛合金、錫−銀合金、錫−銅合金、錫−ビスマス合金、錫−鉛合金、ならびに錫と亜鉛、銀、銅およびビスマスのうちの少なくとも2種との合金から選ばれる1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項5〜7のうちのいずれか1つに記載の表面処理方法。
【請求項9】
請求項1〜8のうちのいずれか1つに記載の表面処理方法を用いて電子部品を製造することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項10】
電子部品がコネクタであり、コネクタの接点部品が前記表面処理方法によって形成されることを特徴とする請求項9記載の電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−249509(P2006−249509A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67837(P2005−67837)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(390035219)株式会社シミズ (14)
【Fターム(参考)】