説明

表面処理炭酸カルシウム、その製造方法及びゴム組成物

【課題】表面処理炭酸カルシウム、その製造方法及びゴム組成物を提供する。
【解決手段】表面処理炭酸カルシウムは、(1)ケイ酸類、(2)有機酸類、(3)第四級アンモニウム化合物、及び(4)シランカップリング剤で炭酸カルシウムを表面処理してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理炭酸カルシウム、その製造方法及びゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムの補強剤として、シリカ、カーボンブラック、改質炭酸カルシウムなどがゴムに添加されている。例えば、特許文献1には、ゴムなどの補強充填剤として、炭酸カルシウムの表面にシリカ層、有機酸層及びシランカップリング剤層を有する改質炭酸カルシウムをゴムなどに配合することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2004/009711号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴムの特性を向上できる、さらなる有力なゴム配合剤が求められている。本発明は、表面処理炭酸カルシウム、その製造方法及びゴム組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の表面処理炭酸カルシウムは、(1)ケイ酸類、(2)有機酸類、(3)第四級アンモニウム化合物及び(4)シランカップリング剤で炭酸カルシウムを表面処理してなる。
【0006】
本発明の表面処理炭酸カルシウムにおいて、炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、0.01μm〜10μmであることが好ましい。
【0007】
本発明の表面処理炭酸カルシウムにおいて、(1)ケイ酸類の処理量は、炭酸カルシウム100質量部に対して、0.05質量部〜15質量部であることが好ましい。
【0008】
本発明の表面処理炭酸カルシウムにおいて、(2)有機酸類の処理量は、炭酸カルシウム100質量部に対して、0.1質量部〜8質量部であることが好ましい。
【0009】
本発明の表面処理炭酸カルシウムにおいて、(3)第四級アンモニウム化合物の処理量は、炭酸カルシウム100質量部に対して、0.05質量部〜1質量部であることが好ましい。
【0010】
本発明の表面処理炭酸カルシウムにおいて、(4)シランカップリング剤の処理量は、炭酸カルシウム100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部であることが好ましい。
【0011】
本発明の表面処理炭酸カルシウムにおいて、表面処理炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、0.01μm〜10μmであることが好ましい。
【0012】
本発明のゴム組成物は、表面処理炭酸カルシウムを含む。
【0013】
本発明の表面処理炭酸カルシウムの製造方法は、炭酸カルシウムの表面を、(1)ケイ酸類、(2)有機酸類、(3)第四級アンモニウム化合物、及び(4)シランカップリング剤で表面処理して、表面処理炭酸カルシウムを得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゴムの防振性を向上させることができる表面処理炭酸カルシウムを提供することができる。また、本発明によれば、ゴムの防振性を向上させることができる表面処理炭酸カルシウムの好適な製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、防振性に優れたゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0016】
本実施形態に係る表面処理炭酸カルシウムは、(1)ケイ酸類、(2)有機酸類、(3)第四級アンモニウム化合物及び(4)シランカップリング剤で炭酸カルシウムを表面処理して得られるものである。以下において、ケイ酸類、有機酸類、第四級アンモニウム化合物及びシランカップリング剤の各成分による炭酸カルシウムの表面処理について説明するが、各成分による表面処理の順序は特に限定されない。
【0017】
(炭酸カルシウム)
表面処理炭酸カルシウムを構成する炭酸カルシウムは、特に限定されない。例えば、原料として使用される炭酸カルシウムとしては、従来公知の炭酸カルシウムを用いることができる。炭酸カルシウムの具体例としては、合成炭酸カルシウム、天然炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)などが挙げられる。炭酸カルシウムは、合成炭酸カルシウムであることが好ましい。
【0018】
合成炭酸カルシウムは、特に限定されない。合成炭酸カルシウムとしては、例えば沈降性(膠質)炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0019】
合成炭酸カルシウムは、例えば水酸化カルシウムを炭酸ガスと反応させることによって製造することができる。水酸化カルシウムは、例えば酸化カルシウムを水と反応させることによって製造することができる。酸化カルシウムは、例えば石灰石原石をコークスなどで焼成することによって製造することができる。この場合、焼成時に炭酸ガスが発生するので、この炭酸ガスを水酸化カルシウムと反応させることによって炭酸カルシウムを製造することができる。
【0020】
天然炭酸カルシウムは、天然に産出する炭酸カルシウム原石を公知の方法で粉砕することにより得られるものである。炭酸カルシウム原石を粉砕する方法としては、ローラーミル、高速回転ミル(衝撃剪断ミル)、容器駆動媒体ミル(ボールミル)、媒体撹拌ミル、遊星ボールミル、ジェットミルなどで粉砕する方法が挙げられる。
【0021】
炭酸カルシウムのBET比表面積は、通常1m/g〜120m/g程度であり、2m/g〜110m/g程度であることが好ましく、3m/g〜100m/g程度であることがより好ましい。
【0022】
炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、通常0.01μm〜10μm程度であり、0.2μm〜1.0μm程度であることが好ましく、0.2μm〜0.5μm程度であることがより好ましい。なお、本発明において、炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡で観察して得た値である。
【0023】
(ケイ酸類)
炭酸カルシウムの表面処理に使用されるケイ酸類は、炭酸カルシウムの表面にシリカを付着できるものであれば、特に限定されない。ケイ酸類としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどのケイ酸アルカリ金属塩などが挙げられる。
【0024】
ケイ酸類による炭酸カルシウムの表面処理は、例えばケイ酸アルカリをシリカヒドロゾルとし、これを表面処理に用いることができる。シリカヒドロゾルは、公知の方法により生成することができる。例えば、酸分解法によって、ケイ酸ナトリウムからシリカヒドロゾルを生成することができる。酸分解法としては、例えばケイ酸ナトリウム水溶液に、塩酸、硫酸などの無機酸、酢酸、アクリル酸などの有機酸、硫酸アルミニウム、炭酸ガスなどの酸性物質を加えることによって、非晶質シリカヒドロゾルを生成する方法が挙げられる。さらに、半透膜にケイ酸ナトリウムを通してシリカヒドロゾルを生成する透析法によって生成することもできる。また、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法によってシリカヒドロゾルを生成することもできる。
【0025】
ケイ酸類をシリカヒドロゾルとし、これを用いて炭酸カルシウムを表面処理することが好ましい。
【0026】
(有機酸類)
炭酸カルシウムの表面処理に使用される有機酸類としては、脂肪酸、樹脂酸、リグニン類、及びこれらの誘導体が挙げられる。有機酸類は、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0027】
脂肪酸としては、炭素数が6〜24程度の飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸の炭素数は、10〜20程度であることが好ましい。炭素数が6〜24程度の飽和または不飽和の脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸などが挙げられる。特に、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸が好ましい。
【0028】
脂肪酸の誘導体としては、脂肪酸の塩、脂肪酸のエステルなどが挙げられる。
【0029】
脂肪酸の塩としては、例えば、上記炭素数が6〜24程度の飽和または不飽和の脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。脂肪酸の塩の炭素数は、10〜20程度であることが好ましい。
【0030】
脂肪酸のエステルとしては、例えば、上記炭素数が6〜24程度の飽和または不飽和の脂肪酸と、炭素数が6〜18程度の飽和脂肪族アルコールとのエステルなどが挙げられる。脂肪酸のエステルの炭素数は、10〜20程度であることが好ましい。飽和脂肪族アルコールの炭素数は、10〜18程度であることが好ましい。
【0031】
樹脂酸またはその誘導体としては、例えば、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸などのアビエチン酸類またはその重合体、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、これらの塩(例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)またはエステル(例えばロジンのペンタエリスリトール・エステル、ロジンのグリセロールエステル、水添ロジンのメチルエステル、水添ロジンのトリエチレングリコール・エステル、水添ロジンのペンタエリスリトール・エステル)などが挙げられる。これらの中でも、アビエチン酸及びデヒドロアビエチン酸が好ましい。
【0032】
リグニン類としては、例えばリグニンスルホン酸や変性リグニンスルホン酸、部分脱スルホンリグニンスルホン酸の塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)が挙げられ、これらの1種または2種以上を含む混合塩で処理してもよい。
【0033】
(第四級アンモニウム化合物)
炭酸カルシウムの表面処理に使用される第四級アンモニウム化合物としては、テトラアルキル四級アンモニウム塩などが挙げられる。テトラアルキル四級アンモニウム塩としては、トリメチル型、ジアルキル型、ベンジル型などの公知のものが使用できる。
【0034】
第四級アンモニウム化合物としては、テトラアルキル四級アンモニウム塩が挙げられる。テトラアルキル四級アンモニウム塩としては、トリメチル型、ジアルキル型、ベンジル型などを問わず、慣用のものが使用できる。第四級アンモニウム化合物の具体例としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシアルキルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジオレイルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジヤシアルキルジメチルアンモニウムクロライド、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、トリメチルフェニルアンモニウムクロライド、ヤシアルキルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンヤシアルキルアンモニウムクロライド、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムアセテート、1,8−ジアザ−ビシクロ(5、4、0)ウンデセン−7−メチルアンモニウムメトサルフエート、セチルピリジウムサルフエート、N,N−ジアシルオキシエステル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェート、トリメチルベンジルアンモニウムベンゾエート、1−メチル−1−ヒドロキシエチル−2−牛脂アルキルイミダゾニウムクロライドが挙げられる。また、トリオクチルアンモニウムクロライド、トリオクチルアンモニウムブロマイド、トリデシルアンモニウムクロライド、トリデシルアンモニウムブロマイド、トリドデシルアンモニウムクロライド、トリドデシルアンモニウムブロマイド、トリヘキサデシルアンモニウムクロライド、トリヘキサデシルアンモニウムブロマイド、トリオクタデシルアンモニウムクロライド、トリオクタデシルアンモニウムブロマイド、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、テトラデシルアミン酢酸塩、オクタデシルアミン酢酸塩、ヤシアルキルアミン酢酸塩、硬化牛脂アルキル酢酸塩、牛脂アルキル酢酸塩、牛脂ジアミンジオレイン酸塩、ヤシジアミンジアジピン酸塩といったアミン塩類なども挙げられる。
【0035】
(シランカップリング剤)
炭酸カルシウムの表面処理に使用されるシランカップリング剤としては、公知のものが使用できる。シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕−プロピル)−テトラサルファン(TESPT)、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕−プロピル)−ジサルファンなどが挙げられる。
【0036】
シランカップリング剤としては、特に、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕−プロピル)−テトラサルファン、ビス−(3−〔トリエトキシシリル〕−プロピル)−ジサルファンなどが好ましい。
【0037】
(表面処理)
表面処理は、炭酸カルシウムと、(1)ケイ酸類、(2)有機酸類、(3)第四級アンモニウム化合物及び(4)シランカップリング剤とを混合することにより行うことができる。
【0038】
前記の通り、ケイ酸類、有機酸類、第四級アンモニウム化合物、シランカップリング剤の各成分による炭酸カルシウムの表面処理の順序は、特に限定されない。
【0039】
表面処理の順序は、ケイ酸類による表面処理が、シランカップリング剤による表面処理よりも先であることが好ましい。炭酸カルシウムをケイ酸類で表面処理して、炭酸カルシウムにシリカを付着させた後に、シランカップリング剤で表面処理することにより、シランカップリング剤による表面処理がより効果的に進行する。
【0040】
表面処理の順序は、ケイ酸類による処理、有機酸類及び第四級アンモニウム化合物による処理、シランカップリング剤による処理の順に行うことがより好ましい。
【0041】
有機酸類と第四級アンモニウム化合物による表面処理は、いずれが先であってもよい。また、有機酸類と第四級アンモニウム化合物とを混合して同時に表面処理を行ってもよい。なお、平均一次粒子径が小さい合成(沈降性)炭酸カルシウムは、凝集しやすい。炭酸カルシウムが凝集すると、炭酸カルシウムの表面処理を均一に行うことが難しくなる。よって、原料炭酸カルシウムとして平均一次粒子径が0.01μm〜0.5μm程度の合成(沈降性)炭酸カルシウムを用いる場合には、有機酸類で処理した後に、第四級アンモニウム化合物で表面処理することが好ましい。
【0042】
ケイ酸類による炭酸カルシウムの処理方法は、例えば、炭酸カルシウムスラリーにケイ酸ナトリウム水溶液を加え、攪拌しながら無機酸、有機酸などの酸性物質を滴下し、生成する活性なシリカヒドロゾルによって、炭酸カルシウムを表面処理する方法が挙げられる。この表面処理によって、炭酸カルシウムにはシリカが付着する。
【0043】
予め調製したシリカヒドロゾルを用いる場合は、炭酸カルシウムと水とのスラリーに、シリカヒドロゾルを添加し、強力に攪拌することにより、炭酸カルシウムを表面処理することができる。炭酸カルシウムと水とのスラリーの固形分濃度は、通常0.5質量%〜20質量%程度とすればよい。ケイ酸ナトリウム水溶液の濃度は、1質量%〜40質量%程度とすればよい。
【0044】
炭酸カルシウムに対するケイ酸類の処理量は、特に限定されない。ケイ酸類の処理量は、原料炭酸カルシウム100質量部に対して、通常0.05質量部〜15質量部程度であり、0.1質量部〜12質量部程度であることが好ましく、0.1質量部〜10質量部程度であることがより好ましい。ケイ酸類の処理量が少なすぎると、シランカップリング剤を結合させる反応部位が少なくなるため、所望のゴム物性を発現できない場合がある。また、ケイ酸類の処理量が多すぎると、炭酸カルシウム表面に付着する以外に余剰のシリカヒドロゾルが溶液中に存在することになるので、乾燥時にシリカヒドロゾルが炭酸カルシウムを強く凝集固化させ、粗大粒子が増大する場合がある。このような粗大粒子を含む炭酸カルシウムは、ゴム成分の引裂強さ、耐屈曲亀裂性などを低下させる場合がある。ケイ酸類の処理量は、原料炭酸カルシウムのBET比表面積、平均一次粒子径などに応じて適宜調整される。なお、シリカヒドロゾル中のシリカは、基本的にほぼ定量的に炭酸カルシウムに付着する。
【0045】
有機酸類で炭酸カルシウムを表面処理する方法は、有機酸類を炭酸カルシウムに付着できれば、特に限定されない。
【0046】
有機酸類として、脂肪酸またはその誘導体を用いる場合、以下のようにして炭酸カルシウムを有機酸類で表面処理することができる。まず、脂肪酸をNaOH水溶液、KOH水溶液などのアルカリ金属水溶液中で加熱しながら、脂肪酸のアルカリ金属塩にする。アルカリ金属水溶液の量は、脂肪酸のアルカリ金属塩とするために必要な量を適宜設定すればよい。アルカリ金属水溶液の濃度は、通常1質量%〜40質量%程度であり、1質量%〜20質量%程度であることが好ましい。次いで、炭酸カルシウムの水懸濁液を、予め30〜50℃に加熱しておき、この水懸濁液に脂肪酸のアルカリ金属塩を添加、撹拌して、炭酸カルシウムに脂肪酸またはその誘導体を付着させる。
【0047】
また、脂肪酸のアルカリ金属塩にせず、脂肪酸を用いて炭酸カルシウムを表面処理することもできる。例えば、炭酸カルシウムを脂肪酸の融点以上に加温しながら攪拌し、これに脂肪酸を添加、攪拌して、炭酸カルシウムに脂肪酸を付着させることができる。
【0048】
有機酸類として、樹脂酸またはその誘導体を用いる場合、脂肪酸またはその誘導体による炭酸カルシウムの表面処理と同様の方法によって行うことができる。
【0049】
炭酸カルシウムに対する有機酸類の処理量は、特に限定されない。有機酸類の処理量は、原料炭酸カルシウム100質量部に対して、通常0.1質量部〜8質量部程度であり、1質量部〜5質量部程度であることが好ましく、2質量部〜5質量部程度であることがより好ましい。有機酸類の処理量が少なすぎると、炭酸カルシウム粒子が乾燥凝集を起こし、分散性が低下する場合がある。また、有機酸類の処理量が多すぎると、ゴムが柔らかくなり、補強性が低下する場合がある。
【0050】
第四級アンモニウム化合物で炭酸カルシウムを表面処理する方法は、第四級アンモニウム化合物を炭酸カルシウムに付着できれば、特に限定されない。例えば、炭酸カルシウムと第四級アンモニウム化合物とを混合することにより、炭酸カルシウムを第四級アンモニウム化合物で表面処理することができる。
【0051】
炭酸カルシウムを四級アンモニウム塩で表面処理する場合には、例えば以下の方法で行うことができる。炭酸カルシウムが、乾燥粉末である場合には、例えば、この炭酸カルシウム粉末をミキサー中で攪拌しながら、第四級アンモニウム化合物を滴下したり、スプレーなどを用いて噴霧することによって、炭酸カルシウムを第四級アンモニウム化合物で表面処理することができる。この場合、必要に応じて、第四級アンモニウム化合物による表面処理後に加熱乾燥してもよい。
【0052】
また、炭酸カルシウムの水懸濁液とした場合には、この懸濁液に第四級アンモニウム化合物を添加し、炭酸カルシウムに第四級アンモニウム化合物を付着させることにより表面処理することができる。この場合、必要に応じて、第四級アンモニウム化合物による表面処理後に加熱乾燥してもよい。
【0053】
なお、前記の通り、有機酸類と第四級アンモニウム化合物とを予め混合した混合液を炭酸カルシウムと混合して、表面処理してもよい。
【0054】
炭酸カルシウムに対する第四級アンモニウム化合物の処理量は、特に限定されない。第四級アンモニウム化合物の処理量は、原料炭酸カルシウム100質量部に対して、通常0.05質量部〜1質量部程度であり、0.1質量部〜0.8質量部程度であることが好ましく、0.1質量部〜0.5質量部程度であることがさらに好ましい。第四級アンモニウム化合物の処理量が少なすぎると、十分な硬度が得られない場合がある。また、第四級アンモニウム化合物の処理量が多すぎると、スコーチタイムが短くなり、貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0055】
なお、有機酸類と第四級アンモニウム化合物の表面処理量の比は、第四級アンモニウム塩:有機酸類(質量比)で、1:1〜1:100の範囲内であることが好ましく、1:2〜1:50の範囲内であることがより好ましい。第四級アンモニウム塩の割合が少なくなると、十分な硬度が得られない場合がある。第四級アンモニウム塩の割合が多すぎると、スコーチタイムが短くなり、貯蔵安定性が低下する場合がある。
【0056】
炭酸カルシウムをシランカップリング剤で表面処理する方法は、特に限定されず、従来公知の表面処理法を適用することができる。
【0057】
炭酸カルシウムが、乾燥粉末である場合には、例えば、炭酸カルシウムをミキサー中で撹拌しながら、シランカップリング剤を滴下したり、スプレーなどを用いて噴霧することによって、シランカップリング剤で炭酸カルシウムを表面処理することができる。この場合、必要に応じて表面処理後に加熱乾燥してもよい。
【0058】
また、炭酸カルシウムを水との懸濁液とした場合、この懸濁液に水溶性シランカップリング剤を添加し、炭酸カルシウムの表面にシランカップリング剤を吸着させたのち、処理物を濾別、乾燥することにより、シランカップリング剤で炭酸カルシウムを表面処理することができる。シランカップリング剤による表面処理を均一に行うために、攪拌機、ビーズミル、サンドミルのような湿式磨砕機などを使用してもよい。
【0059】
炭酸カルシウムに対するシランカップリング剤の処理量は、特に限定されない。シランカップリング剤の処理量は、原料炭酸カルシウム100質量部に対して、通常0.01質量部〜10質量部程度であり、0.05質量部〜5質量部程度であることが好ましく、0.1質量部〜3質量部程度であることがさらに好ましい。シランカップリング剤の処理量は、原料炭酸カルシウムのBET比表面積などによって適宜調整できる。
【0060】
表面処理炭酸カルシウムは、シリカ、有機酸類、第四級アンモニウム化合物及びシランカップリング剤が炭酸カルシウムに付着し、炭酸カルシウムの表面の全部または一部がこれらの成分で覆われていればよい。シリカ、有機酸類、第四級アンモニウム化合物及びシランカップリング剤は、炭酸カルシウムの表面上にそれぞれ層を形成していてもよい。
【0061】
炭酸カルシウムのBET比表面積は、通常1m/g〜120m/g程度であり、2m/g〜110m/g程度であることが好ましく、3m/g〜100m/g程度であることがより好ましい。
【0062】
表面処理炭酸カルシウムは、ケイ酸類、有機酸類、第四級アンモニウム化合物及びシランカップリング剤で表面処理されていることにより、ゴムに配合したときに、ゴムの防振性を向上させることができる。すなわち、表面処理炭酸カルシウムは、ゴム配合剤として好適に使用することができる。特に、表面処理炭酸カルシウムは、ケイ酸類、有機酸類及びシランカップリング剤で表面処理することに加えて、第四級アンモニウム化合物で表面処理することにより、ゴムに優れた防振性を付与することができる。この理由としては、次のようなことが考えられる。すなわち、一般的には、炭酸カルシウムなどの充てん剤の充てん量が少ない方が、ゴムの動倍率は低く、防振性は良好になると言われているが、特定硬度のゴム製品を製造する場合、第四級アンモニウム化合物により加硫ゴムの硬度を高くできるので、表面処理炭酸カルシウムは、従来の炭酸カルシウムよりも少ない充てん量でゴムに目的の硬度を付与することができること、また、表面処理炭酸カルシウムは、ケイ酸類とシランカップリング剤で表面処理されているので、充てん剤とゴムとが結合できることなどに起因すると考えられる。
【0063】
(ゴム組成物)
ゴム組成物は、前記表面処理炭酸カルシウムとゴムとを含む。ゴム組成物に含まれるゴムは、特に限定されない。ゴムとしては、天然ゴム及び合成ゴムが挙げられる。
【0064】
天然ゴムは、天然植物から得られるゴム状高分子物質である。天然ゴムは、シス−1,4−ポリイソプレン構造を有するものであれば、形状、色調などは特に限定されない。
【0065】
合成ゴムとしては、例えばイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロロヒドリンゴム、多硫化ゴムなどが挙げられる。また、ゴムは、ゴムを主体とするラテクッスであってもよい。
【0066】
ゴム組成物には、通常使用される各種ゴム用配合剤が含まれていてもよい。ゴム用配合剤としては、例えばカーボンブラック、シリカ、クレー、他の炭酸カルシウムなどの充填剤、シランカップリング剤、加硫促進助剤、活性剤、オイル、亜鉛華、ステアリン酸、軟化剤、老化防止剤、リターダーなどの添加剤、硫黄加硫促進剤などの加硫剤などが挙げられる。
【0067】
加硫促進剤としては、例えばジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール(M)などのチアゾール系、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CZ)、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(DZ)などのスルフェンアミド系、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)などのチウラム系、ジメチルチオカルバミン酸亜鉛(PZ)などのチオカルバミン酸系、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛(ZIX)などのキサントゲン酸塩系の加硫促進剤が挙げられる。
【0068】
ゴム組成物は、ゴムと表面処理炭酸カルシウムとを混合することにより製造することができる。ゴムと表面処理炭酸カルシウムとを混合する方法としては、バンバリーミキサーや加圧ニーダー、インターミックスなどの密閉式混練機、オープンロールなどでゴムを混練しながら表面処理炭酸カルシウムを混合する方法などが挙げられる。
【0069】
本発明の表面処理炭酸カルシウムを含むゴム組成物は、動倍率が低い。よって、本発明のゴム組成物は、低い動倍率が求められる防振ゴムとして、エンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ、トーショナルダンパー、ボディマウント、キャップマウント、メンバーマウント、ストラットマウント、マフラーマウント、キャブマウントなどの自動車用防振ゴムや、鉄道車両用防振ゴム、産業機械用防振ゴム、建築用免震ゴム、免震ゴム支承などの防振、免震ゴム、コンピューターのハードディスクの制振ダンパー、洗濯機等の一般家電製品の制振ダンパー、建築・住宅分野における建築用制震壁,制震(制振)ダンパー等の制震(制振)装置および免震装置の用途等に好適に使用することができる。またその他にも、タイヤトレッド、サイドウォール、ショルダー、インナーライナー、ビードフィラー、長靴、靴底、防弦材、スポーツシューズ、スポンジ製品などとして好適に使用することができる。
【0070】
以下、本発明を具体例により説明する。本発明は以下の具体例に限定されない。
【0071】
(実施例1)
[原料調製]
炭酸カルシウムとして、平均一次粒子径が0.08μmの合成炭酸カルシウムを使用した。炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡で観察して得た値である。
【0072】
ケイ酸類として、ケイ酸ナトリウム(和光純薬株式会社製)を使用した。
【0073】
有機酸類として、オレイン酸、ステアリン酸及びパルミチン酸(いずれも和光純薬株式会社製)の混合脂肪酸を使用した。
【0074】
第四級アンモニウム化合物として、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(和光純薬株式会社製)を使用した。
【0075】
シランカップリング剤としてγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、商品名「SH6020」)を使用した。
【0076】
[表面処理]
合成炭酸カルシウムと水とのスラリー(固形分濃度8質量%)をよく攪拌しながら40℃に加熱した。このスラリーに、水で10倍に希釈したケイ酸ナトリウム水溶液を室温下に添加した。スラリーに対するケイ酸ナトリウムの添加量は、合成炭酸カルシウム100質量部に対して2質量部とした。次に、ケイ酸ナトリウムを中和するのに必要な量の3.5%希塩酸水溶液を添加して、シリカヒドロゾルを生成し、炭酸カルシウムの表面にシリカを付着させた。
【0077】
次に、混合脂肪酸を水酸化ナトリウム水溶液中に添加して、90℃で加温攪拌し、混合脂肪酸のナトリウム塩水溶液を調製した。混合脂肪酸のナトリウム塩水溶液を、炭酸カルシウム100質量部に対して混合脂肪酸が2.5質量部となるように添加した。
【0078】
次に、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液を、炭酸カルシウム100質量部に対して第四級アンモニウム塩0.3質量部となるように添加した。スラリーを攪拌後、フィルタープレスにより脱水し、箱型乾燥機を用いて80℃の条件で乾燥した。得られた乾燥物をミクロンミル粉砕機で粉砕し、シリカ、混合脂肪酸、及び第四級アンモニウム化合物が付着した炭酸カルシウムを得た。
【0079】
シリカ、混合脂肪酸及び第四級アンモニウム化合物が付着した炭酸カルシウムを、ミキサーで攪拌しながら、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランを、炭酸カルシウム100質量部に対して0.3質量部を噴霧した。これを10分間攪拌した後、100℃×60分間の条件で加熱乾燥して、シリカ、混合脂肪酸、第四級アンモニウム化合物及びシランカップリング剤が付着した表面処理炭酸カルシウムを得た。使用した炭酸カルシウムの平均一次粒子径、量、各成分による処理量を表1に示す。
【0080】
[ゴム組成物の作製]
実施例1で得られた表面処理炭酸カルシウム100質量部を天然ゴム(商品名「SMR−L」)100質量部に配合した。これに、天然ゴム100質量部に対して、酸化亜鉛(正同化学工業社製の亜鉛華)5質量部、ステアリン酸1質量部、加硫促進剤DM(ジベンゾチアゾールジスルフィド)1.5質量部、硫黄3質量部を添加し、二本ロールで混練して、未加硫ゴムを得た。また、得られた未加硫ゴムをプレス加硫によって、加硫ゴムシートを得た。
【0081】
[ゴム組成物の試験]
実施例1で得られた未加硫ゴム及びプレス加硫シートを用いて、硬度、動バネ定数(Kd)、静バネ定数(Ks)及び動倍率(Kd/Ks)を以下のようにして測定した。
【0082】
<硬度>
JIS K 6253に規定された方法に従って、デュロメーターtypeAを用いて測定した。
【0083】
<動的バネ定数(Kd)、静的バネ定数(Ks)、動倍率(Kd/Ks)>
動バネ定数(Kd)は、動的粘弾性測定装置(株式会社のレオロジ Rheogel−4000)を用い、以下の条件でE’(貯蔵弾性率)を測定し、これを動バネ定数(Kd)とした。
【0084】
温度 :25℃
動的歪:20μm
初期歪:2mm
周波数:100Hz
試験片:5w×2t×30l(チャック間距離20mm)
【0085】
静バネ定数(Ks)は、25%低伸張応力を測定し、下式より求めた。
【0086】
静的バネ定数Ks=3×Gs (Gs:静的弾性率(MPa))
Gs=1.639×σ25 (σ25:25%低伸張応力(MPa))
【0087】
得られた動バネ定数(Kd)、静バネ定数(Ks)より、動倍率(Kd/Ks)を求めた。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0088】
(実施例2)
平均一次粒子径が0.15μmである合成炭酸カルシウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして表面処理炭酸カルシウムを得た。使用した炭酸カルシウムの平均一次粒子径、量、各成分による処理量を表1に示す。次に、実施例2で得られた表面処理炭酸カルシウムを用い、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0089】
(実施例3)
第四級アンモニウム化合物の処理量を、炭酸カルシウム100質量部に対して0.1質量部としたこと以外は、実施例2と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。使用した炭酸カルシウムの平均一次粒子径、量、各成分による処理量を表1に示す。次に、実施例3で得られた表面処理炭酸カルシウムを用い、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0090】
(実施例4)
ケイ酸ナトリウムの処理量を、炭酸カルシウム100質量部に対して0.5質量部としたこと以外は、実施例3と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。使用した炭酸カルシウムの平均一次粒子径、量、各成分による処理量を表1に示す。次に、実施例4で得られた表面処理炭酸カルシウムを用い、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0091】
(実施例5)
第四級アンモニウム化合物の処理量を、炭酸カルシウム100質量部に対して0.3質量部としたこと以外は、実施例4と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。次に、実施例5で得られた表面処理炭酸カルシウムを用い、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0092】
(比較例1)
炭酸カルシウムをケイ酸ナトリウムとシランカップリング剤で表面処理しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。次に、比較例1で得られた表面処理炭酸カルシウムを用い、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0093】
(比較例2)
平均一次粒子径が0.15μmである合成炭酸カルシウムを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。次に、比較例2で得られた表面処理炭酸カルシウムを用い、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0094】
(比較例3)
炭酸カルシウムをケイ酸ナトリウム、第四級アンモニウム化合物及びシランカップリング剤で表面処理しなかったこと以外は、実施例2と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。次に、比較例3で得られた表面処理炭酸カルシウムを用い、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0095】
(比較例4)
炭酸カルシウムを第四級アンモニウム化合物とシランカップリング剤で表面処理しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。次に、比較例4で得られた表面処理炭酸カルシウムを用い、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0096】
(比較例5)
炭酸カルシウムをシランカップリング剤で表面処理しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。次に、比較例5で得られた表面処理炭酸カルシウムを用い、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0097】
(比較例6)
炭酸カルシウムを第四級アンモニウム化合物で処理しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理炭酸カルシウムを得た。次に、比較例6で得られた表面処理炭酸カルシウムを用い、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0098】
(比較例7)
実施例1で得られた表面処理炭酸カルシウムの代わりに、平均粒子径が0.045μmのFEF級カーボンブラック(商品名「旭#60」)を用い、FEF級カーボンブラックの配合量を天然ゴム100質量部に対して50部質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0099】
(比較例8)
実施例1で得られた表面処理炭酸カルシウムの代わりに、平均粒子径が0.08μmのFT級カーボンブラック(商品名「アサヒサーマル」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物の試験を実施例1と同様にして行った。ゴム組成物の配合、試験結果を表2に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
表2に示す結果から明らかなように、炭酸カルシウムをケイ酸類、第四級アンモニウム化合物、有機酸類及びシランカップリング剤で表面処理して得られた表面処理炭酸カルシウムを配合した実施例1〜5のゴム組成物は、高い硬度を維持しつつ、低い動倍率を示した。この結果から、実施例1〜5のゴム組成物は、防振性に優れることが分かる。一方、比較例1〜8のゴム組成物は、動倍率が高く、防振性の点で、実施例1〜5のゴム組成物に比して劣っていることが分かる。第四級アンモニウム化合物のみを加えなかった比較例6、シランカップリング剤のみを加えなかった比較例5においても、動倍率は高い。また、ゴム組成物に一般に配合されるカーボンブラックを配合した比較例7及び8についても、動倍率が高くなった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ケイ酸類、(2)有機酸類、(3)第四級アンモニウム化合物、及び(4)シランカップリング剤で炭酸カルシウムを表面処理してなる、表面処理炭酸カルシウム。
【請求項2】
前記炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、0.01μm〜10μmである、請求項1に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【請求項3】
前記(1)ケイ酸類の処理量は、前記炭酸カルシウム100質量部に対して、0.05質量部〜15質量部である、請求項1または2に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【請求項4】
前記(2)有機酸類の処理量は、前記炭酸カルシウム100質量部に対して、0.1質量部〜8質量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【請求項5】
前記(3)第四級アンモニウム化合物の処理量は、前記炭酸カルシウム100質量部に対して、0.05質量部〜1質量部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【請求項6】
前記(4)シランカップリング剤の処理量は、前記炭酸カルシウム100質量部に対して、0.01質量部〜10質量部である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【請求項7】
前記表面処理炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、0.01μm〜10μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の表面処理炭酸カルシウム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の表面処理炭酸カルシウムを含むゴム組成物。
【請求項9】
炭酸カルシウムの表面を、(1)ケイ酸類、(2)有機酸類、(3)第四級アンモニウム化合物、及び(4)シランカップリング剤で表面処理して、表面処理炭酸カルシウムを得る、表面処理炭酸カルシウムの製造方法。

【公開番号】特開2013−57034(P2013−57034A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197285(P2011−197285)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(391009187)株式会社白石中央研究所 (9)
【Fターム(参考)】