説明

表面処理粉体およびそれを含有する化粧料

【課題】 セラミドの結晶の析出を抑制した表面処理粉体、およびそれを含有することにより、化粧膜の均一性および化粧持ちに優れたメークアップ化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】 セラミド、ラウロイルサルコシンと低級アルコールとのエステル、および水素添加リン脂質で表面処理することを特徴とする表面処理粉体、さらには、セラミド、ラウロイルサルコシンと低級アルコールとのエステル、および水素添加リン脂質を含む油相と、水相とを乳化して乳化組成物を調製し、次いで該乳化組成物と粉体とを混合した後、水を乾燥除去することにより得られる表面処理粉体と、該表面処理粉体を含有する化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミドを結晶析出することなく均一に被覆することが可能な表面処理粉体に関し、また、その表面処理粉体を含有することにより、化粧膜の均一性や化粧持ちに優れる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、角質細胞間脂質中の主要な成分として脂質バリアーを構成し、荒れ肌、乾燥肌等の水分が低下した肌に対し、角質層の水分保持力を向上させる効果を有することが知られている。したがって、セラミドを配合した様々な化粧料が提案されており、粉体化粧料や表面処理粉体も開示されている(特許文献1〜3)。
しかしながら、セラミドは結晶性が高いため化粧料への安定配合が困難であり、粉体化粧料としたり表面処理粉体として配合した場合にも、結晶の析出により化粧膜が不均一となったり、化粧持ちに劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−158717号公報
【特許文献2】特開平11−49634号公報
【特許文献3】特開平11−116439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、セラミドを均一かつ安定に粉体表面に処理する技術が求められており、本発明は、セラミドの結晶析出を抑制した表面処理粉体、およびそれを含有することにより、化粧膜の均一性と化粧持ちに優れる化粧料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる実情に鑑み、本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、セラミドと、ラウロリルサルコシンと低級アルコールのエステル、および水素添加リン脂質で粉体表面を処理することにより、セラミドの結晶析出を抑制することができ、また上記成分を含む油相と、水相とを乳化して乳化組成物を調製し、次いで該乳化組成物と粉体とを混合した後、水を乾燥除去することにより、粉体表面への処理がより均一になることを見出した。また、該表面処理粉体を含有した化粧料は、化粧膜の均一性および化粧持ちが向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、セラミド、ラウロイルサルコシンと低級アルコールとのエステル、および水素添加リン脂質で表面処理することを特徴とする表面処理粉体、およびそれを含有する化粧料である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表面処理粉体は、セラミドの結晶析出を抑制することができるため、セラミドの有する保湿効果を有効に発揮させることが可能であり、またそれを含有する化粧料は、化粧膜の均一性および化粧持ちに優れ、使用性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いられるセラミドは、通常、化粧料に使用されるものであれば特に限定されないが、具体例としては、酵母を利用して生成したセラミド、化学合成による擬似セラミド、植物から得られたセラミド等が挙げられ、より具体的には、セラミド1〜6が例示され、一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0009】
本発明の表面処理粉体におけるセラミドの含有量は、0.1〜1.5質量%(以下、「%」と略記する)が好ましく、更に好ましくは0.5〜1%である。この範囲であると、セラミドの結晶の析出が抑えられ、粉体表面への処理が均一になる。
【0010】
本発明に用いられるラウロイルサルコシンと低級アルコールとのエステル(以下、「ラウロイルサルコシンエステル」と略す)としては、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されないが、低級アルコールとしては、炭素数1〜4のものが好ましく、例えば、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステル、n−ブチルエステル、イソブチルエステル、セカンダリーブチルエステル、ターシャリーブチルエステルなどが例示できこれらのうち、特に好ましいものはイソプロピルエステルである。かかるラウロイルサルコシンエステルは、ラウロイルサルコシンを原料として、このカルボキシル基の水素原子を、水素化ナトリウムなどを用いて、ナトリウムに置換した後、低級アルコールのトシルエステルや、低級アルコールに塩化チオニルなどを作用させて得たハライドを反応させることにより得ることが出来る。また、市販品としては、「エルデュウSL−205」(味の素株式会社:ラウロイルサルコシンイソプロピル)を挙げることができる。
【0011】
本発明の表面処理粉体中のラウロイルサルコシンエステルの含有量は、0.5〜30%が好ましく、さらに好ましくは2.5〜20%である。また、ラウロイルサルコシンエステルは、セラミドに対して高い溶解性を有し、セラミドを粉体へ均一に付着させる作用を有するものであるが、この様な作用を有効に発揮するためには、本発明の表面処理粉体中の、セラミドと該エステルの配合比率を、1:5〜1:20の範囲とすることが好ましく、より好ましくは、1:10〜1:15の範囲である。セラミドとラウロイルサルコシンエステルの配合比率が、1:5より少ないとセラミドが十分に溶解せず、セラミドを均一に粉体へ付着させる効果が十分に発現されない場合があり、1:20より多すぎても当該効果が頭打ちになり、処方の自由度を損なう場合がある。
【0012】
本発明に用いられる水素添加リン脂質は、セラミドの均一分散性を向上させるとともに、本発明の表面処理粉体を化粧料に配合した時に、肌なじみを向上させ、しっとり感を付与し、使用時の粉感を低減させる効果を有する。さらに、上記の二成分とともに乳化組成物とする場合には、良好な界面活性を発揮するものである。
【0013】
水素添加リン脂質は、リン脂質に水素添加したものであり、酸化や熱に対する安定性の点で、ヨウ素価が0〜40のものが好ましく、例えば、大豆、卵黄等から抽出した天然レシチンを常法に従って水素添加したものの他、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、中性リン脂質等に水素添加したもの等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を組み合わせて用いることが出来る。特にホスファチジルコリンが、表面処理粉体の肌へのなじみを向上させ、粉感を低減させる効果が高いため好ましく、水素添加リン脂質中のホスファチジルコリン含有量が20%以上であることが好ましい。
【0014】
本発明の表面処理粉体中の水素添加リン脂質の配合量は、特に限定されないが、0.1〜2%が好ましく、この範囲であると本発明の表面処理粉体をメークアップ化粧料に配合させた時に、べたつきのなさといった使用感がより良好なものとなる。
【0015】
本発明に用いられる粉体は、前記三成分で表面処理されるものであり、通常、化粧料に用いられる粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、黒色酸化チタン、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マイカ、合成マイカ、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、窒化硼素等の無機粉体類、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、有機顔料被覆マイカチタン、アルミニウムパウダー等の光輝性粉体類、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、N−アシルリジン等の有機粉体類、有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体類、微粒子酸化チタン被覆マイカチタン、微粒子酸化亜鉛被覆マイカチタン、硫酸バリウム被覆マイカチタン、酸化チタン含有シリカ、酸化亜鉛含有シリカ等の複合粉体類等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0016】
これらの中でも、金属酸化物、あるいはその複合体である、酸化チタン、黒色酸化チタン、ベンガラ、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化クロム、水酸化クロム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、酸化チタン被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカ、酸化鉄被覆マイカチタン、有機顔料被覆マイカチタンなどを選択すると、より化粧効果が高い表面処理粉体を得ることができるため特に好ましい。
【0017】
本発明において、これらの粉体表面を処理する方法としては、特に限定されるものではなく、通常公知の処理方法が用いられる。具体的には、直接粉体と混合する方法(乾式処理法)、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の溶媒を用いる方法(湿式法)、気相法、メカノケミカル法等が挙げられる。
【0018】
特に好ましい一態様としては、セラミド、ラウロイルサルコシンエステル、および水素添加リン脂質を含む油相と水相とを乳化して乳化組成物を調製した後に粉体と混合し、水を乾燥除去する方法が挙げられ、粉体表面への処理がより均一になるため好ましい。
【0019】
油相には、前記三成分の他に、例えば通常化粧料に用いられる油剤として、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等を配合することができる。具体的に例示すれば、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャトロプスワックス等の炭化水素類;モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;モンタンワックス、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類;セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等のエステル類;ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類;ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ホホバアルコール等の高級アルコール類;低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フッ素変性シリコーン等のシリコーン類;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤類;ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類;等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を配合することもできる。
【0020】
一方、水相には、水が必須成分として用いられる他、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール類、グリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類、エタノール等の低級アルコール類等の水性成分を含有していてもよい。
乳化組成物における水の含有量は、70〜95%が好ましく、80〜90%がより好ましい。このような範囲であると、乳化組成物の乳化状態が良好になるという点で好ましい。
【0021】
乳化組成物を調製する方法としては、通常公知の乳化方法が用いられ、デスパーミキサー、ホモジナイザー等によって乳化させる方法が挙げられる。また、より微細な粒子を得るためには、該乳化組成物をマイクロフルイダイザー等の高圧乳化機を用いて処理することが好ましく、500〜3000kg/cmの噴射圧力で、必要に応じて繰り返し乳化処理を行うことにより、乳化組成物の乳化滴は、平均粒子径が200nm〜1000nmの範囲となるように調製されることが好ましい。この範囲であると、セラミドをより微細に粉体に被覆することが可能となり、本発明の表面処理粉体をメークアップ化粧料に配合した場合に、より良好な化粧持ちが得られる。なお、この平均粒子径は、コールターカウンター(ベックマン・コールター株式会社製:サブミクロン粒子アナライザーN5)による測定値である。
【0022】
乳化組成物と粉体を混合する方法としては、例えばヘンシェルミキサーやプラネタリーミキサー等の混合機器を用いる方法が挙げられ、乳化組成物と粉体の混合比率としては100:10〜100:200が好ましい。
また乾燥条件としては、25〜80℃で3〜10時間放置することが挙げられる。
【0023】
本発明の化粧料は、上記表面処理粉体の他、通常の化粧料に使用される成分を、本発明の効果を損なわない範囲において配合することにより得ることができる。このような任意成分としては、油性成分、水性成分、美容成分、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の化粧料としては、本発明の効果が顕著に感じられるためメーキャップ化粧料であることが好ましく、さらには、パウダーファンデーション、アイシャドウ、ほほ紅、白粉等の、粉末状あるいはプレス状のメーキャップ化粧料が好ましい。また、日焼け止め乳液や日焼け止めクリーム等の、液状、乳液状、固形状、ペースト状、ゲル状、スプレー状等、種々の形態が挙げられる。
本発明の化粧料における表面処理粉体の配合量は、剤型により異なるが、3〜95%が好ましい。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0026】
製造実施例1〜4及び製造比較例1〜2:セラミド含有乳化組成物の調製
表1に示す組成及び下記製法にてセラミド含有乳化組成物を調製した。また乳化滴の平均粒子径を測定した。その結果を併せて表1に示した。
【0027】
【表1】

【0028】
(製法)
[製造実施例1〜2及び製造比較例1〜2]
A.成分1〜3を75℃に加熱し、均一に混合する。
B.成分4〜6を90℃に加熱し、均一に混合溶解する。
C.AにBを添加し、乳化する。
D.Cを冷却する。
E.Dをマイクロフルイダイザーにて1000kg/cmの噴射圧力で2回処理を行いセラミド含有処理乳液を得た。
【0029】
[製造実施例3]
A.成分1〜3を75℃に加熱し、均一に混合する。
B.成分4〜6を90℃に加熱し、均一に混合溶解する。
C.AにBを添加し、乳化する。
D.Cを冷却する。
E.Dをマイクロフルイダイザーにて700kg/cmの噴射圧力で1回処理を行いセラミド含有処理乳液を得た。
【0030】
[製造実施例4]
A.成分1〜3を75℃に加熱し、均一に混合する。
B.成分4〜6を90℃に加熱し、均一に混合溶解する。
C.AにBを添加し、乳化する。
D.Cを冷却し、セラミド含有処理乳液を得た。
【0031】
(平均粒子径の測定)
上記製法にて得られたセラミド含有乳化組成物について、コールターカウンター(ベックマン・コールター株式会社製:サブミクロン粒子アナライザーN5)を用いて乳化滴の平均粒子径を測定した。
【0032】
実施例1〜7及び比較例1〜2:表面処理粉体
表2に示す組成及び下記製法にて表面処理粉体を調製した。また下記評価方法および評価基準により、セラミド被覆の均一性(結晶析出の有無)について評価した。その結果を併せて表2に示した。
【0033】
【表2】

【0034】
(製法)
A.成分1〜6をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて均一に混合する。
B.Aに成分7〜12を添加し混合する。
C.Bを取り出し、100℃にて24時間乾燥し、水を除去した。
D.Cをパルベライザーにて粉砕処理をし、表面処理粉体を得た。
【0035】
(セラミド被覆の均一性(結晶析出の有無))
本発明品及び比較品の表面処理粉体を金皿に圧縮成型した後、スポンジを用いて10回擦った後、プレス表面を観察し、1平方センチメートル当たりにある1ミリ以上の結晶の数を測定した。
[評価基準及び判定基準]
(評価) : (判定)
3個未満 : ◎
3個以上5個未満 : △
5個以上 : ×
【0036】
表2から、本発明品の実施例1〜7の表面処理粉体はセラミドの結晶析出が非常に少なく、セラミドの被覆性がとても良好な表面処理粉体であった。対して、水素添加大豆リン脂質を用いなかった比較例1は、セラミドの結晶がやや見受けられ、さらにN−ラウロイルサルコシンイソプロピルを用いなかった比較例2はセラミドの結晶の数が多く、セラミドが均一に被覆されていない表面処理粉体であった。
【0037】
実施例8〜12及び比較例3〜4:パウダーファンデーション:
表3に示す組成及び下記製法にてパウダーファンデーションを調製した。また下記評価方法および評価基準により、化粧膜の均一性および化粧持ちについて評価した。その結果を併せて表3に示した。
【0038】
【表3】

【0039】
(製法)
[実施例8〜12及び比較例3〜4]
A.成分1〜14をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて均一に混合する。
B.Aに成分15を添加し混合する。
C.Bをパルベライザーにて粉砕処理をする。
D.Cを金皿に圧縮成型しパウダーファンデーションを得る。
【0040】
(評価方法)
(化粧膜の均一性)
人工皮膚模型(商品名バイオプレート、株式会社ビューラックス社製)の5cm×10cmの範囲に、実施例8〜12及び比較例3〜4のパウダーファンデーションを化粧スポンジを使用して塗布した。塗布した部位から任意に5点を選択し、その5点間の色のバラツキを算出することで化粧膜の均一性を評価した。
具体的な算出手法として、分光色差計(商品名SZ−Σ2000、日本電色工業株式会社製)を用いてハンターのL、a、b値を測色し、次の計算式により5点間の色のバラツキを算出した。
(1)5点のL、a、b値それぞれの平均値を算出する。
LAVE=(L1+L2+L3+L4+L5)/5
aAVE=(a1+a2+a3+a4+a5)/5
bAVE=(b1+b2+b3+b4+b5)/5
(2)任意の5点それぞれの値と平均値との色差を算出する。
ΔE1=((L1−LAVE)2+(a1−aAVE)2+(b1−bAVE)2)1/2
ΔE2=((L2−LAVE)2+(a2−aAVE)2+(b2−bAVE)2)1/2
ΔE3=((L3−LAVE)2+(a3−aAVE)2+(b3−bAVE)2)1/2
ΔE4=((L4−LAVE)2+(a4−aAVE)2+(b4−bAVE)2)1/2
ΔE5=((L5−LAVE)2+(a5−aAVE)2+(b5−bAVE)2)1/2
(3)任意の5点それぞれの値と平均値との色差の平均を算出する。
ΔE=(ΔE1+ΔE2+ΔE3+ΔE4+ΔE5)/5
【0041】
[評価基準及び判定基準]
(評価) : (評点) (判定)
非常に良好 : ΔEが0以上1.0未満 ◎
良好 : ΔEが1.0以上2.0未満 ○
普通 : ΔEが2.0以上3.0未満 △
不良 : ΔEが3.0以上 ×
【0042】
(化粧持ち)
化粧膜の均一性の評価に使用した人工皮膚模型を、2−エチルヘキサン酸グリセリル:スクワレン:水=40:40:20の擬似皮脂・汗混合物に攪拌しながら5時間浸漬させた。その後人工皮脂模型を乾燥させ、任意に5点を選択し分光色差計にてハンターのL、a、b値を測色し、化粧膜の均一性の評価と同様に色差を算出した。
そして擬似皮脂・汗混合物に浸漬前の色差をΔE前、浸漬後の色差をΔE後とし、浸漬前の色差と浸漬後の色差をΔE化粧持ちとし、次のように算出した。
ΔE化粧持ち=ΔE前−ΔE後
【0043】
[評価基準及び判定基準]
(評価) : (評点) (判定)
非常に良好 : ΔE化粧持ちが0以上1.0未満 ◎
良好 : ΔE化粧持ちが1.0以上2.0未満 ○
普通 : ΔE化粧持ちが2.0以上3.0未満 △
不良 : ΔE化粧持ちが3.0以上 ×
【0044】
表3から、本発明品の実施例8〜12のセラミド含有パウダーファンデーションは、化粧膜の均一性が高く、化粧持ちが良好であった。対して、実施例1〜6の表面処理粉体を配合しなかった比較例3〜4のセラミド含有パウダーファンデーションは、化粧膜の均一性、化粧持ちの点で評価が低かった。
【0045】
実施例13:フェイスパウダー
下記組成のフェイスパウダーを下記製法により調製した。
(成分) (%)
1.実施例5のタルク 85
2.雲母チタン 15
【0046】
(製法)
A.成分1〜2を均一に混合する。
B.Aをパルベライザーにて粉砕処理をする。
C.Bを容器に充填しフェイスパウダーとした。
実施例13のフェイスパウダーは、セラミドの結晶析出が非常に少なく均質であった。また、化粧膜の均一性、化粧持ちに関しても、とても良好であった。
【0047】
実施例14:化粧下地
下記組成の化粧下地を下記製法により調製した。
(成分) (%)
1.セタノール 2
2.ステアリン酸 1
3.ミツロウ 0.5
4.ワセリン 3
5.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 5
6.実施例2の酸化チタン 5
7.カルボキシビニルポリマー 0.1
8.グリセリン 5
9.トリエタノールアミン 0.5
10.ジプロピレングリコール 10
11.防腐剤 適量
12.香料 適量
13.精製水 残量
【0048】
(製法)
A.成分1〜6を75℃に加熱し、均一に混合溶解する。
B.成分7〜10、13を75℃に加熱し、均一に混合溶解する。
C.AにBを添加し、乳化する。
D.Cを冷却し、成分11、12を添加し、化粧下地を得た。
実施例14の化粧下地は、セラミドの結晶析出がなく、また、化粧膜の均一性に関してもとても良好であった。
【0049】
実施例15:ファンデーション
下記組成のファンデーションを下記製法により調製した。
(成分) (%)
1.実施例5のタルク 10
2.実施例6のセリサイト 5
3.雲母チタン 2
4.実施例7の酸化鉄 2
5.実施例4の酸化チタン 25
6.マイクロクリスタリンワックス 5
7.ミツロウ 2
8.ワセリン 3
9.流動パラフィン 5
10.パルミチン酸イソプロピル 残量
11.防腐剤 適量
12.香料 適量
【0050】
(製法)
A.成分6〜10を85℃で均一に混合する。
B.Aに成分1〜5及び成分11〜12を添加し、混合分散する。
C.Bを85℃で溶融して、皿に流し込み、冷却し、ファンデーションを得た。
実施例15のファンデーションはセラミドの結晶析出がなく安定であった。また、化粧膜の均一性、化粧持ちに関してもとても良好であった。
【0051】
実施例16:クリームファンデーション
下記組成のクリームファンデーションを下記製法により調製した。
(成分) (%)
1.スクワラン 10
2.デカメチルシクロペンタンシロキサン 20
3.ポリオキシエチレン変性ジメチルポリシロキサン 3
4.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 5
5.実施例5のタルク 5
6.実施例7の酸化鉄 2
7.実施例3の酸化チタン 10
8.1,3ブチレングリコール 10
9.防腐剤 適量
10.香料 適量
11.精製水 残量
【0052】
(製法)
A.成分1〜7を均一に混合分散する。
B.成分8〜11を均一に混合する。
C.AにBを添加、乳化して、クリームファンデーションを得た。
実施例16のクリームファンデーションは、セラミドの結晶析出がなく、経時的にも安定であった。また、化粧膜の均一性、化粧持ちに関してもとても良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミド、ラウロイルサルコシンと低級アルコールとのエステル、および水素添加リン脂質で表面処理することを特徴とする表面処理粉体。
【請求項2】
セラミドと、ラウロイルサルコシンと低級アルコールとのエステルの配合比率が1:5〜1:20である請求項1に記載の表面処理粉体。
【請求項3】
セラミド、ラウロイルサルコシンと低級アルコールとのエステル、および水素添加リン脂質を含む油相と、水相とを乳化して乳化組成物を調製し、次いで該乳化組成物と粉体とを混合した後、水を乾燥除去することにより得られる請求項1または2に記載の表面処理粉体。
【請求項4】
乳化組成物の乳化滴の平均粒子径が200〜1000nmに調製されるものである請求項1〜3に記載の表面処理粉体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理粉体を含有する化粧料。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理粉体を含有するメークアップ化粧料。

【公開番号】特開2010−235459(P2010−235459A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82630(P2009−82630)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】