説明

表面処理粉体及びその製造方法並びにそれを含有する化粧料

【課題】撥水性、撥油性に優れ、肌への塗布時の感触が滑らかで付着性も良好な表面処理粉体及びその環境負荷が少ない製造方法、並びにこの表面処理粉体を配合した化粧料を提供することにある。
【解決手段】下記式(1)のフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーによって基材粉体の表面が処理されていることを特徴とする表面処理粉体、さらには炭素数1〜3の低級アルコール以外の有機溶媒を利用しないで製造する表面処理粉体の製造方法、及びこの表面処理粉体を配合した化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性、撥油性に優れ、且つ使用感に優れた表面処理粉体および該粉体を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料には、化粧料用粉体として様々な粉体が用いられており、その使用目的に合わせて、随時種々の化合物で表面処理が行なわれている。また、汗・涙・雨などによる化粧くずれや皮脂・化粧料の油分などによる化粧くずれの防止を目的として、撥水性、撥油性をもたせるための表面処理に関する研究が行われている。
【0003】
従来、提案されている撥水性、撥油性に優れるフッ素化合物で処理した粉体としては、例えば、パーフルオロアルキル基を有するリン酸エステルで粉体の表面処理をした撥水撥油性粉体(特許文献1)、パーフルオロアルキルシランで粉体を処理した撥水撥油性顔料(特許文献2)、パーフルオロポリエーテルアルキルリン酸及びその塩等で基材粉体の表面を処理した化粧用粉体(特許文献3)、パーフルオロアルキル・ポリオキシアルキレン共変性シリコーンにて表面処理された改質粉体(特許文献4)、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン化合物を表面処理した撥水撥油性化粧料用粉体顔料(特許文献5)、パーフルオロアクリレート共重合体が表面に被覆された顔料粉体(特許文献6)等が挙げられ、いずれも化粧料用の粉体として利用されている。
【0004】
しかしながら、これらのフッ素化合物はいずれも、撥水性、撥油性に関しては一定の効果は認められるものの、使用感触については必ずしも十分ではない。
【0005】
一方、本発明者らが着目した(化1)及び/又は下記式(化2)のフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーは、パーフルオロアルキレン又はパーフルオロアルキルと結合しているエーテル酸素を2個以上有するパーフルオロポリエーテルの繰り返し単位から誘導されるポリパーフルオロエトキシメトキシフルオロメチル鎖が構造中に組み込まれ、かつ、(化1)及び(化2)のウレタンの構造中にアニオン性もしくはカチオン性の親水性イオン基がポリウレタンの側鎖として存在する、水溶性のフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーである。このような構造をもつフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーは、建築材料の保護、低温におけるゴム状弾性、耐薬品性及び耐溶剤性を有する硬化性エラストマー及び成形品などの工業用途での利用や、織物の表面処理剤、紙のサイジング剤として利用されている(特許文献7〜10)。
【0006】
本発明に係わる(化1)及び/又は下記式(化2)は、パーフルオロエトキシメトキシフルオロメチル鎖がフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーの構造の一部に組み込まれた化合物であるが、パーフルオロエトキシメトキシフルオロメチル鎖を有する化合物については、これを配合した化粧料(非特許文献1)が報告されている。しかしながら、この化合物はウレタンではなく、また粉体の処理剤として利用するものでもない。
【特許文献1】特開平06−079163号公報
【特許文献2】特開平06−192594号公報
【特許文献3】特開平08−133928号公報
【特許文献4】特開平08−283605号公報
【特許文献5】特開2008−37813号公報
【特許文献6】特開2008−50387号公報
【特許文献7】特開平08−053648号公報
【特許文献8】特開2003−048947号公報
【特許文献9】特開2000−302938号公報
【特許文献10】特開2003−129394号公報
【非特許文献1】公技2002−001039号技報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、撥水性、撥油性に優れ、肌への塗布時の感触が滑らかで付着性も良好な表面処理粉体及びその環境負荷が少ない製造方法、並びにこの表面処理粉体を配合した化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を進めた結果、(化1)及び/又は下記式(化2)のフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーを基材粉体の表面処理剤として利用することや、特定の溶媒を用いることで環境負荷が少ない方法で基材粉体を表面処理することができること、さらに、この表面処理粉体は撥水性、撥油性に優れるため汗や皮脂による化粧くずれを防止できること、また、肌への塗布時の感触が滑らかで付着性も良好であることを見出し、本発明を完成するに到った。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、撥水性、撥油性に優れ、肌への塗布時の感触が滑らかで付着性も良好な表面処理粉体及びその環境負荷が少ない製造方法、並びにこの表面処理粉体を配合した化粧料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の化粧料用粉体について詳述する。
【0011】
本発明に係わるフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーは、フッ素化ポリエーテルウレタンアニオノマー及び/又はフッ素化ポリエーテルウレタンカチオノマーある。このフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーは、パーフルオロアルキレン又はパーフルオロアルキル基と結合しているエーテル酸素が少なくとも2以上有するパーフルオロポリエーテルの繰り返し単位から誘導される一般式(化3)のポリパーフルオロエトキシメトキシフルオロメチル鎖が構造中に組み込まれおり、かつ、(化1)及び(化2)のウレタンの構造中にアニオン性もしくはカチオン性の親水性イオン基を含有し、それらのカチオン性基もしくはアニオン性基がポリウレタンの側鎖として存在することを特徴とする、水溶性の高分子である。
【0012】
パーフルオロエトキシメトキシフルオロメチル鎖の分子量は300以上であり、上限は概ね20000程度である。300未満では粉体に対する撥水性、撥油性の付与を十分におこなうことは難しく、20000を超えると粘度が非常に大きくなり取扱いにくくなるなどの支障がでてくる。
【0013】
なお、パーフルオロエトキシメトキシフルオロメチル鎖は、2種以上のパーフルオロオキシアルキレン鎖を含有するが、それぞれ同種のものが専属重合している場合に限るものではなく、ランダム重合或いはブロック重合でも構わない。
【0014】
フッ素化ポリエーテルウレタンアニオノマー及びフッ素化ポリエーテルウレタンカチオノマーは、具体的には、次に挙げる式(化1)及び式(化2)で表される化合物である。
【化1】

(式中、pは1〜50の整数、Rfは下記式(化3)を示す)
【化2】

(式中、pは1〜50の整数、Rfは下記式(化3)、Rは下記式(化4)を示す)
【化3】

(式中、mは1〜100の整数、nは1〜100の整数を示す)
【化4】

【0015】
本発明に係わるフッ素化ポリエーテルウレタンアニオノマーの繰り返し単位pは、1〜50であれば上記効果を呈するのに十分であるが、1〜25が好ましく、さらに好ましくは2〜15である。
【0016】
また、フッ素化ポリエーテルウレタンカチオノマーの繰り返し単位pは、1〜50であれば上記効果を呈するのに十分であるが、1〜25が好ましく、さらに好ましくは2〜8である。
【0017】
本発明に係わるフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーの性状は、パーフルオロエトキシメトキシフルオロメチル鎖の分子量に依存して常温で高粘性の液体〜固体を呈する。また、極性基をもつことから水に溶解又は分散する。
【0018】
本発明に用いられるフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーは例えば、特開平08−053648号公報、特開2003−048947号公報、特開2000−302938号公報、特開2003−129394号公報などを参考に合成できる。また、市販品を用いることもでき、例えば、ソルベイソレクシス社のFomblin HC/PU−AN5(Fluorinated polyether−urethane anionomer)やFomblin HC/PU−CAT5(Fluorinated polyether−urethane cationomer)が挙げられる。
【0019】
これらの市販品は、水又は低級アルコール水溶液として販売されるものであるが、これらは、前処理することなくそのまま利用することもできるし、これらの市販品を精製して不純物を取り除いたものを用いることもできる。精製方法としては、特に限定されるものではないが、例えばこれらの市販品を酸又はアルカリにて析出させて過熱処理し、次いで中和処理をおこない水洗ろ過を繰り返して乾燥、粉砕させることでこの目的を達することができる。
【0020】
本発明で、フッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーで処理される基材粉体としては、従来化粧料用粉体として用いられている粉体であれば特に制限されず、例えば、次のような基材粉体が挙げられる。これらの基材粉体は1種または2種以上を混合して用いても構わない。
【0021】
酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化クロム、群青、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、マイカ、セリサイト、タルク、シリカ、カオリン、水酸化クロム、亜鉛華、カーボンブラック、アルミナ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ホウ素、シリカ−アルミナ粉末、ベントナイト、スメクタイトなどの無機顔料、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリエチレン粉体、シリコーン樹脂、テフロン(登録商標)パウダー、シリコーンガム、シルクパウダー、カルナバワックス、ライスワックス、デンプン、微結晶セルロースなどの有機粉体、ローダミンB等の有機色素、赤色201号、黒色401号、黄色4号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機着色料、雲母チタン、酸化鉄コーティング雲母などの複合粉体、表面処理がなされている粉体などが挙げられ、形状としては、球状、板状、針状、繊維状など通常化粧料に用いられる形状、粒径であれば構わない。好ましい基材粉体は無機顔料である。
【0022】
基材粉体をフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーで表面処理する方法は、特に制限されず、通常の粉体表面被覆処理方法を適用することができる。例えば、溶媒に溶解または分散しているフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーを基材粉体と混合し、その後溶媒を除去、乾燥することによって容易に化粧料用粉体を得ることができる。
【0023】
なお、基材粉体の混合後のPHに縛りは無いが、中和するとフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーを小溶化物が析出して基材粉体との結びつきがより強くなる。
【0024】
また、フッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーは、水溶性であることから、環境負荷の少ない方法、例えば有機溶剤を利用しないで基材粉体の表面処理を行うことができる他、炭素数1〜3の低級アルコール水溶液を利用して基材粉体の表面処理を行うこともできる。
【0025】
なお、基材粉体をフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーで表面処理した後、基材粉体にパーフルオロポリエーテル基を有する化合物をより強く吸着させるために、高温で焼き付けても良い。また、本処理にあっては粉体を同時に2種以上混合して処理することもできる。
【0026】
更に、本発明に係わる基材粉体の表面処理にあたっては、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明に係わる粉体処理剤以外の粉体処理剤を同時又は連続的に基材粉体に表面処理することができる。例えば、本発明に係わる粉体処理剤以外のフッ素系化合物、シリコーン、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、金属石鹸などの公知の粉体処理剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
基材粉体に対するフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーによる処理量は、その種類によって異なるが、基材粉体量の1〜50質量%、特に1〜30質量%が好ましい。少なすぎると十分な効果が得られず、多すぎると基材粉体及本来の特性が失われてしまう恐れがあるからである。
【0028】
上述のようにして得られる本発明の表面処理粉体は撥水性、撥油性に優れ、且つ肌への塗布時の感触が滑らかで、肌との付着性にも優れる。
【0029】
次に本発明の化粧料について詳述する。
【0030】
本発明の化粧料は、上述の本発明の表面処理粉体を含有するもので、その剤型は任意であり、一般に従来の化粧料用粉体を含有する化粧料はすべて含まれる。それら化粧料としては、例えば、ファンデーション、白粉、ほほ紅などのフェイシャル化粧料、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、眉墨、口紅などといったメークアップ化粧料及び日焼け止め化粧品、乳液、ローションなどの基礎化粧料等が挙げられる。また、化粧料の他、皮膚外用剤、医薬用軟膏等にも好適に使用できる。
【0031】
本発明の表面処理粉体の配合量は、化粧料の形態に応じて変動するが、通常、0.01〜99.9質量%である。化粧料として香料等の他の成分を配合させること、また、0.1質量%未満の配合量では本発明に係る表面処理粉体による撥水性、撥油効果及び好ましい感触が十分に表われないことを考え合わせると、表面処理粉体の配合量は、好ましくは0.1〜99質量%の範囲である。なお、化粧料の種類により、例えば固形粉体化粧料には、20〜80質量%、クリーム状化粧料には5〜50質量%、乳液状化粧料には2〜30質量%、ローション類には2〜20質量%を配合するのがさらに好ましい。
【0032】
本発明の化粧料に配合できる、本発明に係わる表面処理粉体以外の成分としては、目的とする化粧料の種類に応じて、通常の化粧料に配合される成分から適宜選択して使用することができる。これらの成分としては、例えば、流動パラフィン、ワセリンなどの炭化水素、植物油脂、ロウ類、合成エステル油、シリコーン系の油相成分、フッ素系の油相成分、高級アルコール類、低級アルコール、脂肪酸類、増粘剤、紫外線吸収剤、粉体、無機・有機顔料、色材、各種界面活性剤、多価アルコール、糖、高分子化合物、生理活性成分、経皮吸収促進剤、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤、各種添加剤等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の化粧料は、通常の方法に従って製造することができる。
【0034】
本発明の化粧料用粉体を配合した化粧料は、耐水性・耐皮脂性に優れ、汗及び皮脂等による化粧崩れを防止し、且つ肌上への化粧料の塗布時の感触が滑らかで、付着性に優れ、しっとりした使用感を与えることができる。
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
(1)フッ素化ポリエーテルウレタンアニオノマー処理粉体(実施例1〜5)
【0037】
(実施例1)
ビーカーに水500mLをいれ、撹拌しながらマイカ95gを入れ室温で十分分散撹拌した。このマイカ分散液に、撹拌しながら表1に示す組成の式(化1)のフッ素化ポリエーテルウレタンアニオノマー(25%水溶液)20gを徐々に添加した。添加後1時間半撹拌を行い、中和した後、吸引ろ過を行い、乾燥して目的の表面処理粉体を得た。
【表1】

【0038】
(実施例2)
市販品であるFOMBLIN HC/PU−AN5(25%水溶液)20gを用いて実施例1と同様に処理をおこない、目的の表面処理粉体を得た。
【0039】
(実施例3)
同様にマイカの代わりに、タルク、酸化チタン、セリサイト、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄を用いて、各々の粉体に実施例2と同様の処理をおこない、目的の表面処理粉体を得た。
【0040】
(実施例4)
水500mLの代わりに、25%エタノール水溶液を用いて実施例2と同様に処理をおこない、目的の表面処理粉体を得た。
【0041】
(実施例5)
市販品であるFOMBLIN HC/PU−AN5を酸処理により精製処理したものを用いて、実施例1と同様に処理をおこない、目的の表面処理粉体を得た。
【0042】
(2)フッ素化ポリエーテルウレタンカチオノマー処理粉体(実施例6〜8)
【0043】
(実施例6)
表2に示す組成の式(化1)のフッ素化ポリエーテルカチオノマーを用いて、実施例1と同様に処理をおこない、目的の表面処理粉体を得た。
【表2】

【0044】
(実施例7)
市販品であるFOMBLIN HC/PU−CAT5(25%水溶液)20gを用いて、実施例1と同様に処理をおこない、目的の表面処理粉体を得た。
【0045】
(実施例8)
同様にマイカの代わりに、タルク、酸化チタン、セリサイト、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄を用いて、各々に対して実施例6と同様の処理をおこない、目的の表面処理粉体を得た。
【0046】
(3)フッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーと、他の粉体処理剤を用いた表面処理粉体(実施例9)
【0047】
(実施例9)
ビーカーに水500mLをいれ、撹拌しながらマイカ95gを入れ室温で十分分散撹拌した。このマイカ分散液に、撹拌しながらFOMBLIN HC/PU−CAT5(25%水溶液)12gを徐々に添加し、更にKF−9909(トリエトキシリルエチルポリジメチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン:信越化学工業社)2gとイソプロピルアルコール10gの溶液を添加した。添加後1時間半撹拌を行い、場合によっては酸で中和した後、吸引ろ過を行い、乾燥して目的の表面処理粉体を得た。
【0048】
(4)乾式法によるパーフルオロポリエーテル処理粉体(比較例1、2)
【0049】
(比較例1)
ヘンシェルミキサーにマイカ950gを入れ、FOMBLIN HC/04(パーフルオロポリエーテル)50gを加え、よく混合し粉砕をして目的の表面処理粉体を得た。
【0050】
(比較例2)
同様にマイカの代わりに、タルク、酸化チタン、セリサイト、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄を用いて、各々の粉体に対して比較例1と同様の処理をおこない、目的の表面処理粉体を得た。
【0051】
(5)パーフルオロエトキシメトキシフルオロエメチル基をもつ化合物による処理粉体(比較例3)
【0052】
(比較例3)
ビーカーに水500mLをいれ、撹拌しながらマイカ95gを入れ室温で十分分散撹拌した。このマイカ分散液に、撹拌しながらパーフルオロエトキシメトキシフルオロエメチル基をもつPEGリン酸5gとイソプロピルアルコール15gを徐々に添加した。添加後1時間半撹拌を行い、場合によっては酸で中和した後、吸引ろ過を行い、乾燥して目的の化粧料表面処理粉体を得た。
【0053】
(撥水性、撥油性試験)
各実施例及び比較例で得られた表面処理粉体について、一定容器に入れ、一定加重で平らに押し固めた表面に、油、水の滴をのせてその接触角を測定した。
結果を表3に示す。(化1)及び/又は下記式(化2)のフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーで処理した表面処理粉体は、既存のパーフルオロポリエーテル誘導体で処理した表面処理粉体と同等の撥水性、撥油があることが示された。なお、未処理のマイカについても、同様の試験を行ったところ、水及び油の両方に「濡れ」を示した。
【表3】

【0054】
(使用試験)
各実施例及び比較例で得られた表面処理粉体を含む、表4に記載のコンパクトフェイスパウダーを調製した。それぞれについて、10名のパネラーにより、塗布時の感触、付着性、化粧持ちについて、◎:非常によい、○:良い、△:標準並み、×:悪い、と3段階にて判定を行い、最も多い判定をその試料の化粧持ち及び使用感の評価とした。
結果を表4に示す。(化1)及び/又は下記式(化2)のフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーで処理した表面処理粉体は、既存のパーフルオロポリエーテル誘導体で処理した表面処理粉体よりも、さらに塗布時の感触、付着性、化粧持ちに優れることが示された。特に、しっとりと滑らかにのびる感触は特筆すべきものであった。
【表4】

(製造法)Aを混合し粉砕する。Bを混合してAに添加し混合した後、粉砕し、ふるいを通した後、中皿にプレスする。
【0055】
以下に、本発明の表面処理粉体を配合した皮膚外用剤の応用例を示す。配合量は質量%である。実施例10〜13は、いずれも撥水性、撥油性、塗布時の感触、付着性、化粧持ちに優れていた。
【0056】
(実施例10)
ファンデーション
表面処理酸化チタン(実施例8) 10.0質量%
表面処理セリサイト(実施例3) 40.0
表面処理酸化タルク(実施例3) 残量
表面処理酸化マイカ(実施例2) 10.0
ベンガラ 0.8
黄酸化鉄 1.6
黒酸化鉄 0.2
ステアリン酸マグネシウム 2.0
ナイロンパウダー 10.0
シリコーン油 5.0
流動パラフィン 3.0
防腐剤 適量
エキルヘキサン酸セチル 3.0
【0057】
(実施例11)
アイシャドウ
表面処理酸化マイカ(実施例9) 10.0質量%
表面処理セリサイト(実施例8) 40.0
表面処理タルク(実施例8) 残量
ステアリン酸マグネシウム 2.0
着色顔料 5.0
ミリスチン酸イソプロピル 3.0
ワセリン 1.0
防腐剤 適量
【0058】
(実施例12)
ほほ紅
表面処理セリサイト(実施例3) 10.0質量%
表面処理タルク(実施例3) 残量
表面処理酸化チタン(実施例3) 2.0
ステアリン酸マグネシウム 1.0
着色顔料 2.0
ベヘニルアルコール 0.3
オクチルドデカノール 3.0
流動パラフィン 3.0
防腐剤 適量
【0059】
(実施例13)
サンスクリーンローション
複合乳化剤(NIKKOL ニコムルスWO)
8.0質量%
デカメチルシクロペンタシロキサン 26.0
ジメチコン(6mPa・s) 5.0
エチルヘキサン酸セチル 3.0
オクチルドデカノール 3.0
ホホバ種子油 2.0
(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー
1.5
酢酸トコフェロール 0.2
BHT 0.02
微粒子酸化亜鉛(FOMBLIN HC/PU−AN5処理品)
2.0
微粒子酸化チタン(FOMBLIN HC/PU−AN5処理品)
2.0
微粒子酸化亜鉛(ステアリン酸アルミニウム処理品)
6.0
微粒子酸化チタン(ステアリン酸アルミニウム処理品)
5.0
シリカ 3.0
1,3−ブチレングリコール 10.0
クエン酸ナトリウム 0.15
グリチルリチン酸ジカリウム 0.2
EDTA−3Na 0.05
防腐剤 適量
水 残量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(化1)及び/又は下記式(化2)のフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーから選択される1種または2種以上によって基材粉体の表面が処理されていることを特徴とする表面処理粉体。
(化1)

(式中、pは1〜50の整数、Rfは下記式(化3)を示す)
(化2)

(式中、pは1〜50の整数、Rfは下記式(化3)、Rは下記式(化4)を示す)
(化3)

(式中、mは1〜100の整数、nは1〜100の整数を示す)
(化4)

【請求項2】
前記式(化1)に示すpの値がそれぞれ2〜15の整数であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理粉体。
【請求項3】
前記式(化2)に示すpの値がそれぞれ2〜8の整数であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理粉体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のフッ素化ポリエーテルウレタンアイオノマーが基材粉体量の1〜50質量%によって表面処理されていることを特徴とする表面処理粉体。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の表面処理粉体を製造する方法であって、製造工程において用いる溶媒が水及び/又は炭素数1〜3の低級アルコール水溶液であることを特徴とする表面処理粉体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の表面処理粉体を含有することを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2010−121099(P2010−121099A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316220(P2008−316220)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000226437)日光ケミカルズ株式会社 (60)
【出願人】(595137022)東色ピグメント株式会社 (9)
【Fターム(参考)】