説明

表面処理組成物およびゴムの表面処理方法、並びにリリーフ弁の製造方法

【課題】(1)非粘着性などの特性をゴム表面に十分かつ安定的に付与することができる表面処理組成物を提供すること。(2)閉弁状態で長時間にわたり放置した後においても、放置後の作動圧力が、設定圧力(放置前の作動圧力)から大きく変化しない低圧用のリリーフ弁の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の表面処理組成物は、テトラアルコキシシランとテトラアルコキシチタンとシランカップリング剤と溶剤とを含有する。本発明の製造方法は、弁座に対し接離するOリングを備えた弁体を有する低圧用のリリーフ弁の製造方法であって、本発明の表面処理組成物をOリングに塗布し、当該組成物による塗膜を加熱してOリングを表面処理する工程と、表面処理されたOリングを弁体の構成部品として装着する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理組成物およびゴムの表面処理方法、並びにリリーフ弁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属などの異種部材と接離(接触/離間)するゴム製品の表面に、非粘着性などの特性を付与するための方法として、(1)シリカ、タルクなどの粉体を表面に付着させる方法、(2)シリコーン組成物などからなる処理剤を塗布して表面処理層を形成する方法(例えば、特許文献1〜3参照)などが行われている。
【0003】
しかしながら、上記(1)の方法では、ゴム製品の使用時において、表面に付着させた粉体が容易に脱離してしまい実用的ではない。また、上記(2)の方法により付与される(表面処理層により発現される)非粘着性は未だ不十分である。更に、ゴムの種類によっては、形成された表面処理層(シリコーン系の被膜)が、ゴム(基材)から脱離することもある。
【0004】
非粘着性が要求されるゴム製品を構成部品として備えてなる機器(空気圧機器)として、管路内における加圧流体の圧力が一定の値を超えたときに、当該加圧流体を低圧側(大気圧)に解放する圧力調整弁であるリリーフ弁が広く使用されており、本出願人においても、種々の構造のリリーフ弁を提案している(例えば、特許文献4および特許文献5参照)。
リリーフ弁は、一般に、弁座(固定部)と、弁体(可動部)と、弁座に対して弁体を圧接させるよう付勢するスプリングと、スプリングの圧縮手段とを備えてなる。
リリーフ弁の可動部である弁体は、弁座に対し接離するOリング(ゴム部品)を備えており、これにより、閉弁時における弁座との気密性が確保される。
リリーフ弁の作動圧力、すなわち、開弁によって加圧流体が解放されるときの圧力は、これを構成するスプリングによる弁体への付勢力(弁体を弁座へ押し付ける力)に依存する。例えば、スプリングによる付勢力をFとし、加圧流体の圧力を受ける弁体の受圧面積をAとすると、加圧流体の圧力が上昇して(F/A)以上になったときに、前記付勢力(F)に抗して弁体が弁座から離間(開弁)して加圧流体が解放される。
ここで、スプリングによる付勢力(F)は、前記圧縮手段により、スプリングの圧縮量を適宜変更することにより調整することができる。
リリーフ弁に設定される作動圧力(以下、「設定圧力」という。)は、これが装着される管路(空気圧回路)の仕様によって様々であり、また、種々の用途において、100KPa以下の圧力で作動する低圧用のリリーフ弁が望まれている。
【0005】
しかしながら、上記のようなリリーフ弁を、閉弁状態(弁体を構成するOリングと弁座とが接触している状態)で一定時間(例えば1時間以上)放置すると、Oリングが弁座に粘着してしまい、弁体が弁座から離間(開弁)しにくくなり、この結果、管路内の圧力が設定圧力を超えて更に上昇してもリリーフ弁が作動しない、という問題がある。
特に、スプリングによる付勢力の小さい低圧用のリリーフ弁においては、その作動圧力がOリングの粘着による影響を受けやすく、例えば、設定圧力の1.5倍以上に上昇してもリリーフ弁が作動しないこともある。
【特許文献1】特開平1−301725号公報
【特許文献2】特開平7−133464号公報
【特許文献3】特開平11−199691号公報
【特許文献4】特開2000−97369号公報
【特許文献5】特開2000−170934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の第1の目的は、非粘着性などの特性をゴム表面に十分かつ安定的に付与することができる表面処理組成物および表面処理方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、閉弁状態で長時間にわたり放置した後においても、放置後の作動圧力が、設定圧力(放置前の作動圧力)から大きく変化しない低圧用のリリーフ弁の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表面処理組成物は、ゴムの表面を処理するための組成物であって、式(1):Si(OR1 4 (式中、R1 は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるテトラアルコキシシランと、式(2):Ti(OR2 4 (式中、R2 は、炭素数2〜4のアルキル基を表す。)で示されるテトラアルコキシチタンと、式(3):Si(OR3 m 4 3-m −(CH2 n −R5 (式中、R3 はアルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、R4 はアルキル基を表し、mは1〜3の整数であり、nは0〜5の整数である。また、R5 は、ゴムのポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基を表す。)で示されるシランカップリング剤と、これらを溶解する溶剤とを含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の表面処理組成物においては、下記の形態が好ましい。
(1)前記テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシラン(TMOS)またはテトラエトキシシラン(TEOS)であり、前記テトラアルコキシチタンが、テトラエトキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタンおよびテトラ−n−ブトキシチタンから選ばれた少なくとも1種、特にテトラエトキシチタンであること。
(2)酸を含有すること。
(3)テトラエトキシシランと、テトラエトキシチタンと、シランカップリング剤と、酸と、有機溶剤とを含有すること。
(4)テトラエトキシシランの含有量に対して1〜10質量%のテトラエトキシチタンを含有すること。
(5)テトラエトキシシランの含有量に対して3〜10質量%のテトラエトキシチタンを含有すること。
(6)テトラエトキシシランの含有量に対して6〜10質量%のテトラエトキシチタンを含有すること。
(7)テトラアルコキシシランとテトラアルコキシチタンとの合計の含有量に対して0.1〜100質量%のシランカップリング剤を含有すること。
【0009】
本発明の表面処理方法は、本発明の表面処理組成物を、ゴムの表面に塗布する工程と、当該表面処理組成物による塗膜を加熱する工程とを含むことを特徴とする。本発明の表面処理方法は、ニトリルゴムの表面に適用されることが好ましい。
【0010】
本発明のリリーフ弁の製造方法は、弁座に対して接離するOリングを備えた弁体を有し、100KPa以下の圧力において作動する低圧用のリリーフ弁を製造する方法であって、本発明の表面処理組成物をOリングに塗布する工程と、当該表面処理組成物による塗膜を加熱することにより当該Oリングを表面処理する工程と、表面処理された当該Oリングを弁体の構成部品として装着する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
(1)本発明の組成物を構成するテトラアルコキシシランは、分子中に4個のアルコキシ基(−OR1 )を有し、また、テトラアルコキシチタンも、分子中に4個のアルコキシ基(−OR2 )を有し、更に、シランカップリング剤は、加水分解性基(−OR3 )および反応性の有機官能基(−R5 )を分子中に有する。被処理物であるゴム(基材)の表面に本発明の組成物を塗布し、当該ゴムの表面において、テトラアルコキシシランと、テトラアルコキシチタンと、シランカップリング剤との反応(加水分解・縮合反応)を進行させることにより、Si−O結合およびTi−O結合による架橋構造を有する表面処理層(SiO2 −TiO2 系の被膜)が形成され、これにより、ゴム製品の表面に非粘着性などの特性が発現される。
【0012】
(2)表面処理層を構成するSiO2 −TiO2 系の被膜(またはその形成過程における構造)中には、シランカップリング剤に由来する反応性の有機官能基(−R5 )が導入され、この有機官能基は、被処理物の表面近傍におけるゴムのポリマー主鎖と反応する。これにより、当該表面処理層は、シランカップリング剤を介して、ゴムのポリマー主鎖と化学的に結合する。このように、SiO2 −TiO2 系の被膜からなる表面処理層と、ゴムのポリマー主鎖との間には、シランカップリング剤を介して、化学的な結合が形成されるため、当該表面処理層は、有機物であるゴム(基材)に対して強固に密着することになる。従って、使用環境において脱離するようなことはなく、非粘着性、潤滑性、耐擦過傷性、防汚性などの表面特性を安定的に発現させることができる。
【0013】
(3)本発明の製造方法により得られるリリーフ弁は、これを構成するOリングの粘着性が極めて低いものであるため、閉弁状態で長時間にわたり放置した後においても、放置後の作動圧力が、設定圧力(放置前の作動圧力)から大きく変化することはない。
しかも、本発明の製造方法により得られるリリーフ弁によれば、閉弁状態での長時間の放置を含む弁の開閉操作を多数回にわたり繰り返しても、Oリングに形成されている表面処理層が剥離するようなことはなく、表面処理層による性能(非粘着性または低粘着性)を長期にわたり安定的に発現させることができ、その作動圧力が、設定圧力から大きく変化することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
<表面処理組成物>
本発明の組成物は、テトラアルコキシシランと、テトラアルコキチタンと、シランカップリング剤と、これらを溶解する溶剤とを必須成分として含有する。
【0015】
テトラアルコキシシランを示す上記式(1)において、R1 は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基を表す。ここに、テトラアルコキシシランの好適な具体例としては、テトラメトキシシラン(TMOS)およびテトラエトキシシラン(TEOS)を挙げることができ、TEOSが特に好ましい。
【0016】
テトラアルコキシチタンを示す上記式(2)において、R2 は、エチル基、iso−プロピル基、n−ブチル基などの炭素数2〜4のアルキル基を表す。ここに、テトラアルコキシシランの好適な具体例としては、テトラエトキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタンおよびテトラ−n−ブトキシチタンを挙げることができ、テトラエトキシチタンが特に好ましい。
【0017】
シランカップリング剤を示す上記式(3)において、R3 はアルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、R4 はアルキル基を表し、mは1〜3の整数、好ましくは3であり、nは0〜5の整数、好ましくは0〜3の整数である。また、R5 は、ゴムのポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基を表す。
【0018】
上記式(3)において、Si(OR3 m 4 3-m −で表される基は、少なくとも1個、好ましくは3個の加水分解性基(−OR3 )を有する。これにより、上記式(3)で示されるシランカップリング剤は、4個のアルコキシ基(−OR1 )を有するテトラアルコキシシラン、および4個のアルコキシ基(−OR2 )を有するテトラアルコキシチタンの何れとも反応することができる。
【0019】
ここに、Si(OR3 m 4 3-m −で表される基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基などのトリアルコキシシリル基であることが好ましい。
【0020】
また、ゴムのポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基(R5 )としては、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、ウレイド基などを挙げることができる。これらのうち、不飽和結合を有するゴムのポリマー主鎖に対して反応性を有するメルカプト基、不飽和結合を有しないゴムのポリマー主鎖に対して反応性を有するビニル基を好適なものとして挙げることができる。
【0021】
被処理物であるゴム(基材)の表面において、テトラアルコキシシラン(−OR1 )と、テトラアルコキシチタン(−OR2 )と、シランカップリング剤(−OR3 )との反応(加水分解・縮合反応)を進行させることによって、Si−O結合およびTi−O結合による架橋構造を有する表面処理層(SiO2 −TiO2 系の被膜)が形成され、これにより、ゴム製品の表面に非粘着性などの特性が十分に発現される。特に、Ti−O結合が導入されていることにより、シロキサン架橋構造を有する表面処理層(SiO2 系の被膜)と比較して、非粘着性の効果が格段に優れている。
【0022】
しかして、表面処理層を構成するSiO2 −TiO2 系の被膜、または、その形成過程(加水分解・縮合反応過程)における構造中には、シランカップリング剤に由来する反応性の有機官能基(R5 )が導入され、この有機官能基(R5 )は、表面近傍におけるゴムのポリマー主鎖と反応する。これにより、最終的に形成される表面処理層は、シランカップリング剤を介して、ゴムのポリマー主鎖と化学的に結合することになる。
【0023】
このように、SiO2 −TiO2 系の被膜からなる表面処理層と、ゴムのポリマー主鎖との間には、シランカップリング剤を介して、化学的な結合が形成されるため、当該表面処理層は、有機物であるゴムに対しても強固に密着することができる。この結果、当該表面処理層がゴム(基材)から脱離するようなことはなく、従って、当該表面処理層によって、非粘着性などの特性を安定的に発現させることが可能となる。
【0024】
本発明の組成物を構成する溶剤としては、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタンおよびシランカップリング剤の何れも溶解することができるものの中から選択することができ、これらの種類によっても異なるが、ヘキサン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、アセトンなどの有機溶剤を例示することができ、これらのうち、ヘキサン、メタノール、エタノール、ジクロロメタンおよびアセトンが好ましい。
【0025】
本発明の組成物には、その効果が損なわれない限度において、上記の必須成分以外に各種の任意成分が含有されていてもよい。
【0026】
本発明の組成物には、テトラアルコキシシランと、テトラアルコキシチタンと、シランカップリング剤との反応(加水分解・縮合反応)を効率的に行わせて、架橋構造の形成を促進させる観点から、本発明の組成物は、酸性(pHが6以下、特に2〜5)であることが好ましい。
【0027】
本発明の組成物を酸性とするために含有される酸としては、無機酸であっても有機酸であってもよい。ここに、無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸などを挙げることができ、塩酸が好ましい。また、有機酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸などを挙げることができ、酢酸が好ましい。
【0028】
本発明の組成物の必須成分であるテトラアルコキシシランの含有割合としては、組成物全体の0.5〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは2〜10質量%とされる。テトラアルコキシシランの含有割合は、主に溶剤の使用量を調整することによって、適宜の割合に調整することができる。
【0029】
本発明の組成物の必須成分であるテトラアルコキシチタンは、テトラエトキシシランの含有量に対して1〜10質量%の割合で含有されていることが好ましく、更に好ましくは3〜10質量%、特に好ましくは6〜10質量%とされる。
【0030】
テトラアルコキシチタンの含有割合(テトラアルコキシシランに対する相対的な割合)が過小である場合には、得られる組成物により形成される表面処理層が、非粘着性などの表面処理効果を十分に奏することができない。
一方、テトラアルコキシチタンの含有割合(テトラアルコキシシランに対する相対的な割合)が過大である場合には、得られる組成物が短時間で硬化してしまい、塗布性などの作業性が低下する。
【0031】
本発明の組成物の必須成分であるシランカップリング剤は、テトラアルコキシシランとテトラアルコキシチタンとの合計の含有量に対して0.1〜100質量%の割合で含有されていることが好ましく、更に好ましくは0.5〜20質量%、特に好ましくは1〜10質量%とされる。
【0032】
シランカップリング剤の含有割合(テトラアルコキシシランとテトラアルコキシチタンの合計に対する相対的な割合)が過小である場合には、得られる組成物によって形成される表面処理層がゴムに対して十分な密着性を有するものとならない。
一方、シランカップリング剤の含有割合(テトラアルコキシシランとテトラアルコキシチタンの合計に対する相対的な割合)が過大である場合には、得られる組成物による架橋構造の形成が不十分となり、ゴム(基材)の表面を完全に覆うこと(表面処理層の形成)が困難となる。
【0033】
本発明の組成物において、溶剤の含有割合としては、テトラアルコキシシランとテトラアルコキシチタンとシランカップリング剤との合計の含有量(質量)の3〜50倍であることが好ましく、更に好ましくは10〜30倍とされる。
【0034】
溶剤の含有割合が過小である場合には、得られる組成物により形成される表面処理層がゴムに対して十分な密着性を示さないことがある。一方、この割合が過大である場合には、得られる組成物に占めるテトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタンおよびシランカップリング剤の割合が過小となって塗布効率の低下を招く。
【0035】
本発明の組成物は、テトラアルコキシシランと、テトラアルコキシチタンと、シランカップリング剤と、任意成分とを溶剤に溶解させることにより容易に製造することができる。
【0036】
なお、得られた組成物を室温下に長時間静置すると、構成成分(特に、テトラアルコキシシランおよびテトラアルコキシチタン)の縮合物が形成されて沈澱物を生じるおそれがある。このため、本発明の組成物は、製造後24時間以内に使用することが好ましく、また、使用前に十分に(例えば1〜6時間)攪拌して組成物の均質化を図ることが肝要である。また、必要に応じて、60〜70℃に加温してもよい。
【0037】
本発明の組成物は、ゴム(加硫ゴムおよび未加硫ゴム)の表面処理に使用するものであり、当該ゴムの表面に、非粘着性、潤滑性、耐擦過傷性、防汚性などの特性を付与することができる。
【0038】
ここに、本発明の組成物により表面処理されるゴム(原料ゴム)としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、アクリルゴム(ACM,ANM)、エピクロロヒドリンゴム(CO,ECO)、シリコーンゴム(VMQ,FVMQ)、ウレタンゴム(AU,EU)、フッ素ゴム(FKM,FEPM)などを例示することができる。本発明の組成物は、ニトリルゴムに対して、優れた処理効果(非粘着性)を付与することができる。
【0039】
本発明の処理方法は、本発明の組成物をゴムの表面に塗布する工程(以下「塗布工程」という。)と、当該組成物による塗膜を加熱する工程(以下「加熱工程」という。)とを含む。
【0040】
塗布工程において、本発明の組成物のゴム表面への塗布方法としては、当該組成物中にゴム(成形体)を浸漬する浸漬法、刷毛やローラなどの塗布手段を使用する方法など特に制限されるものではない。
【0041】
なお、この塗布工程の終了後、ゴムの表面に形成された塗膜から溶剤を除去するために乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥条件としては、組成物を構成する溶剤の種類および含有割合などによっても異なるが、例えば室温で1分間〜24時間とされ、好ましくは3分間〜1時間とされる。
【0042】
加熱工程において、塗膜の加熱方法としては、オーブンによる加熱、熱プレスによる加熱など、特に制限されるものではない。加熱条件としては、例えば50〜150℃で5分間〜24時間とされ、好ましくは80〜120℃で5〜120分間とされる。
【0043】
被処理物であるゴムの表面に塗布された塗膜(本発明の組成物による塗膜)を加熱することにより、(i)テトラアルコキシシランと、テトラアルコキシチタンと、シランカップリング剤との反応(加水分解・縮合による架橋構造の形成反応)が進行するとともに、(ii)シランカップリング剤の有する反応性有機官能基と、ゴムのポリマー主鎖との反応が進行する。
【0044】
これにより、(i)架橋構造(表面処理層を構成するSiO2 −TiO2 系の被膜)とシランカップリング剤との間、および、(ii)シランカップリング剤とゴムのポリマー主鎖との間に化学的な結合が形成され、この結果、ゴムに対する密着性(被膜としての耐久性・強靱性)に優れた表面処理層(被覆層/改質層)が形成される。
【0045】
本発明の組成物により形成される表面処理層は、シランカップリング剤を介してゴムのポリマー主鎖に結合されているので、耐久性(強靱性)に優れているとともに、熱安定性および化学安定性にも優れ、種々の有機溶剤〔例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、アセトン〕に対しても不溶性または難溶性となる。この結果、本発明の組成物によって表面処理したゴム製品(表面処理層)に有機溶剤を接触させても、これによって付与される表面特性(例えば非粘着性)が実質的に損なわれることはなく、耐溶剤性にも優れている。
【0046】
<リリーフ弁の製造方法>
本発明の製造方法により得られるリリーフ弁は、弁座に対して接離(接触/離間)するOリングを備えた弁体を有する低圧用のリリーフ弁である。
【0047】
図1は、そのようなリリーフ弁の一例を示す概略断面図であり、同図では閉弁時の状態を示している。
図1において、10はハウジング、20は弁座、30は弁体、40はスプリング、50はスプリングの圧縮手段である。
この例のリリーフ弁は、加圧流体の管路(図示省略)に装着され、この管路内の圧力(1次側の圧力)が設定圧力を超えたときに、弁座20から弁体30が離間(開弁)して、当該加圧流体を低圧側(2次側)に解放するよう作動するものである。
【0048】
ハウジング10は、アルミニウムなどの金属製であり、その一部において弁座20(固定部)が形成されているとともに、弁体30、スプリング40および圧縮手段50を収容する空間を有している。
【0049】
ハウジング10内に収容されている弁体30は、バルブの可動部であり、Oリング31と、ガイド部32とからなる。
弁体30を構成するOリング31は、閉弁時には弁座20と接触し、開弁時には弁座20から離間する。Oリング31により、閉弁時の気密性(シール性)が確保される。
弁体30を構成するガイド部32は、Oリング31を保持するとともに、Oリング31にスプリング40による付勢力を伝達している。このガイド部32には、切り欠きにより加圧流体の流路33が形成されている。
「低圧用の」リリーフ弁を構成するOリング31の寸法としては、線径が1.0〜5.0mm、内径が0.5〜4.0mm、外径(内径+線径×2)が2.5〜14.0mmとされる。
【0050】
ハウジング10内に収容されているスプリング40は、その一端が、弁体30のガイド部32に当接され、その他端が、スプリングの圧縮手段50に当接されている。
スプリング40は、弁体30(Oリング31)を弁座20に圧接させるよう付勢している。
「低圧用の」リリーフ弁を構成するスプリング40のばね定数としては、0.05〜1.0N/mmとされる。
【0051】
ハウジング10内に収容されているスプリングの圧縮手段50は、弁体30(ガイド部32)とともにスプリング40を挟持して圧縮することにより、当該スプリング40に弁体30への付勢力を発現させるものである。
圧縮手段50の外周面51にはネジ(外ネジ)が形成されており、これをハウジング10の内周面11に形成されているネジ(内ネジ)と螺合させることにより、当該圧縮手段50を、スプリング40の圧縮・伸張方向に移動させることができ、これにより、スプリング40の圧縮量、延いてはスプリング40による付勢力を適宜調整することができる。52は、圧縮手段50に設けられた加圧流体の流路である。
【0052】
図1に示したリリーフ弁において、管路内の圧力(1次側の圧力)が設定圧力に達すると、弁座20から弁体30(Oリング31)が離間して開弁する。これにより、管路内の加圧流体は、弁座20からハウジング10内に浸入し、ガイド部32に形成された流路33、スプリング40の内部空間、圧縮手段50に形成された流路52を通って、低圧側(2次側)に解放される。
【0053】
本発明の製造方法によって得られるリリーフ弁の作動圧力(開弁するときの圧力)は、100KPa以下とされ、好ましくは50KPa以下、更に好ましくは40KPa以下とされる。
作動圧力が100KPa以下である低圧用のリリーフ弁は、スプリングによる付勢力が小さいために、弁体(Oリング)と弁座との間の粘着の影響を受けやすい。
従って、本発明により達成される弁体(Oリング)と弁座との間の低い粘着性は、このような低圧用のリリーフ弁において重要な意義を有する。
【0054】
本発明のリリーフ弁の製造方法は、本発明の組成物をOリングに塗布する工程と、当該組成物による塗膜を加熱することにより当該Oリングを表面処理する工程と、表面処理された当該Oリングを弁体の構成部品として装着する工程とを含む。
すなわち、本発明のリリーフ弁の製造方法は、本発明の表面処理方法により処理されたOリングを弁体の構成部品として装着する点に特徴を有する。
【0055】
本発明の組成物を塗布する方法としては、当該組成物中にOリングを浸漬する浸漬法、刷毛やローラなどの塗布手段を使用する方法など特に制限されるものではない。
なお、組成物の塗布後、Oリングの表面に形成された塗膜から溶剤を除去するために乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥条件としては、組成物を構成する溶剤の種類および含有割合などによっても異なるが、例えば室温で1分間〜24時間とされ、好ましくは3分間〜1時間とされる。
塗膜の加熱方法としては、オーブンによる加熱、熱プレスによる加熱など、特に制限されるものではない。加熱条件としては、例えば50〜150℃で5分間〜24時間とされ、好ましくは80〜120℃で5〜120分間とされる。
【0056】
Oリングの表面に塗布された塗膜(本発明の組成物による塗膜)を加熱することにより、(i)テトラアルコキシシランと、テトラアルコキシチタンと、シランカップリング剤との反応(加水分解・縮合による架橋構造の形成反応)が進行すると共に、(ii)シランカップリング剤の有する反応性有機官能基と、Oリングを構成するゴムのポリマー主鎖との反応が進行する。
これにより、(i)架橋構造(表面処理層を構成するSiO2 −TiO2 系の被膜)とシランカップリング剤との間、および、(ii)シランカップリング剤とゴムのポリマー主鎖との間に化学的な結合が形成され、この結果、Oリングを構成するゴムに対する密着性(被膜としての耐久性・強靱性)に優れた表面処理層(被覆層/改質層)が形成される。
【0057】
本発明の製造方法により得られるリリーフ弁は、これを構成するOリングの粘着性が極めて低いものであるため、閉弁状態で長時間にわたり放置した後においても、放置後の作動圧力が、設定圧力(放置前の作動圧力)から大きく変化することはない。
しかも、本発明の製造方法により得られるリリーフ弁によれば、閉弁状態での長時間の放置を含む弁の開閉操作を多数回にわたり繰り返しても、Oリングに形成されている表面処理層が剥離するようなことはなく、表面処理層による性能(非粘着性または低粘着性)を長期にわたり安定的に発現させることができ、その作動圧力が、設定圧力から大きく変化することはない。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0059】
〔作製例A(ゴム板の作製)〕
ニトリルゴム「JSR N240S」(ジェイエスアール(株)製)100質量部と、老化防止剤「ノクラックCD」1.5質量部と、ステアリン酸「アデカ脂肪酸SA−300」1.5質量部と、酸化亜鉛5質量部と、カーボンブラック「サーマックスMT」70質量部と、炭酸カルシウム「白艶華CC」(白石工業(株)製)10質量部と、フタル酸ジオクチル(DOP)30質量部と、硫黄0.3質量部と、加硫促進剤「ノクセラーTT」(大内新興化学(株)製)1.5質量部と、加硫促進剤「ノクセラーCZ−G」(大内新興化学(株)製)1.5質量部とを8インチロールによって混練してニトリルゴム組成物からなる未加硫ゴムを調製した。次いで、この未加硫ゴムを熱プレスを用いて加熱処理(150℃×20分間)することにより、ニトリルゴム(加硫ゴム)からなる厚さ2.0mmのゴム板(基材)を作製した。
【0060】
<実施例1A>
(1)表面処理組成物の調製:
下記表1に示す処方に従って、テトラエトキシシラン(TEOS)0.40gと、テトラエトキシチタン〔Ti(OEt)4 〕0.004gと、式:Si(OCH3 3 −(CH2 3 −SHで示されるシランカップリング剤「A−189」〔日本ユニカー(株)製〕0.01gと、塩酸(0.1N)0.05gとを、アセトン7.91gに添加し、この系を室温下に1時間攪拌することにより、本発明の組成物(TEOS濃度=約4.8質量%,テトラエトキシチタン濃度=約0.05質量%,シランカップリング剤濃度=約0.12質量%)を調製した。
【0061】
(2)ゴム板の表面処理:
上記(1)により得られた本発明の組成物(1時間の攪拌操作の終了直後における組成物)中に、作製例Aで得られたゴム板を室温下に3分間浸漬することにより、当該ゴム板の全表面に組成物を塗布した。次いで、当該ゴム板を室温下に10分間放置して塗膜を乾燥させた後、100℃のオーブン内で60分間加熱処理することにより、本発明の組成物による表面処理層(SiO2 −TiO2 系の被膜からなる表面処理層)が形成されたゴム板が形成されたゴム板を得た。
【0062】
<実施例2A>
下記表1に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.012gに変更したこと以外は実施例1A(1)と同様にして本発明の組成物(テトラエトキシチタン濃度=約0.14質量%)を調製し、このようにして得られた組成物を使用したこと以外は実施例1A(2)と同様にして、本発明の組成物による表面処理層が形成されたゴム板を得た。
【0063】
<実施例3A>
下記表1に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.024gに変更したこと以外は実施例1A(1)と同様にして本発明の組成物(テトラエトキシチタン濃度=約0.29質量%)を調製し、このようにして得られた組成物を使用したこと以外は実施例1A(2)と同様にして、本発明の組成物による表面処理層が形成されたゴム板を得た。
【0064】
<実施例4A>
下記表1に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.032gに変更したこと以外は実施例1A(1)と同様にして本発明の組成物(テトラエトキシチタン濃度=約0.38質量%)を調製し、このようにして得られた組成物を使用したこと以外は実施例1A(2)と同様にして、本発明の組成物による表面処理層が形成されたゴム板を得た。
【0065】
<実施例5A>
下記表1に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.040gに変更したこと以外は実施例1A(1)と同様にして本発明の組成物(テトラエトキシチタン濃度=約0.48質量%)を調製し、このようにして得られた組成物を使用したこと以外は実施例1A(2)と同様にして、本発明の組成物による表面処理層が形成されたゴム板を得た。
【0066】
<実施例6A>
下記表1に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.024gに変更し、シランカップリング剤の使用量を0.02gに変更したこと以外は実施例1A(1)と同様にして本発明の組成物(TEOS濃度=約4.8質量%,テトラエトキシチタン濃度=約0.29質量%,シランカップリング剤濃度=約0.24質量%)を調製し、このようにして得られた組成物を使用したこと以外は実施例1A(2)と同様にして、本発明の組成物による表面処理層が形成されたゴム板を得た。
【0067】
<比較例1A>
作製例Aで得られたゴム板(基材)を100℃のオーブン内で60分間加熱処理することにより、表面処理層が形成されていない比較用のゴム板を得た。
【0068】
<比較例2A>
下記表1に示す処方に従って、テトラエトキシチタンを使用しなかったこと以外は実施例1A(1)と同様にして比較用の組成物を調製し、このようにして得られた組成物を使用したこと以外は実施例1A(2)と同様にして、比較用の組成物による表面処理層が形成されたゴム板を得た。
【0069】
<比較例3A>
下記表1に示す処方に従って、シランカップリング剤を使用しなかったこと以外は実施例1A(1)と同様にして比較用の組成物を調製し、このようにして得られた組成物を使用したこと以外は実施例1A(2)と同様にして、比較用の組成物による表面処理層が形成されたゴム板を得た。
【0070】
<参考例1>
下記表1に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.080gに変更したこと以外は実施例1A(1)と同様にして本発明の組成物(テトラエトキシチタン濃度=約0.95質量%)を調製した。得られた組成物には、縮合反応の進行によると思われる白濁が認められたため、実施例1A(2)と同様の表面処理は行わなかった。このようにテトラエトキシチタン濃度の高い場合には、厳密な温・湿度の管理下に、組成物を調製および使用することが必要と思われる。
【0071】
<非粘着性の評価>
上記の実施例1A〜実施例6Aおよび比較例1A〜比較例3Aにより得られたゴム板の各々について、タッキング試験機「TAC−II」((株)レスカ製)を用いて、金属(ステンレス)に対する粘着力を測定することにより、表面の非粘着性を評価した。結果を併せて表1に示す。
ここに、測定条件は、下記のとおりである。
【0072】
〔測定条件〕
(1)プローブ素材:SUS304
(2)プローブ形状:直径5.1mmの円柱形状
(3)進入速度:5mm/min
(4)加圧力:100gf
(5)加圧時間:3秒間
(6)離間(引き離し)速度:600mm/min
(7)測定温度:室温
【0073】
また、上記の実施例1A〜実施例6Aで得られたゴム板の各々について、下記表1に示す各溶剤との接触処理(ソックスレー抽出,抽出時間=12時間)を行った後に、上記と同様にして粘着力を再度測定することにより、溶剤接触後における表面の非粘着性を評価した。結果を併せて表1に示す。
【0074】

【表1】

【0075】
表1に示す結果から、本発明の組成物により表面処理されたゴム板は、良好な非粘着性を有していることが理解される。
そして、本発明の組成物による優れた非粘着性は、種々の溶剤との接触処理(ソックスレー抽出,抽出時間=12時間)を行うことによっても失われることはなかった。
更に、本発明の組成物により表面処理されたゴム板は、表面潤滑性にも優れていることが認められた。
【0076】
〔作製例B(Oリングの作製)〕
作製例Aと同様にして、ニトリルゴム組成物(未加硫ゴム)を調製し、この未加硫ゴムを熱プレスを用いて加熱処理(150℃×20分間)することにより、Oリング(線径=1.42mm、内径=1.53mm、外径=4.37mm)を作製した。
【0077】
<実施例1B>
(1)表面処理組成物の調製:
下記表2に示す処方に従って、テトラエトキシシラン(TEOS)0.40gと、テトラエトキシチタン0.004gと、シランカップリング剤「A−189」〔日本ユニカー(株)製〕0.01gと、塩酸(0.1N)0.05gとを、アセトン7.91gに添加し、この系を室温下に1時間攪拌することにより、本発明の組成物(TEOS濃度=約4.8質量%,テトラエトキシチタン濃度=約0.05質量%,シランカップリング剤濃度=約0.12質量%)を調製した。
【0078】
(2)Oリングの表面処理:
上記(1)により得られた本発明の組成物(1時間の攪拌操作の終了直後における組成物)中に、作製例Bにより得られたOリングを室温下に3分間浸漬することにより、当該Oリングの表面に本発明の組成物を塗布した。次いで、当該Oリングを室温下に10分間放置して塗膜を乾燥させた後、100℃のオーブン内で60分間加熱処理することにより、本発明の組成物により表面処理されたOリング(SiO2 −TiO2 系の被膜からなる表面処理層が形成されたOリング)を製造した。
【0079】
(3)リリーフ弁の製造:
上記(2)により表面処理されたOリングをガイド部に装着して弁体とし、この弁体と、スプリングと、スプリングの圧縮手段とをハウジングに収容して、図1に示したような構造を有する低圧用のリリーフ弁を製造した。
このリリーフ弁において、弁体の受圧面積(A)≒0.07cm2 、スプリングのばね定数≒0.16N/mm、スプリングによる付勢力(F)=0.14〜0.70N、作動圧力=20〜100KPaである。
【0080】
<実施例2B>
下記表2に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.012gに変更したこと以外は実施例1B(1)と同様にして本発明の組成物(テトラエトキシチタン濃度=約0.14質量%)を調製し、得られた組成物を使用したこと以外は実施例1B(2)と同様にして、本発明の組成物により表面処理されたOリングを製造し、得られたOリングをガイド部に装着して弁体としたこと以外は実施例1B(3)と同様にして低圧用のリリーフ弁を製造した。
【0081】
<実施例3B>
下記表2に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.024gに変更したこと以外は実施例1B(1)と同様にして本発明の組成物(テトラエトキシチタン濃度=約0.29質量%)を調製し、得られた組成物を使用したこと以外は実施例1B(2)と同様にして、本発明の組成物により表面処理されたOリングを製造し、得られたOリングをガイド部に装着して弁体としたこと以外は実施例1B(3)と同様にして低圧用のリリーフ弁を製造した。
【0082】
<実施例4B>
下記表2に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.032gに変更したこと以外は実施例1B(1)と同様にして本発明の組成物(テトラエトキシチタン濃度=約0.38質量%)を調製し、得られた組成物を使用したこと以外は実施例1B(2)と同様にして、本発明の組成物により表面処理されたOリングを製造し、得られたOリングをガイド部に装着して弁体としたこと以外は実施例1B(3)と同様にして低圧用のリリーフ弁を製造した。
【0083】
<実施例5B>
下記表2に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.040gに変更したこと以外は実施例1B(1)と同様にして本発明の組成物(テトラエトキシチタン濃度=約0.48質量%)を調製し、得られた組成物を使用したこと以外は実施例1B(2)と同様にして、本発明の組成物により表面処理されたOリングを製造し、得られたOリングをガイド部に装着して弁体としたこと以外は実施例1B(3)と同様にして低圧用のリリーフ弁を製造した。
【0084】
<実施例6B>
下記表2に示す処方に従って、テトラエトキシチタンの使用量を0.024gに変更し、シランカップリング剤の使用量を0.02gに変更したこと以外は実施例1B(1)と同様にして本発明の組成物(TEOS濃度=約4.8質量%,テトラエトキシチタン濃度=約0.29質量%,シランカップリング剤濃度=約0.24質量%)を調製し、得られた組成物を使用したこと以外は実施例1B(2)と同様にして、本発明の組成物により表面処理されたOリングを製造し、得られたOリングをガイド部に装着して弁体としたこと以外は実施例1B(3)と同様にして低圧用のリリーフ弁を製造した。
【0085】
<比較例1B>
作製例Bで得られたOリングをガイド部に装着して弁体としたこと以外は実施例1B(3)と同様にして低圧用のリリーフ弁を製造した。
【0086】
<比較例2B>
下記表2に示す処方に従って、テトラエトキシチタンを使用しなかったこと以外は実施例1B(1)と同様にして比較用の組成物を調製し、得られた組成物を使用したこと以外は実施例1B(2)と同様にして、比較用の組成物により表面処理されたOリングを製造し、得られたOリングをガイド部に装着して弁体としたこと以外は実施例1B(3)と同様にして低圧用のリリーフ弁を製造した。
【0087】
<比較例3B>
下記表2に示す処方に従って、シランカップリング剤を使用しなかったこと以外は実施例1B(1)と同様にして比較用の組成物を調製し、得られた組成物を使用したこと以外は実施例1B(2)と同様にして、比較用の組成物により表面処理されたOリングを製造し、得られたOリングをガイド部に装着して弁体としたこと以外は実施例1B(3)と同様にして低圧用のリリーフ弁を製造した。
【0088】
<リリーフ弁の評価実験(1)>
実施例1B〜実施例6Bおよび比較例1B〜比較例3Bで得られたリリーフ弁の各々について、閉弁状態で一定時間放置することによる作動圧力の上昇率を測定した。具体的には、空気圧の調整手段(減圧弁)を備えた管路にリリーフ弁を装着し、その作動圧力を30〜35KPaの範囲に設定した後、管路内の空気圧を0KPaとすることにより当該リリーフ弁を閉弁状態で1時間にわたり放置し、その後、管路内の空気圧を上昇させて作動圧力を再度測定し、放置前の作動圧力(設定圧力)に対する、放置後の作動圧力の比率(上昇率)を求めた。結果を併せて下記表2に示す。なお、リリーフ弁の作動圧力の設定は、圧縮手段でスプリングの圧縮量を調整することにより行った。
【0089】
<リリーフ弁の評価実験(2)>
実施例1B〜実施例6Bおよび比較例1B〜比較例3Bで得られたリリーフ弁の各々について、空気圧の調整手段(減圧弁)を備えた管路にリリーフ弁を装着し、その作動圧力を30〜35KPaの範囲に設定した後、閉弁状態(1時間)と開弁状態(10秒間)を1サイクルとして、300サイクルの開閉操作を繰り返した後、作動圧力を再度測定し、放置前の作動圧力(設定圧力)に対する、開閉操作繰り返し後の作動圧力の比率(上昇率)を求めた。結果を併せて下記表2に示す。
【0090】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の表面処理組成物およびゴムの表面処理方法は、非粘着性などが要求されるゴム製品、例えば金属などの異種部材と接離(接触/離間)するゴム製品に対して好適に使用することができる。かかるゴム製品としては、バルブ、パッキン、シール材などを例示することができる。
【0092】
本発明の製造方法により得られるリリーフ弁は、種々の分野において、空気圧力回路に装着される圧力調製弁(リリーフ弁)として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の製造方法により得られるリリーフ弁の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0094】
10 ハウジング
20 弁座
30 弁体
31 Oリング
32 ガイド部
33 加圧流体の流路
40 スプリング
50 圧縮手段
51 外周面
52 加圧流体の流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムの表面を処理するための組成物であって、
式(1):Si(OR1 4 (式中、R1 は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。)で示されるテトラアルコキシシランと、
式(2):Ti(OR2 4 (式中、R2 は、炭素数2〜4のアルキル基を表す。)で示されるテトラアルコキシチタンと、
式(3):Si(OR3 m 4 3-m −(CH2 n −R5 (式中、R3 はアルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、R4 はアルキル基を表し、mは1〜3の整数であり、nは0〜5の整数である。また、R5 は、ゴムのポリマー主鎖との反応性を有する有機官能基を表す。)で示されるシランカップリング剤と、
これらを溶解する溶剤とを含有する表面処理組成物。
【請求項2】
前記テトラアルコキシシランが、テトラメトキシシランまたはテトラエトキシシランであり、前記テトラアルコキシチタンが、テトラエトキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタンおよびテトラ−n−ブトキシチタンから選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項3】
酸を含有する請求項1または請求項2に記載の表面処理組成物。
【請求項4】
テトラエトキシシランと、テトラエトキシチタンと、シランカップリング剤と、酸と、有機溶剤とを含有する請求項1に記載の表面処理組成物。
【請求項5】
テトラエトキシシランの含有量に対して1〜10質量%のテトラエトキシチタンを含有する請求項4に記載の表面処理組成物。
【請求項6】
テトラエトキシシランの含有量に対して3〜10質量%のテトラエトキシチタンを含有する請求項4に記載の表面処理組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の表面処理組成物をゴムの表面に塗布する工程と、当該表面処理組成物による塗膜を加熱する工程とを含むゴムの表面処理方法。
【請求項8】
ニトリルゴムの表面を処理する請求項7に記載のゴムの表面処理方法。
【請求項9】
弁座に対して接離するOリングを備えた弁体を有し、100KPa以下の圧力において作動する低圧用のリリーフ弁を製造する方法であって、
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の表面処理組成物をOリングに塗布する工程と、当該表面処理組成物による塗膜を加熱することにより当該Oリングを表面処理する工程と、表面処理された当該Oリングを弁体の構成部品として装着する工程とを含むリリーフ弁の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−152010(P2006−152010A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339902(P2004−339902)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】