説明

表面処理装置における薄板状被処理物の水平搬送装置、及びこの水平搬送装置のクランプ

【課題】 薄板状被処理物を水平状態で確実且つスムーズに処理液が満たされた処理槽内に搬入し、搬出できるようにする。
【解決手段】 エンドレスに回転するクランプ4で両側縁部をクランプされて水平搬送される薄板状被処理物物Pを処理液が満たされた処理槽5内に搬入し、処理液中を通過させ、この処理槽から搬出させる装置を提供する。この処理槽5の搬入側と搬出側の被処理物通過切欠部10に噴出液で処理槽内処理液の流出を防ぐ液噴出仕切り装置12を配設した。また、異なる横幅の薄板状被処理物に対処するため、薄板状被処理物Pの一方の側縁部をクランプするクランプ4が横幅方向に移動可能な構成した装置では、幅広のクランプ通過切欠部20をシール舌片26が取付けられたクランプ通過枠体22と仕切りプレート28,29による仕切り構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板などの薄板状被処理物を水平状態で一方向に搬送させ、この水平搬送過程で被処理物に表面処理を施す装置の水平搬送装置、及びこの水平搬送装置に用いるクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板などの板状被処理物を水平状態で一方向に搬送させ、この搬送過程で板状被処理物の表面に電解処理を施す処理装置としては、特許文献1の板状物体の電解処理装置が公知である。この電解処理装置は、板状物体が水平状態で電解室に供給され、一定滞留時間該電解室を連続的に通過し、電解処理後に電解室から再び搬出される、板状物体上に金属を電着する装置であり、板状物体を電解室を通して運搬するための搬送装置が、搬送域中で板状物体の側縁を挟持して搬送方向に移動する、エンドレスに回転して駆動される個々のクランプの列として構成されている。
【0003】
すなわち、特許文献1の装置は、電解室中(すなわち電解処理槽内)においてのみ板状物体をクランプ搬送するものであり、板状物体を水平状態で電解室に供給する搬入手段や、板状物体を水平状態で電解室から搬出するための搬出手段を別に必要とするものである。しかし、特許文献1の装置では、この搬入手段や搬出手段を開示してない。
【0004】
回路基板などの板状物体を水平状態で表面処理槽内に搬入する手段、処理槽内から搬出する手段としては、図6にその概略を示した、ローラ搬送によるものが知られている。図6において、L1はローラ搬送、L2はクランプ搬送、L3はローラ搬送の区間を示し、Tは処理液Fが入れられた処理槽を示している。図6に示すように、水平状態の板状被処理物Pを搬入・搬出する処理槽Tの搬入口Ta・搬出口Tbには、対応する処理槽T内側にローラコンベアとしても機能するシールローラSを配設し、槽内処理液の流出を防いでいる。
【0005】
しかし、図6の装置では、ローラ搬送では被処理物の基板面に傷を付ける弊害がある。また、水平状態の基板をローラ搬送手段からクランプ搬送手段へ確実に受け渡すのは技術的に難しく、特にエンドレスに回転されるクランプで基板の両側縁を挟持して基板を水平に搬送するクランプ搬送手段へと確実に受け渡すのは技術的に難しいものである。
【0006】
また、本出願人は、異なる横幅サイズの板状被処理物の両側縁部をエンドレスに回転するクランプ(挟持チャック)で的確に挟持して水平状態で連続的に搬送しながら表面処理できる装置を提案してある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−76898号公報(特公平6−31476号公報)
【特許文献2】特開2011−38160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような実情に鑑み、本発明は、エンドレスに回転するクランプで薄板状被処理物の両側縁部をクランプして一方向へ連続的に水平搬送させ、この水平搬送過程でクランプにクランプされて水平搬送される薄板状被処理物物を処理液が満たされた処理槽内に搬入し、この処理槽内の処理液中を通過させ、この処理槽から搬出させる装置を提供するものであり、クランプで両側縁部をクランプされた薄板状被処理物を水平状態で確実且つスムーズに処理液が満たされた処理槽内に搬入し、搬出するのに好適な処理槽の仕切り構造(槽シール構造)をもつ表面処理装置の水平搬送装置、及びこれに適した構造のクランプを提供しようとするものである。
【0009】
また、本発明は、異なる横幅サイズの板状被処理物の両側縁部をエンドレスに回転するクランプでクランプして水平状態で連続的に搬送しながら表面処理する装置においても、クランプで両側縁部をクランプされた薄板状被処理物を水平状態で確実且つスムーズに処理液が満たされた処理槽内に搬入し、搬出するのに好適な処理槽の仕切り構造(槽シール構造)をもつ表面処理装置の水平搬送装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するため、本発明(請求項1の発明)は、薄板状被処理物の搬送通路を間にした両側に搬送装置をそれぞれ設け、各搬送装置には前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部をもつエンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段をそれぞれ備え、この水平搬送駆動手段に等間隔を置いて多数のクランプを取付けてあり、前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部を移動するクランプ群でフレキシブルな薄板状被処理物の両側縁部を上下方向からクランプして該薄板状被処理物の板面を上下にした一定の水平高さレベルで一方向に連続的に水平搬送させ、この水平搬送過程で前記クランプに保持されて水平搬送される薄板状被処理物を処理液が満たされた処理槽内に搬入し、この処理槽内の処理液中を通過させ、この処理槽から搬出するようにした水平搬送装置であり、前記処理槽の搬入側と搬出側の槽仕切り板部に前記クランプにクランプされて水平搬送される前記薄板状被処理物の搬送通過を許容する被処理物通過切欠部を形成すると共に、この薄板状被処理物をクランプしている前記クランプの移動通過を許容する上方を開放したクランプ通過切欠部を形成し、前記被処理物通過切欠部に対応する前記処理槽の搬入側と搬出側の処理槽内側に液噴出仕切り装置をそれぞれ配設し、この液噴出仕切り装置は前記被処理物通過切欠部を間にした上下位置に水平搬送される前記薄板状被処理物の通過を許容する間隔を開けて噴出液上部供給管に連通された仕切り部形状の上部液噴流供給ボックスと噴出液下部供給管に連通された仕切り部形状の下部液噴流供給ボックスを設け、上下の液噴流供給ボックスの対向側に水平搬送される前記薄板状被処理物の横幅方向に延びるスリット状開口の液噴出口をそれぞれ形成し、前記噴出液上部供給管から前記上部液噴流供給ボックス内に供給された噴出液を該上部液噴流供給ボックスの前記液噴出口から前記処理槽内の処理液中に向けて斜め下方向に噴出させると共に、前記噴出液下部供給管から前記下部液噴流供給ボックス内に供給された噴出液を該下部液噴流供給ボックスの前記液噴出口から前記処理槽内の処理液中に向けて斜め上方向に噴出させ、上下の液噴流供給ボックスから吐出される噴出液によって前記被処理物通過切欠部から処理槽内処理液の流出を防ぐように構成し、前記クランプ通過切欠部の対応位置にクランプが通過移動する上方位置とこのクランプでクランプされた前記薄板状被処理物の側端部が通過搬送される下部内側位置を開放したクランプ通過枠体をそれぞれ配設し、このクランプ通過枠体に該クランプ通過枠体のクランプ移動通過部を開閉可能に閉塞する多数の可撓性を有するシール舌片を取付け、このシール舌片は、常態において処理槽内から液流出を防ぐように閉じられ、クランプの通過時には該クランプの移動押圧力で開けられる構成とした、表面処理装置における薄板状被処理物の水平搬送装置を提供する。
【0011】
本発明(請求項1の発明)によれば、エンドレスに回転するクランプで薄板状被処理物の両側縁部をクランプして一方向へ連続的に水平搬送させ、この水平搬送過程でクランプにクランプされて水平搬送される薄板状被処理物物を処理液が満たされた処理槽内に搬入し、この処理槽内の処理液中を通過させ、この処理槽から搬出させる装置であるため、図6に示した従来装置のようなローラ搬送とクランプ搬送による製品受け渡しを必用とせず、クランプで両側縁部をクランプされた薄板状被処理物を水平状態で確実且つスムーズに処理液が満たされた処理槽内に搬入し、搬出できる。また、図6に示した従来装置のようなローラ搬送を必用としないため、ローラによって被処理物の基板面が傷つけられる恐れもない。
【0012】
また、本発明(請求項1の発明)の前記液噴出仕切り装置は液流によるシール構造であるため、図6に示した従来装置のシールローラによるシール構造に比べ被処理物の基板面を傷めない。しかも、本発明(請求項1の発明)の前記液噴出仕切り装置は、上部液噴流供給ボックスの液噴出口から処理槽内の処理液中に向けて斜め下方向に噴出させると共に、下部液噴流供給ボックスの液噴出口から処理槽内の処理液中に向けて斜め上方向に噴出させ、上下の液噴流供給ボックスから吐出される噴出液によって前記被処理物通過切欠部から処理槽内処理液の流出を防ぐように構成したものであるため、特に処理槽の搬入側においては薄板状被処理物の水平搬入移動を効果的にガイドする働きがある。
【0013】
また、上記した課題を解決するため、本発明(請求項2の発明)は、薄板状被処理物の搬送通路を間にした両側に搬送装置をそれぞれ設け、各搬送装置には前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部をもつエンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段をそれぞれ備え、この水平搬送駆動手段に等間隔を置いて多数のクランプを取付けてあり、前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部を移動するクランプ群でフレキシブルな薄板状被処理物の両側縁部を上下方向からクランプして該薄板状被処理物の板面を上下にした一定の水平高さレベルで一方向に連続的に水平搬送させ、この水平搬送過程で前記クランプに保持されて水平搬送される薄板状被処理物を処理液が満たされた処理槽内に搬入し、この処理槽内の処理液中を通過させ、この処理槽から搬出するようにした水平搬送装置であり、前記各搬送装置のうち少なくとも一方の搬送装置が搬送通路を間にした他方の搬送装置に対して搬送通路の横幅を可変できる横幅方向に移動可能な構成とし、前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部を移動するクランプ群の横幅間隔を調節可能にした装置において、前記処理槽の搬入側と搬出側の槽仕切り板部に前記クランプにクランプされて水平搬送される前記薄板状被処理物の搬送通過を許容する被処理物通過切欠部を形成すると共に、この薄板状被処理物をクランプしている前記クランプの移動通過を許容する上方を開放したクランプ通過切欠部を形成し、前記被処理物通過切欠部に対応する前記処理槽の搬入側と搬出側の処理槽内側に液噴出仕切り装置をそれぞれ配設し、この液噴出仕切り装置は前記被処理物通過切欠部を間にした上下位置に水平搬送される前記薄板状被処理物の通過を許容する間隔を開けて噴出液上部供給管に連通された仕切り部形状の上部液噴流供給ボックスと噴出液下部供給管に連通された仕切り部形状の下部液噴流供給ボックスを設け、上下の液噴流供給ボックスの対向側に水平搬送される前記薄板状被処理物の横幅方向に延びるスリット状開口の液噴出口をそれぞれ形成し、前記噴出液上部供給管から前記上部液噴流供給ボックス内に供給された噴出液を該上部液噴流供給ボックスの前記液噴出口から前記処理槽内の処理液中に向けて斜め下方向に噴出させると共に、前記噴出液下部供給管から前記下部液噴流供給ボックス内に供給された噴出液を該下部液噴流供給ボックスの前記液噴出口から前記処理槽内の処理液中に向けて斜め上方向に噴出させ、上下の液噴流供給ボックスから吐出される噴出液によって前記被処理物通過切欠部から処理槽内処理液の流出を防ぐように構成し、前記クランプ通過切欠部の対応位置にクランプが通過移動する上方位置とこのクランプでクランプされた前記薄板状被処理物の側端部が通過搬送される下部内側位置を開放したクランプ通過枠体をそれぞれ配設し、このクランプ通過枠体に該クランプ通過枠体のクランプ移動通過部を開閉可能に閉塞する多数の可撓性を有するシール舌片を取付け、このシール舌片は、常態において処理槽内から液流出を防ぐように閉じられ、クランプの通過時には該クランプの移動押圧力で開けられる構成とし、横幅方向に移動可能な構成とした前記搬送装置における内側の直線駆動経路部を移動するクランプ群に対応する前記クランプ通過切欠部が該クランプの横幅移動を許容する広さの横幅に切欠き形成され、この幅広のクランプ通過切欠部に配設される前記クランプ通過枠体の左右両側に該クランプ通過枠体ではカバーできない幅広の前記クランプ通過切欠部の隙間を択一的に塞ぐ仕切りプレートをそれぞれ取付け、この仕切りプレートは、水平搬送される前記薄板状被処理物の対応する側端部の通過を許容する隙間部を開けた状態で前記クランプ通過枠体に取付け、この隙間部の外側端部は前記クランプ通過枠体の下部内側位置の前記開放部と連続する構成とし、前記クランプ通過枠体とこのクランプ通過枠体に取り付けた前記仕切りプレートは横幅方向に移動可能な搬送装置の横幅方向移動と連動して横幅方向に移動するように構成した、表面処理装置における薄板状被処理物の水平搬送装置を提供する。
【0014】
本発明(請求項2の発明)によれば、前記した発明(請求項1の発明)の効果に加え、異なる横幅サイズの板状被処理物の両側縁部をエンドレスに回転するクランプでクランプして水平状態で連続的に搬送しながら表面処理する装置においても、有効に適用できる。
【0015】
また、本発明(請求項3の発明)は、前記シール舌片を前記クランプの移動通過方向に多段状に多数配設したシール構造であり、液流出を防ぐシール効果を高めている。
【0016】
また、上記した課題を解決するため、本発明(請求項4の発明)は、薄板状被処理物の搬送通路を間にした両側に設けられたエンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段に取付けられて回転駆動され、前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部を移動するクランプ群でフレキシブルな薄板状被処理物の両側縁部を上下方向からクランプして該薄板状被処理物の板面を上下にした一定の水平高さレベルで一方向に連続的に水平搬送させ、この水平搬送過程で前記クランプに保持されて水平搬送される薄板状被処理物を処理液が満たされた処理槽内に搬入し、この処理槽内の処理液中を通過させ、この処理槽から搬出するようにした水平搬送装置のクランプであり、前記クランプは、前記水平搬送駆動手段に連結され且つこの水平搬送駆動手段の直線駆動経路部の下方位置に水平方向に配置した固定ガイドレールに沿って滑り接触しながら移動されるように外嵌されるクランプ取付け体と、このクランプ取付け体に保持されるクランプ本体を含み、このクランプ本体は、このクランプ本体の下方部分が前記処理槽の処理液中を移動可能な位置に配され、前記クランプ本体の上方部分が空中で前記クランプ取付け体に保持される上下方向に長い形状に形成され、このクランプ本体の下端部には薄板状被処理物の側縁部を上下方向からクランプし得る上クランプ部と下クランプ部を備え、前記クランプ本体は、前記クランプ取付け体にその上方部が固定保持される上下方向に長い固定クランプ杆と、この固定クランプ杆に上下動自在に保持される上下方向に長い可動クランプ杆を含み、この可動クランプ杆の下端部に前記上クランプ部を形成し、前記固定クランプ杆の下端部に前記上クランプ部を受ける前記下クランプ部を形成し、前記可動クランプ杆を圧縮バネのバネ圧によって下動させ、この可動クランプ杆の前記上クランプ部と前記固定クランプ杆の下クランプ部を常態において上下方向に閉じた閉状態に制御してあり、前記クランプ本体の上部には、前記可動クランプ杆を前記圧縮バネのバネ圧に抗して上移動させ上下クランプ部を上下方向に開くクランプ開閉ガイド係合部材を付設してあり、前記固定クランプ杆の下方杆部(この下方杆部以下は処理液中を移動する)を対応する前記可動クランプ杆の下方杆部(この下方杆部以下は処理液中を移動する)に対してクランプ移動方向において互いに前後位置となる同列方向に配設し、この固定クランプ杆の同列部分の下端に前記搬送通路側を開口する略断面コ字状の屈曲部を形成し、この屈曲部の折曲げ下端片上に前記可動クランプ杆の前記上クランプ部を受ける前記下クランプ部を形成した、表面処理装置における薄板状被処理物の水平搬送装置のクランプを提供する。
【0017】
本発明(請求項4の発明)のクランプは、前記固定クランプ杆の下方杆部を対応する前記可動クランプ杆の下方杆部に対してクランプ移動方向において互いに前後位置となる同列方向に配設してあるため、処理槽内の処理液中を進行移動するクランプ部分の液抵抗を減少でき、且つ処理槽の搬入側と搬出側の仕切り部のクランプの通過部(前記クランプ通過切欠部、前記クランプ通過枠体)の横幅を狭く形成でき、このクランプ通過部から処理槽内の処理液の流出を防ぎやすくできる。
【0018】
また、本発明(請求項5の発明)は、前記可動クランプ杆の下端部に上押さえガイド板、前記固定クランプ杆の下端部に下押さえガイド板をそれぞれ取付け、この上下押さえガイド板は前記上下クランプ部と協働して前記薄板状被処理物物の側縁部を上下方向から挟持し得るものとし、この上下押さえガイド板はクランプ移動方向に延ばした形状とした、クランプを提供する。
【0019】
本発明(請求項5の発明)のクランプによれば、上下押さえガイド板で薄板状被処理物物の側縁部をクランプ移動方向に沿って比較的長い範囲においてクランプできる。したがって、薄板状被処理物物の側縁部を確実にクランプできると共に、エンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段(駆動ベルト)に取付けられるクランプの取付け間隔を長くでき、結果としてクランプの取付け個数を少なくできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、クランプで両側縁部をクランプされた薄板状被処理物を水平状態で確実且つスムーズに処理液が満たされた処理槽内に搬入し、そして搬出できる。よって、クランプ搬送とローラ搬送によるリレー搬送をする必要がないため、薄板状被処理物を正確且つスムーズに水平搬送できると共に、ローラ搬送に起因する弊害(被処理物の基板面への擦り傷や圧痕の発生や、ローラへの被処理物の巻き込み)を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の概略平面図である。
【図2】本発明の要部の概略平面図である。
【図3】本発明の要部の概略側面図である。
【図4】本発明の要部を拡大して示した概略正面図である。
【図5】本発明のクランプを示し、(A)は側面図、(B)は正面図、(C)は(B)のA-A矢視線による横断平面図である。
【図6】従来装置の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は装置全体を概略的に示し、図2〜図4は同装置の要部の実施形態を示し、図5は本発明の搬送装置に用いるクランプの好ましい実施形態を示している。
【0023】
図1は、薄板状被処理物(プリント配線基板など)Pの搬送通路1を間にした両側に搬送装置2a,2bをそれぞれ設け、各搬送装置2a,2bには前記搬送通路1を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部3a,3aをもつエンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段3,3をそれぞれ備え、この水平搬送駆動手段3に等間隔を置いて多数のクランプ4・・・を取付けてあり、前記搬送通路1を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部3a,3aを移動するクランプ群4・・・でフレキシブルな薄板状被処理物Pの両側縁部を上下方向からクランプして該薄板状被処理物Pの板面を上下にした一定の水平高さレベルで一方向(矢印A方向)に連続的に水平搬送させ、この水平搬送過程で前記クランプ4に保持されて水平搬送される薄板状被処理物Pを処理液Fが満たされた処理槽5(この実施例ではメッキ処理槽としてある)内に搬入し、この処理槽5内の処理液F中を水平に通過させ、この処理槽5から水平に搬出するようにした表面処理装置における薄板状被処理物の水平搬送装置を示している。
【0024】
図示した実施例では、前記各搬送装置2a,2bのうち少なくとも一方の搬送装置(可動側の搬送装置)2bが搬送通路1を間にした他方の搬送装置(固定側の搬送装置)2aに対して搬送通路1の横幅(W)を可変できる横幅方向に移動可能な構成とし、前記搬送通路1を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部3a,3aを移動するクランプ群4・・・の横幅間隔(W)を調節可能な構成としてある。
【0025】
図1において、処理槽5の搬入側と搬出側には、被処理物通過部に対応する液噴出仕切り装置12と、クランプ通過部に対応する位置にシール舌片26を取付けたクランプ通過枠体22をそれぞれ配設してある。これらの構成については、図2〜図4において後で詳しく説明する。
【0026】
フレキシブルな薄板状被処理物Pとしては平行な両側縁をもつことが条件であるが、図示した矩形(プリント配線基板など)の板状物の他、平行な両側縁をもつ長尺帯状の物であっても良い。この表面処理槽では板状被処理物にメッキ処理や薬品処理の表面処理が施される。本発明は、電気メッキ処理などの電解処理、無電解処理など、フレキシブルな薄板状の被処理物の表面処理装置の搬送装置として広く適用できる。
【0027】
エンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段3は、ローラ6,6に巻架されてエンドレスに回転駆動される駆動ベルト(歯付ベルト)7であり、搬送駆動用モータ(図示せず。)によって一方のローラ6を回転駆動させている。前記ローラ6には駆動ベルト(歯付ベルト)7に合う歯が設けられている。エンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段3(駆動ベルト7)に等しい間隔を置いて取付けたクランプ群4・・・は、矩形の薄板状被処理物Pの場合は、少なくとも側縁部の複数箇所を掴持できる間隔に取付けてある。なお、図1では、クランプ群4・・・をエンドレスの回転駆動経路における一部の範囲のみで表示したが、水平搬送駆動手段3(駆動ベルト7)の全範囲に亘り等間隔に取付けてある。各水平搬送駆動手段3,3は、同速度で同期回転駆動されるように成っている。
【0028】
前記水平搬送駆動手段3(駆動ベルト7)の内側の直線駆動経路部3a,3aの下方位置には該直線駆動経路部3a,3aに沿って水平方向に延びる断面矩形状の固定ガイドレール8を配置してある(図3〜5参照)。内側の直線駆動経路部3a,3aを移動するクランプ群4・・・のクランプ取付け体40(後述する)は前記固定ガイドレール8に沿って滑り接触しながら水平に移動される。そして、本発明を、電気メッキ処理装置などの電解処理装置として用いる場合、この固定ガイドレール8を、クランプ取付け体40(後述する)に取付けられるクランプ本体42(後述する)を介して搬送される被処理物に陰極の電流を給電する給電レールとして機能させている。
【0029】
前記処理槽5の搬入側の槽仕切り板部5aと搬出側の槽仕切り板部5bに前記クランプ4にクランプされて水平搬送される前記薄板状被処理物Pの搬送通過を許容する被処理物通過切欠部10を形成すると共に、この薄板状被処理物Pをクランプしている前記クランプ4の移動通過を許容する上方を開放したクランプ通過切欠部20を形成してある。
【0030】
前記被処理物通過切欠部10に対応する前記処理槽5の搬入側と搬出側の処理槽内側(前記処理槽5の搬入側の槽仕切り板部5aと搬出側の槽仕切り板部5bの内側)に液噴出仕切り装置12をそれぞれ配設してある。
【0031】
この液噴出仕切り装置12は、図3〜5に示したように、前記被処理物通過切欠部10を間にした上下位置に水平搬送される前記薄板状被処理物Pの通過を許容する間隔を開けてプラスチック製の噴出液上部供給管14に連通された仕切り部形状のプラスチック製の上部液噴流供給ボックス13と、プラスチック製の噴出液下部供給管16に連通された仕切り部形状のプラスチック製の下部液噴流供給ボックス15から成り、上下の液噴流供給ボックス13,15の対向側には水平搬送される前記薄板状被処理物Pの横幅方向に延びるスリット状開口の液噴出口13a,15aをそれぞれ形成してある。
【0032】
図4に示したように、前記噴出液上部供給管14から前記上部液噴流供給ボックス13内に供給された噴出液を該上部液噴流供給ボックス13の前記液噴出口13aから前記処理槽5内の処理液中に向けて斜め下方向に噴出させると共に、前記噴出液下部供給管16から前記下部液噴流供給ボックス15内に供給された噴出液を該下部液噴流供給ボックス15の前記液噴出口15aから前記処理槽5内の処理液中に向けて斜め上方向に噴出させ、上下の液噴流供給ボックス13,15から吐出される噴出液によって前記被処理物通過切欠部10から処理槽内処理液の流出を防ぐように構成してある。
【0033】
前記液噴出仕切り装置12は液流によるシール構造であるため、図6に示した従来装置のシールローラによるシール構造に比べ被処理物Pの基板面を傷めない。しかも、前記液噴出仕切り装置12は、上部液噴流供給ボックス13の液噴出口13aから処理槽5内の処理液F中に向けて斜め下方向に噴出させると共に、下部液噴流供給ボックス15の液噴出口15aから処理槽5内の処理液中に向けて斜め上方向に噴出させ、上下の液噴流供給ボックス13,15から吐出される噴出液によって前記被処理物通過切欠部10から処理槽内処理液の流出を防ぐように構成したものであるため、特に処理槽5の搬入側においては薄板状被処理物Pの水平搬入移動を効果的にガイドする働きがある。
【0034】
図2,3において、図面左側の固定側の搬送装置2aに対して図面右側の搬送装置2bを横幅方向に移動可能な構成とし、搬送通路1を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部3a,3aを移動するクランプ群4・・・の横幅間隔(W)を調節可能な構成としてある。この場合、前記液噴流供給ボックス13,15の横幅は、最小の横幅間隔(W)に合せて設定してある。
【0035】
図2,4に示したように、上下の液噴流供給ボックス13,15にプラスチック製の被処理物水平通過ガイド17a,17bを取付け、この被処理物水平通過ガイドによって上下の液噴流供給ボックス13,15の間を水平に通過する薄板状被処理物Pを液中においてスムーズに水平通過できるようにガイドしている。
【0036】
前記クランプ通過切欠部20の対応位置にクランプ4が通過移動する上方位置とこのクランプ4でクランプされた前記薄板状被処理物Pの側端部が通過搬送される下部内側位置を開放(開放通路22a)したプラスチック製のクランプ通過枠体22をそれぞれ配設し、このクランプ通過枠体22に該クランプ通過枠体のクランプ移動通過部を開閉可能に閉塞する多数の可撓性を有するゴム製のシール舌片26を取付け、このシール舌片26は、常態において処理槽5内から液流出を防ぐように閉じられ、クランプ4の通過時には該クランプ4の移動押圧力で開けられる構成としてある。図3に示したように、このシール舌片26によるシール構造は、前記クランプ通過枠体22の左右の対向枠部に上下方向に間隔をおいてスリット切れ目を入れられた多数のシール舌片を取付けて構成されている。
【0037】
前記クランプ通過枠体22は、図3に示したように、搬送通路側に「l」字形状の内側枠部材23を配し、その外側に「L」字形状の外側枠部材24を配し、両枠部材23,24で上方が開放された上下に長い「コ」字形状に組み合わせ、且つ「l」字形状の内側枠部材23の下端部と「L」字形状の外側枠部材24の対応端部との間を離間し、この離間部をクランプ4でクランプされる前記薄板状被処理物Pの側端部が通過搬送される開放通路22aとしてある。両枠部材23,24をこの組み合わせ状態で固定するべく、両枠部材23,24の上端部を連結部材25で固定状態に連結し、この連結部材25の上方部を対応する各搬送装置(2a,2b)の固定部にそれぞれ吊下げ状態に固定してある。
【0038】
図2に示したように、このシール舌片26によるシール構造は、前記シール舌片26を前記クランプ4の移動通過方向に多段状(図2では三段)に配設し、液流出を防ぐシール効果を高めている。前記クランプ通過枠体22をクランプ移動通過方向に多段状に積層し、多段状に積層したクランプ通過枠体22の間にシール舌片26を取り付けてある。
【0039】
図2,3に示したように、横幅方向に移動可能な構成とした前記搬送装置(可動側の搬送装置)2bにおける内側の直線駆動経路部3aを移動するクランプ群4に対応する前記クランプ通過切欠部20が該クランプ4の横幅移動を許容する広さの横幅に切欠き形成してある。この幅広のクランプ通過切欠部20に配設される前記クランプ通過枠体22の左右両側に該クランプ通過枠体22ではカバーできない幅広の前記クランプ通過切欠部20の隙間を択一的に塞ぐ樹脂性の仕切りプレート(内側仕切りプレート28、外側仕切りプレート29)をそれぞれ取付け、この仕切りプレート(内側仕切りプレート28、外側仕切りプレート29)は、水平搬送される前記薄板状被処理物Pの対応する側端部の通過を許容する隙間部を開けた状態で前記クランプ通過枠体22に取付けられ、この隙間部の外側端部は前記クランプ通過枠体22の下部内側位置の前記開放通路部22aと連続する構成としてある。
【0040】
具体的には、前記クランプ通過枠体22の「l」字形状の内側枠部材23に矩形の内側仕切りプレート28を取付け、前記クランプ通過枠体22の「L」字形状の外側枠部材24に外側仕切りプレート29を取付けてある。この外側仕切りプレート29は、外側枠部材24の外側に配した矩形部分29Aと前記内側仕切りプレート28の下方向に延びる横長延長部分29Bを持っている。前記内側仕切りプレート28の下端部と前記外側仕切りプレート29の横長延長部分29Bの上端部の間には水平な隙間部が形成され、この隙間部を前記薄板状被処理物Pの対応する側端部が水平に通過できるようにしてある。
【0041】
前記したように、クランプ通過枠体22の両枠部材(内側枠部材23と外側枠部材24)の上端部は連結部材25で固定状態に連結され、この連結部材25の上方部を搬送装置の固定部に吊下げ状態に固定してある。前記クランプ通過枠体22とこのクランプ通過枠体に取り付けた前記仕切りプレート(内側仕切りプレート28と外側仕切りプレート29)は横幅方向に移動可能な搬送装置2bの横幅方向移動と連動して横幅方向に移動するように構成してある。前記外側仕切りプレート29の下部は受けガイド30によって横幅方向移動自在にガイドされている。
【0042】
図2,3に実線で示したように、内側の直線駆動経路部3a,3aを移動するクランプ群4・・・の横幅間隔(W)を最大とした場合には、内側仕切りプレート28で幅広のクランプ通過切欠部20の隙間を塞ぎ、図2,3に二点鎖線で示したように、内側の直線駆動経路部3a,3aを移動するクランプ群4・・・の横幅間隔(W)を最小とした場合には、外側仕切りプレート29で幅広のクランプ通過切欠部20の隙間を塞げるようにしてある。
【0043】
図5に基づき、本発明の搬送装置に用いるクランプ4の実施形態を説明する。このクランプ4は、前記水平搬送駆動手段3(駆動ベルト7)に連結され且つこの水平搬送駆動手段3(駆動ベルト7)の直線駆動経路部3aの下方位置に水平方向に配置した断面矩形状の固定ガイドレール8に沿って滑り接触しながら移動されるように外嵌されるステンレス鋼などの金属製のクランプ取付け体40と、このクランプ取付け体40に保持されるステンレス鋼などの金属製のクランプ本体42を含んでいる。クランプ4のクランプ取付け体40を前記水平搬送駆動手段3(駆動ベルト7)に連結する手段として、図5の実施例では、取付け取外しが容易な方法を採用している。駆動ベルト7のクランプ取付け対応位置に取付け突起7aをベルトと一体形成し、この取付け突起7aに上下方向の差し込み穴7bを形成してある。クランプ4側は、前記クランプ取付け体40に取付け金具43を連結し、この取付け金具43に上下方向の軸心をもつ係合軸44を取付けてある。この係合軸44を前記差し込み穴7bに差し込むことによってクランプ4を容易に取付け取外しできるように連結している。なお、取付け部材を介したボルト締結手段で固定状態に連結しても良い。
【0044】
前記クランプ本体42は、このクランプ本体42の下方部分が前記処理槽5の処理液中を移動可能な位置に配され、前記クランプ本体42の上方部分が空中で前記クランプ取付け体40に保持される上下方向に長い形状に形成され、このクランプ本体42の下端部には薄板状被処理物の側縁部を上下方向からクランプし得る上クランプ部46bと下クランプ部46aが備えられている。
【0045】
前記クランプ本体42は、前記クランプ取付け体40にその上方部が固定保持される上下方向に長い板状の固定クランプ杆50と、この固定クランプ杆50に上下動自在に保持される上下方向に長いロッド状の可動クランプ杆51を含んでいる。前記固定クランプ杆50は、その板面が前記クランプ取付け体40の外側(搬送通路側)の垂直面40aに固定保持されている。前記可動クランプ杆51は、前記固定クランプ杆50に設けた保持ガイド52の貫通穴の中を上下方向にスライド自在に貫通され、保持されている。前記可動クランプ杆51の下端部に前記上クランプ部(上接点)46bを形成し、前記固定クランプ杆50の下端部に前記上クランプ部46bを受ける前記下クランプ部(下接点)46aを形成してある。
【0046】
固定クランプ杆50に設けた前記保持ガイド52の下部と可動クランプ杆51に設けたバネ係止体54の間に圧縮バネ(圧縮コイルばね)55が可動クランプ杆51のロッド部周りに遊嵌合して介装され、この圧縮バネ55のバネ圧によって可動クランプ杆51は下動され、可動クランプ杆51の上クランプ部(上接点)46bと固定クランプ杆50の下クランプ部(下接点)46aを常態において上下方向に閉じた状態に制御してある。前記クランプ本体42の上部には、可動クランプ杆51を前記圧縮バネ55のバネ圧に抗して上移動させ上下クランプ部(上接点と下接点)46a,46bを上下方向に開くクランプ開閉ガイド係合部材60を付設してある。
【0047】
図5(A)に一点鎖線で示したクランプ開閉ガイド61が、図1の搬送装置2a,2bに配設してある。図1の搬送装置2a,2bには、前記クランプ群4・・・の回転駆動経路に沿う、始端部側の旋回駆動経路部から回転駆動方向における搬送通路1の始端部の直前位置に至る位置及び搬送通路1の終端部から回転駆動方向における終端部側の旋回駆動経路部へ至る位置にそれぞれクランプ開閉ガイド61を配設してある。このクランプ開閉ガイド61は、クランプ4の回転駆動方向における、中間部を高位ガイド上面部とし、この高位ガイド上面部の両側を該高位ガイド上面部から徐々に低位となる傾斜ガイド上面部としてある。このクランプ開閉ガイド61の下面を水平ガイド下面部としてある。
【0048】
前記クランプ本体42の上部に付設された前記クランプ開閉ガイド係合部材60は、略L字型の反転レバー62の屈曲部を支点部として固定クランプ杆50側に支点軸63によって反転自在に軸着し、この反転レバー62の下方アーム部62bの先端を可動クランプ杆51の上部にピン軸64を介して回動自在に連結し、反転レバー62の上方アーム部62aの先端に回転ローラ65を取付けて構成し、この回転ローラ65が前記回転駆動経路に沿って設けられる前記クランプ開閉ガイド61の高位ガイド上面部に沿って転動する係合状態において、上方アーム部62aが前記支点軸63を軸心として上方向に反転し、下方アーム部62bに連結された可動クランプ杆51を圧縮バネ55のバネ圧に抗して上動させるようにし、可動クランプ杆51の上クランプ部46bと固定クランプ杆50の下クランプ部46aを上下方向に離間させた開状態に制御されるように構成してある。
【0049】
クランプ4が前記クランプ開閉ガイド61の位置を通過する際に、クランプ4のクランプ開閉ガイド係合部材60の回転ローラ65がクランプ開閉ガイド61の上面部(高位ガイド上面部)に係合され、同時にクランプ4の固定側(前記クランプ取付け体40の搬送通路側の板の上端部又は前記固定クランプ杆50の上端部)に形成した水平上面部40aがクランプ開閉ガイド61の水平ガイド下面部に係合されることによって、前記可動クランプ杆51を圧縮バネ55のバネ圧に抗して上動させ、可動クランプ杆51の上クランプ部46bと固定クランプ杆50の下クランプ部46aを上下方向に離間させた開状態に制御するように構成されている。これによって、被処理物Pの搬送通路1の始端部を通過するクランプ4・・・を開状態から被処理物の側縁部をクランプ可能な閉状態に制御し、被処理物Pの搬送通路1の終端部を通過するクランプ4・・・を閉状態から被処理物の側縁部を開放可能な開状態に制御できるようにしている。
【0050】
前記固定クランプ杆50の下方杆部50A(この下方杆部以下は処理液中を移動する)を対応する前記可動クランプ杆51の下方杆部51A(この下方杆部以下は処理液中を移動する)に対してクランプ移動方向において互いに前後位置(図5の実施例では、クランプ移動方向において、前記可動クランプ杆51の下方杆部51Aを前方に、前記固定クランプ杆50の下方杆部50Aを後方に配設してある。)となる同列方向に配設し、この固定クランプ杆50の同列部分の下端に前記搬送通路1側を開口する略断面コ字状の屈曲部70を形成し、この屈曲部70の折曲げ下端片70a上に前記可動クランプ杆51の前記上クランプ部46bを受ける前記下クランプ部46aを形成してある。すなわち、図5(A)のように、クランプ4の進行方向から見て固定クランプ杆50の同列部分は対応する前記可動クランプ杆51のロッド状の下方杆部51Aに隠れた状態になる。
【0051】
図5のクランプは、前記固定クランプ杆50の下方杆部50Aを対応する前記可動クランプ杆51の下方杆部51Aに対してクランプ移動方向において互いに前後位置となる同列方向に配設してあるため、処理槽5内の処理液中を進行移動するクランプ部分の液抵抗を減少でき、且つ処理槽5の搬入側と搬出側の仕切り部のクランプの通過部(前記クランプ通過切欠部20、前記クランプ通過枠体22)の横幅を狭く形成でき、このクランプ通過部から処理槽内の処理液の流出を防ぎやすくできる。
【0052】
処理液中に入れられるクランプ本体42の下方部分は、上下クランプ部(上接点と下接点)46a,46bを除いてゾルコーティング処理を施し、絶縁被覆処理を施してある。
【0053】
前記可動クランプ杆51の下端部にプラスチック製の上押さえガイド板72b、前記固定クランプ杆50の下端部にプラスチック製の下押さえガイド板72aをそれぞれ取付け、この上下押さえガイド板72a,72bは前記上下クランプ部46a,46bと協働して前記薄板状被処理物物Pの側縁部を上下方向から挟持し得るものとし、この上下押さえガイド板72a,72bはクランプ移動方向に延ばした形状としてある。
【0054】
この上下押さえガイド板72a,72bを取り付けたクランプによれば、薄板状被処理物物Pの側縁部をクランプ移動方向に沿って比較的長い範囲においてクランプできる。したがって、薄板状被処理物物Pの側縁部を確実にクランプできると共に、エンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段3(駆動ベルト7)に取付けられるクランプ4の取付け間隔を長くでき、結果としてクランプ4の取付け個数を少なくできる。
【符号の説明】
【0055】
P 薄板状被処理物
1 搬送通路
2a,2b 搬送装置
2a 固定側の搬送装置
2b 可動側の搬送装置
3,3 水平搬送駆動手段
3a,3a 内側の直線駆動経路部
4 クランプ
5 処理槽
5a 搬入側の槽仕切り板部
5b 搬出側の槽仕切り板部
F 処理液
W 横幅間隔
7 駆動ベルト(歯付ベルト)
8 固定ガイドレール
10 被処理物通過切欠部
12 液噴出仕切り装置
13 上部液噴流供給ボックス
13a 上部液噴流供給ボックスの液噴出口
15 下部液噴流供給ボックス
15a 下部液噴流供給ボックスの液噴出口
17a,17b 被処理物水平通過ガイド
20 クランプ通過切欠部
22 クランプ通過枠体
22a 開放通路部
23 内側枠部材
24 外側枠部材
25 連結部材
26 シール舌片
28 内側仕切りプレート
29 外側仕切りプレート
29A 外側仕切りプレートの矩形部分
29B 外側仕切りプレートの横長延長部分
40 クランプ取付け体
42 クランプ本体
46a 下クランプ部(下接点)
46b 上クランプ部(上接点)
50 固定クランプ杆
50A 固定クランプ杆の下方杆部
51 可動クランプ杆
51A 可動クランプ杆の下方杆部
55 圧縮バネ
60 クランプ開閉ガイド係合部材
61 クランプ開閉ガイド
70 屈曲部
72a 下押さえガイド板
72b 上押さえガイド板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状被処理物の搬送通路を間にした両側に搬送装置をそれぞれ設け、各搬送装置には前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部をもつエンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段をそれぞれ備え、この水平搬送駆動手段に等間隔を置いて多数のクランプを取付けてあり、前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部を移動するクランプ群でフレキシブルな薄板状被処理物の両側縁部を上下方向からクランプして該薄板状被処理物の板面を上下にした一定の水平高さレベルで一方向に連続的に水平搬送させ、この水平搬送過程で前記クランプに保持されて水平搬送される薄板状被処理物を処理液が満たされた処理槽内に搬入し、この処理槽内の処理液中を通過させ、この処理槽から搬出するようにした水平搬送装置であり、
前記処理槽の搬入側と搬出側の槽仕切り板部に前記クランプにクランプされて水平搬送される前記薄板状被処理物の搬送通過を許容する被処理物通過切欠部を形成すると共に、この薄板状被処理物をクランプしている前記クランプの移動通過を許容する上方を開放したクランプ通過切欠部を形成し、前記被処理物通過切欠部に対応する前記処理槽の搬入側と搬出側の処理槽内側に液噴出仕切り装置をそれぞれ配設し、この液噴出仕切り装置は前記被処理物通過切欠部を間にした上下位置に水平搬送される前記薄板状被処理物の通過を許容する間隔を開けて噴出液上部供給管に連通された仕切り部形状の上部液噴流供給ボックスと噴出液下部供給管に連通された仕切り部形状の下部液噴流供給ボックスを設け、上下の液噴流供給ボックスの対向側に水平搬送される前記薄板状被処理物の横幅方向に延びるスリット状開口の液噴出口をそれぞれ形成し、前記噴出液上部供給管から前記上部液噴流供給ボックス内に供給された噴出液を該上部液噴流供給ボックスの前記液噴出口から前記処理槽内の処理液中に向けて斜め下方向に噴出させると共に、前記噴出液下部供給管から前記下部液噴流供給ボックス内に供給された噴出液を該下部液噴流供給ボックスの前記液噴出口から前記処理槽内の処理液中に向けて斜め上方向に噴出させ、上下の液噴流供給ボックスから吐出される噴出液によって前記被処理物通過切欠部から処理槽内処理液の流出を防ぐように構成し、前記クランプ通過切欠部の対応位置にクランプが通過移動する上方位置とこのクランプでクランプされた前記薄板状被処理物の側端部が通過搬送される下部内側位置を開放したクランプ通過枠体をそれぞれ配設し、このクランプ通過枠体に該クランプ通過枠体のクランプ移動通過部を開閉可能に閉塞する多数の可撓性を有するシール舌片を取付け、このシール舌片は、常態において処理槽内から液流出を防ぐように閉じられ、クランプの通過時には該クランプの移動押圧力で開けられる構成とした、表面処理装置における薄板状被処理物の水平搬送装置。
【請求項2】
薄板状被処理物の搬送通路を間にした両側に搬送装置をそれぞれ設け、各搬送装置には前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部をもつエンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段をそれぞれ備え、この水平搬送駆動手段に等間隔を置いて多数のクランプを取付けてあり、前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部を移動するクランプ群でフレキシブルな薄板状被処理物の両側縁部を上下方向からクランプして該薄板状被処理物の板面を上下にした一定の水平高さレベルで一方向に連続的に水平搬送させ、この水平搬送過程で前記クランプに保持されて水平搬送される薄板状被処理物を処理液が満たされた処理槽内に搬入し、この処理槽内の処理液中を通過させ、この処理槽から搬出するようにした水平搬送装置であり、前記各搬送装置のうち少なくとも一方の搬送装置が搬送通路を間にした他方の搬送装置に対して搬送通路の横幅を可変できる横幅方向に移動可能な構成とし、前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部を移動するクランプ群の横幅間隔を調節可能にした装置において、
前記処理槽の搬入側と搬出側の槽仕切り板部に前記クランプにクランプされて水平搬送される前記薄板状被処理物の搬送通過を許容する被処理物通過切欠部を形成すると共に、この薄板状被処理物をクランプしている前記クランプの移動通過を許容する上方を開放したクランプ通過切欠部を形成し、前記被処理物通過切欠部に対応する前記処理槽の搬入側と搬出側の処理槽内側に液噴出仕切り装置をそれぞれ配設し、この液噴出仕切り装置は前記被処理物通過切欠部を間にした上下位置に水平搬送される前記薄板状被処理物の通過を許容する間隔を開けて噴出液上部供給管に連通された仕切り部形状の上部液噴流供給ボックスと噴出液下部供給管に連通された仕切り部形状の下部液噴流供給ボックスを設け、上下の液噴流供給ボックスの対向側に水平搬送される前記薄板状被処理物の横幅方向に延びるスリット状開口の液噴出口をそれぞれ形成し、前記噴出液上部供給管から前記上部液噴流供給ボックス内に供給された噴出液を該上部液噴流供給ボックスの前記液噴出口から前記処理槽内の処理液中に向けて斜め下方向に噴出させると共に、前記噴出液下部供給管から前記下部液噴流供給ボックス内に供給された噴出液を該下部液噴流供給ボックスの前記液噴出口から前記処理槽内の処理液中に向けて斜め上方向に噴出させ、上下の液噴流供給ボックスから吐出される噴出液によって前記被処理物通過切欠部から処理槽内処理液の流出を防ぐように構成し、前記クランプ通過切欠部の対応位置にクランプが通過移動する上方位置とこのクランプでクランプされた前記薄板状被処理物の側端部が通過搬送される下部内側位置を開放したクランプ通過枠体をそれぞれ配設し、このクランプ通過枠体に該クランプ通過枠体のクランプ移動通過部を開閉可能に閉塞する多数の可撓性を有するシール舌片を取付け、このシール舌片は、常態において処理槽内から液流出を防ぐように閉じられ、クランプの通過時には該クランプの移動押圧力で開けられる構成とし、
横幅方向に移動可能な構成とした前記搬送装置における内側の直線駆動経路部を移動するクランプ群に対応する前記クランプ通過切欠部が該クランプの横幅移動を許容する広さの横幅に切欠き形成され、この幅広のクランプ通過切欠部に配設される前記クランプ通過枠体の左右両側に該クランプ通過枠体ではカバーできない幅広の前記クランプ通過切欠部の隙間を塞ぐ仕切りプレートをそれぞれ取付け、この仕切りプレートは、水平搬送される前記薄板状被処理物の対応する側端部の通過を許容する隙間部を開けた状態で前記クランプ通過枠体に取付け、この隙間部の外側端部は前記クランプ通過枠体の下部内側位置の前記開放部と連続する構成とし、前記クランプ通過枠体とこのクランプ通過枠体に取り付けた前記仕切りプレートは横幅方向に移動可能な搬送装置の横幅方向移動と連動して横幅方向に移動するように構成した、表面処理装置における薄板状被処理物の水平搬送装置。
【請求項3】
前記シール舌片を前記クランプの移動通過方向に多段状に多数配設した、請求項1又は2に記載の表面処理装置における薄板状被処理物の水平搬送装置。
【請求項4】
薄板状被処理物の搬送通路を間にした両側に設けられたエンドレスに回転駆動される水平搬送駆動手段に取付けられて回転駆動され、前記搬送通路を間にして互いに平行な内側の直線駆動経路部を移動するクランプ群でフレキシブルな薄板状被処理物の両側縁部を上下方向からクランプして該薄板状被処理物の板面を上下にした一定の水平高さレベルで一方向に連続的に水平搬送させ、この水平搬送過程で前記クランプに保持されて水平搬送される薄板状被処理物を処理液が満たされた処理槽内に搬入し、この処理槽内の処理液中を通過させ、この処理槽から搬出するようにした水平搬送装置のクランプであり、前記クランプは、前記水平搬送駆動手段に連結され且つこの水平搬送駆動手段の直線駆動経路部の下方位置に水平方向に配置した固定ガイドレールに沿って滑り接触しながら移動されるように外嵌されるクランプ取付け体と、このクランプ取付け体に保持されるクランプ本体を含み、このクランプ本体は、このクランプ本体の下方部分が前記処理槽の処理液中を移動可能な位置に配され、前記クランプ本体の上方部分が空中で前記クランプ取付け体に保持される上下方向に長い形状に形成され、このクランプ本体の下端部には薄板状被処理物の側縁部を上下方向からクランプし得る上クランプ部と下クランプ部を備え、前記クランプ本体は、前記クランプ取付け体にその上方部が固定保持される上下方向に長い固定クランプ杆と、この固定クランプ杆に上下動自在に保持される上下方向に長い可動クランプ杆を含み、この可動クランプ杆の下端部に前記上クランプ部を形成し、前記固定クランプ杆の下端部に前記上クランプ部を受ける前記下クランプ部を形成し、前記可動クランプ杆を圧縮バネのバネ圧によって下動させ、この可動クランプ杆の前記上クランプ部と前記固定クランプ杆の下クランプ部を常態において上下方向に閉じた閉状態に制御してあり、前記クランプ本体の上部には、前記可動クランプ杆を前記圧縮バネのバネ圧に抗して上移動させ上下クランプ部を上下方向に開くクランプ開閉ガイド係合部材を付設してあり、前記固定クランプ杆の下方杆部を対応する前記可動クランプ杆の下方杆部に対してクランプ移動方向において互いに前後位置となる同列方向に配設し、この固定クランプ杆の同列部分の下端に前記搬送通路側を開口する略断面コ字状の屈曲部を形成し、この屈曲部の折曲げ下端片上に前記可動クランプ杆の前記上クランプ部を受ける前記下クランプ部を形成した、表面処理装置における薄板状被処理物の水平搬送装置のクランプ。
【請求項5】
前記可動クランプ杆の下端部に上押さえガイド板、前記固定クランプ杆の下端部に下押さえガイド板をそれぞれ取付け、この上下押さえガイド板は前記上下クランプ部と協働して前記薄板状被処理物物の側縁部を上下方向から挟持し得るものとし、この上下押さえガイド板はクランプ移動方向に延ばした形状とした、請求項4に記載の表面処理装置における薄板状被処理物の水平搬送装置のクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−1945(P2013−1945A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133306(P2011−133306)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(592141466)丸仲工業株式会社 (15)