説明

表面処理装置

【課題】被処理体のシワの発生を抑制することができる表面処理装置を提供する。
【解決手段】金属層と絶縁フィルムとが少なくとも積層されてなるフレキシブル積層体の絶縁フィルムなどの表面を放電プラズマ処理するための装置であって、絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するためのプラズマ処理室と、プラズマ処理室の上流側に設置された搬送ロールと、プラズマ処理室の下流側に設置された搬送ロールと、を備え、プラズマ処理室の下流側に設置された搬送ロールは最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールを含み、樹脂被覆ロールは樹脂層の表面が放電プラズマ処理後のフレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面と接触するように設置されており、樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルムの表面との接触状態下における樹脂層の静電容量が10000F(ファラッド)以下である表面処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面処理装置に関し、特に、被処理体のシワの発生を抑制することができる表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における電子機器の高機能化に伴い、電子機器を構成する電子部品を搭載および接続するプリント配線基板についても高機能化が要請され、プリント配線基板を多層に積層することによる3次元的な高密度化が進んでいる。
【0003】
このようなプリント配線基板としては、ポリイミド樹脂などの樹脂からなる絶縁フィルムに銅箔などの金属層を貼り合わせたフレキシブル積層体の金属層の一部をエッチングして回路を形成したものが主に用いられており、これがプリプレグ(樹脂含浸基材)などによって貼り合わされて多層に積層され、電子機器の回路を構成している(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、ポリイミド樹脂などの樹脂からなる絶縁フィルムは接着性に乏しいことが多い。そこで、絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理することなどによって接着性を向上させる表面処理が行なわれている(たとえば、特許文献2および特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−148543号公報
【特許文献2】特開2005−5560号公報
【特許文献3】特開2004−327931号公報
【特許文献4】特開2000−72903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に放電プラズマ処理は、処理効率の向上のために被処理体を金属ロールで搬送するラインを形成し、そのラインの中途に設置されたプラズマ処理室において行なわれている(たとえば、特許文献4参照)。
【0006】
しかしながら、上記のフレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面の放電プラズマ処理を行なう場合には、金属ロールによる搬送中にフレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面と金属ロールの表面とが密着して金属ロールによる搬送がスムーズにならないため、フレキシブル積層体が折れてしまい、フレキシブル積層体に折れシワが発生するという問題があった。また、フレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面と金属ロールの表面とが密着することに起因してフレキシブル積層体の搬送に揺らぎが生じ、この揺らぎが放電プラズマ処理後のフレキシブル積層体の巻き取りにまで影響して、フレキシブル積層体の巻き取り時にフレキシブル積層体にシワが発生するという問題があった。また、このような問題は、金属層の形成前の絶縁フィルムの表面の放電プラズマ処理を行なう際にも生じていた。
【0007】
上記の事情に鑑みて、本発明の目的は、被処理体のシワの発生を抑制することができる表面処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、金属層と絶縁フィルムとが少なくとも積層されてなるフレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための装置であって、絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するためのプラズマ処理室と、プラズマ処理室の上流側に設置された搬送ロールと、プラズマ処理室の下流側に設置された搬送ロールと、を備え、プラズマ処理室の下流側に設置された搬送ロールは最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールを含み、樹脂被覆ロールは樹脂層の表面が放電プラズマ処理後のフレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面と接触するように設置されており、樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルムの表面との接触状態下における樹脂層の静電容量が10000F(ファラッド)以下である表面処理装置が提供される。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための装置であって、絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するためのプラズマ処理室と、プラズマ処理室の上流側に設置された搬送ロールと、プラズマ処理室の下流側に設置された搬送ロールと、を備え、プラズマ処理室の下流側に設置された搬送ロールは最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールを含み、樹脂被覆ロールは樹脂層の表面が放電プラズマ処理後の絶縁フィルムの表面と接触するように設置されており、樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルムの表面との接触状態下における樹脂層の静電容量が10000F以下である表面処理装置が提供される。
【0010】
ここで、本発明の第1の態様および第2の態様による表面処理装置においては、樹脂被覆ロールの樹脂層の誘電率が3F/m以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の第1の態様および第2の態様による表面処理装置においては、樹脂被覆ロールの樹脂層の静摩擦係数が0.1以下であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の第1の態様および第2の態様による表面処理装置においては、プラズマ処理室の上流側に設置された搬送ロールは、プラズマ処理室に絶縁フィルムを鉛直方向に搬入するための搬送ロールを含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明の第1の態様および第2の態様による表面処理装置においては、プラズマ処理室の上流側にプラズマ処理室に隣接した予備室を備えていてもよい。
【0014】
また、本発明の第1の態様および第2の態様による表面処理装置においては、プラズマ処理室の下流側にプラズマ処理室に隣接した予備室を備えていてもよい。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、金属層と絶縁フィルムとが少なくとも積層されてなるフレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための装置であって、絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための第1プラズマ処理室と、絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための第2プラズマ処理室と、第1プラズマ処理室の上流側に第1プラズマ処理室に隣接して設置された第1予備室と、第2プラズマ処理室の下流側に第2プラズマ処理室に隣接して設置された第2予備室と、第1プラズマ処理室の下流側かつ第2プラズマ処理室の上流側に設置された第3予備室と、第1プラズマ処理室の上流側に設置された第1搬送ロールと、第2プラズマ処理室の下流側に設置された第2搬送ロールと、第3予備室内に設置された第3搬送ロールと、を備え、第1プラズマ処理室は第2プラズマ処理室の上流側に設置され、第1プラズマ処理室と第2プラズマ処理室とは第3予備室を介して連結されており、第1搬送ロールは第1プラズマ処理室にフレキシブル積層体を鉛直方向に搬入するための搬送ロールを第1予備室内に含み、第2搬送ロールは第2プラズマ処理室からフレキシブル積層体を鉛直方向に搬出するための搬送ロールを第2予備室内に含んでおり、第2搬送ロールおよび第3搬送ロールはそれぞれ、最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールを含み、樹脂被覆ロールは樹脂層の表面が放電プラズマ処理後のフレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面と接触するように設置されており、樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルムの表面との接触状態下における静電容量が10000F以下である表面処理装置が提供される。
【0016】
また、本発明の第4の態様によれば、絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための装置であって、絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための第1プラズマ処理室と、絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための第2プラズマ処理室と、第1プラズマ処理室の上流側に第1プラズマ処理室に隣接して設置された第1予備室と、第2プラズマ処理室の下流側に第2プラズマ処理室に隣接して設置された第2予備室と、第1プラズマ処理室の下流側かつ第2プラズマ処理室の上流側に設置された第3予備室と、第1プラズマ処理室の上流側に設置された第1搬送ロールと、第2プラズマ処理室の下流側に設置された第2搬送ロールと、第3予備室内に設置された第3搬送ロールと、を備え、第1プラズマ処理室は第2プラズマ処理室の上流側に設置され、第1プラズマ処理室と第2プラズマ処理室とは第3予備室を介して連結されており、第1搬送ロールは第1プラズマ処理室に絶縁フィルムを鉛直方向に搬入するための搬送ロールを第1予備室内に含み、第2搬送ロールは第2プラズマ処理室から絶縁フィルムを鉛直方向に搬出するための搬送ロールを第2予備室内に含んでおり、第2搬送ロールおよび第3搬送ロールはそれぞれ、最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールを含み、樹脂被覆ロールは樹脂層の表面が放電プラズマ処理後の絶縁フィルムの表面と接触するように設置されており、樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルムの表面との接触状態下における静電容量が10000F以下である表面処理装置が提供される。
【0017】
また、本発明の第3の態様および第4の態様による表面処理装置においては、樹脂被覆ロールの樹脂層の誘電率が3F/m以下であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の第3の態様および第4の態様による表面処理装置においては、樹脂被覆ロールの樹脂層の静摩擦係数が0.1以下であることが好ましい。
【0019】
また、本発明の第1の態様、第2の態様、第3の態様および第4の態様による表面処理装置においては、絶縁フィルムがポリイミド樹脂フィルムからなっていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、被処理体のシワの発生を抑制することができる表面処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0022】
図1に、本発明の表面処理装置の好ましい一例の模式的な構成図を示す。ここで、本発明の表面処理装置40においては、被処理体となるフレキシブル積層体39の搬送の流れの上流側の端部に未処理のフレキシブル積層体39が巻き付けられた繰り出しロール26が設置されており、フレキシブル積層体39の搬送の流れの下流側の端部に放電プラズマ処理後のフレキシブル積層体39を巻き取るための巻き取りロール27が設置されている。ここで、フレキシブル積層体39は、ポリイミド樹脂フィルムからなる絶縁フィルム39aと絶縁フィルム39a上に貼り付けられた銅箔からなる金属層39bとから構成されている。
【0023】
また、繰り出しロール26と巻き取りロール27との間には、複数の搬送ロールが設置されているとともに、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aを放電プラズマ処理するための第1プラズマ処理室30と第2プラズマ処理室32とが設置されている。ここで、第1プラズマ処理室30は、第2プラズマ処理室32の上流側に位置しており、第1プラズマ処理室30内には紙面の裏側の方向(水平方向)に向かって伸びる丸棒状の一対の電極35、36が紙面の上下方向(鉛直方向)に複数配置されており、第2プラズマ処理室32内には水平方向に向かって伸びる丸棒状の一対の電極37、38が鉛直方向に複数配置されている。
【0024】
また、第1プラズマ処理室30の上流側には第1上予備室29が第1プラズマ処理室30に隣接して設置されており、第1上予備室29の上流側にはさらに入口予備室28が第1上予備室29に隣接して設置されている。また、第2プラズマ処理室32の下流側には第2上予備室33が第2プラズマ処理室32に隣接して設置されており、第2上予備室33の下流側にはさらに出口予備室34が第2上予備室33に隣接して設置されている。また、第1プラズマ処理室30の下流側および第2プラズマ処理室32の上流側には第1プラズマ処理室30および第2プラズマ処理室32のそれぞれに隣接する下予備室31が設置されている。ここで、入口予備室28、第1上予備室29、下予備室31、第2上予備室33および出口予備室34はそれぞれ第1プラズマ処理室30および第2プラズマ処理室32の内部に外部のガスが入り込むのを抑制して、第1プラズマ処理室30および第2プラズマ処理室32における放電プラズマ処理による処理効果を十分に得るために設置されている。
【0025】
このような構成の本発明の表面処理装置40において、フレキシブル積層体39は繰り出しロール26から絶縁フィルム39aを上面側、金属層39bを下面側として繰り出され、搬送ロール1、搬送ロール2、搬送ロール3および搬送ロール4によって順次搬送された後に入口予備室28内に搬入される。
【0026】
そして、入口予備室28内において、フレキシブル積層体39は、搬送ロール6、搬送ロール7および搬送ロール9によって順次搬送された後に第1上予備室29内に搬入する。なお、入口予備室28内にはガスシール用ロール8が設置されており、ガスシール用ロール8の表面は密に起毛している。そして、ガスシール用ロール8と搬送ロール9とは互いに接触してフレキシブル積層体39を挟み込んでガスシールの役割を果たし、第1プラズマ処理室30および第2プラズマ処理室32の内部に外部のガスが入り込むのを抑制している。
【0027】
第1上予備室29内に搬入されたフレキシブル積層体39は、搬送ロール10および搬送ロール11によって順次搬送された後に第1プラズマ処理室30内に搬送される。ここで、第1プラズマ処理室30内には予め放電プラズマ発生用ガスが導入されており、一対の電極35、36間に高周波電圧が印加されることによって放電プラズマが発生している。ここで、第1プラズマ処理室30内に導入される放電プラズマ発生用ガスの種類は特に限定されないが、たとえば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンおよび窒素からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0028】
また、フレキシブル積層体39は、搬送ロール11によって第1プラズマ処理室30内に鉛直下方に搬入される。このようにフレキシブル積層体39が第1プラズマ処理室30内に水平方向ではなく鉛直方向に搬入されることによって、水平方向に搬入されたときに生じ得るフレキシブル積層体39の自重による撓みを防止することができることから、フレキシブル積層体39の撓みに起因する処理ムラなどの問題の発生を抑制することができる。
【0029】
そして、第1プラズマ処理室30内において、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面は第1プラズマ処理室30内に発生している放電プラズマによって放電プラズマ処理される。この放電プラズマ処理により、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面に化学的に活性な官能基を発現させることなどによって、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面の接着性が向上する。
【0030】
第1プラズマ処理室30内における放電プラズマ処理後のフレキシブル積層体39は第1プラズマ処理室30から搬出された後に下予備室31内に搬入され、下予備室31内の搬送ロール12および搬送ロール13によって搬送される。
【0031】
その後、フレキシブル積層体39は下予備室31から搬出されて、第2プラズマ処理室32内に搬入される。ここで、第2プラズマ処理室32内にも予め放電プラズマ発生用ガスが導入されており、一対の電極37、38間に高周波電圧が印加されることによって予め放電プラズマが発生している。ここで、第2プラズマ処理室32内に導入される放電プラズマ発生用ガスの種類は特に限定されないが、たとえば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンおよび窒素からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0032】
また、フレキシブル積層体39は、搬送ロール13によって第2プラズマ処理室32内に鉛直上方に搬入される。ここでも、フレキシブル積層体39が第2プラズマ処理室32内に水平方向ではなく鉛直方向に搬入されることによって、水平方向に搬入されたときに生じ得るフレキシブル積層体39の自重による撓みを防止することができることから、フレキシブル積層体39の撓みに起因する処理ムラなどの問題の発生を抑制することができる。
【0033】
第2プラズマ処理室32内における放電プラズマ処理後のフレキシブル積層体39は第2プラズマ処理室32から搬出された後に第2上予備室33内に搬入され、第2上予備室33内の搬送ロール14および搬送ロール15によって順次搬送される。
【0034】
その後、フレキシブル積層体39は出口予備室34内に搬入され、搬送ロール16および搬送ロール18によって順次搬送される。なお、出口予備室34内にはガスシール用ロール17が設置されており、ガスシール用ロール17の表面は密に起毛している。そして、搬送ロール16とガスシール用ロール17とは互いに接触してフレキシブル積層体39を挟み込んでガスシールの役割を果たし、第1プラズマ処理室30および第2プラズマ処理室32の内部に外部のガスが入り込むのを抑制している。
【0035】
出口予備室34から搬出されたフレキシブル積層体39は、搬送ロール21、搬送ロール22および搬送ロール23によって順次搬送された後、巻き取りロール27によって巻き取られる。
【0036】
ここで、本発明の表面処理装置40においては、第1プラズマ処理室30の下流側に設置された搬送ロールであって、第1プラズマ処理室30内における放電プラズマ処理後のフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面が接触する搬送ロールに最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールが含まれており、この樹脂被覆ロールの最外層の樹脂層の表面とフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面との接触状態下における樹脂被覆ロールの最外層の樹脂層の静電容量が10000F以下、好ましくは7500F以下、さらに好ましくは5000F以下であることを特徴としている。これは、本発明者が鋭意検討した結果、放電プラズマ処理後のフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面が接触する搬送ロールに最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールを用い、樹脂被覆ロールの最外層の樹脂層の表面とフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面との接触状態下における樹脂被覆ロールの最外層の樹脂層の静電容量を10000F以下、好ましくは7500F以下、さらに好ましくは5000F以下とすることによって、樹脂被覆ロールの最外層の樹脂層の表面とフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面との密着性が低減して、被処理体であるフレキシブル積層体39の搬送がスムーズになり、フレキシブル積層体39に発生していた折れシワや巻き取り時のシワの発生を低減できることを見出したことによるものである。
【0037】
すなわち、図2の模式的断面図に示すように、搬送ロールが金属ロール41であって、フレキシブル積層体39中の絶縁フィルム39aがプラズマが照射されることにより分極して、絶縁フィルム39aの金属ロール41と接触する側の表面がたとえば負電荷に帯電している場合には、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面と接触する金属ロール41の表面には正電荷が誘起され、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面と接触する金属ロール41の表面との間のクーロン力によってフレキシブル積層体39と金属ロール41との密着が発生する。
【0038】
一方、図3の模式的断面図に示すように、搬送ロールが金属ロール41の最表面が樹脂層42からなる樹脂被覆ロール43である場合には、フレキシブル積層体39中の絶縁フィルム39aが分極して、絶縁フィルム39aの金属ロール41と接触する側の表面がたとえば負電荷に帯電している場合でも、図2に示す金属ロール41の場合のみと比べて樹脂被覆ロール43の最表面の樹脂層42に帯電する正電荷の量が少なくなると考えられることから、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面と樹脂被覆ロール43の樹脂層42の表面との間のクーロン力が低減し、フレキシブル積層体39と樹脂被覆ロール43との密着性が低下すると考えられる。そして、本発明者が鋭意検討した結果、樹脂被覆ロール43の最外層の樹脂層42の表面とフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面との接触状態下における樹脂被覆ロール43の最外層の樹脂層42の静電容量を10000F以下、好ましくは7500F以下、さらに好ましくは5000F以下としてフレキシブル積層体39を搬送したときにフレキシブル積層体39のよりスムーズな搬送が可能になることが見出され、本発明を完成するに至った。
【0039】
なお、本発明において、樹脂被覆ロールの最外層の樹脂層の表面とフレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面との接触状態下における樹脂被覆ロールの樹脂層の静電容量Cは、以下の式(1)で表わされる。
【0040】
C=ε・S/d …(1)
式(1)において、εは樹脂被覆ロールの樹脂層の誘電率(F/m)を示し、Sは樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルムの表面との接触面積(m2)を示し、dは樹脂被覆ロールの樹脂層の厚み(m)を示している。
【0041】
ここで、図4の模式的断面図に、式(1)における樹脂被覆ロール43の樹脂層42の表面とフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面との接触面積Sおよび樹脂被覆ロール43の樹脂層42の厚みdとをそれぞれ示す。ここで、接触面積Sは、樹脂被覆ロール43の樹脂層42の表面とフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面との接触領域Rの面積のことである。
【0042】
また、樹脂被覆ロールの樹脂層の誘電率は3F/m以下であることが好ましい。この場合にも、たとえば図3に示すように、樹脂被覆ロール43の最表面の樹脂層42に帯電する正電荷の量が少なくなる傾向にあり、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面と樹脂被覆ロール43の樹脂層42の表面との間のクーロン力が低減し、フレキシブル積層体39と樹脂被覆ロール43との密着性が低下してフレキシブル積層体39のよりスムーズな搬送が可能になるものと考えられる。
【0043】
また、樹脂被覆ロールの樹脂層の静摩擦係数は0.1以下であることが好ましい。この場合には、樹脂被覆ロールとフレキシブル積層体との離型性が優れるため、フレキシブル積層体39のよりスムーズな搬送が可能になるものと考えられる。ここで、本発明における静摩擦係数xは、樹脂被覆ロールの樹脂層と同一の材質からなる樹脂シート上に、樹脂被覆ロールの樹脂層の一部である樹脂片(質量M(N))を置き、バネばかりなどにより樹脂片を引っ張り、樹脂片が動き出すときの引っ張り荷重をP(N)としたとき、以下の式(2)で表わされる。
【0044】
x=P/N …(2)
また、本発明における樹脂被覆ロールの樹脂層を構成する樹脂としては、たとえばPFA(四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂)、FEP(四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂)、ETFE(四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂)、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)、CTFE(三フッ化塩化エチレン樹脂)、PVDF(フッ化ビニリデン樹脂)またはPP(ポリプロピレン樹脂)などを用いることができる。
【0045】
図1に示す構成の表面処理装置40において、本発明における上記の樹脂被覆ロールが適用される搬送ロールとしては、第1プラズマ処理室30内において放電プラズマ処理された後のフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面と接触する搬送ロール12、搬送ロール13、搬送ロール18および搬送ロール22からなる群から選択された少なくとも1つが挙げられる。なお、その他の搬送ロールについては特に限定されず、金属ロールを用いてもよく、上記の樹脂被覆ロールを用いてもよい。
【0046】
なお、上記においては、フレキシブル積層体として、ポリイミド樹脂フィルムからなる絶縁フィルムと絶縁フィルム上の金属層とからなる2層構造のものについて説明したが、少なくとも金属層と絶縁フィルムとを含み、絶縁フィルムの表面が露出しているものであれば、金属層および絶縁フィルムのそれぞれの材質、厚さおよび層構造などの構成については特に限定されない。ここで、金属層としては、たとえば銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、亜鉛またはこれらのいずれかを主成分とする合金などからなる層などを用いることができ、金属層の厚さはたとえば1μm以上100μm以下の厚さにすることができる。また、絶縁フィルムとしては、たとえばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂またはこれらの少なくとも2種の混合樹脂などからなるフィルムなどを用いることができ、絶縁フィルムの厚さはたとえば1μm以上100μm以下の厚さにすることができる。
【0047】
また、本発明の表面処理装置においては、フレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するものであれば、その他の箇所(たとえば金属層など)が放電プラズマ処理されてもよいことは言うまでもない。
【0048】
また、上記においては、本発明の表面処理装置を用いて、フレキシブル積層体の絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理する場合について説明したが、本発明においては、フレキシブル積層体の作製において金属層と積層する前の絶縁フィルムなどの絶縁フィルムを被処理体としてその表面を放電プラズマ処理することもできる。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
図1に示す表面処理装置40において、搬送ロール12、搬送ロール13、搬送ロール18および搬送ロール22のそれぞれに、厚さ110μm、誘電率2.1F/mおよび最表面の静摩擦係数0.05のPFA樹脂を最表面に樹脂層としてコーティングしたステンレスロールを樹脂被覆ロールとして用いた。ここで、樹脂被覆ロールの外径は118mmであって、コーティングされたPFA樹脂の幅は1080mmであった。
【0050】
また、第1プラズマ処理室30内および第2プラズマ処理室32内のそれぞれにアルゴン、ヘリウムおよび窒素の混合ガス(アルゴン:ヘリウム:窒素=5:5:0.3(体積比))を放電プラズマ発生用ガスとして予め60分間導入しておき、ポリイミド樹脂フィルムからなる絶縁フィルム39aと銅箔からなる金属層39bとの積層体からなる銅箔付ポリイミド(CCL)をフレキシブル積層体39として絶縁フィルム39aが上面となるように繰り出しロール26に巻き付け、その一端を巻き取りロール27に固定した。
【0051】
ここで、それぞれの樹脂被覆ロールはフレキシブル積層体39と樹脂被覆ロールの外周360°のうち150°の範囲で接触していたため、接触面積Sは1.08×0.118×π×(150/360)≒0.167m2であり、それぞれの樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルム39aの表面との接触状態下における静電容量Cは上記の式(1)より2.1×0.167/(110×10-6)≒3188Fであった。
【0052】
そして、第1プラズマ処理室30内および第2プラズマ処理室32内にそれぞれ出力2kWの放電プラズマを発生させた後、60Nのテンションをかけてフレキシブル積層体39を繰り出し、フレキシブル積層体39を4m/minの搬送速度で搬送して、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面の放電プラズマ処理を行なった。
【0053】
その後、出口予備室34から搬出されてきたフレキシブル積層体39を観察したところフレキシブル積層体39に折れシワが発生していないことが確認された。また、フレキシブル積層体39はシワ無く巻き取りロール27に巻き取ることができることも確認された。
【0054】
(実施例2)
PFA樹脂の代わりに、厚さ50μm、誘電率2.1F/mおよび最表面の静摩擦係数0.02のPTFE樹脂を最表面に樹脂層としてコーティングしたステンレスロールを樹脂被覆ロールとして用いたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でCCLからなるフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面の放電プラズマ処理を行なった。
【0055】
ここで、それぞれの樹脂被覆ロールはフレキシブル積層体39と樹脂被覆ロールの外周360°のうち150°の範囲で接触していたため、接触面積Sは1.08×0.118×π×(150/360)≒0.167m2であり、それぞれの樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルム39aの表面との接触状態下における静電容量Cは上記の式(1)より2.1×0.167/(50×10-6)≒7014Fであった。
【0056】
そして、出口予備室34から搬出されてきたフレキシブル積層体39を観察したところフレキシブル積層体39に折れシワが発生していないことが確認された。また、フレキシブル積層体39はシワ無く巻き取りロール27に巻き取ることができることも確認された。
【0057】
(実施例3)
PFA樹脂の代わりに、厚さ100μm、誘電率2.6F/mおよび最表面の静摩擦係数0.05のETFE樹脂を最表面に樹脂層としてコーティングしたステンレスロールを樹脂被覆ロールとして用いたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でCCLからなるフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面の放電プラズマ処理を行なった。
【0058】
ここで、それぞれの樹脂被覆ロールはフレキシブル積層体39と樹脂被覆ロールの外周360°のうち150°の範囲で接触していたため、接触面積Sは1.08×0.118×π×(150/360)≒0.167m2であり、それぞれの樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルム39aの表面との接触状態下における静電容量Cは上記の式(1)より2.6×0.167/(100×10-6)≒4342Fであった。
【0059】
そして、出口予備室34から搬出されてきたフレキシブル積層体39を観察したところフレキシブル積層体39に折れシワが発生していないことが確認された。また、フレキシブル積層体39はシワ無く巻き取りロール27に巻き取ることができることも確認された。
【0060】
(実施例4)
厚さ43.5μm、誘電率2.6F/mおよび最表面の静摩擦係数0.05のETFE樹脂を最表面に樹脂層としてコーティングしたステンレスロールを樹脂被覆ロールとして用いたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でCCLからなるフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面の放電プラズマ処理を行なった。
【0061】
ここで、それぞれの樹脂被覆ロールとフレキシブル積層体39とは樹脂被覆ロールの外周360°のうち150°の範囲で接触していたため、接触面積Sは1.08×0.118×π×(150/360)≒0.167m2であり、それぞれの樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルム39aの表面との接触状態下における静電容量Cは上記の式(1)より2.6×0.167/(43.5×10-6)=9982Fであった。
【0062】
そして、出口予備室34から搬出されてきたフレキシブル積層体39を観察したところフレキシブル積層体39に折れシワが発生していないことが確認された。また、フレキシブル積層体39はシワ無く巻き取りロール27に巻き取ることができることも確認された。
【0063】
(実施例5)
図1に示す表面処理装置40を用いて、幅1200mmであって、厚さ12.5μmのポリイミド樹脂フィルムからなる絶縁フィルムの表面の放電プラズマ処理を行なった。
【0064】
図1に示す搬送ロール12、搬送ロール13、搬送ロール18および搬送ロール22のそれぞれに、厚さ100μm、誘電率2.3F/mおよび最表面の静摩擦係数0.05のPFA樹脂を最表面に樹脂層としてコーティングしたステンレスロールを樹脂被覆ロールとして用いた。ここで、樹脂被覆ロールの外径は118mmであって、コーティングされたPFA樹脂の幅は1080mmであった。
【0065】
また、第1プラズマ処理室30内および第2プラズマ処理室32内のそれぞれにアルゴン、ヘリウムおよび窒素の混合ガス(アルゴン:ヘリウム:窒素=5:5:0.3(体積比))を放電プラズマ発生用ガスとして予め60分間導入しておき、上記の絶縁フィルムを繰り出しロール26に巻き付け、その一端を巻き取りロール27に固定した。
【0066】
ここで、それぞれの樹脂被覆ロールは絶縁フィルムと樹脂被覆ロールの外周360°のうち150°の範囲で接触していたため、接触面積Sは1.08×0.118×π×(150/360)≒0.167m2であり、それぞれの樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルムの表面との接触状態下における静電容量Cは上記の式(1)より2.3×0.167/(100×10-6)≒3841Fであった。
【0067】
そして、第1プラズマ処理室30内および第2プラズマ処理室32内にそれぞれ出力2kWの放電プラズマを発生させた後、60Nのテンションをかけて絶縁フィルムを繰り出し、絶縁フィルムを4m/minの搬送速度で搬送して、絶縁フィルムの表面の放電プラズマ処理を行なった。
【0068】
その後、出口予備室34から搬出されてきた絶縁フィルムを観察したところ絶縁フィルムに折れシワが発生していないことが確認された。また、絶縁フィルムはシワ無く巻き取りロール27に巻き取ることができることも確認された。
【0069】
(比較例1)
図1に示す表面処理装置40において、搬送ロール12、搬送ロール13、搬送ロール18および搬送ロール22のそれぞれに、PFA樹脂をコーティングしないステンレスロールを用いたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でCCLからなるフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面の放電プラズマ処理を行なった。
【0070】
ここで、それぞれのステンレスロールはフレキシブル積層体39とステンレスロールの外周360°のうち150°の範囲で接触していたため、接触面積Sは1.08×0.118×π×(150/360)≒0.167m2であるが、ステンレスロールの誘電率は∞であるため、それぞれのステンレスロールの表面と絶縁フィルム39aの表面との接触状態下における静電容量Cは上記の式(1)より∞であった。
【0071】
そして、出口予備室34から搬出されてきたフレキシブル積層体39を観察したところフレキシブル積層体39に折れシワが多数発生しており、プリント配線基板として使用することができないような状態となっていることが確認された。
【0072】
(比較例2)
PFA樹脂の代わりに、厚さ100μm、誘電率7.7F/mおよび最表面の静摩擦係数0.4のPVDF樹脂を最表面に樹脂層としてコーティングしたステンレスロールを樹脂被覆ロールとして用いたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でCCLからなるフレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aの表面の放電プラズマ処理を行なった。
【0073】
ここで、それぞれの樹脂被覆ロールはフレキシブル積層体39と樹脂被覆ロールの外周360°のうち150°の範囲で接触していたため、接触面積Sは1.08×0.118×π×(150/360)≒0.167m2であり、それぞれの樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルム39aの表面との接触状態下における静電容量Cは上記の式(1)より7.7×0.167/(100×10-6)≒12859Fであった。
【0074】
そして、出口予備室34から搬出されてきたフレキシブル積層体39を観察したところフレキシブル積層体39に折れシワが多数発生しており、プリント配線基板として使用することができないような状態となっていることが確認された。
【0075】
(比較例3)
PFA樹脂の代わりに、厚さ100μm、誘電率7.7F/mおよび最表面の静摩擦係数0.3のPVDF樹脂を最表面に樹脂層としてコーティングしたステンレスロールを樹脂被覆ロールとして用いたこと以外は実施例1と同一の方法および同一の条件でポリイミド樹脂フィルムからなる絶縁フィルムの表面の放電プラズマ処理を行なった。
【0076】
ここで、それぞれの樹脂被覆ロールは絶縁フィルムとは樹脂被覆ロールの外周360°のうち150°の範囲で接触していたため、接触面積Sは1.08×0.118×π×(150/360)≒0.167m2であり、それぞれの樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルムの表面との接触状態下における静電容量Cは上記の式(1)より7.7×0.167/(100×10-6)≒12859Fであった。
【0077】
そして、出口予備室34から搬出されてきた絶縁フィルムを観察したところフレキシブル積層体39に折れシワが多数発生していた。
【0078】
上記の結果から、樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルムの表面との接触状態下における静電容量が10000F以下である実施例1〜5の放電プラズマ処理を行なった場合には、フレキシブル積層体および絶縁フィルムのシワの発生がないことが確認された。
【0079】
なお、上記の実施例1〜4においては、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aを上側、金属層39bを下側として、絶縁フィルム39aの表面の放電プラズマ処理を行なったが、フレキシブル積層体39の絶縁フィルム39aを下側とし、金属層39bを上側として、第1プラズマ処理室30の下流側において絶縁フィルム39aと接触する搬送ロールを樹脂被覆ロールとした構成で絶縁フィルム39aの表面の放電プラズマ処理を行なっても実施例1〜4と同様の結果が得られると考えられる。
【0080】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、被処理体のシワの発生を抑制することができる表面処理装置を提供することができるので、本発明はCCLなどのフレキシブル積層体の絶縁フイルムの表面およびフレキシブル積層体の形成に使用される絶縁フイルムの表面の放電プラズマ処理などに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の表面処理装置の好ましい一例の模式的な構成図である。
【図2】金属ロールによりフレキシブル積層体を搬送するときを図解する模式的な断面図である。
【図3】樹脂被覆ロールによりフレキシブル積層体を搬送するときを図解する模式的な断面図である。
【図4】樹脂被覆ロールの樹脂層の表面と絶縁フィルムの表面との接触面積Sおよび樹脂被覆ロールの樹脂層の厚みdを示す模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1,2,3,4,6,7,9,10,11,12,13,14,15,16,18,21,22,23 搬送ロール、8,17 ガスシール用ロール、26 繰り出しロール、27 巻き取りロール、28 入口予備室、29 第1上予備室、30 第1プラズマ処理室、31 下予備室、32 第2プラズマ処理室、33 第2上予備室、34 出口予備室、35,36,37,38 電極、39 フレキシブル積層体、39a 絶縁フィルム、39b 金属層、40 表面処理装置、41 金属ロール、42 樹脂層、43 樹脂被覆ロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と絶縁フィルムとが少なくとも積層されてなるフレキシブル積層体の前記絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための装置であって、
前記絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するためのプラズマ処理室と、
前記プラズマ処理室の上流側に設置された搬送ロールと、
前記プラズマ処理室の下流側に設置された搬送ロールと、を備え、
前記プラズマ処理室の下流側に設置された搬送ロールは最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールを含み、
前記樹脂被覆ロールは前記樹脂層の表面が放電プラズマ処理後の前記フレキシブル積層体の前記絶縁フィルムの表面と接触するように設置されており、
前記樹脂被覆ロールの前記樹脂層の表面と前記絶縁フィルムの表面との接触状態下における前記樹脂層の静電容量が10000F以下であることを特徴とする、表面処理装置。
【請求項2】
絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための装置であって、
前記絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するためのプラズマ処理室と、
前記プラズマ処理室の上流側に設置された搬送ロールと、
前記プラズマ処理室の下流側に設置された搬送ロールと、を備え、
前記プラズマ処理室の下流側に設置された搬送ロールは最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールを含み、
前記樹脂被覆ロールは前記樹脂層の表面が放電プラズマ処理後の前記絶縁フィルムの表面と接触するように設置されており、
前記樹脂被覆ロールの前記樹脂層の表面と前記絶縁フィルムの表面との接触状態下における前記樹脂層の静電容量が10000F以下であることを特徴とする、表面処理装置。
【請求項3】
前記樹脂被覆ロールの前記樹脂層の誘電率が3F/m以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記樹脂被覆ロールの前記樹脂層の静摩擦係数が0.1以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記プラズマ処理室の上流側に設置された搬送ロールは、前記プラズマ処理室に前記絶縁フィルムを鉛直方向に搬入するための搬送ロールを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記プラズマ処理室の上流側に前記プラズマ処理室に隣接した予備室を備えていることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記プラズマ処理室の下流側に前記プラズマ処理室に隣接した予備室を備えていることを特徴とする、請求項6に記載の表面処理装置。
【請求項8】
金属層と絶縁フィルムとが少なくとも積層されてなるフレキシブル積層体の前記絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための装置であって、
前記絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための第1プラズマ処理室と、
前記絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための第2プラズマ処理室と、
前記第1プラズマ処理室の上流側に前記第1プラズマ処理室に隣接して設置された第1予備室と、
前記第2プラズマ処理室の下流側に前記第2プラズマ処理室に隣接して設置された第2予備室と、
前記第1プラズマ処理室の下流側かつ前記第2プラズマ処理室の上流側に設置された第3予備室と、
前記第1プラズマ処理室の上流側に設置された第1搬送ロールと、
前記第2プラズマ処理室の下流側に設置された第2搬送ロールと、
前記第3予備室内に設置された第3搬送ロールと、を備え、
前記第1プラズマ処理室は前記第2プラズマ処理室の上流側に設置され、
前記第1プラズマ処理室と前記第2プラズマ処理室とは前記第3予備室を介して連結されており、
前記第1搬送ロールは前記第1プラズマ処理室に前記フレキシブル積層体を鉛直方向に搬入するための搬送ロールを前記第1予備室内に含み、
前記第2搬送ロールは前記第2プラズマ処理室から前記フレキシブル積層体を鉛直方向に搬出するための搬送ロールを前記第2予備室内に含んでおり、
前記第2搬送ロールおよび前記第3搬送ロールはそれぞれ、最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールを含み、
前記樹脂被覆ロールは前記樹脂層の表面が放電プラズマ処理後の前記フレキシブル積層体の前記絶縁フィルムの表面と接触するように設置されており、
前記樹脂被覆ロールの前記樹脂層の表面と前記絶縁フィルムの表面との接触状態下における静電容量が10000F以下であることを特徴とする、表面処理装置。
【請求項9】
絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための装置であって、
前記絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための第1プラズマ処理室と、
前記絶縁フィルムの表面を放電プラズマ処理するための第2プラズマ処理室と、
前記第1プラズマ処理室の上流側に前記第1プラズマ処理室に隣接して設置された第1予備室と、
前記第2プラズマ処理室の下流側に前記第2プラズマ処理室に隣接して設置された第2予備室と、
前記第1プラズマ処理室の下流側かつ前記第2プラズマ処理室の上流側に設置された第3予備室と、
前記第1プラズマ処理室の上流側に設置された第1搬送ロールと、
前記第2プラズマ処理室の下流側に設置された第2搬送ロールと、
前記第3予備室内に設置された第3搬送ロールと、を備え、
前記第1プラズマ処理室は前記第2プラズマ処理室の上流側に設置され、
前記第1プラズマ処理室と前記第2プラズマ処理室とは前記第3予備室を介して連結されており、
前記第1搬送ロールは前記第1プラズマ処理室に前記絶縁フィルムを鉛直方向に搬入するための搬送ロールを前記第1予備室内に含み、
前記第2搬送ロールは前記第2プラズマ処理室から前記絶縁フィルムを鉛直方向に搬出するための搬送ロールを前記第2予備室内に含んでおり、
前記第2搬送ロールおよび前記第3搬送ロールはそれぞれ、最外層が樹脂層からなる樹脂被覆ロールを含み、
前記樹脂被覆ロールは前記樹脂層の表面が放電プラズマ処理後の前記絶縁フィルムの表面と接触するように設置されており、
前記樹脂被覆ロールの前記樹脂層の表面と前記絶縁フィルムの表面との接触状態下における静電容量が10000F以下であることを特徴とする、表面処理装置。
【請求項10】
前記樹脂被覆ロールの前記樹脂層の誘電率が3F/m以下であることを特徴とする、請求項8または9に記載の表面処理装置。
【請求項11】
前記樹脂被覆ロールの前記樹脂層の静摩擦係数が0.1以下であることを特徴とする、請求項8から10のいずれかに記載の表面処理装置。
【請求項12】
前記絶縁フィルムがポリイミド樹脂フィルムからなることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−150128(P2007−150128A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345017(P2005−345017)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】