説明

表面処理装置

【課題】巻き取り式のフィルムを圧接させて加熱する方法によりサイズの異なる被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御できる表面処理装置において、フィルムを効率的に使用してランニングコストを抑制する。
【解決手段】巻き取り式のフィルムを圧接させて加熱する方法によりサイズの異なる被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御できる表面処理装置において、小サイズの被処理媒体Sを連続処理する際に、レジストローラ108を搬送方向と直交する方向にシフトさせることと、フィルム107を巻き戻すこと行って、フィルム107の幅方向で複数の被処理媒体Sを処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御可能な表面処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷物の多くは、記録材と色材との光沢度が違うことから、印字率によりその表面の光沢が異なる。このような印刷物に対し、オーバーコートを施すなどの様々な後処理工程により、印刷物の表面全体に均一な光沢面を作る方法が種々提案されている。
【0003】
又、近年、光沢を制御する技術も種々提案されている。例えば、オフセット印刷においては、次のような手法により、様々な光沢表現が可能になっている。即ち、色材インキで印刷後、UV硬化性の透明インキを用いて、特定の部分にオフセット印刷する。そして、印刷物の表面全体に対しUV照射することにより、UV硬化性の透明インキを固定させる。この手法によれば、特定の部分(写真や見出し部など)のグロスを向上し視覚効果に富んだ印刷物を出力することが可能である。
【0004】
電子写真方式においては、印刷物の表面全体のグロスを向上させて写真調の記録を行う方法が提案されている(特許文献1)。この方法では、トナーで画像が形成された印刷物の表面を、表面の平滑性の高い無端状のベルトを介して再加熱することによりトナーを再溶融させる。その後、ベルトと接触した状態でトナーを冷却させることにより、トナーで形成された画像の表面にベルトの平滑性が転写された状態でトナーを固化させる。この方法では、印刷物の全体の光沢を制御することができるが、印刷物の表面の光沢を部分的に制御することは困難である。
【0005】
特許文献2には、サーマルヘッドを用いて印刷物の表面の光沢を部分的に制御する方法が開示されている。この方法では、サーマルヘッドでシート体の表面を部分的に加熱した後に、そのシート体を無端ベルトに加圧ローラで押圧しながら搬送し、その後そのシート体を無端ベルトに密着させた状態のまま冷却する。これにより、シート体の表面のサーマルヘッドで加熱した部分に無端ベルトの表面性状を転写する。
【0006】
又、特許文献3には、熱転写プリンタにおいて、印刷物の表面全体に光沢を持たせる方法が開示されている。この方法では、インクフィルムに、インク層が形成されたインク層部とインク層が形成されていない樹脂層部とを設ける。そして、先ずインクフィルムのインク層を受像紙に転写させる。その後、インクフィルムの樹脂層部をサーマルヘッドとプラテンローラとの間に送り込み、サーマルヘッドをインクフィルム及びインク層が転写された受像紙を介してプラテンローラに押圧して、受像紙上のインク層を再加熱する。これによって、受像紙上のインク層の表面を平滑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−086747号公報
【特許文献2】特開2004−170548号公報
【特許文献3】特開平10−315515公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、サーマルヘッドと薄いフィルムを用いて部分的に印刷物を加熱する方法が、例えば電子写真方式により画像が形成された印刷物の表面の光沢を部分的に制御するのに適していることを見出した。この方法によれば、サーマルヘッドを電気的に制御することで、印刷物上の任意の位置を加熱することができる。被処理媒体が電子写真方式によってトナーで画像が形成された印刷物である場合、印刷物のトナー像を、フィルムを介して加熱・溶融させ、その後冷却・分離することで、印刷物の任意位置の光沢を制御することができる。
【0009】
ここで、サーマルヘッドは与える熱量が小さいため、トナー像を加熱するには、熱抵抗の小さい、薄いフィルムを使用することが望まれる。このようなフィルムは、加熱すると熱収縮によって変形し、再利用が困難となる。従って、このフィルムは、巻き取り軸に巻き取る巻き取り式にして使い切りにするのが簡便である。
【0010】
しかしながら、このような方法では、フィルムのランニングコストが課題となることがあることがわかった。
【0011】
即ち、ユーザーの様々な要求に対応できるように、被処理媒体のサイズとしては、はがきや封筒サイズ程度の小さいものから、A3サイズ程度の大きいものまで処理可能な構成とすることが望まれる。そのため、フィルムも、使用可能な最大サイズの被処理媒体に対応可能な幅のものを用いる必要がある。しかし、上述のようにフィルムは被処理媒体の処理に用いられると、加熱によりしわが発生し、再利用することができない。従って、小サイズの被処理媒体に処理を施す場合、フィルムの幅のうち被処理媒体に対応する範囲しか使用しないため、フィルムの未使用領域が大きく非効率的となることがある。
【0012】
従って、本発明の目的は、巻き取り式のフィルムを圧接させて加熱する方法によりサイズの異なる被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御できる表面処理装置において、フィルムを効率的に使用してランニングコストを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係る表面処理装置にて達成される。要約すれば、本発明は、供給軸から引き出されて巻き取り軸に巻き取られて搬送されるフィルムと、前記フィルムの面の前記搬送方向と略直交する方向における異なる領域を選択的に加熱することで前記フィルムを介して被処理媒体の面を加熱する加熱手段と、を有し、被処理媒体を前記搬送方向に搬送される前記フィルムに接触させて同方向に搬送しながら前記加熱手段によって加熱する処理を行う表面処理装置において、前記フィルムを、前記供給軸から引き出されて前記巻き取り軸に巻き取られるように駆動すると共に、前記巻き取り軸から引き出されて前記供給軸に巻き戻されるように駆動することのできるフィルム駆動手段と、被処理媒体を前記フィルムと接触させる前に前記フィルムの搬送方向と略直交する方向に沿って移動させることのできる移動手段と、前記フィルムの前記搬送方向と略直交する方向の幅の半分よりも幅の小さい被処理媒体に連続して前記処理を行う場合に、前記フィルム駆動手段による前記フィルムの巻き戻しと、前記移動手段による被処理媒体の前記フィルムの搬送方向と略直交する方向に沿う移動とを実行させることで、前記フィルムの前記搬送方向における同一領域内の該搬送方向と略直交する方向における異なる領域に被処理媒体を接触させて前記処理を行わせる制御手段と、を有する表面処理装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、巻き取り式のフィルムを圧接させて加熱する方法によりサイズの異なる被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御できる表面処理装置において、フィルムを効率的に使用してランニングコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例に係る表面処理装置を備えた画像形成システムの模式的な断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る表面処理装置の模式的な断面図である。
【図3】サーマルヘッドの構成の一例を示す模式的な断面図である。
【図4】サーマルヘッドの駆動回路の一例を示す回路図である。
【図5】本発明の一実施例に係る表面処理装置における移動手段の動作を説明するための説明図である。
【図6】本発明の一実施例に係る表面処理装置の動作の一例のフローチャート図ある。
【図7】本発明の一実施例に係る表面処理装置の概略制御態様を示すブロック図である。
【図8】本発明の一実施例に係る表面処理装置における移動手段の構成の一例を説明するための説明図である。
【図9】本発明の一実施例に係る表面処理装置におけるフィルムの使用領域を示す模式図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る表面処理装置におけるフィルムの使用領域を示す模式図である。
【図11】本発明の他の実施例に係る表面処理装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る表面処理装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0017】
実施例1
1.システム構成
図1は、本発明の一実施例に係る表面処理装置を備えた画像形成システムの全体構成を示す模式的な断面図である。本実施例では、表面処理装置100と、電子写真方式の画像形成装置200とが連結されて、画像形成システム300が構成されている。画像形成システム300は、画像形成装置200において記録用紙などの記録材Tに電子写真方式により熱溶融性のトナーで画像を形成して、記録材Tの搬送方向において下流側に連結された表面処理装置100に受け渡す。表面処理装置100は、この画像が形成された記録材Tを被処理媒体Sとして、その表面の表面性状を制御する処理(表面処理)を行った後に出力する。
【0018】
2.画像形成装置
画像形成装置200は、電子写真方式を用いてフルカラー画像を形成することのできる中間転写方式を採用したタンデム型のデジタルプリンタである。記録材Tに対するトナー像の形成は、主としてプリンタ部220にて行われる。プリンタ部220は、複数の画像形成部としてそれぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、Bk(ブラック)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)210Y、210M、210C、210Bkを有する。
【0019】
尚、各画像形成部210Y、210M、210C、210Bkの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用の要素であることを表すために図中符号に与えた添え字Y、M、C、Bkは省略して、各色用のものに共通に適用されるものとして総括的に説明する。
【0020】
画像形成部210には、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム201が設けられている。感光ドラム201は、図中矢印R1方向に回転駆動される。感光ドラム201の周りには、その回転方向に従って順に次の各手段が設けられている。先ず、帯電手段としての帯電器202である。次に、露光手段としての露光装置(LEDユニット)203である。次に、現像手段としての現像器204である。次に、一次転写手段としての一次転写ローラ205である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置206である。
【0021】
又、各画像形成部210の各感光ドラム201に対向するように、中間転写体として無端ベルト状の中間転写体ベルト207が設けられている。中間転写ベルト207は、複数の支持部材としての駆動ローラ271、テンションローラ272、二次転写対向ローラ273によって張架されている。中間転写ベルト207は、駆動ローラ271が回転駆動されることによって、図中矢印R2方向に回転(周回移動)する。上記各一次転写ローラ205は、中間転写ベルト207の内周面側において、各感光ドラム201に対向して設けられている。各一次転写ローラ205は、中間転写ベルト207を介して各感光ドラム201に押圧され、中間転写ベルト207と各感光ドラム201とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1を形成する。又、中間転写ベルト207の外周面側において、二次転写対向ローラ273に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ208が設けられている。二次転写ローラ208は、中間転写ベルト207を介して二次転写対向ローラ273に押圧され、中間転写ベルト207と二次転写ローラ208とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成する。
【0022】
又、記録材Tの搬送方向において二次転写部N2の下流側には、定着手段としての定着器230が設けられている。
【0023】
更に、画像形成装置200は、記録材Tの搬送方向において二次転写部N2の上流側に設けられた記録材供給部240、二次転写部N2と定着器230との間に設けられた定着前搬送部250、定着器230の下流側に設けられた記録材排出部260を有する。
【0024】
フルカラー画像の形成時を例として、画像形成動作について説明する。画像形成時には、各画像形成部210において、回転する感光ドラム201の表面は帯電器202によって一様に帯電させられる。又、露光装置203に各画像形成部に対応する分解色の画像信号が入力され、この画像信号に応じて、一様に帯電処理された感光ドラム201の表面に、露光装置203から光が照射される。これによって、感光ドラム201上の電荷が中和され、感光ドラム201上には画像信号に応じた静電潜像(静電像)が形成される。感光ドラム201上に形成された静電潜像には、現像器204によって各画像形成部に対応する色のトナーが供給されてトナー像として現像される。感光ドラム201上に形成されたトナー像は、一次転写ローラ205の作用によって中間転写体ベルト207に一次転写される。フルカラー画像の形成時には、各画像形成部210において各感光ドラム201上に形成されたトナー像が、中間転写ベルト207上に順次に重ね合わせるように一次転写され、中間転写体ベルト207上にフルカラー画像用の多重トナー像が形成される。
【0025】
一方、記録材供給部240では、カセット241に収められた記録材Tが供給ローラ242及び分離ローラ対243によって1枚ずつ分離され、複数の搬送ローラ244によってレジストローラ対245へと搬送される。記録材Tの供給時及びレジストローラ対245への搬送中に斜行した記録材Tは、レジストローラ対245にその搬送方向の先端が突き当たることで斜行が補正される。
【0026】
中間転写体ベルト207上のトナー像は、二次転写ローラ208の作用によって記録材Tに二次転写される。その後、記録材Tは、定着前搬送部250により定着器230へと搬送される。定着器230は、対向するローラやベルトなどにより形成された接触部(定着ニップ)において、通過する記録材Tに所定の圧力と熱量を与える。これによって、記録材T上にトナー像を溶融固着させる。そのため、定着器230は、熱源となるヒータを備え、常に最適な温度が維持されるように制御されている。本実施例では、定着器230は、熱源を内部に備えた加熱ローラ231と、これに圧接して定着ニップを形成する加圧ローラ232とを有する。
【0027】
定着器230によって画像が定着された記録材Tは、記録材排出部260によって画像形成装置200から排出され、記録材Tの搬送方向において画像形成装置200の下流に連結された表面処理装置100へと搬送される。本実施例では、この画像が定着された記録材Tが、表面処理装置100において表面処理を施す被処理媒体Sである。
【0028】
ここで、各色のトナーは、樹脂と顔料とを主成分とする微粉体である。本実施例では、各色のトナーとしては、主にポリエステル樹脂と顔料とで構成されるものを用いた。
【0029】
3.表面処理装置の全体構成
図2は、表面処理装置100の主要部の断面図である。表面処理装置100は、被処理媒体Sの搬送経路を挟んで対向して配置される、支持部材としてのローラ型のプラテンであるプラテンローラ101と、加熱手段としての接触型の局所加熱装置であるサーマルヘッド102と、を有する。プラテンローラ101は、サーマルヘッド102が後述するフィルム107及び被処理媒体Sを介して押圧される際の下支えとなると共に、被処理媒体Sを搬送する。サーマルヘッド102は、後述する処理領域情報に応じて選択的に発熱する。
【0030】
表面処理装置100は更に、サーマルヘッド102によって被処理媒体Sに押圧されると共に選択的に加熱されるフィルム107と、フィルム107の巻き取り軸103と、フィルム107の供給軸104と、を有する。巻き取り軸103、供給軸104は、それぞれ駆動源としての巻き取り軸駆動モータ141(図7)、供給軸駆動モータ142(図7)によって回転駆動される。巻き取り軸駆動モータ141は、フィルム107を供給軸104から巻き取り軸103に巻き取る方向に巻き取り軸103を回転駆動することができる(図中矢印R3方向)。このとき、供給軸104は、フィルム107を巻き取り軸103へと供給する方向(図中矢印R4方向)に回転可能とされる。又、供給軸駆動モータ142は、フィルム107を巻き取り軸103から供給軸104に巻き戻す方向に供給軸104を回転駆動することができる(図中矢印R5方向)。このとき、巻き取り軸103は、フィルム107を供給軸104へと戻す方向(図中矢印R6方向)に回転可能とされる。
【0031】
ここで、フィルム107の被処理媒体Sに接触する側の面を表面、その反対側の面を裏面とする。又、被処理媒体Sのフィルム107が接触する側の面を表面、その反対側であるプラテンローラ101に接触する側の面を裏面とする。
【0032】
表面処理装置100は更に、フィルム107の裏面側に接触するように設けられた、分離ローラ105とテンションローラ106を有する。巻き取り軸103、供給軸104、プラテンローラ101、分離ローラ105及びテンションローラ106の回転軸線方向は略平行である。フィルム107は、供給軸104から引き出されて、テンションローラ106の外周の一部に掛け回されて、サーマルヘッド102とプラテンローラ101とによる押圧部(処理部)Gに案内される。そして、フィルム107は、処理部Gを通過して、分離ローラ105の外周の一部に掛け回されて、巻き取り軸103に案内され、巻き取り軸103によって巻き取られる。このフィルム107の搬送方向を順方向とする。フィルム107の搬送方向は、上記巻き取り軸103、供給軸104、プラテンローラ101、分離ローラ105及びテンションローラ106の回転軸線方向と略直交する。被処理媒体Sの表面処理を行うとき、処理部Gにおけるフィルム107と被処理媒体Sの搬送方向は同方向である。分離ローラ105は、サーマルヘッド102によって加熱され押圧されたフィルム107と被処理媒体Sとを分離する。テンションローラ106は、フィルム107のテンションを調節する。テンションローラ106、分離ローラ105は、フィルム107の搬送に伴って回転する。
【0033】
表面処理装置100は更に、被処理媒体Sの搬送方向において処理部Gの上流側に、処理を行う前に被処理媒体Sの姿勢を整えるレジストユニット108を有する。レジストユニット108は、互いに押圧されたローラ対である処理前レジストローラ対181(181a、181b)を有する。レジストローラ対181は、駆動源としてのレジストローラ駆動モータ144(図7)によって回転駆動される。レジストユニット108は、レジストローラ対181によって、被処理媒体Sの斜行を補正した後、その被処理媒体Sを処理部Gに搬送する。被処理媒体Sは、回転が停止されているレジストローラ対181の接触部(ニップ)にその搬送方向の先端が突き当たることで斜行が補正される。ここで、詳しくは後述するように、レジストローラ対181は、駆動源としてのレジストローラシフトモータ182(図7)などを有して構成される移動手段によって、被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向にアクティブに移動可能である。
【0034】
表面処理装置100は更に、被処理媒体Sの搬送方向において処理部Gの下流側に、互いに押圧されたローラ対である処理後搬送ローラ対109(109a、109b)を有する。処理後搬送ローラ対109は、処理後の被処理媒体Sを表面処理装置100の外部の排出トレイ或いは後処理工程へと搬送する。
【0035】
表面処理装置100は更に、被処理媒体Sの搬送方向においてレジストローラ対181の下流側、且つ、テンションローラ106の上流側に、被処理媒体Sの有無を検知する第1の被処理媒体センサ110を有する。又、表面処理装置100は更に、被処理媒体Sの搬送方向において分離ローラ105の下流側、且つ、処理後搬送ローラ対109の上流側に、被処理媒体Sの有無を検知する第2の被処理媒体センサ111を有する。第1、第2の被処理媒体センサ110、111により、搬送中の被処理媒体Sを検知することができる。
【0036】
4.表面処理装置の各部の構成
以下、表面処理装置100の各部の構成について更に説明する。
【0037】
4−1.サーマルヘッド
サーマルヘッド102の基本構成及び基本仕様について説明する。図3は、特に、サーマルヘッド102の発熱体の構成の概略図である。サーマルヘッド102は、アルミナなどを用いた基板121に印刷されたグレーズ122(保温層)上にコモン(共通)電極123a、リード(個別)電極123bを形成すると共に、これらの各電極の上面に発熱抵抗体125を形成して構成されている。更に、上記基板121、保温層122、各電極123a、123b及び発熱抵抗体125の上面に、保護膜124(オーバーコート層)が形成されている。又、サーマルヘッド102には、発熱体に選択的に電力を印加して発熱させるための駆動回路130(図7)が接続されている。更に、サーマルヘッド102には、被処理媒体Sに熱を与えた後の余分な熱を放熱させる放熱板などの部材が設けられている。サーマルヘッド102は、被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向に沿って配列された複数の発熱体(加熱部)を有し、その配列方向において異なる領域を選択的に加熱することでフィルム107を介して被処理媒体Sの面を加熱することができる。
【0038】
本実施例で使用したサーマルヘッド102は、発熱体密度300dpi、記録密度(処理密度)300dpi、駆動電圧30V、発熱体平均抵抗値5000Ωである。しかし、サーマルヘッド102の構成や仕様は、本実施例のものに限定されるものではない。
【0039】
図4は、一般的なサーマルヘッド102の駆動回路の概略図である。アルミナ基板上には、1ライン分の発熱抵抗体が設けられ、その両サイドに電極が配線されている。又、1ライン分のデータ(処理領域情報)を転送し保持するレジスタ群を含むドライバICが、同一アルミナ基板上或いは別個の配線基板上に設けられている。
【0040】
4−2.プラテンローラ
プラテンローラ101は、軸(芯金)101aの周りに、硬質ゴムなどの摩擦係数の高い部材から成る弾性層101bをローラ状に形成した弾性ローラである。本実施例では、軸101aの周りにシリコーンゴムから成る弾性層101bをローラ状に形成した耐熱性のゴムローラである。プラテンローラ101は、軸101aにより表面処理装置100の装置本体に回動可能に取り付けられている。そして、この軸101aを介してプラテンローラ101を駆動源としてのプラテンローラ駆動モータ143(図7)により回転駆動することにより、被処理媒体Sとフィルム107とが搬送される。本実施例では、被処理媒体Sの搬送速度は、プラテンローラ101の回転速度によって決定され、サーマルヘッド102へ送られるデータ(処理領域情報)は、このプラテンローラ101の回転速度に基づいて決定される。本実施例では、表面処理時に、処理部において被処理媒体Sとフィルム107は略等速度で同方向に搬送される。
【0041】
4−3.フィルム
フィルム(転写フィルム)107は、供給軸104に所望の長さ巻き取られて蓄えられており、必要に応じて巻き取り軸103により巻き取ることにより、処理部Gに供給される。フィルム107は、被処理媒体Sの表面を局所的に加熱するために、薄い可撓性材料で構成することが望まれる。この観点から、フィルム107の厚さは40μm以下が望ましい。フィルム107の厚さは、光沢処理の観点からは2μmまで薄くすることが可能であるが、強度の観点からは4μm以上が好ましい。更に、表面処理において、写真調の写像性に優れた表面性を得るために、フィルム107はある程度の剛度を持つことが有効であり、下記のような材質においては8μm以上が好ましい。又、材質については、サーマルヘッド102に対する耐熱性が必要である。ポリイミドなど、200℃を超える耐熱性を有する材質が望ましい。しかし、加熱履歴は残るが、PET(ポリエチレンテレフタラート)など安価で一般的な樹脂フィルムを採用することができる。又、フィルム107の表層(被処理媒体Sに接触する面)には、離型コーティングを施すことができる。この機能層は、低表面エネルギーのコーティング層であり、フィルム107と被処理媒体Sの表層の樹脂との離型性を向上するために施すことができる。フィルム107の表面の形状を被処理媒体Sの表面に転写するにあたっては、フィルム107の形状を如何に正確に転写するかという観点から、スムーズに離型することが望ましい。これらの組成としては、例えばフッ素樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。又、形成方法については、コーティングを用いることができるが、コーティングに限ることはなく、あくまで転写すべき表面性を形成できることが重要となる。例えば、写真用の平滑な面を作るため、ベースフィルムにコーティングにより平滑面を作成することができる。又、フィルム107の裏面(サーマルヘッド102と摺動する面)には、スティック防止層を設けることができる。これはサーマルヘッド102との機械的摩擦を低減するために施すことができる。上述の離型コーティングに近い特性が要求されるため、具体的には、離型層と同様のフッ素樹脂、シリコーン樹脂などによるコーティングが有効である。本実施例ではフィルム107として、PETフィルム(基材)に離型コーティングを施したものを使用した。
【0042】
フィルム107は、その表面形状(表面性状)を被処理媒体Sに転写するため、高光沢の平滑フィルムであれば、高光沢な写真調の光沢表面に処理することが可能になる。又、逆に、サンドブラストなどによるマットフィルムを使用するか或いは特定の形状を施したフィルムを使えば、その形状の反転形状を被処理媒体Sに転写することが可能である。例えば、絹目や和紙や、エンボス紙に有るような様々な風合いの形状を転写することが可能である。又、幾何学模様を施すことも可能であり、格子など様々な風合いを転写することが可能である。又、更に1μmからサブμmオーダーの幾何学構造を作ることによりホログラム色を呈する表面を転写することが可能である。本実施例の表面処理装置100によれば、部分的に処理が可能であるため、これらのフィルム107から種類の異なるフィルム107を複数備えて、必要な場所にのみさまざまな形状やホログラム色を処理することも可能である。
【0043】
本実施例では、フィルム107のサイズは、その搬送方向と略直交する方向の幅が320mm〜350mm程度のものを使用し、サーマルヘッド102の同方向の幅も同等の幅を持つものを使用する。これにより、A3サイズ程度までの様々なサイズの被処理媒体Sに対応することが可能である。又、本実施例では、フィルム107は、その表面が平滑で、被処理媒体Sに光沢を付与するためのものであるものとする。
【0044】
本実施例では、フィルム107は、その薄さから、一度使用すると、加熱部分にしわが発生し、再利用することはできない。
【0045】
4−4.分離部
フィルム107から被処理媒体Sを分離する部分(分離部)について説明する。分離ローラ105は、フィルム107の冷却機能と曲率によるフィルム107からの被処理媒体Sの分離機能の2つの役目を担っている。分離ローラ105は、SUSなどの金属ローラにより構成することができる。又、分離部の温度上昇を抑えるため冷却機構を設けてもよい。冷却機構としては、空冷機構を設けたり、冷却フィンを取り付けたりすることなどが有効である。
【0046】
尚、本実施例では、被処理媒体Sとフィルム107との分離を行うために、曲率分離を行う分離ローラ105を配設した。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、サーマルヘッド102の筐体を用いてフィルム107を屈曲させて、フィルム107から被処理媒体Sを分離しても良い。
【0047】
4−5.表面処理の基本動作
画像形成装置200から表面処理装置100に被処理媒体Sが一枚ずつ搬送される。被処理媒体Sは、レジストユニット108のレジストローラ対181の位置まで搬送され、斜行補正されるために一旦停止する。その後、レジストローラ対181が駆動されて、被処理媒体Sの搬送が再開されると、被処理媒体Sの搬送方向の先端が第1の被処理媒体センサ110によって検知される。そして、被処理媒体Sが第1の被処理媒体センサ110を通過するタイミングに合わせて、サーマルヘッド102を駆動するタイミングが制御される。処理部Gにおいては、被処理媒体Sの搬送経路を挟んでプラテンローラ101と、処理領域情報に応じて選択的に発熱するサーマルヘッド102とが対向している。そして、サーマルヘッド102の下方にはフィルム107、更にその下方に被処理媒体Sが搬送される。フィルム107は、サーマルヘッド102とプラテンローラ101により、被処理媒体Sと共に挟持されて搬送される。サーマルヘッド102は、発熱抵抗体を後述する処理領域情報により決定された加熱パターンにより選択的に加熱可能であり、フィルム107と被処理媒体Sをプラテンローラ101との間に挟持して搬送しながら、被処理媒体S上のトナー像を再溶融させる。被処理媒体Sの搬送方向においてサーマルヘッド102の下流側の分離ローラ105により形成される分離部において、フィルム107は被処理媒体Sから分離される。この時、被処理媒体Sは十分に冷却されているため、被処理媒体Sの表面のトナー像は、フィルム107の表面性が転写された状態で固化し、被処理媒体Sの表面に所望の光沢を付与することができる。
【0048】
巻き取り軸103は、被処理媒体Sの搬送に伴って搬送されるフィルム107を巻き取り、同時に分離部でフィルム107と被処理媒体Sを分離するために必要なテンションを発生させている。尚、サーマルヘッド102は、通常時はプラテンローラ101から離間した状態で待機させることができる。そして、サーマルヘッド102を、被処理媒体Sの処理領域の開始位置が処理部Gに到達するタイミングに合わせてプラテンローラ101に押圧し、処理領域の終了位置が処理部Gを通過した後にプラテンローラ101から離間ささせることができる。この場合、巻き取りローラ103は、サーマルヘッド102がプラテンローラ101に押圧されると駆動され、離間されると停止するようにすることができる。
【0049】
表面処理が施された後の被処理媒体Sは、搬送ローラ対109によって搬送され、その後排出ローラ対などによって表面処理装置100の外部の排出トレイへと排出される。
【0050】
図7は、本実施例の表面処理装置100における表面処理動作の制御に係る概略制御態様を示す。表面処理装置100の各種動作は、コントローラ(制御部)150により統括的に制御される。本実施例では、コントローラ150は、図示しない画像形成装置200側のコントローラ(制御部)と通信可能である。コントローラ150は、画像形成装置200から入力される処理命令や、表面処理装置100に設けられた操作部(図示せず)により入力される処理命令に基づいて、表面処理装置100の各部の動作を制御する。本実施例との関連において、コントローラ150は、特に、サーマルヘッド駆動回路130、巻き取り軸駆動モータ141、供給軸駆動モータ142、プラテンローラ駆動モータ143、レジストローラ駆動モータ144、シフトモータ182などの動作を制御する。コントローラ150は、制御手段としてのCPU151、記憶手段としてのROM152及びRAM153などを有し、CPU151が処理命令に応じて、ROM152、RAM153に格納されたプログラムやデータに従って制御を実行する。処理命令は、対応する領域が処理部Gを通過するタイミングに合わせてサーマルヘッド102を選択的に発熱させるための処理領域情報(光沢画像データ)を含む。サーマルヘッド102は、その処理領域情報に基づき被処理媒体Sの所定位置に対応して発熱して、被処理媒体Sの表面処理を行なう。又、コントローラ150は、パーソナルコンピュータなどの外部装置から処理命令が入力されるようになっていてもよい。
【0051】
尚、一般的に写真調の高光沢とは60度グロス(JIS Z 8741 鏡面光沢度−測定方法)において40%以上、更には80%以上の高光沢を意味する。従来の光沢処理手法では、一枚一枚異なる領域について、部分的に写真調の光沢処理をすることが困難であった。本実施例の表面処理装置100によれば、被処理媒体の上半分といった写真領域の処理はもちろん、見出し文字や、印刷内容に合わせて任意の形や領域について部分的に光沢処理を行うことができる。
【0052】
5.小サイズの被処理媒体への対応
上述のように、本実施例の表面処理装置100は、印刷物の表面の光沢を部分的に制御するのに好適である。又、本実施例の表面処理装置100は、ユーザーの様々な要求に対応できるように、被処理媒体のサイズとしては、はがきや封筒サイズ程度の小さいものから、A3サイズ程度の大きいものまで処理可能な構成とされている。上述のようにフィルム107は被処理媒体Sの処理に用いられると、加熱によりしわが発生し、その部分は再利用することができない。しかし、小サイズの被処理媒体に処理を施す場合、フィルム107の幅のうち被処理媒体に対応する範囲しか使用しないため、フィルム107の未使用領域が大きく非効率的となる。
【0053】
従って、本実施例の目的の一つは、巻き取り式のフィルムを圧接させて加熱する方法によりサイズの異なる被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御できる表面処理装置において、フィルムを効率的に使用してランニングコストを抑制することである。
【0054】
本実施例では、斯かる目的のために、表面処理装置100は、概略、次のような動作を行う。即ち、小サイズの被処理媒体Sに連続して表面処理を施す際に、フィルム107を巻き戻すことで、フィルム107の搬送方向と略直交する方向における異なる位置で複数の被処理媒体Sに表面処理を施す。これによりフィルム107を効率的に使用してランニングコストを抑制する。
【0055】
図6は、本実施例の表面処理装置100における表面処理動作のシーケンスを示す。尚、ここでは、被処理媒体Sの搬送方向(走行方向)と略直交する方向の幅、フィルム107の搬送方向(走行方向)と略直交する方向の幅の幅を、それぞれ単に被処理媒体Sの幅、フィルム107の幅ともいう。
【0056】
コントローラ150は、処理命令が入力されると、被処理媒体Sに対する表面処理動作シーケンスを開始する(S101)。本実施例の表面処理装置100は、画像形成装置200が被処理媒体Sの搬送方向の上流側に連結された状態で使用される。この場合、画像形成装置200側で前述のような画像形成プロセスを経て出力された記録材Tが、被処理媒体Sとして表面処理装置100に搬送される。画像形成装置200から搬送された被処理媒体Sは、その斜行を補正するためのレジストローラ対181まで搬送される。レジストローラ対181は回転を停止した状態で待機しており、被処理媒体Sの搬送方向の先端がレジストローラ対181に突き当たり、その先端がレジストローラ対181にならうことで、被処理媒体Sは斜行が補正される。
【0057】
次に、コントローラ150は、被処理媒体Sの幅が、所定値として本実施例ではフィルム107の幅の半分より小さいか否かを判断する(S102)。被処理媒体Sのサイズに係る情報は、画像形成装置200側で自動認識されて処理命令としてコントローラ150に入力されるか、或いはユーザーにより操作部(図示せず)から入力される。コントローラ150は、入力された被処理媒体Sのサイズに係る情報により、被処理媒体Sの幅がフィルム107の幅の半分より小さいか否かを判断する。本実施例では、コントローラ150のCPU151は、上記被処理媒体Sのサイズに係る情報から被処理媒体Sの幅を検知する検知手段として機能する。又、本実施例では、このとき、コントローラ150のCPU151は、同一の小サイズの被処理媒体Sに対する連続処理であるか否かを判断する。尚、コントローラ150のCPU151は、パーソナルコンピュータなどの外部装置から入力された被処理媒体Sのサイズの情報から、被処理媒体Sの幅を検知することもできる。
【0058】
コントローラ150は、S102で被処理媒体Sの幅がフィルム107の幅の半分以上であると判断した場合は、後述する被処理媒体Sのシフトは行わずに、前述のような被処理媒体Sの表面処理を実行させる(S103)。本実施例では、同一の小サイズの被処理媒体Sに対する連続処理でない場合も、被処理媒体Sのシフトは行わない。その後、コントローラ150は、被処理媒体Sに対する表面処理動作のシーケンスを終了する(S111)。
【0059】
一方、コントローラ150は、S102でフィルム107の幅の半分より小さいと判断した場合、レジストローラ対181で被処理媒体Sを挟持したまま、レジストローラ対181を被処理媒体Sの搬送方向と直交する方向にシフトさせる(S104)。本実施例では、A3サイズ程度以上のサイズの被処理媒体Sまで処理可能とするために、フィルム107の幅を320mm〜350mm程度としている。従って、本実施例では、A5R、封筒、はがきなどの用紙が、フィルム107の幅の半分より小さい幅の小サイズの被処理媒体Sに該当する。
【0060】
本実施例では、被処理媒体Sは、停止した状態のレジストローラ対181の接触部(ニップ)に突き当たった際に、その搬送方向の先端の所定領域がその接触部に挟持されるようにわずかに食い込む。従って、レジストローラ対181がシフトすると、被処理媒体Sも同方向にシフトする。但し、レジストローラ対181をシフトさせる前にレジストローラ対181をわずかに回転させて、積極的に被処理媒体Sを接触部(ニップ)に挟持するようにしてもよい。レジストローラ対181は、シフトモータ182によってシフトさせられる。
【0061】
レジストローラ対181を被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向に移動させる移動手段は、利用可能な任意の手段を適宜用いることができる。図8は、移動手段の一例の概略構成を示す。本実施例では、レジストユニット108は、レジストローラ対181及びギアなどのレジストローラ対181への駆動伝達部材を収容する枠体185を有する。枠体185の図中下部には駆動受け部材としての直線ギア184が設けられており、この直線ギア184と噛み合う駆動伝達部材としての駆動ギア183が表面処理装置100の装置本体側に設けられている。そして、この駆動ギア183を駆動源としてのレジストローラシフトモータ182によって順方向又は逆方向に回転させることで、枠体185を被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向に沿って第1の方向、及びその反対の第2の方向に移動させることができる。これによって、枠体185に支持されたレジストローラ対181を被処理媒体Sの搬送方向と略直交する方向に沿って上記第1、第2の方向に移動させることができる。駆動ギア183の回転量によるレジストローラ対181のシフト量は、コントローラ150がレジストローラシフトモータ182の駆動量を制御することによって制御することができる。本実施例では、レジストローラ対181、駆動ギア183、直線ギア184、レジストローラシフトモータ182などを有するレジストユニット108が移動手段を構成する。
【0062】
シフト量は、被処理媒体Sのサイズによって適した量とする。即ち、図5(a)、(b)に示すように、フィルム107の幅をLmm、被処理媒体Sの幅をPmm、レジストローラ対181によって被処理媒体Sをシフトさせる量をXmmとする。又、本実施例では、被処理媒体Sは、レジストローラ対181までは、フィルム107と被処理媒体Sの幅方向の中央が略一致するようにして搬送されてくる。又、レジストローラ対181は、被処理媒体Sの搬送方向の先端が突き当たるときには、その長手方向(回転軸線方向)の中央がフィルム107の幅方向の中央と略一致するホームポジションに配置されている。この場合、Xmmは、次式を満たす範囲内で、フィルム107の幅方向の被処理媒体Sに表面処理を施す領域が重ならないようにラチチュードを持たせた量とする。
【0063】
【数1】

【0064】
これにより、フィルム107の搬送方向の同一位置において、フィルム107の幅方向に複数の被処理媒体Sに表面処理を施すことが可能となる。
【0065】
次に、コントローラ150は、レジストローラ対181のシフト動作の終了後、前述のような被処理媒体Sの表面処理を実行させる(S105)。即ち、所定のタイミングでレジストローラ対181が駆動され、被処理媒体Sが処理部Gへと搬送される。そして、処理部Gにおいて、被処理媒体Sが、回転駆動される巻き取り軸103に巻き取られるフィルム107と共に搬送されながら、プラテンローラ101とサーマルヘッド102とによってフィルム107に押圧される。これと共に、サーマルヘッド102の発熱抵抗体が、処理領域情報により決定された加熱パターンに応じて選択的に加熱される。この際に、コントローラ150は、シフトさせた被処理媒体Sの位置に合わせるために、被処理媒体Sをシフトさせた方向及び量に応じて、加熱パターンを平行移動させるようにサーマルヘッド駆動回路130を制御する。そして、被処理媒体Sは分離ローラ105の曲率でフィルム107から分離される。これにより、被処理媒体Sの表面に所望の光沢が付与される。
【0066】
一方、コントローラ150は、処理部Gへと搬送された被処理媒体Sの搬送方向の後端がレジストローラ対181を通過したことを判断すると、次の動作を行わせる。即ち、次の被処理媒体Sの搬送方向の先端がレジストローラ対181に達する前に、シフトモータ182によってレジストローラ対181をホームポジションへと戻させる(S106)。コントローラ150は、処理部Gへと搬送された被処理媒体Sの搬送方向の後端がレジストローラ対181を通過したことを、その後端が第1の被処理媒体センサ110によって検知されることで判断する。
【0067】
次に、コントローラ150は、処理中の被処理媒体Sが、小サイズの被処理媒体Sの連続処理において奇数枚目のものであるか否かを判断する(S107)。コントローラ150は、奇数枚目であると判断した場合には、処理を終えた被処理媒体Sの搬送方向の後端が分離部を通過した後に、巻き取り軸103の駆動を止めさせ、供給軸104を逆方向に回転駆動させることで、フィルム107を巻き戻す(S108)。コントローラ150は、処理を終えた被処理媒体Sの搬送方向の後端が分離部を通過したことを、その後端が第2の被処理媒体センサ111によって検知されることで判断する。フィルム107を巻き戻す長さは、直前の被処理媒体Sの処理に使用した長さ分である。このように、本実施例では、2枚目、4枚目(即ち、フィルム107の幅方向における複数枚目)の被処理媒体Sの処理前に、フィルム107を巻き戻す。
【0068】
次に、コントローラ150は、小サイズの被処理媒体Sの連続処理における次の被処理媒体Sがあるか否かを判断する(S109)。コントローラ150は、次の被処理媒体Sがあると判断した場合は、次の被処理媒体Sがレジストローラ対181まで搬送されて斜行が補正されると、その被処理媒体Sをレジローラ対181により直前の被処理媒体Sの場合とは逆方向にシフトさせる(S110)。その後、上述と同様のS105〜S109の動作を繰り返す。一方、コントローラ150は、S109において次の被処理媒体Sがないと判断した場合は、被処理媒体Sに対する表面処理動作のシーケンスを終了する(S111)。
【0069】
一方、コントローラ150は、S107において処理中の被処理媒体Sが偶数枚目であると判断した場合は、フィルム107の巻き戻しは行わない。そして、次に、コントローラ150は、小サイズの被処理媒体Sの連続処理における次の被処理媒体Sがあるか否かを判断する(S112)。コントローラ150は、次の被処理媒体Sがあると判断した場合は、S104に戻る。一方、コントローラ150は、S112において次の被処理媒体Sがないと判断した場合は、被処理媒体Sに対する表面処理動作のシーケンスを終了する(S111)。
【0070】
被処理媒体Sをシフトさせるごとに、コントローラ150は、シフトさせた被処理媒体Sの位置に合わせるために、被処理媒体Sをシフトさせた方向及び量に応じて、加熱パターンを平行移動させる制御を行う。
【0071】
以上の動作を行うことで、小サイズの被処理媒体Sを連続して処理する場合に、フィルム107の使用領域は図9に示すようになる。即ち、フィルム107の搬送方向の同一位置において、フィルム107の幅方向に奇数枚目と偶数枚目との2枚の被処理媒体Sに表面処理を施すことが可能となる。このように被処理媒体Sのシフトとフィルム107の巻き戻しを繰り返すことで、フィルム107の効率的な利用が可能となる。
【0072】
以上説明したように、本実施例では、表面処理装置100は、供給軸104から引き出されて巻き取り軸103に巻き取られて第1の方向に搬送されるフィルム107を有する。又、表面処理装置100は、フィルム107の面の上記搬送方向と略直交する方向における異なる領域を選択的に加熱することでフィルム107を介して被処理媒体Sの面を加熱する加熱手段102を有する。表面処理装置100は、被処理媒体Sを上記搬送方向に搬送されるフィルム107に接触させて同方向に搬送しながら加熱手段102によって加熱する処理を行う。
【0073】
そして、表面処理装置100は更に、フィルム107を、巻き取り軸103に巻き取られるように駆動すると共に、供給軸104に巻き戻されるように駆動することのできるフィルム駆動手段141、142を有する。表面処理装置100は更に、被処理媒体Sをフィルム107と接触させる前に上記フィルム107の搬送方向と略直交する方向に沿って移動させることのできる移動手段108を有する。表面処理装置100は更に、上記処理を行わせる制御手段151を有する。制御手段151は、フィルム107の上記搬送方向と略直交する方向の幅の半分よりも幅の小さい被処理媒体Sに連続して処理を行う場合に、次の動作を実行させる。即ち、フィルム駆動手段によるフィルム107の巻き戻しと、移動手段108による被処理媒体Sの上記フィルム107の搬送方向と略直交する方向に沿う移動とを実行させる。これにより、制御手段151は、フィルム107の上記搬送方向における同一領域内の該搬送方向と略直交する方向における異なる領域に被処理媒体Sを接触させて処理を行わせる。
【0074】
本実施例では、移動手段は、フィルム107と接触させる前に被処理媒体Sの斜行を補正するレジストローラ対181を有する。又、本実施例では、移動手段は、レジストローラ対181を上記フィルム107の搬送方向と略直交する方向に沿って移動させる移動駆動手段としてのレジストローラシフトモータ182を有する。そして、レジストローラ対181に挟持された被処理媒体Sを上記フィルム107の搬送方向と略直交する方向に沿って移動させる。又、本実施例では、加熱手段は、上記フィルム107の搬送方向と略直交する方向に沿って直線状に配置された複数の発熱体を有するサーマルヘッド102である。又、本実施例では、表面処理装置100は、記録材上にトナー像を形成しこのトナー像を加熱して記録材上に定着させる画像形成装置200に連結され、被処理媒体Sとして画像形成装置200においてトナー像が定着された記録材Pに処理を行う。
【0075】
本実施例によれば、巻き取り式のフィルムを圧接させて加熱する方法によりサイズの異なる被処理媒体の表面の表面性状を部分的に制御できる表面処理装置において、フィルムを効率的に使用してランニングコストを抑制することができる。
【0076】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例では表面処理装置、画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0077】
実施例1では、小サイズの被処理媒体Sに連続して表面処理を行う際に、フィルム107をその幅方向で2枚ずつの被処理媒体Sの表面処理に使用する例について説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、被処理媒体Sのサイズに応じて、フィルム107をその幅方向でより多くの被処理媒体Sの表面処理に使用することができる。
【0078】
本実施例では、被処理媒体Sの幅がフィルム107の幅の3分の1よりも小さい場合、例えば、幅が350mmのフィルム107を使用して、はがき(幅100mm)に連続して表面処理をする場合について説明する。
【0079】
本実施例では、フィルム107をその幅方向で3枚ずつの被処理媒体Sの表面処理に使用することができる。例えば、このサイズの被処理媒体Sを連続して処理する場合には、フィルム107の使用領域は図10に示すようになる。この場合、2枚目、5枚目、即ち、2+3(n−1)枚目(nは1以上の自然数)は被処理媒体Sのシフトを行わずに、フィルム107の幅方向の中央を使用する。そして、それ以外の被処理媒体Sはレジストローラ対181でシフトさせてから表面処理を行う。このように、本実施例では、2枚目、3枚目、5枚目、6枚目(即ち、フィルム107の幅方向における複数枚目)の被処理媒体Sの処理前に、フィルム107を巻き戻す。本実施例では、シフト量Xmmは、次式を満たす範囲で、フィルム107の幅方向の被処理媒体Sに表面処理を施す領域が重ならないようにラチチュードを持たせた量とする。
【0080】
【数2】

【0081】
このように被処理媒体Sのシフトとフィルム107の巻き戻しを繰り返すことで、更に効率的にフィルム107を使用することができる。
【0082】
実施例3
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。尚、本実施例において、実施例1の表面処理装置や画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0083】
実施例1、2では、表面処理装置100は画像形成装置200に連結されて、画像形成装置200において画像が形成された記録材Tが被処理媒体Sとして表面処理装置100に搬送されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、実施例1で説明したような画像形成装置200によって熱溶融性トナーで別途画像が形成済みの記録材Pを被処理媒体Sとして、表面処理装置100によって表面処理を行うこともできる。
【0084】
図11は、本発明に従う、画像形成装置200とは連結されていない個別の表面処理装置100の一例の模式的な断面図である。本実施例では、表面処理装置100には、別途画像形成済みの記録材Pなどとされる被処理媒体Sを積載するカセット112、カセット112から被処理媒体Sを一枚ずつ分離給送する供給ローラ113などが設けられる。カセット112から供給ローラ113によって給送された被処理媒体Sは、レジストユニット108のレジストローラ対181まで搬送される。又、本実施例では、表面処理装置100には、表面処理が施された後の被処理媒体Sを表面処理装置100の外部へ排出する排出ローラ対114、表面処理装置100の外部において排出された被処理媒体Sが積載される排出トレイ115が設けられる。被処理媒体Sのサイズに係る情報は、ユーザーにより操作部(図示せず)から入力される。被処理媒体Sのサイズに係る情報は、パーソナルコンピュータなどの外部装置から入力されてもよい。
【0085】
このような表面処理装置100にも、本発明を等しく適用することができ、実施例1、2と同様の効果が得られる。
【0086】
その他
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0087】
上述の実施例では、被処理媒体として、電子写真画像形成装置において、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の有色トナーを用いた4色プロセスで画像が形成された記録材を用いた。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0088】
例えば、被処理媒体として、電子写真画像形成装置において、上記4色の有色トナーと、色材を含まない樹脂主体の透明トナーとを用いた5色プロセスにより画像が形成された記録材を用いてもよい。この場合、例えば、図1の画像形成装置200の画像形成部210Y、210M、210C、210Bkと同様の構成の透明画像用の画像形成部を、中間転写ベルト207の画像転写面の移動方向の最上流に設ける。透明トナーとしては、例えば、顔料を含まず、主にポリエステル樹脂で構成されるものを用いることができる。又、透明トナーとしては、光透過性が高く、着色剤が実質的に入らない樹脂から成る、実質的に無色であり、少なくとも可視光を実質的に散乱することなく良く透過する粒子を好適に用いることができる。但し、透明トナーは、定着後に上述のように実質的に無色透明となるものであれば好適に用いることができ、定着前には無色透明でなくてもよく、例えば集合したときに白色に見えるようなものであっても構わない。例えば、透明トナーは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに分版後、印字率の低い部分に透明トナーを補い、記録材の全体をトナーで覆うように印字パターンを決定し出力することができる。これにより、被処理媒体の任意の場所の表面処理が可能となる。その他、一定量の透明トナーを記録材の全面に載せるなどしてもよい。
【0089】
又、例えば、被処理媒体として、上記4色及び5色プロセスに限らず、樹脂コーティングを施した記録材に4色プロセスにより画像が形成された記録材を用いてもよい。
【0090】
又、例えば、溶融熱転写記録、昇華熱転写記録、インクジェット記録などにより記録された記録材も同様に、被処理媒体として用いることができる。この場合も、熱可塑性樹脂で記録材の面を覆うことより、被処理媒体の全面の任意の場所の表面処理が可能となる。
【0091】
又、フィルムの幅方向で複数の領域を使用する順番は、上述の実施例のものに限定されるものではない。例えば、小サイズの被処理媒体に対する連続処理枚数などに応じて、フィルムを巻き戻す回数が少なくなるようにその順番を決定するなどしてもよい。
【0092】
又、上述の実施例では、被処理媒体の表面に部分的に光沢を付与する装置について説明した。一方、印刷物としては、特色として、金、銀などの金属質を表現することが求められることがある。サーマルへヘッドを用いた熱転写プリンタでは、金属色のインクとして、例えばフィルムに金属蒸着層を形成し、これを熱により転写することにより、金属質の画像を形成することが可能である。熱転写方式で使用するフィルムは、フィルム基材と、フィルム基材にコーティングされたインク層とを有する。インク層は剥離層を介してフィルム基材にコーティングされることがあり、又インク層の上には接着層が設けられることがある。本発明は、このようなフィルムに金、銀などの金属色のインクを蒸着したものなどを用い、サーマルヘッドで加熱することにより被処理媒体の表面に部分的に特色の画像を熱転写する装置にも適用することができる。この場合も、小サイズの被処理媒体に対する処理の際に、フィルムを効率的に使用してランニングコストを抑制することができる。本発明においては、このように被処理媒体の表面に部分的に金属色のインクを熱転写し、金属光沢などの金属質の表現を付与するなど、特色の画像を付与することも、被処理媒体の表面処理に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
100 表面処理装置
101 プラテンローラ
102 サーマルヘッド(加熱手段)
103 巻き取り軸
104 供給軸
105 分離ローラ
106 テンションローラ
107 フィルム
108 レジストユニット(移動手段)
181 レジストローラ
182 レジストローラシフトモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給軸から引き出されて巻き取り軸に巻き取られて搬送されるフィルムと、前記フィルムの面の前記搬送方向と略直交する方向における異なる領域を選択的に加熱することで前記フィルムを介して被処理媒体の面を加熱する加熱手段と、を有し、被処理媒体を前記搬送方向に搬送される前記フィルムに接触させて同方向に搬送しながら前記加熱手段によって加熱する処理を行う表面処理装置において、
前記フィルムを、前記供給軸から引き出されて前記巻き取り軸に巻き取られるように駆動すると共に、前記巻き取り軸から引き出されて前記供給軸に巻き戻されるように駆動することのできるフィルム駆動手段と、
被処理媒体を前記フィルムと接触させる前に前記フィルムの搬送方向と略直交する方向に沿って移動させることのできる移動手段と、
前記フィルムの前記搬送方向と略直交する方向の幅の半分よりも幅の小さい被処理媒体に連続して前記処理を行う場合に、前記フィルム駆動手段による前記フィルムの巻き戻しと、前記移動手段による被処理媒体の前記フィルムの搬送方向と略直交する方向に沿う移動とを実行させることで、前記フィルムの前記搬送方向における同一領域内の該搬送方向と略直交する方向における異なる領域に被処理媒体を接触させて前記処理を行わせる制御手段と、
を有する表面処理装置。
【請求項2】
前記移動手段は、前記フィルムと接触させる前に被処理媒体の斜行を補正するレジストローラ対と、前記レジストローラ対を前記フィルムの搬送方向と略直交する方向に沿って移動させる移動駆動手段と、を有し、前記レジストローラ対に挟持された被処理媒体を前記フィルムの搬送方向と略直交する方向に沿って移動させる請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記フィルムの搬送方向と略直交する方向に沿って配置された複数の発熱体を有するサーマルヘッドである請求項1又は2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
記録材上にトナー像を形成しこのトナー像を加熱して記録材上に定着させる画像形成装置に連結され、被処理媒体として前記画像形成装置において前記トナー像が定着された記録材に前記処理を行う請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−171298(P2012−171298A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37717(P2011−37717)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】