説明

表面処理酸化チタン

【課題】本発明は、極性基を導入しなくても帯電特性を有することができ、さらに逆帯電粒子と混合し、画像表示媒体等として使用しても、逆帯電粒子と凝集することない表面処理酸化チタンを提供する。
【解決手段】表面処理酸化チタンの帯電特性は、シランカップリング剤に由来するケイ素原子の縮合状態及び粒子の表面処理に由来するケイ素原子の縮合状態に大きく影響されるため、これらのケイ素原子の縮合状態をコントロールすることで、粒子を正電荷に帯電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン粒子の表面にポリマーを結合した表面処理酸化チタン、電気泳動分散液及び画像表示媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体中に分散している荷電粒子が、電気信号(外部電場)に応答して、前記液体中を移動する現象は電気泳動と呼ばれる。この現象を利用した電気泳動表示装置には、近年表示装置の情報処理能力の向上に伴い、映像を素速く表示する応答性や、より鮮明な映像を表現する良好なコントラストが求められている。
【0003】
顔料粒子やカーボン粒子の帯電極性を制御する方法として、これらの粒子表面を被覆する重合体中に、カチオン性またはアニオン性の極性基を導入する方法が知られている。例えば、重合体を顔料粒子に化学的に結合させたり、粒子の周囲に架橋することによって結合させた重合体中に、荷電基又は荷電可能基を組み込むことによって、粒子の帯電性が制御された重合体被覆粒子が提案されている(特許文献1)。また、酸化チタン粒子に被覆する高分子中に、アミノ基含有モノマーを構成成分として含有させることにより、カチオン性が付与された電気泳動粒子が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2004−526210号公報
【特許文献2】特開2008−287102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のように、粒子に結合された重合体に帯電制御能を有する極性基を導入すると、この電気泳動粒子と、逆帯電特性を有する電気泳動粒子(以下、逆帯電粒子という)を混合したときに、重合体中の極性基が、粒子間の電気的な引力により逆帯電粒子にイオン結合し易くなるため、粒子同士が凝集するという問題があった。このような電気泳動粒子を用いた画像表示媒体では、優れた表示応答性や明瞭なコントラスト等、近年要求されているハイレベルな表示特性を示すことは困難であった。
【0006】
このような状況の下、本発明では、極性基を導入しなくても帯電特性を制御することができ、さらに逆帯電粒子と混合し、画像表示媒体等として使用しても、逆帯電粒子と凝集を起こしにくい表面処理酸化チタンを提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酸化チタン粒子とポリマーとを、シランカップリング剤を介して結合させることによって得られる表面処理酸化チタンの帯電特性は、シランカップリング剤に由来するケイ素原子の縮合状態及び粒子の表面処理に由来するケイ素原子の縮合状態に大きく影響されること、並びにこれらのケイ素原子の縮合状態をコントロールすることにより、粒子を正電荷に帯電させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明に係る表面処理酸化チタンは、トリアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤により、表面にポリマーが結合された酸化チタン粒子であって、固体29SiNMRスペクトル(CP/MAS法)における(T1+T2)/(T+Q)比が、0.20以上0.70未満であることを特徴とする(T1、T2、T3は、NMRチャートを、化学シフトの中心値が、T1:−48ppm、T2:−57.5ppm、T3:−67ppmの各ピークに波形分離した際のそれぞれのピーク強度(面積)、Q1、Q2、Q3、Q4は、Q1:−83ppm、Q2:−92.5ppm、Q3:−102ppm、Q4:−111.5ppmの各ピークに波形分離した際のそれぞれのピーク強度(面積)であり、Tは、T1〜T3までの各シグナル強度の総和、Qは、Q1〜Q4までの各シグナル強度の総和を表す)。本発明の表面処理酸化チタンは、酸化チタン粒子の表面が、シリカ処理されていないことが好ましく、ポリマーの数平均分子量(Mn)は30,000〜200,000であることが好ましい。さらに、表面処理酸化チタンは、ポリマーが帯電性基を含まないことが好ましく、ポリマーが(メタ)アクリル系モノマーを含む成分から形成されているとよい。加えて、ポリマーは、下記式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、nは自然数、xは自然数を表す)で示されるモノマーを含む成分から形成されていることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明には前記表面処理酸化チタンを、非極性溶媒中に分散してなる電気泳動分散液も包含される。前記非極性溶媒は、シリコーンオイル類であることが好ましい態様である。また本発明には、少なくとも一方が光透過性である一対の導電層間に、前記電気泳動分散液を含む層が形成されている画像表示媒体も包含される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、極性基を導入しなくても帯電特性を発揮することができる表面処理酸化チタンを得ることができる。また、ポリマー中に極性基を導入しないため、本発明の表面処理酸化チタンと逆帯電粒子とを混合し、画像表示媒体等を製造しても、酸化チタンが逆帯電粒子と凝集せず、優れた電気泳動性及び分散安定性を発揮することができる。それゆえ、画像表示媒体は、電気的な信号に素速く応じることができ、さらにより鮮明なコントラストを表現できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は調製例A−1で得られた表面処理酸化チタンから測定された固体29SiNMRスペクトル、各シグナルの分離波形、及び波形分離後のベースラインを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪表面処理酸化チタン≫
本発明の表面処理酸化チタンとは、基材となる酸化チタン粒子の表面に、シランカップリング剤を介してポリマーが結合された粒子をいう。本発明の表面処理酸化チタンは、酸化チタンとポリマーがシランカップリング剤を介して結合されてさえいれば、その製造方法は限定されるものではない。例えば、予め酸化チタン粒子をシランカップリング剤により処理し、その後粒子の周囲にポリマーをグラフトさせて表面処理酸化チタンを製造する方法が好適に採用できる。
【0015】
<酸化チタン粒子>
基材となる酸化チタン粒子の種類は特に限定されるものではない。一般に白色系の顔料として使用されるものであれば、例えば、ルチル型またはアナターゼ型のいずれも好適に使用できる。酸化チタンの光触媒活性による着色剤の退色等を考慮すると、光触媒活性の低いルチル型の酸化チタンが好ましく使用できる。光触媒活性を低減させるために、酸化チタン粒子の表面は、通常シリカ処理、アルミナ処理、シリカ−アルミナ処理、ジルコニウム−アルミナ処理等が施されている。この表面に存在するシリカやアルミナは、水酸基と結合し、−Si−OH基、−Al−OH基を形成しており、水酸基はシランカップリング剤との反応点となる。しかし粒子の表面処理に由来するケイ素原子は、縮合反応が進むと強い負帯電性を示すため、本発明では、酸化チタン粒子の表面が、シリカ処理されていないことが好ましい。特に粒子表面は、アルミナ処理、ジルコニウム−アルミナ処理等が施されていることが好ましい。
【0016】
酸化チタン粒子の表面がシリカ処理されると、酸化チタン粒子表面のシリカに結合した水酸基とシランカップリング剤の反応により、粒子表面に存在するケイ素原子の周囲には、結合した水酸基の数と同数の置換パターン(縮合状態)が生じる。
【0017】
シリカ処理のケイ素原子の縮合状態に由来する置換パターンを、Qサイトと称す。本発明では、ケイ素原子に結合する1つの水酸基がアルコキシシリル基と縮合して形成される縮合状態を、Q1サイトとする。同様に、2つの水酸基がアルコキシシリル基と縮合して形成される縮合状態をQ2サイト、3つの水酸基がアルコキシシリル基と縮合して形成される縮合状態をQ3サイト、4つの水酸基がアルコキシシリル基と縮合して形成される縮合状態をQ4サイトとする。
【0018】
粒子表面のケイ素原子の縮合状態は、固体29SiNMRスペクトルの測定によって確認することができる。固体29SiNMRスペクトルの測定を行うと、Q1サイトに対応するケイ素原子は−83ppm付近に、Q2サイトに対応するケイ素原子は−92.5ppm付近に、Q3サイトに対応するケイ素原子は−102ppm付近に、Q4サイトに対応するケイ素原子は−111.5ppm付近に各々ピークトップ位置が測定される。なお、Q1〜Q4までの各シグナル強度(ピーク面積)の総和を、Qで表す。
【0019】
シリカ層は強い負帯電性を有するため、特にQ3サイトやQ4サイトの構成比率が高い粒子は、正帯電性を発現することが困難になる。一般に、粒子表面がシリカ処理された酸化チタン粒子は、1つのケイ素原子が4つの酸素原子に囲まれた構造を有しているため、Q3サイトやQ4サイトに相当する縮合状態を形成しやすい。この高縮合状態のQ3やQ4の形成を抑制するため、本発明においては、表面がシリカ処理されていない粒子を採用することが好ましい。
【0020】
酸化チタン粒子の平均粒子径は、好ましくは0.05μm以上であり、また、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.8μm以下である。平均粒子径が小さすぎると、充分な色度が得られず、コントラストが低下して、表示が不鮮明になることがある。逆に、平均粒子径が大きすぎると、粒子自体の着色度を必要以上に高くする必要があり、酸化チタン粒子の使用量が増大したり、表示のために電圧を印加した部分で、電気泳動粒子の速やかな移動が困難となり、その応答速度が低下したりすることがある。
【0021】
なお、酸化チタン粒子の平均粒子径は、市販品を利用する場合には、その公称値を採用し、公称値が明らかでない場合や自ら調製した場合には、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所社製「LA−910」)を用いて、体積平均粒子径を測定すればよい。
【0022】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤と酸化チタン粒子を反応させる際に、シランカップリング剤は、酸化チタン粒子だけでなく、他のシランカップリング剤とも反応する。このシランカップリング剤同士の反応により、シランカップリング剤中のケイ素原子の周囲には、加水分解性基の数と同数の置換パターン(縮合状態)が生じる。
【0023】
トリアルコキシシリル基の縮合状態に由来する置換パターンは、一般にTサイトと称される。トリアルコキシシリル基のうち、1つのアルコキシシリル基が他のアルコキシシリル基と縮合して形成される縮合状態を、T1サイトとする。同様に、トリアルコキシシリル基のうち、2つのアルコキシシリル基が他のアルコキシシリル基と縮合して形成される縮合状態をT2サイトとし、トリアルコキシシリル基のうち、3つのアルコキシシリル基が他のアルコキシシリル基と縮合して形成される縮合状態をT3サイトとする。本発明では、この3種の置換パターン(縮合状態)に着目した。なお、T1〜T3までの各シグナル強度(ピーク面積)の総和を、Tで表す。
【0024】
アルコキシシリル基の縮合状態は、例えば固体29SiNMRスペクトルの測定によって確認することができる。固体29SiNMRスペクトルの測定を行うと、T1サイトに対応するケイ素原子は−48ppm付近に、T2サイトに対応するケイ素原子は−57.5ppm付近に、T3サイトに対応するケイ素原子は−67ppm付近に各々化学シフトのピークトップ位置が測定される。このT1サイトやT2サイトに対応するケイ素原子は、負帯電性を有するシリカ層を形成し難い。そのため本発明では、T1サイト及びT2サイトの存在比率を高めるため、(T1+T2)の(T+Q)に対するシグナル比(相対強度)を、0.20以上とし、より好ましくは0.25以上とし、さらに好ましくは0.35以上とする。また、上限は0.70未満であり、より好ましくは0.60以下である。なお、各サイトのシグナル比は、実施例の欄に詳述される算出方法に基づき求めることができる。
【0025】
好ましく使用できるシランカップリング剤に特に制限はないものの、本発明ではシランカップリング剤を酸化チタン粒子表面に導入した後にポリマーをグラフトさせるため、シランカップリング剤としては、末端にビニル基や(メタ)アクリロイル基等の重合性基を含有するものが特に好ましく使用できる。重合性基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3−(トリエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート等のビニル基または(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤を好ましく使用することができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。シランカップリング剤の使用量に特に制限はないものの、好ましくは酸化チタン粒子に対し0.5〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%である。シランカップリング剤の量が前記範囲内であれば、ポリマーと酸化チタン粒子を強固に結合しながら、T3サイトの生成を抑制することができる。
【0026】
本発明では酸化チタン粒子とシランカップリング剤を加水分解反応させる際に、触媒を使用してもよい。触媒としては、シランカップリング剤の加水分解を誘発できるものであれば特に限定されず、酸性触媒も塩基性触媒も共に好ましく使用できる。酸性触媒としては、塩酸、硝酸、酢酸等が例示でき、塩基性触媒としては、アンモニア、NaOH、KOH、アルコールアミン、アルキルアミン等が例示できる。
【0027】
なお、酸化チタン粒子とシランカップリング剤との反応における加熱温度は、用いる溶剤の種類に応じて適宜調整すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上であり、また、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下である。加熱時間は、酸化チタン粒子の使用量に応じて適宜調整すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、また、好ましくは10時間以内、より好ましくは8時間以内である。
【0028】
シランカップリング剤で処理した後、処理された酸化チタン粒子は、洗浄してもよい。洗浄を行う方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、処理された酸化チタン粒子を適当な溶剤に分散し、遠心分離を行い、上澄み液を除去するという操作を少なくとも1回、好ましくは2回以上繰り返せばよい。
【0029】
<ポリマー>
ポリマーで酸化チタン粒子を被覆すると、酸化チタン粒子の分散媒中への分散性及び耐湿性が向上するという効果が得られる。ポリマーのグラフト方法は、特に限定されるものではないが、本発明では、シランカップリング剤により予め酸化チタン粒子を処理しておき、このシランカップリング剤処理された酸化チタン粒子にポリマーをグラフトさせることが好ましい。
【0030】
ポリマーの数平均分子量は、20,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは45,000〜170,000、さらに好ましくは80,000〜130,000である。ポリマーの数平均分子量が20,000未満では、電気泳動分散液中での表面処理酸化チタンの分散安定性が悪く、粒子が沈降しやすくなるため好ましくない。なお、ポリマーの数平均分子量は、シランカップリング剤部分を加水分解し、粒子とポリマーを分離して得られるポリマーを用いて測定される。詳細な測定方法については、実施例の欄で後述する。
【0031】
ポリマーの分子量を増大させ、電気泳動分散液中での表面処理酸化チタンの分散性を改善するため、本発明ではポリマーの原料には、マクロモノマーや長鎖アルキル基を有するモノマー等の高分子量のモノマーを使用することが好ましい。
【0032】
マクロモノマーとしては、例えば、シリコーン系マクロモノマー、(メタ)アクリル系マクロモノマー、スチレン系マクロモノマーが挙げられる。中でも、シリコーン系マクロモノマーは、分子中にポリシロキサン骨格を有しており、シランカップリング剤との親和性に優れるため好ましい。ただし、ポリシロキサン部分が反応性を有していると、T3サイトの増加に繋がり好ましくないため、側鎖は非反応性となっていることが好ましく、ポリマーをグラフトする際のシランカップリング剤とモノマーとの反応阻害を受け難いことから、側鎖はメチル基であることが特に好ましい。このようなマクロモノマーを具体的に例示すれば、下記式(I):
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基)で示されるモノマーであることが好ましい。得られるポリマーの分子量を増大させるため、xは、自然数であることが好ましく、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは2〜6である。同様の理由により、nは自然数であることが好ましく、より好ましくは1〜130、さらに好ましくは5〜70である。尚、上記マクロモノマーは、末端が(メタ)アクリロイル基であるため、(メタ)アクリル系マクロモノマーと言うこともできる。
【0035】
長鎖アルキル基を有するモノマーとしては、長鎖アルキル基の炭素数が5〜30である(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、より好ましくは7〜25の(メタ)アクリル系モノマーである。長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを具体的に例示すると、例えば、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、アラキル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの長鎖アルキル基を有するモノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、長鎖アルキル基を有するモノマーは、前記マクロモノマーと併用してもよい。
【0036】
好適な分子量を有するポリマーを形成するため、マクロモノマー及び/または長鎖アルキル基を有するモノマーの量は、反応原料100質量%中、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上であり、上限は100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以下である。マクロモノマーと長鎖アルキル基を有するモノマーを併用した場合は、マクロモノマーと長鎖アルキル基を有するモノマーの合計量が、前記範囲内であることが好ましい。
【0037】
ポリマーを構成するその他のモノマーとしては、例えば、上記例示以外の(メタ)アクリレート系モノマーやスチレン系モノマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類が好ましい。また、スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられ、スチレンが好ましい。これらのモノマーは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
モノマーの使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、シランカップリング剤処理された酸化チタン粒子100質量部に対して、好ましくは100質量部以上であり、また、好ましくは400質量部以下、より好ましくは300質量部以下であり、さらに好ましくは200質量部以下である。モノマーの使用量が少なすぎると、酸化チタン粒子の表面に充分な量のポリマーをグラフトできないことがある。逆に、モノマーの使用量が多すぎると、溶液中での反応が優先的に起こりやすくなることから、やはり酸化チタン粒子の表面に充分な量のポリマーをグラフトできないことがある。
【0039】
本発明では、ポリマーを形成する際に、重合開始剤が用いられる。重合開始剤は、特に限定されるものではないが、例えば、アゾ系重合開始剤;過酸化物系重合開始剤;等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの重合開始剤のうち、入手が比較的容易であり、取り扱い性に優れることから、アゾ系重合開始剤が好適である。
【0040】
アゾ系重合開始剤の具体例としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ビス(4−ヒドロキシブチル)2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。過酸化物系重合開始剤の具体例としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジン等が挙げられる。重合開始剤は、全モノマー100質量部に対し、0.05〜5質量部添加することが好ましく、より好ましくは、0.10〜3質量部である。重合開始剤の量が増加するにつれ、得られるポリマーの数平均分子量が小さくなる傾向があるため好ましくない。
【0041】
さらに、必要に応じて、分子量を調整する目的で、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、四塩化炭素などの連鎖移動剤や調節剤を用いてもよい。連鎖移動剤や調節剤の使用量は、要求されるポリマーの分子量などから適宜決定されるべきものであり、特に限定されるものではないが、単量体成分100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、10質量部以下、より好ましくは0.02質量部以上、5質量部以下の範囲内である。
【0042】
本発明の製造方法では、酸化チタン粒子のシランカップリング剤処理や、シランカップリング剤処理された酸化チタン粒子を、モノマーの存在下で重合する際に溶剤が用いられる。溶剤としては、特に限定されるものではないが、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール等のグリコール系溶剤;ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。また、溶質(例えば、シランカップリング剤、モノマーなど)の溶解性などを考慮して、各工程の途中または工程間で、溶剤を置き換えてもよい。
【0043】
ポリマーの重合温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、また、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下である。重合時間は、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、また、好ましくは24時間以内、より好ましくは12時間以内である。
【0044】
表面処理酸化チタンのポリマーは、酸化チタン粒子に対し好ましくは1〜15質量%、より好ましくは5〜13質量%、さらに好ましくは7.5〜11質量%付加されていることが望ましい。また、表面処理酸化チタンの体積平均粒子径は、0.1〜2.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0μmである。
【0045】
≪電気泳動分散液≫
表面処理酸化チタンは、単離してもよいし、電気泳動表示用分散液に用いる分散媒と同じ種類の分散媒を酸化チタン粒子とポリマーとの反応溶媒として用いた場合には、反応後に得られた分散液を、そのままで、あるいは適宜分散媒を添加して充分に混合するなどしてから、電気泳動分散液の製造に用いればよい。なお、表面処理酸化チタンを単離するには、例えば、反応後に得られた分散液を遠心分離し、上澄み液は捨てて沈降物のみを表面処理酸化チタンとして回収すればよい。さらに、こうして得られた表面処理酸化チタンを分散媒に再分散し、遠心分離し、そして沈降物のみを回収するという操作を少なくとも1回、好ましくは複数回、より好ましくは3回またはそれ以上行って、表面処理酸化チタンを洗浄してもよい。遠心分離の条件は、表面処理酸化チタンに応じて適宜設定すればよく、特に限定されることはない。
【0046】
<分散媒>
表面処理酸化チタンを分散させる分散媒としては、好ましくは非極性溶媒が用いられる。分散液に用いる非極性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどのベンゼン系炭化水素などの芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカンなどのパラフィン系炭化水素、アイソパー(Isopar、エクソンモービルケミカル社製)などのイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセンなどのオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリンなどのナフテン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤;などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの非極性溶媒のうち、有害性が低く且つポリマーとの相溶性が良いことから、シリコーンオイル類を使用することが好ましい。
【0047】
分散液に用いる分散媒には、必要に応じて、染料、分散剤、電荷制御剤、粘性調整剤などを添加してもよい。
【0048】
本発明には、少なくとも一方が光透過性である一対の導電層間に、前記電気泳動分散液を含む層が形成されている画像表示媒体も包含される。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0050】
<ポリマーの分子量の測定方法>
調製例で得られた表面処理酸化チタン2部を、水酸化カリウム1.7部をメタノール28.5部に溶解した溶液に混合し、蓋をした容器に入れて1時間超音波分散を行った。得られた分散液を、濁りのない透明な液になるように濾過して、フラスコに濾液5部を採取し、ブタノール25部を添加した。得られた溶液を、0℃で48時間保管した後、析出した塩をデカントで除去し、さらに分液ロートに移し変えてイオン交換水100部を添加して混合洗浄を行った。その後液を分液することにより、イオン交換水と水溶した成分を除去した。
次いで、得られた溶液に硫酸ナトリウム10部を添加し混合した後に、デカントすることにより液のみをフラスコに取り出した。フラスコを80℃の温水に漬け、エバポレーターで重量が半分になるまで濃縮し、ポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液に、テトラヒドロフラン(THF)を加え、0.2%の濃度となるように試料を調製した。この試料を用い、下記の方法によりポリマーの分子量を測定した。
【0051】
ポリマーの数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィを用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定条件は以下の通りである。
1)ゲル浸透クロマトグラフィ:東ソー社製「高速GPCシステム HLC−8220GPC」
2)カラム:東ソー社製「TSKgel G5000HXL」及び「TSKgel GMHXL−L」の連結カラム(直列接続)
3)溶離液:THF
4)送液量:1.0mL/min
5)標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製「PS−オリゴマーキット」)
6)カラム温度:40℃
7)サンプル注入量:200μL
8)検出器:示差屈折計
【0052】
<ポリマー付加量の測定方法>
表面処理酸化チタンに結合されているポリマーの量(ポリマー付加量(%))を、熱分析装置(ブルカー・エイエックスエス社製「TG−DTA2000」)を用いて測定した。測定は、調製例で得られた約20mgの表面処理酸化チタンを用いて、窒素雰囲気下、昇温速度:20℃/min、加熱温度範囲:室温〜800℃で行った。
尚、ポリマー付加量(%)は、加熱温度範囲180〜630℃における減少した試料質量を測定し、下記式により求めた。
【0053】
【数1】

【0054】
<粒子径の測定方法>
粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製「
LA−910」)を用いて測定した。
【0055】
<固体29SiNMRスペクトルの測定及び各シグナルの強度(面積)の算出方法>
調製例で得られた表面処理酸化チタンの固体29Si交差分極マジック角(CP/MAS)NMRスペクトルは、7mm二重共鳴MASプローブを備えた分光計(ブルカー・バイオスピン社製「Avance−400」)を用いて測定した。
得られたスペクトルを、NMRスペクトル解析ソフト(Advanced Chemistry Development社製「SpecManager」)を用いて波形分離し、シグナル比を求めた。測定されたNMRスペクトルを波形分離する際には、フィッティングに用いる擬Voigt関数の初期値として、化学シフトのピークトップ位置を、Tサイトとしては、−48ppm(T1に相当)、−57.5ppm(T2に相当)、−67ppm(T3に相当)の3点に、Qサイトとしては、−83ppm(Q1に相当)、−92.5ppm(Q2に相当)、−102ppm(Q3に相当)、−111.5ppm(Q4に相当)の4点に設定し、このときのフィッティング範囲を−120ppm〜−35ppmとした。非線形最小二乗法により各シグナルを分離(フィッティング)し、各シグナルに対応する強度(面積)を求めた。なお、表中の「T」は、T1〜T3までの各シグナル強度の総和を意味し、「Q」は、Q1〜Q4までの各シグナル強度の総和を意味する。
【0056】
<粒子沈降速度の測定>
分散液の沈降速度は、以下のようにして求めた。まず、表面処理酸化チタンを、電気泳動分散液と同じ分散媒に、質量基準で40%になるように添加し、超音波分散により充分に分散させた。この分散液0.4mLをポリカーボネート製の測定セルに充填し、遠心沈降式の沈降速度測定装置(エル・ウー・エム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(L.U.M.GmbH)社製「LUMiSizer612」)を用いて、次の条件で測定した。回転速度:2,000min-1、測定時間:40分、測定間隔:10秒、ライトファクター:白1、黒6、閾値(界面と定義する透過率)20%。
【0057】
<反射率の測定方法>
実施例で得られた画像表示媒体の両電極間に+10Vまたは−10Vの直流電圧を0.4秒間印加して、白表示または黒表示をさせ、各表示の反射率をマクベス反射濃度計(グレタグマクベス社製「RD−914」)で測定した。なお、白表示および黒表示の反射率は、極性を切り替えて電圧を印加することにより別々に測定した。
【0058】
調製例A−1
1.シランカップリング剤処理された酸化チタンの調製
マヨネーズ瓶に、メタノール100部、表面をアルミナで処理された酸化チタン100部(石原産業社製「タイペーク(登録商標)CR50」)、直径0.5mmのジルコニアビーズを入れ、ペイントシェーカーで1時間分散した後、メタノール110部で希釈し、ジルコニアビーズを金網(300番SUSメッシュ)で除去した。得られた分散液を、攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えたセパラブルフラスコに入れて、更にメタノール20部を入れて、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、シランカップリング剤6部(3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、信越シリコーン社製「KBM−503」)、酢酸0.3部、脱イオン水0.8部を10分間かけて滴下口より滴下し、1時間攪拌した。
次いで、80℃まで徐々に昇温し、分散液の固形分濃度が70%になるまで、溶媒を留去した。その後、フラスコ内の温度が30℃になるまで冷却し、濃縮された分散液を、50℃で12時間乾燥させた。得られた固形物を乳鉢で解砕し、粉末状にしてから、120℃で30分間の乾燥処理を行った。
得られた粉末状固形物に対して、質量比で4倍の量のメタノールを混合し、3000min-1で40分間遠心分離を行った。上澄みを除去する洗浄操作を2回行い、さらに沈殿物を50℃で12時間乾燥させ、乳鉢で解砕することによりシランカップリング剤処理された酸化チタンを得た。
【0059】
2.表面処理酸化チタンの調製
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、酢酸エチル72部を入れ、攪拌しながら、前記工程で得られたシランカップリング剤処理された酸化チタン100部を加えた。攪拌を続けながら超音波分散を1時間行った。
次いで、窒素ガスを導入し、フラスコ内が還流状態になる82℃まで加熱して、3−メタクリロキシプロピルジメチルポリシロキサン(JNC社製「サイラプレーン(登録商標)FM−0711」)60部を、滴下口より一括投入し、さらに重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.1部と、酢酸エチル7部を混合した溶液を滴下口より一括投入した。投入後も還流状態を維持して攪拌を続けた。
次いで、サイラプレーンFM−0711を90部、1時間かけて滴下口より滴下し、同時に2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.2部と、酢酸エチル11部を混合した溶液を、1時間かけて滴下口より滴下した。滴下後も還流状態を維持して攪拌を続け、4時間経過した後に、酢酸エチル45部を滴下口より一括投入し、フラスコ内温が30℃になるまで冷却した。
【0060】
次に、得られた分散液にヘキサン300部を添加し、均一になるように混合した。この分散液を遠沈管に入れ、3000min-1の速度で60分間遠心分離を行った。上澄み液を捨て、残った固形物に、メチルエチルケトン300部を添加し、同条件で混合、遠心分離及び上澄み液の除去を行った後、固形物を70℃で12時間乾燥させ、表面にポリマーが付加された表面処理酸化チタンを得た。得られた表面処理酸化チタンに付加されたポリマーの数平均分子量(Mn)及びポリマー付加量、並びに表面処理酸化チタンのシグナル強度をそれぞれ求めた。
【0061】
調製例A−2
第1工程のシランカップリング剤の量及び触媒の添加量を表1に記載のように変更した以外は、調製例A−1と同様の方法により、表面処理酸化チタンを得た。
【0062】
調製例A−3
第1工程のシランカップリング剤の量を表1に記載のように変更した以外は、調製例A−1と同様の方法により、表面処理酸化チタンを得た。
【0063】
調製例A−4
第1工程の酸化チタン粒子を、表面をジルコニウム−アルミナで処理された酸化チタン(石原産業社製「タイペーク(登録商標)CR97」)に変更し、また脱イオン水の量及び触媒の添加量を表1に記載のように変更した以外は、調製例A−1と同様の方法により、表面処理酸化チタンを得た。
【0064】
調製例A−5
第2工程のポリマー形成原料を、ラウリルメタクリレート(LMA)に変更した以外は、調製例A−2と同様の方法により、表面処理酸化チタンを得た。
【0065】
調製例A−6
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、酢酸エチル162部を入れ、攪拌しながら、調製例A−2の第1工程で得られたシランカップリング剤処理された酸化チタン100部を加えた。攪拌を続けながら超音波分散を1時間行った。
次いで、窒素ガスを導入し、フラスコ内が還流状態になる82℃まで加熱して、3−メタクリロキシプロピルジメチルポリシロキサン(JNC社製「サイラプレーン(登録商標)FM−0711」)100部を、1時間かけて滴下口より滴下し、同時に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5部と、酢酸エチル18部を混合した溶液を、1時間かけて滴下口より滴下した。滴下後も還流状態を維持して攪拌を続け、4時間経過した後に、酢酸エチル45部を滴下口より一括投入し、フラスコ内温が30℃になるまで冷却した。
次に、得られた分散液にヘキサン300部を添加し、均一になるように混合した。この分散液を遠沈管に入れ、3000min-1の速度で60分間遠心分離を行った。上澄み液を捨て、残った固形物に、メチルエチルケトン300部を添加し、同条件で混合、遠心分離及び上澄み液の除去を行った後、固形物を70℃で12時間乾燥させ、表面にポリマーが付加された表面処理酸化チタンを得た。得られた表面処理酸化チタンに付加されたポリマーの数平均分子量(Mn)及びポリマー付加量、並びに表面処理酸化チタンのシグナル強度をそれぞれ求めた。
【0066】
調製例A−7〜8
第2工程のポリマー形成原料の量、並びに重合開始剤の種類及び量を表1に記載のように変更した以外は、調製例A−2と同様の方法により、表面処理酸化チタンを得た。
【0067】
比較調製例A’−1
第1工程の酸化チタン粒子を、表面をシリカ−アルミナで処理された酸化チタン(石原産業社製「タイペーク(登録商標)CR90」)に変更した以外は、調製例A−1と同様の方法により、表面処理酸化チタンを得た。
【0068】
比較調製例A’−2
第1工程の脱イオン水の量、触媒の種類及び添加量を表1に記載のように変更した以外は、比較調製例A’−1と同様の方法により、表面処理酸化チタンを得た。
【0069】
3.黒粒子の調製
調製例B−1
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えたセパラブルフラスコに、メタノール210部、シリカ処理されたチタンブラック90部(三菱マテリアル社製「チタンブラックSC−13M」)、及び3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート6部を入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、25%アンモニア水10部を滴下口より滴下した。1時間攪拌を続けた後、徐々に70℃まで昇温し、メタノールを留去した。濃縮された分散液を、120℃で5時間乾燥させ、黒粒子前駆体粉末を得た。
次に、攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコに、酢酸エチル117部を入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、黒粒子前駆体粉末100部を入れた後、フラスコ内温を80℃まで加熱した。次いで、サイラプレーンFM−0711を150部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.3部を混合した溶液を滴下口より1時間かけて滴下した。滴下後も、同温度で4時間加熱・攪拌を続け、黒粒子分散液を得た。
得られた黒粒子分散液に、ヘキサン300部を加え、30分間攪拌した後、3000min-1の速度で1時間遠心分離を行った。
上澄み液を捨て、残った固形物に、再度ヘキサン300部を加え、上記と同条件で遠心分離を行った。この洗浄操作を更に1回行った後、残った固形物を50℃で12時間乾燥させ、黒色粉末を得た。
次いで、攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、得られた黒色粉末30部、シリコーンオイル70部(信越シリコーン社製「KF−96L−2cs」)を入れ、攪拌しながら、超音波分散処理を1時間行い、負帯電性を有するポリマー付加黒粒子の分散液(B−1)を得た。得られた分散液の不揮発分は30.1%、粒子径は0.36μmであった。
【0070】
調製例B−2
サイラプレーンFM−0711の代わりに、ラウリルメタクリレート(LMA)150部を、さらにシリコーンオイルの代わりに、イソパラフィン系溶剤70部(エクソンモービルケミカル社製「アイソパー(登録商標)G」)を使用したこと以外は、調製例B−1と同様の製造方法により、負帯電性を有するポリマー付加黒粒子の分散液(B−2)を得た。得られた分散液の不揮発分は30.1%、粒子径は0.36μmであった。
【0071】
実施例1
攪拌機、温度計及び冷却管を備えたセパラブルフラスコに、調製例A−1で得られた表面処理酸化チタン50部、シリコーンオイル(信越シリコーン社製「KF−96L−2cs」)60部を入れ、攪拌しながら超音波分散処理を1時間行い、表面処理酸化チタンの分散液を得た。得られた分散液を用いて粒子径及び沈降速度を測定した。
【0072】
次いで、攪拌機、冷却管及び窒素ガス導入口を備えたセパラブルフラスコに、得られた表面処理酸化チタンの分散液90部、調製例B−1で得られたポリマー付加黒粒子分散液(B−1)10部を入れ、窒素ガスを導入し、攪拌しながら、超音波分散処理を30分間行い、画像表示用の白/黒粒子混合分散液を得た。
次に、ITO膜を有するガラス板のITO面上に、50μm厚PETフィルムで分散液を入れられるように堰を作り、得られた白/黒粒子混合分散液をPETフィルムの堰の中に注入し、もう1枚のITO膜を有するガラス板をITO面が対向するように上から被せて画像表示媒体とした。下部ITO電極を基準にして、上部ITO電極に−10Vを印加した場合と、+10Vを印加した場合の上面の変化、及び上面の反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
実施例2〜8、比較例1〜2
表面処理酸化チタンとして調製例A−2〜A−8、比較調製例A’−1〜A’−2で得られたものを用い、ポリマー付加黒粒子分散液、及び分散液の溶媒を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法により、画像表示媒体を製造し、ITO電極上面の変化、及び上面の反射率を測定した。
【0074】
【表1】

【0075】
図1に示される固体29SiNMRスペクトルの分離波形及び実施例1〜8の(T1+T2)/(T+Q)比より、本発明の表面処理酸化チタンであれば、T1サイト及びT2サイトの存在比率を高めることができる。すなわち、実施例1〜8の表面処理酸化チタンは(T1+T2)/(T+Q)比が好適範囲に属するため、正に帯電した。しかし、比較例1〜2では、Qサイトの存在比が高く、(T1+T2)/(T+Q)比が本発明の範囲外であるため、粒子は負に帯電した。尚、実施例1及び3のQサイト値は操作上の誤差である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリアルコキシシリル基を有するシランカップリング剤により、表面にポリマーが結合された酸化チタン粒子であって、
固体29SiNMRスペクトル(CP/MAS法)における(T1+T2)/(T+Q)比が、0.20以上0.70未満であることを特徴とする表面処理酸化チタン。
(T1、T2、T3は、NMRチャートを、化学シフトの中心値が、T1:−48ppm、T2:−57.5ppm、T3:−67ppmの各ピークに波形分離した際のそれぞれのピーク強度(面積)、
Q1、Q2、Q3、Q4は、Q1:−83ppm、Q2:−92.5ppm、Q3:−102ppm、Q4:−111.5ppmの各ピークに波形分離した際のそれぞれのピーク強度(面積)であり、
Tは、T1〜T3までの各シグナル強度の総和、Qは、Q1〜Q4までの各シグナル強度の総和を表す。)
【請求項2】
酸化チタン粒子の表面が、シリカ処理されていない請求項1に記載の表面処理酸化チタン。
【請求項3】
ポリマーの数平均分子量(Mn)が20,000〜200,000である請求項1または2に記載の表面処理酸化チタン。
【請求項4】
ポリマーが帯電性基を含まない請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理酸化チタン。
【請求項5】
ポリマーが(メタ)アクリル系モノマーを含む成分から形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面処理酸化チタン。
【請求項6】
ポリマーが、下記式(I):
【化1】


(式中、R1は水素原子またはメチル基、R2は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、nは自然数、xは自然数を表す)で示されるモノマーを含む成分から形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理酸化チタン。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の表面処理酸化チタンを、非極性溶媒中に分散してなることを特徴とする電気泳動分散液。
【請求項8】
前記非極性溶媒が、シリコーンオイル類である請求項7に記載の電気泳動分散液。
【請求項9】
少なくとも一方が光透過性である一対の導電層間に、請求項7または8に記載の電気泳動分散液を含む層が形成されていることを特徴とする画像表示媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2013−97309(P2013−97309A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242346(P2011−242346)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】