説明

表面処理金属板およびその製造方法、ならびに樹脂被覆金属板、金属缶および缶蓋

【課題】クロムを用いず、樹脂密着性に優れ、ティンフリー鋼板の代替材となり得る表面処理金属板およびその製造方法、ならびにこの表面処理金属板に有機樹脂が被覆された樹脂被覆金属板、それを用いた金属缶および缶蓋を提供する。
【解決手段】金属板の少なくとも片面に、TiおよびOを含む皮膜を有し、前記皮膜上に有機皮膜を有することを特徴とする表面処理金属板。本発明の表面処理金属板では、TiおよびOを含む皮膜のTi量が3〜200mg/m2であることが好ましい。有機皮膜としては、有機酸を塗布した後、乾燥することにより形成された皮膜であることが好ましい。また、有機酸としては、ヒドロキシ酸が好ましく、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、マンデル酸の中から選ばれた少なくとも1種の酸からなることがさらに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に缶などの容器に加工して用いられる金属板、特にプラスチックフィルムなどの樹脂との密着性(以後、樹脂密着性と呼ぶ)に優れる表面処理金属板およびその製造方法、ならびにこの表面処理金属板に有機樹脂が被覆された樹脂被覆金属板、それを用いた金属缶および缶蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料缶、食品缶、ペール缶や18リットル缶などの各種金属缶には、錫めっき鋼板やティンフリー鋼板と呼ばれる電解クロム酸処理鋼板などの金属板が用いられている。なかでも、ティンフリー鋼板は、6価クロムを含む浴中で鋼板を電解処理することにより製造され、塗料などとの優れた樹脂密着性を有していることに特長がある。
【0003】
近年、環境に対する意識の高まりから、世界的に6価クロムの使用が規制される方向に向かっており、製造に6価クロム浴を用いるティンフリー鋼板に対しても代替材が求められている。クロムを用いないティンフリー鋼板の代替材として、例えば特許文献1には、タングステン酸溶液中で電解処理が施された容器用鋼板が開示されている。また、特許文献2には、表面にリン酸塩層が形成された容器用表面処理鋼板が開示されている。さらに、特許文献3には、Sn、Niの1種以上を含む表面処理層を有し、その上にタンニン酸または酢酸の1種以上およびTiまたはZrまたはそれらの化合物の1種以上を含んだフェノール構造を有する樹脂皮膜を施す容器用鋼板が提案されている。
【0004】
一方、各種金属缶は、従来より、ティンフリー鋼板などの金属板に塗装を施した後に、缶体に加工して製造されていたが、近年、製造に伴う廃棄物の抑制のために、塗装に代わってプラスチックフィルムなどの樹脂をラミネートしたラミネート金属板(樹脂被覆金属板)を缶体に加工する方法が多用されるようになっている。このラミネート金属板には、樹脂と金属板が強く密着していることが必要であり、特に飲料缶や食品缶として用いられるラミネート金属板には、内容物の充填後にレトルト殺菌工程を経る場合があるため、高温の湿潤環境でも樹脂が剥離することのない強い樹脂密着性が要求される。
【特許文献1】特開2004-285380号公報
【特許文献2】特開2001-220685号公報
【特許文献3】特開2002-355921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のタングステン酸溶液中で電解処理が施された容器用鋼板、特許文献2に記載の表面にリン酸塩層が形成された容器用表面処理鋼板を用いたラミネート鋼板、および特許文献3に記載のフェノール構造を有する樹脂皮膜を施す容器用鋼板では、いずれもレトルト殺菌工程における樹脂密着性が不十分である。
【0006】
本発明は、クロムを用いず、樹脂密着性に優れ、ティンフリー鋼板の代替材となり得る表面処理金属板およびその製造方法、ならびにこの表面処理金属板に有機樹脂が被覆された樹脂被覆金属板、それを用いた金属缶および缶蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、クロムを用いず、樹脂密着性に優れる表面処理金属板について鋭意研究を重ねた結果、表面にTiおよびOを含む皮膜を形成し、その皮膜上にさらに有機皮膜を形成することにより極めて優れた樹脂密着性が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、金属板の少なくとも片面に、TiおよびOを含む皮膜を有し、前記皮膜上に有機皮膜を有することを特徴とする表面処理金属板を提供する。
【0009】
本発明の表面処理金属板では、TiおよびOを含む皮膜のTi量が3〜200mg/m2であることが好ましい。
【0010】
有機皮膜としては、有機酸を塗布した後、乾燥することにより形成された皮膜であることが好ましい。また、有機酸としては、ヒドロキシ酸が好ましく、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、マンデル酸の中から選ばれた少なくとも1種の酸からなることがさらに好ましい。
【0011】
本発明は、また、本発明の表面処理金属板の有機皮膜上に、有機樹脂が被覆されている樹脂被覆金属板、それを用いた金属缶および缶蓋を提供する。
【0012】
本発明の表面処理金属板は、例えば、フルオロチタン酸イオンを含む水溶液中で金属板を陰極電解処理してTiおよびOを含む皮膜を形成後、有機酸を塗布し、乾燥して有機皮膜を形成する方法により製造可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、クロムを用いず、樹脂密着性に優れる表面処理金属板を製造できるようになった。本発明の表面処理金属板は、これまでのティンフリー鋼板の代替材として問題なく、有機樹脂を被覆して樹脂被覆金属板とし、金属缶や缶蓋に加工しても、樹脂の剥離が全く起こらず加工できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
1)表面処理金属板
本発明の表面処理金属板では、金属板の少なくとも片面に、TiおよびOを含む皮膜が形成され、さらにこの皮膜上に有機皮膜が形成されている。
【0015】
金属板としては、一般的な缶用の鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板などを用いることができる。
【0016】
金属板表面に形成されたTiおよびOを含む皮膜は、下地金属板と強固に結合し、金属板に耐食性を付与するとともに、その上に形成された有機皮膜との相乗効果で樹脂密着性を向上させる。
【0017】
TiおよびOを含む皮膜のTi量は、片面あたり、3mg/m2未満だと樹脂との密着性改善の効果が不十分であり、200mg/m2を超えると更なる密着性の向上が望めず、コスト高となるので、3〜200mg/m2であることが好ましい。なお、皮膜のTi量の測定は、蛍光X線による表面分析により行うことができる。また、O量については、特に規定しないが、XPSによる表面分析でその存在を確認することができる。
【0018】
TiおよびOを含む皮膜の形成方法としては、フルオロチタン酸イオンを含む水溶液中で金属板を陰極電解処理または浸漬処理する方法、またはフルオロチタン酸イオンおよびフッ素塩を含む水溶液中で金属板を陰極電解処理または浸漬処理する方法等が好適である。フルオロチタン酸イオンを与える化合物としては、フッ化チタン酸、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウムなどを用いることができる。フッ素塩としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化銀、フッ化錫などを用いることができる。特に、フッ化チタン酸カリウム水溶液中で、さらにはフッ化チタン酸カリウムおよびフッ化ナトリウムを含む水溶液中で、金属板を陰極電解処理する方法は、効率良く均質な皮膜を形成することが可能であり好適である。なお、陰極電解処理する方法での電流密度および電解時間、ならびに浸漬処理での浸漬時間は、必要なTi量に応じて適宜決定すればよい。
【0019】
TiおよびOを含む皮膜の形成方法の一例を次に挙げる。金属板にアルカリ脱脂および酸洗を施し、陰極電解処理もしくは浸漬処理を行う。処理液としては、フルオロチタン酸イオンを、Tiにして0.1〜10g/L(L:リットル)、またはさらにフッ素塩を、Fにして0.05〜5g/L含み、温度20〜70℃の水溶液を用いる。陰極電解処理条件の場合は電解時間を0.5〜10sec、電流密度1〜100A/dm2、浸漬処理の場合は浸漬時間1〜10secで行う。その後、水洗し、常温の冷風で乾燥する。その結果、Ti量が3〜200mg/m2のTiおよびOを含有する皮膜を有する表面処理金属板を得られる。
【0020】
TiおよびOを含む皮膜上に形成される有機皮膜も、その後に被覆するプラスチックフィルムなどとの樹脂密着性に寄与する。有機皮膜を構成する有機物としては、例えばアルコール類、フェノール類、エーテル類、アルデヒド類、ケトン類、カルボン酸類、アミン類等のうち、常温で固体の不揮発性物質が好ましく、このような有機物からなる有機皮膜を形成させることが好ましい。中でも有機酸が好適であり、特にヒドロキシ酸が好適である。ヒドロキシ酸とは、1分子中にカルボキシル基とアルコール性水酸基とを持つ有機化合物の総称であり、本発明では、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、マンデル酸などの中から選ばれた少なくとも1種の酸を用いることができる。この有機皮膜の形成方法としては、上記の有機物を水または有機溶剤に溶解し、溶液として金属板上に塗布した後、乾燥する方法が好適である。塗布方法としては、各種公知のコーティング法を用いることができる。乾燥時間短縮のために、必要に応じて金属板を加熱する工程を設けてもよい。なお、乾燥によって皮膜を形成した後は、水洗工程を経ることによって金属上に残存した過剰な有機物を除去することが好ましい。この場合、特に強力な水洗である必要はなく、水槽に浸漬、あるいは水スプレー程度で十分である。水洗後は、再度乾燥し、実用に供することができる。
【0021】
有機皮膜の付着量は、0.1mg/m2未満だと樹脂密着性の改善効果が不十分であり、50mg/m2を超えると有機皮膜中で凝集破壊が生じ、かえって樹脂密着性が低下する恐れがあるので、0.1〜50mg/m2であることが好ましい。なお、有機皮膜の付着量の測定は、皮膜を水または適当な有機溶媒で溶解し、燃焼して発生した気体の組成をガスクロマトグラフィーで分析することにより行うことができる。
【0022】
2)樹脂被覆金属板(ラミネート金属板)
本発明の表面処理金属板の有機皮膜上に、有機樹脂を被覆して樹脂被覆金属板とすることができる。上述したように、本発明の表面処理金属板は樹脂密着性に優れているため、この樹脂被覆金属板は優れた耐食性と加工性を有する。
【0023】
本発明の表面処理金属板に被覆する有機樹脂としては、特に限定はなく、各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を挙げることができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリルエステル共重合体、アイオノンマー等のオレフィン系樹脂フィルム、またはポリブチレンテレフタラート等のポリエステルフィルム、もしくはナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムの未延伸または二軸延伸したものであってもよい。積層の際に接着剤を用いる場合は、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酸変性オレフィン樹脂系接着剤、コポリアミド系接着剤、コポリエステル系接着剤(厚さ:0.1〜5.0μm)等が好ましく用いられる。さらに熱硬化性塗料を、厚み0.05〜2μmの範囲で表面処理金属板側、あるいはフィルム側に塗布し、これを接着剤としてもよい。
【0024】
さらに、フェノールエポキシ、アミノ-エポキシ等の変性エポキシ塗料、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体けん化物、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、エポキシ変性-、エポキシアミノ変性-、エポキシフェノール変性-ビニル塗料または変性ビニル塗料、アクリル塗料、スチレン-ブタジェン系共重合体等の合成ゴム系塗料等の熱可塑性または熱硬化性塗料の単独または2種以上の組合わせであってもよい。
【0025】
本発明において、有機樹脂被覆層の厚みは3〜50μm、特に5〜40μmの範囲にあることが望ましい。厚みが上記範囲を下回ると耐食性が不十分となり、厚みが上記範囲を上回ると加工性の点で問題を生じやすい。
【0026】
本発明において、表面処理金属板への有機樹脂被覆層の形成は任意の手段で行うことができ、例えば、押出コート法、キャストフィルム熱接着法、二軸延伸フィルム熱接着法等により行うことができる。押出コート法の場合、表面処理金属板の上に有機樹脂を溶融状態で押出コートして、熱接着させることにより製造することができる。すなわち、有機樹脂を押出機で溶融混練した後、T-ダイから薄膜状に押し出し、押し出された溶融樹脂膜を表面処理金属板と共に一対のラミネートロール間に通して冷却下に押圧一体化させ、次いで急冷する。多層の有機樹脂被覆層を押出コートする場合には、表層樹脂用の押出機および下層樹脂用の押出機を使用し、各押出機からの樹脂流を多重多層ダイ内で合流させ、以後は単層樹脂の場合と同様に押出コートを行えばよい。また、一対のラミネートロール間に垂直に表面処理金属板を通し、その両側に溶融樹脂ウエッブを供給することにより、前記表面処理金属板両面に有機樹脂被覆層を形成させることができる。
【0027】
3)金属缶および缶蓋
本発明の金属缶は、前述した樹脂被覆金属板から形成されている限り、任意の製缶法によるものでよい。この金属缶は、側面継ぎ目を有するスリーピース缶であることもできるが、一般にシームレス缶(ツーピース缶)であることが好ましい。このシームレス缶は、表面処理金属板の有機樹脂の被覆面が缶内面側となるように、絞り・再絞り加工、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし加工(ストレッチ加工)、絞り・再絞りによる曲げ伸ばし・しごき加工、あるいは絞り・しごき加工等の従来公知の手段に付すことによって製造される。
【0028】
また、本発明の缶蓋は、上述した樹脂被覆金属板から形成されている限り、従来公知の任意の製蓋法によるものでよい。一般には、ステイ・オン・タブタイプのイージーオープン缶蓋やフルオープンタイプのイージーオープン缶蓋に適用することができる。
【0029】
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したに過ぎず、請求の範囲内において種々の変更を加えることができる。
【実施例1】
【0030】
金属板として、
A:板厚0.20mm、調質度T-4の低炭素冷延鋼板
B:板厚0.20mm、調質度T-2の極低炭素冷延鋼板
C:板厚0.28mmのJIS5021H18アルミニウム板
を使用し、アルカリ脱脂、酸洗を施した後、表1に示す組成の処理液中で、同じく表1に示す条件で陰極電解処理または浸漬処理を行い、水洗、乾燥してTiおよびOを含有する皮膜を金属板の両面に形成した。陰極電解処理の際は、陽極には酸化イリジウム被覆したチタンを用いた。続いて、表1に示す組成の有機処理液をロールコーターを用いて金属板上に塗布し、80℃の電気炉中で20sec間乾燥した後、水洗して有機皮膜を金属板の両面に形成し、表面処理金属板No.1〜11を作製した。ここで、表面処理金属板No.5では、電解処理ではなく浸漬処理によりTiとOを含む皮膜が金属板の両面に形成されている。
【0031】
比較のため、金属板Aを用い、表2に示す条件で電解処理を行い、一部の金属板には、その後、表2に示す組成の浸漬処理液に1sec間浸漬して、表面処理金属板No.12〜14を作製した。いずれの金属板にも有機皮膜を形成するための処理は行われていない。ここで、表面処理金属板No.12では、陰極電解処理によりW含有皮膜が、表面処理金属板No.13では、陽極電解処理後、リン酸マグネシウム水溶液に浸漬処理を行ってMg含有皮膜が、形成されている。また、表面処理金属板No.14では、陰極電解処理によりNi含有皮膜が形成された後、浸漬処理によりTi含有フェノール樹脂皮膜が形成されている。
【0032】
表面処理金属板No.1〜11の皮膜のTi量、No.12の皮膜のW量、No.13の皮膜のMg量、No.14の皮膜のNi、Ti量の測定は、それぞれ予め付着量を湿式分析して求めた検量板との比較による蛍光X線分析により行った。なお、Oは、XPSによる表面分析でその存在を確認した。また、表面処理金属板No.1〜11の有機皮膜の付着量の測定を、水またはエタノールに皮膜を溶解し、燃焼して発生した気体の組成をガスクロマトグラフィー分析することにより行った。皮膜のTi量、W量、Mg量、Ni量、有機皮膜の付着量を、表1、2に示す。
【0033】
これらの表面処理金属板No.1〜14の両面に、厚さ25μm、共重合比12mol%のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタラートフィルム(有機樹脂被覆層)をラミネートして、ラミネート金属板(樹脂被覆金属板)No.1〜14を作製した。ラミネートは、245℃に加熱した金属板とフィルムを一対のゴムロールで挟んでフィルムを金属板に融着させ、ゴムロール通過後1sec以内に水冷して行った。このとき、金属板の送り速度は40m/min、ゴムロールのニップ長は17mmであった。ここで、ニップ長とは、ゴムロールと金属板が接する部分の搬送方向の長さのことである。そして、作製したラミネート金属板No.1〜14について、次の樹脂密着性の評価を行った。
【0034】
樹脂密着性評価:
温度130℃、相対湿度100%のレトルト雰囲気における180°ピール試験により樹脂密着性の評価を行った。180°ピール試験とは、図1の(a)に示すようなフィルム2を残して金属板1の一部3を切リ取った試験片(サイズ:30mm×100mm)を用い、図1の(b)に示すように、試験片の一端に重り4(100g)を付けてフィルム2側に180°折り返して30min間放置して行うフィルム剥離試験のことである。そして、図1の(c)に示す剥離長5を測定し、次のように樹脂密着性を評価し、◎または○であれば樹脂密着性が良好であるとした。
◎:剥離長が15mm未満
○:剥離長が15mm 以上20mm未満
△:剥離長が20mm以上50mm未満
×:剥離長が50mm以上
樹脂密着性の評価結果を表3に示す。本発明例であるラミネート金属板No.1〜10は、いずれも極めて良好な樹脂密着性を示している。同じく本発明例であるラミネート金属板No.11は、Ti量がより好ましい範囲外であるため、良好な樹脂密着性を示すが、ラミネート金属板No.1〜10に比べわずかに劣っている。これに対し、比較例であるラミネート金属板No.12〜14は、いずれも樹脂密着性に劣っている。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【実施例2】
【0038】
実施例1で作製したラミネート金属板No.1、3〜6、14を用いて、表4に示す条件で製缶加工を行い、缶胴の開口端をネックイン、フランジ加工して金属シームレス缶No.1〜6を作製した。また、同じラミネート金属板を用いて、209径のSOT蓋を作製し、スコア加工部内外面をエポキシフェノール系塗料で補修した。
【0039】
作製した金属缶No.1〜6および蓋について、製缶後のフィルムの剥離や穴あきなどの異常の有無を目視で調査した。また、金属缶に50℃でコーヒー飲料を充填した後、蓋を2重巻締めし、125℃で25min間のレトルト処理を行い、37℃で6ヶ月放置後開缶して、缶内面側の腐食やフィルム異常を目視で調査した。
【0040】
結果を表5に示す。本発明であるラミネート金属板を用いた金属缶No.1〜5には、製缶後および内容物充填後、金属缶および蓋を調べたが、いずれにおいてもフィルムの異常は確認できなかった。
【0041】
一方、本発明でないラミネート金属板を用いた金属缶No.6では、製缶後にフィルム異常や、内容物充填後にフィルム異常(剥離)と腐食が確認された。
【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】180°ピール試験を説明する図である。
【符号の説明】
【0045】
1 金属板
2 フィルム
3 金属板の切リ取った部位
4 重り
5 剥離長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の少なくとも片面に、TiおよびOを含む皮膜を有し、前記皮膜上に有機皮膜を有することを特徴とする表面処理金属板。
【請求項2】
TiおよびOを含む皮膜のTi量が3〜200mg/m2であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理金属板。
【請求項3】
有機皮膜が、有機酸を塗布した後、乾燥することにより形成された皮膜であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面処理金属板。
【請求項4】
有機酸が、ヒドロキシ酸であることを特徴とする請求項3に記載の表面処理金属板。
【請求項5】
ヒドロキシ酸が、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、マンデル酸の中から選ばれた少なくとも1種の酸からなることを特徴とする請求項4に記載の表面処理金属板。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の表面処理金属板の有機皮膜上に、有機樹脂が被覆されていることを特徴とする樹脂被覆金属板。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂被覆金属板からなることを特徴とする金属缶。
【請求項8】
請求項6に記載の樹脂被覆金属板からなることを特徴とする缶蓋。
【請求項9】
フルオロチタン酸イオンを含む水溶液中で金属板を陰極電解処理してTiおよびOを含む皮膜を形成後、有機酸を塗布し、乾燥して有機皮膜を形成することを特徴とする表面処理金属板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−182595(P2007−182595A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−414(P2006−414)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】