説明

表面処理銅箔及びその製造方法

【課題】銅箔の表面防錆効果を維持することができると共に高融点半田との半田濡れ性はもとより低融点半田(錫−ビスマス半田)との半田濡れ性にも優れる表面処理銅箔を提供することを目的とする。
【解決手段】銅箔表面に付着量が0.013〜0.25mg/dmのZn層を形成してなる表面処理銅箔である。
また、前記Zn層と銅箔表面とで真鍮化処理し、銅箔表面に真鍮層が設けられた表面処理銅箔である。
また、銅箔表面にZn層が設けられ、その上に0.010〜0.030mg/dmの付着量のIn層が設けられている表面処理銅箔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面処理銅箔及びその製造方法に関するものであり、特に太陽電池セル相互を接続するのに適した表面処理銅箔に関するものである。
本発明の表面処理銅箔は防錆力に優れ、かつ半田濡れ性に優れた特性を有するものである。
また本発明は、表面に半田層を設けた表面処理銅箔に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池セル相互を接続する方法としてインターコネクタ方式とバックコンタクト方式が推奨されている。いずれの方式においても接続には銅箔が優先的に使用されている。
近時、太陽電池は出力向上を図るために電池のメイン電極、サブ電極共に細線化が進み、銅箔もファインパターンが形成できるものが要望されている。
また、太陽電池モジュールを構成する緩衝材等には折り曲げが可能で、耐久性のあるフィルムが採用されているが、このフィルムは融点が低い。そのため銅箔と太陽電池セルを接続する温度はフィルムの融点に対応させるため、銅箔と太陽電池セルの接続には低融点半田が使われる。
【0003】
太陽電池セル相互を接続する半田として、錫−ビスマス−銀、錫−銀−銅半田が特許文献1に開示されている。また、低融点半田として熱硬化型導電性ポリマーが特許文献2に開示されている。
【0004】
しかし、上記提案の半田はいずれも融点が高く、あるいは耐候性が悪く、太陽電池モジュールを構成する緩衝材等に融点が低いフィルムが採用されていると、これらの半田は使用できない結果となる。
そのため、太陽電池セル相互を接続する低融点半田としては錫−ビスマス半田が推奨されている。しかしながら錫−ビスマス半田は亜鉛(以下Znと称することがある)、クロム(以下Crと称することもある)層等で防錆処理された銅箔との濡れ性は良好ではない。
そのため、錫−ビスマス半田と銅箔との濡れ性改善のために半田付けの際にフラックスを使用する場合が多い。しかし、フラックスの使用は作業効率が悪く、フラックスが接続界面に残ることによって接続箇所が時間とともに腐食する危険性があり、品質上の問題が発生する懸念がある。
【0005】
従って、低融点半田である錫−ビスマス半田により太陽電池セルと銅箔とを半田付けによる接続において、フラックスを必要としない工法の開発が望まれ、特に銅箔表面が酸化変色せず、錫−ビスマス半田との半田濡れ性が改善された表面処理層を有する銅箔の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−216963号公報
【特許文献2】特開平1−212489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、低融点半田である錫−ビスマス半田との半田濡れ性が改善された表面処理銅箔を開発し、錫−ビスマス半田により太陽電池セルと銅箔とをフラックスを使用せずに半田付けでき、銅箔表面が酸化変色しない表面処理銅箔を提供することを目的とする。
【0008】
また本発明は、銅箔に施されたZn、Cr等からなる防錆層を有する従来の表面処理銅箔は錫−ビスマス半田との半田濡れ性が良好でないこと、また半田付け処理によって防錆機能が低下すること、という2つの課題を解決し、銅箔表面の酸化変色を防止しつつ、表面処理層と半田、特に低融点半田との濡れ性が良好な表面処理銅箔の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明者等は表面処理を施した銅箔表面と錫−ビスマス半田との半田濡れ性について鋭意研究した結果、銅箔表面に形成させたZn層を加熱処理することでZn層全体を真鍮化させることが可能であり(以下、真鍮層という)、また、真鍮層と錫−ビスマス半田との半田濡れ性が非常に良好であることを見出した。
さらに、その他の表面処理層として真鍮層表面にIn層を形成することで錫−ビスマス半田との半田濡れ性が良好となることを突き止め、Inで表面処理することで、防錆効果を維持しつつ錫−ビスマス半田との良好な半田濡れ性を維持できる表面処理銅箔を開発することに成功し、本発明に至った。
なお、本発明の表面処理銅箔は錫−ビスマス半田を対象として開発したが、高融点半田との濡れ性にも優れる効果を有する。従って、本明細書では低融点半田と高融点半田とを区別して表現する必要がないときは単に「半田」と表現する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔表面に付着量が0.013〜0.25mg/dmのZn層を形成してなる。なお、銅箔表面に付着するZn量は好ましくは0.13〜0.25mg/dmであることが好ましい。
【0011】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔表面に真鍮層を形成してなる表面処理銅箔であって、前記真鍮層は銅箔表面に設けた0.013〜0.25mg/dmの付着量、好ましくは0.13〜0.25mg/dmの付着量のZn層と銅箔表面とで真鍮化処理がなされた真鍮層である。
【0012】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔表面にZn層が設けられ、その上にIn層が設けられている。
【0013】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔表面に真鍮層、該真鍮層表面にIn層が形成されている表面処理銅箔であって、前記真鍮層は銅箔表面に設けた0.010〜0.25mg/dmの付着量のZn層を銅箔表面とで真鍮化処理がなされた真鍮層であり、前記In層は付着量が0.010〜0.030mg/dmのInで形成されている。
【0014】
本発明の表面処理銅箔の製造方法は、銅箔表面に0.013〜0.25mg/dmのZnを付着してZn層を形成することを特徴とする。
【0015】
本発明の表面処理銅箔の製造方法は、銅箔表面に真鍮層が形成されている表面処理銅箔の製造方法であって、前記真鍮層は銅箔表面に0.013〜0.25mg/dmのZnを付着してZn層とし、該Zn層と前記銅箔表面とを真鍮化処理して形成することを特徴とする。
【0016】
本発明の表面処理銅箔の製造方法は、銅箔表面に0.010〜0.25mg/dmのZnを付着してZn層とし、該Zn層上に0.010〜0.030mg/dmのInを付着してIn層とすることを特徴とする。
【0017】
本発明の表面処理銅箔の製造方法は、銅箔表面に真鍮層、該真鍮層表面にIn層が形成されている表面処理銅箔の製造方法であって、前記真鍮層は銅箔表面に0.010〜0.25mg/dmのZnを付着してZn層とし、該Zn層と銅箔表面とで真鍮化処理して真鍮層とし、前記In層は0.010〜0.030mg/dmのInを付着してIn層とすることを特徴とする。
【0018】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔表面に0.013〜0.25mg/dmの付着量のZn層が形成され、該Zn層の上に半田層が設けられている。
【0019】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔表面に設けた0.013〜0.25mg/dmの付着量のZn層と前記銅箔とで真鍮層が形成され、該真鍮層の上に半田層が設けられている。
【0020】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔表面に設けた0.010〜0.25mg/dmの付着量のZn層が設けられ、該Zn層上に0.010〜0.030mg/dmのInの付着量のIn層が設けられ、該In層上に半田層が設けられている。
【0021】
本発明の表面処理銅箔は、銅箔表面に設けた0.010〜0.25mg/dmの付着量のZn層と前記銅箔とで真鍮層が形成され、該真鍮層の上に0.010〜0.030mg/dmの付着量のIn層が設けられ、該IN層上に半田層が設けられている。
【発明の効果】
【0022】
本発明において銅箔上に形成されるZn(真鍮)又はInの表面処理層の付着量を制御することにより、表面処理層は防錆効果を維持することができ、銅箔表面の酸化変色が防止されると共に高融点半田との半田濡れ性はもとより低融点半田(錫−ビスマス半田)との半田濡れ性にも優れる表面処理銅箔を提供することができる。
【0023】
本発明は、銅箔表面に設けるZn層による防錆効果に加え、真鍮層とすることでさらなる防錆効果と酸化耐熱性が発揮される。また真鍮層やIn層によって従来の高融点半田だけでなく、低融点半田との間でも優れた半田濡れ性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明において対象とする銅箔は電解銅箔および圧延銅箔である。電解銅箔は銅を含む電解液中に浸漬させた回転ドラム状のカソード上に銅を電解析出させて得られた銅箔である。また、圧延銅箔は無酸素銅に各種の微量元素を添加したインゴットを圧延機で繰り返し圧延することで得られた銅箔である。
なお、本発明において銅箔とは銅合金箔を含むものである。
【0025】
本発明は、上記銅箔表面に0.013〜0.25mg/dmの付着量、好ましくは0.13〜0.25mg/dmの付着量のZn層が形成されている表面処理銅箔である。
【0026】
本発明における表面処理層におけるZnの付着量を0.013〜0.25mg/dmに限定する理由は、以下の通りである。
Zn層の付着量が0.013mg/dm未満では短時間で銅箔表面が直ちに酸化変色してしまい、防錆機能に問題が生じるためである。しかし、Zn層を設け銅箔表面の酸化が生ずる前にIn層を形成することで、In層の防錆機能がプラスされるためにZnの付着量を0.010mg/dmまで減少させることができる。
【0027】
また、0.25mg/dmを超えるZn付着量では銅箔表面とZn層とを反応させて真鍮とするにはZn量が多く、Zn層の露出表面まで真鍮化するのが困難となるためである。真鍮化が不足すると銅箔表面にZn層が残り、特に低融点半田との半田濡れ性が低下するためである。
【0028】
なお、太陽電池相互を接続する銅箔はファインピッチの回路基板とされる場合がある。回路基板の作成時に銅箔はアルカリ処理され、このアルカリ処理においてZn層がエッチング除去されることがある。このような場合には回路基板を作成する銅箔表面に形成するZn層の付着量は、このアルカリエッチングでの除去量を勘案し、真鍮化される厚さをも考慮した厚さに設定する必要がある。上記下限値はアルカリエッチングされることを考慮していない数値であり、アルカリエッチングが施される可能性のある表面処理銅箔ではZn付着量は0.13mg/dm以上とすることが好ましい。
前記Zn付着量の上限は真鍮化できる上限であり、アルカリエッチングで除去されるZn量は含まない。従って回路基板用表面処理銅箔としてはアルカリエッチングで除去が見込まれるZn量をプラスして表面処理することが好ましい。
【0029】
本発明は、前記真鍮層上にIn層を設けることで特に低融点半田の濡れ性をより向上させている。Inの付着量は0.010〜0.030mg/dmの範囲が好ましい。また、In層を設けることでZn層(真鍮層)の厚さを薄くすることも可能である。In層の付着量が0.010mg/dm未満では低融点半田、特に錫−ビスマス半田との半田濡れ性に向上が見られず、また0.030mg/dmを超えて付着しても、ほとんど半田濡れ性の向上に差が生じないためである。
また、In層とZn層との相乗効果を考慮し、Zn層の付着量の最小限を0.010mg/dmとし、その上にIn層を形成するようにしてもよい。なお、Inは高価なため付着量は必要最小限に止めることが好ましい。
【0030】
銅箔(未処理銅箔)表面にZn層を設け、真鍮化する実施形態を示す。
本発明は、銅箔表面と該銅箔表面に0.013〜0.25mg/dmの付着量のZn層を設けた表面処理銅箔である。銅箔表面にZn層を設ける条件は次の通りである。
[Znめっき処理]
[Znめっき]
酸化亜鉛 2〜40g/dm
水酸化ナトリウム 10〜300g/dm
pH 11.0〜14.0
温度 5〜60℃
電流密度 0.1〜10A/dm
処理時間 1秒〜2分
【0031】
[Znめっき層と銅箔表面との真鍮化]
上記のZnめっきを施した銅箔を一例として30℃で恒温とした加温庫に2〜6時間静置することで、銅箔表面に形成されたZn層の全面は真鍮化する。
また、真鍮化処理はこの他にZn処理した銅箔に半田を乗せる際の熱で真鍮化することも可能である。
【0032】
[Inめっき処理]
本発明は、銅箔表面に0.010〜0.25mg/dmの付着量のZn層または真鍮層が形成され、その上に0.010〜0.030mg/dmの付着量のIn層が形成されている表面処理銅箔である。
In層を形成させるのは低融点半田(例えば錫−ビスマス半田)との半田濡れ性をさらに向上させるためであるが、このIn層は防錆機能にも寄与する。Inの付着量は防錆力の面においても0.030mg/dmで必要十分であり、これ以上厚くすると不経済となる。一方、付着量が0.010mg/dm以下では、Zn層に拡散されてしまう場合がありZn層だけの防錆効果と大差がなくなる。
【0033】
Zn層を設け又は真鍮層を設けた表面処理銅箔の表面に0.010〜0.030mg/dmの付着量のIn層被膜を形成するためのめっき液およびめっき条件の一例を以下に示す。
[Inめっき]
In濃度 10〜50g/dm
硫酸 10〜50g/dm
pH 1.0〜4.0
温度 20〜40℃
電流密度 0.1〜10A/dm
処理時間 30秒〜2分
【0034】
[半田層の形成]
本発明は、銅箔表面に0.013〜0.025mg/dmの付着量のZn層が形成され、該Zn層の上に低融点半田層が設けられている表面処理銅箔である。
太陽電池モジュールで耐折曲げ性に優れる緩衝材として一般に用いられるEVA(エチレンビニルアセテート)は融点が74〜105℃であるため、太陽電池セルには低融点半田として錫−ビスマス半田がより好ましく使用される。
太陽電池セル相互を接続するために銅箔表面に低融点半田層を設ける。低融点半田を銅箔表面に設ける方法として、銅箔表面にZn層を設けた表面処理銅箔上に低融点半田を乗せ、リフロー炉で半田が溶融する温度にまで加熱する。この加熱時に銅箔とZn層の界面は真鍮化反応が開始され、時間とともにZn層表面まで真鍮化され、真鍮化された表面に半田層が形成される。
【0035】
或いは、銅箔表面にZn層を設けた表面処理銅箔を所定の温度に設定した加温庫に入れて真鍮化し、真鍮化した表面に低融点半田を乗せリフロー炉で加熱溶融して銅箔表面に半田層を形成する。
なお、上記は低融点半田を対象として記載したが、本発明表面処理銅箔は高融点半田との半田濡れ性にも優れるため、フラックスを使用することなく、錫−ビスマス−銀半田、錫−銀−銅半田、熱硬化型導電性ポリマー等の高温半田を対象とする半田処理にも有効であることは勿論である(後述する表1参照)。
【0036】
[アルカリ処理によるめっき付着量の制御]
太陽電池セル相互を接続する銅箔は先ずプリント配線板に加工される。プリント配線板にはファインな回路が形成される。ファインな回路のプリント配線板を作成する方法の一つに銅箔表面にレジストを塗布し、回路パターンを焼き付け、エッチング後、レジストをアルカリ処理して除去する工程が含まれる。このアルカリ処理工程で銅箔表面に設けられているZn層(真鍮層)、In層が溶解除去される。そのため、このアルカリ処理工程で除去されるZnの量、或いはInの量を適正に補足することで、半田濡れ性に優れ、表面の変色が防止された表面処理銅箔とする必要がある。
【0037】
アルカリ処理に用いる溶液の組成および処理条件の一例は下記のとおりである。本発明において、めっき処理によって目的の付着量のめっき層を形成した場合と、アルカリ処理によって目的の付着量のめっき層に調整した場合とでは、高融点半田、低融点半田共にその半田濡れ性、防錆力ともに有意な差は見られなかった。
【0038】
[アルカリ処理液]
水酸化カリウム 0.10〜0.50g/dm
水酸化ナトリウム 0.10〜0.50g/dm
温度 20〜40℃
処理時間 10秒〜40秒
【0039】
次に、本発明の実施様態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
No.1〜9
銅箔(電解銅箔、電解銅合金箔又は圧延銅箔、圧延銅合金箔の未処理銅箔)に、前記の方法で0.013〜0.25mg/dmの付着量となるようにZnめっきを施した。Zn付着量を表1に示す。
【0041】
No.10〜18
銅箔(電解銅箔、電解銅合金箔又は圧延銅箔、圧延銅合金箔の未処理銅箔)に、前記の方法で0.013〜0.25mg/dmの付着量となるようにZnめっきを施した後、前記Zn層と銅箔表面を真鍮化処理した。Zn付着量を表1に示す。
【0042】
No.19〜68
銅箔(電解銅箔、電解銅合金箔又は圧延銅箔、圧延銅合金箔の未処理銅箔)に、前記の方法で0.010〜0.25mg/dmの付着量となるようにZnめっきを施した後、該Zn層と銅箔表面とが真鍮化するように真鍮化処理を行った。次いで、前記の方法で0.010〜0.030mg/dmの付着量となるようにInめっきを施した。Zn付着量、In付着量を表2に示す。
【0043】
No.69〜74
銅箔(電解銅箔、電解銅合金箔又は圧延銅箔、圧延銅合金箔の未処理銅箔)に、前記の方法で0.300mg/dmの付着量となるようにZnめっきを施した後、前記の方法で0.010〜0.030mg/dmの付着量となるようにInめっきを施した。In付着量を表3に示す。
【比較例】
【0044】
No.1
銅箔(電解銅箔または圧延銅箔)に、前記の方法で0.010mg/dmの付着量となるようにZnめっきを施した。
No.2
銅箔(電解銅箔または圧延銅箔)に、前記の方法で0.030mg/dmの付着量となるようにZnめっきを施した。
No.3
銅箔(電解銅箔または圧延銅箔)に、前記の方法で0.010mg/dmの付着量となるようにZnめっきを施した後、該Zn層と銅箔表面とが真鍮化するように真鍮化処理を行った。
【0045】
No.4
銅箔(電解銅箔または圧延銅箔)に、前記の方法で0.030mg/dmの付着量となるようにZnめっきを施した後、該Zn層と銅箔表面とが真鍮化するように真鍮化処理を行った。
No.5〜13
銅箔(電解銅箔または圧延銅箔)に、前記の方法で0.013〜0.250mg/dmの付着量となるようにZnめっきを施した後、前記Zn層と銅箔表面とが真鍮化するように真鍮化処理を行った。次いで、前記の方法で0.040mg/dmの付着量となるようにInめっきを施した。Zn付着量を表4に示す。
【0046】
実施例および比較例で得られた各種表面処理銅箔について、半田濡れ性、防錆力を評価するために以下の条件で測定し、その結果を表1〜4に示した。
【0047】
[半田濡れ性]
実施例および比較例によって得られた銅箔の半田濡れ性を評価するために、従来公知の試験法である、濡れ広がり試験法を用いて測定を行った。
測定方法は、ホットプレート等の上に試験サンプルを置き、その上に重量の影響を無視できる程度の微量の半田を置いて、ホットプレートの熱によって溶融させた半田の形状を測定する方法である。
本発明においては、濡れ広がった後の高さhと濡れる前の形状を球体とみなした場合の直径Dとの比から、次の式で濡れ広がり率S(%)を算出した。
S={(D−h)/D}×100(%)
半田濡れ性は高融点、低融点半田ともにSが40%以下では半田濡れ性が悪く、40%〜60%では実用上問題無い半田濡れ性であり、70%以上では非常に良好な半田濡れ性となる。
【0048】
[防錆力]
実施例および比較例によって得られた銅箔の防錆力を評価するために、従来公知の試験法である恒温高湿試験によって、その酸化変色の度合いについて調査した。
温度条件は30℃と50℃の2条件とし、湿度は90%以上として7日間、銅箔を静置した後に銅箔表面10dmの面積内に何個の酸化変色点が観察されるかを計測した。
評価は銅箔表面10dmの面積内において、酸化変色がなかった物を最も効果ありとして◎、酸化変色箇所が1〜5個観察されたものを効果ありとして○、酸化変色箇所が5〜10個観察された物を使用状況によっては問題がない程度の効果と判断して△、11個以上観察された物を効果なしとして×、とし、表1〜4にその結果を示した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
評価
実施例1〜9
表1から明らかなように実施例1、2はZn付着量が最低限であるため、半田濡れ性、酸化変色度合いにやや難点が見られるが、使用状況によっては実用性に問題ない範囲であった。実施例3〜9の半田濡れ性は特に高温半田において良好であった。これは半田時にZn層が高温となり、銅箔表面との間で真鍮化現象が早期に起こり、半田濡れ性が改善された結果であると推測される。酸化変色度合いはZn層で銅箔表面が覆われるため良好であった。
【0054】
実施例10〜18
表1から明らかなように、実施例12〜18は高融点半田、低融点半田との半田濡れ性は良く、また、酸化変色度合いも満足できるものであった。実施例10、11はZn付着量が最低限であるため、半田濡れ性、酸化変色度合いにやや難点が見られるが、使用状況によっては実用性に問題ない範囲であった。
【0055】
実施例19〜28
実施例1とほぼ同量のZn付着量であるが、Zn層の上にIn層が設けられているので半田濡れ性、酸化変色度合いにおいて満足する結果となっている。
特に実施例19〜23はZnの付着量が最低限を下回る量であったが、その上にIn層が設けられているために酸化変色度合いが実施例10と比較しても改良されている。
実施例29〜68
Zn層の上にIn層が設けられているので半田濡れ性、酸化変色度合いにおいて満足する結果となっている。
実施例69〜74
Zn付着量が多く、真鍮化処理をしていないが、Zn層表面にIn層が存在するために半田濡れ性、酸化変色度合いにおいて満足する結果となっている。
【0056】
比較例
比較例1はZnの付着量が少ないため半田濡れ性、酸化変色度合いに難点があり、比較例2はZn付着量を多くしたため、高温半田での接続時にも真鍮化が表面まで届かず、半田濡れ性に難点が生じた。
比較例3はZnの付着量が少ないため半田濡れ性、酸化変色度合いに難点があり、比較例4はZn付着量を多くしたため、真鍮化が表面まで届かず、半田濡れ性にやや難点が生じた。
比較例5〜13はInの付着量を増やしたが、実施例64〜68と効果に差がなく、高価なInの消費長を増やすだけで、得策ではなかった。
【0057】
銅箔はその出荷時点で箔表面の酸化変色を防止するために表面に安全性を考慮して比較的厚くZn層を設け、あるいはZn層の上にCr層を施している。しかし、これらZn層上に、あるいはCr層上に錫−ビスマス半田を載せようとすると、いずれの表面処理層においても半田濡れ性が悪く、特に太陽電池相互の接続には良好に接着させることが困難で不的であった。これに対し、本発明の表面処理銅箔は、Znを酸化変色がないぎりぎりの付着量で、かつZn層と銅箔表面とで真鍮化する量の付着量でZn層を設けているために、半田濡れ性に優れた表面処理銅箔である。
【0058】
また、太陽電池セル相互を接続する(半田付けする)際に銅箔表面をアルカリ処理により洗浄することがある。このような時には上述した回路形成時のアルカリ処理によるZn消費量を予め考慮し、Znの消費される量に見合うZn付着量を付着する対策で対処することができる。
【0059】
本発明は特に太陽電池相互を接続する表面処理銅箔として半田濡れ性の改善に加えて、防錆力を完全に発揮する表面処理銅箔を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅箔表面に付着量が0.013〜0.25mg/dmのZn層を形成してなる表面処理銅箔。
【請求項2】
銅箔表面に真鍮層を形成してなる表面処理銅箔であって、前記真鍮層は銅箔表面に設けた0.013〜0.25mg/dmの付着量のZn層と銅箔表面とで真鍮化処理がなされた真鍮層である表面処理銅箔。
【請求項3】
銅箔表面にZn層が設けられ、その上に0.010〜0.030mg/dmの付着量のIn層が設けられている表面処理銅箔。
【請求項4】
銅箔表面に真鍮層、該真鍮層表面にIn層が形成されている表面処理銅箔であって、前記真鍮層は銅箔表面に設けた0.010〜0.25mg/dmの付着量のZn層と銅箔表面とで真鍮化処理がなされた真鍮層であり、前記In層は付着量が0.010〜0.030mg/dmである表面処理銅箔。
【請求項5】
銅箔表面に0.013〜0.25mg/dmのZnを付着してZn層を形成する表面処理銅箔の製造方法。
【請求項6】
銅箔表面に真鍮層が形成されている表面処理銅箔の製造方法であって、前記真鍮層は銅箔表面に0.013〜0.25mg/dmのZnを付着してZn層とし、該Zn層と前記銅箔表面とを真鍮化処理して形成する表面処理銅箔の製造方法。
【請求項7】
銅箔表面にZnを付着してZn層とし、該Zn層上に0.010〜0.030mg/dmのInを付着してIn層とする表面処理銅箔の製造方法。
【請求項8】
銅箔表面に真鍮層、該真鍮層表面にIn層が形成されている表面処理銅箔の製造方法であって、前記真鍮層は銅箔表面に0.010〜0.25mg/dmのZnを付着してZn層とし、該Zn層と銅箔表面とで真鍮化処理して真鍮層とし、前記In層は0.010〜0.030mg/dmのInを付着してIn層とする表面処理銅箔の製造方法。
【請求項9】
銅箔表面に0.013〜0.25mg/dmの付着量のZn層が形成され、該Zn層の上に半田層が設けられている表面処理銅箔。
【請求項10】
銅箔表面に設けた0.013〜0.25mg/dmの付着量のZn層と前記銅箔とで真鍮層が形成され、該真鍮層の上に半田層が設けられている表面処理銅箔。
【請求項11】
銅箔表面にZn層が設けられ、該Zn層上に0.010〜0.030mg/dmの付着量のIn層が設けられ、該In層上に半田層が設けられている表面処理銅箔。
【請求項12】
銅箔表面に設けた0.010〜0.25mg/dmの付着量のZn層と前記銅箔とで真鍮層が形成され、該真鍮層の上に0.010〜0.030mg/dmの付着量のIn層が設けられ、該IN層上に半田層が設けられている表面処理銅箔。

【公開番号】特開2012−158828(P2012−158828A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21412(P2011−21412)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】