説明

表面処理顔料及びそれを含有する化粧料

【課題】人体にとって安全で、皮膚への密着性が良く、且つ使用感の優れる表面処理顔料を提供するとともに、この表面処理顔料を含有することにより、肌に潤い感を与え、化粧持続性に優れる化粧料を提供する。
【解決手段】コメヌカから得られる天然由来の水素添加コメヌカ油を顔料の表面に被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体にとって安全で、皮膚への密着性が良く、使用感の優れる表面処理顔料及びその表面処理顔料を含有する化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に撥水性を付与して化粧崩れを防止するために、化粧料に配合される粉体成分に、シリコーン化合物やフッ素化合物で疎水化処理された顔料を用いることが行われている(特許文献1,2参照)。しかし、シリコーン化合物やフッ素化合物で顔料表面を被覆した化粧料用表面処理顔料は、耐水性には優れているものの、化合物に由来するパサパサした感じでしっとり感がなく、生体への親和性が悪いことにより肌への付着性が悪くなるといった問題点がある。
【0003】
一方、顔料の感触を向上させる手段として、コラーゲンで顔料表面を被覆する方法(特許文献3参照)などが知られているが、コラーゲンは動物性タンパク質であることからその使用が制限されるという問題点がある。
また、近年、消費者の天然物指向の高まりにより、天然物由来の化合物を用いた化粧料が大変望まれており、人体にとって安全で、皮膚への密着性が良く、且つ使用感の優れる化粧料の開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−119741号公報
【特許文献2】特開2001−2524号公報
【特許文献3】特開昭61−69710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前述のような問題点に鑑みてなされたもので、従来のシリコーン処理顔料と遜色がないものができ、且つ人体にとって安全で、皮膚への密着性が良く、使用感の優れる表面処理顔料を提供するとともに、この表面処理顔料を配合することにより、耐水性及び持続性に優れて、且つしっとりとした使用感を得ることのできる化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、顔料と溶剤中に添加して加熱溶解させた水素添加コメヌカ油とを均一に混合した後、加熱乾燥し、粉砕することにより、撥水性を持ち、且つしっとりとした感触のある表面処理顔料が得られることを見出した。
【0007】
要するに、第1発明による表面処理顔料は、顔料表面にコメヌカから得られる水素添加コメヌカ油を被覆処理してなることを特徴とするものである。
【0008】
また、第2発明による化粧料は、第1発明の表面処理顔料を含有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
第1発明による表面処理顔料によれば、コメヌカから得られる植物油である水素添加コメヌカ油を原料としていることより、人体にとって安全である。また、コメヌカ油にはトリグリセリド、スフィンゴ糖脂質などの成分を含有するため、皮膚への密着性が良く、且つ肌に潤い感を与え、その効果の持続性に優れる化粧料用の表面処理顔料を得ることができる。
【0010】
また、第2発明によれば、第1発明に係る表面処理顔料を含有していることから、安全性が高く、皮膚への密着性及び親和性に優れ、化粧持ち改善効果に優れ、さらに、しっとりとした使用感に優れる化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明による表面処理顔料及びそれを含有する化粧料の具体的な実施の形態について説明する。
【0012】
本発明の水素添加コメヌカ油による表面処理とは、水素添加コメヌカ油を顔料表面に直接被覆することである。ここで、表面処理される顔料には、従来公知のものを使用することができ、その形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、鱗片状、紡錘状等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)は問わない。例えば無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料等を使用することができる。
【0013】
具体的には、無機粉体としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等が挙げられる。
【0014】
また、有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロン、6ナイロン、アクリルパウダー、アクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン、天然セルロース粉末、セロファン粉砕物、米粉等が挙げられる。
【0015】
また、界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等がある。
【0016】
さらに、有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、微粒子酸化チタン、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化亜鉛等の微粒子粉体、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等がある。
【0017】
また、パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等がある。
【0018】
また、金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等から選ばれる粉体が挙げられる。
【0019】
また、タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる顔料が挙げられる。
【0020】
さらに、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の紫外線散乱成分を使用することで、紫外線防御機能を有する処理粉体とすることも可能である。
【0021】
本発明による表面処理顔料を得るための処理方法としては、水素添加コメヌカ油を適当な有機溶剤に溶解または分散させ、その混合液を所要の顔料と撹拌混合した後、有機溶剤を除去することで、水素添加コメヌカ油被覆顔料を得ることができる。
【0022】
ここで用いられる有機溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系有機溶剤、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の極性有機溶剤などが挙げられる。
【0023】
また、混合分散方法としては、溶液の濃度や粘度などに応じて適当な方法を選択することができる。好適な例としては、ディスパー、ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、ニーダー、V型混合機、ロールミル、ビーズミル、2軸混練機等の混合機による方法や、水溶液と顔料を加熱空気中に噴霧して水分を一気に除去するスプレードライなどの方法を選択することができる。また、粉砕を行う場合においては、ハンマーミル、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等の通常の粉砕機を用いることができる。いずれの粉砕機によっても同等の品質のものが得られるため、特に限定されるものではない。
【0024】
ここで、水素添加コメヌカ油の顔料への表面処理量は、特に限定されるのものではないが、目的とする耐水性を示し、非常にしっとりとした素肌感を得るには、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0025】
本発明において、水素添加コメヌカ油にて被覆される顔料には、さらに各種の表面処理、例えば従来公知の表面処理が行われても構わない。この表面処理の例としては、フッ素化合物処理(パーフルオロアルキルリン酸エステル処理、パーフルオロアルキルシラン処理、パーフルオロポリエーテル処理、フルオロシリコーン処理、フッ素化シリコーン樹脂処理等)、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、気相法テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン処理等)、シリコーン樹脂処理(トリメチルシロキシケイ酸処理等)、ペンダント処理(気相法シリコーン処理後にアルキル鎖などを付加する方法)、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、アルミニウムカップリング剤処理、シラン処理(アルキル化シランやアルキル化シラザン処理等)、油剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理(ステアリン酸塩やミリスチン酸塩処理等)、アクリル樹脂処理、天然植物由来界面活性剤処理、ホホバ油処理、水添ホホバ油処理、ホホバエステル処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理等が挙げられる。また、これらの処理を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0026】
また、本発明の化粧料では、通常、化粧料に用いられる油剤、界面活性剤、顔料、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、樹脂、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等の各種成分を、本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。
【0027】
前記油剤の例としては、アボカド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、肝油、キャンデリラロウ、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、キョウニン油、鯨ロウ、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、セラックロウ、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、豚脂、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、馬脂、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、羊脂、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等が挙げられる。
また、炭化水素油として、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
また、高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
さらに、高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、POEコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等が挙げられる。
また、エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられる。
また、グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル;シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ビフェニルシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、アルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン等が挙げられる。
【0028】
本発明の化粧料で用いる顔料としては、上記と同様の顔料を使用することができる。また、この顔料には、前述の各種表面処理がなされていることが好ましい。
【0029】
本発明の化粧料としては、スキンケア製品、頭髪製品、制汗剤製品、メイクアップ製品、紫外線防御製品、香料溶剤等が好ましい用途として挙げられる。例えば、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、ネイルカラー、リップクリーム、口紅、マスカラ等のメイクアップ化粧料、乳液、クリーム、ローション、サンスクリーン剤、サンタン剤、パック剤、クレンジング料、洗顔料などの基礎化粧料、ヘアカラー、セット剤、ボディーパウダー、デオドラント、脱毛剤、石鹸、入浴剤、ハンドソープ、香水等が挙げられる。また、製品の形態についても特に限定は無く、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、スプレー状等であって良い。
【実施例】
【0030】
次に、本発明による表面処理顔料及びそれを含有する化粧料の実施例について説明する。
【0031】
(製造実施例1)
酸化チタン1kgに対して、水素添加コメヌカ油2質量%をイソプロピルアルコール125g中に加え、加熱溶解させて処理剤溶液を作製した。次に、この処理剤溶液を、酸化チタン1kgが撹拌されているヘンシェルミキサー中に徐々に添加し、10分間以上撹拌した後、ヘンシェルミキサー槽内を加熱減圧して溶剤を除去した。顔料粉体をヘンシェルミキサーから取り出し、粉砕して加熱処理を行い、水素添加コメヌカ油で表面処理された粉体を得た。また、酸化チタンと同様にして、表面処理された赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄を得た。
【0032】
(製造実施例2)
セリサイト1kgに対して、水素添加コメヌカ油5質量%をイソプロピルアルコール200g中に加え加熱溶解させた後、塩化アルミニウム六水塩0.3質量%を添加し処理剤溶液を作製した。次に、この処理剤溶液を、セリサイト1kgが撹拌されているヘンシェルミキサー中に徐々に添加し、10分間以上撹拌した後、ヘンシェルミキサー槽内を加熱減圧して溶剤を除去した。顔料粉体をヘンシェルミキサーから取り出し、粉砕して加熱処理を行い、水素添加コメヌカ油で表面処理された粉体を得た。また、セリサイトと同様にして、表面処理されたタルク、マイカを得た。
【0033】
(製造実施例3)
微粒子酸化チタン1kgに対して、水素添加コメヌカ油3質量%をイソプロピルアルコール250g中に加え、加熱溶解させて処理剤溶液を作製した。次に、この処理剤溶液を、微粒子酸化チタン1kgが撹拌されているヘンシェルミキサー中に徐々に添加し、10分間以上撹拌した後、ヘンシェルミキサー槽内を加熱減圧して溶剤を除去した。顔料粉体をヘンシェルミキサーから取り出し、粉砕して加熱処理を行い、水素添加コメヌカ油で表面処理された粉体を得た。また、微粒子酸化チタンと同様にして、表面処理された微粒子酸化亜鉛を得た。
【0034】
(製造比較例1)
製造実施例1,2,3で使用した、未処理の酸化チタン、セリサイト、タルク、マイカ、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛を製造比較例1とした。
【0035】
(製造比較例2)
顔料に対して2質量%のシリコーン化合物で表面被覆処理された酸化チタン、セリサイト、タルク、マイカ、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛を製造比較例2とした。
【0036】
ここで、製造実施例1及び製造実施例2により得られた水素添加コメヌカ油処理顔料について、水液滴の接触角(°)を測定し、製造比較例1及び製造比較例2で得られた顔料と撥水性の評価を行った。その評価結果が表1に示されている。
【0037】
【表1】

【0038】
表1の結果から分かるように、製造比較例1の未処理顔料は、撥水性が無かったが、製造実施例1の水素添加コメヌカ油で処理した顔料には、優れた撥水性が付与されていて、製造比較例2で得られた従来のシリコーン処理と遜色がなく、ファンデーションに十分である100°以上の接触角が見られた。
【0039】
(実施例1:パウダーファンデーション)
上記の製造実施例1及び製造実施例2により得られた水素添加コメヌカ油処理顔料を用いて、以下の配合にてパウダーファンデーションを調製した。
(成分A)
被覆処理セリサイト 30.0
被覆処理タルク 22.0
被覆処理マイカ 18.0
被覆処理酸化チタン 8.8
被覆処理黄酸化鉄 3.7
被覆処理赤酸化鉄 1.2
被覆処理黒酸化鉄 0.7
ナイロンパウダー 3.6
(成分B)
ジメチルポリシロキサン(6CS) 5.0
ジメチルポリシロキサン(10,000CS) 3.0
精製ラノリン 1.8
エステル油 2.2
合計 100.0
【0040】
(実施例2:100%天然パウダーファンデーション)
次に、上記の製造実施例1及び製造実施例2により得られた水素添加コメヌカ油処理顔料を用いて、以下の配合にてパウダーファンデーションを調製した。
(成分A)
被覆処理セリサイト 30.0
被覆処理タルク 22.0
被覆処理マイカ 18.0
被覆処理酸化チタン 8.8
被覆処理黄酸化鉄 3.7
被覆処理赤酸化鉄 1.2
被覆処理黒酸化鉄 0.7
ナイロンパウダー 3.6
(成分B)
米サラダ油 7.8
イソステアリン酸硬化ヒマシ油 4.2
合計 100.0
【0041】
(パウダーファンデーションの製造方法)
上記実施例1,2のパウダーファンデーションは次のようにして製造される。すなわち、成分Aをミキサーにて混合し、次いで、均一に混合・溶解した成分Bを成分Aに加えてさらに混合する。この後、得られた粉末を粉砕し、メッシュを通した後、金型を用いて金皿に打型して製品を得る。
【0042】
(比較例1)
製造比較例1の未処理顔料を用いて、実施例1の配合にてパウダーファンデーションを調製した。
【0043】
(比較例2)
製造比較例2のシリコーン処理顔料を用いて、実施例1の配合にてパウダーファンデーションを調製した。
【0044】
上記実施例1、2および比較例1、2にて得られた各パウダーファンデーションを肌に塗布して、塗布直後と塗布後1時間経過した時点でのしっとり感についての評価並びに、肌への密着性、化粧持ち改善効果及び使用感についての評価を行った。その評価結果が表2に示されている。
【0045】
【表2】

ここで、表2の各項目についての評価基準は次のとおりである。
◎:良好
○:やや良好
△:やや不良
×:不良
【0046】
表2の結果から明らかなように、水素添加コメヌカ油処理顔料を用いた実施例1のパウダーファンデーションは、しっとり感があって、肌への密着性に優れ、化粧持ちがよく、肌に均一になじむ使用感の優れたものであることが分かった。また、従来のシリコーン処理の問題点であるパサパサ感を改善することもできた。しかも、これらの水素添加コメヌカ油処理顔料を用い、100%天然であるパウダーファンデーションも調製することが可能であることが分かった。
【0047】
(実施例3:油中水型ファンデーション)
製造実施例1および製造実施例2で得られた表面被覆処理顔料を用いて、下記の製造方法に従って、以下の配合にて油中水型ファンデーションを調製した。なお、表中の単位は質量%である。
[成分A]
ジメチコンコポリオール/デカメチルシクロペンタ
シロキサン溶液(注1) 15.0
合成ワックス 1.0
ベヘン酸アラキル 0.5
トリヒドロキシステアリン 0.4
ラウレス−7 0.5
フェニルトリメチコン 5.0
イソノナン酸イソトリデシル 5.5
プロピルパラベン 0.1
シリコーンゲル(注2) 3.2
[成分B]
表面処理酸化チタン 10.0
表面処理タルク 4.0
表面処理黄酸化鉄 0.8
表面処理赤酸化鉄 0.3
表面処理黒酸化鉄 0.1
[成分C]
精製水 残部
プロピレングリコール 8.0
塩化ナトリウム 2.0
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.3
フェノキシエタノール 0.2
エデト酸二ナトリウム 0.1
合計 100.0
(注1)BY22−008M(東レ・ダウコーニング社製)
(注2)KSG−16(信越化学工業社製)
【0048】
(油中水型ファンデーションの製造方法)
上記実施例3の油中水型ファンデーションは次のようにして製造される。すなわち、成分Bをミキサーにて混合し、一方、成分Aを80℃に加温し、均一になるように混合する。ここに成分Bを撹拌下に徐々に添加し、50℃まで徐冷する。次いで、成分Cを80℃に加温し、均一に溶解させた後、50℃にまで徐冷する。成分Aに成分Cを撹拌下に加え、さらに良く撹拌し、室温まで冷却して得られた溶液を容器に充填し製品を得る。
【0049】
(比較例3)
実施例3の配合にて、製造比較例1の未処理顔料を用い、油中水型ファンデーションを調製した。
【0050】
(比較例4)
実施例3の配合にて、製造比較例2のシリコーン処理顔料を用い、油中水型ファンデーションを調製した。
【0051】
(油中水型ファンデーションの評価項目)
女性パネラー10名を用いて、試験品を使用してもらい、保湿性、密着性、使用感をアンケート形式で回答してもらい、評価が悪い場合を0点、評価が良い場合を5点とし、パネラーの平均点数を以って評価結果とした。従って、点数が高い程評価が優れていることを示す。また、経時安定性は、40℃、3カ月間保存した後、その状態を目視により、以下の基準で評価した。
◎:状態に変化は認められない。
○:状態にやや変化が認められる。
△:状態に大きな変化が認められる。
×:分離が認められる。
この評価結果が表3に示されている。
【0052】
【表3】

【0053】
表3から明らかなように、本発明による表面被覆処理顔料を用いた油中水型ファンデーションは、保湿性、密着性、使用感の全てにおいて優れており、また経時安定性にも優れていた。
【0054】
(実施例4:油中水型サンスクリーン)
製造実施例3で得られた表面被覆処理顔料を用いて、下記の製造方法に従って、以下の配合にて油中水型サンスクリーンを調製した。なお、表中の単位は質量%である。
[成分A]
イソノナン酸トリデシル 3.0
フェニルトリメチコン 1.0
ジメチコンコポリオール/デカメチルシクロペンタ
シロキサン溶液 1.0
シクロペンタシロキサン 30.0
PEG−10ジメチコン 5.0
[成分B]
該処理微粒子酸化チタン 7.0
該処理微粒子酸化亜鉛 15.0
[成分C]
精製水 残部
1,3−ブチレングリコール 6.0
塩化ナトリウム 1.0
フェノキシエタノール 0.2
エデト酸二ナトリウム 1.0
合計 100.0
【0055】
(油中水型サンスクリーンの製造方法)
上記実施例4の油中水型サンスクリーンは次のようにして製造される。すなわち、成分Bをミキサーにて混合し、一方、成分Aを80℃に加温し、均一になるように混合する。ここに成分Bを撹拌下に徐々に添加し、40℃まで徐冷する。次いで、成分Cを80℃に加温し、均一に溶解させた後、40℃にまで徐冷する。成分Aに成分Cを撹拌下に加え、さらに良く撹拌し、室温まで冷却して得られた溶液を容器に充填し製品を得る。
【0056】
(比較例5)
実施例4の配合にて未処理の顔料を用い、油中水型サンスクリーンを調製した。
【0057】
(比較例6)
実施例4の配合にてシリコーン処理の顔料を用い、油中水型サンスクリーンを調製した。
【0058】
油中水型サンスクリーンの評価は、油中水型ファンデーションを評価した方法と同様の方法にて行った。その評価結果が表4に示されている。
【0059】
【表4】

【0060】
表4から明らかなように、本発明による表面被覆処理顔料を用いた油中水型サンスクリーンは、保湿感、密着性、使用感の全てにおいて優れており、また経時安定性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の表面処理顔料を含有する化粧料は、耐水性に優れて、且つしっとりとした使用感が持続するという特性を有するものであり、肌への密着性が良く、使用感の優れる化粧料であることから、ファンデーション、アイシャドウ、口紅等のメイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料または乳液、クリーム等の基礎化粧料に配合して好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料表面にコメヌカから得られる水素添加コメヌカ油を被覆処理してなることを特徴とする表面処理顔料。
【請求項2】
請求項1に記載の表面処理顔料を含有することを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2012−131756(P2012−131756A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287225(P2010−287225)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】