説明

表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置、および表面加工装置

【課題】加工ヘッドがガラス基板の端を超えた位置まで移動してもエッチャント領域を安定にでき、ガラス基板の周縁部まで高精度な加工を可能とする。
【解決手段】中央開口部に合わせてガラス基板を垂直姿勢に保持するベース板52の前面側に保持したガラス基板3の表面に加工ヘッド2によりエッチャントを供給し、吸引することにより、加工ヘッド2とガラス基板3との隙間に一定面積のエッチング領域をなすエッチャントの流路を形成し、加工ヘッド2とガラス基板3とを相対的に走査してガラス基板3の表面を加工する表面加工装置において、ベース板52に形成した中央の開口部51の周囲にガラス基板3の裏面側外周部を吸着保持する真空チャック部54をそれぞれ設け、ダミー部材60に高さ、傾き調整用のねじ64、65を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板、半導体基板等の平板状被加工物を保持する保持装置に係り、加工ヘッドによりフッ酸等のエッチャント(エッチング液)を被加工物としてのガラス基板の表面に供給し、吸引することにより、該加工ヘッドと被加工物との隙間に一定面積のエッチング領域をなすエッチャントの流路を形成し、例えば加工ヘッドを走査して被加工物の表面を加工する表面装置において、被加工物を確実に保持固定できる表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置、および表面加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビやパソコンモニターのパネルは、TFTアレイやカラーフィルターから構成されており、これらは露光装置を用いてフォトマスクに描かれたパターンを繰り返し転写することにより作製される。
【0003】
近年、大型液晶テレビの需要拡大に伴い、大型パネルに対応したフォトマスクの大型化、さらに、ディスプレイの高画質化が進んできたことにより、パネルの品質を左右するフォトマスクの高精細化が求められてきている。
【0004】
フォトマスクサイズとして、1220mm×1400mmの露光装置も発表され、さらに大型化が進むとされる。
【0005】
フォトマスクの基材としては、熱膨張係数の小さい合成石英ガラスが用いられるが、露光精度にはこの基材の平坦度が大きく左右する。平坦度の悪い基材を用いると、パターンずれを引き起こし、高精細なものが得られないことが経験上把握され、平坦度として数μmが求められている。
【0006】
この平坦度のような厳しい要求性能を、従来の水、研磨砥粒、研磨布を用いた両面研磨法や片面研磨法等の機械研磨法で行うことは非常に難しいものと考えられる。
【0007】
このような機械的研磨法にあっては、研磨面圧と研磨ヘッドと被加工物との相対的運動速度の均一化等を工夫することにより、基板の平坦化を高めるようにしているが、基板全面を同時に研磨しながら平坦化するため、部分的な形状を平坦化するための制御が極めて難しいのが現状である。
【0008】
そこで、機械加工に代わる加工方法として、プラズマを用いて局所的なエッチングを行い表面を平坦化する方法が提案されている。これは、予め被加工物の形状あるいは厚さ分布を測定後、その分布に応じて被加工物上のプラズマの走査速度を制御することにより、エッチングの除去量を制御し、高平坦化を実現するための修正加工方法である。
【0009】
このプラズマエッチング方法をガラス基板の加工に適応した場合、このプラズマエッチングによる修正加工方法では、ガラス基板の大型化に伴って加工時間が極端に長くなるため、加工速度を速める必要がある。加工速度を速めるためには、加工領域の拡大、すなわちプラズマ領域の大面積化が必要であるが、その材料物性の違いから、具体的には、比誘電率、熱伝導率の違いから、プラズマが不安定となり加工量が変動したり、投入電力が増大し、熱がガラス基板に蓄積されることにより制御が難しくなり、被加工物の表面粗さを悪化させることになる。
【0010】
また、プラズマエッチング方法では、真空チャンバー、ガス排気装置等の高価な装置を必要とし、大型ガラス基板の加工では、加工に係る費用がさらに増大するという問題がある。
【0011】
そこで、本出願人は、上述した機械的な加工方法、プラズマエッチング加工方法に代わる新たな加工方法として、ケミカルエッチング法に着目した(特許文献1、2)。
【0012】
特許文献1に開示のケミカルエッチング法は、活性状態と不活性状態とを温度により取り得るエッチング液(エッチャント)を使用し、タンク内に収容されている不活性のエッチャントに浸漬している半導体基板の主面の一部にエッチャント噴出用ノズルによって活性のエッチャントを当てつつ、該半導体基板の主面に平行する方向に、該エッチャント噴出用ノズルに対して該半導体基板を相対移動させてその主面全体に活性のエッチャントを当てると共に、該半導体基板の主面に当てた反応後のエッチャントをエッチャント排出用パイプによって直ちにタンク外部へ排出する。
【0013】
特許文献2には、処理液としてのエッチャントが供給される導入通路と該エッチャントが排出される排出通路を有するパイプを内外に配置した同心管構造のノズルが開示され、被処理物に向けてエッチャントを内側のパイプより供給し、外側のパイプと内側のパイプとの隙間から被処理物に向けて供給されたエッチャントを供給する。
【特許文献1】特開平11−045872号公報
【特許文献2】特開平10−163153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した特許文献1に開示の技術を大きなサイズの被加工物に適用しようとする場合、この被加工物を収容することができるタンクが必要となり、設備が非常に大きくなり、現実的ではない。
【0015】
これに対し、特許文献2に開示の技術では、基板を不活性なエッチャントが収容されているタンク内に浸漬する必要はないが、本発明者等はこのようなケミカルエッチングによりガラス基板等の表面を平坦化加工することについて実験を行ったところ、目的とする平面形状が得られない場合が生じることを知見した。
【0016】
ここで、ガラス基板等の表面を平坦化加工する手法としては、ガラス基板等の被加工物の表面形状を測定して得られた測定データに基づいて、該被加工物の表面を目的とする形状となるように部分的に加工するという修正加工が用いられている。
【0017】
そこで、この修正加工を上述のケミカルエッチング式の表面加工方法に適用して被加工物の表面を高平坦度に加工するためには、加工ヘッドによりフッ酸等のエッチャント(エッチング液)をガラス基板、半導体基板等の被加工物の表面に供給し、吸引することにより、該加工ヘッドと被加工物との隙間に一定面積のエッチング領域をなすエッチャントの流路を形成し、例えば加工ヘッドを表面形状測定データと目的とする形状とにより決定される除去量に応じた走査速度で走査する。その際、加工ヘッドを静止した状態でエッチング領域によって形成された被加工物の表面に単位となる加工痕形状(以下、単位加工痕と称す)を測定し、測定結果に基づく単位加工痕に基づいて、加工前における被加工物の表面から加工により除去すべき除去量と加工ヘッドの走査速度を求め、この走査速度により加工ヘッドを駆動する。
【0018】
このような加工方法において、ガラス基板を垂直姿勢に保持すると加工装置全体の平面的な占有スペースを小さくすることができ、特に大型のガラス基板では大幅な省スペース化が実現できるが、加工中にガラス基板が外れることなく確実に保持することが必要である。
【0019】
また、このような加工方法において、本出願人は、ガラス基板の周囲に平板状のダミー材を配置することで、加工ヘッドがガラス基板の端を超えた位置まで移動してもガラス基板の周縁部について目的とする平面形状が得られるようにしたことを提案しているが、ガラス基板を保持した状態で、ガラス基板とダミー材との表面に段差を生じさせないことも必要である。
【0020】
本発明の第1の目的は、加工ヘッドがガラス基板等の平板状被加工物の端を超えた位置まで移動してもエッチャント領域を安定にでき、平板状被加工物の周縁部まで高精度な加工が可能となる表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置、および表面加工装置を提供しようとするものである。
【0021】
本発明の第2の目的は、上記した第1の目的に加え、ガラス基板の周囲に配置するダミー材をガラス基板に対して段差無く配置できる表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置、および表面加工装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の目的を実現する表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置の第1の構成は、中央の開口部に合わせて平板形状の被加工物を垂直姿勢に保持する保持板を備えた被加工物保持装置を有し、前記保持板の前面側に保持された該被加工物の表面に加工ヘッドによりエッチャントを供給し、吸引することにより、該加工ヘッドと被加工物との隙間に一定面積のエッチング領域をなすエッチャントの流路を形成し、該加工ヘッドと該被加工物とを相対的に走査して被加工物の表面を加工する表面加工装置において、前記被加工物保持装置は、前記保持板に形成した中央の開口部の周囲に前記被加工物の裏面側外周部を吸着保持する真空チャック部をそれぞれ設け、前記被加工物を保持するために前記真空チャック部が設けられた被加工物保持領域の外周に、被加工物の表面に連なる平板状のダミー部材を取り付けたダミー部材取り付け領域を複数有し、各ダミー部材取り付け領域にそれぞれ前記ダミー部材を取り付けたことを特徴とする。
【0023】
本発明の目的を実現する表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置の第2の構成は、上記した第1の構成で、前記ダミー部材は、前記保持板に対して前後方向位置を複数個所で調整可能とするダミー部材前後方向位置調整機構により保持固定されていることを特徴とする。
【0024】
本発明の目的を実現する表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置の第3の構成は、上記したいずれかの構成で、前記保持板は、前記被加工物保持領域を構成し、前記中央の開口部を有する枠形状の第1板部材と、前記ダミー部材取り付け領域を構成し、前記第1板部材を内側開口部に嵌合し、前記第1板部材と少なくとも前後方向に相対移動可能な第2板部材と、前記第1板部材と前記第2板部材との前後方向相対位置を調整可能として前記第1部材と第2部材とを複数個所でそれぞれ保持固定する前後方向相対位置調整器と、を有することを特徴とする。
【0025】
本発明の目的を実現する表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置の第4の構成は、上記した第3の構成で、前記第1部材を前記第2部材に対してスライド可能に保持するスライドガイド手段を有することを特徴とする。
【0026】
本発明の目的を実現する表面加工装置の第1の構成は、上記した第2から第4の構成の前記垂直保持装置に平板状被加工物を前記真空チャック部で保持し、前記前後方向位置調整機構により該平板状被加工物表面と前記ダミー部材表面とをフラットになるように位置調整した後、前記垂直保持装置を主走査方向および副走査方向の2方向に移動可能な前記加工ヘッドの走査面に対して平行に対向配置したことを特徴とする。
【0027】
本発明の目的を実現する表面加工装置の第2の構成は、前記垂直姿勢の被加工物に対向配置され、主走査方向および副走査方向の2方向に移動可能で、かつ副走査方向に隔設して配設した複数の移動体を有し、前記各移動体に前記加工ヘッドをそれぞれ取り付けたことを特徴とする。
【0028】
本発明の目的を実現する表面加工装置の第3の構成は、上記した表面加工装置の第2の構成で、前記複数の移動体に連係して該複数の移動体を同時に副走査方向に同量移動させる移動機構を有することを特徴とする。
【0029】
本発明の目的を実現する表面加工装置の第4の構成は、上記した表面加工装置の第2の構成で、前記複数の移動体を個々に副走査方向へ移動させる移動機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、垂直姿勢にガラス基板等の被加工物を取り外し可能にその裏面側から吸着保持できるので、加工ヘッドによる被加工物の表面加工に影響を与えることがなく、また加工中に倒れることも防止することができ、吸着保持するガラス基板等の平板状被加工物の外周に配置したダミー部材により加工ヘッドがガラス基板等の平板状被加工物の端を超えた位置まで移動してもエッチャント領域に乱れが生じることがなく、ガラス基板等の平板状被加工物の周縁部まで高精度な加工が可能となる。
【0031】
また、複数のダミー部材を用いることによりガラス基板等の被加工物の周囲にダミー部材を隙間なく配置することができる。
【0032】
請求項2に係る発明によれば、ダミー部材全体の傾き調整ができ、またダミー部材の部分的な凹凸調整を行うことができるるので、保持板に吸着保持したガラス基板等の被加工物の表面と同一レベルにダミー部材を取り付けることができる。
【0033】
請求項3に係る発明によれば、ガラス基板等の被加工物をダミー部材に対して傾き調整することができるので、ダミー部材と被加工物との繋ぎ目か所をフラットにすることができ、例えばダミー部材および被加工物表面との距離を測定しながら加工ヘッドの姿勢を制御してこの繋ぎ目か所を通過する際、加工ヘッドがダミー部材あるいは被加工物の表面に接触するのを防止することができる。
【0034】
請求項4に係る発明によれば、ガラス基板等の被加工物をスライドさせてダミー部材との傾きを一致させることができる。
【0035】
請求項5に係る発明によれば、ガラス基板等の平板状被加工物とダミー部材との表面をフラットにした状態で加工ヘッドにより表面加工が実現できる。
【0036】
請求項6から7に係る発明では、垂直姿勢に保持されたガラス基板等の被加工物に対する加工ヘッドによる加工時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下本発明を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0038】
図1は本発明によるケミカルエッチング式の表面加工装置(湿式エッチング加工装置と略す)を示す図、図2は図1の加工ヘッドと被加工物としてのガラス基板を垂直姿勢に保持する基板ホルダーとの関係を示す図である。
【0039】
図1に示す湿式エッチング加工装置1は、破線で囲ったエッチャント循環装置1Aと、エッチャント循環装置1Aと接続した加工ヘッド2を備え、被加工物としてのガラス基板3の表面に対して加工ヘッド2を直交する2方向に移動させる加工ヘッド走査装置1Bと、により構成している。被加工物としてのガラス基板3は、例えば合成石英ガラス板,フォトマスク基板,大型フォトマスク基板等が例示でき、大型基板としては一辺が300mm角以上のものを指す。また、加工物はガラス基板に限らず、シリコンウエハー等であっても良い。
【0040】
エッチャント循環装置1Aは、密閉構造のエッチャントタンク4内にフッ酸等のエッチャント5が収容され、このエッチャントタンク4内のエッチャント5をエッチャント供給系6により加工ヘッド2に供給する。また、加工ヘッド2とエッチャントタンク4とはエッチャント回収管7により接続され、加工ヘッド2からガラス基板3の表面に供給されたエッチャント5を吸引してエッチャント回収管7からエッチャントタンク4に戻す。
【0041】
また、エッチャントタンク4にはガス排気管8が接続され、吸引ポンプを兼ねるガス排気ポンプ9によりエッチャントタンク4内のガスを排気する。エッチャントタンク4のエッチャント5の濃度が低下あるいは増加した場合、またエッチャントの収容量が減少した場合に、濃度コントローラ10から、水11、エッチャント5を個々にあるいは混合してエッチャントタンク4内に補給管12を介して供給するようになっている。エッチャントとしては、フッ化水素酸(フッ酸)あるいはフッ化水素酸とフッ化アンモニウムの混合液等を使用することができる。
【0042】
エッチャント供給系6は、エッチャントタンク4側から順に、送液ポンプ13、熱交換器14、送液されるエッチャント5の温度を計測するための測温体15、送液されるエッチャント5の流量を調節する流量調節バルブ16、送液されるエッチャント5の流量を計測する流量計17、フッ酸濃度センサー18が配置され、フッ酸濃度センサー18から下流側に設けられたフレキシブル管からなる供給管19が加工ヘッド2に接続されている。
【0043】
熱交換器14は、測温体15の測温情報に基づいて送液されるエッチャント5の温度が所定の温度となるように、温調ユニット20によりエッチャント5を加熱或いは冷却する。また、流量調節バルブ16は、流量計17の流量情報に基づいて送液されるエッチャント5の流量が所定の流量となるように、流量を調節する。フッ酸濃度センサー18は、測定した濃度値を濃度コントローラ10へフィードバックし、エッチャントタンク4内を設定した濃度にコントロールする。
【0044】
吸引ポンプを兼ねるガス排気ポンプ9は、エッチャントタンク4内の気体を吸引して排気することによりエッチャントタンク4内を負圧状態とし、加工ヘッド2とガラス基板3との間に供給されたエッチャント5及びエッチャント5の一部から気化したガスを加工ヘッド2より吸引し、回収管7を通してエッチャントタンク4内に回収する。ガラス基板3の表面に供給されたエッチャント5の一部から気化したガスが拡散するとガラス基板3の表面を腐食して表面粗さを悪化させる原因の一つとなるが、この気化ガスを加工ヘッド2により吸引して排気することにより、ガラス基板3の表面における表面粗さを高めることができる。
【0045】
なお、エッチャント循環装置1Aにおける上述の各種制御は不図示の制御装置により実行される。
【0046】
加工ヘッド2は、円盤形状に形成されたノズルブロック体41と、ノズルブロック体41の背面側に接合される円盤形状の背面ブロック体42とを固定ねじ43とにより一体化して全体的に円盤形状とした構成としている。
【0047】
図1(b)に示すように、ノズルブロック体41は、中心位置にエッチャントを供給する供給ノズル部44を形成し、この供給ノズル部44を中心とする同一円周上にエッチャントを吸引して排出する複数の排出孔45が等ピッチで形成されている。ノズルブロック体41の背面側には、これら複数の排出孔45に対応して背面側に開口する第1周溝46が形成され、これら複数の排出孔45がこの周溝46に連通している。
【0048】
背面ブロック体42は、中心部に開口47を有するドーナツ状に形成され、前面には、第1周溝46と同一内外周径を有する第2周溝48が形成され、背面ブロック体42をノズルブロック体41に接合した際に、第1周溝46と第2周溝48とによって複数の排出孔45からのエッチャントを1箇所に集める環状の回収部を形成している。なお、排出孔45の直径を1mm以下、排出孔45の間隔を0.5mm以下とした。
【0049】
また、ノズルブロック体41と背面ブロック体42の材料としては、耐エッチャント特性に優れ、曲げ強度、硬度等の機械特性の優れたものを選定することが望ましい。特に、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂,硬質塩ビ,ABS,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリカーボネイト,メチルペンテン,PEEK等が用いられる。
【0050】
背面ブロック体42の胴部には、第2周溝48に連通する排出路49が複数形成され、これら排出路49の排出端部にエッチャント循環装置1Aの回収管7が接続される。そして、エッチャント循環装置1Aの供給管19が背面ブロック体42の開口47を通してノズルブロック体41のエッチャント供給ノズル部44に接続される。
【0051】
加工ヘッド2のエッチャント供給ノズル部44からガラス基板3の表面に連続的に供給されたエッチャント5は、該エッチャント供給ノズル部44を中心として半径Rの円周上に複数設けられた排出孔45に連続的に吸引排出されるので、ヘッドと被加工物の表面との間におけるエッチャントの流路が形成される一定の領域であるエッチング領域が半径Rで形成されることになる。
【0052】
1台の加工ヘッド2を用いて垂直保持姿勢のガラス基板3を加工しても良いが、本実施形態の加工ヘッド走査装置1Bは3台の加工ヘッド2を用いて垂直姿勢のガラス基板3を加工するようにしている。
【0053】
図2に示すように、加工ヘッド走査装置1Bは、被加工物であるガラス基板3を垂直姿勢に保持する不図示の基板保持台を装置基台31に固定し、該基板保持台に保持されたガラス基板3の表面に沿って垂直方向と水平方向の直交する2方向に移動可能な複数台(本例では3台)の2方向移動ステージ32の各移動体32A、32B、32Cに加工ヘッド2をそれぞれ取付けた構成とし、加工ヘッド走査速度制御部33により各加工ヘッド2を水平方向に移動させる主走査速度と、垂直方向に所定ピッチで送る副走査方向の送り量を制御している。そして、この加工ヘッド走査速度制御部33を除く前記基板保持台と3台の2方向移動ステージ32を装置カバー34により覆い、室内にエッチャント5が飛散し、気化ガスが放散されるのを防いでいる。
【0054】
3台の2方向移動ステージ32は、加工ヘッド2の走査方向に沿って対向配置した一対の垂直フレーム部材35Aと35Bの上部に水平フレーム部材35Cを取り付けて門型に形成したアルミ製のフレーム36に取り付けられている。そして、一対の垂直フレーム部材35Aと35Bにそれぞれ例えばボールねじ機構により構成した直線移動案内機構37を上下方向に取り付け、この一対の直線移動案内機構37に第1、第2、第3水平ビーム38A、38B、38Cを上下方向に離隔して取り付けている。
【0055】
さらに、一対の垂直フレーム部材35Aと35Bの間に、垂直方向に沿って副走査方向用のボールねじ40を取り付け、このボールねじ40に複数(本例では3個)の副走査用ナット部(不図示)を取り付け、これら3個の副走査用ナット部に水平ビーム38A、38B、38Cを取り付けている。
【0056】
これら3個の副走査用ナット部は、所定の間隔を有して上下に設置されていて、一対の直線移動案内機構37を同時に駆動することにより第1、第2、第3水平ビーム38A、38B、38Cを同時に超高精度に垂直方向に移動可能としている。
【0057】
また、第1、第2、第3水平ビーム38A、38B、38Cには、主走査方向駆動用のボールねじ39A、39B、39Cが走査方向に沿って取り付けられており、これらのボールねじ39A、39B、39Cの主走査用ナット部(不図示)に移動体32A、32B、32Cを固定し、これらの移動体32A、32B、32Cに加工ヘッド2をそれぞれ取付けている。
【0058】
主走査方向駆動用のボールねじ39A、39B、39Cと副走査方向用のボールねじ40には、それぞれのねじ部材を回転駆動する不図示のモータを有し、これらのモータを加工ヘッド走査速度制御部33により駆動制御している。
【0059】
すなわち、各加工ヘッド2は主走査方向には独立して移動し、全ての加工ヘッド2が例えば往方向への走査が終了するのを待って副走査方向用のボールねじ40を所定数回転させて第1、第2、第3水平ビーム38A、38B、38Cを同時に所定距離だけ例えば下方向に移動させる。そして、各ヘッド2を独立に例えば復方向に移動させる。本例では図2(b)に示すように、上から下に向けてジグザグに各加工ヘッド2を移動させる。
【0060】
本例では3台の加工ヘッド2を上下に隔設し、同時に駆動するため、1台の加工ヘッド2によりガラス基板2の全面を加工するのに要する総加工時間に比べて1/3の時間で加工することができ、加工時間の短縮化を図ることができる。
【0061】
なお、加工ヘッド2の構成としては種々の構成のものを使用することができ、その一例を以下に説明する。
【0062】
また、図2(c)に示すように、加工ヘッド2はガラス基板3の端を超えて外側まで移動して停止し、3台の加工ヘッド2が走査を終了すると、所定ピッチだけ降下し、反対方向へ走査を開始する。
【0063】
複数(本例では3個)の加工ヘッド2は、各2方向移動ステージ32の移動体32A、32B、32Cに取り付けられているため、図4(b)に示す加工ヘッド2の水平方向における往復主走査状態、図5(b)の垂直方向にステップ移動(副走査)する場合、加工ヘッド2が2方向移動ステージ32の移動体32A、32B、32Cに固定され、加工ヘッド2の表面が主走査方向および副走査方向に対して平行であると、ガラス基板3のゆがみにより加工ヘッド2の表面とガラス基板3の表面との面間距離が変化し、面間距離が拡がりすぎると液ダレ、液引きを生じる。
【0064】
エッチャントの液ダレ、液引き原因の一つとして、図1(b)に示す加工ヘッド2の供給ノズル部44からガラス基板表面に向けて供給されているエッチャントの全量が、供給ノズル部44の周囲に設けた排出孔45に吸引作用により流れるという安定状態では発生しないが、前記面間距離が拡がりすぎると上記したエッチャント流れの不安定化を招き、これにより前記液ダレ、液引きが発生する。
【0065】
このような液ダレや液引きはガラス基板等の被加工物に対する高平坦度の表面加工に大きな影響を及ぼすことになる。
【0066】
そこで、本実施形態ではガラス基板3の表面に対して加工ヘッド2の向きを3次元で変更可能とする所謂煽り動作を可能とし、加工ヘッド2の表面とガラス基板3の表面との間隙に介在するエッチャントが上述の安定状態で吸引排出するように加工ヘッド2の姿勢を制御している。
【0067】
図4(a)に示す往復主走査、図5(a)に示す副走査において、加工ヘッド2の表面とガラス基板3の表面との面間距離が拡がる場合には、上述の煽り動作により前記面間距離を上述の液ダレ、液引きの生じない所定範囲内とすることにより、ガラス基板3の表面を目的形状に加工することができ、高平坦度の表面を有するガラス基板を提供することが可能となる。
【0068】
また、図6(b)に示すように、加工ヘッド2が2方向移動ステージ32の移動体32A、32B、32Cに固定されている場合、ガラス基板3のゆがみによりガラス基板表面が加工ヘッド2側に近づきすぎていると、主走査軌道上を加工ヘッド2が移動する際、加工ヘッド2がガラス基板3に接触するおそれがある。
【0069】
しかし、加工ヘッド2を煽り動作させることにより、図6(a)に示すように、狭まった面間距離を拡げて加工ヘッド2がガラス基板3に接触することを回避することができる。
【0070】
したがって、ガラス基板3と加工ヘッド2の面間距離の上限値を液ダレ、液引きが生じない距離とし、加工ヘッド2がガラス基板3の表面に当接しない距離を下限値とする範囲内で加工ヘッドを煽り動作させれば良いことになる。
【0071】
本実施形態において、加工ヘッド2は、図3に示すように、加工ヘッド2の後端部に煽り動作を行わせる姿勢制御機構151を取り付け、この姿勢制御機構151を2方向移動ステージ32の移動体32A、32B、32Cに取り付けている。
【0072】
この姿勢制御機構151は、前記移動体32A、32B、32Cに固定される固定部152と、加工ヘッド2が取り付けられるヘッド取り付け部153とを前後方向に対向配置し、ヘッド取り付け部153の向きを固定部152に対して3次元で変更可能としている。
【0073】
姿勢制御機構151において、ヘッド取り付け部153の向きを変更可能とする向き変更機構は、3点支持を利用した構成で、矩形枠あるいは平板状に形成した固定部152とヘッド取り付け部153の間で、一箇所の角部に自在軸受をなすボール部材154を設け、このボール部材154の両側に位置する角部に第1アクチュエータ155と第2アクチュエータ156を配置し、また固定部とヘッド取り付け部153との間にコイルバネ157を配置し、コイルバネ157のバネ力によりヘッド取り付け部153を第1アクチュエータ155、および第2アクチュエータ156との当接端に常時当接するように付勢し、ヘッド取り付け部53にガタが生じないようにしている。
【0074】
また、姿勢制御機構151のヘッド取り付け部153には、ガラス基板3に向けて、加工ヘッド2の周囲に等間隔に4つの距離センサー158を図3(b)に示すように配置している。なお、距離センサー158は4点配置の構成としているが、3点配置としても良い。距離センサー158としては、レーザー変位計、空気マイクロメーター等が用いられる。
【0075】
距離センサー158は、加工ヘッド2の周囲の複数箇所で加工ヘッド2の表面とガラス基板3の距離を同時に測定し、測定値を姿勢制御駆動装置159に入力する。
【0076】
姿勢制御駆動装置159は、これらの距離センサー158からの測定値にバラツキがあれば、バラツキがないように第1アクチュエータ155、第2アクチュエータ156を駆動制御する。第1アクチュエータ155および第2アクチュエータ156は例えば電磁ソレノイドへの通電を制御することで作動部材を進退自在とし、該作動部材がヘッド取り付け部153の背面側と当接する。
【0077】
主走査方向に移動する加工ヘッド2が対向しているガラス基板3にゆがみがあると、姿勢制御駆動装置159は、これを複数の距離センサー158の測定値のバラツキとして検知し、当該移動箇所におけるガラス基板3のゆがみに合わせて加工ヘッド2の表面と平行となるように第1アクチュエータ155および第2アクチュエータ156を駆動制御して前記作動部材を進退させ、ヘッド取り付け部153の向きを変更して加工ヘッド2の姿勢を制御する。
【0078】
この加工ヘッド2の姿勢制御は、加工ヘッド2の主走査に伴って連続的に行われる。
【0079】
姿勢制御駆動装置159は、各距離センサー158の測定値における最大値と最小値の差が100μmとなるように第1アクチュエータ155と第2アクチュエータ156とを駆動制御して加工ヘッド2の表面がガラス基板3の対向部分と平行となるように姿勢制御する。なお、ガラス基板3の表面と加工ヘッド2の表面との距離は50μm〜500μmに設定する。
【0080】
本実施形態では、ガラス基板3を垂直姿勢に保持した状態で修正加工のために表面形状の測定を行い、この保持状態をそのまま維持して加工ヘッド2により修正加工を行っている。ガラス基板3を垂直姿勢に保持した状態でガラス基板3には上述のようにゆがみが生じている。
【0081】
しかし、加工前のガラス基板3を加工装置に垂直姿勢に保持した状態で、表面形状の測定を行い、この表面形状平坦化のために算出した目的の除去量に従って加工ヘッド2の駆動およびエッチャントの給排出等を制御しているので、加工後のガラス基板3を水平姿勢とした場合でも高平坦度の基板表面が得られる。
【0082】
上記した実施形態において、ガラス基板3の加工を要する表面を副走査方向に沿って3つの領域に等分に区分けし、各区分領域に対応して設けた加工ヘッド2により各区分領域を同時に加工し、第1〜第3水平ビーム38A、38B、38Cを同時に副走査方向に同量(同ピッチ)移動させているが、本発明はこれに限定されるものではなく、各加工ヘッド2を個々に副走査方向に移動できるようにしてもよい。また、各区分領域は副走査方向において等ピッチでなくても良く、個々の区分領域の副走査方向での長さが異なっていても良い。
【0083】
また、上記した構成の加工ヘッド2は、2方向移動ステージ32により、図2中矢印で示すように、垂直姿勢に保持されたガラス基板3の上端の水平方向一端側から他端側に向けて水平に移動する主走査を行い、該他端側の所定位置に到達すると、所定量だけ下方に送られる副走査を行った後、一端側に向けて主走査を行うというラスタースキャン方式により加工を行う。なお、スキャンの順序は、逆に下から上に向かって行うようにしても良い。
【0084】
上述した主走査速度の制御は、修正加工を前提とした場合、ガラス基板3の表面の形状を予め測定し、測定結果に基づいて目的の形状に最も近づくように、加工前形状と加工ヘッド2で加工してできる静止加工痕形状から加工除去量と加工ヘッドの主走査速度を演算する。例えば、凸形状の大きい部分はエッチング量を多く、凸形状の小さい部分や凹形状の部分はエッチング量を少なくするように加工ヘッド2の主走査速度を制御する。なお、加工ヘッド2がガラス基板3を通過した後の走査速度は、特に規定されないが加工処理時間を考えると増速するのが好ましい。
【0085】
ガラス基板3の表面の形状測定は、レーザー等を用いた非接触方式、触針等の接触方式の測定手段を用いて行うことができる。なお、測定はガラス基板3を垂直姿勢に保持して行うため、ガラス基板3の自重たわみの影響を排除することができる。
【0086】
本実施形態において、図7に示すように、ガラス基板3を垂直姿勢に保持する基板保持装置50は、アルミ製の平板により矩形平板形状に形成すると共に、中央部に矩形状の開口部51を形成したベース板52により構成している。
【0087】
開口部51の開口サイズは、保持するガラス基板3の外形サイズに対し外周縁からそれぞれ長さLだけ小さく形成している。ガラス基板3はこの開口部51に合わせて水平姿勢に保持されるが、開口部51の周囲に幅Lで形成された帯状の吸着帯部53に真空チャック54をそれぞれ複数個所(本実施形態では3個所)配設し、ガラス基板3の4辺の外周部をこれらの真空チャック54で吸着保持する。
【0088】
真空チャック54は、ベース板52の表面(ガラス基板3の保持側)にOリング55を該表面よりも前方に突出させて長楕円形状に形成した吸着パッド56と、この吸着パッド56の中に位置するようにベース板52の表裏(厚み方向)を貫通する吸引孔57とにより構成し、吸引孔57には不図示の真空源がパイプ(不図示)を介して接続される。
【0089】
そして、ガラス基板3の表面側(加工面側)を前側にして開口部51に合わせ、ガラス基板3の裏面側外周部を各吸着帯部53に設けた真空チャック54のOリング55に当接させると、Oリング55とガラス基板3との当接部分で形成された空間が真空となり、ガラス基板3を垂直姿勢でベース板52に吸着保持することができることになる。
【0090】
一方、このベース板52は、吸着保持されるガラス基板3を取り囲むように4枚の矩形平板状に形成されたダミー部材60が取り付けられる領域が形成されている。
【0091】
ダミー部材60は、ガラス基板3の端面と隙間なく、しかも厚み方向では段差無く接してダミー部材60の表面とガラス基板3の表面とが同一面となるようにしている。
【0092】
ダミー部材60は、ガラス基板3の外周部に加工ヘッド2が移動した際、ガラス基板3の縁よりはみ出た加工ヘッド2に対し、ガラス基板3が存在するのと同等の役割を果たすものである。もしもダミー部材60が配置されていない状態で加工ヘッド2の走査を行い、加工ヘッド2がガラス基板3の外周部に達してガラス基板3の縁よりもはみ出ると、加工ヘッド2とガラス基板3との隙間に形成されるエッチング領域がガラス基板3の外周縁よりも外方へはみでてしまい、エッチング領域をなすエッチャントの流路が乱れ、正規のエッチング領域での加工ができなくなる。
【0093】
これに対し、本実施形態のように、ガラス基板3の周囲をダミー部材60で隙間なくしかも段差を生じさせることなく取り囲むことにより、加工ヘッド2により形成されるエッチャント領域がガラス基板3の端に近づき、またガラス基板3の端を越えても、ダミー部材60がガラス基板3の端より延長されて存在しているので、エッチング領域を形成するエッチャントの流路に乱れが生じない。
【0094】
このため、ガラス基板3の端部について目的の形状通りに加工することが可能となる。
【0095】
本実施形態では、ベース板52に対してガラス基板3とダミー部材60とを取り付けているので、ガラス基板3をベース部材52に対して吸着保持した状態でダミー部材60の表面がガラス基板3の表面と一致するように厚み方向の位置調整を行えるようにしている。
【0096】
ダミー部材60は、エッチャントに対する耐食性を有する塩ビ等の材料により板状に形成された本体板61の裏面にアルミ製の裏板62を裏板62側からネジ63によりネジ止めして一体化し、本体板61の硬度および剛性を高くしている。なお、裏板62を設けることにより、後述の押ネジ64の先端面との当接で生じる当接面の磨滅を低減し、また後述の引きネジ65が螺合する有底のネジ穴62aを裏板62に形成することができる。
【0097】
ベース部材52には、ダミー部材60を取り付ける領域であるダミー部材取り付け領域52A、52B、52C、52Dが区画され、各ダミー部材取り付け領域52A、52B、52C、52Dには、押ネジ64が螺合するネジ孔58を複数形成すると共に、引きネジ65が挿通する引きネジ挿通孔59を複数形成している。本実施形態において、各ダミー部材取り付け領域52A、52B、52C、52Dにおけるネジ孔58および引きネジ挿通孔59の配置位置は同じとしており、また図7に示す例に限定されるものではない。
【0098】
押ネジ64は、ネジ孔58に螺合してこのネジ孔58を貫通し、押ネジ64の先端面がダミー部材60の裏板62に当接する。したがって、押ネジ64をねじ込むに従って押ネジ64の先端面はベース部材52の前面方向に飛び出るので、ダミー部材60を部分的に前方へ押し出す役割を担っている。
【0099】
また、引きネジ65は、先端部分にネジ部が形成されていて、頭部がベース部材52の座面に当接するまで引きネジ挿通孔59を挿通して先端ネジ部をダミー部材60の裏板62に設けた雌ネジ部62aに螺合する。この引きネジ65を締め付け方向に回転すると、ダミー部材60はベース部材52側に引き付けられると共に、ベース部材52に固定される。
【0100】
すなわち、ダミー部材60は引きネジ65によりダミー部材取り付け領域52A、52B、52C、52Dにそれぞれ固定され、引きネジ65の締付量を多くすると当該引きネジ65の周辺部分のダミー部材60がベース部材52側に引き込まれることになる。
【0101】
したがって、押ネジ64と引きネジ65とのねじ込み量を調整することで各ダミー部材60に対して部分的にベース部材52に対して遠ざかる方向と近づく方向に位置調整でき、真空チャック54で吸着保持されるガラス基板3の表面と同一レベルに各ダミー部材60の表面レベルを一致させることができる。
【0102】
このように、ガラス基板3の表面とダミー部材60の表面がフラットとなるように押ネジ64と引きネジ65とのねじ込み量を調整した後、基板保持装置50を加工ヘッド2の走査面に対して平行に対向配置する。
【0103】
第2実施形態
図8から図11は本発明の第2実施形態を示す。
【0104】
図8(a)は基板保持装置70を前面側から見た正面図、(b)は(a)のD−D矢視断面図、図9は基板保持装置70を裏面側から見た背面図、図10(a)は図9のE−E矢視断面図、図10(b)は図9のF−F矢視断面図、図11(a)は図9のG−G矢視断面図、図11(b)は図9のH−H矢視断面図である。
【0105】
第1実施形態では、一枚のベース板52の中央部に矩形の開口部51を形成し、開口部51の周囲に真空チャック54を備えた吸着帯部53を区画すると共に、吸着帯部53の周囲にダミー部材60を取り付けるダミー部材取り付け領域52A、52B、52C、52Dを区画した構成としているが、本第2実施形態の基板保持装置70は、真空チャック54を備えた矩形枠形状のガラス基板保持ベース(第1板部材)71と、ダミー部材60を取り付けるダミー部材取り付け領域72A、72B、72C、72Dを区画した矩形枠形状のダミー部材保持ベース(第2板部材)72とを別々の部材で構成し、ダミー部材保持ベース72の矩形枠内にガラス基板保持ベース71をガタなく嵌め込み、背面側でダミー部材保持ベース72とガラス基板保持ベース71とを四隅に設けた取り付け装置73により、一体的に取り付けている。
【0106】
なお、図10(a)に示すように、ガラス基板保持ベース71の厚みをダミー部材保持ベース72の厚みよりも厚くしており、ガラス基板保持ベース71の前面とダミー部材保持ベース72の前面とを同一レベルに合わせた状態において、背面側でガラス基板保持ベース71が背面側に突出し、ガラス基板保持ベース71とダミー部材保持ベース72とが段差を有して取り付けられている。
【0107】
取り付け装置73は、基板保持装置70を垂直姿勢に保持した状態で、ガラス基板保持ベース71の上下の枠部材71aの左右両端部に配置されている。取り付け装置73は、取り付け板73aの片側が枠部材71aから枠外方向にはみ出るようにして取り付け板73aの他側を固定ボルト73Bにより枠部材71aに固定し、取り付け板73aの片側部分に形成した第1孔部73bを貫通した取り付けボルト74の先端部をダミー部材保持ベース72にねじ込んで固定している。
【0108】
取り付けボルト74には頭部と取り付け板73aとの間に圧縮コイルばね75が弾装され、圧縮コイルばね75のばね力によりダミー保持ベース72を背面側に向けて付勢している。
【0109】
また、取り付け板73aの片側部分には第2孔部73cが形成され、この第2孔部73cに合わせてマイクロメータヘッド付きの高さ調整器76が取り付け板73aに取り付けられている。この高さ調整器76は、マイクロメーターで構成され、スリーブ76aを取り付け板73aにナット部材76bにより固定されている。そして、高さ調整器76のスピンドル76cが第2孔部73cを貫通してダミー部材保持ベース72の背面に当接し、圧縮コイルばね75のばね力で背面側に向けて付勢されているダミー部材保持ベース72の背面方向移動を規制する。
【0110】
基板保持装置70は、ダミー部材保持ベース72を装置本体に固定しているので、高さ調整器76のつまみ(シンブル)76dを回すと、スピンドル76cが前後方向に移動し、ダミー部材保持ベース72に対してガラス基板保持ベース71が圧縮コイルばね75のばね力あるいは該ばね力に抗して前後方向に移動し、ダミー部材保持ベースとガラス基板保持ベース71との相対的な高さが調整される。その際、マイクロメーターの目盛により高さ調整を行う。
【0111】
基板保持装置70を垂直姿勢に保持した状態で、ガラス基板保持ベース71の左右の枠部材71bの上下両端部には、スライドガイド装置77が配置されている。
【0112】
スライドガイド装置77は、取り付け板77aの片側が枠部材71bから枠外方向にはみ出るようにして取り付け板77aの他側を固定ボルト77Bにより枠部材71bに固定し、取り付け板77aの片側部分に形成した孔部77b内をガイドピン78が遊嵌状態で貫通し、ガイドピン78の貫通部にリニアブッシュ79を圧入しており、ガイドピン78の先端部をダミー部材保持ベース72にねじ込んで固定している。
【0113】
ガイドピン78の外径に対し、取り付け板77aの孔部77bの内径を大きくし、またリニアブッシュ79のフランジ部79aの外径を孔部77bの内径よりも十分大径としているので、ガラス基板保持ベース71をスライドさせてもリニアブッシュ79がこの孔部77bから抜けることがない。
【0114】
したがって、装置本体に固定されているダミー部材保持ベース72に対し、ガラス基板保持ベース71を垂直面内でスライドさせることができる。その際、高さ調整器76の取り付けボルト74の外径に対して第1孔部73bの内径を大径としているので、ガラス基板保持ベース71のスライドに高さ調整器76が支障となることはない。
【0115】
ダミー部材保持ベース72の各ダミー部材取り付け領域72A、72B、72C、72Dには、第1実施形態と同構造のダミー部材60が図11(b)に示す差動ネジ機構を用いたダミー部材取付装置80により、ダミー部材60を前後方向に押し引き可能に取り付けている。本実施形態において、ダミー部材取付装置80は、図9に示すように、1枚のダミー部材60に対し、5×3の態様で配置している。
【0116】
図11(b)に示すように、ダミー部材取付装置80は、ダミー部材60の裏面側にスダットボルト81を立設し、ダミー部材保持ベース72に形成した大径孔72aにスダットボルト81を遊嵌状態で貫通させ、このスダットボルト81をダミー部材保持ベース72に対して前後方向に位置調整することで、ダミー部材60の前後方向、傾きの調整を可能とする。この前後方向調整は、ダミー部材保持ベース72の裏面に固定した差動ネジ機構を構成する板ナット82に内外周部にそれぞれネジ部を形成した筒状の高さ調整ネジ83を螺合させ、この高さ調整ネジ83の内ネジにスダットボルト81を螺合させ、このスダットボルト81に螺合する係合ナット84を高さ調整ネジ83の端面に係合させている。
【0117】
このような構成において、高さ調整ネジ83の外周ネジと板ナット82とのネジピッチは、高さ調整ネジ83の内ネジとスダットボルト81とのネジピッチよりも小さく設定しているので、作動ネジ機構を構成する高さ調整ネジ83を回転させると、これらネジピッチの差によってスダットボルト81が前後方向に微小移動する。そして、高さ調整ネジ83にねじ込んでいる締付ナット85を板ナット82に当たるまで締付けることにより、高さ調整ネジ83が板ナット82に固定され、係合ナット84を高さ調整ネジ83の端に当接するまで締付けることにより、スダットボルト81の前後方向移動が規制される。
【0118】
本実施形態の場合も第1実施形態と同様に、ダミー部材60の表面とガラス基板3の表面とのレベルを一致させる調整をダミー部材取付装置80により行うことができる。さらに、ダミー部材保持ベース72に対してガラス基板保持ベース71を高さ調整機76により前後方向に移動して傾斜角度を調整でき、またスライドさせることができるので、ガラス基板保持ベース71に吸着保持されているガラス基板3の表面の傾きをダミー部材保持ベース72に保持されているダミー部材60の傾きと一致させることができる。
【0119】
図12に示すように、ダミー部材60とガラス基板3との傾きが不一致であると、加工ヘッド2に距離センサー158を取り付け、ガラス基板3の表面、ダミー部材60の表面との距離を測定しながら加工ヘッド2の姿勢を制御して矢印方向に加工ヘッド2を走査させる場合、例えば加工ヘッド2がダミー部材60とガラス基板3との繋ぎ目を境に達したとき、ダミー部材60側の距離とガラス基板3側との距離が異なり、加工ヘッド2が両方の傾きを考慮した姿勢に制御され、加工ヘッド2がガラス基板3の接触するおそれがある。
【0120】
しかし、ガラス基板3の傾きを調整してダミー部材60の傾きと一致させることにより、ガラス基板3とダミー部材60との繋ぎ目がまっ直ぐとなり、加工ヘッド2がガラス基板3に接触するのを防止することができる。
【0121】
上記した第1、第2実施形態においては、4枚のダミー部材60をガラス基板3の一辺にそれぞれ当接するように組み合わせて配置しているが、ダミー部材60の配置構成は、これに限定されるものではなく、例えば平面L字形状のダミー部材を2組用いた構成等を例示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態を示す湿式エッチング加工装置の概略図、(b)は(a)に示す加工ヘッドの正面図。
【図2】(a)は図1のA−A矢視断面図、(b)は3台の加工ヘッドの配置状態を示す図、(c)は加工ヘッドの走査順序を示す図。
【図3】姿勢制御機構の概略構成を示し、(a)は横断面図、(b)は上面図。
【図4】(a)は加工ヘッドの主走査時におけるエッチャント流路の安定形成状態、(b)は不安定形成状態を説明する図。
【図5】(a)は加工ヘッドのステップ(副)走査時におけるエッチャント流路の安定形成状態、(b)は不安定形成状態を説明する図。
【図6】(a)加工ヘッドの主走査時における加工ヘッドとガラス基板との接触回避制御状態、(b)は接触非回避制御状態を説明する図。
【図7】(a)は基板保持装置の正面図、(b)は(a)のB−B矢視断面図、(c)は(b)のC部拡大図。
【図8】(a)は第2実施形態を示す基板保持装置の正面図(ダミー部材取り付け状態)、(b)は(a)のD−D矢視断面図。
【図9】図8の基板保持装置の背面図。
【図10】(a)は図9のE−E矢視断面図、図10(b)は図9のF−F矢視断面図。
【図11】(a)は図9のG−G矢視断面図、図11(b)は図9のH−H矢視断面図。
【図12】煽り制御される加工ヘッドがガラス基板とダミー部材との繋ぎ目部分の傾斜不一致によって加工ヘッドがガラス基板に接触する様子を説明する図。
【符号の説明】
【0123】
1 湿式エッチング加工装置
1A エッチャント循環装置
1B 加工ヘッド走査装置
2 加工ヘッド
3 ガラス基板(加工物)
4 エッチャントタンク
5 エッチャント
6 エッチャント供給系
7 エッチャント回収管
8 ガス排気管
9 ガス排気ポンプ
10 濃度コントローラ
11 水
12 補給管
13 送液ポンプ
14 熱交換器
15 測温体
16 流量調節バルブ
17 流量計
18 フッ酸濃度センサー
19 供給管
20 温調ユニット
31 装置基台
32 2方向移動ステージ
32A〜32C 移動台
33 加工ヘッド走査速度制御部
34 装置カバー
35A、35B 垂直フレーム部材
35C 水平フレーム部材
36 フレーム
37 直線移動案内機構
38A、38B、38C 水平ビーム
39A、39B、39C 主走査方向駆動用のボールねじ
40 副走査方向用のボールねじ
41 ノズルブロック体
42 背面ブロック体
43 固定ねじ
44 供給ノズル部
45 排出孔
46 第1周溝
47 開口
48 第2周溝
49 排出路
50、70 基板保持装置
51 開口部
52 ベース板
52A,52B,52C,52D ダミー部材取り付け領域
53 吸着帯部
54 吸着チャック
55 Oリング
56 吸着パッド
57 吸引孔
58 ネジ孔
59 ネジ挿通孔
60 ダミー部材
61 本体板
62 裏板
62a ネジ穴
63 ネジ
64 押ネジ
65 引きネジ
71 ガラス基板保持ベース
71a 上下の枠部材 71b 左右の枠部材
72 ダミー部材保持ベース
72A,72B,72C,72D ダミー部材取り付け領域
73 取り付け装置
73a 取り付け板 73b 第1孔部 73c 第2孔部
73B 固定ボルト
74 取り付けボルト
75 圧縮コイルばね
76 高さ調整器
76a スリーブ 76b ナット部材 76c スピンドル 76d つまみ
77 スライドガイド装置
77a 取り付け板 77b 孔部 77B 固定ボルト
78 ガイドピン
79 リニアブッシュ
80 ダミー部材取付装置
81 スダットボルト
82 板ナット
83 高さ調整ネジ
84 係合ナット
85 締付ナット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央の開口部に合わせて平板形状の被加工物を垂直姿勢に保持する保持板を備えた被加工物保持装置を有し、前記保持板の前面側に保持された該被加工物の表面に加工ヘッドによりエッチャントを供給し、吸引することにより、該加工ヘッドと被加工物との隙間に一定面積のエッチング領域をなすエッチャントの流路を形成し、該加工ヘッドと該被加工物とを相対的に走査して被加工物の表面を加工する表面加工装置において、
前記被加工物保持装置は、前記保持板に形成した中央の開口部の周囲に前記被加工物の裏面側外周部を吸着保持する真空チャック部をそれぞれ設け、前記被加工物を保持するために前記真空チャック部が設けられた被加工物保持領域の外周に、被加工物の表面に連なる平板状のダミー部材を取り付けたダミー部材取り付け領域を複数有し、各ダミー部材取り付け領域にそれぞれ前記ダミー部材を取り付けたことを特徴とする表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置。
【請求項2】
前記ダミー部材は、前記保持板に対して前後方向位置を複数個所で調整可能とするダミー部材前後方向位置調整機構により保持固定されていることを特徴とする請求項1に記載の表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置。
【請求項3】
前記保持板は、前記被加工物保持領域を構成し、前記中央の開口部を有する枠形状の第1板部材と、前記ダミー部材取り付け領域を構成し、前記第1板部材を内側開口部に嵌合し、前記第1板部材と少なくとも前後方向に相対移動可能な第2板部材と、前記第1板部材と前記第2板部材との前後方向相対位置を調整可能として前記第1部材と第2部材とを複数個所でそれぞれ保持固定する前後方向相対位置調整器と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置。
【請求項4】
前記第1部材を前記第2部材に対してスライド可能に保持するスライドガイド手段を有することを特徴とする請求項3に記載の表面加工装置の平板状被加工物の垂直保持装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の前記垂直保持装置に平板状被加工物を前記真空チャック部で保持し、前記前後方向位置調整機構により該平板状被加工物表面と前記ダミー部材表面とをフラットになるように位置調整した後、前記垂直保持装置を主走査方向および副走査方向の2方向に移動可能な前記加工ヘッドの走査面に対して平行に対向配置したことを特徴とする表面加工装置
【請求項6】
前記垂直姿勢の被加工物に対向配置され、主走査方向および副走査方向の2方向に移動可能で、かつ副走査方向に隔設して配設した複数の移動体を有し、前記各移動体に前記加工ヘッドをそれぞれ取り付けたことを特徴とする請求項5に記載の表面加工装置。
【請求項7】
前記複数の移動体に連係して該複数の移動体を同時に副走査方向に同量移動させる移動機構を有することを特徴とする請求6に記載の表面加工装置。
【請求項8】
前記複数の移動体を個々に副走査方向へ移動させる移動機構を有することを特徴とする請求項6に記載の表面加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−140960(P2009−140960A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312538(P2007−312538)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】