説明

表面加飾方法及び電子機器

【課題】下地部分とインキ部分とのコントラストが鮮明な模様をUV印刷によって実現する表面加飾方法を提供することである。
【解決手段】下地となる被印刷物に紫外線硬化インキによって複数の線を下地が露出するように間隔を有して並列に印刷する表面加飾方法であって、前記複数の線は直線であり、前記複数の線からなる群を、前記複数の線が複数方向に延在するように複数配置し、前記複数の線が等間隔又は徐々に変化する間隔を有して並行であることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に金属部品や樹脂部品に紫外線硬化インキ(以下、UVインキと記すことがある)を用いた印刷(以下、UV印刷と記すことがある)により加飾する表面加飾方法及びそれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属部品や樹脂部品にUV印刷により加飾する技術が知られている。例えば、特許文献1には、金属光沢面を有する基板上に、透明或いは半透明の粘稠性を有するインクまたは透明或いは半透明のUVインクに、微細粒子のマット剤を拡散混合してなるインクと所定のスクリーン目のスクリーン版を用いて所望模様、文字等をマット印刷すると共に、該マット印刷の表面にスクリーン版のメッシュ模様を残すようにしたことを特徴とする金属光沢面を有する基板上の表面加飾方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−234979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属部材や樹脂部材は光沢を有するものが多く、UV印刷により加飾する場合は下地(部材表面)とのコントラストが鮮明に表れる。しかしながら、特許文献1など従来のUV印刷において図柄を構成する模様は任意であり、つまり他の印刷物と同様の図柄が用いられていた。例えば、マット感を出したい部分はベタ模様としていた。そのため、下地とのコントラストを強調するために最適な模様であるかどうかは考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、下地部分とインキ部分とのコントラストが鮮明な模様をUV印刷によって実現する表面加飾方法を提供することを目的とする。また、その表面加飾方法によって加飾された電子機器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の表面加飾方法は、下地となる被印刷物に紫外線硬化インキによって複数の線を下地が露出するように間隔を有して並列に印刷するものとする。
【0007】
上記の表面加飾方法において、例えば、前記複数の線は直線とすることができる。
【0008】
また上記の表面加飾方法において、前記複数の線からなる群を、前記複数の線が複数方向に延在するように複数配置してもよい。
【0009】
また上記の表面加飾方法において、前記複数の線が等間隔又は徐々に変化する間隔を有して並行であってもよい。
【0010】
また上記の表面加飾方法において、前記複数の線からなる群同士を下地が露出するように一定間隔で隣接させて配置してもよい。
【0011】
また上記の表面加飾方法において、前記複数の線からなる群はその外周に隣接する印刷線を有してもよい。
【0012】
また上記の表面加飾方法において、前記複数の線の幅が等しく、前記複数の線の間隔が前記複数の線の幅より狭くなるようにしてもよい。
【0013】
また本発明は、上記の何れかに記載の表面加飾方法によって加飾された外装部材を備えた電子機器とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、複数の線を並列にUV印刷することにより、下地部分とインキ部分とのコントラストが鮮明な模様を実現することができる。また、下地の質感も表現に生かすことができる。また、見る方向、角度を変えることできらきら輝いて見える。また、加飾方法に印刷を用いているので、シート等を貼着する場合と比べて部品点数が増えない。
【0015】
また本発明によると、複数の線からなる群を、複数の線が複数方向に延在するように複数配置した場合、隣接する各群のコントラストが鮮明になり、インキの濃淡で表現するよりも各群の形状を模様としてはっきりと識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態の印刷物の一部を拡大した平面図である。
【図2A】図1の一部を拡大した平面図である。
【図2B】図2AのA−A線断面図である。
【図3】バインダを有する印刷物の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の印刷物の一部を拡大した平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の印刷物の一部を拡大した平面図である。
【図6】本発明の第4の実施形態の印刷物の一部を拡大した平面図である。
【図7A】本発明の第5の実施形態の印刷物の一部を拡大した平面図である。
【図7B】図7AのB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の第1の実施形態の印刷物の一部を拡大した平面図である。図2Aは図1の一部を拡大した平面図であり、図2Bは図2AのA−A線断面図である。図1及び図2Aでは黒線がインキ部分、白線が下地部分を示している。
【0018】
この印刷物10における表面加飾方法の特徴は、UV印刷の下地となる被印刷物11にUVインキによって複数の線12を下地(被印刷物11の表面)11aが露出するように間隔yを有して並列に印刷していることである。これにより、印刷物10を見る方向によって下地部分とインキ部分とのコントラストが鮮明な模様を実現し、見る方向、角度を変えることできらきら輝いて見える。
【0019】
具体的に、印刷物10において、複数の線12は等間隔を有する並行な直線である。以下では、同じ方向の並行な線12が連続している部分を群と称する。印刷物10では、その群を複数の線12が複数方向(図1では縦、横、右斜め、左斜め)に延在するように複数配置することにより、円が重なったような模様を形成している。
【0020】
印刷物10において、複数の線12の幅xは全て等しく、複数の線12の間隔yは線12の幅xより狭くなっている。また、図2Bに矢印Lで示すように、線12が横に延在している状態で斜め上方から見た場合に、線12の厚みによって向こう側の下地11aがある程度隠れるようにするため、線12の厚みzは間隔yと同程度であることが好ましい。
【0021】
具体的には、線12の幅が0.1〜0.5mm、線12の間隔yが0.1〜0.5mm、線の厚みzが0.05〜0.25mmであることが好ましく、線12の幅が0.15〜0.25mm、線12の間隔yが0.1〜0.2mm、線の厚みzが0.1〜0.2mmであることがより好ましい。例えば、線の幅xを0.22mm、線の間隔yを0.15mm、線の厚みzを0.15mmとすることができる。
【0022】
そして、被印刷物11が光沢のある材料である場合は線12をマット調で印刷し、一方、被印刷物11が光沢のない材料である場合は線12をグロス調で印刷する。例えば、被印刷物11が光沢のある材料であり、線12をマット調で印刷した印刷物10を斜め上方から見ると、線12が横に延在している群については下地11aがある程度隠れるのでマット調に見え、線12が縦に延在している群については下地11aが隠れないのでグロス調に見え、線12が左右斜めに延在している群については下地11aがやや隠れるのでマット調とグロス調の中間程度に見える。これにより、隣接する各群のコントラストが鮮明になり、インキの濃淡で表現するよりも各群の形状を模様としてはっきりと識別できる。また、下地の質感も表現に生かすことができる。また、見る方向、角度を変えることできらきら輝いて見える。
【0023】
なお、上述した並列とは、複数の直線又は曲線が並んでいれよく、並行でない場合も含むものとする。また、並行とは、複数の直線が平行である場合と、複数の同形の曲線が交わらないように並んでいる場合とを含むものとする。したがって、複数の線12は並んでいれば必ずしも並行でなくてもよく、また曲線としてもよい。これらの場合でも同様にコントラストが鮮明な模様を実現でき、見る方向、角度を変えることできらきら輝いて見える。
【0024】
次に、被印刷物11としてはUVインキが印刷できれば特に限定はなく、金属、樹脂、紙、布など所望の材料を用いることができる。また、印刷方法には特に限定はなく、被印刷物11に適した印刷方法を用いればよい。例えば、電子機器の外装部材である金属部品や樹脂部品に印刷する場合、曲面にも印刷可能なスクリーン印刷やパッド印刷などを用いることが好ましい。また、スクリーン印刷やパッド印刷はデザインや色調の変更が容易であり、低コストであるため、多品種、少量生産にも対応可能である。
【0025】
なお、金属面にUV印刷する場合は、予め金属面にUVインキの密着性を向上させる樹脂系のバインダを印刷又は塗布しておくことが望ましい。図3はバインダ13を有する印刷物20の断面図である。印刷物20は、アルマイト処理したアルミニウム部品からなる被印刷物11上に、印刷する模様と同じ模様でポリウレタン系のインキからなるバインダ13を印刷したものである。よって下地11aは露出されたままなので、下地11aの金属の光沢感が損なわれることがない。
【0026】
図4は本発明の第2の実施形態の印刷物の一部を拡大した平面図である。図4の一部を拡大した平面図は図2Aと同様であり、断面図は図2Bと同様であるのでここでは省略する。
【0027】
図4の印刷物30が図1の印刷物10と異なる点は複数の線12からなる群同士を下地11aが露出するように一定間隔で隣接させて配置している点である。すなわち、図4において白色の曲線がその一定間隔に相当し、図4では線12同士の間隔yと同じ間隔としている。なお、一定間隔は視認可能な間隔であれば特に限定はない。また、一部の群同士の間にだけ一定間隔を設けてもよい。
【0028】
このように、各群の間に間隔を設けることで、図1の印刷物10において群の境界が波打って見えていたものを滑らかに見えるようにすることができ、意匠性が向上する。
【0029】
図5は本発明の第3の実施形態の印刷物の一部を拡大した平面図である。図5の一部を拡大した平面図は図2Aに準じ、断面図は図2Bに準ずるのでここでは省略する。図5の印刷物40が図4の印刷物30と異なる点は複数の線12が徐々に変化する間隔を有して並行となっている点である。すなわち、線12の幅xは同じであるが、線12の間隔yが徐々に広くなったり徐々に狭くなったりしている。
【0030】
このように、線12の間隔yを徐々に変化させることで、線12と下地11aの割合が変化するので、コントラストがグラデーションして見え、意匠に変化をもたせることができる。
【0031】
なお、線12の幅xを徐々に変化させてもよい。さらに、線12の幅xと間隔yの両方を徐々に変化させてもよい。これらによっても同様の効果が得られる。
【0032】
図6は本発明の第4の実施形態の印刷物の一部を拡大した平面図である。図6の一部を拡大した平面図は図2Aと同様であり、断面図は図2Bと同様であるのでここでは省略する。図6の印刷物50が図1の印刷物10と異なる点は、複数の線12からなる群がその外周に隣接する印刷線51を有する点である。すなわち、図6において黒色の曲線が印刷線51に相当し、図6では線12と同じ幅としている。なお、印刷線51の幅には特に限定はない。また、印刷物50の必要な場所にだけ印刷線51を設けてもよい。
【0033】
このように、印刷線51を設けることにより、スクリーン印刷でスキージの移動方向が線12と略直角になる印刷部分においても線12に気泡が入るのを抑制することができる。よって、より鮮明に印刷することができる。
【0034】
図7Aは本発明の第5の実施形態の印刷物の一部を拡大した平面図であり、図7Bは図7AのB−B線断面図である。図7A、7Bの印刷物60が図2A、2Bの印刷物10と異なる点は、線61を曲線とした点である。線61同士は並行である。
【0035】
このように、線61を曲線とした場合でも直線の場合と同様に、隣接する各群のコントラストが鮮明になり、インキの濃淡で表現するよりも各群の形状を模様としてはっきりと識別できる。また、下地の質感も表現に生かすことができる。また、見る方向、角度を変えることできらきら輝いて見える。さらに、曲線とした場合、1つの群の中でもコントラストが変化するので、より複雑な模様を表現することができる。なお、直線と曲線を組み合わせた線や直線を組み合わせた線(折れ線)としても同様の効果を得ることができる。
【0036】
なお、本発明においては、線を印刷するのに単色印刷又は多色印刷のどちらを用いても構わない。例えば、多色印刷を用いて群毎に異なる色にすれば、表現の幅が広がる。
【0037】
なお、本発明においては、線の幅、間隔、厚みで濃淡を表現でき、群の形状や配置で図柄を表現できるので、幾何学模様だけでなく人物や風景といった様々な図柄も表現することができる。
【0038】
なお、上記の各実施形態では線を印刷する場合を例に説明したが、線に代えて、任意の形状のドットを線状に配置して印刷してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の表面加飾方法は、電子機器の外装部材をはじめ印刷可能な部材の加飾に利用することができる。電子機器としては、デジタルカメラや携帯電話機や携帯情報端末等に好適に利用できる。例えば、デジタルカメラの場合、前面のスライドカバーに利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10、20、30、40、50、60 印刷物
11 被印刷物
11a 下地
12、61 線
13 バインダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地となる被印刷物に紫外線硬化インキによって複数の線を下地が露出するように間隔を有して並列に印刷する表面加飾方法。
【請求項2】
前記複数の線は直線であることを特徴とする請求項1記載の表面加飾方法。
【請求項3】
前記複数の線からなる群を、前記複数の線が複数方向に延在するように複数配置することを特徴とする請求項2記載の表面加飾方法。
【請求項4】
前記複数の線が等間隔又は徐々に変化する間隔を有して並行であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の表面加飾方法。
【請求項5】
前記複数の線からなる群同士を下地が露出するように一定間隔で隣接させて配置することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の表面加飾方法。
【請求項6】
前記複数の線からなる群はその外周に隣接する印刷線を有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の表面加飾方法。
【請求項7】
前記複数の線の幅が等しく、前記複数の線の間隔が前記複数の線の幅より狭いことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の表面加飾方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の表面加飾方法によって加飾された外装部材を備えた電子機器。

【図1】
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【図2A】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図2B】
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【図3】
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【図7B】
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