説明

表面劣化を防止する塗布装置、塗布方法、研磨洗浄装置及び研磨洗浄方法

【課題】一般に有機系の液体が適用されて環境への影響が懸念される酸化防止液を、廃液量を極力少なく抑えた上でウェハ表面の全面に均一に塗り、各処理工程中に待機状態にあるウェハの表面酸化を抑制し、さらには処理後の製品ウェハを、表面を保護した状態で格納する表面劣化を防止する塗布装置、塗布方法、研磨洗浄装置及び研磨洗浄方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は上記目的を達成するために、酸化防止液供給部材38をウェハWに近接又は接触させて相対的に移動させるとともに酸化防止液供給部材38の上部に供給された酸化防止液を、酸化防止液供給部材38に沿ってウェハWに塗る酸化防止液供給手段6Cを有し、酸化防止液供給部材38と酸化防止液との界面張力又は毛細管現象を利用することによりウェハWに酸化防止液を塗る表面劣化を防止する塗布装置、塗布方法、研磨洗浄装置及び研磨洗浄方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面劣化を防止する塗布装置、塗布方法、研磨洗浄装置及び研磨洗浄方法に関するものであり、特に、化学機械的研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)における表面劣化を防止する塗布装置、塗布方法、研磨洗浄装置及び研磨洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や電子部品等のウェハは、製造の過程において切削、研磨等の各種工程を経ていく。近年、半導体技術の発展により、半導体集積回路のデザインルールの微細化、多層配線化が進み、またコスト低減を図る上においてウェハの大口径化も進行してきている。このため、従来のように、パターンを形成した層の上にそのまま次の層のパターンを形成した場合、前の層の凹凸により次の層では良好なパターンを形成することが難しくなり、欠陥等が生じ易かった。
【0003】
そこで、パターンを形成した層の表面を平坦化し、その後で次の層のパターンを形成する平坦化プロセスが実施されている。この平坦化プロセスにおいてCMPが多用されている。CMPによるウェハの研磨は、研磨ヘッドによってウェハを保持し、研磨剤と化学薬品との混合物であるスラリーを供給しながら該ウェハを研磨パッドに圧接させ、この状態でウェハ及び/又は研磨パッドを回転させることにより行われる。
【0004】
このCMPによる研磨において、Cu等の配線層となる金属膜をもつウェハにおける前記Cuに対するCMPでは、研磨・洗浄工程におけるCu表面の酸化が問題になる。Cu表面が酸化してしまうと、後に多層配線構造等とする際にCu上に着ける配線との間で電気伝導度が極端に低下するという不具合が生じる。この電気伝導度の低下は、その後の電気特性などでエレクトロマイグレーションを引き起こし易く、デバイス性能を大きく劣化させたり素子の歩留りを悪化させる原因になる。
【0005】
上記Cu表面の酸化は、各処理工程中に待機状態にあるウェハについても起こる。例えば、研磨工程後の洗浄工程済みのウェハを一つのカセット(例えば、直径8インチのウェハでは25枚)に全て格納してから、次の工程等に移す場合において、研磨工程を終了した1枚目のウェハがカセットの元の位置に戻されてから、25枚目のウェハの研磨工程が終了してカセットの元の位置に戻されるまでの間に、最初の1枚目のウェハにおけるCu表面の酸化はかなり進行する。
【0006】
このため、待機中や研磨・洗浄工程後のウェハにおけるCu表面に酸化防止液を塗布することが行われている。この酸化防止液として、BTA(Benzotriazole:ベンゾトリアゾール)等が存在する。これらの酸化防止液は、Cu表面にだけ選択的に付着し、錯体を形成することでCu表面を保護することが知られている。
【0007】
このようにBTA等は、ウェハ表面(特にCu表面)を保護することで、酸化防止液として非常に有用である一方、有機系の溶剤であることから環境への影響が懸念される。
【0008】
ここで、ベンゾトリアゾール関連試薬は、環境に悪影響であることを報告した資料が既にある。特に、2-(2H-1,2,3,-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール(官報公示整理番号:5-3580,5-3604、Cas No.3846-71-7)については、「化学物質の審査及び製造等の規則に関する法律(以下「化審法」という)」に基づき、既に自然的作用による化学的変化を生じにくいもの(難分解性)であり且つ、生物の体内に蓄積されやす
いもの(高蓄積性)であることが判明しており、平成16年9月22日に第一種監視化学物質に指定されている。平成17年11月18日に開催された平成17年度第7回薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会化学物質調査会、化学物質審議会第49回審査部会及び第50回中央環境審議会環境保健部会化学物質審査小委員会合同会合(以下「三省合同審議会」という)において、当該物質に関し、「継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれ(長期毒性)がある」可能性が示された(引用先:厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室、経済産業省製造産業局化学物質管理課化学物質安全室、環境省総合環境政策局環境保健部企画課化学物質審査室、2-(2H-1,2,3,-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ブチルフェノールの製造等の実態調査について、平成17年11月21日付け資料参照)。
【0009】
特に、近年では環境に対する配慮からBTA以外の他のCuに対する酸化防止剤が利用されている一面もある。しかし、現時点ではCu表面の酸化防止液としてはBTAが最も汎用的で扱いやすい。このようなことから、Cu表面の酸化防止液としてBTA等が必要である一方、環境に対する配慮の点からはできるだけ使用を制限するといった背景がある。
【0010】
以上の背景において、従来技術として例えば次のような基板処理方法が知られている。この従来技術は、Cuの埋込み配線が形成されたウェハを水平方向に回転させながら該ウェハ表面のほぼ中央部にBTA等の非酸化性流体(酸化防止液)を供給して塗布し、ウェハの周辺部及び裏面の少なくとも一部には洗浄液を供給している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−174961号公報(第5頁、図2)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の従来技術においては、基本的にウェハ中央部に供給された非酸化性流体(BTA)をウェハの回転により押し広げてウェハ表面の全面を塗布している。このことから大半の非酸化性流体はウェハ外へ振り切られてウェハ表面には極一部の非酸化性流体しか残らず、これがウェハ表面の全面に塗布されているということになる。
【0012】
実際に、ウェハ表面に塗布されるBTAの厚みは1μmも必要なく、nm程度といわれている。この厚みで300mmウェハ全面に塗布したとしても、全量でせいぜいml程度しか使用されないことになる。
【0013】
しかしながら、上記従来技術による塗布方法では、99%以上の非酸化性流体は振り切られてウェハ上には残らず、そのまま廃液として捨てられることになる。これは原理上非常に無駄が多く、環境に対する悪影響が懸念される他、非酸化性流体も非常に大量に使用される結果になるため、非常に効率の悪い塗布方法であるということになる。
【0014】
そこで、一般に有機系の液体が適用されて環境への影響が懸念される酸化防止液を、廃液量を極力少なく抑えた上でウェハ表面の全面に均一に塗り、各処理工程中に待機状態にあるウェハの表面酸化を抑制し、さらには処理後の製品ウェハを、表面を保護した状態で格納するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るように
した表面劣化を防止する塗布装置において、酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させるとともに該酸化防止液供給部材の上部に供給された前記酸化防止液を、当該酸化防止液供給部材に沿って前記ウェハに塗る酸化防止液供給手段を有する表面劣化を防止する塗布装置を提供する。
【0016】
この塗布装置の構成によれば、ウェハに酸化防止液を「塗る」とは、毛細管現象もしくは界面張力を利用して固体(酸化防止液供給部材)表面・界面に沿わせた該酸化防止液をウェハ表面へ移送する行為を指しており、また、酸化防止液供給部材をウェハに「近接」させるとは、表面張力により酸化防止液に液滴ができない程度に酸化防止液供給部材の先端をウェハ表面に近付ける行為を指している。そして酸化防止液供給部材の先端がウェハに近接又は接触するように配置され、該ウェハ表面への酸化防止液の供給が、該酸化防止液を酸化防止液供給部材に沿って移送させることにより行われる。移送により酸化防止液がウェハに接触すると、ウェハ(固体)と酸化防止液の界面張力、ウェハと気体の界面張力及び酸化防止液自身の表面張力が作用する。これら三力の作用の釣り合いでウェハ表面と酸化防止液の液面との接触角が決まり、酸化防止液の表面を大きくすることができる。この結果、酸化防止液は少量であってもウェハ表面に広がる。そして酸化防止液供給部材とウェハの相対的移動により、該ウェハ表面の全面に酸化防止液が均一に塗られる。このようにして、一般に有機系の液体が適用されて環境への影響が懸念される酸化防止液が、廃液量が極力少なく抑えられた上で、ウェハ表面へ塗られる。
【0017】
請求項2記載の発明は、ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布装置において、ウェハ上の位置に、酸化防止液供給管に供給された酸化防止液を該酸化防止液供給管から引き上げる引き上げ機構と、引き上げられた前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に沿って流下させる機構と、該酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させる機構とを備え、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る酸化防止液供給手段を有する表面劣化を防止する塗布装置を提供する。
【0018】
この塗布装置の構成によれば、酸化防止液供給管に供給された酸化防止液が毛細管現象もしくは界面張力を利用して引き上げ機構により引き上げられる。引き上げられた該酸化防止液は前記と同様に毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液供給部材を伝って流下し、ウェハ表面に供給される。ウェハ表面に供給された酸化防止液には、ウェハと該酸化防止液の界面張力、ウェハと気体の界面張力及び酸化防止液自身の表面張力が作用し、酸化防止液が少量であってもウェハ表面に広がる。そして酸化防止液供給部材とウェハの相対的移動により、該ウェハ表面の全面に酸化防止液が均一に塗られる。
【0019】
請求項3記載の発明は、ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布装置において、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材と、酸化防止液供給口から出た酸化防止液を前記酸化防止液供給部材の上部に含ませ該酸化防止液を流下させながら前記酸化防止液供給部材の全体に広げる酸化防止液の含浸手段と、前記酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させる機構とを備え、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る酸化防止液供給手段を有する表面劣化を防止する塗布装置を提供する。
【0020】
この塗布装置の構成によれば、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材が使用され、該酸化防止液供給部材の上部に含ませられた酸化防止液が毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液供給部材を伝って流下し該酸化防止液供給部材の全体に広がる。この酸化防止液供給部材をウェハに近接又は接触させると毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液は酸化防止液供給部材からウェハ表面に供給される。ウェハ表
面に供給された酸化防止液には、ウェハと該酸化防止液の界面張力、ウェハと気体の界面張力及び酸化防止液自身の表面張力が作用し、酸化防止液が少量であってもウェハ表面に広がる。そして酸化防止液供給部材とウェハの相対的移動により、該ウェハ表面の全面に酸化防止液が均一に塗られる。
【0021】
請求項4記載の発明は、ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布装置において、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材と、酸化防止液を該酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸手段と、前記酸化防止液供給部材を酸化防止液の含浸場所からウェハ上まで移動できる搬送手段とを備え、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る酸化防止液供給手段を有する表面劣化を防止する塗布装置を提供する。
【0022】
この塗布装置の構成によれば、濃度が濃く粘性の高い酸化防止液を使用する場合等では、該酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材が使用され、該酸化防止液供給部材が酸化防止液を溜めた酸化防止液供給槽等に浸される。その結果、毛細管現象もしくは界面張力により一定量の酸化防止液が酸化防止液供給部材に含浸される。この酸化防止液が含浸された酸化防止液供給部材を搬送手段でウェハ上に移動させて降下させると、毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液は酸化防止液供給部材からウェハ表面に供給される。ウェハ表面に供給された酸化防止液には、ウェハと該酸化防止液の界面張力、ウェハと気体の界面張力及び酸化防止液自身の表面張力が作用し、酸化防止液は少量であってもウェハ表面に広がってウェハ表面に均一に塗られる。
【0023】
請求項5記載の発明は、ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布装置において、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材と、酸化防止液を酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸手段と、前記酸化防止液供給部材を酸化防止液の含浸場所からウェハ上まで移動できる搬送手段と、前記酸化防止液の含浸場所からウェハ上までの移動において酸化膜防止液の垂れを防ぐために前記酸化防止液供給部材の下に前記酸化防止液の受け部材とを備え、前記ウェハに前記酸化膜防止液を塗る酸化防止液供給手段を有する表面劣化を防止する塗布装置を提供する。
【0024】
この塗布装置の構成によれば、濃度が濃く粘性の高い酸化防止液を使用する場合でも、該酸化防止液が含浸された酸化防止液供給部材を移動させる際には、酸化防止液がウェハ以外の場所等に垂れるおそれがある。そこで、酸化防止液供給部材の下に受け部材を備えさせることで、ウェハ以外の場所等への酸化防止液の垂れが防止される。
【0025】
請求項6記載の発明は、上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材は回転する前記ウェハ上を該ウェハの中央部から外周部まで移動するように構成されている表面劣化を防止する塗布装置を提供する。
【0026】
この塗布装置の構成によれば、酸化防止液供給部材を、ウェハ表面の全面に広く近接又は接触させることが可能となる。これにより、酸化防止液がウェハ表面の全面に均一に塗られる。
【0027】
請求項7記載の発明は、上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はアームに取り付けられ、該アームが前記ウェハの中央部から外周部まで旋回することで、回転する前記ウェハ上を前記酸化防止液供給部材が移動するように構成されている表面劣化を防止する塗布装置を提供する。
【0028】
この塗布装置の構成によれば、回転するウェハ上で、アームに取り付けた酸化防止液供給部材をウェハの中央部から外周部まで旋回させることで、該酸化防止液供給部材をウェハ表面の全面に広く近接又は接触させることが可能となる。これにより、酸化防止液がウェハ表面の全面に均一に塗られる。
【0029】
請求項8記載の発明は、上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はウェハ半径方向に一列に配置され、前記ウェハが回転すると、一列に配置された前記酸化防止液供給部材が降下して上記酸化防止液をウェハ全面に塗るように構成されている表面劣化を防止する塗布装置を提供する。
【0030】
この塗布装置の構成によれば、ウェハ半径方向に一列に配置された酸化防止液供給部材を、回転するウェハに近接又は接触する位置まで降下させることで、酸化防止液をウェハ表面の全面に均一に塗ることが可能となる。
【0031】
請求項9記載の発明は、上記酸化防止液供給部材は、糸状部材を束ねたブラシ状部材もしくは線状部材、網状部材、又は発泡部材のいずれかで形成されている表面劣化を防止する塗布装置を提供する。
【0032】
この塗布装置の構成によれば、酸化防止液供給部材としてブラシ状部材もしくは線状部材、網状部材、又は発泡部材のいずれかを用いることで、該酸化防止液供給部材の表面積が増加し、該酸化防止液供給部材と酸化防止液の間に働く界面張力が増大するとともに毛細管現象が効果的に生じて該酸化防止液が前記酸化防止液供給部材に沿って移送され、ウェハ表面に供給される。
【0033】
請求項10記載の発明は、ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布方法において、酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させるとともに該酸化防止液供給部材の上部に供給された前記酸化防止液を、該酸化防止液供給部材に沿って前記ウェハに塗る酸化防止液供給手段を有し、前記酸化防止液供給部材と前記酸化防止液との界面張力又は毛細管現象を利用することにより前記ウェハに前記酸化防止液を塗る表面劣化を防止する塗布方法を提供する。
【0034】
この塗布方法の構成によれば、酸化防止液供給部材の先端が、表面張力により酸化防止液に液滴ができない程度にウェハ表面に近接もしくは接触するように配置され、該ウェハ表面への酸化防止液の供給が、酸化防止液供給部材と該酸化防止液との界面張力又は毛細管現象を利用して、該酸化防止液を前記酸化防止液供給部材に沿わせて移送することにより行われる。移送により酸化防止液がウェハに接触すると、ウェハと該酸化防止液の界面張力、ウェハと気体の界面張力及び酸化防止液自身の表面張力が作用し、酸化防止液が少量であってもウェハ表面に広がる。そして酸化防止液供給部材とウェハの相対的移動により、該ウェハ表面の全面に酸化防止液が均一に塗られる。
【0035】
請求項11記載の発明は、ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布方法において、前記ウェハの上方で、酸化防止液供給管に供給された酸化防止液を酸化防止液供給管から引き上げる工程と、引き上げられた前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に沿って流下させる工程と、該酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させる工程とを有し、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る表面劣化を防止する塗布方法を提供する。
【0036】
この塗布方法の構成によれば、酸化防止液供給管に供給された酸化防止液が毛細管現象もしくは界面張力により引き上げられる。引き上げられた該酸化防止液は毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液供給部材を伝って流下し、ウェハ表面に供給される。ウェハ表面に供給された酸化防止液には、ウェハと該酸化防止液の界面張力、ウェハと気体の界面張力及び酸化防止液自身の表面張力が作用し、酸化防止液が少量であってもウェハ表面に広がる。そして酸化防止液供給部材とウェハの相対的移動により、該ウェハ表面の全面に酸化防止液が均一に塗られる。
【0037】
請求項12記載の発明は、ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布方法において、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材を使用し、前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸工程と、前記酸化防止液を含んだ酸化防止液供給部材をウェハ上まで移動する搬送工程と、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る工程とを有する表面劣化を防止する塗布方法を提供する。
【0038】
この塗布方法の構成によれば、濃度が濃く粘性の高い酸化防止液を使用する場合等では、該酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材が使用され、該酸化防止液供給部材が酸化防止液を溜めた酸化防止液供給槽等に浸される。その結果、毛細管現象もしくは界面張力により一定量の酸化防止液が酸化防止液供給部材に含浸される。この酸化防止液が含浸された酸化防止液供給部材をウェハ上に移動させて降下させると、毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液は酸化防止液供給部材からウェハ表面に供給される。ウェハ表面に供給された酸化防止液には、ウェハと該酸化防止液の界面張力、ウェハと気体の界面張力及び酸化防止液自身の表面張力が作用し、酸化防止液は少量であってもウェハ表面に広がってウェハ表面に均一に塗られる。
【0039】
請求項13記載の発明は、ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布方法において、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材を使用し、その酸化防止液が下に垂れないように酸化防止液を受ける受け部材を使用し、前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸工程と、その含浸工程では前記受け部材は横に避けており、前記酸化防止液を含んだ酸化防止液供給部材をウェハ上まで移動する搬送工程と、その搬送工程では前記受け部材が酸化防止液供給部材の下に配置され、ウェハに前記酸化防止液を塗る工程と、その塗る工程では前記受け部材は横に避けている表面劣化を防止する塗布方法を提供する。
【0040】
この塗布方法の構成によれば、濃度が濃く粘性の高い酸化防止液を使用する場合等では、該酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材が使用され、該酸化防止液供給部材が酸化防止液を溜めた酸化防止液供給槽等に浸される。その結果、一定量の酸化防止液が酸化防止液供給部材に含浸される。この含浸工程では、該工程に支障が生じないように酸化防止液の垂れを防止する受け部材は酸化防止液供給部材の下方から横に退避した位置にある。そして、酸化防止液が含浸された酸化防止液供給部材の移動の際には、受け部材が酸化防止液供給部材の下に位置することで、ウェハ以外の場所等への酸化防止液の垂れが防止される。また、酸化防止液を酸化防止液供給部材からウェハ表面に供給する工程時には、受け部材は酸化防止液供給部材の下方から横に避けていることで、酸化防止液はウェハ表面に広く塗られる。
【0041】
請求項14記載の発明は、上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はアームに取り付けられ、該アームが前記ウェハの中央部から外周部まで旋回することで、回転する前記ウェハ上を前記酸化防止液供給部材が移動する表面劣化を防止する塗布方法を提供する。
【0042】
この塗布方法の構成によれば、回転するウェハ上で、アームに取り付けた酸化防止液供給部材をウェハの中央部から外周部まで旋回させることで、該酸化防止液供給部材がウェハ表面の全面に広く近接又は接触する。これにより、酸化防止液がウェハ表面の全面に均一に塗られる。
【0043】
請求項15記載の発明は、上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はウェハ半径方向に一列に配置され、前記ウェハが回転すると、一列に配置された酸化防止液供給部材が降下して前記酸化防止液をウェハ全面に塗る表面劣化を防止する塗布方法を提供する。
【0044】
この塗布方法の構成によれば、ウェハ半径方向に一列に配置された酸化防止液供給部材を、回転するウェハに近接又は接触する位置まで降下させることで、酸化防止液が少量であってもウェハ表面に広がって該酸化防止液がウェハ表面の全面に均一に塗られる。
【0045】
請求項16記載の発明は、上記酸化防止液供給部材は、糸状部材を束ねたブラシ状部材もしくは線状部材、網状部材、又は発泡部材のいずれかで形成されている表面劣化を防止する塗布方法を提供する。
【0046】
この塗布方法の構成によれば、酸化防止液供給部材としてブラシ状部材もしくは線状部材、網状部材、又は発泡部材のいずれかを用いることで、該酸化防止液供給部材の表面積が増加し、該酸化防止液供給部材と酸化防止液の間に働く界面張力が増大するとともに毛細管現象が効果的に生じて該酸化防止液が前記酸化防止液供給部材に沿って移送され、ウェハ表面に供給される。
【0047】
請求項17記載の発明は、研磨前のウェハを収納する収納部、ウェハを搬送する搬送工程、ウェハを化学機械的に研磨する研磨工程、研磨後のウェハを洗浄・乾燥する洗浄工程、該洗浄工程を経たウェハを収納する収納部、及びウェハに酸化防止液を塗る酸化防止液塗布工程を備え、前記研磨前のウェハを収納する収納部と該収納部から取り出したウェハを前記研磨工程へ搬送する前記搬送工程との間、前記研磨工程と該研磨工程で研磨されたウェハを前記洗浄工程へ搬送する前記搬送工程との間、又は前記洗浄工程で洗浄・乾燥されたウェハを搬送する前記搬送工程と前記洗浄工程を経たウェハを収納する収納部との間の少なくともいずれかの間に、前記酸化防止液塗布工程を実行する酸化防止液塗布装置を有する表面劣化を防止する研磨洗浄装置を提供する。
【0048】
この構成によれば、研磨洗浄装置の稼働時において、研磨工程の前に酸化防止液塗布工程が実行されたときは、該研磨工程中に待機状態にあるウェハの表面酸化が抑制される。また、研磨工程の前にウェハ表面に酸化防止液が塗られていると、該酸化防止液が研磨工程中に研磨液に溶け込んで研磨されたウェハの表面に機能し、ウェハ表面の酸化抑制作用が得られる。
【0049】
研磨工程後で洗浄工程の前に酸化防止液塗布工程が実行されたときは、該洗浄工程中に待機状態にあるウェハの表面酸化が抑制される。
【0050】
また、洗浄工程で洗浄・乾燥された後で洗浄工程を経たウェハを収納する収納部に収納される前に酸化防止液塗布工程が実行されたときは、表面が保護された状態で製品ウェハが格納される。
【0051】
請求項18記載の発明は、上記研磨工程及び上記洗浄工程を含む処理工程にトラブルが
生じた際は、上記酸化防止液塗布装置によりウェハに酸化防止液を塗った後に、該ウェハをウェハ格納部に一時的に格納する表面劣化を防止する研磨洗浄装置を提供する。
【0052】
この構成によれば、研磨洗浄装置の稼働時において、いずれかの処理工程にトラブルが生じた場合であっても、ウェハ表面を酸化させることなく、ウェハは表面が保護された状態で待機状態とされる。
【0053】
請求項19記載の発明は、研磨前のウェハを収納する収納部、ウェハを搬送する搬送工程、ウェハを化学機械的に研磨する研磨工程、研磨後のウェハを洗浄・乾燥する洗浄工程、該洗浄工程を経たウェハを収納する収納部、及びウェハに酸化防止液を塗る酸化防止液塗布工程を備え、前記研磨前のウェハを収納する収納部と該収納部から取り出したウェハを前記研磨工程へ搬送する前記搬送工程との間、前記研磨工程と該研磨工程で研磨されたウェハを前記洗浄工程へ搬送する前記搬送工程との間、又は前記洗浄工程で洗浄・乾燥されたウェハを搬送する前記搬送工程と前記洗浄工程を経たウェハを収納する収納部との間の少なくともいずれかの間に、前記酸化防止液塗布工程を実行する表面劣化を防止する研磨洗浄方法を提供する。
【0054】
この構成によれば、研磨洗浄方法において、研磨工程の前に酸化防止液塗布工程が実行されたときは、該研磨工程中に待機状態にあるウェハの表面酸化が抑制される。また、研磨工程の前にウェハ表面に酸化防止液が塗られていると、該酸化防止液が研磨工程中に研磨液に溶け込んで研磨されたウェハの表面に機能し、ウェハ表面の酸化抑制作用が得られる。
【0055】
研磨工程後で洗浄工程の前に酸化防止液塗布工程が実行されたときは、該洗浄工程中に待機状態にあるウェハの表面酸化が抑制される。
【0056】
また、洗浄工程で洗浄・乾燥された後で洗浄工程を経たウェハを収納する収納部に収納される前に酸化防止液塗布工程が実行されたときは、表面が保護された状態で製品ウェハが格納される。
【0057】
請求項20記載の発明は、上記研磨工程及び上記洗浄工程を含む処理工程にトラブルが生じた際は、上記酸化防止液塗布工程によりウェハに酸化防止液を塗った後に、該ウェハをウェハ格納部に一時的に格納する表面劣化を防止する研磨洗浄方法を提供する。
【0058】
この構成によれば、研磨洗浄方法において、いずれかの処理工程にトラブルが生じた場合であっても、ウェハ表面を酸化させることなく、ウェハは表面が保護された状態で待機状態とされる。
【発明の効果】
【0059】
請求項1記載の発明は、塗布装置において、酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させるとともに該酸化防止液供給部材の上部に供給された前記酸化防止液を、当該酸化防止液供給部材に沿って前記ウェハに塗る酸化防止液供給手段を有するようにしたので、酸化防止液を酸化防止液供給部材に沿ってウェハ表面に移送すると、ウェハと酸化防止液の界面張力、ウェハと気体の界面張力及び酸化防止液自身の表面張力が作用して、該酸化防止液が少量であってもウェハ表面に広がり、さらに酸化防止液供給部材とウェハの相対的移動により、該酸化防止液をウェハ表面の全面に均一に塗ることができる。したがって、一般に有機系の液体が適用されて環境への影響が懸念される酸化防止液を、廃液量を極力少なく抑えた上で、ウェハ表面の全面に均一に塗ることができるという利点がある。
【0060】
請求項2記載の発明は、塗布装置において、ウェハ上の位置に、酸化防止液供給管に供給された酸化防止液を該酸化防止液供給管から引き上げる引き上げ機構と、引き上げられた前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に沿って流下させる機構と、該酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させる機構とを備え、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る酸化防止液供給手段を有するようにしたので、ウェハ表面への酸化防止液の供給を、酸化防止液供給管に供給された酸化防止液を毛細管現象もしくは界面張力を利用して引き上げ、引き上げられた該酸化防止液を前記と同様に毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液供給部材に沿って流下させることにより行うことで、少量の酸化防止液をウェハ表面に均一に移送して該ウェハ表面の全面に塗ることができるという利点がある。
【0061】
請求項3記載の発明は、塗布装置において、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材と、酸化防止液供給口から出た酸化防止液を前記酸化防止液供給部材の上部に含ませ該酸化防止液を流下させながら前記酸化防止液供給部材の全体に広げる酸化防止液の含浸手段と、前記酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させる機構とを備え、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る酸化防止液供給手段を有するようにしたので、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材を使用し、該酸化防止液供給部材の上部に含ませた酸化防止液を毛細管現象もしくは界面張力により流下させてウェハ表面に供給することで、少量の酸化防止液をウェハ表面に均一に移送して該ウェハ表面の全面に塗ることができるという利点がある。
【0062】
請求項4記載の発明は、塗布装置において、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材と、酸化防止液を該酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸手段と、前記酸化防止液供給部材を酸化防止液の含浸場所からウェハ上まで移動できる搬送手段とを備え、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る酸化防止液供給手段を有するようにしたので、濃度が濃く粘性の高い酸化防止液を使用する場合等において、該酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材を使用し、酸化防止液を含浸させた該酸化防止液供給部材をウェハ上に移動させて降下し、該酸化防止液を毛細管現象もしくは界面張力によりウェハ表面に供給することで、少量の酸化防止液をウェハ表面に均一に移送して該ウェハ表面の全面に塗ることができるという利点がある。
【0063】
請求項5記載の発明は、塗布装置において、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材と、酸化防止液を酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸手段と、前記酸化防止液供給部材を酸化防止液の含浸場所からウェハ上まで移動できる搬送手段と、前記酸化防止液の含浸場所からウェハ上までの移動において酸化膜防止液の垂れを防ぐために前記酸化防止液供給部材の下に前記酸化防止液の受け部材とを備え、前記ウェハに前記酸化膜防止液を塗る酸化防止液供給手段を有するようにしたので、酸化防止液供給部材の下に受け部材を備えさせたことで、濃度が濃く粘性の高い酸化防止液を使用した場合等において該酸化防止液を含浸した酸化防止液供給部材を移動させる際に、ウェハ以外の場所等への該酸化防止液の垂れを防止することができるという利点がある。
【0064】
請求項6記載の発明は、塗布装置において、上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材は回転する前記ウェハ上を該ウェハの中央部から外周部まで移動するように構成されているので、酸化防止液供給部材を、ウェハ表面の全面に広く近接又は接触させることができて、酸化防止液が少量であってもウェハ表面の全面に広げて均一に塗ることができるという利点がある。
【0065】
請求項7記載の発明は、塗布装置において、上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はア
ームに取り付けられ、該アームが前記ウェハの中央部から外周部まで旋回することで、回転する前記ウェハ上を前記酸化防止液供給部材が移動するように構成されているので、酸化防止液供給部材をウェハ表面の全面に広く近接又は接触させることができて、酸化防止液をウェハ表面の全面に均一に塗ることができるという利点がある。
【0066】
請求項8記載の発明は、塗布装置において、上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はウェハ半径方向に一列に配置され、前記ウェハが回転すると、一列に配置された前記酸化防止液供給部材が降下して上記酸化防止液をウェハ全面に塗るように構成されているので、ウェハ半径方向に一列に配置された酸化防止液供給部材を、回転するウェハに近接又は接触する位置まで降下させることで、酸化防止液をウェハ表面の全面に均一に塗ることができるという利点がある。
【0067】
請求項9記載の発明は、塗布装置において、上記酸化防止液供給部材は、糸状部材を束ねたブラシ状部材もしくは線状部材、網状部材、又は発泡部材のいずれかで形成されているので、酸化防止液供給部材の表面積が増加し、該酸化防止液供給部材と酸化防止液の間に働く界面張力が増大するとともに毛細管現象が効果的に生じて該酸化防止液をウェハ表面に均一に移送することができるという利点がある。
【0068】
請求項10記載の発明は、塗布方法において、酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させるとともに該酸化防止液供給部材の上部に供給された前記酸化防止液を、該酸化防止液供給部材に沿って前記ウェハに塗る酸化防止液供給手段を有し、前記酸化防止液供給部材と前記酸化防止液との界面張力又は毛細管現象を利用することにより前記ウェハに前記酸化防止液を塗るようにしたので、ウェハ表面への酸化防止液の供給を、酸化防止液供給部材と該酸化防止液との界面張力又は毛細管現象を利用して行うことで、少量の酸化防止液をウェハ表面に均一に移送して該ウェハに塗ることができるという利点がある。
【0069】
請求項11記載の発明は、塗布方法において、前記ウェハの上方で、酸化防止液供給管に供給された酸化防止液を酸化防止液供給管から引き上げる工程と、引き上げられた前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に沿って流下させる工程と、該酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させる工程とを有し、前記ウェハに前記酸化防止液を塗るようにしたので、ウェハ表面への酸化防止液の供給を、酸化防止液供給管に供給された酸化防止液を毛細管現象もしくは界面張力を利用して引き上げ、引き上げられた該酸化防止液を前記と同様に毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液供給部材に沿って流下させることにより行うことで、少量の酸化防止液をウェハ表面に均一に移送して該ウェハ表面の全面に塗ることができるという利点がある。
【0070】
請求項12記載の発明は、塗布方法において、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材を使用し、前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸工程と、前記酸化防止液を含んだ酸化防止液供給部材をウェハ上まで移動する搬送工程と、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る工程とを有するようにしたので、濃度が濃く粘性の高い酸化防止液を使用する場合等において、該酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材を使用し、酸化防止液を含浸させた該酸化防止液供給部材をウェハ上に移動させて降下し、該酸化防止液を毛細管現象もしくは界面張力によりウェハ表面に供給することで、少量の酸化防止液をウェハ表面に均一に移送して該ウェハ表面の全面に塗ることができるという利点がある。
【0071】
請求項13記載の発明は、塗布方法において、酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材を使用し、その酸化防止液が下に垂れないように酸化防止液を受ける受け
部材を使用し、前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸工程と、その含浸工程では前記受け部材は横に避けており、前記酸化防止液を含んだ酸化防止液供給部材をウェハ上まで移動する搬送工程と、その搬送工程では前記受け部材が酸化防止液供給部材の下に配置され、ウェハに前記酸化防止液を塗る工程と、その塗る工程では前記受け部材は横に避けているようにしたので、濃度が濃く粘性の高い酸化防止液を使用した場合等において、酸化防止液供給部材からの酸化防止液の垂れを受ける受け部材を使用し、酸化防止液供給部材に酸化防止液を含浸する含浸工程の際、及び酸化防止液を酸化防止液供給部材によりウェハ表面に塗る工程の際は、前記受け部材を酸化防止液供給部材の下方から横に退避させ、酸化防止液を含浸した酸化防止液供給部材の移動の際には、前記受け部材を酸化防止液供給部材の下に位置させることで、ウェハ以外の場所等への酸化防止液の垂れを防止することができるという利点がある。
【0072】
請求項14記載の発明は、塗布方法において、上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はアームに取り付けられ、該アームが前記ウェハの中央部から外周部まで旋回することで、回転する前記ウェハ上を前記酸化防止液供給部材が移動するようにしたので、酸化防止液供給部材をウェハ表面の全面に広く近接又は接触させることができて、酸化防止液をウェハ表面の全面に均一に塗ることができるという利点がある。
【0073】
請求項15記載の発明は、塗布方法において、上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はウェハ半径方向に一列に配置され、前記ウェハが回転すると、一列に配置された酸化防止液供給部材が降下して前記酸化防止液をウェハ全面に塗るようにしたので、ウェハ半径方向に一列に配置された酸化防止液供給部材を、回転するウェハに近接又は接触する位置まで降下させることで、酸化防止液をウェハ表面の全面に均一に塗ることができるという利点がある。
【0074】
請求項16記載の発明は、塗布方法において、上記酸化防止液供給部材は、糸状部材を束ねたブラシ状部材もしくは線状部材、網状部材、又は発泡部材のいずれかで形成されているので、酸化防止液供給部材の表面積が増加し、該酸化防止液供給部材と酸化防止液の間に働く界面張力が増大するとともに毛細管現象が効果的に生じて該酸化防止液をウェハ表面に均一に移送することができるという利点がある。
【0075】
請求項17記載の発明は、研磨洗浄装置であって、研磨前のウェハを収納する収納部、ウェハを搬送する搬送工程、ウェハを化学機械的に研磨する研磨工程、研磨後のウェハを洗浄・乾燥する洗浄工程、該洗浄工程を経たウェハを収納する収納部、及びウェハに酸化防止液を塗る酸化防止液塗布工程を備え、前記研磨前のウェハを収納する収納部と該収納部から取り出したウェハを前記研磨工程へ搬送する前記搬送工程との間、前記研磨工程と該研磨工程で研磨されたウェハを前記洗浄工程へ搬送する前記搬送工程との間、又は前記洗浄工程で洗浄・乾燥されたウェハを搬送する前記搬送工程と前記洗浄工程を経たウェハを収納する収納部との間の少なくともいずれかの間に、前記酸化防止液塗布工程を実行する酸化防止液塗布装置を有するようにしたので、研磨洗浄装置の稼働時において、研磨工程及び洗浄工程を含む各処理工程の前後でウェハに酸化防止液を塗布する酸化防止液塗布工程を実行し得るようにしたことで、前記各処理工程中に待機状態にあるウェハの表面酸化を抑制することができる。また、洗浄工程後の製品ウェハを、表面を保護した状態で格納することができるという利点がある。
【0076】
請求項18記載の発明は、研磨洗浄装置であって、上記研磨工程及び上記洗浄工程を含む処理工程にトラブルが生じた際は、上記酸化防止液塗布装置によりウェハに酸化防止液を塗った後に、該ウェハをウェハ格納部に一時的に格納するようにしたので、研磨
洗浄装置の稼働時において、いずれかの処理工程にトラブルが生じても、ウェハを、その表面を保護した状態で一時的に待機させることができるという利点がある。
【0077】
請求項19記載の発明は、研磨洗浄方法であって、研磨前のウェハを収納する収納部、ウェハを搬送する搬送工程、ウェハを化学機械的に研磨する研磨工程、研磨後のウェハを洗浄・乾燥する洗浄工程、該洗浄工程を経たウェハを収納する収納部、及びウェハに酸化防止液を塗る酸化防止液塗布工程を備え、前記研磨前のウェハを収納する収納部と該収納部から取り出したウェハを前記研磨工程へ搬送する前記搬送工程との間、前記研磨工程と該研磨工程で研磨されたウェハを前記洗浄工程へ搬送する前記搬送工程との間、又は前記洗浄工程で洗浄・乾燥されたウェハを搬送する前記搬送工程と前記洗浄工程を経たウェハを収納する収納部との間の少なくともいずれかの間に、前記酸化防止液塗布工程を実行するようにしたので、研磨洗浄方法において、研磨工程及び洗浄工程を含む各処理工程の前後でウェハに酸化防止液を塗布する酸化防止液塗布工程を実行し得るようにしたことで、前記各処理工程中に待機状態にあるウェハの表面酸化を抑制することができる。また、洗浄工程後の製品ウェハを、表面を保護した状態で格納することができるという利点がある。
【0078】
請求項20記載の発明は、研磨洗浄方法であって、上記研磨工程及び上記洗浄工程を含む処理工程にトラブルが生じた際は、上記酸化防止液塗布工程によりウェハに酸化防止液を塗った後に、該ウェハをウェハ格納部に一時的に格納するようにしたので、研磨洗浄方法において、いずれかの処理工程にトラブルが生じても、ウェハを、その表面を保護した状態で一時的に待機させることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
一般に有機系の液体が適用されて環境への影響が懸念される酸化防止液を、廃液量を極力少なく抑えた上でウェハ表面の全面に均一に塗り、各処理工程中に待機状態にあるウェハの表面酸化を抑制し、さらには処理後の製品ウェハを、表面を保護した状態で格納するという目的を達成するために、ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布方法において、酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させるとともに該酸化防止液供給部材の上部に供給された前記酸化防止液を、該酸化防止液供給部材に沿って前記ウェハに塗る酸化防止液供給手段を有し、前記酸化防止液供給部材と前記酸化防止液との界面張力又は毛細管現象を利用することにより前記ウェハに前記酸化防止液を塗ることにより実現した。
【実施例1】
【0080】
以下、本発明の好適な実施例を図面に従って詳述する。図1は化学機械研磨装置(研磨洗浄装置)の外観斜視図、図2は化学機械研磨装置内の全体平面図、図3は研磨手段の斜視図である。
【0081】
まず本実施例に係る表面劣化を防止する化学機械研磨装置(研磨洗浄装置)の構成から説明する。図1に示すように、化学機械研磨装置1の全体は、壁、窓、扉で覆われており、研磨工程、洗浄工程及び酸化防止液塗布工程等の各工程の実行時には、外界と研磨装置1の内部とが遮断された状態に保つことが可能となっている。
【0082】
化学機械研磨装置1の格納室内部には、不活性ガスが充填されている。また、化学機械研磨装置1の側面には、不活性ガス供給手段の格納部の扉が設けられており、不活性ガスのボンベ交換時や不活性ガス供給手段のメンテナンス時には、作業者が扉を開けて作業をするように構成されている。
【0083】
化学機械研磨装置1の各窓には、シェード、カーテン、ブラインド、シャッタ等の自動又は手動による遮光手段が設けられており、研磨工程から酸化防止液塗布工程時に存在するウェハに対して外光が当たらないように、化学機械研磨装置1外から侵入する光を遮光する構造が設けられている。
【0084】
また、化学機械研磨装置1の内部が常に暗いと、化学機械研磨装置1のメンテナンス時やテスト運転に支障をきたすので、シェード、カーテン、ブラインド、シャッタ等の遮光手段を開けて、外光を導入することが可能となっている。この他、メンテナンス時やテスト運転時には、化学機械研磨装置1内部を照明するための照明手段を設けてもよい。
【0085】
図2において化学機械研磨装置1には、主としてウェハ収納部2、搬送手段3、複数の研磨手段4,4,4、洗浄・乾燥手段5、酸化防止液供給手段6、及び膜厚測定手段7が設けられている。
【0086】
前記ウェハ収納部2は、製品用ウェハ収納部2A、ダミーウェハ収納部2B、第1モニタウェハ収納部2C、及び第2モニタウェハ収納部2Dからなり、各収納部にはカセット8に格納されたウェハWが収納されている。製品用ウェハ収納部2Aは2個並んで設けられている。また第1モニタウェハ収納部2Cはカセット8の下段が使用され、同じカセット8の上段は第2モニタウェハ収納部2Dになっている。
【0087】
前記搬送手段3は、インデックス用ロボット9とトランスファーロボット10及び搬送ユニット11A,11Bとで構成されている。インデックス用ロボット9は、旋回自在且つ屈曲自在なア−ムを2本備えており、図2のY矢印方向に沿って移動自在に設けられている。
【0088】
該インデックス用ロボット9は、前記各ウェハ収納部に載置されたカセット8から研磨対象のウェハWを取り出して膜厚測定手段7及び受渡しポート12,13に搬送するとともに、ウェハWを前記酸化防止液供給手段6等から受け取ってカセット8に格納する。
【0089】
前記トランスファーロボット10は、屈曲自在且つ旋回自在なロード用アーム10Aとアンロード用アーム10Bとを備えており、図2のX矢印方向に沿って移動自在に設けられている。前記ロード用アーム10Aは、研磨前のウェハWの搬送に使用され、その先端部に備えられた図示しないパッドで研磨前のウェハWを受渡しポート12,13から受け取り、前記搬送ユニット11A,11Bに搬送する。
【0090】
一方、前記アンロード用アーム10Bは、研磨後のウェハWの搬送に用いられ、その先端部に備えられた図示しないパッドで研磨後のウェハWを前記搬送ユニット11A,11Bから受け取り、前記洗浄・乾燥手段5へと搬送する。
【0091】
前記搬送ユニット11A,11Bは、いずれも図2のY矢印方向に沿って移動自在に設けられ、それぞれ受取り位置SA,SBと受渡し位置TA,TBの間を移動する。受取り位置SA,SBで前記トランスファーロボット10のロード用アーム10Aから研磨対象のウェハWを受け取り、受渡し位置TA、TBに移動して研磨ヘッド14A,14Bに受け渡す。また研磨後のウェハWを受渡し位置TA,TBで受け取り、受取り位置SA,SBに移動して前記トランスファーロボット10のアンロード用アーム10Bに受け渡す。
【0092】
該搬送ユニット11A,11Bは、それぞれが別々の2個の受台を持っており、この2個の受台は研磨前のウェハW用と研磨後のウェハW用とに使い分けられる。前記洗浄
・乾燥手段5の隣にはアンロードカセット15が設けられ、研磨後のウェハWを一時格納する場合に使用される。例えば、前記洗浄・乾燥手段5の運転中止中に研磨後のウェハWが前記トランスファーロボット10に搬送されて一時格納される。
【0093】
前記研磨手段4,4,4は、ウェハWの研磨を行い、プラテン16A,16B,16C、研磨ヘッド14A,14B、スラリー供給ノズル17A,17B,17C、及びキャリア洗浄ユニット18A,18Bを備えている。該キャリア洗浄ユニット18A,18Bは、それぞれ搬送ユニット11A,11Bの所定の受渡し位置TA、TBに配置され、研磨終了後の研磨ヘッド14A,14Bにおける図示しないキャリアを洗浄する。
【0094】
プラテン16A,16B,16Cは、円盤状に形成されており、3台が並列して配置されている。各プラテン16A,16B,16Cの上面には、後述するように、それぞれ研磨パッドが貼着されており、該研磨パッド上にスラリー供給ノズル17A,17B,17Cからスラリーが供給される。
【0095】
前記3台のプラテン16A,16B,16Cのうち、左右のプラテン16A,16Bは第1の研磨対象膜(例えばCu膜)の研磨に用いられ、中央のプラテン16Cは第2の研磨対象膜(例えばTa膜)の研磨に用いられる。両者の研磨においては、供給するスラリーの種類、研磨ヘッド14A,14Bの回転数やプラテン16A,16B,16Cの回転数、また研磨ヘッド14A,14Bの押付力や研磨パッドの材質等が変更されている。
【0096】
該3台のプラテン16A,16B,16Cの近傍には、それぞれドレッシング装置19A,19B,19Cが設けられている。該ドレッシング装置19A,19B,19Cは、旋回自在なアームを備えており、このアームの先端部に設けられたドレッサによってプラテン16A,16B,16C上の研磨パッドをドレッシングする。
【0097】
前記研磨ヘッド14A,14Bは、2台設置されており、それぞれ図1のX矢印方向に沿って移動自在に設けられている。
【0098】
図3に示すように、研磨手段4は、プラテン16Aの上面に研磨パッド20が貼着されている。プラテン16Aの下部には、モータMの図示しない出力軸に回転軸21が連結され、モータMを駆動することにより、プラテン16AはA矢印方向へ回転する。研磨ヘッド14Aの内部には、ウェハWを吸着固定するための図示しないキャリアが設けられている。該研磨ヘッド14Aは、図示しない移動機構によりB矢印方向に移動し、吸着固定されたウェハWを研磨パッド20へ押圧する。
【0099】
研磨手段4は、研磨ヘッド14Aで保持したウェハWをプラテン16A上の研磨パッド20に押し付けて、プラテン16Aと研磨ヘッド14Aとをそれぞれ回転させながら、研磨パッド20上にスラリー供給ノズル17Aによってスラリーを供給することにより、ウェハWが化学機械的に研磨される。他方側の研磨ヘッド14B、プラテン16B,16Cも同様に構成されている。
【0100】
前記洗浄・乾燥手段5は、研磨が終了したウェハWを洗浄する。この洗浄・乾燥手段5は、洗浄装置5Aと乾燥装置5Bとを備えている。洗浄装置5Aは3個の洗浄槽を有し、粗洗浄、精密洗浄及びリンスの順に配置されている。粗洗浄部では、ウェハWに対してアルカリ溶液を流し、ダブルサイドブラシによりウェハW表面の洗浄を行う。精密洗浄部では、ウェハWに対して酸性薬液を流し、ダブルサイドブラシによりウェハW表面の洗浄を行う。リンス部では、超音波水を供給しながらペンブラシによる精密洗浄を行う。
【0101】
研磨手段4,4,4で研磨されたウェハWは、トランスファーロボット10によって洗浄・乾燥手段5へと搬送され、この洗浄・乾燥手段5の洗浄装置5Aで粗洗浄、精密洗浄及びリンスされた後、乾燥装置5Bで乾燥される。乾燥されたウェハWは、搬送手段3のインデックス用ロボット9によって乾燥装置5Bから取り出され、必要に応じて膜厚測定手段7で膜厚測定が行われた後、前記酸化防止液供給手段6でウェハW表面に酸化防止液が塗布されてから、ウェハ収納部2にセットされたカセット8の所定の位置に収納される。
【0102】
前記膜厚測定手段7には、ウェハWのセンタリング機構と膜厚測定器とが備えられている。該膜厚測定手段7では、測定対象膜が酸化膜である場合には、光干渉式の膜厚測定器等が用いられ、測定対象膜が金属膜である場合には、四探針比抵抗測定器等が用いられる。
【0103】
前記不活性ガス供給手段22には、ヘリウムやアルゴン、ネオン等の希ガス、又は窒素や二酸化炭素その他の反応性の乏しい不活性ガスが充填されている不活性ガスボンベ23と、不活性ガスの供給及び供給停止を制御するバルブ24と、液体として貯蔵されている不活性ガスを気化させる気化器25と、不活性ガスの供給圧力を大気圧と同圧力、又は大気圧よりも少し高めに調節するガバナ26とが設けられている。
【0104】
ウェハWの搬送工程、洗浄工程等においては、バルブ24を開いて不活性ガスボンベ23から不活性ガス、又はその液体を気化器25に流出させ、該気化器25にて気化された不活性ガスをガバナ26にて所定の圧力に設定した後、ギャラリーを介して搬送・作業室27内に流出させる。
【0105】
このようにして、搬送・作業室27内には大気圧とほぼ同圧力もしくは外界よりも少し高めの圧力に設定されるため、外部から酸素を含む空気が流入することなく、搬送・作業室27内を不活性ガスで充填することが可能となる。該搬送・作業室27を設けることによって、搬送工程から検査工程、並びに収納工程までに存在するウェハWを、外界の空気から遮断することが可能となっている。
【0106】
搬送・作業室27には、該搬送・作業室27内の気体の排出口となるダンパ28が設けられている。搬送・作業室27内の圧力が外界の大気圧よりも高くなると、ダンパ28はその圧力差に応じた流量の気体を搬送・作業室27の外部に流出させることが可能となっている。
【0107】
前記搬送・作業室27には、ウェハWの搬入用及び搬出用の扉や、洗浄装置5A、乾燥装置5B、酸化防止液供給手段6等のメンテナンス用の扉等の開口部が設けられているが、その開口部の扉にはパッキンが設けられており、外界の雰囲気とほぼ遮断する構造を採用している。
【0108】
また、前記研磨手段4及び洗浄・乾燥手段5等には、研磨工程及び洗浄工程を含む処理工程にトラブルが生じた際に、前記酸化防止液供給手段6によりウェハWに酸化防止液を塗布した後に、該ウェハWを一時的に格納するための図示しないウェハ格納部がそれぞれ付設されている。
【0109】
図4の(a)、(b)は、酸化防止液供給手段6Aの第1の構成例を示している。(a)はウェハ保持機構の側面断面図、(b)は酸化防止液供給部材の拡大斜視図である。該酸化防止液供給手段6Aには、ウェハWを水平保持して回転させるウェハ保持機構29と、ウェハWの表面にBTA等の酸化防止液を供給する酸化防止液供給部材30とが備えられている。
【0110】
前記ウェハ保持機構29は、適宜の駆動機構により回転自在とされた回転軸31の上端に円板状のウェハステージ32が固着されている。該ウェハステージ32の外周部には、円周方向に沿ってほぼ等間隔をおいて6個程度の複数個のウェハチャック33が立設され、ウェハ保持機構29は、該複数個のウェハチャック33によりウェハWを水平に保持して回転させる。
【0111】
前記酸化防止液供給部材30は、酸化防止液供給管34の一端部に取り付けられており、該酸化防止液供給管34を介して、図示しない移動機構によりC矢印方向又はD矢印方向に移動可能に構成されている。そして、該酸化防止液供給部材30は、回転するウェハW上を該ウェハWの中央部から外周部まで移動し、ウェハW表面の全面に酸化防止液を供給して塗る。
【0112】
前記酸化防止液供給管34は、管状の部材で形成され、図5に示すように、ウェハステージ32面と平行となるように側面にスリット34aが形成されており、一端が封止され、開放された他端より図示しない酸化防止液タンクからBTA等の酸化防止液Sが図示しないポンプにより供給される。
【0113】
酸化防止液供給管34へ供給された酸化防止液Sは、該酸化防止液供給管34の内部に貯留され、一定量を超えた時点でスリット34aより流出し、酸化防止液供給部材30を毛細管現象もしくは界面張力により流下してウェハW表面へ供給される。
【0114】
該酸化防止液供給部材30は、糸状部材を束ねたブラシ状部材もしくは線状部材、網状部材、又は発泡部材のいずれかで形成されている。酸化防止液供給部材30は、図6に示すように、ウェハWの表面に対してその先端に酸化防止液Sの液滴が形成されない距離dまで近接されるか、又は図7に示すように、その先端がウェハWの表面に接触するように設置されている。
【0115】
該酸化防止液供給部材30が、ウェハWに対して先端に酸化防止液Sの液滴が形成されない距離dまで近接する際の具体的な距離は以下のような方法で計算可能である。いま、例として、外径5mmの円管より落下する水滴を想定する。温度が20度では、水の表面張力は72.8mN/mである。外径が5mmであるとすると、外周長は約15.7mmとなる。72.8mN/mの表面張力が15.7mmの長さに作用するため、1つの水滴を重力に対して支える応力は1.14mNとなる。ここで、重力加速度は9.8m/sであるので、支えられる水滴の重さは、0.117gとなる。これは、117mmの体積に相当することから、半径を算出すると約3mmとなる。よって、外径5mmの円管から滴下する水滴の外径は6mmということになる。
【0116】
これにより、外径5mmの円管の下面から液滴の下面までは、水滴の半径が3mmから4mm程度となる。水の場合において、本実施例における近接の距離とは、ウェハW表面より3mmから4mm程度の位置以内にあることを意味する。酸化防止液の場合も同様に、表面張力を求めることにより、液滴を支持する半径から、近接させる距離dを求めることが可能である。
【0117】
酸化防止液供給部材30はウェハWに対して上記のように設置されており、該酸化防止液供給部材30の上部に位置する酸化防止液供給管34より均一に供給された酸化防止液Sが、毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液供給部材30を均一に流下する。流下した酸化防止液Sは、後述するように、ウェハWと酸化防止液Sの界面張力、ウェハWと気体の界面張力及び酸化防止液S自身の表面張力により、該酸化防止液Sは少量であってもウェハW上へ均一に広がり、該ウェハWの回転と酸化防止液供給部材30
の移動によりウェハW表面の全面に均一に塗られる。
【0118】
前記酸化防止液供給部材30に使用されるブラシ状部材、網状部材、又は発泡部材は、ナイロン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリエステル等の高分子樹脂素材によって形成され、可撓性を有している。これにより、ウェハWに接触された酸化防止液供給部材30は、ウェハWに接触される力に応じて撓むようにして該ウェハW上を移動する。
【0119】
ここで、ウェハW表面に酸化防止液Sを「塗る」とは、「垂らす」「流す」「落とす」「吹き付ける」「噴霧する」「(供給する)」「押し広げる」と明確に区別される。区別される点として、固体の界面張力を使用する・毛細管現象を利用するか、それともしないか、という点に照らして区別される。
【0120】
「塗る」とは、液体を固体物質に沿わせながら、別の固体表面上に液体を供給することである。固体物質に沿わせて液体を供給する上で、固体と液体間に働く界面張力を利用する。例えば、毛細管現象もこの固体と液体の間に働く界面張力を利用して液面が上昇する現象である。特に毛細管では、固体と液面の界面の面積が増加し、上方向の界面張力が増加するため、結果的にその部分の液体の重力とつりあう分だけ液面が上昇する。
【0121】
よって、「塗る」とは、「毛細管現象もしくは界面張力を利用して、ある固体表面・界面に沿わせた液体を、別の固体表面へ移送する行為」と広く定義されるものである。
【0122】
例えば、液体、ここでは、まず水がノズルなどを使用して滴下される場合、ノズルの下に水滴が形成される。この水滴は、水滴の表面積を最小にするように働くため球状になる。水は表面張力が非常に大きい液体の一つであり、大きな液滴を形成する。このような液滴を形成する挙動は、酸化防止液Sを供給する場合にも当てはまる。即ち、酸化防止液Sをノズルから滴下する場合においても、ノズルの先端において、液体表面の表面張力により液滴が形成され、ある大きさになって初めて落下する。基本的に少量で連続的に供給しようとしても、液滴の表面張力が邪魔して、ある一定の大きさにならない限り、落下しない。これは、ごく少量の酸化防止液SをウェハWに供給する際に非常に大きい問題となる。
【0123】
ここで、本実施例において示されるように、固体の界面張力(毛細管現象)を使用する方法について述べる。液体(酸化防止液)が固体に接触している場合は、先と全く状態が異なる。液体が固体に接触している場合は、特にその固体がナイロンなどの親水性である場合、固体と液体の界面張力が作用するため、図8に示すように液体が広がり、液体の表面積を大きくすることが可能となる。また、ごく少量の液体であっても固体上では大きな面積を占有することが可能となる。言いかえればある一定の面積を埋め尽くすのに必要な液体の量を少なくすることが可能となる。
【0124】
液体が固体に接触すると、固体と液体の界面張力T、固体と気体の界面張力T及び液体の表面張力Tが作用する。これら三力の作用の釣り合いで接触角が決まり、結果として液体の表面を大きくすることができる。
【0125】
特に、界面張力を利用して、液体を供給する場合、界面部分が多くあればあるほど、大きい界面張力が働くことになる。例えば、一つの棒に沿わせて供給するよりも、ブラシ状や筆状の多くの細かい毛から構成された部材のほうが、液体が接触する表面積が大きくなる。そのため、仮に同一素材で構成するのであれば、ブラシ状、筆状の方が、より大きい界面張力が働くことになる。
【0126】
また、ブラシ状、筆状以外でも、多孔質の樹脂や繊維であっても、同様に液体に接触する表面積を大きくとることが可能となる。
【0127】
このように、液体と固体の接触する表面積を大きくすることで、より液体自身の表面張力を緩和し、固体と液体の界面張力が大きくなるため、少量の液体であっても、面積を広げることが可能となる。
【0128】
図9の(a)、(b)は、酸化防止液供給手段6Bの第2の構成例を示している。(a)は側面図、(b)は斜視図である。該酸化防止液供給手段6Bには、ウェハWを水平保持して回転させる図示しないウェハ保持機構と、酸化防止液供給管35に供給された酸化防止液を該酸化防止液供給管35から引き上げる引き上げ機構としての吸い上げ用供給部材36と、引き上げられた酸化防止液を流下させる機構としての流下用供給部材(酸化防止液供給部材)37とが備えられている。
【0129】
吸い上げ用供給部材36と流下用供給部材37とは一体となって、図示しない移動機構によりE矢印方向、即ち回転するウェハW上を該ウェハWの中央部から外周部まで移動可能に構成されている。
【0130】
前記吸い上げ用供給部材36及び流下用供給部材37は、それぞれ線状部材もしくはブラシ状部材で形成されており、特に流下用供給部材37はウェハWの半径方向に一列に形成されている。
【0131】
そして、酸化防止液供給管35に供給された酸化防止液が毛細管現象もしくは界面張力を利用して吸い上げ用供給部材36により引き上げられる。引き上げられた該酸化防止液は前記と同様に毛細管現象もしくは界面張力により流下用供給部材37を伝って流下し、ウェハW表面に供給される。引き上げ及び流下を、それぞれ毛細管現象もしくは界面張力を利用した方法で行うことにより、酸化防止液供給管35に一定量の酸化防止液を流すことで、ごく微量ながらも一定量の酸化防止液をウェハW上に均一に且つ連続的に薄く塗ることができる。
【0132】
なお、図9の(a)、(b)では、吸い上げ用供給部材36と流下用供給部材37とは、二つの部材として分けて形成されているが、単一の供給用部材を途中で曲げることにより、吸い上げ用供給部と流下用供給部とを一体に形成することもできる。
【0133】
図10の(a)、(b)は、酸化防止液供給手段6Cの第3の構成例を示している。(a)は全体構成を示す側面図、(b)は酸化膜防止液供給部材を下から見た図である。該酸化防止液供給手段6Cには、ウェハWを水平保持して回転させるウェハ保持機構29と、酸化防止液を含ませることが可能なナイロンブラシ等からなる酸化防止液供給部材38と、旋回中心支柱39の上端に取り付けられ前記酸化防止液供給部材38をウェハWの中央部から外周部まで旋回(移動)自在且つ、昇降自在に支持する旋回アーム40と、該旋回アーム40に沿って取り付けられ酸化防止液供給口41aが前記酸化防止液供給部材38の上部に臨むように構成された含浸手段としての酸化防止液供給管41と、ウェハ保持機構29の側方部に設置されたブラシ洗浄槽42と、ウェハWの表面に表面液膜を形成するためのアルコール供給機構43とが備えられている。
【0134】
前記酸化防止液供給部材38は、直径30mm程度の円板に植え付けられた直径24mm程度の柱状のブラシ状部材で形成されている。図10(b)に示すように、前記酸化防止液供給口41aは、該酸化防止液供給部材38の中心部における上部位置に臨んで配置されている。前記酸化防止液供給管41には、外径が約6mm(内径は約4.5mm)の円管が用いられている。
【0135】
そして、酸化防止液供給口41aから酸化防止液供給部材38の上部に供給された酸化防止液は、該酸化防止液供給部材38を降下するにしたがい、毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液供給部材38の表面を伝わり、該酸化防止液供給部材38の全域に広がる。酸化防止液供給部材38は、この状態で降下し、その先端部がウェハWの表面に近接又は接触する位置で降下が止められる。
【0136】
次いで、ウェハWを回転させながら、酸化防止液供給部材38がウェハWの中央部から外周部に作用するように旋回アーム40を旋回させる。
【0137】
その結果、酸化防止液は必要最小限の薄い量が毛細管現象もしくは界面張力によりウェハWの表面に供給される。したがって、酸化防止液を、廃液量を極力少なく抑えた上でウェハWの表面に効率的且つ、均一に供給することが可能となる。
【0138】
酸化防止液を塗る処理を行わず、酸化防止液供給手段6Cを待機状態にする場合は、旋回アーム40を旋回せて、酸化防止液供給部材38をブラシ洗浄槽42に浸漬する。ブラシ洗浄槽42には、アルコール水溶液等が溜められている。このブラシ洗浄槽42は、ある程度定期的にドレインとフレッシュなアルコール水溶液を供給する機能が付設されている。
【0139】
このブラシ洗浄槽42へ酸化防止液供給部材38を浸漬させることで、酸化防止液供給部材38を回転させながら、該酸化防止液供給部材38に付いた酸化防止液をアルコール水溶液に置換させて洗浄する。ブラシ洗浄槽42には超音波をかけて洗浄するのが好適である。超音波洗浄機構としては、プレテック社製ウルトラソニックPT-06BやファインジェットPT-005J20などをブラシ洗浄槽に取り付けるのが好適である。
【0140】
長期に、酸化防止液供給手段6Cを待機状態にする場合は、酸化防止液を流す酸化防止液供給管41に、図示しない3方弁で接続されたアルコール水溶液ラインから供給されたアルコール水溶液を流し、酸化防止液供給管41を通って酸化防止液供給部材38の上部から完全に洗浄する。洗浄液としては、エタノールやメタノールなどがよいが、酸化防止液によっては、より溶解性が増すエチレングリコールなどを使用するのが望ましい。
【0141】
また、前記アルコール供給機構43は、ウェハWの表面に酸化防止液供給部材38で酸化防止液を塗る前に、該ウェハWの表面にエタノールやイソプロピルアルコール、場合によってはエチレングリコール等を供給して、一定の液膜を形成するためのものである。
【0142】
ナイロンブラシ等からなる酸化防止液供給部材38でウェハWの表面に酸化防止液を塗る場合、酸化防止液の粘性によっては、ウェハWの表面にナイロンブラシ等の痕跡が残ることがある。そこで、ウェハWの表面に予め前記一定の液膜を形成しておくことで、前記痕跡が生じるのを防止し得るものである。
【0143】
図11は、酸化防止液供給手段6Dの第4の構成例を示している。この構成例の酸化防止液供給手段6Dでは、酸化防止液供給部材38に酸化防止液を含ませる含浸手段として、前記酸化防止液供給管に代えて、酸化防止液を溜めた酸化防止液供給槽44が設けられている。酸化防止液供給槽44内の酸化防止液は、定期的に自動交換ができるように、図示しない液供給機構やドレイン機構が設けられている。その他の構成は、前記図10に示した酸化防止液供給手段6Cとほぼ同じである。
【0144】
濃度が濃く粘性の高い酸化防止液を使用する場合では、酸化防止液供給部材38を酸化
防止液を溜めた酸化防止液供給槽44に浸し、毛細管現象もしくは界面張力により一定量の酸化防止液を該酸化防止液供給部材38に含浸させるものである。
【0145】
そして、旋回アーム40を旋回させて、酸化防止液供給部材38を酸化防止液供給槽44に浸漬する。次いで酸化防止液供給部材38を酸化防止液供給槽44から持ち上げ、一定量の酸化防止液を含んだ該酸化防止液供給部材38を、再び旋回アーム40を旋回せてウェハW上まで移動(搬送)させる。搬送後、酸化防止液供給部材38を、その先端部がウェハWの表面に近接又は接触する位置まで降下させ、酸化防止液を毛細管現象もしくは界面張力によりウェハWの表面に供給し、ウェハWを回転させるとともに酸化防止液供給部材38をウェハW上で移動させて該ウェハWの表面に酸化防止液を塗る。
【0146】
ウェハW表面への酸化防止液の塗りが、一度で不十分の場合は、上記工程を再度繰り返して、酸化防止液をウェハW表面の全面に均一に塗る。
【0147】
ここで、濃度が濃く粘性の高い酸化防止液を使用する場合でも、一定量の酸化防止液を含んだ該酸化防止液供給部材38を、含浸場所からウェハW上まで搬送する際には、該酸化防止液がウェハ以外の場所等に垂れるおそれがある。
【0148】
このため、ウェハ以外の場所への酸化膜防止液の垂れを防ぐために前記酸化防止液供給部材38の下には、図示しない酸化防止液の受け部材が設けられている。該受け部材は、一定量の酸化防止液を含んだ該酸化防止液供給部材38を含浸場所からウェハW上まで搬送する際にのみ、該酸化防止液供給部材38の下に位置し、酸化防止液供給槽44で酸化防止液を酸化防止液供給部材38に含浸する含浸工程の際と、酸化防止液を酸化防止液供給部材38からウェハW表面に供給する供給工程の際は、これらの工程に支障が生じないように、酸化防止液供給部材38の下方から横に退避するように構成されている。
【0149】
図12は、化学機械研磨装置(研磨洗浄装置)1の信号処理系のブロック図である。化学機械研磨装置1の信号処理系には、記憶手段45、検出手段46、研磨性能指標計算部47、研磨状況判断部48、研磨条件設定部49、及び装置制御部50等の各種制御ブロックが設けられている。
【0150】
記憶手段45は前記膜厚測定手段7で測定したウェハWの膜厚データを記憶し、検出手段46は化学機械研磨装置1で発生する種々のトラブルを検出し、研磨性能指標計算部47では前記膜厚データや研磨に要した加工時間等から研磨均一性、研磨レート、研磨形状等の研磨性能指標を演算する。
【0151】
研磨状況判断部48では研磨性能指標計算部47で求められた研磨均一性、研磨レート、研磨形状等の研磨性能指標から製品用ウェハWの研磨を行うかモニターウェハによるモニター研磨を行うかを判断する。研磨条件設定部49では研磨性能指標計算部47で求められた研磨均一性、研磨レート、研磨形状等の研磨性能指標から研磨条件や研磨形状制御パラメータの設定を行う。
【0152】
装置制御部50は前述の各部おける判断信号や設定信号を受けて化学機械研磨装置1の動きを制御するものであり、表示手段50Aは研磨性能指標や研磨条件等を表示する。
【0153】
次に、上述のように構成された化学機械研磨装置1による表面劣化を防止する研磨洗浄方法を説明する。図13は研磨対象毎にCu層、Ta層の2工程に分けて研磨加工を行う場合の工程図である。酸化防止液供給手段には、前記図10に示した第3の構成例の酸化防止液供給手段6Cが適用されている場合について説明を進める。
【0154】
まず研磨加工に際して、搬送・作業室27内を不活性ガスで充填する。搬送・作業室27内では不活性ガスの割合が徐々に増加して、搬送・作業室27内に含まれる酸素の量が相対的に減少する。搬送・作業室27内を不活性ガスで充填することによって、CMP加工後の搬送工程、洗浄工程、酸化防止液供給工程等の各工程において、ウェハ表面の酸化や改質を改善することが可能となる。
【0155】
搬送・作業室27内が不活性ガスで充填されると、ウェハWのCMP加工を開始する。カセット8に収納されたウェハWがインデックス用ロボット9で取り出されて膜厚測定手段7に搬送され、必要に応じて膜厚測定が行われる。膜厚測定が終了したウェハWは、インデックス用ロボット9によって取り出され受渡しポート12又は13に載置される。
【0156】
次にトランスファーロボット10のロード用アーム10Aによって受渡しポート12又は13から取り出され、搬送ユニット11Aへと搬送される。搬送ユニット11Aでは、予めロード用受け台が所定の受取り位置SAに待機しており、この受取り位置SAに位置したロード用受け台にロード用アーム10AからウェハWが受け渡される。
【0157】
ウェハWが受け渡されたロード用受け台は、前進して所定の受渡し位置TAへ移動する。この受渡し位置TAの上方には、あらかじめ研磨ヘッド14Aが待機しており、この研磨ヘッド14Aにロード用受け台からウェハWが受け渡される。
【0158】
ウェハWを受け取った研磨ヘッド14Aは、そのウェハWをキャリアで吸着保持して、所定の研磨位置PAへと移動する。そして、その位置で吸着を解除し、ウェハWをスラリーが十分浸されている研磨パッド20上に載置してウェハWを研磨する。研磨は、ウェハWをキャリアで研磨パッド20に押し付けながら、プラテン16Aと研磨ヘッド14Aの双方を回転させ、その回転する研磨パッド20上にスラリー供給ノズル17Aからスラリーを供給して、図13に示すように、第1の研磨対象膜であるCu膜を研磨する。
【0159】
研磨終了後のウェハWは、再びキャリアに吸着保持されてプラテン16A上から回収される。この後、第2の研磨対象膜であるTa膜を研磨する場合には、研磨ヘッド14Aは、そのまま中央のプラテン16C上の研磨位置PCへと移動する。そして、その中央のプラテン16Cで研磨特性を変えて第2の研磨対象膜であるTa膜の研磨を行う。
【0160】
一方、第1の研磨対象膜だけで研磨を終える場合は、研磨ヘッド14Aは所定の受渡し位置TAに移動する。そして、その受渡し位置TAに予め位置した搬送ユニット11Aのアンロード用受け台にウェハWを受け渡す。
【0161】
なお、中央のプラテン16Cで第2の研磨対象膜の研磨を行った場合も、研磨終了後は、研磨ヘッド14Aが研磨位置PCから受渡し位置TAへと移動してアンロード用受け台にウェハWを受け渡す。
【0162】
受渡し位置TAで研磨終了後のウェハWが受け渡された搬送ユニット11Aのアンロード用受け台は、後退して所定の受取り位置SAへと移動する。そして、この受取り位置SAに位置したアンロード用受け台からトランスファーロボット10のアンロード用アーム10BによってウェハWが取り出され、洗浄・乾燥手段5へと搬送される。
【0163】
洗浄・乾燥手段5に搬送されたウェハWは、洗浄装置5Aで粗洗浄、精密洗浄及びリンスされた後、乾燥装置5Bで乾燥される。乾燥されたウェハWは、搬送手段3のインデックス用ロボット9によって乾燥装置5Bから取り出され、必要に応じて膜厚測定手段
7に搬送されて膜厚測定が行われた後、酸化防止液供給手段6Cに搬送される。
【0164】
該酸化防止液供給手段6Cでは、ウェハWがウェハチャック33により水平に保持されて回転される。そして、該ウェハWの表面に酸化防止液が塗られる前に、まずアルコール供給機構43により、エタノール、イソプロピルアルコール、又はエチレングリコール等が供給されて、ウェハWの表面に一定の液膜が形成される。
【0165】
次いで、酸化防止液供給部材38の上部に酸化防止液が供給されると、該酸化防止液は、毛細管現象もしくは界面張力により酸化防止液供給部材38の全域に広がる。酸化防止液供給部材38は、この状態で降下し、その先端部がウェハWの表面に近接又は接触する位置で降下が止められる。そして、回転するウェハW上で、酸化防止液供給部材38がウェハWの中央部から外周部まで作用するように旋回アーム40が旋回される。
【0166】
その結果、ウェハW表面と酸化防止液の界面張力等により酸化防止液はウェハW表面の全面へ均一に薄く広がり、ウェハW表面の全面に均一に薄く塗られる。このようにして、一般に有機系の液体が適用されて環境への影響が懸念されるBTA等の酸化防止液が、廃液量が極力少なく抑えられた上で、ウェハW表面へ均一に薄く塗られる。
【0167】
この後、乾燥装置5BでウェハW表面の乾燥処理を行う。乾燥されたウェハWは、トランスファーロボット10及びインデックス用ロボット9の働きによって乾燥装置5Bから取り出され、該インデックス用ロボット9によってウェハ収納部2にセットされているカセット8の所定の位置に、表面が酸化防止液で保護された状態で収納される。
【0168】
上記の場合は、研磨後のウェハWについて、洗浄工程で洗浄・乾燥された後に酸化防止液塗布工程が実行された場合について述べたが、ウェハWが研磨工程の前のカセット8に収納されている段階で、酸化防止液塗布工程が実行されたときは、該研磨工程中に待機状態にあるウェハの表面酸化が抑制される。また、研磨工程の前にウェハ表面に酸化防止液が塗布されていると、該酸化防止液が研磨工程中にスラリーに溶け込んで研磨されたウェハWの表面に機能し、ウェハW表面の酸化抑制作用が得られる。
【0169】
また、前記図3に示した研磨パッド20の上方に、図示しない酸化防止液供給ノズルを設置し、研磨終了後に、純水の供給によりウェハW及び研磨パッド20の各表面をリンスするリンス工程の終盤に、前記酸化防止液供給ノズルから研磨パッド20上に適量の酸化防止液を供給し、研磨パッド20を介してウェハWの表面に酸化防止液を塗ることもできる。
【0170】
この方法でウェハWの表面に酸化防止液を塗ると、研磨工程の後で洗浄工程の前に、ウェハWの表面に簡便に酸化防止液が塗られて、該洗浄工程中に待機状態にあるウェハWの表面酸化が抑制される。
【0171】
さらに、研磨工程及び洗浄・乾燥工程を含む処理工程中に、前記図12に示した検出手段46で何らかのトラブル発生が検出されたときは、そのトラブル内容に応じて処理中のウェハWを前記酸化防止液供給手段6Cに搬送し、該ウェハWの表面に酸化防止液を塗る。この後、該ウェハWを前記ウェハ格納部に一時的に格納する。これにより、いずれかの処理工程にトラブルが生じた場合であっても、ウェハWは表面が保護された状態で待機状態とされる。
【0172】
次に、酸化防止液の塗りの具体的な実行例を説明する。酸化防止液供給部材としてのブラシ材料や酸化防止薬液としては、いずれも次の表1、表2に示す条件で行った。
【0173】
【表1】

【0174】
【表2】

【0175】
また、この他にも銅の酸化防止用の薬液としては、1,2,3-ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾールなどが代表的である。ベンゾフロキサン、2-1-3-ベンゾチアゾール、フェニレンジアミン、カテコール、o-アミノフェノール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾールなどを使用してもよい。汎用的に販売されているものとしては、城北化学工業製BT-120、BT-LX、CBT-1や大和化成工業のVERZONE Crystal#120、シーユーガードDなどがある。
【0176】
例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾールは白色粉末であるため、エチレングリコールなどの溶剤に溶解するなどして使用する。またメタノールなどを使用してもよい。
【0177】
尚、本発明は、酸化防止液の供給のみならず、薬液の使用量削減または効率供給を目的に、たとえば、露光装置に使用される感光材料(フォトレジスト)、また、洗浄装置に使用されるフッ酸、クエン酸、有機酸、アンモニア水、有機アルカリなどの薬液、エッチング溶液など、固体表面に液体を作用させる幅広いプロセスに適用可能とするものである。
【0178】
液体をブラシ部材で塗る方法は、当該分野以外では他にも事例があると思われる。しかし、他の分野と大きく違う要素は、ブラシ部材を強くウェハW表面に接触させてはならないことである。これは、半導体ウェハWの表面は、他の製品などと比較して非常に繊細であり、安易に触ることはできないことによるものである。仮にブラシ部材をウェハWに強く接触させると明らかにブラシ部材の痕跡が残る。明らかなブラシ部材の痕跡は、ウォーターマークなどのように、表層がその痕跡に沿って変質することになり、最終的な半導体製品として製作された場合にデバイス電気特性を極度に悪化させるという問題が起きる。
【0179】
よって、単純に一般で使用されるような鉄板や銅板に酸化防止液を塗ることとは大きく異なり、塗り方が非常に繊細で機構も精密でなければならない。
【0180】
そのようなことから、初期からウェハWの表面にブラシ部材で酸化防止液を塗る場合、酸化防止液の粘性によっては、ブラシ部材の痕跡が残る場合もある。この場合は、最初に、エタノールやイソプロピルアルコール、場合によってはエチレングリコールなどを前もってウェハW表面に供給して、その全面に一定の液膜を形成し、その状態からブラシ部材を使用してウェハWの表面に酸化防止液を塗る工程を行った方が、ブラシの痕跡は残りにくい。ここで、酸化防止液供給部材はナイロンなどを用いたブラシではなく、羊毛や馬毛などからできた柔らかい筆などを使用することが酸化防止液を塗る部材として好適である。
【0181】
上述したように、本実施例に係る表面劣化を防止する塗布装置、塗布方法、研磨洗浄装置及び研磨洗浄方法においては、一般に有機系の液体が適用されて環境への影響が懸念さ
れる酸化防止液を、廃液量を極力少なく抑えた上で、ウェハW表面の全面へ均一に塗ることができる。
【0182】
研磨工程及び洗浄・乾燥工程を含む各処理工程中に待機状態にあるウェハWの表面酸化を抑制することができる。また、洗浄・乾燥工程後の製品ウェハWを、表面を保護した状態で収納することができる。
【0183】
研磨の終了後に、ウェハW及び研磨パッド20の各表面をリンスするリンス工程の終盤に、該研磨パッド20上に適量の酸化防止液を供給することで、洗浄・乾燥工程の前にウェハWの表面に簡便に酸化防止液を塗ることができる。この酸化防止液の塗布により、洗浄・乾燥工程中に待機状態にあるウェハWの表面酸化を抑制することができる。
【0184】
いずれかの処理工程にトラブルが生じても、ウェハWを、その表面を保護した状態で一時的に待機させることができる。
【0185】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0186】
図は本発明の実施例に係る表面劣化を防止する塗布装置、塗布方法、研磨洗浄装置及び研磨洗浄方法を示すものである。
【図1】化学機械研磨装置の外観斜視図。
【図2】化学機械研磨装置内の全体平面図。
【図3】研磨手段の斜視図。
【図4】酸化防止液供給手段の第1の構成例を示す図であり、(a)はウェハ保持機構の側面断面図、(b)は酸化防止液供給部材の拡大斜視図。
【図5】上記第1の構成例における酸化防止液供給部材と酸化防止液供給管の側面断面図。
【図6】上記第1の構成例においてウェハに近接された酸化防止液供給部材の酸化防止液供給時の断面図。
【図7】上記第1の構成例においてウェハに接触された酸化防止液供給部材の酸化防止液供給時の断面図。
【図8】液体が固体に接触したとき固体と液体の界面張力等により液体の表面が大きく広がることを説明するための図。
【図9】酸化防止液供給手段の第2の構成例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図。
【図10】酸化防止液供給手段の第3の構成例を示す図であり、(a)は全体構成を示す側面図、(b)は酸化防止液供給部材を下から見た図。
【図11】酸化防止液供給手段の第4の構成例を示す側面図。
【図12】化学機械研磨装置の信号処理系ブロック図。
【図13】研磨対象膜毎にCu層、Ta層の2工程に分けて研磨加工を行う場合の工程図。
【符号の説明】
【0187】
1 化学機械研磨装置(研磨洗浄装置)
2 ウェハ収納部
3 搬送手段
4 研磨手段
5 洗浄・乾燥手段
6,6A,6B,6C,6D 酸化防止液供給手段
7 膜厚測定手段
8 カセット
9 インデックス用ロボット
10 トランスファーロボット
10A ロード用アーム
10B アンロード用アーム
11A,11B 搬送ユニット
12 受渡しポート
13 受渡しポート
14A,14B 研磨ヘッド
15 アンロードカセット
16A,16B,16C プラテン
17A,17B,17C スラリー供給ノズル
18A,18B キャリア洗浄ユニット
19A,19B,19C ドレッシング装置
20 研磨パッド
21 回転軸
22 不活性ガス供給手段
23 不活性ガスボンベ
24 バルブ
25 気化器
26 ガバナ
27 搬送・作業室
28 ダンパ
29 ウェハ保持機構
30 酸化防止液供給部材
31 回転軸
32 ウェハステージ
33 ウェハチャック
34 酸化防止液供給管
34a スリット
35 酸化防止液供給管
36 吸い上げ用供給部材(引き上げ機構)
37 流下用供給部材(酸化防止液供給部材)
38 酸化防止液供給部材
39 旋回中心支柱
40 旋回アーム
41 酸化防止液供給管
41a 酸化防止液供給口
42 ブラシ洗浄槽
43 アルコール供給機構
44 酸化防止液供給槽
45 記憶手段
46 検出手段
47 研磨性能指標計算部
48 研磨状況判断部
49 研磨条件設定部
50 装置制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布装置において、
酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させるとともに該酸化防止液供給部材の上部に供給された前記酸化防止液を、当該酸化防止液供給部材に沿って前記ウェハに塗る酸化防止液供給手段を有することを特徴とする表面劣化を防止する塗布装置。
【請求項2】
ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布装置において、
ウェハ上の位置に、酸化防止液供給管に供給された酸化防止液を該酸化防止液供給管から引き上げる引き上げ機構と、引き上げられた前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に沿って流下させる機構と、該酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させる機構とを備え、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る酸化防止液供給手段を有することを特徴とする表面劣化を防止する塗布装置。
【請求項3】
ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布装置において、
酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材と、酸化防止液供給口から出た酸化防止液を前記酸化防止液供給部材の上部に含ませ該酸化防止液を流下させながら前記酸化防止液供給部材の全体に広げる酸化防止液の含浸手段と、前記酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させる機構とを備え、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る酸化防止液供給手段を有することを特徴とする表面劣化を防止する塗布装置。
【請求項4】
ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布装置において、
酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材と、酸化防止液を該酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸手段と、前記酸化防止液供給部材を酸化防止液の含浸場所からウェハ上まで移動できる搬送手段とを備え、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る酸化防止液供給手段を有することを特徴とする表面劣化を防止する塗布装置。
【請求項5】
ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布装置において、
酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材と、酸化防止液を酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸手段と、前記酸化防止液供給部材を酸化防止液の含浸場所からウェハ上まで移動できる搬送手段と、前記酸化防止液の含浸場所からウェハ上までの移動において酸化膜防止液の垂れを防ぐために前記酸化防止液供給部材の下に前記酸化防止液の受け部材とを備え、前記ウェハに前記酸化膜防止液を塗る酸化防止液供給手段を有することを特徴とする請求項4記載の表面劣化を防止する塗布装置。
【請求項6】
上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材は回転する前記ウェハ上を該ウェハの中央部から外周部まで移動するように構成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,又は5記載の表面劣化を防止する塗布装置。
【請求項7】
上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はアームに取り付けられ、該アームが前記ウェハの中央部から外周部まで旋回することで、回転する前記ウェハ上を前記酸化防止液供
給部材が移動するように構成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5又は6記載の表面劣化を防止する塗布装置。
【請求項8】
上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はウェハ半径方向に一列に配置され、前記ウェハが回転すると、一列に配置された前記酸化防止液供給部材が降下して上記酸化防止液をウェハ全面に塗るように構成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の表面劣化を防止する塗布装置。
【請求項9】
上記酸化防止液供給部材は、糸状部材を束ねたブラシ状部材もしくは線状部材、網状部材、又は発泡部材のいずれかで形成されていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7又は8記載の表面劣化を防止する塗布装置。
【請求項10】
ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布方法において、
酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させるとともに該酸化防止液供給部材の上部に供給された前記酸化防止液を、該酸化防止液供給部材に沿って前記ウェハに塗る酸化防止液供給手段を有し、前記酸化防止液供給部材と前記酸化防止液との界面張力又は毛細管現象を利用することにより前記ウェハに前記酸化防止液を塗ることを特徴とする表面劣化を防止する塗布方法。
【請求項11】
ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布方法において、
前記ウェハの上方で、酸化防止液供給管に供給された酸化防止液を酸化防止液供給管から引き上げる工程と、引き上げられた前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に沿って流下させる工程と、該酸化防止液供給部材を前記ウェハに近接又は接触させて相対的に移動させる工程とを有し、前記ウェハに前記酸化防止液を塗ることを特徴とする表面劣化を防止する塗布方法。
【請求項12】
ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布方法において、
酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材を使用し、前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸工程と、前記酸化防止液を含んだ酸化防止液供給部材をウェハ上まで移動する搬送工程と、前記ウェハに前記酸化防止液を塗る工程とを有することを特徴とする表面劣化を防止する塗布方法。
【請求項13】
ウェハに、該ウェハの表面酸化を抑制して表面劣化を防止する酸化防止液を塗るようにした表面劣化を防止する塗布方法において、
酸化防止液を含ませることが可能な酸化防止液供給部材を使用し、その酸化防止液が下に垂れないように酸化防止液を受ける受け部材を使用し、前記酸化防止液を酸化防止液供給部材に含ませる酸化防止液の含浸工程と、その含浸工程では前記受け部材は横に避けており、前記酸化防止液を含んだ酸化防止液供給部材をウェハ上まで移動する搬送工程と、その搬送工程では前記受け部材が酸化防止液供給部材の下に配置され、ウェハに前記酸化防止液を塗る工程と、その塗る工程では前記受け部材は横に避けていることを特徴とする表面劣化を防止する塗布方法。
【請求項14】
上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はアームに取り付けられ、該アームが前記ウェハの中央部から外周部まで旋回することで、回転する前記ウェハ上を前記酸化防止液供給部材が移動することを特徴とする請求項10,11,12又は13記載の表面劣化を防
止する塗布方法。
【請求項15】
上記酸化防止液供給手段には、上記ウェハを水平保持して回転させるウェハ保持機構が備えられ、上記酸化防止液供給部材はウェハ半径方向に一列に配置され、前記ウェハが回転すると、一列に配置された酸化防止液供給部材が降下して前記酸化防止液をウェハ全面に塗ることを特徴とする請求項10,11,12,13又は14記載の表面劣化を防止する塗布方法。
【請求項16】
上記酸化防止液供給部材は、糸状部材を束ねたブラシ状部材又は線状部材、網状部材、又は発泡部材のいずれかで形成されていることを特徴とする請求項10,11,12,13,14又は15記載の表面劣化を防止する塗布方法。
【請求項17】
研磨前のウェハを収納する収納部、ウェハを搬送する搬送工程、ウェハを化学機械的に研磨する研磨工程、研磨後のウェハを洗浄・乾燥する洗浄工程、該洗浄工程を経たウェハを収納する収納部、及びウェハに酸化防止液を塗る酸化防止液塗布工程を備え、前記研磨前のウェハを収納する収納部と該収納部から取り出したウェハを前記研磨工程へ搬送する前記搬送工程との間、前記研磨工程と該研磨工程で研磨されたウェハを前記洗浄工程へ搬送する前記搬送工程との間、又は前記洗浄工程で洗浄・乾燥されたウェハを搬送する前記搬送工程と前記洗浄工程を経たウェハを収納する収納部との間の少なくともいずれかの間に、前記酸化防止液塗布工程を実行する酸化防止液塗布装置を有することを特徴とする表面劣化を防止する研磨洗浄装置。
【請求項18】
上記研磨工程及び上記洗浄工程を含む処理工程にトラブルが生じた際は、上記酸化防止液塗布装置によりウェハに酸化防止液を塗った後に、該ウェハをウェハ格納部に一時的に格納することを特徴とする請求項17記載の表面劣化を防止する研磨洗浄装置。
【請求項19】
研磨前のウェハを収納する収納部、ウェハを搬送する搬送工程、ウェハを化学機械的に研磨する研磨工程、研磨後のウェハを洗浄・乾燥する洗浄工程、該洗浄工程を経たウェハを収納する収納部、及びウェハに酸化防止液を塗る酸化防止液塗布工程を備え、前記研磨前のウェハを収納する収納部と該収納部から取り出したウェハを前記研磨工程へ搬送する前記搬送工程との間、前記研磨工程と該研磨工程で研磨されたウェハを前記洗浄工程へ搬送する前記搬送工程との間、又は前記洗浄工程で洗浄・乾燥されたウェハを搬送する前記搬送工程と前記洗浄工程を経たウェハを収納する収納部との間の少なくともいずれかの間に、前記酸化防止液塗布工程を実行することを特徴とする表面劣化を防止する研磨洗浄方法。
【請求項20】
上記研磨工程及び上記洗浄工程を含む処理工程にトラブルが生じた際は、上記酸化防止液塗布工程によりウェハに酸化防止液を塗った後に、該ウェハをウェハ格納部に一時的に格納することを特徴とする請求項19記載の表面劣化を防止する研磨洗浄方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−85233(P2008−85233A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266047(P2006−266047)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】