説明

表面外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板の製造方法およびそのめっき鋼板

【課題】 本発明の目的は、スパングルの大きさが均一でムラのない、表面外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板の製造方法およびそのめっき鋼板を提供することにある。
【解決手段】 25〜70重量%のアルミニウムと、アルミニウムの含有量の0.5%以上のケイ素と残部が亜鉛からなる金属を鋼板上にめっきする際に、めっき前の鋼板の集合組織の発達度を変化させることによって表面スパングルのサイズを調整する。これにより表面外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板が製造できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建材、家電製品の筐体等に適する表面外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板の製造方法およびそれによるめっき鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より建材用途などを中心として、高耐食性および表面の結晶(スパングル)の美麗さの観点から、アルミニウム−亜鉛めっき鋼板が使用されている。代表的なめっき層組成としては、特公昭46−7161号公報において25〜70重量%のアルミニウムと、アルミニウムの含有量の0.5%以上のケイ素と残部亜鉛が開示されており、一般にめっき後の冷却過程においてめっき層にスパングル模様が形成されることが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】最近、外観品位(美観)をさらに高めるために鋼板全長および板幅方向に従来よりもさらに均一な大きさのスパングルを形成させることが新しい課題として求められてきた。しかしながら、従来方法は、めっき後の冷却のみでスパングルを形成させる方法のため、原板の板厚、幅が変化することにより影響を受け、微小スパングルが部分的に発生しやすく不均一となりやすく、そのスパングルの大きさを原板の如何によらず均一に大きく制御することは困難でありその改善法の開発が望まれていた。本発明の目的は、上記従来技術における問題点を解消し、スパングルの大きさが均一でムラのない、表面外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板の製造方法およびそのめっき鋼板を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決するために種々検討した結果、めっき前の鋼板の集合組織の発達度を制御することにより、均一なスパングルが得られることを見いだした。本発明は、この新知見を元に完成した。本発明は25〜70重量%のアルミニウムと、アルミニウムの含有量の0.5%以上のケイ素と残部が亜鉛からなる金属を鋼板上にめっきする方法において、めっき前の鋼板の集合組織の発達度を変化させることによって表面スパングルのサイズを調整することを特徴とする表面外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板の製造方法である。また、本発明は、上記方法によって製造されたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板であって、めっき前の鋼板の集合組織の結晶面強度比が(110)/(200)で0.5以上の鋼板上にスパングルサイズが平均粒径で1.8mm以上のめっき層を有することを特徴とする表面外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板である。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明者らは25〜70重量%のアルミニウムとアルミニウムの含有量の0.5%以上のケイ素と残部が亜鉛からなる合金を鋼板上にめっきして、スパングルサイズの均一な外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板を製造する方法について種々検討した結果、めっきを施す前の鋼板(めっき原板)に形成された結晶集合組織の発達度によってスパングルサイズが影響を受けることを知見した。特に集合組織の面強度比として(110)/(200)とスパングルサイズには強い相関関係があり、(110)/(200)の比が大きいほど大きく均一なスパングルサイズが得られる。
【0006】めっき原板の(110)/(200)を調整するには、熱延条件、冷延条件および焼鈍条件を適宜組み合わせて製造すれば良い。特に、熱延の高温巻き取り(600℃以上)、冷延後の焼鈍温度の高温化(750℃以上)などが好適である。めっき原板は、鋼種の制約もなく、例えば、Alキルド鋼、Ti等の炭窒化物形成元素を添加した極低炭素鋼板およびこれに強化元素(P,Si,Mn等)を添加した高強度鋼など種々の鋼板が使用できる。
【0007】めっき原板の集合組織を結晶面強度の比が(110)/(200)で0.5以上としたのは、この範囲でめっき層のスパングルが均一に大きくなるためである。このメカニズムについては、未だ明確ではないが、鋼板の集合組織がこの範囲では、めっき層の初期核の発生が少なくなり、一つ一つのスパングルが大きく成長しやすくなるのではないかと考えられる。本発明において適用するめっき原板の表層結晶粒径の制御方法は特に限定しないが、熱延の高温巻き取り、冷延後の焼鈍温度の高温化などが好適である。下地鋼板の種類としても鋼種の制約もなく、例えば、Alキルド鋼、Ti等の炭窒化物形成元素を添加した極低炭素鋼板およびこれに強化元素(P,Si,Mn等)を添加した高強度鋼など種々の鋼板が使用できる。
【0008】次に、本発明者らは、アルミニウム−亜鉛めっき鋼板の表面外観について調査した結果、スパングルサイズを平均粒径で1.8mm以上にすることが表面外観の向上に有効であることを知見した。そこで、スパングルサイズの平均粒径を1.8mm以上とするために、めっき原板の好ましい集合組織の発達度を調査した結果、(110)/(200)比を0.5以上とすべきことが判明した。(110)/(200)比が0.5未満では1.8mm以上のスパングルサイズが得られない。(110)/(200)比は0.5以上が好適である。
【0009】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。表1に示すように、集合組織を変化させた鋼板を、温度600℃でAl55%,Si1.6%,残部がZnよりなるめっき浴に浸漬し、片面あたりの付着量75g/m2 に制御した後、300℃まで空冷後、急冷水没した。各試料に対してめっき表面のスパングルの平均粒径の測定および目視によるスパングル均一性の評価を行った。
【0010】スパングル大きさの均一性の評価基準は、〇:スパングルは均一で大、外観良好×:スパングル不均一部で微小部の存在あり、外観不良表1に示す通り、本発明鋼板(No.1〜5)は、スパングルが大きく均一である。それに比較して、本発明範囲を逸脱する場合(No.6,7)は、スパングルが不均一で微小スパングルが発生する。
【0011】
【表1】


【0012】
【発明の効果】本発明の方法によれば、めっき前の鋼板の集合組織、特に(110)/(200)比を調整することによって、スパングルの大きさが均一でムラのない、表面外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板の製造が可能となり、製品の美観を高めることができ、建材用途等に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 25〜70重量%のアルミニウムと、アルミニウムの含有量の0.5%以上のケイ素と残部が亜鉛からなる合金を鋼板上にめっきしてアルミニウム−亜鉛めっき鋼板を製造する方法において、めっき前の鋼板の集合組織の発達度を変化させることによって、表面スパングルのサイズを調整することを特徴とする表面外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項2】 請求項1記載の方法によって得られるアルミニウム−亜鉛めっき鋼板であってめっき前の鋼板の集合組織の結晶面強度の比が(110)/(200)で0.5以上の鋼板上にスパングルサイズが平均粒径1.8mm以上のめっき層を有することを特徴とする表面外観に優れたアルミニウム−亜鉛めっき鋼板。