説明

表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板の製造方法および装置

【課題】溶融金属めっき鋼板を製造するに際して、スナウト部の異物を排出するポンプの排出能力を高く保ち、スナウト部の浴面に異物の浮遊が無い状態を保持することによって、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板を容易に製造することを可能にする、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板の製造方法および装置を提供する。
【解決手段】スナウト部5内の浴面に浮遊する異物16を異物排出ポンプ6で吸引してスナウト部5の外に排出することとし、溶融亜鉛1に対して不溶性の塊状物(例えば、セラミック塊)15を溶融亜鉛1の浴面11から押し込んでおき、液面レベル測定装置10の測定結果に基づいて、塊状物15の押し込み量を調節して、溶融亜鉛1の浴面レベルを一定に保つようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板の製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼鈍と溶融金属めっきが連続で行われる連続溶融めっき設備、たとえば連続溶融亜鉛めっき設備などにおいては、鋼板を還元焼鈍炉から溶融金属が貯留されているめっき浴槽(めっきポット)に導く連結装置として、筒状のスナウトが設けられ、スナウトの端部は、めっき液に浸漬されている。長時間めっき処理を行うと、めっき金属が酸化したり、金属化合物を形成して異物が発生し、めっき金属より比重が軽い異物は、トップドロスとして浴面に次第に堆積する。このようなスナウト内部の浴面に堆積した異物が鋼板に付着してめっきされ、表面外観性を劣化させる原因となっている。
【0003】
そこで、この異物を除去するため、異物を吸引してスナウトの外に排出するポンプ(異物排出ポンプ)を設置する方法が用いられることがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
この異物排出ポンプは、吸引口の一部を溶融金属の浴面から出た状態とすることで、排出能力を保つことができるため、溶融金属の浴面レベルを測定しながら、異物排出ポンプの吸い込み口の高さを調整して、浴面高さと吸い込み口の高さを一定に保つ方法が用いられることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−293107号公報
【特許文献2】特開2005−220404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の技術には、以下のような問題があることが分かった。
【0007】
溶融金属の浴面レベルを測定しながら、異物排出ポンプの吸い込み口の高さを調整して、浴面高さと吸い込み口の高さを一定に保つ方法は、効果にばらつきがあることが分かった。この原因について調査したところ、次の理由でばらつきがあることが分かった。すなわち、異物排出ポンプの排出能力は一定に保つことができるが、浴面レベルの変動は抑止できない。浴面レベルの変動に伴い、スナウトの内壁に浴面変動範囲に渡って異物が固着・堆積することがあり、浴面レベルの上昇により一気に異物が浴面に浮遊し、場合によっては、異物排出ポンプの排出能力を上回る量になって、鋼板に異物が付着していたということが分かった。
【0008】
以上のことから、浴面レベルを一定に保つことが、めっき外観向上に効果的であることが分かった。浴面レベルを一定に保つ方法としては、溶融金属の浴面レベルの低下を測定しながら、溶融金属原料をこまめに投入したり、溶融金属の浸漬量を調整して浴面レベルの変動を最小限に抑える方法が考えられるが、溶融金属原料は凝固した金属であることが多く、浴面レベルを調整するために急激に溶融金属を投入すると、浴面に振動が伝わり、かえってスナウト内壁の異物を剥落させてしまうこともあり、効果は充分と言えないことも分かった。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、溶融金属めっき鋼板を製造するに際して、スナウト部の異物を排出するポンプの排出能力を高く保ち、スナウト部の浴面に異物の浮遊が無い状態を保持することによって、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板を容易に製造することを可能にする、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板の製造方法および装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
【0011】
[1]溶融金属を満たしためっき浴槽に鋼板を通して連続的にめっきを行うことによって溶融金属めっき鋼板を製造する方法において、スナウト内部の異物をポンプで吸引してスナウト部の外に排出することとし、溶融金属に対して不溶性の塊状物を溶融金属の浴面から押し込んでおき、溶融金属の浴面レベルを測定し、その測定結果に基づいて、前記塊状物の押し込み量を調節して、溶融金属の浴面レベルを一定に保つことを特徴とする、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板の製造方法。
【0012】
[2]溶融金属を満たしためっき浴槽に鋼板を通して連続的にめっきを行うことによって溶融金属めっき鋼板を製造する装置において、スナウト内部の異物を吸引してスナウト部の外に排出するポンプと、溶融金属の浴面レベルを測定する浴面レベル測定装置と、溶融金属の浴面レベルを制御する浴面レベル制御装置とを備え、前記浴面レベル制御装置は、溶融金属の浴面から押し込まれる、溶融金属に対して不溶性の塊状物を有し、前記浴面レベル測定装置からの測定信号に基づいて、前記塊状物の押し込み量を調節して、溶融金属の浴面レベルを一定に保つことを特徴とする、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板の製造装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、溶融金属めっき鋼板を製造するに際して、溶融金属に対して不溶性の塊状物を浴面から押し込んでおき、浴面レベルの測定結果に基づいて、塊状物の押し込み量を変えることで、溶融金属の浴面レベルを一定に保つようにしているので、スナウト部の異物を排出するポンプの吸い込み口が浴面に対して一定に保たれるようになり、スナウト部の異物を排出するポンプの排出能力を高く保ち、スナウト部の浴面に異物の浮遊が無い状態を保持することができるとともに、溶融金属の浴面レベルが一定になるので、スナウト内壁への異物の固着が無くなり、異物が一気に溶け出すことが無くなる。その結果、鋼板が溶融金属に浸入するスナウト部の浴面が清浄に保たれ、鋼板表面への異物の付着・巻き込みが無くなり、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板を容易に製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、溶融金属めっき鋼板として溶融亜鉛めっき鋼板を例にして述べる。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態における溶融亜鉛めっき鋼板の製造装置を示す側面図である。
【0017】
図1に示すように、この実施形態における溶融亜鉛めっき鋼板の製造装置は、溶融亜鉛1を満たしためっき浴槽(めっきポット)2に鋼板Sを通して連続的にめっきを行うことによって溶融亜鉛めっき鋼板を製造するものである。なお、図1において、5は鋼板Sが溶融亜鉛1に浸入する部分(スナウト部)であり、3はスナウト前方向転換ロール、4は溶融亜鉛内の方向転換ロールである。
【0018】
その上で、この実施形態においては、スナウト部5の浴面に浮遊する異物(浴面浮遊異物)16を異物排出ポンプ6で吸引してスナウト部5の外に排出することとし、溶融亜鉛1に対して不溶性の塊状物(例えば、セラミック塊)15を溶融亜鉛1の浴面11から押し込んでおき、その塊状物15の押し込み量を調節して、溶融亜鉛1の浴面レベルを一定に保つようにしている。
【0019】
すなわち、この溶融亜鉛めっき鋼板の製造装置は、スナウト部5の浴面に浮遊する浴面浮遊異物16を吸い込み口8から吸引して排出口9からスナウト部5の外に排出する異物排出ポンプ6と、異物排出ポンプ6を駆動する異物排出ポンプ駆動源7と、溶融亜鉛1の浴面11のレベルを測定する浴面レベル測定装置10と、浴面レベル測定装置10からの測定信号18に基づいて溶融亜鉛1の浴面レベルを一定に保つために必要な塊状物15の押し込み量を演算する塊状物押し込み量演算装置19と、塊状物押し込み量演算装置19からの塊状物押し込み量信号20に基づいて、塊状物15の押し込み量を連結装置14を介して昇降装置13によって調節して、溶融亜鉛1の浴面レベルを一定に保つ浴面レベル制御装置12とを備えている。
【0020】
このようにして、この実施形態においては、溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに際して、溶融亜鉛1に対して不溶性の塊状物15を浴面から押し込んでおき、浴面レベル測定装置10の測定結果に基づいて、塊状物15の押し込み量を変えることで、溶融亜鉛1の浴面レベルを一定に保つようにしているので、スナウト部5の浴面浮遊異物16を排出する異物排出ポンプ6の吸い込み口8が浴面11に対して一定に保たれるようになり、スナウト部5の浴面浮遊異物16を排出する異物排出ポンプ6の排出能力を高く保ち、スナウト部5に浴面浮遊異物16が無い状態を保持することができる。また、溶融亜鉛1の浴面レベルが一定になるので、スナウト5の内壁へ付着・堆積する異物(スナウト内壁付着・堆積異物)17が無くなり、スナウト内壁付着・堆積異物17が一気に溶け出すことも無くなる。その結果、鋼板Sが溶融亜鉛1に浸入するスナウト部5の浴面が清浄に保たれ、鋼板S表面への異物の付着・巻き込みが無くなり、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板を容易に安定して製造することができるようになる。
【0021】
なお、この実施形態では、溶融亜鉛めっき鋼板を例にして説明したが、本発明はこれに限るものではなく、アルミニウムや錫などを用いた他の溶融金属めっき鋼板についても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0022】
S 鋼板
1 溶融金属(溶融亜鉛)
2 めっき浴槽(めっきポット)
3 スナウト前方向転換ロール
4 溶融金属内の方向転換ロール
5 スナウト部
6 異物排出ポンプ
7 異物排出ポンプ駆動源
8 異物排出ポンプ吸い込み口
9 異物排出ポンプ排出口
10 浴面レベル測定装置
11 浴面
12 浴面レベル制御装置
13 塊状物の昇降装置
14 連結装置
15 塊状物
16 スナウト浴面浮遊異物
17 スナウト内壁付着・堆積異物
18 浴面レベル測定装置出力信号
19 塊状物押し込み量演算装置
20 塊状物押し込み量信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を満たしためっき浴槽に鋼板を通して連続的にめっきを行うことによって溶融金属めっき鋼板を製造する方法において、スナウト内部の異物をポンプで吸引してスナウト部の外に排出することとし、溶融金属に対して不溶性の塊状物を溶融金属の浴面から押し込んでおき、溶融金属の浴面レベルを測定し、その測定結果に基づいて、前記塊状物の押し込み量を調節して、溶融金属の浴面レベルを一定に保つことを特徴とする、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板の製造方法。
【請求項2】
溶融金属を満たしためっき浴槽に鋼板を通して連続的にめっきを行うことによって溶融金属めっき鋼板を製造する装置において、スナウト内部の異物を吸引してスナウト部の外に排出するポンプと、溶融金属の浴面レベルを測定する浴面レベル測定装置と、溶融金属の浴面レベルを制御する浴面レベル制御装置とを備え、前記浴面レベル制御装置は、溶融金属の浴面から押し込まれる、溶融金属に対して不溶性の塊状物を有し、前記浴面レベル測定装置からの測定信号に基づいて、前記塊状物の押し込み量を調節して、溶融金属の浴面レベルを一定に保つことを特徴とする、表面外観性の優れた溶融金属めっき鋼板の製造装置。

【図1】
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