説明

表面実装型電子部品

【課題】 そこで本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、表面実装型電子部品の小型化を妨げることなく、識別情報の多情報化に対応する表面実装型電子部品を提供する。
【解決手段】 電子部品素子を搭載するセラミックベース1と、搭載された電子部品素子を気密封止する蓋2とを具備してなる表面実装型電子部品であって、前記蓋の上面部と前記セラミックベースの底面部には、少なくともお互いに表記の異なる識別情報が形成されており、前記セラミックベースの底面部に形成される識別情報M4はビーム照射により収納される電子部品素子の個別情報や暗号化情報が記載されたものであり、当該識別情報は前記セラミックベースの底面に形成されたお互いに接続されない機能電極端子パッド11,13の間を遮る位置に形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックベース上に圧電振動板などの電子部品素子が実装された表面実装型電子部品に関するものであって、特に表面実装型電子部品のパッケージに表記される識別情報に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面実装型電子部品では、特許文献1に示すようにその蓋の上面部に、製造会社名、製造品名、製造ロットナンバーなどの識別情報が形成されている。この識別情報の形成手段としては、インクを用いたオフセット捺印やレーザなどを照射するレーザ捺印が普及している。
【0003】
しかしながら、近年の表面実装型電子部品の小型化にともなって、蓋上面の識別情報の形成領域も狭められるので、識別情報も必要最低限のものしか形成できないのが現状である。またその一方で、一部の電子部品では個別特性情報や個別製品情報などのより付加価値の高い識別情報も同時に形成されることが求められているのが現状である。
【特許文献1】特開2003−197794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、表面実装型電子部品の小型化を妨げることなく、識別情報の多情報化に対応する表面実装型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の特許請求項1に示すように、電子部品素子を搭載するセラミックベースと、搭載された電子部品素子を気密封止する蓋とを具備してなる表面実装型電子部品であって、前記蓋の上面部と前記セラミックベースの底面部には、少なくともお互いに表記の異なる識別情報が形成されており、前記セラミックベースの底面部に形成される識別情報は収納される電子部品素子の個別情報や暗号化情報が彫られた状態か突出した状態あるいはこれらの組み合わせた状態のいずれかで構成されたものであり、当該識別情報は前記セラミックベースの底面に形成されたお互いに接続されない機能電極端子パッドの間を遮る位置に形成されてなることを特徴とする。
【0006】
上記構成により、蓋だけでなくセラミックベースの底面部にも識別情報を追加形成することで、表面実装型電子部品の小型化を妨げることなく、識別情報の多情報化に対応することができる。特に前記セラミックベースの底面部に形成される識別情報はビーム照射により収納される電子部品素子の個別情報や暗号化情報が記載されたものであるので、表面実装型電子部品の電極端子パッドにはんだなどの導電性接合材を塗布形成する際に、収納される各電子部品素子の必要な個別情報や回路基板搭載後には必要のない暗号化情報などを予め認識することができる。つまり、回路基板に対して表面実装型電子部品を搭載する直前に特性データや特性成績表などの各電子部品素子に特有の個別特性情報や個別製品情報を認識するか、暗号化された識別情報を認識してから回路基板に対して表面実装型電子部品を搭載することができ、回路基板に対して表面実装型電子部品を搭載した後は不要な識別情報であるので蓋に他の必要な識別情報を形成することができる。なお、このような個別情報や暗号化情報はそのものの表記だけでなく、これらの情報をバーコード化したものや2次元バーコード化したものを用いることで、識別情報の省スペース化と多情報化が行えるのでより望ましい。また、前記セラミックベースの底面部に形成される識別情報は彫られた状態か突出した状態あるいはこれらの組み合わせた状態のいずれかで構成されたものであり、前記セラミックベースの底面に形成されたお互いに接続されない機能電極端子パッドの間を遮る位置に形成されているので、機能電極端子パッドのはんだなどの導電性接合材が流れ出したとしても前記識別情報が導電性接合材の流れ止めとして機能することで、機能電極端子パッド間の短絡事故をなくすことができる。特にバーコード化したものや2次元バーコード化したものではより緻密な状態で凹凸が形成されるので導電性接合材の流れ止めとしてより望ましい。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明は、表面実装型電子部品の小型化を妨げることなく、識別情報の多情報化に対応する表面実装型電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態について、表面実装型電子部品として表面実装型水晶振動子を例にとり、図面とともに説明する。図1は本発明の実施形態を示す斜視図であり、図2は図1の底面図である。表面実装型水晶振動子は、上部が開口した凹部を有するセラミックベース1と、当該セラミックベースの中に収納される電子部品素子としての水晶振動板(図示せず)と、セラミックベースの開口部に接合される蓋2とからなる。
【0009】
セラミックベース1は全体として直方体で、アルミナ等のセラミックとタングステンあるいはモリブデン等の導電材料を適宜積層した構成であり、断面でみて凹形の収納部を有する構成である。収納部には水晶振動板が収納される。収納部周囲には堤部が形成されており、当該堤部と前記蓋2との間には周状の封止部材が形成される。この封止部材は封止方法により異なるが、金属製の蓋を用いて気密封止するものでは、前記堤部の上面に対して、例えばタングステンあるいはモリブデン、ニッケル、金の順で金属層を構成している。このようなタングステンあるいはモリブデンは厚膜印刷技術を活用してメタライズ技術によりセラミック焼成時に一体的に形成され、またニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。またセラミック製の蓋を用いて気密封止するものでは、セラミックベースの堤部上面かセラミック蓋の底面側の少なくとも一方に対して、ガラス封止部材が厚膜印刷技術を活用して形成されている。
【0010】
また、前記セラミックベース1の底面側には例えば4つの電極端子パッド11,12,13,14が形成されている。このうち電極端子パッド11,13については、図示しない導電ビアやキャスタレーションなどにより、セラミックベースの収納部の水晶振動板と接続される内部電極端子パッドの一部に電気的に導出されており、機能電極端子パッドとして構成されている。電極端子パッド12,14については、何にも接続されてない機能しないを電極端子パッドである。各電極端子パッドや内部電極端子パッドは前記金属層と同様に例えばタングステンあるいはモリブデン、ニッケル、金の順で金属層を構成している。タングステンあるいはモリブデンは厚膜印刷技術を活用してメタライズ技術によりセラミック焼成時に一体的に形成され、またニッケル、金の各層はメッキ技術により形成される。
【0011】
前記セラミックベース1の収納部の内底面には、図示しない内部電極端子パッドが形成されており、図示しない水晶振動板が導電性樹脂接着材や金属バンプなど導電性接合材を介して電気的機械的に接合され搭載されている。水晶振動板は例えば矩形状のATカット水晶振動板や音叉形状の屈曲振動片を用いることができ、一対の励振電極と、この励振電極を前記内部電極端子と導通するための引出電極などが形成されている。これらの各電極は、例えば、クロムの下地電極層と、銀または金の中間電極層と、クロムの上部電極層とから構成された積層薄膜、クロムの下地電極層と、銀または金の中間電極層と、ニッケルの上部電極層とから構成された積層薄膜、あるいはクロムの下地電極層と、銀または金の上部電極層とから構成された積層薄膜である。これら各電極は真空蒸着法やスパッタリング法等の薄膜形成手段により形成することができる。なお、クロムやニッケルの変わりにアルミの上部電極層、あるいは中間層が金の場合は銀の上部電極層を形成してもよい。
【0012】
セラミックベース1を気密封止する蓋2のうち金属製の蓋の場合では、例えば、コバール等からなるコア材に金属ろう材(封止材)が形成された構成となる。より詳しくは、例えば上面からニッケル層、コバールコア材、銅層、銀ろう層の順の多層構成であり、銀ろう層がセラミックベースの金属層と接合される構成となる。セラミック製の蓋の場合では、例えば、アルミナ等のセラミック板の底面にガラス封止部材が形成された構成となる。これらの蓋の平面視外形はセラミックベースの当該外形とほぼ同じであるか、若干小さい構成となっている。
【0013】
収納部に水晶振動板が格納されたセラミックベース1を前記蓋2にて被覆し、蓋2の封止材等を溶融硬化させ、気密封止を行うことで表面実装型水晶振動子の完成となる。気密封止の手法としてはシーム溶接やビーム溶接、あるいは加熱溶融炉による雰囲気加熱などにより実施することができる。
【0014】
前記気密封止された表面実装型水晶振動子の前記蓋の上面には、製造会社名(商標や略称、標章等)、製造品名(略称等)、周波数(数字)、生産地、製造ロットナンバーなどの識別情報のうち回路基板搭載後も識別情報として優先度の高いものをオフセット捺印やレーザ捺印により形成している。図1では、例えば、製造会社を示す商標の識別情報M1と、周波数を示す識別情報M2と、製造ロットナンバーを示す識別情報M3とが表記してある。
【0015】
前記気密封止された表面実装型水晶振動子のセラミックベースの底面には、周波数や振動特性(例えば周波数温度特性)、振動波形、直列共振抵抗値、特性成績表、一般的な仕様情報などの表面実装型水晶振動子に収納される水晶振動子(電子部品素子)の個別の特性情報や個別の製品情報、あるいは偽造品との差別化を図るための暗号化された識別情報などをレーザ捺印(ビーム照射)により形成している。そしてこれらの識別情報は図2に示すように、前記セラミックベースの底面に形成されたお互いに接続されない機能電極端子パッド11,13の間を遮る位置に識別情報M4を形成している。このような個別情報や暗号化情報はそのものの表記だけでなく、これらの情報をバーコード化したものや2次元バーコード化したものを用いることで、識別情報の省スペース化と多情報化が行えるのでより望ましい。さらに、これらの識別情報M4に隣接した状態で、蓋に形成することができなかった識別情報のうち表記の優先度の高いものを追加形成してもよい。図2では、例えば製造会社の表記等の識別情報M5を追加形成している。
【0016】
上記実施形態により、蓋2だけでなくセラミックベース1の底面部にも識別情報M4,5を追加形成することで、表面実装型水晶振動子の小型化を妨げることなく、識別情報の多情報化に対応することができる。特に前記セラミックベース1の底面部に形成される識別情報M4は収納される水晶振動子の個別の特性情報や暗号化された識別情報が記載されたものであるので、表面実装型水晶振動子の電極端子パッド11,12,13,14に対して、はんだなどの導電性接合材を塗布形成する際に、収納される各水晶振動子の必要な個別の特性情報や回路基板搭載後には必要のない偽造品判定のための暗号化された情報などを予め認識することができる。つまり、回路基板に対して表面実装型水晶振動子を搭載する直前に振動特性データや特性成績表などの各水晶振動子に特有の個別情報M4を認識することでより最適な品質管理が行える。また、暗号化された識別情報M4を予め認識してから回路基板に対して表面実装型電子部品を搭載することができるので偽造品や不良品などの誤搭載をさけることができる。前記セラミックベース1の底面部に形成される識別情報M4,M5はビーム照射により形成されることで、彫られた状態か突出した状態あるいはこれらの組み合わせた状態のいずれかで構成することができる。さらに識別情報M4,M5は前記セラミックベースの底面に形成されたお互いに接続されない機能電極端子パッド11,13の間を遮る位置に形成されているので、機能電極端子パッド11,13のはんだなどの導電性接合材が流れ出したとしても彫られた状態か突出した状態あるいはこれらの組み合わせた状態のいずれかで構成された識別情報が導電性接合材の流れ止めとして機能することで、機能電極端子パッド11,13間の短絡事故をなくすことができる。特に小型化された表面実装型水晶振動子(表面実装型電子部品)では、回路基板に対する接合強度を低下させないようにするため、セラミックベースの底面積に対して電極端子パッドの面積比を50パーセント以下に低下させない工夫を施すものが存在している。このような構成では機能電極端子パッドがより近接配置されるようになるので、これら電極端子パッド間に本発明による彫られた状態か突出した状態あるいはこれらの組み合わせた状態のいずれかで構成により形成された識別情報を加味する構成を組み合わせることの効果は絶大なるものとなる。
【0017】
上記実施形態では、電極端子パッド11,13のみが機能電極端子パッドとして構成されたものを説明したが、電極端子パッド12,14についても例えばアースなどの機能電極端子パッドとして活用される場合には、図3に示すように、各電極端子パッド11,12,13,14の全てに対して前記識別情報M6,M7が遮る位置となるように形成することがより望ましい。また上記実施形態では、表面実装型水晶振動子のセラミックベースの底面に形成される電極端子パッド端子は4端子構成のみを例にしているが、2端子構成や3端子構成、5端子構成以上のものにも適用できる。また、彫られた状態か突出した状態あるいはこれらの組み合わせた状態のいずれかで構成された識別情報として、ビーム照射したものを例にしているが他の手法で形成したものであってもよい。さらに上記実施形態では蓋とセラミックベースの底面部のみに形成しているものを開示しているが、他の側面部や収納部の内面に他の識別情報を加味したものであってもよい。上記実施形態では、表面実装型電子部品の例として、水晶振動子の例を示したが、他の圧電振動デバイスでもよく、他の電子部品にも適用できる。
【0018】
本発明は、その思想または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図。
【図2】図1の底面図。
【図3】本発明の他の実施形態を示す底面図。
【符号の説明】
【0020】
1 セラミックベース
2 蓋
M1〜M7 識別情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品素子を搭載するセラミックベースと、搭載された電子部品素子を気密封止する蓋とを具備してなる表面実装型電子部品であって、前記蓋の上面部と前記セラミックベースの底面部には、少なくともお互いに表記の異なる識別情報が形成されており、前記セラミックベースの底面部に形成される識別情報は収納される電子部品素子の個別情報や暗号化情報が彫られた状態か突出した状態あるいはこれらの組み合わせた状態のいずれかで構成されたものであり、当該識別情報は前記セラミックベースの底面に形成されたお互いに接続されない機能電極端子パッドの間を遮る位置に形成されてなることを特徴とする電子部品用パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−272516(P2009−272516A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123048(P2008−123048)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】