説明

表面実装水晶発振器の実装方法

【目的】大容量のチップコンデンサを装備して小型化を維持した表面実装発振器の実装方法を提供することを目的とし、特に温度補償機構にローパスフィルタを有する温度補償発振器の小型化を促進して、しかも組立て後に時定数を変更できる表面実装発振器の実装方法を提供する。
【構成】実装端子を底面に有する容器本体内にICチップと水晶片とを収容して密閉封入した表面実装用の水晶発振器備え、電子部品の搭載されるセット基板の回路端子に前記実装端子を電気的・機械的に接続して、前記水晶発振器を前記セット基板上に実装する水晶発振器の実装方法において、前記容器本体の外底面には前記ICチップと電気的に接続するチップコンデンサを装着し、前記セット基板に設けられた開口部内に前記コンデンサを埋設して、前記水晶発振器をセット基板上に実装した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装水晶発振器(以下、表面実装発振器とする)の実装方法を技術分野とし、特に小型化に対応した温度補償発振器のセット基板に対する実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)温度補償発振器は水晶発振器の周波数温度特性を補償して温度に対する周波数安定度が高いことから、携帯電話等の動的環境化で使用される携帯型の電子機器に周波数の基準源として採用される。このようなものの一つに本出願人による雑音を小さく抑止した温度補償発振器がある(特許文献1)。
【0003】
(従来技術の一例)第3図及び第4図は一従来例を説明する温度補償発振器の図で、第3図は概略回路図、第4図(a)は断面図、同図(b)は平面図、同図(c)は裏面図である。
【0004】
温度補償発振器は水晶発振器1に温度補償機構2を設けてなる。水晶発振器1は水晶振動子3及び発振回路4を有し、発振閉ループ内に電圧可変容量素子5を設けてなる。温度補償機構2は補償電圧発生回路6及びローパスフィルタ7を有する。補償電圧発生回路6は周囲温度を検出してこれに応答した補償電圧を発生する。ローパスフィルタ7は抵抗R及びコンデンサCからなり、補償電圧発生回路6に接続して補償電圧中の雑音成分となる高周波成分(交流成分)を小さく抑止する。
【0005】
図中の符号8は、温度補償発振器の起動時にONして瞬時にOFFするスイッチング素子で、ローパスフィルタ7による起動特性の悪化を防止する。同9は高周波阻止抵抗である。そして、ローパスフィルタ7のコンデンサCを除いた温度補償機構2及び電圧可変容量素子5を含む発振回路4は、ICチップ11に集積化される。コンデンサCは抵抗(約2MΩ)との時定数の関係から例えば10000pF程度になって、その値が大きいことからICチップ11内に集積化を困難にするため、ディスクリート部品となる。
【0006】
このようなものでは、例えば凹状とした容器本体10にICチップ11、コンデンサCとしてのチップコンデンサC′及び水晶片12を一体的に収容し、カバー13を被せて密閉封入される。容器本体10は積層セラミックからなり、内壁に段部を有する。ICチップ11は図示しないバンプを用いた超音波熱圧着によって内底面に固着される。
【0007】
また、チップコンデンサC′はICチップ11に隣接して、例えば内壁に設けた切り欠き内に半田等によって固着される。水晶片12は図示しない励振電極から引出電極の延出した一端部両側が導電性接着剤14によって、段部に固着される。
【0008】
容器本体10の裏面には、出力(OUT)、電源(Vcc)、AFC端子、及び実装端子15が形成される。これらの実装端子15はICチップ11の図示しない各端子と側面のスルーホール等による端面電極によって電気的に接続する。また、水晶片12はICチップの水晶端子と電気的に接続し、カバー13によって密閉封入されて水晶振動子3となる。
【特許文献1】特開2000−196356号公報
【特許文献2】特開2001−44758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(従来技術の問題点)しかしながら、上記構成の温度補償発振器では小型化の進行に伴い(例えば平面外形が2.5×2.0mm)、容器本体10における凹部内底面の面積も小さくなる。また、容器本体10の枠壁幅も小さくなって内壁に切り欠きを設けることも困難になる。このため、ローパスフィルタ7のデスクリート部品としたチップコンデンサC′を収容できなくなる問題があった。
【0010】
また、第6図に示したようにローパスフィルタ7の高周波が減衰し始めるカットオフ周波数fαはCRの時定数によって決定されるが、この場合には、抵抗RはICチップ11に集積化され、コンデンサCはチップコンデンサC′として凹部内底面に固着されて密閉封入されるので、温度補償発振器の組立て後は時定数を変更(調整)できない問題があった。
【0011】
例えばカットオフ周波数fαを低くして雑音成分である高周波成分(交流成分)を極力小さくする場合には時定数を大きくすればよいが、この場合には、温度補償電圧が温度に応答して変化するため、抵抗RとコンデンサCの中点(接続点)の電位が安定するまでに時間が掛かり、温度補償の追従性を悪化させる。これにより、例えば急激な温度変化時の温度補償特性を規格外にする。
【0012】
また、これとは逆に、時定数を小さくして温度補償の追従性を良好にすると、カットオフ周波数fαが高くなり、雑音成分が多くなって位相雑音特性を悪化させる。これらのことから、例えば温度変化の少ない主に室内のみで使用する場合は、時定数を大きくして高周波成分を小さくする。また、温度変化の大きい室外で使用する場合は、時定数を小さくして追従性を確保する。
【0013】
ちなみに、上記の抵抗Rを2MΩ、コンデンサCを10000pFとした場合のカットオフ周波数fαは8Hzになり、これにより例えばMHz帯の高周波数は減衰量を大きくして雑音成分が抑止される。カットオフ周波数fαは低いほど、高周波数の減衰が大きくなる。
【0014】
これらのことから、温度補償発振器の組立て後においても、使用環境等に応じて時定数を任意に変更できれば有用になる。なお、時定数を大きくするには抵抗R及びコンデンサCの容量を大きくすればよいが、抵抗RはICチップ11内に集積化して形成するので限度がある。このため、抵抗Rは一定値として外付けのチップコンデンサC′の容量を大きくすればよいが、容量を大きくすると外形も大きくなり、容器本体10内には収容しきれなくなる問題もある。
【0015】
(発明の目的)本発明は、大容量のチップコンデンサを装備して小型化を維持した表面実装発振器の実装方法を提供することを目的とし、特に温度補償機構にローパスフィルタを有する温度補償発振器の小型化を促進して、しかも組立て後に時定数を変更できる表面実装発振器の実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、実装端子を底面に有する容器本体内にICチップと水晶片とを収容して密閉封入した表面実装用の水晶発振器を備え、電子部品の搭載されるセット基板の回路端子に前記実装端子を電気的・機械的に接続して、前記水晶発振器を前記セット基板上に実装する水晶発振器の実装方法において、前記容器本体の外底面には前記ICチップと電気的に接続するチップコンデンサを装着し、前記セット基板に設けられた開口部内に前記コンデンサを埋設して、前記水晶発振器をセット基板上に実装した構成とする。
【発明の効果】
【0017】
このような構成(実装方法)であれば、チップコンデンサはセット基板の開口部内に埋設されるので、水晶発振器のセット基板面からの高さを小さくする。したがって、水晶発振器の実質的な高さ寸法を小さくして、大容量のチップコンデンサを装備した上で、小型化を維持できる。
【0018】
(請求項1の実施態様)
本発明の請求項2に係る発明では、請求項1の前記チップコンデンサは、前記ICチップに集積化された温度補償機構の温度補償電圧を発生する補償電圧発生回路に接続して、前記温度補償電圧中の雑音成分を抑止するコンデンサと抵抗とからなるローパスフィルタの前記コンデンサとする。
【0019】
これにより、ローパスフィルタのコンデンサが容器本体の外底面にチップコンデンサとして外付けとして装着されるので、温度補償発振器の組立て後にも使用環境等に応じた時定数を任意に変更できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
第1図は本発明の一実施形態である表面実装発振器の実装方法を説明する概略断面図である。なお、前従来例と同一部分の説明は簡略又は省略する。
【0021】
表面実装水晶発振器はここでも温度補償発振器とし、前述したように水晶振動子3、発振回路4、電圧可変容量素子5を有する水晶発振器と、補償電圧発生回路6、ローパスフィルタ7を有する温度補償機構2とを備えてなる。但し、前述同様に、ローパスフィルタ7のコンデンサCを除く温度補償機構、及び電圧可変容量素子5を含む発振回路が少なくともICチップ11に集積化される。
【0022】
そして、容器本体10の凹部内底面にICチップを固着し、内壁段部に水晶片12の一端部両側を固着する。ローパスフィルタ7のコンデンサCはチップコンデンサC′として、容器本体10の外底面に固着する。ここでは、容器本体10の各実装端子15の間となる中央領域にチップコンデンサC′の接続される一対の回路端子16(ab)を設ける。
【0023】
回路端子16(ab)はICチップ11のアース用のIC端子から導出して実装端子15(GND)と接続する導電路17a、及びローパスフィルタ7と高周波素子抵抗9との間に接続したIC端子から導出した導電路17bと電気的に接続する。ここでは、容器本体10の積層構造とした底壁に設けられ、積層面を経ての階段状のビアホール(電極貫通孔)によって、気密を維持して電気的に接続する。
【0024】
セット基板18は例えば積層構造のガラスエポキシやセラミックとし、温度補償水晶発振器の実装面側から開口部19を有する。ここでの開口部19は底面を有し、例えば積層構造の最下層の基板を除いて、個々の基板に予め貫通孔が形成された後、一体的に積層される。そして、温度補償発振器の外底面に設けられたチップコンデンサC′を埋設し、セット基板18の表面上に設けられた図示しない端子に温度補償発振器の各実装端子15を半田等によって接続する。これにより、温度補償発振器をセット基板18上に実装する。
【0025】
このような実装方法であれば、温度補償発振器の小型化が進行しても、チップコンデンサC′を容器本体10の外底面に装着してローパスフィルタ7を形成するので、基本的に温度補償電圧の雑音成分を小さくできる。そして、ICチップ11及び水晶片12を収容してカバー13を被せた温度補償発振器の組み立て後に、環境等に応じた時定数とする容量値のチップコンデンサC′を選択できる。
【0026】
特に、コンデンサCをデスクリィート部品として容量の大きいものを選択できることから、ローパスフィルタ7の時定数を大きくして遮断周波数fαを小さくし、高周波成分(雑音成分)を抑止できる。そして、セット基板18に開口部19を設けて、チップコンデンサC′を埋設するので、セット基板18からの高さ寸法を小さくできる。したがって、温度補償発振器の実質的な小型化を促進する。
【0027】
さらに、ここでは、積層構造としたセット基板18の最下層を除いて開口部19を形成するので、セット基板18の裏面における板面面積を小さくすることがない。したがって、セット基板18の実装面積を従来例通りに維持して、回路パターンを含む電子部品の実装密度を高められる。
【0028】
(他の事項)
上記実施例では、ローパスフィルタ7のコンデンサCの一方はアース電位に接続したが、例えば第2図に示したように、コンデンサCの両端を基準温度時に同電位とする電位設定回路20に接続してもよい(特許文献2参照)。電位設定回路20はICチップ11内の温度補償機構内に設けられる。この場合、コンデンサ自体の時定数による起動時の遅延を防止する効果がある。
【0029】
また、チップコンデンサC′は温度補償機構のローパスフィルタ7のコンデンサCとしたが、例えば電源用のIC端子とアース用のIC端子及び実装端子15(GNDとの間のバイパスコンデンサや、出力用のIC端子と実装端子15(OUT)との間の結合コンデンサであったとしても同様に適用できる。そして、温度補償発振器に拘わらず、表面実装水晶発振器に適用できる。
【0030】
また、セット基板18の開口部19は底面を有するとしたが、単なる貫通孔であってもよい。また、チップコンデンサC′は容器本体10の外底面に1個を設けたが、例えばローパスフィルタ用及びバイパスコンデンサ用として、外底面にスペースのある範囲内で複数個を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の表面実装発振器の実装方法を説明する概略断面図である。
【図2】本発明の一実施例が適用される他の温度補償発振器の回路図である。
【図3】従来例を説明する温度補償発振器の概略回路図である。
【図4】従来例を説明する温度補償発振器の図で、同図(a)は断面図、同図(b)は平面図、同図(c)は裏面図である。
【図5】従来例を説明するローパスフィルタの周波数減衰特性図である。
【符号の説明】
【0032】
1 水晶発振器、2 温度補償機構、3 水晶振動子、4 発振回路、5 電圧可変容量素子、6 補償電圧発生回路、7 ローパスフィルタ、8 スイッチング回路、9 高周波阻止抵抗、10 容器本体101 ICチップ、12 水晶片、13 カバー、14 導電性接着剤、15 実装端子、16 回路端子、17 導電路、18 セット基板、19 開口部、20 電位設定回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装端子を底面に有する容器本体内にICチップと水晶片とを収容して密閉封入した表面実装水晶発振器を備え、電子部品の搭載されるセット基板の回路端子に前記実装端子を電気的・機械的に接続して、前記水晶発振器を前記セット基板上に実装する表面実装水晶発振器の実装方法において、前記容器本体の外底面には前記ICチップと電気的に接続するチップコンデンサを装着し、前記セット基板に設けられた開口部内に前記コンデンサを埋設して、前記水晶発振器をセット基板上に実装したことを特徴とする表面実装水晶発振器の実装方法。
【請求項2】
前記チップコンデンサは、前記ICチップに集積化された温度補償機構の温度補償電圧を発生する補償電圧発生回路に接続して、前記温度補償電圧中の雑音成分を抑止するコンデンサと抵抗とからなるローパスフィルタの前記コンデンサである請求項1の表面実装水晶発振器の実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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