説明

表面実装用の水晶発振器

【課題】ICチップの発熱による周波数温度特性への影響を軽減して生産性を高めた表面実装発振器を提供する。
【解決手段】内壁段部を有する凹状とした容器本1体の内底面に引出電極の延出した水晶片3の外周部を固着し、前記内壁段部にICチップ2を配置し、前記容器本体3の開口端面を金属カバー4にて封止した表面実装用の水晶発振器において、前記内壁段部は前記容器本体の内周を周回して形成され、前記ICチップ2はフリップチップボンディングによって回路機能面のIC端子が絶縁板13の一主面の表面端子に固着され、前記絶縁板13の前記表面端子と電気的に接続した他主面の裏面端子は前記内壁段部に設けられた回路端子に固着され、前記水晶片3と前記ICチップ2とが前記絶縁板13によって全面的に遮断された構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装用の水晶発振器(以下、表面実装発振器とする)を技術分野とし、特にICチップの発熱による周波数温度特性への影響を軽減した表面実装発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
表面実装発振器は小型・軽量であることから、特に携帯型の電子機器に周波数や時間の基準源として内蔵される。近年では、表面実装発振器の小型化に伴い、ICチップの発熱による周波数温度特性への影響が問題視されている。
【0003】
(従来技術の一例)
第3図は一従来例を説明する図で、同図(a)は表面実装発振器の断面図、同図(b)は水晶片の平面図である。
【0004】
表面実装発振器は容器本体1にICチップ2と水晶片3を収容し、金属カバー4を被せて密閉封入される。容器本体1は底壁1a、中間枠1b及び上壁1cを有する積層セラミックからなり、両端側に内壁段部を有して凹状とする。そして、容器本体1の内底面には回路端子5を、一端側の内壁段部に水晶保持端子6を有する。
【0005】
ICチップ2は少なくとも発振回路を集積化し、回路機能面の図示しないIC端子が、バンプ7を用いた超音波熱圧着によって内底面の回路端子5に固着する(所謂フリップチップボンディング)。水晶片3はATカットとして両主面に励振電極9aを有し、引出電極9bの延出した一端部両側が導電性接着剤10によって内壁段部の水晶保持端子6に固着される。
【0006】
水晶保持端子6はICチップ2の水晶端子にスルーホール11等を経て電気的に接続する。ICチップのこれ以外の電源、出力、アース等のIC端子は積層面を経て実装端子8に接続する。金属カバー4はシーム溶接によって、容器本体の開口端面に設けられた図示しない金属リングに接合される。そして、スルーホール11等を経て実装端子8中のアース端子に電気的に接続する。
【0007】
水晶振動子(水晶片3)の周波数温度特性は、常温25℃近傍に変曲点を有する三次曲線となる(第4図の曲線A)。三次曲線は切断角度に依存して3次、2次及び1次の係数が変化する。この例では、25℃近傍以下の温度点に極大値T1(例えば−5℃)を、25℃以上の温度点に極小値T2(同65℃)を有する切断角度とする。
【0008】
これにより、例えば3次項のみとした直線状の3次曲線に比較し、常温25℃近傍の発振周波数を公称周波数とすることによって、温度が常温25℃近傍から低温側及び高温側に変化しても周波数変化を小さくできる。通常では、極大値T1から極小値T2までの傾斜特性(勾配)を緩やかにして、極大値T1以下及び極小値T2以上の傾斜特性を急峻にする。
【0009】
したがって、例えば−10℃から70℃までの範囲をα(10)ppm以内とした温度規格を満足する。水晶発振器の周波数温度特性は、水晶振動子の周波数温度特性が支配的になって基本的にはほぼ同一特性となる。なお、金属カバー4はシーム溶接やガラス封止等によって容器本体1の開口端面に接合される。
【特許文献1】特開2007−67967号公報
【特許文献2】特開2006−129455号公報
【特許文献3】特開2001−308644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(従来技術の問題点)
しかしながら、上記構成の表面実装発振器では、ICチップ2の発熱温度によって、容器本体1内の温度も上昇する。特に、ICチップ2と水晶片3とが対面した配置構造なので、ICチップ2からの熱が水晶片3に直接的に輻射される。このため、水晶片3の温度も上昇し、周囲温度よりも高い温度での発振周波数となる。このことから、従来では、この分の周波数のズレを見込んで、例えば水晶片3の切断角度を代えて対応する必要があった。
【0011】
しかし、表面実装発振器の小型化が進行するほど、例えば平面外形が5.0×3.2mm、高さが1.2mm以下になって内積が小さくなるほど、ICチップ2の発熱の影響が大きくなる。この場合、常温25℃での周波数変化よりも、高温側及び低温側の周波数変化の方が大きくなる。すなわち、前述のように常温付近での温度に対する傾斜特性よりも、高温側及び低温側での傾斜特性が急峻なため、温度変化に対する周波数変化も大きくなる。
【0012】
そして、特に80℃付近以上となる高温側の周波数温度特性は、基準周波数(公称周波数)からの+方向の周波数偏差Δf/fも大きくなって、周波数温度特性の上限規格から離れる方向なので問題となる。一方、−20℃付近以下となる低温側は基準周波数に接近する方向なので、格別に問題にはならない。
【0013】
これらのことから、常温のみならず特に高温側での周波数偏差を規格内にしなければならないので、水晶片3の切断角度を単に代えるのみでは、充分に対応できずに生産性を低下させる問題があった。なお、フリップチップボンディングによる固着なので、回路機能面とは反対面を固着してワイヤーボンディングによって電極を導出する場合に比較して放熱効果が小さいことに起因する。
【0014】
(発明の目的)
本発明は、ICチップの発熱による周波数温度特性への影響を軽減して生産性を高めた表面実装発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、内壁段部を有する凹状とした容器本体の内底面に引出電極の延出した水晶片の外周部を固着し、前記内壁段部にICチップを配置し、前記容器本体の開口端面を金属カバーにて封止した表面実装用の水晶発振器において、前記内壁段部は前記容器本体の内周を周回して形成され、前記ICチップはフリップチップボンディングによって回路機能面のIC端子が絶縁板の一主面の表面端子に固着され、前記絶縁板の前記表面端子と電気的に接続した他主面の裏面端子は前記内壁段部に設けられた回路端子に固着され、前記水晶片と前記ICチップとが前記絶縁板によって全面的に遮断された構成とする。
【発明の効果】
【0016】
このような構成であれば、絶縁板によってICチップからの水晶片に対する直接的な輻射熱を避けられる。そして、ICチップを固着した絶縁板を内壁段部に固着してICチップが金属カバー側に配置されるので、金属カバーを経てのICチップからの熱が逃げやすい。したがって、水晶片の温度上昇を抑止し、周波数温度特性への影響を軽減する。そして、生産性を向上できる。
【0017】
また、ここでは、水晶片を容器本体の内底面に固着し、ICチップを固着した絶縁板を段部上に搭載するので、ICチップの平面積を大きくできる。したがって、例えば温度補償型とした比較的大きなICチップを搭載できる。
【0018】
なお、水晶片とICチップとを絶縁板で遮断して金属カバーによって封止し、水晶片とICチップとのいずれをも密閉封入する。したがって、例えば両主面に凹部を有して一方の凹部に水晶片を密閉封入し、他方の凹部にICチップを収容して保護樹脂を塗布したものに比較し、高温・高湿環境下における信頼性を高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
第1図は本発明の一実施形態を説明する表面実装発振器の図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
【0020】
表面実装発振器は、前述のように、内壁段部を有する凹状とした積層セラミックからなる容器本体1にICチップ2と水晶片3とを一体的に収容し、金属カバー4を封止してこれらを密閉封入する。ここでは、容器本体1は内周を周回する内壁段部を有し、一組の対向する内壁段部上には回路端子5aを有し、内底面には水晶保持端子6を有する。
【0021】
内壁段部の回路端子5aは内底面の水晶保持端子6にビアホール11を経て、さらにはビアホール11及び積層面を経て外底面の実装端子8に電気的に接続する。そして、励振電極9aから引出電極9bの延出した水晶片の一端部両側が、内底面の水晶保持端子6に導電性接着剤10によって固着される。
【0022】
ICチップ2は例えばバンプ7を用いた超音波熱圧着によるフリップチップボンディングによって、予め、絶縁板13の一主面の回路端子(表面端子)5bに固着する。絶縁板13の他主面には表面端子5bから延出した回路端子(裏面端子)5cを有する。そして、裏面端子5cは内壁段部の回路端子5aに対応し、同様のフリップチップボンディングによって固着する。
【0023】
これにより、ICチップ2におけるIC端子中の水晶端子は内底面の水晶保持端子6にスルーホール11等を経て電気的に接続する。また、電源、出力、アース端子等は容器本体1の外底面の実装端子8にスルーホール11等を経て電気的に接続する。
【0024】
このような構成であれば、効果の欄でも記載するように、ICチップ2からの水晶片3に対する直接的な輻射熱を絶縁板13によって避けられる。そして、ICチップ2を内壁段部に固着して金属カバー4側に配置されるので、金属カバー4を経てICチップ2からの熱が逃げやすい。したがって、水晶片3の温度上昇を抑止し、周波数温度特性への影響を軽減するとともに生産性を向上できる。
【0025】
(他の事項)
例えば第2図に示したように、ICチップ2と金属カバー4との間に熱伝導性の接着剤12を塗布して熱の放熱路を形成することによって、さらに放熱効果を高められる。この場合、例えば容器本体1の開口端面上には金属膜を設けて、金属カバー4を共晶合金によって接合する。そして、熱伝導性の接着剤12を例えば熱硬化型の導電性接着剤としてICチップ2上に塗布し、共晶合金の加熱溶融時に導電性接着剤を同時に溶融して硬化すれば効率的である。
【0026】
なお、表面実装発振器を温度補償型とした場合は、ICチップ2内に設けられた温度検出素子と水晶振動子の動作温度とが異なり、特に電源投入後の起動時には温度補償機構部からの温度補償電圧は実際に補償すべき温度補償電圧からズレを生じる。
【0027】
したがって、この場合でも適用できる。そして、この場合には、ICチップ2を固着した絶縁板13を内壁段部に搭載するので、容器本体1の内底面に固着する場合に比較して大きなICチップ2を使用できて、温度補償型とした場合、特に有用となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態を説明する表面実装発振器の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の他の例を説明する表面実装発振器の断面図である。
【図3】従来例を説明する図で、同図(a)は表面実装発振器の断面図、同図(b)は水晶片の平面図である。
【図4】表面実装発振器(水晶振動子)の周波数温度特性図である。
【符号の説明】
【0029】
1 容器本体、2 ICチップ、3 水晶片、4 金属カバー、5 回路端子、6 水晶保持端子、7 バンプ、8 実装端子、9 電極、10 導電性接着剤、11 スルーホール、12 熱伝導性の接着剤 13 絶縁板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁段部を有する凹状とした容器本体の内底面に引出電極の延出した水晶片の外周部を固着し、前記内壁段部にICチップを配置し、前記容器本体の開口端面を金属カバーにて封止した表面実装用の水晶発振器において、前記内壁段部は前記容器本体の内周を周回して形成され、前記ICチップはフリップチップボンディングによって回路機能面のIC端子が絶縁板の一主面の表面端子に固着され、前記絶縁板の前記表面端子と電気的に接続した他主面の裏面端子は前記内壁段部に設けられた回路端子に固着され、前記水晶片と前記ICチップとが前記絶縁板によって全面的に遮断されたことを特徴とする表面実装用の水晶発振器。
【請求項2】
請求項1において、前記ICチップと前記金属カバーとの間に熱伝導性の接着剤を介在させた表面実装用の水晶発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−301226(P2008−301226A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145572(P2007−145572)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】