説明

表面弾性波素子、表面弾性波装置、及びこれらの製造方法

【課題】表面弾性波素子に電気信号を印加したり、表面弾性波素子から信号を検出したりする過程で漏れ電流が発生することを防止することができる表面弾性波素子、表面弾性波装置、及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】表面弾性波素子10は、圧電物質からなる基板20と、上記基板上に位置し互いに離間する複数の第1電極22と、上記基板上に上記第1電極22と離間して位置し互いに離間する複数の第2電極40、及び上記複数の第1電極22及び上記複数の第2電極40のそれぞれに位置する酸化膜24とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面弾性波素子、表面弾性波装置、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に表面弾性波(Surface Acoustic Wave;SAW)センサは、圧電物質を利用して試料内の対象物質を検出する装置である。SAWセンサには発振信号が印加される。SAWセンサに含まれるくし型電極(Interdigital Transducer;IDT)を介して発振信号が機械的な波動である表面弾性波に変換され、または表面弾性波が発振信号に変換される。
【0003】
一方、試料内に存在する対象物質がSAWセンサの表面上に結合されると、表面に結合された物質によってセンサの表面質量が変化し得る。SAWセンサの表面上に結合された対象物質はIDTによって生成される表面弾性波に変化を誘発し得る。
【0004】
なお、対象物質がバイオ物質であるとき、試料内に塩分が含まれている場合がある。塩分を含む試料を介してSAWセンサにおける電気信号が入出力する部分から所望でない漏れ電流が発生することがある。漏れ電流が発生すると、SAWセンサにて共振信号や発振信号が正常に発生しないため、SAWセンサが対象物質を正確に検知することができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記した従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、表面弾性波素子に電気信号を印加したり、表面弾性波素子から信号を検出したりする過程で漏れ電流が発生することを効率的に防止することができる表面弾性波素子、表面弾性波装置及びこれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態による表面弾性波素子は、圧電物質からなる基板と、上記基板上に位置し互いに離間する複数の第1電極と、上記基板上に上記第1電極と離間して位置し、互いに離間する複数の第2電極、及び上記複数の第1電極及び上記複数の第2電極のそれぞれに位置する酸化膜とを含む。
【0007】
一実施の形態において、上記複数の第1電極及び複数の第2電極のそれぞれは、表面酸化が可能な導電性物質を含む。
【0008】
一実施の形態において、上記表面酸化が可能な導電性物質は、金属及び合金のうちの少なくとも一種を含む。
【0009】
一実施の形態において、上記表面酸化が可能な導電性物質は、アルミニウム、ニオブ、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、銅、及びクロムのうちの少なくとも一種を含む。
【0010】
一実施の形態において、上記複数の第1電極及び複数の第2電極のそれぞれは、くし型電極である。
【0011】
本発明の一実施の形態による表面弾性波素子の製造方法は、圧電物質からなる基板と、上記基板上に位置し互いに離間する複数の第1電極、及び上記基板上に上記第1電極と離間して位置し、互いに離間する複数の第2電極を用意する段階、及び上記複数の第1電極及び上記複数の第2電極のそれぞれに酸化膜を載置する段階を含む。
【0012】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記複数の第1電極及び複数の第2電極を乾式酸化させる段階を含む。
【0013】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記複数の第1電極及び複数の第2電極をプラズマ及びオゾンのうちの少なくとも一種に露出させる段階を含む。
【0014】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記複数の第1電極及び複数の第2電極を熱酸化させる段階を含む。
【0015】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記複数の第1電極及び複数の第2電極を湿式酸化させる段階を含む。
【0016】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記複数の第1電極及び複数の第2電極を陽極酸化させる段階を含む。
【0017】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記複数の第1電極及び複数の第2電極を過酸化水素、炭酸水素ナトリウム、二酸化鉛、二酸化マンガン、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、及び酸化塩素のうちの少なくとも一種に露出させる段階を含む。
【0018】
本発明の一実施の形態による表面弾性波装置は、第1接続部を含む表面弾性波素子と、第2接続部を含む第1基板と、上記第1接続部と上記第2接続部とを電気的に連結する連結部、及び上記第1接続部、上記第2接続部、及び上記連結部の上に位置する酸化膜と、を含む。
【0019】
一実施の形態において、上記第1接続部、第2接続部及び連結部のそれぞれは、表面酸化が可能な導電性物質を含む。
【0020】
一実施の形態において、上記連結部は線形状、曲面体形状、及び多面体形状のうちの少なくとも一種の形状であればよい。
【0021】
一実施の形態において、表面弾性波素子は、圧電物質からなる第2基板と、上記第2基板上に位置し互いに離間する複数の第1電極と、上記基板上に上記第1電極と離間して位置し、互いに離間する複数の第2電極、及び上記複数の第1電極及び上記複数の第2電極に位置する酸化膜と、を更に含み、上記第1接続部は、上記複数の第1電極及び上記複数の第2電極に一体化されて構成される。
【0022】
本発明の一実施の形態による表面弾性波装置の製造方法は、第1接続部を含む表面弾性波素子、及び第2接続部を含む基板を用意する段階と、上記第1接続部と上記第2接続部とを連結部を介して電気的に連結する段階、及び上記第1接続部、上記第2接続部、及び上記連結部の上に酸化膜を載置する段階と、を含む。
【0023】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記第1接続部、第2接続部、及び連結部を乾式酸化させる段階を含む。
【0024】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記第1接続部、第2接続部、及び連結部をプラズマ及びオゾンのうちの少なくとも一種に露出させる段階を含む。
【0025】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記第1接続部、第2接続部、及び連結部を熱酸化させる段階を含む。
【0026】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記第1接続部、第2接続部、及び連結部を湿式酸化させる段階を含む。
【0027】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記第1接続部、第2接続部、及び連結部を陽極酸化させる段階を含む。
【0028】
一実施の形態において、上記酸化膜を載置する段階は、上記第1接続部、第2接続部、及び連結部を過酸化水素、炭酸水素ナトリウム、二酸化鉛、二酸化マンガン、過マンガン酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、及び酸化塩素のうちの少なくとも一種に露出させる段階を含む。
【0029】
本発明のまた他の実施の形態による表面弾性波素子は、圧電物質から構成される基板と、上記基板上に位置し、複数の第1電極を有する第1くし型電極及び複数の第2電極を有する第2くし型電極と、上記複数の第1電極及び第2電極のそれぞれに位置する第1及び第2酸化膜、及び上記基板上に位置し対象物質と結合される検知領域と、を含み、上記複数の第1電極は第1電気信号に反応して上記基板上に表面弾性波を発生し、上記複数の第2電極は上記表面弾性波を受信することに反応して第2電気信号を発生し、上記第2電気信号は上記検知領域に結合された対象物質の量を表示する。
【0030】
一実施の形態において、上記検知領域に接触する対象物質は、液体内に位置し、上記第1及び第2酸化膜は、上記複数の第1電極及び上記複数の第2電極のそれぞれから上記液体に漏れ電量が流れることを防止する。
【0031】
一実施の形態において、上記表面弾性波素子は、上記基板上に位置し、上記複数の第1電極と直接連結される第1金属パッドを更に含み、上記第1金属パッドに上記第1酸化膜が更に位置する。
【0032】
一実施の形態において、表面弾性波素子は、上記基板上に位置する第2金属パッド、及び上記第2金属パッドを上記第1金属パッドに連結する金属ワイヤ(wire)を更に含み、上記第2金属パッド及び上記金属ワイヤに上記第1酸化膜が更に位置する。
【0033】
本発明のまた他の実施の形態による表面弾性波装置の製造方法は、圧電物質から構成された基板上に、複数の第1電極を有する第1くし型電極、及び複数の第2電極を有する第2くし型電極を載置する段階と、上記複数の第1電極上に第1酸化膜を載置する段階、及び上記複数の第2電極上に第2酸化膜を載置する段階と、を含む。
【0034】
一実施の形態において、表面弾性波装置の製造方法は、上記基板上に上記複数の第1電極と直接連結される第1金属パッドを載置する段階を更に含み、上記第1金属パッド上に上記第1酸化膜が更に位置する。
【0035】
一実施の形態において、表面弾性波装置の製造方法は、上記基板上に第2金属パッドを載置する段階、及び上記第1及び第2金属パッドに金属ワイヤを連結する段階を更に含み、上記第2金属パッド及び上記金属ワイヤ上に上記第1酸化膜が更に位置する。
【0036】
本発明のまた他の実施の形態による表面弾性波装置は、圧電物質から構成された基板と、第1及び第2くし型電極、第1及び第2酸化膜及び検知領域を有する第1表面弾性波素子であって、上記第1くし型電極は上記基板上に位置し複数の第1電極を有し、上記第2くし型電極は上記基板上に位置し複数の第2電極を有し、上記第1及び第2酸化膜は上記複数の第1及び第2電極のそれぞれに位置し、上記検知領域は上記基板上に位置し対象物質と結合する第1表面弾性波素子、及び第3及び第4くし型電極及び第3及び第4酸化膜を有し検知領域は有しない第2表面弾性波素子であって、上記第3くし型電極は上記基板上に位置し複数の第3電極を有し、上記第4くし型電極は上記基板上に位置し複数の第4電極を有し、上記第3及び第4酸化膜は上記複数の第3及び第4電極のそれぞれに位置する第2表面弾性波素子と、を含み、上記複数の第1電極は第1電気信号に反応して上記基板上に第1表面弾性波発生し、上記複数の第2電極は上記第1表面弾性波を受信することに反応して第2電気信号を発生し、上記複数の第3電極は第3電気信号に反応して上記基板上に第2表面弾性波を発生し、上記複数の第4電極は上記第2表面弾性波を受信することに反応して第4電気信号を発生し、上記第2電気信号の第1変数及び上記第4電気信号の第2変数の差が上記検知領域に結合された対象物質の量を表示する。
【0037】
一実施の形態において、上記検知領域に接触する対象物質は、液体内に位置し、上記第1及び第2酸化膜は上記複数の第1電極及び上記複数の第2電極のそれぞれから上記液体に漏れ電流が流れることを防止する。
【発明の効果】
【0038】
本発明の一実施の形態による表面弾性波素子または表面弾性波装置を使用すれば、表面弾性波素子の電極部分及び/または基板と表面弾性波素子とを電気的に連結するための部分が酸化膜によって絶縁されるため、試料を介した漏れ電流の発生を防止することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】一実施の形態による表面弾性波素子を示した平面図である。
【図2】図1に示された表面弾性波素子におけるA−A’線に沿う断面図である。
【図3a】一実施の形態による表面弾性波素子の周波数を従来技術による表面弾性波素子の周波数と比較して示した時間に対する周波数、圧力及び伝導度のグラフである。
【図3b】一実施の形態による表面弾性波素子の周波数を従来技術による表面弾性波素子の周波数と比較して示した時間に対する周波数、圧力及び伝導度のグラフである。
【図3c】一実施の形態による表面弾性波素子の周波数を従来技術による表面弾性波素子の周波数と比較して示した時間に対する周波数、圧力及び伝導度のグラフである。
【図3d】一実施の形態による表面弾性波素子の周波数を従来技術による表面弾性波素子の周波数と比較して示した時間に対する周波数、圧力及び伝導度のグラフである。
【図4】一実施の形態によって活性表面弾性波素子及び基準表面弾性波素子を含む表面弾性波装置を示した平面図である。
【図5】図4に示された表面弾性波装置におけるB−B’線に沿う断面図である。
【図6】他の実施の形態による表面弾性波装置を示した断面図である。
【図7】また他の実施の形態による表面弾性波装置を示した平面図である。
【図8】図7に示された表面弾性波装置におけるC−C’線に沿う断面図である。
【図9a】一実施の形態による表面弾性波装置の製造段階を示した断面図である。
【図9b】一実施の形態による表面弾性波装置の製造段階を示した断面図である。
【図9c】一実施の形態による表面弾性波装置の製造段階を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照して実施の形態について具体的に説明する。なお、本発明が下記実施の形態によって制限されるものではない。
【0041】
図1は、一実施の形態による表面弾性波(Surface Acoustic Wave;SAW)素子10を示した平面図であり、図2は、図1のA-A’線に沿う断面図である。
【0042】
図1及び図2を参照すれば、SAW素子10は、基板20と、くし型電極(Interdigital Transducer; IDT)22と、酸化膜24と、IDT40と、酸化膜42と、接続部44、46、及び収容体48とを含んでなる。基板20は、表面弾性波を発生し伝播するのに適した圧電物質(piezoelectric material)からなってよい。例えば、基板20は、タンタル酸リチウム及びニオブ酸リチウムのような単結晶の圧電物質、PZT(lead zirconate titanate)セラミックのような圧電セラミック、または他の好適な物質を含んでよい。
【0043】
複数の第1電極を有するIDT22が基板20上に位置してよい。また、複数の第1電極は互いに離間してよい。例えば、IDT22は基板20上に位置し、互いに離間し向き合う電極60、62、64、66を含んでよい。電極60、62、64、66の間に発振信号が印加されると、電極60、62、64、66と基板20とが接触する部分から機械的な波動である表面弾性波が発生され得る。表面弾性波は、基板20の表面に沿って伝播され得る。
【0044】
複数の第2電極を有するIDT40が基板20上にIDT22と離間して位置してよい。また、複数の第2電極は、互いに離間してよい。例えば、IDT40は、互いに離間し向き合う電極70、72、74、76を含んでよい。基板20に沿って伝播された表面弾性波が電極70、72、74、76に伝達されると、圧電物質からなる基板20と電極70、72、74、76との接触部分において表面弾性波が電気信号に変換され得る。
【0045】
電極60、62、64、66は、くし状の構造からなるIDT電極であればよい。また、電極70、72、74、76はくし状の構造からなるIDT電極であればよい。
【0046】
電極60、62、64、66及び電極70、72、74、76は、電気が流れ得る物質からなってよい。また、電極60、62、64、66及び電極70、72、74、76は、表面酸化が可能な物質からなってよい。電極60、62、64、66及び電極70、72、74、76は、金属または合金からなってよい。例えば、電極60、62、64、66及び電極70、72、74、76は、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、銅(Cu)、及びクロム(Cr)などのすべての金属または合金からなってよく、このうちの一種以上を含んでなってもよい。
【0047】
電極60、62、64、66には、酸化膜24が形成されてよく、電極70、72、74、76には酸化膜42が形成されてよい。電極60、62、64、66は、外部装置との電気的な接続のための接続部26、28を含むことができる。電極70、72、74、76も外部装置との電気的な接続のための接続部44、46を含むことができる。接続部26、28は、外部信号発生器と連結され、接続部26、28が外部信号発生器から発振電気信号を受信することができる。接続部44、46は外部アンプと連結され、IDT(40)の出力信号を増幅することができる。接続部26、28は電極60、62、64、66の一部分であって、電極60、62、64、66と同じ物質からなって一体で形成されてよい。また、接続部44、46は電極70、72、74、76の一部分であって、電極70、72、74、76と同じ物質からなって一体で形成されてよい。電気的連結のためには接続部26、28及び接続部44、46が露出する必要があるため、酸化膜24は、電極60、62、64、66における接続部26、28を除いた部分だけに形成されてもよい。なお、酸化膜42は電極70、72、74、76における接続部44、46を除いた部分だけに形成されてもよい。
【0048】
収容体48は、基板20の露出した部分に位置してよい。収容体48は、試料内に含まれた所定の対象物質に特異的に反応する物質で構成され得る。基板20上の収容体48が試料に露出すると、試料内の対象物質が収容体48に特異的に結合され得る。収容体48を構成する物質は、対象物質の種類に応じて多様である。例えば、収容体48のそれぞれは、タンパク質、抗体、DNA、RNA、細胞、アプタマー(Aptamer)、及びポリマーなどの様々な物質のいずれかであればよいが、これらに制限されるものではない。
【0049】
基板20上の収容体48に対象物質が結合されると、SAW素子10の表面質量、SAW素子10と接触する試料の粘性度、密度及び伝導度などが変化し得る。これに伴い、電極60、62、64、66によって発生する表面弾性波の特性も変化され得る。このとき、対象物質が結合されたSAW素子10の出力を対象物質が結合されていない基準素子の出力と比較することにより、対象物質を定量的及び定性的に分析することができる。
【0050】
電極60、62、64、66は、電極60、62、64、66に形成された酸化膜14によって電気的に絶縁される。なお、電極70、72、74、76は、電極70、72、74、76に形成された酸化膜42によって電気的に絶縁される。これにより、SAW素子10が電導性試料にさらされても試料を介して漏れ電流が発生することを防止することができる。また、電極60、62、64、66部分だけに酸化膜24が形成され、且つ電極70、72、74、76部分だけに酸化膜42が形成されるため、SAW素子10の表面全体に別途の絶縁膜を形成する必要がない。これにより、絶縁膜の境界面からノイズが発生するなどの問題がない。
【0051】
一実施の形態によるSAW素子の製造方法によれば、基板20、電極60、62、64、66を有するIDT22、及び電極70、72、74、76を有するIDT40を用意し、電極60、62、64、66の上に酸化膜24を形成し、電極70、72、74、76の上に酸化膜42を形成することによりSAW素子10を製造することができる。
【0052】
一実施の形態において、酸化膜24、42は、乾式酸化によって電極60、62、64、66、及び電極70、72、74、76の上に形成することができる。例えば、電極60、62、64、66をプラズマに露出させて酸化膜24を形成することができる。特に、プラズマとしては、酸素プラズマ(Oplasma)を用いて酸化膜24、42を形成することもできる。または、電極60、62、64、66、及び電極70、72、74、76を熱酸化させて酸化膜24、42を形成するか、これらの電極をオゾン(O)に露出するオゾンクリーニング法によって酸化膜24、42を形成することもできる。
【0053】
他の実施の形態において、酸化膜24、42は、湿式酸化によって電極60、62、64、66、及び電極70、72、74、76の上に形成することもできる。例えば、電極60、62、64、66、及び電極70、72、74、76を過酸化水素(H)に露出させて酸化膜24、42を形成することができる。または、電極60、62、64、66、及び電極70、72、74、76を炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、二酸化鉛(PbO)、二酸化マンガン(MnO)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、または酸化塩素(ClO)などの酸化剤に露出させて酸化膜24、42を形成することもできる。
【0054】
または、電極60、62、64、66、及び電極70、72、74、76を陽極酸化して酸化膜24を形成することもできる。本明細書における陽極酸化とは、酸化膜を形成すべき物質を陽極として電解質溶液内において電気分解する過程のことをいう。電極60、62、64、66、及び電極70、72、74、76を陽極酸化させると、これらの電極を構成する物質が電解質内に溶解されると同時に、電極60、62、64、66、及び電極70、72、74、76の上に構成物質の酸化膜24、42が形成され得る。
【0055】
例えば、約150g/Lの濃度を有する約70℃のアジピン酸アンモニウム水溶液中において約40分間約100Vの電圧を印加することにより電極60、62、64、66、及び電極70、72、74、76に酸化膜24、42を形成することができる。電解質溶液は、硫酸(HSO)、シュウ酸((COOH))、クロム酸、ホウ酸、ホウ砂、リン酸アンモニウム、または酒石酸アンモニウムを含む溶液であればよい。
【0056】
図3aは、一実施の形態によるSAW素子と従来技術による素子において試料の圧力を変化させながら測定した出力信号の周波数を示した時間(秒)に対する周波数(Hz)及び圧力(mbar)のグラフである。一実施の形態によるSAW素子の出力信号の周波数101の変化が、従来技術による素子の出力信号の周波数102の変化に比べて相対的に大きいことを確認することができる。信号103は実施の形態によるSAW素子に接触し試料を含む液体の圧力の大きさを時間によって示している。
【0057】
図3bは、一実施の形態によるSAW素子と従来技術による素子において試料の伝導度を変化させながら測定した出力信号の周波数を示した時間(秒)に対する周波数(Hz)及び伝導度(mS/cm)のグラフである。図示されているように、一実施の形態によるSAW素子の出力信号の周波数111の変化が、従来技術による素子の出力信号の周波数112の変化に比べて相対的に大きいことを確認することができる。信号113は試料の伝導度を時間に対し示している。
【0058】
図3c及び図3dは、それぞれ、一実施の形態によるSAW素子と従来技術による素子において素子の表面に結合された対象物質の質量を変化させながら測定した出力信号の周波数の変化を示した時間(秒)による周波数(Hz)のグラフである。図示されているように、一実施の形態によるSAW素子の出力信号の周波数121の変化が、従来技術による素子の出力信号の周波数122の変化に比べて相対的に大きいことを確認することができる。図3cにおいて、90秒では、対象物質の濃度が0から1ug/mlにまで増加し周波数が減少した。280秒では、SAW素子から対象物質を除去するワッシング(washing)段階が遂行された。
【0059】
一実施の形態によるSAW素子は、試料が変化する圧力、伝導度、及び対象物質の質量などに対する感度が、従来技術による素子のそれに比べて向上されるという利点がある。一実施の形態によるSAW素子における感度の向上は、SAW素子表面の全体に別途の絶縁膜を形成する必要がないため、表面弾性波が伝播される領域が分析しようとする試料に隣接して位置するからである。
【0060】
図4は、一実施の形態による表面弾性波装置(SAW device)200を示した平面図であり、図5は、図4に示されたB-B’線に沿う断面図である。
【0061】
図4及び図5を参照すれば、上記SAW装置200は、SAW素子20と、基板201と、接続部221、222、連結部223、224、226、228と、接続部230、232と、酸化膜240、242と、SAW素子300と、接続部302、304、306、308、321、322と、連結部323、324と、接続部330、332と、信号発生部350、及びアンプ352、354を含んでなる。
【0062】
図4及び図5において、SAW素子20は、図1及び図2を参照して前述したSAW素子20であればよい。なお、SAW装置200に含まれるSAW素子20の構成は、図1及び図2に示されたものに制限されず、SAW素子20は、図1及び図2に示された構成と異なって構成されてもよい。
【0063】
基板201は、SAW装置200の他の部品のうちのいくつかを支持するベース基板であればよい。SAW素子20及びSAW素子300は、基板201上に形成され且つ互いに隣接して位置してよい。
【0064】
SAW素子20は、SAW素子20を外部装置と電気的に連結するための接続部26、28、44、46を有してよい。接続部26、28、44、46は、電気が流れることができ且つ表面酸化が可能な物質からなってよい。例えば、接続部26、28、44、46は、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、銅(Cu)、及びクロム(Cr)などのすべての金属または合金からなってよく、このうちの一種以上を含んでなってもよい。
【0065】
なお、SAW素子20の接続部26、28は、図1及び図2を参照して前述したとおり、SAW素子20の電極60、62、64、66の一部領域に該当してもよく、接続部44、46は、SAW素子20の電極70、72、74、76の一部領域に該当してもよい。特に、接続部26、28は、それぞれ、連結部223、224を介して接続部221、222に電気的に連結され得る。接続部221、222は、信号発生器350のような外部装置と更に電気的に連結され得る。また、接続部44、46は、それぞれ、連結部226、228を介して接続部230、232と電気的に連結され得る。接続部230、232は、アンプ352のような外部装置と更に電気的に連結され得る。
【0066】
図4及び図5を参照すれば、連結部223、224、226、228は、電気が流れることができ且つ表面酸化が可能な物質からなってよい。例えば、連結部223、224、226、228は、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、銅(Cu)、及びクロム(Cr)などのすべての金属または合金からなってよく、このうちの一種以上を含んでなってもよい。
【0067】
酸化膜は、接続部26、28、44、46及び連結部223、224、226、228の上にこれらを覆う形態で形成されてよい。例えば、酸化膜224、228は、接続部28、46及び連結部224、228の物質が酸化して形成されてもよい。酸化膜によって接続部26、28、44、46と連結部223、224、226、228が絶縁されるため、接続部26、28、44、46及び連結部223、224、226、228からの漏れ電流が発生することを防止することができる。一実施の形態において、酸化膜は10μmより大きい膜厚を有してよい。他の実施の形態において、酸化膜は11μmより大きい膜厚を有してもよい。
【0068】
図4及び図6を参照すれば、一実施の形態において、接続部26、28、44、46及び連結部223、224、226、228の上の酸化膜は、乾式酸化によって形成することができる。例えば、接続部26、28、44、46及び連結部223、224、226、228をプラズマに露出して酸化膜を形成することができる。例えば、酸素プラズマを用いて接続部28、46及び連結部224、228の上に酸化膜240、241を形成することができる。または、例えば、接続部28、46及び連結部224、228を熱酸化させて酸化膜240、241を形成するか、あるいはオゾンクリーニング法を用いて酸化膜240、241を形成することもできる。
【0069】
他の実施の形態において、接続部26、28、44、46及び連結部223、224、226、228の上の酸化膜は、湿式酸化によって形成することもできる。例えば、接続部28、46及び連結部240、241を過酸化水素(H)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、二酸化鉛(PbO)、二酸化マンガン(MnO)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、または酸化塩素(ClO)などに露出させて酸化膜240、241を形成することができる。
【0070】
または、各接続部26、28、44、46及び連結部223、224、226、228を陽極酸化させて接続部26、28、44、46及び連結部223、224、226、228の上に酸化膜4を形成することもできる。陽極酸化時の電解質溶液としては、硫酸、シュウ酸、クロム酸、ホウ酸、ホウ砂、アジピン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、または酒石酸アンモニウムを含む溶液などを使用すればよい。
【0071】
図4を参照すれば、SAW素子300は、対象物質と結合する収容体48を有しないという点を除くと、SAW素子20と実質的に類似な構成を有し得る。特に、接続部302、304、306、308は、それぞれ、接続部26、28、44、46と実質的に類似な構成を有し得る。また、接続部321、322、330、332は、それぞれ、接続部221、222、230、232と実質的に類似な構成を有し得る。また、接続部323、324、326、328は、それぞれ、接続部223、224、226、228と実質的に類似な構成を有し得る。
【0072】
信号発生器350は、接続部221、222に電気的に連結されてよく、連結部223、224を介してSAW素子20の接続部26、28に電気的に連結され得る。信号発生器350も接続部321、322に電気的に連結されてよく、連結部323、324を介してSAW素子300の接続部302、304に電気的に連結され得る。信号発生器350は、コンピュータ356からの制御信号に反応して電気信号(例えば、発振電気信号)をSAW素子20及びSAW素子300のすべてに提供し、それぞれに第1及び第2SAW波動を発生させることができる。
【0073】
アンプ352は、SAW素子20の接続部230、232に電気的に連結され得る。アンプ352は、SAW素子20からSAW素子20に結合された対象物質の濃度または量を表示する信号を受信して増幅することができる。
【0074】
アンプ354は、SAW素子300の接続部330、332に電気的に連結され得る。アンプ354は、SAW素子300から受信した基準信号を増幅することができる。
【0075】
コンピュータ356は、信号発生器350及びアンプ352、354と電気的に連結され得る。 コンピュータ356は、SAW素子20、300から受信されるべき信号発生器の信号(例えば、電気発振信号)の出力を導くための制御信号を生成することができる。SAW素子20、300は、制御信号に反応し、機械的な波動として知られている第1及び第2SAW波動を発生させることができる。SAW素子20、300は、それぞれ、第1及び第2出力信号を出力でき、それぞれのアンプ352、354によって増幅され得る。コンピュータ356は、増幅されているか、或はアンプ352、354を使用しない際の増幅されていない第1及び第2出力信号を受信し、第1及び第2出力信号に基づいて対象物質の濃度または量を決めることができる。なお、コンピュータ356は、対象物質の量または濃度の値を内部記憶装置あるいは外部記憶装置に貯蔵することもできる。一実施の形態において、コンピュータ356は、第1と第2出力信号間の周波数シフトを用いて検出された対象物質の量または濃度を決めることができる。特に、活性SAW素子20に結合された対象物質により質量変化が生じる場合、活性SAW素子20に結合される対象物質の量が増加することに伴い、第1と第2出力信号の中心周波数の差が増加するようになる。他の実施の形態においては、コンピュータ356は、第1と第2出力信号間の位相変位を用いて検出された対象物質の量または濃度を決めることができる。また他の実施の形態においては、コンピュータ356は、第1と第2信号間の振幅変化を用いて検出された対象物質の量または濃度を決めることができる。
【0076】
上記のように構成されたSAW装置200は、対象物質が含まれた試料に露出され得る。このとき、試料内の対象物質は、SAW素子20に結合され得る。SAW素子20に対象物質が結合されると、前述したようにSAW素子20によって発生される表面弾性波の特性が変化するようになる。
【0077】
また、SAW装置200は、複数のSAW素子を含むことができる。複数のSAW素子の一つであるSAW素子は、対象物質と結合させて対象物質の測定のために使用することができ、他の一つのSAW素子は、対象物質と結合されないようにして基準素子として使用することができる。対象物質が結合されたSAW素子の出力信号を基準素子の出力信号と比較することにより、対象物質を定量的及び定性的に分析することができる。
【0078】
図4及び図5を参照して前述した実施の形態によるSAW装置200では、接続部26、28、44、46及び連結部223、224、226、228の上に酸化膜4が形成されてよい。これにより、接続部26、28、44、46及び連結部223、224、226、228が、電気伝導性を有する液状試料などにさらされても、試料を介して漏れ電流が流れることを防止することができる。
【0079】
また、接続部26、28、44、46及び連結部223、224、226、228の上に、別途の絶縁膜を形成しパターニングする工程を不要とするため、SAW装置を製造するための製造工程を単純化することができる。また、SAW装置の大きさが減少され、パターニング過程において試薬などによって発生し得る汚染を防止することができる。
【0080】
図6は、また他の実施の形態によるSAW装置365を示した断面図である。上記実施の形態によるSAW装置365は、SAW素子20、300に隣接して形成されSAW素子20、300を覆うチャンバ372を含むことができる。
【0081】
図6を参照すれば、上記実施の形態によるSAW装置365におけるSAW素子20、300及び基板201の構成及び機能は、図4及び図5を参照して前述した実施の形態と同一であるため、その詳しい説明を省略する。
【0082】
また、上記SAW装置365は、上記基板201に対向し且つ上記基板201の上部に位置する構造物370を含むことができる。上記構造物370は、SAW素子20と隣接して位置し且つ試料が捕集される空間あるいはチャンバ372を形成することができる。上記構造物370は、チャンバ372を形成するのに適合した物質からなってよく、例えば、ポリマーからなってよい。
【0083】
構造物370の底面には、凹部371を含むことができる。構造物370の凹部371は、SAW素子20、300に隣接して位置すればよい。これにより、チャンバ372は、SAW素子20、300の体積より大きい体積を有することができる。
【0084】
図6において、構造物370のチャンバ371が基板201に隣接して位置し、基板201と構造物370とは所定の間隔dだけ離間して位置してよい。なお、他の実施の形態において、基板201と構造物370とはチャンバ372以外の領域において互いに接合されてもよい。また、構造物370は、凹部371の他、対象物質を含む試料がチャンバ372内に流入されるチャンネルを形成する凹部(図示せず)をさらに含むこともできる。
【0085】
図7は、また他の実施の形態によるSAW装置400を示した平面図であり、図8は、図7に示されたC-C’線に沿う断面図である。
【0086】
図7を参照すれば、上記実施の形態によるSAW装置400は、基板410と、SAW素子400と、接続部421、422、430、432と、SAW素子500、及び接続部510、512、514、516とを含む。SAW素子400は、接続部426、428、444、446を有し、SAW素子500は、接続部502、504、506、508を有する。SAW素子420、500の構成及び機能は、図4及び図5を参照して前述したSAW素子20、300と実質的に類似であるため、詳しい説明を省略する。
【0087】
基板410は、基板410の一部分に形成された一つ以上のホール434を含むことができる。基板410のホール434を介してSAW素子420が露出されてよい。ホール434が形成された基板201を試料に露出させる場合、基板410の下部に位置したSAW素子420がホール434を介して試料に露出されてよい。例えば、基板410において収容体(図1のSAW素子12に例示的に図示される)が位置する部分がホール434を介して試料と接触すればよい。一方、一実施の形態においては、SAW装置400は、基板410上にホール434を覆うように位置する蓋部(図示せず)をさらに含むこともできる。また、基板410は、基板410の一部分だけに形成された一つ以上のホール521を含むことができる。SAW素子500は、基板410のホール521を介して露出されてよい。
【0088】
基板410自体にホール434が形成されているため、SAW素子420は、ホール434内に位置する試料に露出され得る。これにより、ホール434自体が、試料が捕集されるチャンバの機能を果たすことができる。このとき、ホール434の深さ及び大きさは、SAW素子420に対する試料の目的とする露出具合に応じて適切に調節することができる。
【0089】
図8を参照すれば、接続部428、422は、バンプ形状の連結部460によって電気的に連結され得る。バンプとは、曲面体または多面体形状のことを意味する。例えば、連結部460は、曲面体または多面体形状の金属からなってよい。
【0090】
一実施の形態において、連結部460は、接続部428、422を電気的に連結するのみならず、SAW素子420及び基板410を接合するための用途としても使用され得る。例えば、金属から構成された連結部460を接続部428、422に接合することができる。または、連結部460は、半田ボール(solder ball)を含み、連結部460によって接続部428、422を互いに接合することもできる。
【0091】
図9aないし図9cは、一実施の形態によるSAW素子10の製造方法の各段階を示した断面図である。簡単に示すために、SAW素子10の構成要素の一部だけが以下で詳述される。
【0092】
図9aを参照すれば、先ず、接続部28、46を含むSAW素子10、接続部222、232、及び基板201を用意すればよい。簡単に示すために、SAW素子10の残りの接続部は記述しない。
【0093】
また、図9aにおいてSAW素子10及び基板201の構成及び配置形態が、図1及び図5に示された実施の形態と類似に示されているが、これは例示的なものであって、SAW素子10及び基板201は、図7に示された実施の形態、またはその他の形態で構成されたSAW素子10及び基板201を用意してもよい。
【0094】
図9aにおいてSAW素子10は基板201上に位置してよいが、他の実施の形態において、SAW素子10を基板201と離間して位置してもよい。例えば、SAW素子10を、基板201と離間して基板201の上部または下部に位置することもできる。
【0095】
SAW素子10は接続部28、46を含み、基板201は接続部222、232を含むことができる。接続部28、46は、電気信号を伝達することができ、電気が流れることができ且つ表面酸化が可能な物質からなってよい。例えば、各接続部28、46は、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、銅(Cu)、及びクロム(Cr)などのすべての金属または合金からなってよく、このうちの一種以上を含んでなってもよい。
【0096】
図9bを参照すれば、次いで、連結部224によって接続部222、28を電気的に連結することができる。また、連結部228によって接続部46、232を電気的に連結することができる。このため、連結部224、228は、電気が流れることができ且つ表面酸化が可能な物質からなってよい。例えば、連結部224、228は、第1及び第2接続部10、20と同様に、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、銅(Cu)、及びクロム(Cr)などのすべての金属または合金からなってよく、このうちの一種以上を含んでなってもよい。
【0097】
図9bにおいて、連結部224、228のそれぞれは線形状になっているが、これは例示的なものであって、連結部224、228は、電気的な連結に好適な所定の形状を有してよい。例えば、連結部224、228は、曲面体または多面体形状であってよい。また、連結部224、228は、金属または半田ボール(solder ball)を含むこともできる。
【0098】
図9cを参照すれば、次いで、接続部222、28及び連結部224の上に酸化膜420を形成することができる。酸化膜420は、接続部222、28及び連結部224、420を完全に覆うことができる。また、接続部46、232及び連結部228の上に酸化膜241を形成することができる。酸化膜421は、接続部46,232及び連結部228を完全に覆うことができる。
【0099】
一実施の形態において、酸化膜240、241は、乾式酸化によって形成することができる。例えば、各接続部222、28及び連結部224をプラズマに露出させて酸化膜240を形成することができる。また、例えば、各接続部46、232及び連結部228をプラズマに露出させて酸化膜241を形成することができる。特に、酸化膜240、241を形成するために、酸素プラズマを使用すればよい。または、当該接続部及び当該連結部を熱酸化させるか、あるいはオゾンクリーニング法を用いて酸化膜240、241を形成することもできる。
【0100】
また、酸化膜240、241は、湿式酸化によって形成することもできる。例えば、各接続部222、28及び連結部224を過酸化水素に露出させて酸化膜4を形成することができる。また、例えば、各接続部46、232及び連結部228を過酸化水素に露出させて酸化膜241を形成することができる。または、当該接続部及び当該連結部を炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、二酸化鉛(PbO)、二酸化マンガン(MnO)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、または酸化塩素(ClO)などの酸化剤に露出させて酸化膜240、241を形成することもできる。
【0101】
または、接続部222、28及び連結部224を陽極酸化させて酸化膜240を形成することもできる。例えば、接続部222、28及び連結部224を電解質溶液に露出させ、接続部222、28及び連結部224に電力を印加することにより酸化膜240を形成することができる。また、接続部46、232及び連結部228を陽極酸化させて酸化膜241を形成することができる。酸化膜240、241の膜厚は、電解質溶液の温度、印加された電力の大きさ及び電力の印加時間などに基づいて決められてよい。
【0102】
例えば、接続部222、28及び連結部224がアルミニウム(Al)からなる場合、約0.16Mの濃度を有する約20℃の酒石酸アンモニウム水溶液中において約30分間約100Vの電圧を印加することにより酸化膜240を形成することができる。電解質溶液は、硫酸、シュウ酸、クロム酸、ホウ酸、ホウ砂、アジピン酸アンモニウム、またはリン酸アンモニウムを含む溶液であればよい。類似な方式により接続部46、232及び連結部228の上に酸化膜241を形成することができる。
【0103】
以上のようにして酸化膜240、241を形成すれば、SAW素子20またはSAW素子20を含むSAW装置10が液体試料にさらされても接続部222、28及び連結部224は酸化膜240によって電気的に絶縁状態となり、接続部46、232及び連結部228は酸化膜241によって電気的に絶縁状態となる。これにより、電流が流れ得る液状試料などを使用する場合も、接続部222、28、46、232及び連結部224、228から試料を介して漏れ電流が発生することを防止することができる。
【0104】
上述した本発明は、図面に示された実施の形態を参考にして説明したが、これは例示的なものに過ぎず、当該分野における通常の知識を有する者であればそれら実施の形態の各種の変形及び修正が可能であることが理解できるであろう。なお、かかる変形は本発明の技術的保護範囲内にあると見なされるべきである。したがって、本発明の真正な技術的保護範囲は特許請求の範囲の技術的思想によって決められるべきである。
【符号の説明】
【0105】
10 表面弾性波素子、
20 基板、
223、224、226、228 連結部、
24、42 酸化膜、
26、28、44、46 接続部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電物質からなる基板と、
前記基板上に位置し互いに離間する複数の第1電極と、
前記基板上に前記第1電極と離間して位置し、互いに離間する複数の第2電極、及び
前記複数の第1電極上及び前記複数の第2電極上に形成された酸化膜と、を含むことを特徴とする表面弾性波素子。
【請求項2】
前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極は、表面酸化が可能な導電性物質を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の表面弾性波素子。
【請求項3】
前記導電性物質は、金属及び合金のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載の表面弾性波素子。
【請求項4】
前記導電性物質は、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、銅(Cu)、及びクロム(Cr)のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項3に記載の表面弾性波素子。
【請求項5】
前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極は、くし型電極であることを特徴とする請求項1に記載の表面弾性波素子。
【請求項6】
圧電物質からなる基板と、前記基板上に位置し互いに離間する複数の第1電極、及び前記基板上に前記複数の第1電極と離間して位置し互いに離間する複数の第2電極とを用意する段階、及び
前記複数の第1電極上及び前記複数の第2電極上に酸化膜を載置する段階を含むことを特徴とする表面弾性波素子の製造方法。
【請求項7】
前記酸化膜を載置する段階は、前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極を乾式酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項6に記載の表面弾性波素子の製造方法。
【請求項8】
前記酸化膜を載置する段階は、前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極をプラズマ及びオゾンのうちの少なくとも一種により酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項7に記載の表面弾性波素子の製造方法。
【請求項9】
前記酸化膜を載置する段階は、前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極を熱酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項7に記載の表面弾性波素子の製造方法。
【請求項10】
前記酸化膜を載置する段階は、前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極を湿式酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項6に記載の表面弾性波素子の製造方法。
【請求項11】
前記酸化膜を載置する段階は、前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極を陽極酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項10に記載の表面弾性波素子の製造方法。
【請求項12】
前記酸化膜を載置する段階は、前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極を過酸化水素(H)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、二酸化鉛(PbO)、二酸化マンガン(MnO)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、及び酸化塩素(ClO)のうちの少なくとも一種により酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項10に記載の表面弾性波素子の製造方法。
【請求項13】
第1接続部を含む表面弾性波素子と、
第2接続部を含む第1基板と、
前記第1接続部と前記第2接続部とを電気的に連結する連結部、及び
前記第1接続部、前記第2接続部、及び前記連結部の上に載置する酸化膜と、を含むことを特徴とする表面弾性波装置。
【請求項14】
前記第1接続部、前記第2接続部、及び前記連結部は、表面酸化が可能な導電性物質を含んでなることを特徴とする請求項13に記載の表面弾性波装置。
【請求項15】
前記導電性物質は、金属または合金であることを特徴とする請求項14に記載の表面弾性波装置。
【請求項16】
前記導電性物質は、アルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、銅(Cu)、及びクロム(Cr)のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項15に記載の表面弾性波装置。
【請求項17】
前記連結部は、線形状、曲面体形状、及び多面体形状のうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項13に記載の表面弾性波装置。
【請求項18】
前記表面弾性波素子は、
圧電物質を含む第2基板と、
前記第2基板上に位置し互いに離間する複数の第1電極と、
前記基板上に前記第1電極と離間して位置し、互いに離間する複数の第2電極、及び
前記複数の第1電極上及び前記複数の第2電極上に形成された酸化膜と、をさらに含み、
前記第1接続部は、前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極に一体化されたことを特徴とする請求項13に記載の表面弾性波装置。
【請求項19】
第1接続部を含む表面弾性波素子及び第2接続部を含む基板を用意する段階と、
前記第1接続部と前記第2接続部とを連結部により電気的に連結する段階、及び
前記第1接続部、前記第2接続部、及び前記連結部の上に酸化膜を載置する段階と、を含むことを特徴とする表面弾性波装置の製造方法。
【請求項20】
前記酸化膜を載置する段階は、前記第1接続部、前記第2接続部、及び前記連結部を乾式酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項19に記載の表面弾性波装置の製造方法。
【請求項21】
前記酸化膜を載置する段階は、前記第1接続部、前記第2接続部、及び前記連結部をプラズマ及びオゾンのうちの少なくとも一種により酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項20に記載の表面弾性波装置の製造方法。
【請求項22】
前記酸化膜を載置する段階は、前記第1接続部、前記第2接続部、及び前記連結部を熱酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項20に記載の表面弾性波装置の製造方法。
【請求項23】
前記酸化膜を載置する段階は、前記第1接続部、前記第2接続部、及び前記連結部を湿式酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項19に記載の表面弾性波装置の製造方法。
【請求項24】
前記酸化膜を載置する段階は、前記第1接続部、前記第2接続部、及び前記連結部を陽極酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項23に記載の表面弾性波装置の製造方法。
【請求項25】
前記酸化膜を載置する段階は、前記第1接続部、前記第2接続部、及び前記連結部を過酸化水素(H)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、二酸化鉛(PbO)、二酸化マンガン(MnO)、過マンガン酸カリウム(KMnO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、及び酸化塩素(ClO)のうちの少なくとも一種により酸化させる段階を含むことを特徴とする請求項23に記載の表面弾性波装置の製造方法。
【請求項26】
圧電物質から構成される基板と、
前記基板上に位置し、複数の第1電極を有する第1くし型電極及び複数の第2電極を有する第2くし型電極と、
前記複数の第1電極上及び第2電極上に位置する第1及び第2酸化膜、及び
前記基板上に位置し対象物質と結合される検知領域と、を含み、
前記複数の第1電極は、第1電気信号に反応して前記基板上に表面弾性波を発生し、前記複数の第2電極は、前記表面弾性波を受信することに反応して第2電気信号を発生し、前記第2電気信号は、前記検知領域に結合された対象物質の量を表示することを特徴とする表面弾性波素子。
【請求項27】
前記検知領域に接触する対象物質は液体内に位置し、前記第1及び第2酸化膜は前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極のそれぞれから前記液体に漏れ電量が流れることを防止することを特徴とする請求項26に記載の表面弾性波素子。
【請求項28】
前記基板上に位置し、前記複数の第1電極と直接連結される第1金属パッドをさらに含み、前記第1金属パッド上に前記第1酸化膜がさらに位置することを特徴とする請求項26に記載の表面弾性波素子。
【請求項29】
前記基板上に位置する第2金属パッド、及び、
前記第2金属パッドを前記第1金属パッドに連結する金属ワイヤをさらに含み、
前記第2金属パッド及び前記金属ワイヤの上に前記第1酸化膜がさらに位置することを特徴とする請求項26に記載の表面弾性波素子。
【請求項30】
圧電物質から構成された基板上において、複数の第1電極を有する第1くし型電極及び複数の第2電極を有する第2くし型電極を載置する段階と、
前記複数の第1電極上に第1酸化膜を載置する段階、及び
前記複数の第2電極上に第2酸化膜を載置する段階と、を含むことを特徴とする表面弾性波装置の製造方法。
【請求項31】
前記基板上において、前記複数の第1電極と直接連結される第1金属パッドを載置する段階をさらに含み、前記第1金属パッド上に前記第1酸化膜がさらに位置することを特徴とする請求項30に記載の表面弾性波装置の製造方法。
【請求項32】
前記基板上に第2金属パッドを載置する段階、及び
前記第1及び第2金属パッドに金属ワイヤを連結する段階をさらに含み、
前記第2金属パッド及び前記金属ワイヤの上に前記第1酸化膜がさらに位置することを特徴とする請求項31に記載の表面弾性波装置の製造方法。
【請求項33】
圧電物質から構成された基板と、
第1及び第2くし型電極、第1及び第2酸化膜及び検知領域を含む第1表面弾性波素子であって、前記第1くし型電極は前記基板上に位置し複数の第1電極を含み、前記第2くし型電極は前記基板上に位置し複数の第2電極を含み、前記第1及び第2酸化膜は前記複数の第1及び第2電極のそれぞれに位置し、前記検知領域は前記基板上に位置し対象物質と結合する第1表面弾性波素子、及び
第3及び第4くし型電極及び第3及び第4酸化膜を含み且つ検知領域を含まない第2表面弾性波素子であって、前記第3くし型電極は前記基板上に位置し複数の第3電極を含み、前記第4くし型電極は前記基板上に位置し複数の第4電極を含み、前記第3及び第4酸化膜は前記複数の第3及び第4電極のそれぞれに位置する第2表面弾性波素子と、を含み、
前記複数の第1電極は第1電気信号に反応して前記基板上に第1表面弾性波を発生し、前記複数の第2電極は前記第1表面弾性波を受信することに反応して第2電気信号を発生し、
前記複数の第3電極は第3電気信号に反応して前記基板上に第2表面弾性波を発生し、前記複数の第4電極は前記第2表面弾性波を受信することに反応して第4電気信号を発生し、
前記第2電気信号の第1変数及び第4電気信号の第2変数の差が前記検知領域に結合された前記対象物質の量を表示することを特徴とする表面弾性波装置。
【請求項34】
前記検知領域に接触する対象物質は液体内に位置し、前記第1及び第2酸化膜は前記複数の第1電極及び前記複数の第2電極のそれぞれから前記液体に漏れ電流が流れることを防止することを特徴とする請求項33に記載の表面弾性波装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図3d】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9a】
image rotate

【図9b】
image rotate

【図9c】
image rotate


【公開番号】特開2010−114880(P2010−114880A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192122(P2009−192122)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】