表面形状計測装置
【課題】散乱光の空間分布がマイクロラフネスの差異に応じて、前方/後方/側方と色々な方向に変化することについて配慮し、特にエピタキシャル成長ウェハに出現するステップ・テラス構造は散乱光分布に異方性が生じることに配慮した表面形状計測装置を提供する。
【解決手段】試料1表面に光を照明し、光軸の方向が互いに異なる複数の検出光学系51,52により散乱光の空間分布を検出し、試料1表面の空間周波数スペクトルを算出する。
【解決手段】試料1表面に光を照明し、光軸の方向が互いに異なる複数の検出光学系51,52により散乱光の空間分布を検出し、試料1表面の空間周波数スペクトルを算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の形状を得るための表面形状計測装置に関する。例えば、本発明は光散乱法を用いる表面形状計測装置に係り、特に、半導体デバイス製造工程におけるウェハ表面などのマイクロラフネスの計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い、ベアウェハや膜付ウェハの表面のマイクロラフネスが電気特性に及ぼす影響が、増大している。マイクロラフネスは、研磨、洗浄、成膜、熱処理などのプロセスで発生するので、デバイスの高性能化・歩留まり向上のため、プロセスごとにウェハ表面のマイクロラフネスを計測し、プロセス条件を適正に管理する必要がある。
【0003】
マイクロラフネスは、高さがサブナノメータオーダからナノメータオーダと非常に小さいので、一般にはAFM(原子間力顕微鏡)を用いて3次元座標を計測している。しかし、AFMは計測に長時間を要するので、ウェハ全面を計測するのは実質的に不可能である。
【0004】
一方、マイクロラフネスは光散乱と相関があることが、従来から知られている。光散乱法を用いるマイクロラフネス計測装置は、例えば米国特許公報7286218号公報(特許文献5)に開示されている。
【0005】
その他の先行技術としては、特許文献1乃至4、6及び7が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平9−503299号公報
【特許文献2】特開平7−333164号公報
【特許文献3】特開2010−223770号公報
【特許文献4】特表2007−500881号公報
【特許文献5】米国特許第7286218号公報
【特許文献6】米国特許第5428442号公報
【特許文献7】特開2008−278515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5では、検出光学系の検出空間をマイクロラフネスの空間周波数領域に対応付けており、空間周波数領域ごとにマイクロラフネス評価が可能である。しかし、空間周波数領域の数は検出光学系の数(実施例は6個)と同じなので、空間周波数の刻みが粗いという点には配慮がなされていない。
【0008】
また、散乱光の空間分布はマイクロラフネスの差異に応じて、前方/後方/側方と色々な方向に変化するが、検出空間に入らない情報の変化については、配慮がなされていない。
【0009】
また、エピタキシャル成長ウェハに出現するステップ・テラス構造は、特定の方向の特定の空間周波数で鋭いピークを有する。このため、ステップ・テラス構造による散乱光強度は、特定の狭い方向にピークを生じる。従来技術では、上記ピークは近傍の空間周波数成分による散乱光強度に埋もれてしまうと言う点には配慮がなされていない。
【0010】
本発明の目的は、ウェハ全面で色々なマイクロラフネスの計測が可能な、高精度の表面形状計測装置とその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、表面の形状に関連する空間周波数スペクトルを連続的に得ることを特徴とする。
【0012】
本発明は、試料の表面に光を照明し、前記試料表面からの散乱光を複数の検出光学系により検出し、前記の複数の検出信号から前記試料表面の形状を計測する表面形状計測装置において、前記検出光学系の光軸の方向が互いに異なること、前記試料表面の空間周波数スペクトルを算出する処理を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明は、前記照明光はスポットビームであり、前記試料の回転移動と直線移動により、前記照明光が前記試料表面を走査することを特徴とする。
【0014】
本発明は、少なくとも前記の2つの検出光学系の光軸は入射面に平行な面内にあることを特徴とする。
【0015】
本発明は、少なくとも前記の2つの検出光学系の光軸は入射面に平行な面内にあること、少なくとも前記の2つの検出光学系の光軸は入射面に垂直な面内にあることを特徴とする。
【0016】
本発明は、既知の表面形状の空間周波数スペクトルと検出信号との関係を予めライブラリに記録し、前記試料表面からの前記検出信号を前記ライブラリと比較し、前記試料表面の空間周波数スペクトルを算出する処理を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明は、前記検出器の全ての検出信号の総和を計算する処理と、それぞれの検出信号と前記検出信号の総和との比(信号比率)を計算する処理とを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明は、前記空間周波数スペクトルを用いて、前記試料表面の所定の特徴量を算出する処理を含み、前記試料表面の全体または所定の領域における前記特徴量のマップを出力することを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記特徴量は少なくとも、所定の空間周波数領域における表面粗さ、または前記空間周波数スペクトルのカットオフ空間周波数またはピーク空間周波数、または前記試料表面を形成する膜の厚さであることを特徴とする。
【0020】
本発明は、前記試料表面の所定の位置で、前記空間周波数スペクトルを用いて前記試料表面の高さを算出する処理を含み、前記所定位置の3次元形状を出力することを特徴とする。
【0021】
本発明は、試料の表面に光を照明し、前記試料表面からの散乱光を複数の検出光学系により検出し、前記の複数の検出信号から前記試料表面の形状を計測する表面形状計測方法において、前記検出光学系の光軸の方向が互いに異なること、前記試料表面の空間周波数スペクトルを算出する処理を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来よりも詳しい表面の形状を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の表面形状計測装置の構成を示す図である。
【図2】実施例1の表面形状計測のフローを示す図である。
【図3】マイクロラフネスの空間周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図4】マイクロラフネスによる散乱光の空間分布の一例を示す図である。
【図5】実施例1の検出光学系の配置を示す図である。
【図6】ABC型関数の空間周波数スペクトルを示す図である。
【図7】ABC型関数の空間周波数スペクトルを算出するフローを示す図である。
【図8】ウェハ全面におけるRMS粗さのマップの一例を示す図である。
【図9】マイクロラフネスの3次元形状の一例を示す図である。
【図10】異方性のマイクロラフネスの空間周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図11】第2の実施例を説明する図である。
【図12】第3の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の一実施例として、半導体デバイス製造におけるウェハ表面のマイクロラフネスの表面形状計測装置について説明する。
【0026】
表面形状計測装置の概略構成を図1に示す。主な構成要素は、ウェハ1を搭載するステージ2、光源3、レンズ、ミラー等を有する照明光学系4、レンズ、ミラー等を有する検出光学系51〜55(53〜55は図示しない)、光検出器61〜65(63〜65は図示しない)、信号処理系7、制御系8、および操作系9である。
【0027】
次に図2を用いて本実施例での表面形状の計測フローについて説明する。
【0028】
光源3から放射される所定の波長の光を、偏光フィルタ(図示しない)により所定の偏光とする。照明光学系4により所定のサイズのスポットビームを形成し、所定の入射角でウェハ1を照明する。ウェハ表面にはマイクロラフネスが存在するので、散乱光が発散する。検出光学系51〜55により、散乱光をそれぞれ光検出器61〜65に集光する。検出光学系の光軸の方向は互いに異なるので、検出信号の集合は散乱光強度の空間分布を反映している。つまり、本実施例の表面形状計測装置では、散乱光の空間分布を得ることができる(図2の201)。なお、ウェハ表面からの正反射光は検出しないように、検出光学系を配置している。検出信号をAD変換器(図示しない)によりデジタル信号に変換し、信号処理系7に伝送する。
【0029】
信号処理系7の内部にはライブラリを保存した記憶媒体があり、多数の既知のマイクロラフネスについて、空間周波数スペクトルと前記の光学条件における検出信号との関係が、記録されている。ここで、空間周波数スペクトルとは、表面形状を3次元座標(X,Y,Z)で表現するとき、高さZを(X,Y)に関して2次元フーリエ変換し、その振幅を二乗したものである。そして、伝送された検出信号をライブラリの検出信号と比較し、最も類似している空間周波数スペクトルを算出する(図2の202)。空間周波数スペクトルの算出については後述するが、このように得た空間周波数スペクトルは後述する図3、図6、図10のように連続的なものとなる。次に、空間周波数スペクトルを用いてマイクロラフネスの特徴量を算出し(図2の203)、制御系8に伝送する。なお、特徴量の算出については、後述する。
【0030】
このように局所的にマイクロラフネスを計測しながら、スポットビームがウェハ全面または所定の領域を走査するように、ステージを移動する。そして、ウェハ全面または所定の領域の走査終了後(図2の204)、特徴量のマップを操作系9に表示する(図2の205)。図2は、以上のマイクロラフネス計測のフローを示す。
【0031】
前記実施例の光源3は、可視光領域、紫外光領域、および遠紫外光領域のレーザや発光ダイオードなどの単一波長光源を使用できる。また、水銀ランプやキセノンランプなどの連続波長光源を使用しても良い。この場合、波長フィルタにより、試料表面に応じて適切な単一波長光を選択できる。
【0032】
また、前記実施例の照明光の偏光は、s偏光やp偏光などの直線偏光、円偏光、楕円偏光を選択できる。スポットビームのサイズは、出力する特徴量の空間分解能に応じて選択できる。照明光の入射角は、斜入射と直入射を選択できる。
【0033】
また、前記実施例の検出光学系51〜55は、レンズから成る屈折型、ミラーから成る反射型、ミラーとレンズを組み合わせた反射・屈折型、およびフレネルゾーンプレートなどの回折型を使用できる。
【0034】
また、光検出器61〜65としては、光電子増倍管、マルチピクセルフォトンカウンター、アバランシェフォトダイオードアレイ等が使用できる。
【0035】
また、前記実施例のライブラリは、テストウェハを用いて作成できる。テストウェハとは、研磨、洗浄、成膜、熱処理などのプロセスにおいて、プロセス条件を意図的に変えて作製したものである。テストウェハ表面のサンプリング位置で、AFMを用いてマイクロラフネスを計測し、表面形状の空間周波数スペクトルを算出する。そして、テストウェハを本実施例の形状計測装置に搭載し、前記サンプリング位置で光学的な検出信号を取得する。このように、既知のマイクロラフネスについて、表面形状の空間周波数スペクトルと光学的な検出信号との関係を記録できる。また、前記の空間周波数スペクトルを用いて、数値シミュレーションにより検出信号を予測することもできる。空間周波数スペクトルと表面材料の屈折率、および照明条件を入力データとし、BRDF法(Bidirectional Reflectance Distribution Function)を用いて、散乱光の空間分布を計算する。そして、散乱光の空間分布を用いて、検出光学系が集光する散乱光の強度、すなわち検出信号を予測できる。
【0036】
また、前記実施例のステージ2は、回転移動と直線移動の組合せ、または直交する直線移動の組合せが可能である。
【0037】
次に、本発明の計測装置により、マイクロラフネスの計測精度が向上することを説明する。一般に、マイクロラフネスは色々な空間周波数の粗さの集合であり、空間周波数スペクトルは空間周波数ごとの粗さの大きさを表わしている。図3は、プロセス条件の差異に対応する2つの空間周波数スペクトルS1、S2を示す。空間周波数スペクトルS2はS1に比べて、高い空間周波数領域まで粗さが存在している。
【0038】
図4は、空間周波数スペクトルS1、S2に対応するマイクロラフネスによる散乱光強度の空間分布を示す(天球面上の分布をウェハ表面に平行な平面に投影)。空間周波数スペクトルS2はS1に比べて、散乱光の強い領域が照明光の方向に対して後方に寄っていることが分かる。つまり、マイクロラフネスの空間周波数スペクトルが変化すると、散乱光の強い領域は入射面(ウェハ1表面の法線と照明光の主光線とを含む平面)に平行な方向に移動するのである。
【0039】
このような散乱光分布の変化を検出するために、本実施例の検出光学系51〜55は、図5のように配置される。図5は、本実施例の検出光学系配置の一例である(図5では、天球面上の開口をウェハ1表面に平行な平面に投影している)。検出光学系51〜55の各検出開口101〜105の中心、すなわち検出光学系の光軸は、入射面内にある。これは、他の表現としては、入射面のウェハ1への投影線は、ウェハ1に投影される検出開口101〜105の投影像を、通過すると表現することもできる。このような配置によって、散乱光の強い領域が入射面に平行な方向に移動すると、散乱光分布の変化を敏感に検出できる。その結果、空間周波数スペクトルの変化を敏感に捉えることが可能となり、マイクロラフネスの計測精度が向上する。
【0040】
次に、マイクロラフネスの空間周波数スペクトルの算出について説明する。一般に、マイクロラフネスの空間周波数スペクトルは、いくつかのパラメータを含む関数でフィッティングできることが多い。典型的なフィッティング関数は、式(1)のABC型関数である。
P=A/(1+(Bf)2)C/2 …(1)
【0041】
ここで、Pはパワー、fは空間周波数であり、Aは低空間周波数側のパワー、Bはカットオフ、Cはスペクトルの傾きに関係する。図6は、ABC型関数の空間周波数スペクトルを示している。空間周波数スペクトルの算出は、パラメータA、B、Cを求めることに帰着する。
【0042】
図7は、ABC型関数の空間周波数スペクトルの算出フローを示す。まず、検出器の全ての検出信号の総和を計算する(701)。次に、それぞれの検出信号と検出信号の総和との比、すなわち信号比率を計算する(702)。そして、信号比率を信号比率ライブラリと比較し、パラメータB、Cを算出する(703)。最後に、パラメータB、Cと信号総和を信号総和ライブラリと比較し、パラメータAを算出する(704)。上記のパラメータの算出は、最小二乗法などの数値計算により行うことができる。このように、空間周波数スペクトルをパラメータで表現することにより、データ容量を圧縮できるので、全測定位置の空間周波数スペクトルデータを保存できる。
【0043】
次に、マイクロラフネスの特徴量の算出と出力について説明する。オペレータは、プロセスに応じて注目する特徴量を選択する。特徴量は例えば、注目する空間周波数領域におけるRMS粗さ、空間周波数スペクトルのカットオフ空間周波数やピーク空間周波数などである。RMS粗さは、空間周波数スペクトルを当該空間周波数領域で積分して算出する。本実施例では、空間周波数の連続関数として空間周波数スペクトルを算出しているので、当該空間周波数領域は任意に設定できる。図8は、ウェハ全面におけるRMS粗さのマップの一例を示す。RMS粗さのマップにより、プロセス条件が適正か否かが判明する。
また、カットオフ空間周波数やピーク空間周波数は、空間周波数スペクトルの解析により算出する。本実施例では、空間周波数の連続関数として空間周波数スペクトルを算出しているので、高い空間周波数分解能にて解析できる。カットオフ空間周波数のマップにより、どのくらい高い空間周波数領域の粗さが存在しているかが判明する。また、ピーク空間周波数のマップにより、ステップ・テラス構造のような、特定方向かつ特定空間周波数のマイクロラフネスが存在するか否かが判明する。
【0044】
次に、マイクロラフネスの3次元形状の算出と出力について説明する。オペレータは、前記の特徴量のマップを参照して、ウェハ上の注目する位置を指定する。また、オペレータは、注目する空間周波数領域を指定する。信号処理系は、当該位置の空間周波数スペクトルを用いて、当該空間周波数領域でフーリエ逆変換を行い、3次元形状、及び3次元形状の座標(X,Y,Z)を算出する。本実施例では、空間周波数の連続関数として空間周波数スペクトルを算出しているので、当該空間周波数領域は任意に設定できる。座標データは操作系に伝送され、指定位置の3次元形状が表示される。図9は、ウェハ表面の3次元形状の一例を示す。このような表示により、オペレータはマイクロラフネスを視覚的に認識できる。
【0045】
ここで、3次元形状には例えば表面の粒径が含まれるわけであるが、表面の粒径の位相はランダムである。そこで、3次元形状を得るに当たっては、乱数を発生させてフーリエ逆変換することも可能である。この乱数を用いたフーリエ逆変換についてより詳細に説明する。乱数を用いたフーリエ逆変換に当たっては、以下のフローを用いる。
(1)パワースペクトルの平方根を取って、振幅Aとする。
(2)位相Φを乱数で発生させる。
(3)複素振幅A*(cosΦ+i*sinΦ)をフーリエ逆変換する。
【0046】
なお、ウェハ表面は、単層構造でも多層構造でも良い。多層構造で上層が透明の場合、上層と下層との界面のマイクロラフネスも計測できる。また、多層構造で上層が透明の場合、上層の膜厚も計測できる。
【実施例2】
【0047】
次に実施例2について説明する。実施例2は、異方性のマイクロラフネスについても計測精度が向上する実施例である。実施例2では、実施例1と異なる部分について主に説明する。
【0048】
エピタキシャル成長ウェハに出現するステップ・テラス構造は、特定の方向に特定の空間周波数を有している。図10は、エピタキシャル成長ウェハのマイクロラフネスの2つの空間周波数スペクトルS3、S4を示す。空間周波数スペクトルS3はステップ・テラス構造の出現しない方向であり、空間周波数スペクトルS4はステップ・テラス構造の出現する方向である。ステップ・テラス構造では、特定の方向の特定の空間周波数において、空間周波数スペクトルに鋭い特異なピーク601が出現している。このピーク601がステップ・テラス構造に対応したものである。
【0049】
このような異方性のマイクロラフネスによる散乱光の空間分布を検出するのに適した検出光学系配置の一実施例を図11に示す(天球面上の開口をウェハ表面に平行な平面に投影)。つまり、本実施例2の表面形状計測装置は、13個の検出光学系、それらに対応した13個の光検出器を有する。図11の検出開口101〜113は、13個の検出光学系それぞれの検出開口である。
【0050】
本実施例2の検出開口101〜105の中心、すなわち検出光学系の光軸は、入射面内にある。また、検出開口107と109の中心、検出開口110と112の中心は、それぞれ入射面に平行な面内にある。また、検出開口103、106、108、111、113の中心は、入射面に垂直な平面内にある。また、検出開口107と110の中心、検出開口109と112の中心は、それぞれ入射面に垂直な面内にある。
【0051】
これは、他の表現としては、検出開口101〜105の中心は、前記照明光学系の入射面内にあり、かつ検出開口101の中心と検出開口105の中心とは入射面に垂直な面に関して対称であり、検出開口102の中心と検出開口104の中心とは前記入射面に垂直な面に関して対称であると表現することができる。また、検出開口106の中心、及び検出開口113の中心は、入射面に垂直な面内にあり、かつ前記入射面に関して対称であると表現することもできる。また、検出開口108の中心、及び検出開口111の中心は、入射面に垂直な面内にあり、かつ前記入射面に関して対称であると表現することもできる。さらに、検出開口107の中心、及び検出開口109の中心は、前記入射面に対して平行な第1の面内にあり、前記垂直な面に関して対称であると表現することができる。さらに、検出開口110の中心、及び検出開口112の中心は、前記入射面に対して平行な第2の面内にあり、前記垂直な面に関して対称であると表現することができる。そして、この第1の面、及び第2の面は、前記入射面に関して対称であると表現することができる。
【0052】
このような検出光学系配置により、色々な方向の散乱光分布の変化を敏感に検出できる。その結果、色々な方向の空間周波数スペクトルの変化を敏感に捉えることが可能となり、異方性のマイクロラフネスの計測精度が向上する。
【実施例3】
【0053】
次に、実施例3について説明する。実施例3は、実施例1、及び実施例2において、さらに空間周波数の分解能を向上させるものである。
【0054】
ウェハ1の表面に対して光1201を照明する点は、実施例1、及び実施例2と同様である。本実施例3では、実施例1、及び実施例2で言及した検出光学系をフーリエ変換光学系1202に置き換えるものである。フーリエ変換光学系1202は、ウェハ1からの散乱光1203、1204を集光するフーリエ変換レンズ1205、フーリエ変換レンズ1205によって平行化された平行光1206を検出する2次元センサ1207によって検出するものである。2次元センサとしては、電荷結合素子(CCD)、時間遅延積分センサ(TDI)、マルチピクセルフォトンカウンター、アバランシェフォトダイオードアレイ等を使用できる。
【0055】
実施例3では、2次元センサ1207によって光を検出した後は、実施例1、及び2と同様の処理が施される。
【0056】
実施例3では、検出光学系に入射する散乱光の強度分布を検出できるので、さらに空間周波数分解能を向上させることができる。このため、ステップ・テラス構造の散乱光のような、特定方向の鋭いピークを検出するのに有効である。
【0057】
本発明の計測装置により、半導体製造のプロセスごとに、ウェハ表面全体のマイクロラフネスを高精度で計測し、プロセス条件を適正に管理できる。
【0058】
また、本発明の計測装置は、磁気記憶媒体などのマイクロラフネスの計測にも広く適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ウェハ
2 ステージ
3 光源
4 照明光学系
7 信号処理系
8 制御系
9 操作系
51〜55 検出光学系
61〜65 光検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面の形状を得るための表面形状計測装置に関する。例えば、本発明は光散乱法を用いる表面形状計測装置に係り、特に、半導体デバイス製造工程におけるウェハ表面などのマイクロラフネスの計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い、ベアウェハや膜付ウェハの表面のマイクロラフネスが電気特性に及ぼす影響が、増大している。マイクロラフネスは、研磨、洗浄、成膜、熱処理などのプロセスで発生するので、デバイスの高性能化・歩留まり向上のため、プロセスごとにウェハ表面のマイクロラフネスを計測し、プロセス条件を適正に管理する必要がある。
【0003】
マイクロラフネスは、高さがサブナノメータオーダからナノメータオーダと非常に小さいので、一般にはAFM(原子間力顕微鏡)を用いて3次元座標を計測している。しかし、AFMは計測に長時間を要するので、ウェハ全面を計測するのは実質的に不可能である。
【0004】
一方、マイクロラフネスは光散乱と相関があることが、従来から知られている。光散乱法を用いるマイクロラフネス計測装置は、例えば米国特許公報7286218号公報(特許文献5)に開示されている。
【0005】
その他の先行技術としては、特許文献1乃至4、6及び7が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平9−503299号公報
【特許文献2】特開平7−333164号公報
【特許文献3】特開2010−223770号公報
【特許文献4】特表2007−500881号公報
【特許文献5】米国特許第7286218号公報
【特許文献6】米国特許第5428442号公報
【特許文献7】特開2008−278515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5では、検出光学系の検出空間をマイクロラフネスの空間周波数領域に対応付けており、空間周波数領域ごとにマイクロラフネス評価が可能である。しかし、空間周波数領域の数は検出光学系の数(実施例は6個)と同じなので、空間周波数の刻みが粗いという点には配慮がなされていない。
【0008】
また、散乱光の空間分布はマイクロラフネスの差異に応じて、前方/後方/側方と色々な方向に変化するが、検出空間に入らない情報の変化については、配慮がなされていない。
【0009】
また、エピタキシャル成長ウェハに出現するステップ・テラス構造は、特定の方向の特定の空間周波数で鋭いピークを有する。このため、ステップ・テラス構造による散乱光強度は、特定の狭い方向にピークを生じる。従来技術では、上記ピークは近傍の空間周波数成分による散乱光強度に埋もれてしまうと言う点には配慮がなされていない。
【0010】
本発明の目的は、ウェハ全面で色々なマイクロラフネスの計測が可能な、高精度の表面形状計測装置とその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、表面の形状に関連する空間周波数スペクトルを連続的に得ることを特徴とする。
【0012】
本発明は、試料の表面に光を照明し、前記試料表面からの散乱光を複数の検出光学系により検出し、前記の複数の検出信号から前記試料表面の形状を計測する表面形状計測装置において、前記検出光学系の光軸の方向が互いに異なること、前記試料表面の空間周波数スペクトルを算出する処理を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明は、前記照明光はスポットビームであり、前記試料の回転移動と直線移動により、前記照明光が前記試料表面を走査することを特徴とする。
【0014】
本発明は、少なくとも前記の2つの検出光学系の光軸は入射面に平行な面内にあることを特徴とする。
【0015】
本発明は、少なくとも前記の2つの検出光学系の光軸は入射面に平行な面内にあること、少なくとも前記の2つの検出光学系の光軸は入射面に垂直な面内にあることを特徴とする。
【0016】
本発明は、既知の表面形状の空間周波数スペクトルと検出信号との関係を予めライブラリに記録し、前記試料表面からの前記検出信号を前記ライブラリと比較し、前記試料表面の空間周波数スペクトルを算出する処理を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明は、前記検出器の全ての検出信号の総和を計算する処理と、それぞれの検出信号と前記検出信号の総和との比(信号比率)を計算する処理とを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明は、前記空間周波数スペクトルを用いて、前記試料表面の所定の特徴量を算出する処理を含み、前記試料表面の全体または所定の領域における前記特徴量のマップを出力することを特徴とする。
【0019】
本発明は、前記特徴量は少なくとも、所定の空間周波数領域における表面粗さ、または前記空間周波数スペクトルのカットオフ空間周波数またはピーク空間周波数、または前記試料表面を形成する膜の厚さであることを特徴とする。
【0020】
本発明は、前記試料表面の所定の位置で、前記空間周波数スペクトルを用いて前記試料表面の高さを算出する処理を含み、前記所定位置の3次元形状を出力することを特徴とする。
【0021】
本発明は、試料の表面に光を照明し、前記試料表面からの散乱光を複数の検出光学系により検出し、前記の複数の検出信号から前記試料表面の形状を計測する表面形状計測方法において、前記検出光学系の光軸の方向が互いに異なること、前記試料表面の空間周波数スペクトルを算出する処理を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従来よりも詳しい表面の形状を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の表面形状計測装置の構成を示す図である。
【図2】実施例1の表面形状計測のフローを示す図である。
【図3】マイクロラフネスの空間周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図4】マイクロラフネスによる散乱光の空間分布の一例を示す図である。
【図5】実施例1の検出光学系の配置を示す図である。
【図6】ABC型関数の空間周波数スペクトルを示す図である。
【図7】ABC型関数の空間周波数スペクトルを算出するフローを示す図である。
【図8】ウェハ全面におけるRMS粗さのマップの一例を示す図である。
【図9】マイクロラフネスの3次元形状の一例を示す図である。
【図10】異方性のマイクロラフネスの空間周波数スペクトルの一例を示す図である。
【図11】第2の実施例を説明する図である。
【図12】第3の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明の一実施例として、半導体デバイス製造におけるウェハ表面のマイクロラフネスの表面形状計測装置について説明する。
【0026】
表面形状計測装置の概略構成を図1に示す。主な構成要素は、ウェハ1を搭載するステージ2、光源3、レンズ、ミラー等を有する照明光学系4、レンズ、ミラー等を有する検出光学系51〜55(53〜55は図示しない)、光検出器61〜65(63〜65は図示しない)、信号処理系7、制御系8、および操作系9である。
【0027】
次に図2を用いて本実施例での表面形状の計測フローについて説明する。
【0028】
光源3から放射される所定の波長の光を、偏光フィルタ(図示しない)により所定の偏光とする。照明光学系4により所定のサイズのスポットビームを形成し、所定の入射角でウェハ1を照明する。ウェハ表面にはマイクロラフネスが存在するので、散乱光が発散する。検出光学系51〜55により、散乱光をそれぞれ光検出器61〜65に集光する。検出光学系の光軸の方向は互いに異なるので、検出信号の集合は散乱光強度の空間分布を反映している。つまり、本実施例の表面形状計測装置では、散乱光の空間分布を得ることができる(図2の201)。なお、ウェハ表面からの正反射光は検出しないように、検出光学系を配置している。検出信号をAD変換器(図示しない)によりデジタル信号に変換し、信号処理系7に伝送する。
【0029】
信号処理系7の内部にはライブラリを保存した記憶媒体があり、多数の既知のマイクロラフネスについて、空間周波数スペクトルと前記の光学条件における検出信号との関係が、記録されている。ここで、空間周波数スペクトルとは、表面形状を3次元座標(X,Y,Z)で表現するとき、高さZを(X,Y)に関して2次元フーリエ変換し、その振幅を二乗したものである。そして、伝送された検出信号をライブラリの検出信号と比較し、最も類似している空間周波数スペクトルを算出する(図2の202)。空間周波数スペクトルの算出については後述するが、このように得た空間周波数スペクトルは後述する図3、図6、図10のように連続的なものとなる。次に、空間周波数スペクトルを用いてマイクロラフネスの特徴量を算出し(図2の203)、制御系8に伝送する。なお、特徴量の算出については、後述する。
【0030】
このように局所的にマイクロラフネスを計測しながら、スポットビームがウェハ全面または所定の領域を走査するように、ステージを移動する。そして、ウェハ全面または所定の領域の走査終了後(図2の204)、特徴量のマップを操作系9に表示する(図2の205)。図2は、以上のマイクロラフネス計測のフローを示す。
【0031】
前記実施例の光源3は、可視光領域、紫外光領域、および遠紫外光領域のレーザや発光ダイオードなどの単一波長光源を使用できる。また、水銀ランプやキセノンランプなどの連続波長光源を使用しても良い。この場合、波長フィルタにより、試料表面に応じて適切な単一波長光を選択できる。
【0032】
また、前記実施例の照明光の偏光は、s偏光やp偏光などの直線偏光、円偏光、楕円偏光を選択できる。スポットビームのサイズは、出力する特徴量の空間分解能に応じて選択できる。照明光の入射角は、斜入射と直入射を選択できる。
【0033】
また、前記実施例の検出光学系51〜55は、レンズから成る屈折型、ミラーから成る反射型、ミラーとレンズを組み合わせた反射・屈折型、およびフレネルゾーンプレートなどの回折型を使用できる。
【0034】
また、光検出器61〜65としては、光電子増倍管、マルチピクセルフォトンカウンター、アバランシェフォトダイオードアレイ等が使用できる。
【0035】
また、前記実施例のライブラリは、テストウェハを用いて作成できる。テストウェハとは、研磨、洗浄、成膜、熱処理などのプロセスにおいて、プロセス条件を意図的に変えて作製したものである。テストウェハ表面のサンプリング位置で、AFMを用いてマイクロラフネスを計測し、表面形状の空間周波数スペクトルを算出する。そして、テストウェハを本実施例の形状計測装置に搭載し、前記サンプリング位置で光学的な検出信号を取得する。このように、既知のマイクロラフネスについて、表面形状の空間周波数スペクトルと光学的な検出信号との関係を記録できる。また、前記の空間周波数スペクトルを用いて、数値シミュレーションにより検出信号を予測することもできる。空間周波数スペクトルと表面材料の屈折率、および照明条件を入力データとし、BRDF法(Bidirectional Reflectance Distribution Function)を用いて、散乱光の空間分布を計算する。そして、散乱光の空間分布を用いて、検出光学系が集光する散乱光の強度、すなわち検出信号を予測できる。
【0036】
また、前記実施例のステージ2は、回転移動と直線移動の組合せ、または直交する直線移動の組合せが可能である。
【0037】
次に、本発明の計測装置により、マイクロラフネスの計測精度が向上することを説明する。一般に、マイクロラフネスは色々な空間周波数の粗さの集合であり、空間周波数スペクトルは空間周波数ごとの粗さの大きさを表わしている。図3は、プロセス条件の差異に対応する2つの空間周波数スペクトルS1、S2を示す。空間周波数スペクトルS2はS1に比べて、高い空間周波数領域まで粗さが存在している。
【0038】
図4は、空間周波数スペクトルS1、S2に対応するマイクロラフネスによる散乱光強度の空間分布を示す(天球面上の分布をウェハ表面に平行な平面に投影)。空間周波数スペクトルS2はS1に比べて、散乱光の強い領域が照明光の方向に対して後方に寄っていることが分かる。つまり、マイクロラフネスの空間周波数スペクトルが変化すると、散乱光の強い領域は入射面(ウェハ1表面の法線と照明光の主光線とを含む平面)に平行な方向に移動するのである。
【0039】
このような散乱光分布の変化を検出するために、本実施例の検出光学系51〜55は、図5のように配置される。図5は、本実施例の検出光学系配置の一例である(図5では、天球面上の開口をウェハ1表面に平行な平面に投影している)。検出光学系51〜55の各検出開口101〜105の中心、すなわち検出光学系の光軸は、入射面内にある。これは、他の表現としては、入射面のウェハ1への投影線は、ウェハ1に投影される検出開口101〜105の投影像を、通過すると表現することもできる。このような配置によって、散乱光の強い領域が入射面に平行な方向に移動すると、散乱光分布の変化を敏感に検出できる。その結果、空間周波数スペクトルの変化を敏感に捉えることが可能となり、マイクロラフネスの計測精度が向上する。
【0040】
次に、マイクロラフネスの空間周波数スペクトルの算出について説明する。一般に、マイクロラフネスの空間周波数スペクトルは、いくつかのパラメータを含む関数でフィッティングできることが多い。典型的なフィッティング関数は、式(1)のABC型関数である。
P=A/(1+(Bf)2)C/2 …(1)
【0041】
ここで、Pはパワー、fは空間周波数であり、Aは低空間周波数側のパワー、Bはカットオフ、Cはスペクトルの傾きに関係する。図6は、ABC型関数の空間周波数スペクトルを示している。空間周波数スペクトルの算出は、パラメータA、B、Cを求めることに帰着する。
【0042】
図7は、ABC型関数の空間周波数スペクトルの算出フローを示す。まず、検出器の全ての検出信号の総和を計算する(701)。次に、それぞれの検出信号と検出信号の総和との比、すなわち信号比率を計算する(702)。そして、信号比率を信号比率ライブラリと比較し、パラメータB、Cを算出する(703)。最後に、パラメータB、Cと信号総和を信号総和ライブラリと比較し、パラメータAを算出する(704)。上記のパラメータの算出は、最小二乗法などの数値計算により行うことができる。このように、空間周波数スペクトルをパラメータで表現することにより、データ容量を圧縮できるので、全測定位置の空間周波数スペクトルデータを保存できる。
【0043】
次に、マイクロラフネスの特徴量の算出と出力について説明する。オペレータは、プロセスに応じて注目する特徴量を選択する。特徴量は例えば、注目する空間周波数領域におけるRMS粗さ、空間周波数スペクトルのカットオフ空間周波数やピーク空間周波数などである。RMS粗さは、空間周波数スペクトルを当該空間周波数領域で積分して算出する。本実施例では、空間周波数の連続関数として空間周波数スペクトルを算出しているので、当該空間周波数領域は任意に設定できる。図8は、ウェハ全面におけるRMS粗さのマップの一例を示す。RMS粗さのマップにより、プロセス条件が適正か否かが判明する。
また、カットオフ空間周波数やピーク空間周波数は、空間周波数スペクトルの解析により算出する。本実施例では、空間周波数の連続関数として空間周波数スペクトルを算出しているので、高い空間周波数分解能にて解析できる。カットオフ空間周波数のマップにより、どのくらい高い空間周波数領域の粗さが存在しているかが判明する。また、ピーク空間周波数のマップにより、ステップ・テラス構造のような、特定方向かつ特定空間周波数のマイクロラフネスが存在するか否かが判明する。
【0044】
次に、マイクロラフネスの3次元形状の算出と出力について説明する。オペレータは、前記の特徴量のマップを参照して、ウェハ上の注目する位置を指定する。また、オペレータは、注目する空間周波数領域を指定する。信号処理系は、当該位置の空間周波数スペクトルを用いて、当該空間周波数領域でフーリエ逆変換を行い、3次元形状、及び3次元形状の座標(X,Y,Z)を算出する。本実施例では、空間周波数の連続関数として空間周波数スペクトルを算出しているので、当該空間周波数領域は任意に設定できる。座標データは操作系に伝送され、指定位置の3次元形状が表示される。図9は、ウェハ表面の3次元形状の一例を示す。このような表示により、オペレータはマイクロラフネスを視覚的に認識できる。
【0045】
ここで、3次元形状には例えば表面の粒径が含まれるわけであるが、表面の粒径の位相はランダムである。そこで、3次元形状を得るに当たっては、乱数を発生させてフーリエ逆変換することも可能である。この乱数を用いたフーリエ逆変換についてより詳細に説明する。乱数を用いたフーリエ逆変換に当たっては、以下のフローを用いる。
(1)パワースペクトルの平方根を取って、振幅Aとする。
(2)位相Φを乱数で発生させる。
(3)複素振幅A*(cosΦ+i*sinΦ)をフーリエ逆変換する。
【0046】
なお、ウェハ表面は、単層構造でも多層構造でも良い。多層構造で上層が透明の場合、上層と下層との界面のマイクロラフネスも計測できる。また、多層構造で上層が透明の場合、上層の膜厚も計測できる。
【実施例2】
【0047】
次に実施例2について説明する。実施例2は、異方性のマイクロラフネスについても計測精度が向上する実施例である。実施例2では、実施例1と異なる部分について主に説明する。
【0048】
エピタキシャル成長ウェハに出現するステップ・テラス構造は、特定の方向に特定の空間周波数を有している。図10は、エピタキシャル成長ウェハのマイクロラフネスの2つの空間周波数スペクトルS3、S4を示す。空間周波数スペクトルS3はステップ・テラス構造の出現しない方向であり、空間周波数スペクトルS4はステップ・テラス構造の出現する方向である。ステップ・テラス構造では、特定の方向の特定の空間周波数において、空間周波数スペクトルに鋭い特異なピーク601が出現している。このピーク601がステップ・テラス構造に対応したものである。
【0049】
このような異方性のマイクロラフネスによる散乱光の空間分布を検出するのに適した検出光学系配置の一実施例を図11に示す(天球面上の開口をウェハ表面に平行な平面に投影)。つまり、本実施例2の表面形状計測装置は、13個の検出光学系、それらに対応した13個の光検出器を有する。図11の検出開口101〜113は、13個の検出光学系それぞれの検出開口である。
【0050】
本実施例2の検出開口101〜105の中心、すなわち検出光学系の光軸は、入射面内にある。また、検出開口107と109の中心、検出開口110と112の中心は、それぞれ入射面に平行な面内にある。また、検出開口103、106、108、111、113の中心は、入射面に垂直な平面内にある。また、検出開口107と110の中心、検出開口109と112の中心は、それぞれ入射面に垂直な面内にある。
【0051】
これは、他の表現としては、検出開口101〜105の中心は、前記照明光学系の入射面内にあり、かつ検出開口101の中心と検出開口105の中心とは入射面に垂直な面に関して対称であり、検出開口102の中心と検出開口104の中心とは前記入射面に垂直な面に関して対称であると表現することができる。また、検出開口106の中心、及び検出開口113の中心は、入射面に垂直な面内にあり、かつ前記入射面に関して対称であると表現することもできる。また、検出開口108の中心、及び検出開口111の中心は、入射面に垂直な面内にあり、かつ前記入射面に関して対称であると表現することもできる。さらに、検出開口107の中心、及び検出開口109の中心は、前記入射面に対して平行な第1の面内にあり、前記垂直な面に関して対称であると表現することができる。さらに、検出開口110の中心、及び検出開口112の中心は、前記入射面に対して平行な第2の面内にあり、前記垂直な面に関して対称であると表現することができる。そして、この第1の面、及び第2の面は、前記入射面に関して対称であると表現することができる。
【0052】
このような検出光学系配置により、色々な方向の散乱光分布の変化を敏感に検出できる。その結果、色々な方向の空間周波数スペクトルの変化を敏感に捉えることが可能となり、異方性のマイクロラフネスの計測精度が向上する。
【実施例3】
【0053】
次に、実施例3について説明する。実施例3は、実施例1、及び実施例2において、さらに空間周波数の分解能を向上させるものである。
【0054】
ウェハ1の表面に対して光1201を照明する点は、実施例1、及び実施例2と同様である。本実施例3では、実施例1、及び実施例2で言及した検出光学系をフーリエ変換光学系1202に置き換えるものである。フーリエ変換光学系1202は、ウェハ1からの散乱光1203、1204を集光するフーリエ変換レンズ1205、フーリエ変換レンズ1205によって平行化された平行光1206を検出する2次元センサ1207によって検出するものである。2次元センサとしては、電荷結合素子(CCD)、時間遅延積分センサ(TDI)、マルチピクセルフォトンカウンター、アバランシェフォトダイオードアレイ等を使用できる。
【0055】
実施例3では、2次元センサ1207によって光を検出した後は、実施例1、及び2と同様の処理が施される。
【0056】
実施例3では、検出光学系に入射する散乱光の強度分布を検出できるので、さらに空間周波数分解能を向上させることができる。このため、ステップ・テラス構造の散乱光のような、特定方向の鋭いピークを検出するのに有効である。
【0057】
本発明の計測装置により、半導体製造のプロセスごとに、ウェハ表面全体のマイクロラフネスを高精度で計測し、プロセス条件を適正に管理できる。
【0058】
また、本発明の計測装置は、磁気記憶媒体などのマイクロラフネスの計測にも広く適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ウェハ
2 ステージ
3 光源
4 照明光学系
7 信号処理系
8 制御系
9 操作系
51〜55 検出光学系
61〜65 光検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の表面形状を得るための表面形状計測装置において、
光を前記試料に照明する照明光学系と、
前記試料からの散乱光を検出する複数の検出光学系と、
前記複数の検出光学系の検出信号とライブラリとを用いて前記試料の連続的な空間周波数スペクトルを得る処理部と、を有することを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記ライブラリは、
既知のマイクロラフネスについて、表面形状の空間周波数スペクトルと光学的な検出信号との関係を記録したものであることを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記複数の検出光学系の光軸は、前記試料の入射面内にあることを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記処理部は、
前記複数の検出光学系それぞれの検出信号の総和と前記検出信号との比を得て、
前記比と前記ライブラリとを用いて前記空間周波数スペクトルを得ることを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記複数の検出光学系の第1の検出開口の中心、及び第2の検出開口の中心は、前記照明光学系の入射面内にあり、かつ前記入射面に垂直な面に関して対称であり、
前記複数の検出光学系の第3の検出開口の中心、及び前記第4の検出開口の中心は、前記垂直な平面内にあり、かつ前記入射面に関して対称であり、
前記複数の検出光学系の第5の検出開口の中心、及び第6の検出開口の中心は、前記入射面に対して平行な第1の面内にあり、前記垂直な面に関して対称であり、
前記複数の検出光学系の第7の検出開口の中心、及び第8の検出開口の中心は、前記入射面に対して平行な第2の面内にあり、前記垂直な面に関して対称であり、さらに、前記第1の面と前記第2の面とは前記入射面に関して対称であることを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記複数の検出光学系は、フーリエ変換光学系を含むことを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項7】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記処理部は、
前記空間周波数スペクトルの中の所定の空間周波数領域における表面粗さ、前記空間周波数スペクトルのカットオフ空間周波数、ピーク空間周波数、及び記試料表面を形成する膜の厚さのうち少なくとも1つを得ることを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項8】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記処理部は、
前記空間周波数スペクトルに対してフーリエ逆変換を行うことを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項9】
請求項8に記載の表面形状計測装置において、
前記処理部は、
乱数を用いて前記フーリエ逆変換を行うことを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項1】
試料の表面形状を得るための表面形状計測装置において、
光を前記試料に照明する照明光学系と、
前記試料からの散乱光を検出する複数の検出光学系と、
前記複数の検出光学系の検出信号とライブラリとを用いて前記試料の連続的な空間周波数スペクトルを得る処理部と、を有することを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記ライブラリは、
既知のマイクロラフネスについて、表面形状の空間周波数スペクトルと光学的な検出信号との関係を記録したものであることを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記複数の検出光学系の光軸は、前記試料の入射面内にあることを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記処理部は、
前記複数の検出光学系それぞれの検出信号の総和と前記検出信号との比を得て、
前記比と前記ライブラリとを用いて前記空間周波数スペクトルを得ることを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記複数の検出光学系の第1の検出開口の中心、及び第2の検出開口の中心は、前記照明光学系の入射面内にあり、かつ前記入射面に垂直な面に関して対称であり、
前記複数の検出光学系の第3の検出開口の中心、及び前記第4の検出開口の中心は、前記垂直な平面内にあり、かつ前記入射面に関して対称であり、
前記複数の検出光学系の第5の検出開口の中心、及び第6の検出開口の中心は、前記入射面に対して平行な第1の面内にあり、前記垂直な面に関して対称であり、
前記複数の検出光学系の第7の検出開口の中心、及び第8の検出開口の中心は、前記入射面に対して平行な第2の面内にあり、前記垂直な面に関して対称であり、さらに、前記第1の面と前記第2の面とは前記入射面に関して対称であることを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記複数の検出光学系は、フーリエ変換光学系を含むことを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項7】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記処理部は、
前記空間周波数スペクトルの中の所定の空間周波数領域における表面粗さ、前記空間周波数スペクトルのカットオフ空間周波数、ピーク空間周波数、及び記試料表面を形成する膜の厚さのうち少なくとも1つを得ることを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項8】
請求項1に記載の表面形状計測装置において、
前記処理部は、
前記空間周波数スペクトルに対してフーリエ逆変換を行うことを特徴とする表面形状計測装置。
【請求項9】
請求項8に記載の表面形状計測装置において、
前記処理部は、
乱数を用いて前記フーリエ逆変換を行うことを特徴とする表面形状計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−50371(P2013−50371A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188164(P2011−188164)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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