説明

表面改質されたナノ粒子を含有する溶液

表面改質ナノ粒子、蒸気圧VP1を有する第1の液体およびVP1より低い蒸気圧VP2を有し、第1の液体に混和性である第2の液体を含む塗料溶液であって、前記ナノ粒子が第2の液体より第1の液体に相溶性が大である塗料溶液が提供される。これらの溶液を被着させ乾燥させる方法およびこれらの溶液で被覆された基材を含む物品も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面改質されたナノ粒子を含む塗料溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に溶液を被覆することにより多様な製品が製造されている。これらの溶液は、被覆条件で液体である少なくとも1種の材料および任意に被覆条件で固体である1種以上の材料を含む。普通の液体材料には、溶媒(例えば、水、有機溶媒および無機溶媒)およびシロップ(例えば、モノマー、オリゴマーおよびポリマー)が挙げられる。普通の固体材料には、例えば、樹脂(例えばポリマー)および充填剤(例えば粒子および繊維)が挙げられる。幾つかの用途において、後で乾燥工程を用いて、液体材料の1種以上の少なくとも1部を蒸発させ、被覆された基材表面上に固体材料がフィルムを形成することを可能にする。加えて、または別案として、液体材料の1種以上を例えば硬化および/または架橋させることにより固化させて、フィルムの形成を助けることが可能である。
【0003】
一般に、基材上にわたって均一であるフィルム、例えば平坦で平らなフィルムを製造することが望ましい。フィルムの変動(例えばフィルム厚さ)を最少にするために、欠陥を最小化することが望ましい。欠陥は被覆操作と乾燥操作の両方の間に発生しうる。塗布方法(例えば、ロール塗布、ナイフ塗布および吹付塗布)、乾燥方法(例えば、強制空気および放射線エネルギー)、プロセス条件(例えば、ライン速度、温度勾配および被膜厚さ)、塗料組成物および塗料特性(例えば、密度、表面張力、粘度および固形物含有率)を含む多様な要素が欠陥の形成に影響を及ぼす。
【0004】
欠陥を減らす努力は、塗料溶液に界面活性剤を添加すること、塗料溶液の固形物含有率を調節すること、およびあまり極端でない乾燥条件を用いることを含んでいた。これらのアプローチの各々は欠点を有する。界面活性剤の添加は上塗り潜在能力または層間粘着性を損なう場合があり、乾燥させた被膜層を通して移行しうる化学種を導入する場合がある。固体含有率の変化は被覆プロセスのための操作の窓を限定する場合がある(すなわち、乾燥中に発生する欠陥を最小化するための最適固形物含有率は、所望の被覆操作のための最適固形物含有率とは非常に異なる場合がある)。あまり極端でない乾燥条件はライン速度の低下を一般に必要とし、それは、被覆操作に影響を及ぼすとともに生産コストを高めうる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡単に言うと、一面において、本発明は、表面改質ナノ粒子、蒸気圧VP1を有する第1の液体およびVP1より低い蒸気圧VP2を有し、第1の液体に混和性である第2の液体を含む塗料溶液であって、前記ナノ粒子が第2の液体より第1の液体に相溶性が大である塗料溶液を提供する。
【0006】
幾つかの実施形態において、第2の液体は、例えば、熱、化学線、電子ビーム線、水分またはそれらの組み合わせによって硬化可能である。幾つかの実施形態において、第2の液体は、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、ポリエステル、ポリオール、イソシアネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ビニルエーテル、ポリウレタンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0007】
幾つかの実施形態において、第1の液体および/または第2の液体は、水、有機溶媒(例えば、アルコール、ケトン、トルエンおよびそれらの組み合わせ)、無機溶媒およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、第2の液体は1−メトキシ−2−プロパノールアセテートである。
【0008】
幾つかの実施形態において、塗料溶液は、染料、顔料、充填剤、導電性粒子、熱伝達性粒子、繊維、膜形成ポリマー(例えばポリメチルメタクリレート)、白土、シリカ、酸化防止剤、触媒、開始剤、微小球(例えば、セラミック微小球または高分子微小球)およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を更に含む。
【0009】
もう一つの面において、本発明は、塗膜の均一性を強化する方法であって、表面改質ナノ粒子、蒸気圧VP1を有する第1の液体およびVP1より低い蒸気圧VP2を有し、第1の液体に混和性である第2の液体を含む塗料溶液であって、前記ナノ粒子が第2の液体より第1の液体に相溶性が大である塗料溶液を基材の表面に被着させる工程および第1の液体の少なくとも一部を除去する工程を含む方法を提供する。
【0010】
幾つかの実施形態において、第1の液体は蒸発によって除去される。
【0011】
もう一つの面において、本発明は、塗膜の均一性を強化する方法であって、表面改質ナノ粒子、蒸気圧VP1を有する第1の液体およびVP1より低い蒸気圧VP2を有し、第1の液体に混和性である第2の液体を含む塗料溶液であって、前記ナノ粒子が第2の液体より第1の液体に相溶性が大である塗料溶液を基材の表面に被着させる工程および第1の液体の少なくとも一部を除去する工程ならびに第2の液体の少なくとも一部を除去する工程を含む方法を提供する。
【0012】
もう一つの面において、本発明は、塗膜の均一性を強化する方法であって、表面改質ナノ粒子、蒸気圧VP1を有する第1の液体およびVP1より低い蒸気圧VP2を有し、第1の液体に混和性である第2の液体を含む塗料溶液であって、前記ナノ粒子が第2の液体より第1の液体に相溶性である塗料溶液を基材の表面に被着させる工程および第1の液体の少なくとも一部を除去する工程ならびに第2の液体を硬化させる工程を含む方法を提供する。
【0013】
さらにもう一つの面において、本発明は表面を有する基材および前記表面に被着させた塗料溶液を含む被覆基材を提供する。ここで、塗料溶液は、表面改質ナノ粒子、蒸気圧VP1を有する第1の液体およびVP1より低い蒸気圧VP2を有し、第1の液体に混和性である第2の液体を含み、前記ナノ粒子は第2の液体より第1の液体に相溶性が大であり、第1の液体の少なくとも一部は除去される。
【0014】
もう一つの面において、本発明は表面を有する基材および前記表面に被着させた塗料溶液を含む被覆基材を提供する。ここで、塗料溶液は、表面改質ナノ粒子、蒸気圧VP1を有する第1の液体およびVP1より低い蒸気圧VP2を有し、第1の液体に混和性である第2の液体を含み、前記ナノ粒子は第2の液体より第1の液体に相溶性が大であり、第1の液体の少なくとも一部は除去され、第2の液体は硬化される。
【0015】
幾つかの実施形態において、被覆基材は、ガラス、金属、ポリマー、セラミック、紙、木材、布地およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
幾つかの実施形態において、本発明は、乾燥させたフィルムの表面微細構成(トポグラフィ)に対するより大幅な制御を可能にする。幾つかの実施形態において、本発明は、より厳格な乾燥条件の使用を可能にし、高いライン速度を可能にする。幾つかの実施形態において、本発明は、まだらなどの乾燥欠陥が発生せずに被覆操作中に、より厚い湿りフィルムの使用を可能にする。
【0017】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は以下の説明において記載する。本発明の他の特徴、目的および利点は説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らは、塗料溶液への表面改質ナノ粒子の添加が塗料および乾燥プロセスに悪影響を及ぼさずに欠陥形成を抑制できることを発見した。ナノ粒子は有機ナノ粒子、無機ナノ粒子またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0019】
本発明の塗料溶液は少なくとも2種の液体材料を含み、塗料溶液が基材に被着された後、液体材料の少なくとも1種は、例えば蒸発によって実質的に除去される。液体材料は、ナノ粒子を分散させ、溶液を取り扱い、被着(例えば被覆)させるのを助ける。幾つかの実施形態において、液体材料の2種以上は、塗料溶液を基材に被着させた後に除去され、例えば蒸発する。幾つかの実施形態において、少なくとも1種の液体材料は、塗料溶液を基材に被着させた後に固化(例えば、硬化および/または架橋される)される。
【0020】
被覆後に除去される液体材料は、一般に液体を蒸発させるのに十分な乾燥条件(例えば、温度、圧力および気相組成)で蒸気圧を有する。幾つかの実施形態において、液体の少なくとも約80重量%(例えば、少なくとも約90%または少なくとも約95%)は乾燥中に除去される。幾つかの実施形態において、液体の実質的にすべては乾燥中に除去される。すなわち、液体の少なくとも約98重量%(例えば少なくとも約99%)は除去される。
【0021】
一般に、乾燥条件でより高い蒸気圧を有する液体は、より低い蒸気圧を有する液体を基準として優先的に除去される。幾つかの実施形態において、2種以上の液体は同時に除去される。しかし、より高い蒸気圧を有する液体は、より低い蒸気圧を有する液体を基準としてより高い速度で除去される。幾つかの実施形態において、第2の液体の多少の部分は、第1の液体の実質的にすべてが除去された後、塗料溶液中に存在したままである。最も遅く蒸発する(すなわち最低蒸気圧)液体は「テイル溶媒」と呼ばれる。一般に、テイル溶媒の少なくとも1部は、除去される他の液体の実質的にすべてが除去された後、塗料溶液中に残る。
【0022】
適する除去可能な液体には、例えば、有機溶媒、無機溶媒およびそれらの組み合わせが挙げられる。適する有機溶媒には、例えば、炭化水素(例えばトルエン)、アルコール、ケトン、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、グリコール、エーテル、炭化水素、アルキルおよびアリールのニトロ化合物、部分または完全弗素化化合物およびそれらの組み合わせを含む、例えば、脂肪族溶媒、脂環式溶媒および芳香族溶媒が挙げられる。適する無機溶媒には、例えば、水、二酸化炭素、二硫化炭素およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
被覆後に固化される液体には、例えば、モノマー、オリゴマー、ポリマーまたはそれらの組み合わせが挙げられる。幾つかの実施形態において、これらの液体は、例えば、熱、化学線、電子ビーム、水分またはそれらの組み合わせで硬化させてもよい。幾つかの実施形態において、これらの液体は架橋可能である。幾つかの実施形態において、固化された液体は、ペイント、例えばラッカーであってもよい。
【0024】
適する有機ナノ粒子の例には、バックミンスターフラーレン(フラーレン)、デンドリマー、有機高分子ナノ球、アミノ酸および様々な末端基を有する4、6または8アームポリエチレンオキシド(例えば、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI))またはアラバマ州ハンツビルのシェアウォーター・コーポレーション(Shearwater Corporation(Huntsville,AL))から入手できる)などの線状または分岐あるいは過剰分岐の「スター」ポリマーならびにそれらの組み合わせが挙げられる。適する有機ナノ粒子の更なる例には、米国特許出願第10/449,677号明細書(2003年5月30日出願)に記載されたものが挙げられる。適する有機ナノ粒子の例には、材料の混合物または中心有機コアを囲む材料の層などの組み合わせ材料も挙げられる。
【0025】
フラーレンの特定の例には、C60、C70、C82およびC84が挙げられる。デンドリマーの特定の例には、例えばウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI))から入手できる「ゼネレーション(Generation)」2〜10(G2〜G10)のポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーが挙げられる。
【0026】
有用な有機高分子ナノ球の特定の例には、粉末または分散体としてインジアナ州フィッシャーズのバングス・ラボラトリーズ(Bangs Laboratories,Inc.(Fishers,IN))から入手できるポリスチレンを含むナノ球が挙げられる。ポリスチレンナノ球の平均粒子サイズは、少なくとも20ナノメートル(nm)〜60nm以下の範囲である。現在市販されている平均粒子サイズは、20、30、50および60nmを含む。
【0027】
適する無機ナノ粒子の例には、燐酸カルシウム(例えばヒドロキシ−アパタイト)、白土、金属酸化物、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化アンチモン、酸化錫、アルミナ/シリカおよびそれらのいずれかの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。適する無機ナノ粒子の更なる例には、米国特許出願第10/449,359号明細書(2003年5月30日出願)に記載されたものが挙げられる。適する無機ナノ粒子の例には、材料の混合物または中心有機コアを囲む材料の層などの組み合わせ材料も挙げられる。
【0028】
ナノ粒子はコロイド分散体の形を取ってもよい。有用な市販されている非改質シリカ出発材料の例には、「ナルコ(NALCO)」1040、1050、1060、2326、2327および2329コロイドシリカという商品名でイリノイ州ナパービルのナルコ・ケミカル(Nalco Chemical Co.(Naperville,IL))から入手できるナノサイズコロイドシリカが挙げられる。
【0029】
有用な金属酸化物コロイド分散体には、その適する例が米国特許第5,037,579号明細書に記載されているコロイド酸化ジルコニウムおよびその有用な例が1998年7月30日出願の国際公開第00/06495号パンフレット、発明の名称「透明金属酸化物コロイドおよびセラマーを製造するためのナノサイズ金属酸化物粒子(Nanosize Metal Oxide Particles for Producing Transparent Metal Oxide Colloids and Ceramers)」(アメイ(Amey)ら)に記載されているコロイド酸化チタンが挙げられる。
【0030】
表面改質ナノ粒子は、溶液全体にわたって分散させた望ましくは個々の非結合(すなわち非凝集)ナノ粒子である。望ましくは、表面改質ナノ粒子は、基材への溶液の被着および溶液中に存在するあらゆる液体の除去の開始の前に互いに不可逆的に結合していない。「結合する」および「結合している」という用語は、例えば、共有結合、水素結合、静電引力、ロンドン力および疎水性相互作用を含む。表面改質ナノ粒子は、表面改質ナノ粒子により形成される溶液が溶液の望ましい特性を妨げる粒子凝塊形成または粒子凝集の一定度合から免れるように選択される。
【0031】
表面改質ナノ粒子は、ナノ粒子の「溶解度」または「湿潤性」の特性を改質する表面基を有する。幾つかの実施形態において、表面基は、溶液中の液体材料の1種以上に対して粒子の相溶性が増すように選択される。幾つかの実施形態において、表面基は、溶液中の液体材料の一種以上に対して粒子の相溶性がより劣るように選択される。
【0032】
液体材料への表面改質ナノ粒子の相溶性を評価する1つの方法は、液体と増加する量(重量%)のナノ粒子との混合物の粘度を測定することである。種々の液体についてのナノ粒子の重量%の増加を粘度増加と比較する線図を作成することができる。粘度蓄積のより低い速度を有する液体は、粘度蓄積のより高い速度を有する液体よりナノ粒子により相溶性である。表面改質基を変えることにより、種々の液体への相対的相溶性を調節することが可能である。
【0033】
ナノ粒子が特定の液体に相溶性でないか、または特定の液体に非常に低い相溶性を有する場合、ナノ粒子は当該液体によって十分に湿らず、ナノ粒子は凝集し液体から分離する。こうした場合、意味のある粘度蓄積データを一般に得ることができない。例えば、疎水的に表面改質されたナノ粒子は、極性溶媒(例えば、水および/またはアルコール)に非常に低い相溶性を有するか、または相溶性を全くもたないことが予想される。こうした液体へのナノ粒子の相溶性は、粘度蓄積の最高速度を示す液体への相溶性より低く位置付けられる。
【0034】
表面改質ナノ粒子の量が増加するにつれての種々の仮想液体(A、B、CおよびD)に関する相対的粘度蓄積を示す理想化された線図を図1に示している。粘度蓄積が低ければ低いほど(すなわち、傾斜が低ければ低いほど)、液体へのナノ粒子の相溶性は高い。従って、例えば、ナノ粒子は液体Aに最も相溶性であり、液体Dに最も相溶性でない。トルエン、イソオクチルアクリレートおよびPMアセテート中の表面改質ナノ粒子に関する粘度蓄積データを図5に示している。
【0035】
望ましいナノ粒子は、ナノ粒子が溶液から沈降しない、すなわちナノ粒子が有効な期間にわたって懸濁されたままであるように選択される。有効な期間は、用途に応じて分、時間、日、週間または年であってもよい。
【0036】
一般に、有機または無機の非改質ナノ粒子は、液体材料に不溶性であるように選択される。従って、ナノ粒子は分散するが溶解しない。ナノ粒子の表面改質は、ナノ粒子が完全に分散できるように液体材料にナノ粒子が相溶性であることを可能にする。
【0037】
適する表面基は、表面基と塗料溶液中の1種以上の液体の溶解度パラメータに基づいて選択することが可能である。好ましくは、表面基または表面基を誘導する薬剤は、少なくとも1種の液体材料の溶解度パラメータに似た溶解度パラメータを有する。液体が疎水性(例えば、トルエン、ケトンおよびアクリレート、例えば、イソオクチルアクリレート(IOA)、2−エチルヘキシルアクリレートおよび1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA))である時、当業者は疎水性液体に相溶性である表面改質粒子を達成するために種々の疎水性表面基の中から選択することが可能である。同様に、液体材料が親水性である(例えば、水、アルコール、例えば、メタノールおよびエタノールならびにそれらの組み合わせ)である時、当業者は親水性表面基から選択することが可能であり、液体材料がヒドロフルオロカーボンである時、当業者は種々の相溶性表面基の中から選択することが可能である。ナノ粒子は、液体の溶解度パラメータに似ている溶解度パラメータを有するナノ粒子を提供するために組み合わせる少なくとも2個の異なる表面基を含むことも可能である。表面基は、統計的に平均された無秩序に表面改質された粒子を提供するように選択してもよい。表面改質ナノ粒子は両親媒性ではない。
【0038】
表面基は、凝集なしに塗料溶液の液体材料に実質的に分散できる表面改質ナノ粒子を提供するのに十分な量で粒子の表面上に存在する。幾つかの実施形態において、表面基は、単一層、好ましくは連続単一層をナノ粒子の表面上に形成するのに十分な量で存在する。幾つかの実施形態において、表面基は単一層を形成するために必要であるより少ない量で存在する。
【0039】
表面改質基は表面改質剤から誘導してもよい。表面改質剤は、ナノ粒子の表面に結合できる基および塗料溶液の液体材料と反応性または非反応性であってもよい相溶化基を含む。幾つかの実施形態において、相溶化基は、粒子を比較的より極性に、比較的より極性でないように、または比較的非極性にするように選択することが可能である。
【0040】
表面改質剤の適するクラスには、例えば、シラン、有機酸、有機塩基、アルコールおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
特に有用な表面改質剤はシランを含む。有用なシランの例には、例えば、アルキルクロロシラン、アルコキシシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ポリトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ(t−ブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペンオキシ)シランおよびビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン;トリアルコキシアリールシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバメート;例えば、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロペニルトリメトキシシランおよび3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランを含むシラン官能性(メタ)アクリレート;例えばポリジメチルシロキサンを含むポリジアルキルシロキサン、例えば、置換および非置換アリールシランを含むアリールシラン、例えば、メトキシおよびヒドロキシ置換アルキルシランを含む置換または非置換アルキルシランを含むアルキルシラン、ならびにそれらの混合物を含むオルガノシランが挙げられる。
【0042】
シラン官能性(メタ)アクリレートを用いるシリカを表面改質する方法は、例えば、米国特許第4,491,508号明細書、同第4,455,205号明細書、同第4,478,876号明細書、同第4,486,504号明細書および同第5,258,225号明細書に記載されている。「(メタ)アクリレート」という用語はアクリレートとメタクリレートの両方を含む。
【0043】
有用な有機酸表面改質剤には、例えば、炭素のオキシ酸(例えばカルボン酸)、硫黄および燐ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
カルボン酸官能基を有する極性表面改質剤の代表的な例には、CH3O(CH2CH2O)2CH2COOH(以後、MEEAA)および化学構造CH3OCH2CH2OCH2COOHを有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸(以後、MEAA)、酸または塩の形を取ったモノ(ポリエチレングリコール)スクシネートなどの酸官能化ポリエチレングリコール、ならびに酢酸、プロピオン酸または酪酸で一置換されたポリエチレングリコールが挙げられる。こうしたポリマーまたはポリマーの誘導体は、例えば米国特許第5,672,662号明細書に記載されたように調製してもよい。
【0045】
カルボン酸官能基を有する非極性表面改質剤の代表的な例には、オクタン酸、ドデカン酸およびオレイン酸が挙げられる。
【0046】
適する燐含有酸の例には、例えば、オクチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、モノポリエチレングリコールホスホネートを含むホスホン酸、および酸または塩の形を取ったホスフェートまたはホスホン酸置換ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0047】
有用な有機塩基表面改質剤には、例えば、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミンを含むアルキルアミンおよびアミン官能化ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0048】
他の有用な非シラン表面改質剤の例には、アクリル酸、メタクリル酸、ベータ−カルボキシエチルアクリレート、モノ−2−(メタクリロイルエチル)スクシネートおよびそれらの組み合わせが挙げられる。ナノ粒子に極性の特性と反応性の両方を付与する有用な表面改質剤はモノ(メタクリロイルオキシポリエチレングリコール)スクシネートである。
【0049】
適する表面改質アルコールの例には、例えば、オクタデシルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコールおよびフルフリルアルコールを含む例えば脂肪族アルコール、例えばシクロヘキサノールを含む脂環式アルコール、例えば、フェノールおよびベンジルアルコールを含む芳香族アルコール、ポリエチレングリコール、モノメチルポリエチレングリコールおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
塗料溶液が芳香族環含有エポキシ樹脂を含む時、有用な表面改質基は芳香族環を含むことが可能である。エポキシ樹脂組成物のために特に適する表面改質基の例は米国特許第5,648,407号明細書で開示されている。
【0051】
追加の表面改質基は、例えば、米国特許出願第10/449,677号明細書および同第10/449,359号明細書(両方は2003年5月30日出願)に記載されている。
【0052】
フラーレンおよびPAMAMデンドリマーのために有用な表面改質基には、例えば直鎖または分岐のアルキル基が挙げられ、少なくともC3〜C30以下の範囲であってもよく、C3〜C30の間のいかなるサイズまたは範囲でもあってよい。
【0053】
有用な表面改質ジルコニアナノ粒子は粒子の表面上に吸着されたオレイン酸とアクリル酸の組み合わせを含む。
【0054】
有用な表面改質シリカナノ粒子は、例えば、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシランおよびそれらの組み合わせを含むシラン表面改質剤で表面改質されたシリカナノ粒子が挙げられる。シリカナノ粒子は、例えばアルコール、例えば、アルキルトリクロロシラン、トリアルコキシアリールシラン、トリアルコキシ(アルキル)シランおよびそれらの組み合わせを含むオルガノシラン、およびオルガノチタネートならびにそれらの混合物を含む多くの表面改質剤で処理することが可能である。
【0055】
例えば、表面改質剤をナノ粒子(例えば、粉末またはコロイド分散体の形を取ったもの)に添加し、表面改質剤がナノ粒子と反応することを可能にすることを含む様々な方法がナノ粒子の表面を改質するために有効である。当業者は、相溶化基と合わせてナノ粒子を集める多重合成シーケンスが可能であり、本発明の範囲内で構想されていることを認めるであろう。例えば、反応性基/リンカーはナノ粒子と反応してもよく、その後、相溶化剤と反応してもよい。あるいは、反応性基/リンカーは相溶化基と反応してもよく、その後、ナノ粒子と反応してもよい。他の有用な表面改質プロセスは、例えば米国特許第2,801,185号明細書および同第4,522,958号明細書に記載されている。
【0056】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、表面改質されていようが、されてなかろうが、500nm未満(例えば400nm未満、または200nm未満、あるいは100nm未満)の平均粒径を有する。他の実施形態において、ナノ粒子の平均直径は、80nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下または1nm以下である。幾つかの実施形態において、ナノ粒子の平均直径は1nm〜80nm(例えば、1nm〜50nm、または1nm〜20nm)である。ナノ粒子が凝集している場合、凝集粒子の最大断面寸法は非凝集ナノ粒子の平均直径について上で規定された限界によって決まる。
【0057】
本明細書に関連したナノ粒子の寸法は、本体塗料溶液中のナノ粒子の寸法またはナノ粒子の凝塊形成物である。塗料溶液を表面に被着(例えば基材上に溶液を被覆することによる)させた後、ナノ粒子は凝塊を形成してもよく、よってより大きな構造を形成する。
【0058】
ナノ粒子は欠陥形成を最小化するために有効量で本発明の溶液中で用いられる。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、塗料の乾燥重量を基準にして0.005重量%(wt%)を超える(例えば0.05重量%を超える、または0.1重量%を超える、あるいは0.2重量%を超える)量で存在する。用いられるナノ粒子の量は、一般に被覆プロセスに及ぼす影響を最少化するように選択される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は80重量%未満(例えば、60重量%未満、または50重量%未満、あるいは25重量%未満、または10重量%未満)の量で存在する。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は0.005〜10重量%の間(例えば0.05〜5重量%の間)のいずれかの量または範囲で存在する。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は30〜80重量%の間(例えば40〜75重量%の間)のいずれかの量または範囲で存在する。当業者は、必要とされる有効量が溶液中に存在する液体材料、ナノ粒子の表面官能基および粒子サイズ、および塗料溶液中の他のエレメント(例えば固体材料)の存在に応じて異なることを認めるであろう。
【0059】
本発明の塗料溶液は相対的相溶性と蒸気圧の所望の関係を達成するように選択される。塗料溶液が除去される第1の液体およびフィルムを形成するのを助けるために固化される第2の液体を含む場合、表面改質ナノ粒子は、第2の液体より第1の液体に相溶性であるべきである。
【0060】
2種以上の液体を塗料溶液から除去(例えば蒸発させる)するべき場合、ナノ粒子とテイル溶媒(すなわち最も低い蒸気圧の液体)の相溶性は、より高い蒸気圧の液体へのナノ粒子の相溶性より低いのがよい。例えば、塗料溶液は第1の液体、第2の液体および固体材料を含んでもよく、ここで、第1の液体と第2の液体は蒸発して、固定材料によって形成されるフィルムを残す。こうした塗料溶液において、第1の液体の蒸気圧(VP1)が第2の液体の蒸気圧(VP2)より高い場合、ナノ粒子と第1の液体の相溶性はナノ粒子と第2の液体の相溶性より高いのがよい。
【0061】
多様な液体の蒸気圧は容易に入手できる。例えば、ヨーズ・カール(Yaws,Carl L.)著「蒸気圧ハンドブック(Handobook of Vapor Pressure)」、テキサス州ヒューストンのガルフ・パブリッシング・カンパニー(Gulf Publishing Company(Houston,TX))(1994)、およびジョーダン、T.アール(Jordan,T.Earl)著「有機化合物の蒸気圧(Vapor Pressure of Organic Compounds)」、ニューヨーク州ニューヨークのインターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers,Inc.(New York,NY))(1954)。蒸気圧も、ASTM E1194−01「蒸気圧に関する標準試験法(Standard Test Method for Vapor Pressure)」(Vol.11.05、ASTM規格2003、頁450〜456)を用いて決定してもよい。
【0062】
表1は図1の仮想液体に関する相対的相溶性および相対的蒸気圧を示している。より低い数値は、ナノ粒子へのより高い相溶性を有する液体を示している。より低い数値は、より高い蒸気圧を有する液体を示している。従って、表面改質ナノ粒子は液体Aに最も相溶性であり、液体Dに最も相溶性でない。同様に、液体Dは最も高い蒸気圧を有する一方で、液体Cは最も低い蒸気圧を有する。
【0063】
表1を参照すると、液体AとBの組み合わせは、液体Aが液体Bよりナノ粒子に高い相溶性と液体Bより高い蒸気圧の両方を有するので本発明のために許容できる。同様に、液体AとCおよび液体BとCの組み合わせを用いることができよう。液体AとDの組み合わせは許容できない。Aは液体Dよりナノ粒子に高い相溶性を有するけれども、液体Aの蒸気圧は液体Dの蒸気圧より低い。同様に、BとDおよびCとDの組み合わせは許容できない。
【0064】
3種以上の溶媒の組み合わせも可能である。例えば、A、BおよびCの組み合わせは、最も低い蒸気圧の液体(すなわちC)がナノ粒子に最も低い相溶性を有する液体でもあるので許容できる。
【0065】
【表1】

【0066】
一般に、本発明の塗料溶液は、被覆条件で固体である材料も含んでよい。これらの材料は、例えば、有機充填剤および無機充填剤(例えば粒子および繊維)、白土、シリカ、酸化防止剤、微小球(例えばガラス微小球および高分子微小球)、染料、顔料、熱および/または電気伝達材料、静電防止剤、樹脂、ポリマーおよびそれらの組み合わせを含んでもよい。適する高分子材料には、例えば、(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、エポキシ、ポリエステル、ポリオール、イソシアネート、ポリスチレン、ポリウレタンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
幾つかの実施形態において、溶液は、例えば、硬化剤、開始剤、促進剤、架橋剤、表面活性剤およびそれらの組み合わせを含む他の添加剤を含む。幾つかの実施形態において、溶液は当該溶液中の臨界ミセル濃度より低い濃度で表面活性剤を含む。幾つかの実施形態において、塗料溶液は、1重量%未満(例えば、0.5重量%未満または0.1重量%未満)の表面活性剤を含む。幾つかの実施形態において、塗料溶液は表面活性剤を実質的に含まず、よって例えば0.05重量%未満(例えば0.005重量%未満または0.001重量%未満)の界面活性剤を含むか、あるいは表面活性剤を全くさえも含まない。
【0068】
本発明の溶液は被覆基材を形成するために用いてもよい。幾つかの実施形態において、溶液は、例えば、少なくとも2種の液体、表面改質ナノ粒子および任意のあらゆる材料を混合するか、またはブレンドすることにより調製してもよい。例えば、攪拌、振とう、高剪断混合および低剪断混合を含む既知のあらゆる混合および/またはブレンド装置または技術を用いてもよい。幾つかの実施形態において、塗料溶液は混合後に均質に見える。
【0069】
その後、幾つかの実施形態において、溶液は技術上知られているいずれかの塗布方法(例えば、ロール塗布、カーテン塗布、バー塗布および吹付など)を用いて基材の表面に被着させてもよい。少なくとも1種の液体は被覆された溶液から除去され、フィルムは基材の表面上に形成される。幾つかの実施形態において、液体は蒸発によって除去される。幾つかの実施形態において、残りの被覆された材料の1種以上は、例えば、熱、化学線(例えば、赤外線、可視光線または紫外線およびそれらの組み合わせ)、電子ビーム、水分およびそれらの組み合わせによって硬化させてもよい。
【0070】
基材は、例えば、ガラス、金属、セラミック、高分子基材(例えば高分子フィルム)、紙、木材および布地などを含む被覆が望まれるいかなる基材であってもよい。
【0071】
以下の特定であるが非限定的な実施例は本発明を例示するために用いる。これらの実施例において、すべての百分率は特に指示がない限り重量による。
【実施例】
【0072】
試験方法
表面微細構成−方法I
試験すべきサンプルを金/パラジウム(Au/Pd)でスパッタリングして、コントラストを強化した。「ウィコ(WYKO)」NT−300光学干渉計(アリゾナ州ツクソンのウィコ(Wyko)(Tucson,AZ))から得られたもの)を用いて、2.0ミリメートル(mm)×2.5mmの少なくとも2つの面を測定した。得られた画像をフィルター掛けして、傾斜を除去した。以下の表面微細構成数値を得られたデータから計算した。
Ra(ナノメートル(nm))−粗さ平均
Rq(mm)−二乗平均粗さ
【0073】
より小さい値は、より平坦で、より均一な表面を示唆する。
【0074】
表面微細構成−方法II
試験すべきサンプルを金/パラジウム(Au/Pd)でスパッタリングして、コントラストを強化した。「ウィコ(WYKO)」NT−300光学干渉計(アリゾナ州ツクソンのウィコ(Wyko)(Tucson,AZ))から得られたもの)を用いて、2.4ミリメートル(mm)×1.9mmの4つの面をVSIモードで測定した。得られた画像をフィルター掛けして、傾斜を除去した。以下の表面微細構成数値を得られたデータから計算した。
Ra(nm)−粗さ平均
Rq(mm)−二乗平均粗さ
【0075】
材料
【0076】
【表2】

【0077】
シリカナノ粒子の表面改質
トリアルコキシシランカップリング剤を用いて粒子表面を疎水的に改質した表面改質シリカナノ粒子を次の通り調製した。
【0078】
SILICA−A
メカニカルスターラーおよびリフラックスコンデンサが装着された500ミリリットル(mL)丸底三口フラスコに250グラム(g)の「ナルコ(NALCO)」2326を秤量して入れた。15.36gのIOTMSおよび281.25gのMOPの溶液をビーカー内で別個に調製した。
【0079】
「ナルコ(NALCO)」2326ゾルを攪拌しつつ、「ナルコ(NALCO)」2326を含むフラスコに開口を経由してIOTMS/MOP溶液を添加した。その後、ビーカーを追加34.4gのMOPでリンスし、それを攪拌された混合物に後で添加した。完全に添加した後、フラスコの開口を閉じ、フラスコを油浴に入れた。その後、油浴を80℃に加熱し、反応を放置して約16時間にわたり進めた。得られたゾルをフロースルーオーブン内で150℃で乾燥させて、表面改質ナノ粒子(SILICA−A)を回収した。
【0080】
SILICA−B
メカニカルスターラーおよびリフラックスコンデンサが装着された500mL丸底三口フラスコに250グラムgの「ナルコ(NALCO)」2326を秤量して入れた。21.76gのIOTMSおよび281.25gのMOPの溶液をビーカー内で別個に調製した。「ナルコ(NALCO)」2326ゾルを攪拌しつつ、開口を経由してフラスコにIOTMS/MOP溶液を添加した。その後、ビーカーを追加45.5gのMOPでリンスし、それを攪拌された混合物に後で添加した。完全に添加した後、フラスコの開口を閉じ、フラスコを油浴に入れた。その後、油浴を80℃に加熱し、反応を放置して約16時間にわたり進めた。ゾルをフロースルーオーブン内で150℃で乾燥させて、表面改質ナノ粒子(SILICA−B)を回収した。
【0081】
SILICA−C
N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエチルカルバメート(PEG2TES)を次の通り調製した。マグネチックスターラーが装着された250mL丸底フラスコに35gのDIGLYMEおよび77gのMEKを添加し、回転蒸発に供して水を除去した。その後、68.60gの3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネートをフラスコに添加し、その後、約3ミリグラムのDBTDLを添加し、混合物を攪拌した。反応は穏やかな発熱を伴って進行した。反応を約16時間にわたり行った。その時点で、IR分光分析によると、イソシアネートの存在が示されなかった。90℃での回転蒸発を経由して溶媒の残りを除去して、104.46gのPEG2TESを多少粘性の液体としてもたらした。
【0082】
450.00gのMOP、15.64gの「シルケスト(SILQUEST)」A174、4.09gのPEG2TESおよび0.00782gの「プロスタブ(PROSTAB)」5198の混合物を400.00gの「ナルコ(NALCO)」2327を含む1クオートのジャーに攪拌しつつ添加した。その後、ジャーを密封し、16.5時間にわたって80℃に加熱した。これは、改質シリカのクリアブルーな低粘度溶液(SILICA−C)をもたらした。
【0083】
被覆可能な溶液の調製
トルエン中のPMMA20重量%の溶液をビーカー内で調製して、PMM原液を提供した。この溶液のサンプルに改質粒子(SILICA−AまたはSILICA−B)、1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(PMアセテート)およびトルエンを以下の表で示した量で添加した。PMMA濃度を被覆可能な溶液の全重量の10重量%で維持した。表に記載したPAアセテート濃度は溶媒(すなわちPMアセテート+トルエン)の全重量を基準にした重量%である。改質粒子濃度はポリマー(PMMA)の全乾燥重量を基準にした重量%である。
【0084】
被覆されたスライドの調製
幅2インチ(5.1cm)×長さ3インチ(7.6cm)のガラススライド(ニューヨーク州コーニングのコーニング社(Corning,Inc.(Corning,NY))から得られたもの)上に溶液を被覆した。ミクロピペット(エッペンドルフ(Eppendorf))を用いて、流体の75マイクロリットルをスライド上に置き、放置して重力下で流した。被覆されたスライドを250°F±2°F(121℃)の温度に設定されたホットプレート上に直接約2.5分にわたり置いた。その後、乾燥させたサンプルを目視で検査し、上述した「方法I」または「方法II」により表面微細構成を試験した。
【0085】
実施例1〜6および比較例C1〜C4
PMアセテートおよびSILICA−Bの異なる量を用いて上の「被覆可能な溶液の調製」により溶液を調製した。PMアセテートがないか、またはSILICA−Bがない比較例も調製した。上述した「被覆されたスライドの調製」によりガラススライド上に溶液を被覆した。乾燥させたサンプルの表面微細構成を「方法I」により試験した。用いたPMアセテートおよびSILICA−Bの量および表面微細構成結果を表3に示している。
【0086】
実施例7〜13および比較例C5
PMアセテートおよびSILICA−Aの異なる量を用いて上記「被覆可能な溶液の調製」により8種類の溶液を調製した。PMアセテートがない比較例も調製した。上記「被覆されたスライドの調製」によりガラススライド上に溶液を被覆した。乾燥させたサンプルの表面微細構成を「方法I」により試験した。用いたPMアセテートおよびSILICA−Aの量および表面微細構成結果を表3に示している。
【0087】
【表3】

【0088】
比較例C1〜C4および実施例1、3および5に関するRa値およびRq値を図2に示している。比較例C1〜C3およびC5ならびに実施例7、11および13に関するRa値およびRq値を図3に示している。比較例C2および実施例8〜12に関するRa値およびRq値を図4に示している。
【0089】
実施例14および比較例C6
200グラムのSILICA−Cおよび56.7gのHDDAを1リットル丸底大口フラスコ内で組み合わせた。回転蒸発を経由して溶媒を除去した。得られた材料は室温で高粘度のゲルであった。SILICA−C/HDDAゲルは約40重量%のSILICA−Cを含んでいた。
【0090】
上述したように調製されたSILICA−C/HDDAゲル5グラムを335gのHDDAと61.5gのTHFのブレンドに添加した。この混合物に0.1gの「ダロキュア(DAROCUR)」1173を添加した。SILICA−Cのない比較例も調製した。75マイクロリットルの流体を送出するように設定されたマイクロピペット(エッペンドルフ(Eppendorf))を用いて、幅2インチ(5.1cm)×長さ3インチ(7.6cm)のガラススライド(ニューヨーク州コーニングのコーニング(Corning,Inc.(Corning,NY))から得られたもの)上に各溶液を被覆した。その後、被覆されたスライドを室温で乾燥させた。その後、1744mW/cm2の平均強度および486mJ/cm2の全平均エネルギーを有する中圧水銀UVフュージョンランプ(メリーランド州ゲーサーズバーグのフュージョン・UVシステムズ(Fusion UV Systems(Gaithersburg,MD))から得られたもの)下で窒素雰囲気内で、乾燥させたサンプルを硬化させた。硬化したサンプルの表面微細構成を「方法II」により試験した。結果を表4に示している。
【0091】
【表4】

【0092】
実施例15
室温で成分を組み合わせて20gのサンプルを得ることにより、SILICA−Aおよび液体(IOA、トルエンまたはPMアセテート)の異なる量を調製した。C25クエット幾何学を用いる「ボーリン・C−VOR・レオメータ(BOHLIN C−VOR Rheometer)」(ニュージャージー州イーストブランズウィックのボーリン・インストルメンツ(Bohlin Instruments,Inc.(East Brunswick,NJ))によりサンプルごとの溶液レオロジーを測定した。制御された応力スイープを25℃で1×10-3〜1×10+3の剪断応力範囲内で完了した。「ペルチエ(PELTIER)」ユニットを用いて温度を±0.2℃内に制御した。ニュートンモデルを測定されたデータおよび記録された粘度に当てはめた。溶液の組成および粘度結果を表5に示し、図5にグラフで示している。
【0093】
【表5】

【0094】
実施例16
IOA、トルエンおよびSILICA−Bの異なる量に関する組成に対する粘度の三元プロットを作成した。C25クエット幾何学を用いる「ボーリン・C−VOR・レオメータ(BOHLIN C−VOR Rheometer)(ニュージャージー州イーストブランズウィックのボーリン・インストルメンツ(Bohlin Instruments(East Brunswick,NJ)から得られたもの)により溶液レオロジーを測定した。制御された応力スイープを25℃で1×10-3〜1×10+3の剪断応力範囲内で完了した。温度を+/−0.2℃の範囲内で、ペルチェ(PELTIER)を用いて制御した。ニュートンモデルを測定されたデータおよび記録された粘度に当てはめた。溶液の組成および粘度結果を表6に示し、図6にグラフで示している。
【0095】
【表6】

【0096】
本発明の種々の修正および変更は本発明の範囲および精神を逸脱せずに当業者に対して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】種々の液体中のナノ粒子の重量%に対する粘度の理想化された線図であって、表面改質ナノ粒子の相対的相溶性をそれから決定できる線図を示している。
【図2】比較例C1〜C4および実施例1、3および5に関するRa値およびRq値のプロットである。
【図3】比較例C1〜C3およびC5ならびに実施例7、11および13に関するRa値およびRq値のプロットである。
【図4】比較例C2および実施例8〜12に関するRa値およびRq値のプロットである。
【図5】トルエン、イソオクチルアクリレート(IOA)および1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(PMアセテート)に関するナノ粒子の重量%に対する溶液粘度のプロットである。
【図6】ナノ粒子、トルエンおよびIOAの重量%に対する溶液粘度の三元プロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)表面改質ナノ粒子、
(b)蒸気圧VP1を有する第1の液体、および
(c)VP1より低い蒸気圧VP2を有し、第1の液体に混和性である第2の液体、
を含む塗料溶液であって、前記ナノ粒子が第2の液体より第1の液体に相溶性が大である塗料溶液。
【請求項2】
前記第2の液体は硬化性であり、任意に第2の液体は、熱、化学線、電子ビーム線、水分またはそれらの組み合わせによって硬化可能である、請求項1に記載の塗料溶液。
【請求項3】
架橋剤を更に含む、請求項1に記載の塗料溶液。
【請求項4】
前記第2の液体は、アクリレート、メタクリレート、エポキシ、ポリエステル、ポリオール、イソシアネート、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の塗料溶液。
【請求項5】
前記第1の液体および/または第2の液体は、水、有機溶媒、無機溶媒およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、任意に前記有機溶媒は、アルコール、ケトン、芳香族炭化水素およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の塗料溶液。
【請求項6】
前記第2の液体は1−メトキシ−2−プロパノールアセテートである、請求項1に記載の塗料溶液。
【請求項7】
染料、顔料、充填剤、導電性粒子、熱伝達性粒子、繊維、膜形成ポリマー、触媒、開始剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択された材料を更に含む、請求項1に記載の塗料溶液。
【請求項8】
前記膜形成ポリマーはポリメチルメタクリレートである、請求項7に記載の塗料溶液。
【請求項9】
前記第2の液体はアクリレートであり、任意に前記アクリレートは、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の塗料溶液。
【請求項10】
塗膜均一性を強化する方法であって、
(a)請求項1〜9のいずれか1項に記載の塗料溶液を基材の表面に被着させる工程、および
(b)第1の液体の少なくとも一部を除去する工程であって、任意に除去が蒸発を含み、任意に前記第1の液体の少なくとも一部の除去が前記第1の液体の実質的にすべてを除去することを含む工程
を含む方法。
【請求項11】
(c)第2の液体の少なくとも一部を除去する工程であって、任意に除去が蒸発を含み、任意に前記第2の液体の少なくとも一部の除去が前記第2の液体の実質的にすべてを除去することを含む工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の液体を硬化および/または架橋させる工程を更に含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法によって製造された被覆基材。
【請求項14】
前記基材は、ガラス、金属、ポリマー、木材、セラミック、紙、布地およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の被覆基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−512412(P2007−512412A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541155(P2006−541155)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/033586
【国際公開番号】WO2005/056698
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】