説明

表面改質された無機ナノ粒子を含む安定化された粒子分散液

本発明は、表面改質された無機ナノ粒子を含む液中粒子分散液に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中粒子分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
通常の分散液は、分散相および連続相の2相からなる。最も一般的な分散液は、分散粒子および液体連続相のみからなる。形成された分散液が安定化されていない場合、分散粒子は、フロキュレートまたは集塊し、この2相は分離する。通常は、分散剤を使用して、2相が分離するのを防止する。分散剤は、分散粒子に吸着された後、分散液を立体的または静電的手段によって安定化する。連続相の粘度の増大によっても、分散液の完全な相分離を防止することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一面では、本発明は、分散相および連続相を含む分散液を提供する。分散相は、連続相に分散された粒子を含む。連続相は、液体連続相、および表面改質された無機ナノ粒子を含む。
【0004】
別の面では、本発明は、粒子を含む分散相および液体を含む連続相を含んだ分散液に有効量の表面改質された相容性無機ナノ粒子を添加することを含む分散液の安定化方法を提供する。
【0005】
別の面では、本発明は、1種または複数種の医薬品を含む薬剤分散液を提供する。
【0006】
別の面では、本発明は、治療上有効量の医薬品分散液を、哺乳類に経口で、注射で、その鼻腔路を経由して、吸入で、局所的に、またはその組合せによって投与することを含む哺乳類の治療方法を提供する。
【0007】
別の面では、本発明は、連続相に分散される分散相成分、および表面改質された無機ナノ粒子を含む分散液キットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の分散液は、実質的な撹拌なしに、有用な期間分散されたままであるか、あるいは最小限のエネルギー入力で容易に再分散される安定な分散液である。不溶性粒子および連続相を含む分散液は、有効量の表面改質された無機ナノ粒子を連続相に組み込むことによって安定化される。表面改質されたナノ粒子の「有効量」とは、分散粒子の凝集を最小限に抑え、分散液の実質的な撹拌なしに、有用な期間分散されたままである、あるいは最小限のエネルギー入力で容易に再分散される安定な分散液を形成する量である。特定の理論に拘泥するものではないが、ナノ粒子が、分散相の凝集を、粒子電荷によってではなく立体的に妨害すると考えられる。表面改質されたナノ粒子は、通常の分散剤を使用することなく、分散液を安定化する。本発明の分散液は、本技術分野で使用される用語でのサーファクタント、界面活性剤、洗浄剤、および/または通常の分散剤を0.001重量パーセント未満含有してもよい。
【0009】
本明細書で使用した場合には、「分散液」は、例えば、何分間か、何時間か、何日間かなど、有用な期間にわたって分離しない液体連続相内に分配または懸濁された固体粒子を意味する。本明細書で使用した場合には、「分散液」は、例えば、何分間か、何時間か、何日間かなど、有用な期間にわたって分離しない液体連続相内に分配または懸濁された固体粒子を意味する。
【0010】
本明細書で使用した場合には、「分離する」は、液体分散液中の固体粒子が、徐々に沈降しあるいはクリーム状になり、固体粒子および連続液相が非常に異なる濃度を有する別々の相を形成することを意味する。
【0011】
本明細書で使用した場合には、「分散液安定性」は、分散液の分散傾向の記述である。良好な分散液安定性を有する分散液の場合、粒子は、連続相中においてほぼ均質に分配されたままである。不十分な分散液安定性の分散液の場合、粒子は、連続相中にほぼ均質に分配されたままではなく、分離することがある。
【0012】
本明細書で使用した場合には、「賦形剤」は、エアロゾル分散液製剤のいくつかの態様を改善するために使用する主要な有効医薬品部分ではなく、広義には不活性な添加剤を指す。
【0013】
本発明の安定化された分散液は、表面改質された無機ナノ粒子を含む。表面改質されたナノ粒子は、連続相全体に分散された、独立した非会合の(すなわち、凝集していない)ナノ粒子であることが好ましく、互いに、または分散粒子と非可逆に会合しないことが好ましい。「会合する(associated with)」または「会合している(associating with)」という用語には、例えば共有結合、水素結合、静電気引力、ロンドンの力、および疎水的相互作用が含まれる。
【0014】
表面改質されたナノ粒子は、それで形成される組成物が、組成物の所望の特性に支障を来たすことになる程度の粒子集塊または凝集を含まないように選択される。表面改質されたナノ粒子は、液体連続相と相容になるように選択される。
【0015】
表面改質されたナノ粒子と液体連続相の相容性を評価する一方法は、得られた組成物が分離するかどうかを決定するステップを含む。透明な液体連続相の場合、表面改質されたナノ粒子と透明な液体連続相の相容性を評価する有用な一方法は、表面改質されたナノ粒子と液体連続相を組み合わせ、表面改質されたナノ粒子が液体連続相に完全に分散するかどうか観察するステップを含む。ナノ粒子は、可視光の波長より小さい寸法を有するので、完全な分散液は、透明な分散液をもたらす。
【0016】
表面改質されたナノ粒子の無機成分は、液体連続相に不溶になるように選択されるので、表面改質されたナノ粒子は、その相に分散するが、溶解しない。粒子の表面改質によって、粒子が液相と相容になることができ、したがって完全に分散することができる。ナノ粒子が可視光の波長より小さい場合、ナノ粒子は、完全に分散されたとき透明な溶液を形成するように見える。表面改質されたナノ粒子のサイズが大きくなるにつれて、連続相の曇りは一般に増大する。望ましい表面改質されたナノ粒子は、連続相から沈降しないように選択される。
【0017】
連続相と表面改質されたナノ粒子の相容性を評価する際の別のステップは、連続相に分散される液体をその後に導入すると、組成物が、有用な期間で安定な分散液相を形成するかどうか決定するステップを含む。有用な期間は、用途に応じて、何分間でも、何時間でも、何日間でも、何週間でも、または何年間でもよい。例えば、本発明の分散液が顔料の場合、分散液は何か月か安定なままであることが望ましい。しかし、本発明の分散液が製剤の薬剤である場合、分散液は、その薬剤が投与されるまでの数分間安定なままであるだけでよい。
【0018】
適切な表面基は、表面基および連続相の可溶性パラメータに基づいて選択することもできる。表面基、または表面基が由来する試剤は、連続相の可溶性パラメータと同様の可溶性パラメータを有することが好ましい。連続相が疎水性の場合、例えば当業者は、疎水性の連続相と相容である表面改質された粒子を実現するように様々な疎水性表面基から選択することができる。同様に、連続相が親水性の場合、当業者は、親水性表面基から選択することができ、連続相がヒドロフルオロカーボンの場合、当業者は、様々な相容性表面基から選択することができる。ナノ粒子は、組み合わせて、連続相の可溶性パラメータと同様の可溶性パラメータを有する有機ナノ粒子を提供する少なくとも2種の異なる表面基を含むこともできる。表面改質された有機ナノ粒子は、両親媒性ではない。
【0019】
表面基は、統計的に平均化された、ランダムに表面改質された粒子を提供するように選択することができる。
【0020】
凝集せずにその後連続相に分散することができる表面改質されたナノ粒子を提供するのに十分な量の表面基が、ナノ粒子の表面上に存在する。表面基は、単層、好ましくは連続単層をナノ粒子の表面上に形成するのに十分な量存在することが好ましい。
【0021】
表面改質基は、表面改質剤に由来してもよい。図で示すと、表面改質剤は、式A−Bで表すことができる。式中、A基は、粒子の表面に結合することができ、B基は、連続相の成分と反応することができでもできなくてもよい相容化基である。相容化基は、粒子を、相対的により高い極性、相対的により低い極性、または相対的に無極性にするように選択することができる。
【0022】
表面改質剤の適切なクラスには、例えばシラン、有機酸、有機塩基、アルコール、およびその組合せが含まれる。
【0023】
特に有用な表面改質剤としては、シランがある。有用なシランの例としては、オルガノシランがあり、例えば、アルキルクロロシラン、アルコキシシラン、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ポリトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ(t−ブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソブトキシ)シラン、ビニルトリス(イソプロペノキシ)シラン、およびビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン;トリアルコキシアリールシラン;イソオクチルトリメトキシ−シラン;N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバマート;N−(3−トリエトキシシリルプロピル)メトキシエトキシエトキシエチルカルバマート;例えば3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)メチルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロペニルトリメトキシシラン、および3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシランを含めて、シラン官能性(メタ)アクリラート;例えばポリジメチルシロキサンを含めて、ポリジアルキルシロキサン、例えば置換および非置換アリールシランを含めて、アリールシラン、例えばメトキシおよびヒドロキシ置換アルキルシランを含めて、例えば置換および非置換アルキルシランを含めて、アルキルシラン、ならびにその組合せが含まれる。
【0024】
シラン官能性(メタ)アクリラートを使用したシリカ表面改質方法は、例えば米国特許第4,491,508号明細書;同第4,455,205号明細書;同第4,478,876号明細書;同第4,486,504号明細書;および同第5,258,225号明細書に記載されている。
【0025】
有用な有機酸表面改質剤には、例えば炭素(例えば、カルボン酸)、硫黄、およびリンの酸素酸、ならびにその組合せが含まれる。
【0026】
カルボン酸官能基を有する極性表面改質剤の代表例には、酸または塩の形のCH3O(CH2CH2O)2CH2COOH(以降、MEEAA)、および化学構造CH3OCH2CH2OCH2COOH (以降、MEAA)を有する2−(2−メトキシエトキシ)酢酸、およびモノ(ポリエチレングリコール)スクシナートが含まれる。
【0027】
カルボン酸官能基を有する非極性表面改質剤の代表例には、オクタン酸、ドデカン酸、およびオレイン酸が含まれる。
【0028】
適切なリン含有酸の例には、酸または塩の形の、例えばオクチルホスホン酸、ラウリルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、およびモノポリエチレングリコールホスファートを含めて、ホスホン酸が含まれる。
【0029】
有用な有機塩基表面改質剤には、例えばオクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミンを含めて、例えばアルキルアミン、およびモノポリエチレングリコールアミンが含まれる。
【0030】
他の有用な非シラン表面改質剤の例には、アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチルアクリラート、モノ−2−(メタクリロイルオキシエチル)スクシナート、およびその組合せが含まれる。極性と反応性とをナノ粒子に与える有用な表面改質剤は、モノ(メタクリロイルオキシポリエチレングリコール)スクシナートである。
【0031】
適切な表面改質アルコールの例には、例えばオクタデシル、ドデシル、ラウリルおよびフルフリルアルコールを含めて、脂肪族アルコール、例えばシクロヘキサノールを含めて、脂環式アルコール、例えばフェノールおよびベンジルアルコールを含めて、芳香族アルコール、ならびにその組合せが例えば含まれる。
【0032】
連続相が芳香族環を含有するエポキシ樹脂を含む場合、有用な表面改質基は、芳香族環を含むことができる。エポキシ樹脂組成物に特に適した表面改質基の例は、米国特許第5,648,407号明細書に記載されている。
【0033】
ナノ粒子の表面を改質するための様々な方法、例えば表面改質剤を(例えば、粉末またはコロイド分散液の形の)ナノ粒子に添加し、表面改質剤がナノ粒子と反応できるようにする方法が利用できる。当業者なら、ナノ粒子を相容化基と結びつける複数の合成シーケンス、例えば反応性基/リンカーをナノ粒子と反応させ、続いて相容化基と反応させることができることは、範囲内で考えられ、想定されると認識されよう。あるいは、反応性基/リンカーを相容化基と反応させ、続いてナノ粒子と反応させてもよい。他の有用な表面改質方法は、例えば米国特許第2,801,185号明細書および同第4,522,958号明細書に記載されている。
【0034】
ナノ粒子は、無機である。適切な無機ナノ粒子の例には、シリカ、およびジルコニア、チタニア、リン酸カルシウムを含めて、金属酸化物ナノ粒子、例えばヒドロキシアパタイト、セリア、アルミナ、酸化鉄、バナジア、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミナ/シリカ、ならびにその組合せが含まれ、さらに材料混合物などの複合材、または中心の無機核部を包囲する材料層が含まれる。ナノ粒子は、平均粒径が約100nm未満、他の実施形態では、約50nm以下;約3nmから約50nm;約3nmから約20nm;および約5nmから約10nmである。この範囲には、3nmから100nm未満の間の任意のサイズまたは範囲が含まれる。ナノ粒子が凝縮する場合、凝縮した粒子の最大断面寸法は、これらの好ましい範囲のいずれかに包含される。
【0035】
有用な表面改質されたジルコニアナノ粒子は、粒子の表面上に吸着されたオレイン酸およびアクリル酸の組合せを含む。
【0036】
有用な表面改質されたシリカナノ粒子には、例えばアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、およびその組合せを含めて、シラン表面改質剤で表面改質されたシリカナノ粒子が含まれる。シリカナノ粒子を、例えばアルコール、例えばアルキルトリクロロシラン、トリアルコキシアリールシラン、トリアルコキシ(アルキル)シラン、およびその組合せを含めて、オルガノシラン、オルガノチタナート、ならびにその混合物を含めて、いくつかの表面改質剤で処理することができる。
【0037】
ナノ粒子は、コロイド分散液の形とすることができる。有用な市販の非改質シリカ出発材料の例には、米国イリノイ州ネーパービル(Naperville, IL)のナルコケミカル(Nalco Chemical Co.,)から製品名NALCO 1040、1050、1060、2326、2327、および2329コロイドシリカで市販されているナノサイズのコロイドシリカが含まれる。
【0038】
有用な金属酸化物コロイド分散液には、コロイド状酸化ジルコニウムがあり、その適切な例は、米国特許第5,037,579号に記載され、またコロイド状酸化チタンがあり、その有用な例は、1998年7月30日出願の発明の名称が「透明な金属酸化物のコロイド及びセラマーを製造するためのナノサイズ金属酸化物の粒子(Nanosize Metal Oxide Particles for Producing Transparent metal Oxide Colloids and Ceramers)」(アーニーら(Arney))という国際公開第00/06495号パンフレットに記載されている。
【0039】
本発明の安定化された分散液は、液体連続相を含む。連続相は、利用された比の連続相の構成物質から得られた液体連続相に分散粒子が分散され得る限り、混和性または可溶性の非反応性構成物質の1種または複数種で構成することができる。
【0040】
液体連続相の例には、水;例えば酸、アルコール、ケトン、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、グリコール、エーテル、炭化水素、ハロカーボン、モノマー、オリゴマー、潤滑油、(モノ、ジ、およびトリグリセリドを含めて)植物油、シリコーン油、保湿油(例えば、鉱油およびホホバ油)、燃料油、(ケロシン、ガソリン、ディーゼル油を含めて)燃料、エチレングリコールのオリゴマー、アルキルおよびアリール窒素化合物、部分または完全フッ素化化合物、ポリマーを含めて有機液体;ならびにその組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、液体連続分散液は、少なくとも95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5重量パーセントの水とすることができ、100から0重量パーセントの間の任意の範囲の水とすることができる。いくつかの実施形態では、液体連続分散液は、少なくとも95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5重量パーセントの有機物とすることができ、100から0重量パーセントの間の任意の範囲の有機物とすることができる。
【0041】
連続相は、分散液の安定性、または分散液の他の有益な特性に影響を及ぼす(分散された不溶性粒子の分散を援助または妨害する)ことがない追加の成分、例えば生物学的適合性に影響を及ぼす賦形剤;塩、または有機材料を、その中で溶解させることができる。
【0042】
分散相は、液体連続相において最低限の可溶性を有する任意の当該粒子とすることができる。粒子は、最大直径が約100マイクロメートル未満であることが望ましい。分散粒子は、無機、有機、またはその組合せとすることができる。分散粒子の例には、医薬品、カーボンブラック、二酸化チタン、剥脱剤、化粧品、顔料、および研磨剤が含まれる。
【0043】
特定の医薬品には、抗アレルギー剤、鎮痛剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、治療用タンパク質およびペプチド、鎮咳剤、狭心症製剤、抗生物質、抗炎症製剤、利尿剤、ホルモン、例えば血管収縮性アミン、酵素、アルカロイド、ステロイドなどのスルホンアミド剤、およびこれらの特定の医薬品の例の組合せが含まれ、使用できる医薬品は、イソプロテレノール、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、グルカゴン、アドレノクロム、トリプシン、エピネフリン、エフェドリン、ナルコチン、コデイン、アトロピン、ヘパリン、モルヒネ、ジヒドロモルヒノン、ジヒドロモルヒネ、エルゴタミン、スコポラミン、メタピリレン、シアノコバラミン、テルブタリン、リミテロール、サルブタモール、イソプレナリン、フェノテロール、臭化オキシトロピウム、レプロテロール、ブデソニド、フルニソリド、シクレソニド、フォルモテロール、プロピオン酸フルチカゾン、サルメテロール、プロカテロール、イプラトロピウム、トリアムシノロンアセトニド、チプレダン、フロ酸モメタゾン、コルヒチン、ピルブテロール、ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、オルシプレナリン、フェンタニール、ジアモルヒネ、およびジリチアゼムである。他は、ネオマイシン、セファロスポリン、ストレプトマイシン、ペニシリン、プロカインペニシリン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、ヒドロキシテトラサイクリンなどの抗生物質;コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロンなどの副腎皮質刺激ホルモンおよび副腎皮質ホルモン;クロモリンナトリウム、ネドクロミルなどの抗アレルギー化合物、インスリン、ペンタミジン、カルシトニン、アミロライド、インターフェロン、LHRH類似体、IDNAアーゼ(IDNAase)、ヘパリンなどのタンパク質およびペプチド分子である。適用できる場合は、上記に例示する医薬品を、遊離塩基として、または当技術分野に知られている1種または複数種の塩として使用することができる。ワクチンも、この手法から恩恵を受けることができる。
【0044】
例として上記した医薬品を、遊離塩基として、または当技術分野に知られている1種または複数種の塩として使用することができる。遊離塩基または塩の選択は、製剤における医薬品の物理的安定性によって影響される。例えば、本発明の製剤においてサルブタモールの遊離塩基は、硫酸サルブタモールより高い分散液安定性を発現することがわかった。
【0045】
上記医薬品の以下の塩:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カムシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エディシル酸塩、エストール酸、エシル酸、フマル酸塩、フルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素塩、塩酸塩、ヒドロキシナフト酸、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸、メシル酸、メチルブロミド、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パントテン酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、およびトリエチオダイドを使用することができる。
【0046】
カチオン塩も使用することができる。適切なカチオン塩には、アルカリ金属、例えばナトリウムおよびカリウム、アンモニウム塩、ならびに当技術分野で薬剤として許容できると知られているアミンの塩、例えばグリシン、エチレンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、オクタデシルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1−アミノ−2−プロパノール−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)プロパン−1,3−ジオール、および1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2 イソプロピルアミノエタノールが含まれる。
【0047】
薬剤用の場合、医薬品粉末の粒径は、直径100マイクロメートル以下とすべきであることが望ましい。別の実施形態では、粒径は直径25マイクロメートル未満とすべきである。望ましくは、微粉化した固形粉末の粒径は、生理学的理由で、約25マイクロメートル未満、好ましくは、直径約10マイクロメートル未満とすべきである。
【0048】
本発明による医薬品分散液は、分散液に分散された医薬品を治療上有効量含む。「治療上有効量」は、気管支拡張や抗ウイルス活性などの治療効果を誘発するのに十分な量を意味する。この量は、特定の医薬品の薬理活性、治療対象の状態、投与する頻度、治療部位、同時投与される他の任意の治療薬または賦形剤の存在など当業者に知られている要因に従って変わる。医薬品の濃度は所望の用量に依存するが、一般に0.01〜15、0.01〜10;0.01〜5;0.01〜4;0.01〜3;または0.01〜2重量パーセントの範囲であり、0.001〜15重量パーセントの任意の量または範囲で存在することができる。
【0049】
本発明の医薬品分散液を、経口、注射(例えば、静脈(IV)、腹腔(IP)、筋肉(IM)、皮下(subQ))、局所、その鼻腔路経由、吸入、およびその組合せを含む投与手段によって患者(哺乳類)に投与することができる。当業者に知られている医薬品送達装置を使用して、薬剤分散液を投与することができる。このような装置には、例えばポンプスプレー、噴霧器(ネブライザー)、注射器などが含まれる。
【0050】
本発明の分散液キットは、表面改質された無機ナノ粒子および分散相成分を含む。このようなキットの目的は、分散液の末端ユーザーが所望するときに連続相を添加することによって分散液を形成できるようにすることである。キットは、適切な量の連続相と混合させる所定の量の分散相成分および表面改質されたナノ粒子を含むことができる。分散相成分およびナノ粒子は、粉末/粒子として、または液体媒体に事前に分散させて供給することができる。ナノ粒子および分散相成分は、一緒に混合して、または別々にキットで供給することができる。キットは、さらに末端ユーザーが使用する場合の、本発明の分散液を形成するための指示書、例えば量、比率、有用な連続相、混合ステップなどを含むこともある。
【0051】
本発明の分散液および分散液キットは、表面改質された有機分子、非改質有機分子、および/または有機ポリマーナノ粒子を、表面改質された無機ナノ粒子と組み合わせて含むこともできる。表面改質された有機分子、非改質有機分子、有機ポリマーマイクロスフェアは、2003年5月30日出願の米国特許出願第10/449,677号明細書に記載されている。
【0052】
次に、以下の実施例によって本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0053】
イソオクチルで表面改質されたシリカナノ粒子(IO−ナノSiO2)の調製
イソオクチルシランで表面改質されたシリカナノ粒子(IO−ナノSiO2)を、米国特許出願公開第2002/0128336号明細書に記載されているのと同様にして調製した。
【0054】
実施例1〜6
カーボンブラック、酸化アルミニウム、および酸化セリウムのいずれの不溶性粒子の分散液を、別々のスクリューキャップバイアル中で、各不溶性固体0.1グラム(g)とトルエン中2%IO−ナノSiO21.9g(実施例2は米国特許出願公開第2002/0128336号と同様)を組み合わせることによって調製した。固体0.25gとトルエン中2%IO−ナノSiO21.9gで追加の試料を調製した。次いで、バイアルにキャップをし、15秒間手で激しく振盪した。次いで、バイアルを5分間放置し、その後固体の懸濁が認められた。固体が5分間懸濁したままの場合懸濁が安定であると判断した。データを表1に示す。
【0055】
比較例A〜C
比較試料A〜Cはそれぞれ、表面改質されたシリカ粒子を配合から除外したという相違点を除いて、実施例1、3、および5(カーボンブラック、酸化アルミニウム、および酸化セリウム)と全く同じ方式で配合した。比較懸濁液はすべて、安定ではなかった。不溶性固体が、5分たたないうちに液層から沈殿した。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例7〜15
組成物I
ナルコ(Nalco)2326(コロイドシリカ分散液、米国イリノイ州ネーパービル(Naperville, IL)のナルコケミカル(Nalco Chemicals Co.,)から市販)250g、 Silquest A1230 (米国コネチカット州ミドルベリ(Middlebury, CT)のクロンプトンケミカルズ(Crompton Chemicals)から市販)46.3g、および超純水203.5gを混合し、80℃で18時間加熱した。
【0058】
組成物II
組成物Iの6.7gをジャーに添加し、超純水93.3gと組み合わせた。
【0059】
組成物III
組成物IIの15mLを50mL容フラスコに添加し、容積まで超純水で希釈した。
【0060】
組成物IV
組成物IIの5mLを50mL容フラスコに添加し、容積まで超純水で希釈した。
【0061】
実施例7〜15についての配合を下記の表2に示す。ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)の既知量を、ガラスバイアルに添加し、下記のナノ粒子組成物のうちの1つを10mL添加することによって、試料を調製した。バイアルにキャップをし、30秒間振盪し、20分間静置し、分散安定性を観察し、記録した。
【0062】
【表2】

【0063】
比較例A〜C、および実施例7〜15の目視比較結果
実施例7、10、および13と、比較例Aについての目視比較結果は、以下の通りである。比較例Aは、非常に少しの医薬品しか液体連続相内に分散されなかった。医薬品の大半は、液体連続相の表面に、または液体表面の上のバイアル壁に残存していた。実施例7、10、および13は、液体連続相に分散された医薬品が比較例Aよりかなり多く、液体の表面またはバイアル壁の医薬品が比較例Aより少ないように見える。実施例7、10、および13を比較すると、表面改質されたナノ粒子の濃度がより高いほど、分散された医薬品のレベルがより高いように見える分散液を提供した。
【0064】
上記の観察は、実施例8、11、および14と比較例B、ならびに実施例9、12、および15と比較例Cについても当てはまった。
【0065】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の予測できる修正形態および変更形態は当業者に明らかであろう。本発明は、説明目的で本出願に記載した実施形態に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体連続相および表面改質された無機ナノ粒子を含む連続相と、
液体連続相に分散された粒子を含む分散相と、
を含む分散液。
【請求項2】
液体連続相が有機液体を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
液体連続相が水を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項4】
液体連続相が少なくとも50重量パーセントの水を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項5】
前記個別のナノ粒子の粒径が約50ナノメートル以下である、請求項1に記載の分散液。
【請求項6】
前記個別のナノ粒子の粒径が約3ナノメートルから約50ナノメートルの範囲である、請求項1に記載の分散液。
【請求項7】
前記個別のナノ粒子の粒径が約20ナノメートル以下である、請求項1に記載の分散液。
【請求項8】
前記個別のナノ粒子の粒径が約3ナノメートルから約20ナノメートルの範囲である、請求項1に記載の分散液。
【請求項9】
前記個別のナノ粒子の粒径が約3ナノメートルから約10ナノメートルの範囲である、請求項1に記載の分散液。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、リン酸カルシウム、セリア、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、アルミニウム/シリカ、およびその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の分散液。
【請求項11】
前記ナノ粒子が、疎水性基、親水性基、およびその組合せからなる群から選択される表面基を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項12】
ナノ粒子が、ポリエチレングリコールからなる群から選択される親水性表面基を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項13】
前記ナノ粒子が、シラン、有機酸、有機塩基、およびその組合せからなる群から選択される剤に由来する表面基を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項14】
前記ナノ粒子が、アルキルシラン、アリールシラン、アルコキシシラン、およびその組合せからなる群から選択される剤に由来するオルガノシリル表面基を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項15】
前記ナノ粒子が、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、およびその組合せからなる群から選択される剤に由来する表面基を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項16】
液体連続相が、水、有機酸、アルコール、ケトン、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、グリコール、エーテル、炭化水素、ハロカーボン、モノマー、オリゴマー、潤滑油、植物油、シリコーン油、鉱油およびホホバ油、燃料油、ケロシン、ガソリン、ディーゼル油、エチレングリコールのオリゴマー、アルキルおよびアリール窒素化合物、部分または完全フッ素化化合物、ならびにその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の分散液。
【請求項17】
分散相が1種または複数種の医薬品を含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項18】
液体連続相が、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、乳酸エステル、またはその組合せを含む、請求項17に記載の分散液。
【請求項19】
液体連続相が、溶解された無機もしくは有機の塩、ポリマー、賦形剤、またはその組合せをさらに含む、請求項17に記載の分散液。
【請求項20】
液体連続相が少なくとも50重量パーセントの水である、請求項17に記載の分散液。
【請求項21】
医薬品が、ステロイド、抗生物質、気管支拡張剤、または鎮痛剤からなる群から選択される、請求項17に記載の分散液。
【請求項22】
サーファクタントを0.001重量パーセント未満含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項23】
サーファクタント、界面活性剤、洗浄剤、および通常の分散剤を0.001重量パーセント未満含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項24】
有機ナノ粒子をさらに含む、請求項1に記載の分散液。
【請求項25】
サーファクタント、界面活性剤、洗浄剤、通常の分散剤を0.001重量パーセント未満含む、請求項17に記載の分散液。
【請求項26】
分散された固相および液体連続相を含む分散液に有効量の表面改質された相容性無機ナノ粒子を添加することを含む、分散液の安定化方法。
【請求項27】
治療上有効量の請求項17に記載の薬物分散液を、経口、注射、局所、その鼻腔路経由、吸入、およびその組合せからなる群から選択される投与手段によって哺乳類に投与することを含む、哺乳類の治療方法。
【請求項28】
有効量の薬物分散液の投与が、噴霧器を使用した吸入によるものである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
有効量の薬物分散液の投与が、ポンプスプレーを使用した鼻腔路または局所によるものである、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
有効量の薬物分散液の投与が注射によるものである、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
連続相に分散される分散相成分、および表面改質された無機ナノ粒子を含む分散液キット。

【公表番号】特表2007−500209(P2007−500209A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532386(P2006−532386)
【出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/010849
【国際公開番号】WO2004/108116
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】