説明

表面改質シリカ、それを含むゴム組成物及びシリカの改質方法

【課題】 ゴム中での分散性を改良するとともにゴム分子との結合性を向上する表面改質シリカ、及びそのシリカを用いた補強性や低発熱性、耐摩耗性など従来のシリカ配合では得られなかったシリカの特長を発揮するゴム組成物を提供する。
【解決手段】 シリカ粒子表面の細孔中にイソシアナートと多価アルコール又はアミンとの混合物又は分子内にエポキシ基を2個以上持つ数平均分子量が1000以下の低分子化合物を含浸させ、熱又は光により重合反応を開始し前記混合物又は低分子化合物を開環重合又は縮重合させ数平均分子量3000以上にポリマー化し、該シリカ粒子表面にポリマー被覆層を形成した表面改質シリカ、及びジエン系ゴム成分100重量部に対して、前記表面改質シリカを20〜100重量部含むゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質シリカ、それを含むゴム組成物及びシリカの改質方法に関し、さらに詳しくは、シリカ粒子表面を改質しゴム中への分散性を改良し、優れた補強性能や低発熱性、耐摩耗性などのゴム特性を付与する表面改質シリカとその改質方法、その表面改質シリカを用いたゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴムの補強用充填材として、ゴム中への分散を容易にし、優れたゴム物性を付与できるカーボンブラックが広く使用されている。しかし、近年、シリカを充填したゴム組成物が、カーボンブラックを充填したゴム組成物と比較し、内部発熱を少なくできる、耐引裂き性の改良に優れる、自由着色性を有すことなどから、ゴム用充填材としてシリカが注目されるようになってきた。特に、乗用車用タイヤにおいて、低燃費性と高グリップ性を両立させるために、シリカを主とする補強材を使用したゴム組成物が要求されている。
【0003】
ところで、カーボンブラックやシリカは、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いてゴム中へ配合する方法が一般的であるが、シリカ粒子表面はシラノール基に覆われているため強い自己凝集性を持ち、ゴム中への良好な分散が困難であり、ゴム混練時間を長く必要とし、またゴム組成物のムーニー粘度が高くなるという欠点を有し、このため、シリカは、カーボンブラックの補助的なゴム補強材として用いられることが多かった。
【0004】
また、表面が極性の高いシラノール基で覆われているシリカは、炭化水素からなる極性の低いゴムとの相互作用に欠けるため十分な補強性能を得ることが難しく、シリカとゴム分子とを化学結合させるシランカップリング剤の使用が不可欠であり、例えば、ジエン系ゴムとシリカよりなる系にシランカップリング剤を配合することにより、そのカップリング効果によりゴムとシリカ粒子との親和性を高め、分散性を改良する方法が数多く開示されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、シリカ粒子表面を改質しゴムとの親和性を高めることも提案されている。例えば、フッ素含有シラン化合物とフッ素を含有しないシラン化合物とを併用して疎水化するシリカ粒子表面のモノマー処理(特許文献2)、また加水分解が可能な末端基を有する反応性ポリシロキサンまたはその加水分解物の少なくとも1種を用いて表面処理すること(特許文献3)、またシリカ粒子表面をプラズマによりグラフト状に結合した重合体層で被覆し表面を改質すること(特許文献4)などが開示されている。
【特許文献1】特開平3−252431号公報
【特許文献2】特開2004−210566号公報
【特許文献3】特開2000−44583号公報
【特許文献4】特開2000−143230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、シランカップリング剤を使用するものでもシリカの補強性能はカーボンブラックのそれには及ばず、十分な補強効果を発揮させるためには、多量のシランカップリング剤を配合しなければならないという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載のようにシリカ粒子の表面をモノマー処理で改質するものは、モノマー処理だけでは高分子量のゴムとの相互作用を十分に改質することが困難であり、特許文献3のように界面活性剤などのポリマー処理をするものは、シリカ表面細孔のの微細空隙中にポリマーが十分浸透せずやはりゴムとの相互作用を十分に改質することができなかった。
【0008】
特許文献4に記載のように、シリカ表面をプラズマによりポリマーをグラフト状に重合するものは、プラズマ処理工程が複雑となり大量処理を困難として、ゴム補強用のシリカ改質としてはコスト面に実用的ではないという欠点がある。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、ゴム中での分散性を改良するとともにゴム分子との結合性を向上する表面改質シリカを提供することで、ゴム分子との相互作用を高めて補強性能や低発熱性、耐摩耗性などシリカ配合の特長を十分に発揮することができる表面改質シリカを用いたゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、シリカは表面の細孔中に開環重合又は縮重合が可能な極性基を有する低分子化合物を含浸させた後、これをポリマー化することによりシリカ粒子と強く結合する高極性官能基とゴムとの相互作用の強い低極性官能基とを有するポリマーでシリカ表面を被覆することでシリカ粒子の表面を該ポリマーで被覆することで、ポリマーの介在によって極性の異なるシリカとゴムとを強固に結合させることを見出し本発明の完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の表面改質シリカは、シリカ粒子表面が開環重合又は縮重合により得られた数平均分子量3000以上のポリマーで被覆されていることを特徴とし、前記ポリマーが、ウレタン結合又はアミド結合又は複数のエポキシ基を有することが好ましい。
【0012】
また、前記ポリマーが、ベンゼン環、エーテル結合及び炭素−炭素結合の少なくとも1種類より構成される構造部分を50重量%以上含むことが好ましい。
【0013】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して、前記表面改質シリカを20〜100重量部含むもので、この場合、前記ジエン系ゴム成分が、官能基によりゴム分子末端が変性されたゴム成分を含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明のシリカの改質方法は、シリカ粒子表面の細孔中にイソシアナートと多価アルコール又はアミンとの混合物又は分子内にエポキシ基を2個以上持つ数平均分子量が1000以下の低分子化合物を含浸させ、熱又は光により重合反応を開始し前記混合物又は低分子化合物を開環重合又は縮重合させ数平均分子量3000以上にポリマー化し、該シリカ粒子表面にポリマー被覆層を形成することを特徴とし、前記混合物又は低分子化合物の処理量が、前記シリカ重量に対して0.1〜20重量%であることが好ましい。
【0015】
本発明による表面改質シリカは、シリカ粒子表面がウレタン結合やアミド結合又はエポキシ基を有するポリマーで被覆されることで、高極性の官能基部分とシリカが強い物理的結合で結び付けられ、一方ポリマーの低極性の官能基部分とゴムとが強い相互作用を発現することで、該ポリマーを介してシリカとゴムとの間に強い相互作用が発生する。これにより、ゴムとの親和性を向上しゴム中でのシリカ分散性を良好にするとともに、シリカとゴムとの結合力を高めてシリカの特長を活かしたゴム特性を向上するゴム組成物を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表面改質シリカによれば、ゴム中での分散性に優れるとともにゴム分子との結合力を向上することができるので、この表面改質シリカを用いたゴム組成物は混合性、加工性を改善して生産性を向上するとともに、シリカとゴム分子との相互作用を高めて補強性や低発熱性、耐摩耗性などのシリカ配合の特長を十分発揮させることができる、従来のシリカ配合では得られなかった優れたゴム特性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0018】
本発明において用いられるシリカは特に制限はなく、従来よりゴムの補強用充填材として公知の方法により得られるシリカの中から任意に選択して用い、本発明に係る改質方法により表面改質シリカを調整することができる。
【0019】
こののようなシリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸),乾式シリカ(無水ケイ酸),ケイ酸カルシウム,ケイ酸アルミニウム等が挙げられるが、中でも破壊特性の改良効果並びにウェットグリップ性及び低転がり抵抗性の両立効果が最も良好である湿式シリカが好ましく、生産性に優れる点からも好ましい。
【0020】
上記シリカは、窒素吸着比表面積(BET)(ISO 5794に準じるBET法による測定値)が50〜400m/g、好ましくは100〜300m/gの範囲であり、シリカ粒子表面に細孔を形成して液状の低分子化合物が含浸できる空隙を確保するとともに、このシリカを含むゴム組成物の特性を維持するものとなる。すなわち、BETが50m/g未満であると細孔の空隙が小さく低分子化合物の含浸が不十分となってシリカと重合後ポリマーとの結合力が十分得難く、400m/gを超えるシリカはシリカ製造面で容易でないのが現状である。
【0021】
本発明の表面改質シリカに用いられる開環重合又は縮重合が可能な低分子化合物としては、重合後ポリマーにウレタン結合やアミド結合又は複数のエポキシ基を有するものが好ましく、イソシアナートと多価アルコール又はアミンとの混合物、或いは分子内にエポキシ基を2個以上持つ数平均分子量が1000以下の低分子化合物が挙げられる。
【0022】
上記イソシアナートは、イソシアナート基を分子内に持ち水酸基やアミノ基と反応しウレタン結合やアミド結合を生成するもので、ジイソシアナートやポリメリックメチレン−ビス(4−フェニルイソシアナート)(p−MDI)、トリフェニルメタントリイソシアナート、トリス(フェニルイソシアナート)チオホスフェート、アロハナート変性トリレンジイソシアナート(TDI)、ビウレット変性TDI、グリセリン変性TDIなどのポリイソシアナートが挙げられる。
【0023】
多価アルコールとしては、一般にポリオールと呼ばれるもので、ヘキサメチレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ポリエーテル、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネート、水酸基末端のポリブタジエンなどが挙げられる。
【0024】
また、アミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメートなどが挙げられる。
【0025】
イソシアナートと多価アルコール又はアミンとの混合割合は、イソシアナート100部に対して、多価アルコール又はアミンが100〜2000部であり、開環又は縮合により付加重合し、ウレタン結合やアミド結合を有する数平均分子量が3000以上のポリマーが重合される。
【0026】
また、分子内にエポキシ基を2個以上持つ低分子化合物としては、エピクロロヒドリンとビスフェノールA又は多価アルコールとの組み合わせにより得られるエポキシ初期縮合物が挙げられる。
【0027】
上記エポキシ初期縮合物は、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンなどのアミン類、無水フタル酸などの酸無水物の硬化剤を加えて反応させると、エポキシ基が開環して付加重合し数平均分子量が3000以上のエポキシポリマー(エポキシ樹脂)を生成する。
【0028】
上記イソシアナートと多価アルコール等との混合物やエポキシ初期縮合物の数平均分子量は1000以下にある低分子量であることが好ましく、分子量が1000を超えると液体粘度が上昇し、シリカ細孔の空隙中に低分子化合物の含浸が不十分となってシリカとポリマーとの結合力が十分得られない。
【0029】
このようにして得られたポリマーは、ウレタン結合やアミド結合、エポキシポリマーの水酸基が高極性官能基となり、それ以外に存在する低極性官能基を有するポリマーが重合されるので、高極性官能基部分とシリカとが強く物理的結合で結び付けられ、一方ポリマーの低極性官能基部分とゴム分子とが強い相互作用を発生するようになり、その結果シリカとゴムとの間にシリカ表面のポリマーを介して強い相互作用が発現される。
【0030】
上記重合後のポリマーの数平均分子量が3000に満たないと、ポリマー中の極性官能基部分の生成が不足し、ポリマーとシリカ及びゴム分子との相互作用が得られず、本発明を達成できない。
【0031】
本発明においては、上記イソシアナートと多価アルコール又はアミンとの混合物、或いはエポキシ初期縮合物の複数を組み合わせて用いてもよく、組み合わせによる相乗効果を得ることができる。
【0032】
また、上記ポリマーは、ポリマーの分子構造中に、低極性官能基となる炭素原子を含むベンゼン環、エーテル結合及び炭素−炭素結合などの少なくとも1種類より構成される構造部分を50重量%以上含むことが好ましく、低極性の炭化水素系のゴム分子と親和性を高めて相互作用をより向上させることができる。
【0033】
また、本発明のシリカの改質方法は、シリカ粒子表面の細孔中に上記液状のイソシアナートと多価アルコール又はアミンとの混合物又はエポキシ初期縮合物からなる低分子化合物を含浸させ、熱又は光により重合反応を開始し開環又は縮合により付加重合させポリマー化し、シリカ粒子表面にポリマー被覆層を形成するものである。
【0034】
本発明において、前記低分子化合物をシリカ表面の細孔中に含浸させる方法は特に限定されることはなく、低分子化合物が細孔空隙内の隅々まで含浸できればよく、余剰のモノマーがシリカ表面を少なくとも部分的に被覆するものであればよい。
【0035】
この含浸方法としては、例えば、容器内で撹拌中のシリカ粒子に低分子化合物を滴下し撹拌する方法、またシリカ粒子中に低分子化合物を噴霧する方法、シリカ粒子を入れた容器を真空引きし低分子化合物の蒸気圧を利用して細孔中にシリカを含浸させる方法、などが挙げられる。
【0036】
シリカに対する上記低分子化合物の処理量は、シリカ重量に対して0.1〜20重量%程度である。この処理量が0.1重量%未満であるとシリカ表面の細孔への低分子化合物の含浸量及びポリマー生成の絶対量が不足し、シリカとポリマーとの結合力及びポリマーとゴム間の結合力が弱くなり、結果としてシリカとゴムとの結合力不足となる。また20重量%を超えて処理量を増すと、ポリマー被覆領域が多くなりすぎてシリカ表面のシラノール基を覆ってしまいカップリング効果が減少し補強性の低下を招くおそれがある。
【0037】
上記開環重合又は縮重合は、熱又は光により重合反応を開始させ低分子化合物のポリマー化が行われ、例えば、熱による重合は低分子化合物を含浸したシリカを容器内で撹拌しながら60〜150℃に加熱することで得られ、また光による重合は一定温度において光を照射するなどで行われる。
【0038】
上記シリカ粒子表面に被覆された低分子化合物は数平均分子量3000以上にポリマー化されることで、ポリマーの高極性官能基部分と相互作用を発生するとともに、シリカ細孔中にポリマーが投錨効果の如く生じる強固な物理的結合を得るとともに、前記細孔中のポリマーに連続してシリカ粒子表面の少なくとも一部が有機化されるとともに、低極性官能基を有するポリマーにより被覆されることでゴムとの親和性を向上する表面改質シリカが得られる。
【0039】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分に上記表面改質されたシリカを配合し用いられる。ゴム成分としては、ジエン系ゴムが好ましく、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等のジエン系合成ゴムが例示され、その1種類または2種類以上のブレンドを用いることができる。また、ジエン系ゴム以外にブチルゴム(IIR)やエチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)などの非ジエン系ゴム成分を少量ブレンドして用いてもよい。
【0040】
また、前記ゴム成分は、官能基によりゴム分子末端が変性されたゴム成分を含むことが好ましく、官能基としては水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アミド基などが挙げられ、公知の方法で末端変性されたIR、SBR、BRなどが使用でき、上記シリカ表面のポリマーとの相互作用を高めることができる。
【0041】
上記ゴム組成物のシリカ配合量は、ジエン系ゴム成分100重量部に対して20〜100重量部であり、20重量部未満ではシリカの補強性能や低発熱性、グリップ性などが得られず、100重量部を超えるとムーニー粘度の上昇と共にゴム硬度が高くなって加工性が悪化し、また耐摩耗性やグリップ性、氷上性能などが低下する。
【0042】
本発明にかかる表面改質シリカは、通常の方法でゴム成分、他の配合成分と混合することができ、加硫も従来からの一般的なシリカ配合の場合と同じ加硫方法で行うことができる。
【0043】
また、本発明のゴム組成物では、従来のシリカ配合で用いられるシランカップリング剤を併用することができる。シランカップリング剤としては、特に制限はなく、従来から使用されている公知のもの、例えば、ビス(3−トリメチルシリルプロピル)テトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−α−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N、N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、2−ベンゾチアジル−3−トリメトキシシリルプロピルテトラスルフィドが挙げられる。
【0044】
シランカップリング剤の配合量は、シリカ量に対して、通常1〜20重量%の範囲で選定される。この量が1重量%未満ではカップリング剤としての効果が充分に発揮されにくく、また、20重量%を超えるとゴム成分のゲル化を起こすおそれがあり、カップリング効果も限界となる。
【0045】
本発明のゴム組成物には、上記ゴム成分と表面改質シリカの他に、ゴム配合剤として通常に用いられるカーボンブラックなどの補強剤、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤、プロセスオイル、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫助剤などの各種配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じ適宜配合し用いられる。
【0046】
本発明では、上記ゴム成分、表面改質シリカ、及び各配合剤を配合しバンバリーミキサー、ロール、ニーダーなどの各種混練機を使用して常法に従い混合しゴム組成物を作製することができる。
【0047】
このゴム組成物は、成形加工後、加硫を行い、タイヤトレッド,サイドウォール,ビード部等のタイヤ用途を始め、防振ゴム,ベルト,ホースその他の工業用品やゴム製部品に用いることができる。
【0048】
特に、タイヤトレッドゴムとして好適に使用することができ、得られた空気入りタイヤは、低燃費性、グリップ性及び耐摩耗性に優れており、しかも該ゴム組成物の加工性が良好であるので生産性にも優れている。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明に係るゴム組成物を空気入りタイヤのトレッドゴムに適用した実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0050】
[表面改質シリカの調整]
室温で撹拌中のシリカ(トクヤマ(株)製、ニプシールAQ、BET=200m/g)に対して、ポリメリックメチレン−ビス(4−フェニルイソシアナート)(p−MDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)との重量比がp−MDI/PTMG=0.64/2.36の混合物をシリカ重量に対して表1に記載の処理量(重量%)で滴下して混合し、シリカ粒子表面の細孔に含浸させた。次ぎに、前記含浸処理済みシリカを空気下、100℃にて表1に記載の処理時間(時間)で加熱処理し、混合物を付加重合させポリマーで被覆されたウレタン改質シリカA〜Dを調整した。それぞれの改質シリカよりポリマーを抽出し、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法(GPC;東ソー製HLC−8020、カラム;東ソー製GMH−XL(2本直列)使用)により分析し数平均分子量を測定し、表1に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
[ゴム組成物の作製]
スチレンブタジエンゴム(JSR(株)製、SBR1500)100重量部に対して、表2に記載の配合量(重量部)にて上記表面改質シリカ及び従来の未改質シリカと、下記共通の配合剤(重量部)とを配合し、20リットル容量の密閉式バンバリーミキサーを用いて混合し各ゴム組成物を作製した。ここで、表面改質シリカの配合量は、そのシリカ分を比較例1の未改質シリカのシリカ分に合わせ調整した。
【0053】
[共通配合剤]
・亜鉛華:2重量部(三井金属鉱業(株)製、亜鉛華1号)
・ステアリン酸:2重量部(花王石鹸(株)製、ゴム用ステアリン酸T)
・老化防止剤6C:2重量部(大内新興化学工業(株)製、ノクラック6C)
・シランカップリング剤:6重量部(デグサ社製、Si69)
・硫黄:2.1重量部(細井化学工業(株)製、ゴム用粉末硫黄150メッシュ)
・加硫促進剤CZ:2重量部(大内新興化学工業(株)製、ノクセラーCZ)
【0054】
各ゴム組成物について、以下の試験を行いゴム特性、及びタイヤ性能(転がり抵抗、ウェット性能)を評価し、結果を表2に示した。
【0055】
[ゴム特性]
JIS K6251に準拠し引張試験(3号ダンベル使用)を行い、100%及び300%伸びの引張モジュラス(表中100%Mo、300%Moと表示)を測定した。数値が大きいほど弾性率が高い。
【0056】
[転がり抵抗]
各ゴム組成物をトレッドゴムに適用したサイズ195/60R15の乗用車用ラジアルタイヤを製造し、1軸ドラム試験機を用い、内圧200kPa、負荷荷重400Kg、速度80Km/hでドラム上を走行する時の転がり抵抗を測定し、次式により各試験タイヤの転がり抵抗指数を計算した。値が大きいほど燃費性が良く良好である。 転がり抵抗(指数)=(比較例1のタイヤの転がり抵抗)×100/(各タイヤの転がり抵抗)
【0057】
[ウェット性能]
上記タイヤ4本を排気量2000ccの国産乗用車に内圧200kPaに調整し取り付け、水深2〜3mmに水没したアスファルト路面を時速60Km/hで通過中に急ブレーキをかけ停止するまでの距離を測定し、次式により各試験タイヤのウエット制動性指数を計算し、ウエット性能を評価した。値が大きいほど制動性が良く良好である。 ウエット制動性(指数)=(比較例1の試験タイヤの停止距離)×100/(各タイヤの停止距離)
【0058】
[耐摩耗性]
排気量2000ccの国産乗用車に2種類の上記タイヤを、内圧200kPaに調整し前輪と後輪にそれぞれ取り付け、走行5,000Km毎にローティションを行いながら一般路を20,000Km走行後、各タイヤのトレッドの残溝深さを測定し摩耗量を求め、次式により各試験タイヤの耐摩耗性指数を計算し、耐摩耗性を評価した。値が大きいほど耐摩耗性が良好である。 耐摩耗性(指数)=(比較例1の試験タイヤの摩耗量)×100/(各試験タイヤの摩耗量)
【0059】
【表2】

【0060】
表2に示す通り、実施例1のゴム組成物は、ゴム中へのシリカ分散性を改良にし、かつゴムとの結合力を高めて相互作用を奏しゴム特性を向上することが、従来の非改質シリカを用いた比較例1に比べモジュラスが向上していることから示される。すなわち、補強性能を向上し破壊特性や耐摩耗性及び低発熱性などに優れたシリカ配合の特長を有するものとなり、その結果、実施例1のゴム組成物をトレッドに適用したタイヤは、転がり抵抗とウェット性能とを向上させて低燃費性とグリップ性を両立し、かつ耐摩耗性を向上し、さらにゴム組成物の混合性、加工性が良好であるのでタイヤ生産性にも優れるものとなる。
【0061】
これに対して、比較例2では加熱処理時間が短いため重合反応不足でポリマー分子量が小さく、被覆ポリマーとシリカ及びゴムとの相互作用が不十分となり、また処理量の少ない比較例3ではシリカ粒子表面のポリマー被覆量が少なくゴムとの親和性が十分でないため実施例ほどの効果が得られず、逆に処理量の多い比較例4ではシリカ表面のシラノール基がポリマーで覆われてしまいカップリング効果が発現されずシリカ配合の特長を活かすことができない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の表面改質シリカはゴムとの親和性を向上しゴム中への分散性を良好にするとともに、ゴム分子との強固な結合を得ることで相互作用を高めることができるので、この改質シリカを用いたゴム組成物はシリカの特長を有効に発現させるものとなり、空気入りタイヤの特にトレッドに好適であり、さらに防振ゴム、ベルト、各種用途のゴム部品などのゴム製品に幅広く使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子表面が開環重合又は縮重合により得られた数平均分子量3000以上のポリマーで被覆されている
ことを特徴とする表面改質シリカ。
【請求項2】
前記ポリマーが、ウレタン結合又はアミド結合又は複数のエポキシ基を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の表面改質シリカ。
【請求項3】
前記ポリマーが、ベンゼン環、エーテル結合及び炭素−炭素結合の少なくとも1種類より構成される構造部分を50重量%以上含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理シリカ。
【請求項4】
ジエン系ゴム成分100重量部に対して、請求項1〜3のいずれかに記載の表面改質シリカを20〜100重量部含む
ことを特徴とするゴム組成物。
【請求項5】
前記ジエン系ゴム成分が、官能基によりゴム分子末端が変性されたゴム成分を含む
ことを特徴とする請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
シリカ粒子表面の細孔中にイソシアナートと多価アルコール又はアミンとの混合物又は分子内にエポキシ基を2個以上持つ数平均分子量が1000以下の低分子化合物を含浸させ、熱又は光により重合反応を開始し前記混合物又は低分子化合物を開環重合又は縮重合させ数平均分子量3000以上にポリマー化し、該シリカ粒子表面にポリマー被覆層を形成する
ことを特徴とするシリカの改質方法。
【請求項7】
前記混合物又は低分子化合物の処理量が、前記シリカ重量に対して0.1〜20重量%である
ことを特徴とする請求項6に記載のシリカの改質方法。

【公開番号】特開2006−291041(P2006−291041A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113785(P2005−113785)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】