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表面改質フッ素樹脂フィルム、その製造方法、その製造装置、表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体及びその製造方法
説明

表面改質フッ素樹脂フィルム、その製造方法、その製造装置、表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体及びその製造方法

【課題】フッ素樹脂フィルムと被着材との接着強度が高く、フッ素樹脂フィルムの改質効果が長期間持続する表面改質フッ素樹脂フィルム、その製造方法、その製造装置、表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂フィルム層(15)の少なくとも一表面にプラズマ−モノマー重合層(16)を有する表面改質フッ素樹脂フィルムであって、プラズマ−モノマー重合層(16)は、プラズマを照射しながら前記フッ素樹脂フィルム層に帯電する電荷を除去した状態で、反応性不飽和基を含むモノマーをグラフト重合させた均一な薄膜層である。プラズマ−モノマー重合層(16)の上に被着材(17)を接着させ、フッ素樹脂フィルム層(15)と被着材(17)を剥離させると、プラズマ−モノマー重合層(16)より上の部分で破壊する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質フッ素樹脂フィルム、その製造方法、その製造装置、表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、化学的安定性および熱的安定性に優れるほか、自己潤滑性を有するために摩擦係数が低い等の特徴がある。しかし、フッ素樹脂はその化学的安定性から、シート状またはフィルム状のものを接着剤により他の材料にラミネートすることが難しく、例えば、化学的安定性を生かすことができる医薬品容器の栓等への利用が普及しなかった。
【0003】
これに対し、フッ素樹脂を、接着剤により他の素材に接着可能にするために、フッ素樹脂成形物の表面を改質する種々の方法が提案されている。最も広範に使用される表面改質方法としては、ナトリウム−アンモニア溶液処理が挙げられる。この方法によれば、表面を化学的にほぼ完全に改質し他の素材との接着を可能にすることが知られている。しかし、この改質によりフッ素樹脂表面は茶褐色を呈し、外観上好ましくない。また、フィルム上に金属ナトリウムが残存する可能性もあり、特に厳密な品質管理が求められる医療用ゴム製品の場合、異物検査などの障害になることがあり、着色や金属残存のない改質方法が求められている。
【0004】
前記のナトリウム−アンモニア溶液処理は化学的な改質方法であるが、物理化学的な方法を用いてフッ素樹脂フィルムの表面改質を行う手法が検討されている。たとえば、特許文献1にはプラズマ処理を行うに際して、成形物表面に負電圧を印加することにより、成形物表面にプラズマ中のイオンを注入して粗面化する物理的改質と、成形物表面におけるフッ素原子を他の原子に置換する化学的改質とを行い、更に、プラズマ処理後にシランカップリング剤を塗布する改質方法が記載されている。特許文献2にはイオン注入処理によりフッ素樹脂の表面の原子組成を変化させるとともに、表面に微細突起を成形することによる改質方法が記載されている。また、本発明者らの一部は特許文献3及び特許文献4においてフッ素樹脂表面にプラズマを照射しながらモノマーを気相重合することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−263529号公報
【特許文献2】特開2000−017091号公報
【特許文献3】特開2008−019393号公報
【特許文献4】特開2009−167323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたような、不活性な表面の原子をプラズマ処理により他の原子で置換して親水化する方法では、ポリマーの熱ゆらぎにより処理面(改質面)が樹脂内部に潜り込む、または生成した親水性の低分子物質が遊離する等の要因により表面の改質効果(親水性)の持続性に問題があることが知られている。プラズマ処理後にシランカップリング剤の接着層を塗布する工程も記載されているが、改質効果が消失する前に塗布する必要があり、工程としては好ましくない。また一般のプラズマ処理に比べて、負電圧を印加する装置が必要であることから設備費が高額となり好ましくない。特許文献2に開示されたようなイオン注入法による改質は、高エネルギーのイオンを得る為の装置が複雑になること、また、高エネルギーのイオンを被処理物に注入する為には高い真空度の雰囲気下で処理を行う必要があること、などにより設備費が高額となり改善が望まれていた。加えて、前記従来方法はフッ素樹脂フィルムとゴムとの接着強度が低いという問題があった。また、特許文献3及び特許文献4の提案は、はく離強度は向上するものの、フィルム表面の電荷チャージに問題があり、均一な薄膜形成とさらに高い接着強度が要求されていた。
【0007】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、均一な薄膜形成ができ、フッ素樹脂フィルムと被着材との接着強度が高く、フッ素樹脂フィルムの改質効果が長期間持続する表面改質フッ素樹脂フィルム、その製造方法、その製造装置、表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の表面改質フッ素樹脂フィルムは、フッ素樹脂フィルム層の少なくとも一表面にプラズマ−モノマー重合層を有する表面改質フッ素樹脂フィルムであって、前記プラズマ−モノマー重合層は、プラズマを照射しながら前記フッ素樹脂フィルム層に帯電する電荷を除去した状態で、反応性不飽和基を含むモノマーをグラフト重合させた均一な薄膜層であることを特徴とする。
【0009】
本発明の表面改質フッ素樹脂フィルムの製造方法は、チャンバー内で、フッ素樹脂フィルム層の少なくとも一表面にモノマー重合層を形成して前記の表面改質フッ素樹脂フィルムを製造する方法であって、電気導体シートの上にフッ素樹脂フィルムを載置し、前記フッ素樹脂フィルム層に帯電する電荷を除去した状態で、プラズマ照射手段と前記電気導体シートとの間で電圧をかけた状態で前記フッ素樹脂フィルムの表面にプラズマを照射しながら反応性不飽和結合基を含むモノマーを供給し、前記フッ素樹脂フィルムの表面に前記モノマーをグラフト重合させて均一な薄膜層を形成することを特徴とする。
【0010】
本発明の表面改質フッ素樹脂フィルムの製造装置は、チャンバー内で、フッ素樹脂フィルム層の少なくとも一表面にモノマー重合層を形成して前記の表面改質フッ素樹脂フィルムを製造する装置であって、フッ素樹脂フィルムを載せかつ前記フッ素樹脂フィルム層に帯電する電荷を除去するための電気導体シートと、前記チャンバー内に反応性不飽和結合基を含むモノマーを供給する手段と、前記フッ素樹脂フィルムの表面に前記モノマーを重合するためのプラズマ照射手段と、前記プラズマ照射手段と前記電気導体シートとの間で電圧をかける手段を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体は、前記表面改質フッ素樹脂フィルムの上に直接又は接着層を介して被着材を接着した複合体であって、前記表面改質フッ素樹脂フィルムと前記被着材を剥離させると、前記表面改質フッ素樹脂フィルムより上の部分で破壊することを特徴とする。
【0012】
本発明の表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体の製造方法は、前記表面改質フッ素樹脂フィルムの上に直接ゴムを加硫成形した複合体の製造方法であって、前記表面改質フッ素樹脂フィルムの上でゴム材料を加熱温度130〜180℃、処理時間5〜20分の条件で加硫成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、薄膜形成する際にフッ素樹脂フィルム表面の電荷を除去することにより、均一な薄膜形成と接着強度の高い表面改質フッ素樹脂フィルムを提供できる。より具体的には、表面改質フッ素樹脂フィルムの上に直接又は接着層を介して被着材を接着させ、フッ素樹脂フィルム層と被着材を剥離させると、プラズマ−モノマー重合層より上の部分で破壊する程度に接着強度が高く、均一接着が可能で、フッ素樹脂フィルムの改質効果が長期間持続する表面改質フッ素樹脂フィルムを提供できる。すなわち、プラズマ重合法による樹脂層により、均一かつ強固に接着された複合体が得られるとともに、改質層が安定である為長期間の在庫が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1A−Bは本発明の一実施例における複合体のはく離試験後の破壊部を示す断面図である。
【図2】図2A−Dは破壊検査における破壊の基本的パターンを示すもので、図2Aは接着剤の凝集破壊、図2Bは接着破壊(界面破壊)、図2Cは材料破壊(基材破壊、被着材破壊)、図2Dは混合した破壊の例である。
【図3】図3Aは本発明の一実施例における改質フィルムとゴムを含む複合体の模式的断面図、図3Bは同はく離試験後の破壊部を示す断面図である。
【図4】図4A−Bは本発明の一実施例におけるはく離試験の方法を示す断面図である。
【図5】図5は本発明の一実施例におけるプラズマ重合装置の模式的説明図である。
【図6】図6は本発明の一実施例における装置の要部を示す概略断面図である。
【図7】図7Aは本発明の比較例で得られた複合体の写真、図7Bは本発明の一実施例で得られた複合体の写真である。
【図8】図8は本発明の一実施例における複合体に対するはく離試験の結果を示すグラフである。
【図9】図9A−Cは本発明の実施例1におけるゴム−フッ素樹脂フィルム間の破壊現象を示すフーリエ変換赤外分光(FTIR)測定装置によるATR法による分析結果であり、図9Aはフッ素樹脂表面の透過スペクトル、図9Bはフッ素樹脂のはく離面の反射スペクトル、図9Cはゴム表面の透過スペクトルをそれぞれ示す。
【図10】図10は本発明の実施例3と比較例2(特許文献4の条件)における加硫温度と処理時間を変化させたときの改質フィルムとゴムの接着性評価の結果である。
【図11】図11は本発明の一実施例におけるプレフィルドシリンジに使用される医療用ゴム製品を示す図である。
【図12】図12は本発明の一実施例における医療用ゴム製品の斜視図である。
【図13】図13は本発明の一実施例における医療用ゴム製品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の複合体は、フッ素樹脂フィルム層とこのフィルム層の少なくとも一表面に形成したプラズマ−モノマー重合層とこのモノマー重合層の上に直接又は接着層を介して被着材が接着されており、フッ素樹脂フィルム層と被着材を剥離させると、プラズマ−モノマー重合層より上の部分で破壊をする。これを図面で説明する。図1Aは本発明の一実施例の複合体の破壊状態を示している。複合体10はフッ素樹脂フィルム層1とその表面に形成したプラズマ−モノマー重合層2とその上に直接被着材(3a,3b)が接着されているが、フッ素樹脂フィルム層と被着材を剥離させると、の被着材の部分(3a,3b)で材料破壊をする。4は破壊部分である。図1Bは別の破壊状態を示すもので、複合体10はフッ素樹脂フィルム層1とその表面に形成したプラズマ−モノマー重合層2とその上に接着剤層(5a,5b)を介して被着材6が接着されている。フッ素樹脂フィルム層と被着材を剥離させると、接着剤層(5a,5b)部分で接着破壊をする。4は破壊部分である。図1A−Bに示すとおり、本発明の複合体はフッ素樹脂フィルム層1とプラズマ−モノマー重合層2との間は破壊せず、プラズマ−モノマー重合層2より上の部分で破壊する。なお本件明細書においては、プラズマ照射によりモノマーを重合させた層を、プラズマ−モノマー重合層と言う。
【0016】
接着剤を使用した接着において、破壊検査をすると通常は次の4種類の破壊現象に分類できる。
(1)凝集破壊:硬化した接着剤層が破壊する。接着剤の強度が被着材の強度より低い場合に起こる。例えば図2Aに示すように、被着材7と被着材9の間の接着剤層8a,8b間が破壊する。11は破壊部分である。
(2)接着破壊:接着剤層と被着材との境界面が破壊する。接着力が不十分な場合に起こる。例えば図2Bに示すように、被着材7と接着剤層8との界面が破壊する。12は破壊部分である。
(3)被着材破壊:基材層(被着材)そのものが破壊する。この場合は接着剤及び接着力は十分な強度を持っており、基材層(被着材)の強度が弱い場合に起こる。例えば図2Cに示すように、被着材7a,7b間が破壊する。13は破壊部分である。
(4)混合破壊:前記(1)〜(3)の少なくとも2つが混合して起こる。例えば図2Dに示すように、被着材7と接着剤層8の破壊部分14a〜14cで破壊する。
【0017】
本発明の複合体はフッ素樹脂フィルム層1とプラズマ−モノマー重合層2との間は破壊せず、プラズマ−モノマー重合層2より上の部分で破壊することから、フッ素樹脂フィルム層1とプラズマ−モノマー重合層2との間の接着力は、他の層よりも相当に高いことがわかる。プラズマ−モノマー重合層2より上の部分で破壊する状態は、前記(1)〜(4)のいずれの状態であってもよい。例えば図3Aに示すように、フッ素樹脂フィルム層15の表面にプラズマ−モノマー重合層16が形成されており、この上でゴム材料を加硫させてゴム層17を形成し複合体20を得る。この複合体20のフッ素樹脂フィルム層15とゴム層17を剥離させると、ゴム層17が破壊部分18で材料破壊する。
【0018】
本発明の複合体において、プラズマ−モノマー重合層はフッ素樹脂フィルムの一表面に形成してもよいし、両表面に形成しても良い。両表面に形成する場合は、両表面に他の物質を接着させることができる。あるいは一表面に他の物質を接着させ、他の表面には印刷を形成することもできる。
【0019】
本発明の被着材としては、材料はどのようなものであっても良い。例えばゴム、樹脂、繊維、木材、紙、石材、金属、金属メッキ、導電性ペースト、金属ペースト、印刷インク、塗膜などが挙げられる。
【0020】
本発明において、プラズマ−モノマー重合層の上に直接接着した被着材は、プラズマ−モノマー重合層の上で熱硬化性樹脂又はゴムを硬化させることにより自己接着させたものであっても良い。この場合は、フッ素樹脂フィルム層と熱硬化性樹脂又はゴムとは、プラズマ−モノマー重合層を介して熱硬化性樹脂又はゴムの硬化により自己接着されている。熱硬化性樹脂又はゴムの硬化は加硫によって起こる。さらに具体的には、加硫によって架橋反応が起こり、架橋によって硬化する。前記において硬化による自己接着とは、接着剤は使わずに基材自体の硬化によってプラズマ−モノマー重合層を介してフッ素樹脂フィルム層と接着することを言う。そして、フッ素樹脂フィルム層と熱硬化性樹脂又はゴムとを剥離させたとき、熱硬化性樹脂又はゴムの被着材破壊が起こる。
【0021】
プラズマを用いたモノマー重合層の厚みは500nm以下が好ましい。この膜厚であれば、均一厚みのモノマー重合層を形成でき、かつフッ素樹脂フィルム層と被着材との接合強度も高い。より好ましいプラズマ−モノマー重合層の厚みは1〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜50nmの範囲である。
【0022】
本発明でいう「均一な薄膜」の膜厚は前記のとおりであり、均一とは、複合体にしたときにフッ素樹脂フィルム層と被着材との界面には目視で観察される気泡は無いことである。目視で観察される程度の気泡が存在すると、その部分の接合強度は弱いものとなる。より具体的には、改質フッ素樹脂フィルムの表面でゴムの加硫成形を行い、縦100mm、横100mmの大きさの複合体において、フッ素樹脂フィルム層とゴムとの界面には目視で観察される気泡は無いものを「均一」という。
【0023】
プラズマ−モノマー重合層は、表面に電気導体シートを配置した保持具の上にフッ素樹脂フィルムを載せ、プラズマ照射手段と電気導体シートとの間で電圧をかけた状態でフッ素樹脂フィルムの表面にプラズマを照射しながら反応性不飽和結合基を含むモノマーを供給し、フッ素樹脂の表面に前記モノマーをプラズマによりグラフト重合させる。これによりフッ素樹脂フィルム層に帯電する電荷を除去した状態で、薄膜を形成できる。この製造装置の工夫により、フッ素樹脂フィルムの表面にプラズマ−モノマー重合層を均一に形成することができる。プラズマ照射手段と前記電気導体シートとの間の電圧は1〜50kVの範囲が好ましい。プラズマ照射手段と電気導体シートとの間で電圧をかけた状態でプラズマ−モノマー重合をすると、プラズマによる表面改質が促進され、膜厚が薄いにもかかわらず強固なプラズマ−モノマー重合層を形成することができる。この薄膜は分子が配向しているとも考えられる。
【0024】
フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンと微量のパーフルオロアルコキシドとの共重合体(変性PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(PETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルフルオライド(PVF)又はテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PEP)等を挙げることができる。これらのフッ素樹脂は化学的に安定であるが、表面活性が乏しくゴムとの接着が困難であった。ここでフィルムとは概平板状に成形された成形品を指す。フィルムの成形方法に特に限定はないが、圧縮成形、スカイブド成形、キャスト成形、切削成形、溶融押し出し成形などが挙げられる。フィルムの厚みに特に限定はないが、フィルムの厚さは、10μm〜150μmが好ましい。
【0025】
本発明の表面改質フッ素樹脂フィルムは少なくとも一表面に形成したプラズマ−モノマー重合層からなる均一な薄膜である。これにより、プラズマ−モノマー重合層より上の部分で破壊する程度に接着強度が高く、フッ素樹脂フィルムの改質効果が長期間持続する表面改質フッ素樹脂フィルムを提供できる。
【0026】
本発明の製造装置を図5により説明する。図5はプラズマ重合装置31の模式的説明図である。プラズマ重合装置31は、ドラフトチャンバ32とプロセスガス供給装置33とを備え、ドラフトチャンバ32にはフッ素樹脂フィルム35の表面を改質する処理室34と、温度調節器40が設置されている。処理室34にはフッ素樹脂フィルム35の搬送装置36と、フッ素樹脂フィルム35を保持する保持具37が設けられている。処理室34にはモノマーガス供給装置38と、プラズマ発生装置(プラズマヘッド)39が設置されている。フッ素樹脂フィルム35の出入り口(搬送口)はガスカーテン41a,41bによって仕切られている。プラズマ発生装置(プラズマヘッド)39にはプラズマ発生用電源42が接続されている。ドラフトチャンバ32には送風機43が設けられており、矢印44のようにドラフトチャンバ32内のガスを排気している。プロセスガス供給装置33にはパージ及びガスカーテン用のプロセスガスボンベ45と、プラズマ発生用プロセスガスポンベ46が配置されている。プロセスガスボンベ45からのガスは流量計47によって流量を制御しながらドラフトチャンバ32に送られる。プロセスガスポンベ46からのガスはマスフローコントローラ48によって流量を制御しながら処理室34供給される。ドラフトチャンバ32内でモノマーガス供給装置38からモノマー蒸気を発生させ、プラズマ発生装置(プラズマヘッド)39をX−Y方向に移動させながら、フッ素樹脂フィルム35の表面に前記モノマーをグラフト重合させて薄膜層を形成するのが好ましい。この際に、保持具37の表面に電気導体シートを配置してフッ素樹脂フィルム層に帯電する電荷を除去しながら、薄膜を形成する。
【0027】
図6は同装置のドラフトチャンバ32の概略断面図である。保持具37の上には電気導体シート50が配置され、その上にフッ素樹脂フィルム35が載置される。処理室34内はモノマーガス雰囲気となっており、フッ素樹脂フィルム35の上方のプラズマ発生装置(プラズマヘッド)39からプラズマ52が照射される。処理室34内の上部からパージガス51が供給され、かつ出入り口(搬送口)上方のパイプからのパージガスの噴出により、ガスカーテン41a,41bが形成される。このようにしてフッ素樹脂フィルム35の表面を改質させる装置が構成される。処理室34は、室内を密閉とし真空ポンプなどにより気圧を管理しても良いし、処理室を開放系とし処理室内に供給されるプロセスガスにより処理室内を大気圧以上とすることで外部空気の流入を防止しても良い。工業的には後者が好ましい。また後述する搬送装置の駆動による処理室内の気体の乱れを抑制する目的で、搬送装置の近辺にプロセスガスと同一のガスを一定量供給し気体の乱れを抑制する機構を備えることが好ましい。
【0028】
プラズマ発生装置は、プラズマ重合を行うためのプラズマを発生させる装置である。プラズマを発生させる装置は特に指定はなく、公知の装置を用いることができる。好ましくは、プラズマ発生装置は常圧コロナ放電装置である。この場合、常圧とは厳密に1気圧(1013hPa)を意味するのではなく、必要に応じて1014〜2000hPaの範囲で加圧してもよい。
【0029】
プラズマ発生の条件としては、後述するプロセスガスのプラズマ雰囲気を形成できれば特に限定されない。前述の常圧コロナ放電装置の場合、装置により多少変動するが、1kHz〜100kHzの印加電圧の周波数、1kV〜24kVの放電電圧、10Hz〜200Hzのパルス変調周波数、50%〜99%のパルスデューティーが好ましい。より好ましくは、20kHzの高周波、24kVの高電圧を印加し、パルス変調周波数60Hz、パルスデューティー99%である。プラズマ発生装置は処理室内に1個設置しても良く、複数設置することで見かけの処理速度を向上させることもできる。
【0030】
プロセスガス供給装置は、プラズマ重合装置の外部からプラズマ源となるガスをプラズマ発生装置に導入するための流路である。プロセスガスとしては不活性ガスまたは窒素が好ましい。不活性ガスとしてはアルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。不活性ガスはプラズマの維持が容易であり好ましい。窒素ガスはコストの面から好ましい。ガスの純度はそれほど必要なく、一般の工業用純度(99.99vol.%)を用いればよい。この場合、大気中に含まれる酸素の影響を防ぐ目的で、処理室を閉鎖系としプロセスガスで置換を行うか、処理室を開放系としてプロセスガスの供給により処理室を大気圧以上とする方法あるいはガスカーテンを処理室の入口と出口に設置するなどし、大気の流入を防ぐことが好ましい。プラズマガスの供給量はプラズマ発生装置のサイズに合わせて適宜設定することができる。実施例に記載したサイズの常圧コロナ放電装置の場合、30SLM〜50SLMが好ましい。
【0031】
保持具はフッ素樹脂フィルムを保持する為の装置である。保持具の表面は電気導体シートとする。保持具がフィルムと接触している部分はプラズマ発生装置より発生するプラズマがフィルムに当たる箇所の反対面である。保持具とフィルムが接触している面積は特に指定はないが、プラズマが照射されている面積よりも大きな面積で接触していることが好ましい。
【0032】
また保持具表面の電気導体シートは、プラズマ放電の電位に対して接地されていることが好ましい。保持具の材質に特に指定はないが、たとえば銅、アルミニウム、ステンレスなどを表面に有する保持具が挙げられる。保持具の形状も特に指定はないが、フィルムと均一、かつ、大面積で接触する為に、板状の形状であることが好ましい。フィルムと保持具を均一に接触させる方法に特に指定はないが、例えば固定したフィルムに対して一定の圧力で保持具を押し付けても良いし、あるいは、保持具上にフィルムを固定しても良い。
【0033】
保持具が電気導体シートであると所望の表面改質が得られる理由について詳細は不明であるが、フィルムをプラズマ処理する際に、フィルム表面が電荷を帯びる所謂チャージアップ現象が起きることが知られており、保持具を電気導体シートとすることでこの電荷をフィルム表面から逃し、より均一なプラズマ重合が行われていると発明者らは推測している。
【0034】
搬送装置に特に指定はなく、フィルムの所望の部位をプラズマ発生装置の部位へと搬送できる機構を備えていれば良い。たとえばX−Y軸方向に稼動できるステージを設けてフィルムの所望の部位をプラズマ発生装置の部位に搬送しても良いし、あるいは、プラズマ発生装置をX軸方向に搬送できる装置とフィルムをY軸方向に搬送できる装置の組み合わせで目的を達成しても良い。搬送装置は保持具を搬送しても良い。たとえば保持具をプラズマ発生装置の部位に固定し、搬送装置でフィルムのみを搬送しても良いし、あるいは、保持具にフィルムを固定しておきフィルムと保持具を同時に搬送しても良い。
【0035】
フィルムの処理速度は特に指定はなく、所望の改質が得られる範囲で適宜調整してよい。後述の実施例の装置、およびその他の条件を使用した場合、1cm2当たり1秒〜10秒の範囲で処理を行うことが好ましい。
【0036】
モノマーガス供給装置は、モノマーガスを供給する為の装置である。モノマー自体が室温でガス状の場合は、そのまま使用できる。液状および固体状の場合は、加熱することによりガス状として使用できる。後述のアクリル酸をモノマーとして使用する場合、アクリル酸は液状の為加熱が必要であり、モノマーガス供給装置はモノマーを適度に加熱する部品、および、ガスの供給部を保温し液化を防ぐ部品を備えることが好ましい。モノマーガスは適当な圧力を与えることで処理室に供給しても良いし、あるいは、前述のガス化を処理室内に設けたモノマーガス供給装置にて行うことで直接モノマーガスを供給しても良い。
【0037】
モノマーガスの供給は処理室内に均一に行うことが望ましい。すなわち、プラズマ重合が行われているプラズマ発生装置の近傍、および、プラズマ重合が行われていないフィルムの近傍の両方へとモノマーガスの供給を行うことが望ましい。この為に、プラズマ発生装置にプロセスガスと混合してモノマーガスを供給する方法は好ましくなく、モノマーガスを処理室内に供給する方法が適している。すなわち、前述したガス化を処理室内に設けたモノマーガス供給装置にて行うことで処理室に直接モノマーガスを供給する方法が好ましい。モノマーガスの供給を処理室内に均一に行うことで、プラズマ重合法による表面改質が行えるとともに、プラズマ処理が終わったフィルム部位でも残存するラジカルによる表面改質が継続し、より有効な表面改質を行うことができる。
【0038】
なお、アルゴンガスによるプラズマは青色をしており、モノマーガスを含むプラズマでは他の色を示すことが多い。たとえばモノマーガスとしてアクリル酸を用いた場合、そのプラズマの色は緑色を提色する。後述する実施例1でもプラズマは緑色を提色しており、このことから処理室内に供給されているアクリル酸のモノマーガスはプラズマ発生装置の近傍に十分な濃度で供給されていることが確認できる。
【0039】
モノマーガスに特に指定はないが、反応性不飽和結合基を含むモノマーが好ましい。この反応性不飽和結合基を含むモノマーはガス化してプラズマ照射領域へ供給することが好ましい。反応性不飽和結合基を含むモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル系モノマー、アセチレン系モノマー、アルコール系モノマーが挙げられる。使用するモノマーガスは単一の物質、あるいは、複数の混合物でも良い。具体的には、アクリル酸またはその誘導体として、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸アリル、ジアクリル酸エチルグリコール、ジアクリル酸トリエチレングリコール、ジアクリル酸テトラエチレングリコール、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸エトキシエトキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩等のアクリル酸またはその誘導体が挙げられる。
【0040】
メタクリル酸またはその誘導体としては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコール、トリメタクリル酸トリメチロールプロパン、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸エトキシエトキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸またはその誘導体が挙げられる。
【0041】
アセチレン系モノマーとしては、アセチレン、ジアセチレン、プロパギルアルコールが挙げられる。アルコール系モノマーとしては、前記のアルコール以外に炭素数2〜10の不飽和結合を含むアルキルアルコールが挙げられる。
【0042】
このうちアクリル系モノマーが好ましく、アクリル酸またはその誘導体、メタクリル酸またはその誘導体がより好ましい。アクリル酸は入手が容易であり後述するガス化が容易な為、特に好ましい。メタクリル酸も同様の理由で特に好ましい。
【0043】
モノマーガスの供給量はモノマーガスの種類、および、処理室の容量に併せて適宜変更することができる。前述のアクリル酸をモノマーガスとして使用する場合、処理室内の濃度として100〜10000ppmが好ましい。供給量の管理は、簡便には例えば、モノマーガスとして使用したい液状の物質を一定の温度に保つことにより蒸気圧を一定させ、処理室内に拡散させることで目的を達成することができる。前述のアクリル酸の場合、処理室の容量にもよるが、50℃〜70℃の範囲で好ましい結果が得られる。
【0044】
プラズマ発生用電源としては特に指定はなく、公知の装置を用いればよく、プラズマ発生装置で必要とする電圧、周波数などを供給できる物であれば良い。
【0045】
改質の対象となるフッ素樹脂フィルムは、改質の対象となる表面がフッ素樹脂であれば他の物質との複合体であっても良い。例えば、フッ素樹脂フィルムの片面に金属膜などを被覆したフッ素樹脂フィルムを準備し、その被覆されていない面のフッ素樹脂に対して改質を行っても良い。あるいは、片面に別の樹脂などが積層されたフッ素樹脂フィルムを準備し、その積層されていない面のフッ素樹脂に対して改質を行っても良い。
【0046】
被着材としてゴムを用いる場合は、原料ゴムはブチル系ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム等のニトリル系ゴム、水素化ニトリル系ゴム、ノルボルネンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アクリルゴム、エチレン・アクリレートゴム、フッ素ゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、フォスファンゼンゴムまたは1,2−ポリブタジエン等が使用される。
【0047】
これらは1種類を単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ゴム複合体に使用されるゴムは、上記に限定されないが、ブチル系ゴムまたは/およびエチレン−プロピレン−ジエンゴム(以下、EPDMゴムという)が好ましい。ブチル系ゴムは耐気体透過性および耐水蒸気透過性に優れることから好ましい。ブチル系ゴムとしては公知の化合物を用いてよいが、例えばイソブチレン−イソプレン共重合ゴム、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合ゴム(以下、「ハロゲン化ブチルゴム」という)、またはその変性物が挙げられる。変性物としては、イソブチレンとp−メチルスチレンの共重合体の臭素化物等が挙げられる。なかでも、架橋の容易さからハロゲン化ブチルゴムがより好ましく、塩素化ブチルゴムまたは臭素化ブチルゴムが更に好ましい。
【0048】
また、EPDMゴムは加工性に優れているため好ましい。EPDMゴムにはゴム成分のみからなる非油展タイプのEPDMゴムとゴム成分とともに伸展油を含む油展タイプのEPDMゴムとが存在するが、本発明ではいずれのタイプのものも使用可能である。EPDMゴムにおけるジエンモノマーの例としては、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエンまたはシクロオクタジエンなどが挙げられる。
【0049】
さらに、ハロゲン化ブチルゴムとEPDMゴムの組み合わせは相溶性が良く、耐気体透過性および耐水蒸気透過性に優れるとともに加工性も優れることからより好ましい。ゴム複合体が、例えば注射器用のガスケットのような医療用ゴム製品である場合には、ゴムの主成分として気体透過性の低いブチルゴムが好ましい。架橋剤としては、清浄性の観点から、トリアジン誘導体架橋の使用が好ましい。
【0050】
フッ素樹脂フィルムとゴムとの加硫接着は、これらを接触させた状態で所定の時間に渡り、熱と圧力を加え、ゴムの架橋を行いながらフッ素樹脂フィルムと接着させる。加硫接着を行う時間と温度は、未架橋ゴム配合の架橋への必要に応じて、設定が行われる。一例として、前記表面改質フッ素樹脂フィルムの上でゴム材料を加熱温度130〜180℃、処理時間5〜20分の条件で加硫成形するのが好ましい。加硫接着を行う時の圧力に関しては、公知のゴムの架橋方法における圧力が採用される。一般に成形物の雌型となる金型に対して、隙間無くゴムが充填される程度の圧力を加えればよく、医療用ゴム栓などの小型物では20MPa程度である。
【0051】
被着材として樹脂を使用する場合は、熱硬化性樹脂の場合は前記ゴムと同様に熱硬化性樹脂の硬化により自己接着させることができる。この反応は主に付加反応によって起こる。被着材として熱可塑性樹脂、繊維、木材、紙、石材、金属を使用する場合は、接着剤を使用する。接着剤としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂のレジン系接着剤、エラストマー接着剤、混合系接着剤、ホットメルト接着剤などを使用できる。導電性ペースト、金属ペースト、金属メッキ、印刷インク又は塗料などの塗膜の場合は、溶剤系、硬化系、溶融系などを使用できる。
【0052】
図11は本発明の複合体として適用手可能なプレフィルドシリンジに使用される医療用ゴム製品を示す図である。プレフィルドシリンジとは薬剤が予め充填された注射器である。このプレフィルドシリンジ60にはシリンジ用ガスケット61が装着されており、コア部63はゴム弾性のある材料で作成される。コア部の先端部62は薬剤と接触することから、フッ素樹脂フィルムで一体成形されている。図12はシリンジ用ガスケット61の斜視図、図13は同シリンジ用ガスケット61の断面図である。先端部とともに外側面64もフッ素樹脂フィルムで一体成形されている。内側面65にはねじ溝が形成されており、ここに心棒が取り付けられる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0054】
(実施例1,比較例1)
(1)プラズマ−モノマー重合層形成のための製造装置
図5〜6に示す装置を用いて、表面改質フッ素樹脂フィルムを製造した。プラズマ発生装置としては常圧コロナ放電装置を用い、パール工業社製PLASMASTREAM PSC1002を使用した。常圧コロナ放電部の一対の電極は2mmφのタングステン棒で、同じ外形(長さ5cmで取り付け間隔は3cm、先端の放電部がレ字状に屈曲している)を有し、これらの電極の間隔は、0.5〜3cmとした。コロナ放電電極ヘッド部先端とフッ素樹脂フィルム処理面までの距離は9mmとした。
【0055】
保持具上に、フッ素樹脂フィルムを固定した。保持具としては下記を用いた。
(1)厚さ1.6mm、幅211mm、長さ338mmのガラスエポキシ銅張積層板(実施例1)
(2)厚さ1.6mm、幅210mm、長さ297mmのガラスエポキシ板(比較例1)
ガラスエポキシ銅張積層板(実施例1)を用いた場合には保持具を常圧コロナ放電の電位に対して接地した。ガラスエポキシ板(比較例1)は、フッ素樹脂フィルム表面に帯電する電荷チャージのために使用した。
【0056】
フッ素樹脂フィルムとしては、PTFE(日本バルカー工業社製、バルフロン(登録商標)、厚み0.08mm)、フィルムのサイズは長さ21cm、幅30cmとした。
【0057】
モノマーガスは、開口部長さ296mm、幅38mmを有する深さ59mmのモノマーガス供給装置に液状のアクリル酸を270g投入し、60℃に加熱することでガス化を行った。アクリル酸は和光純薬社製アクリル酸(純度98質量%、500ml)を使用した。
【0058】
プロセスガスはアルゴンを使用し、30SLMの流量にてプラズマ発生装置に供給した。アルゴンガスはエア・リキード工業ガス社製計器用アルゴンボンベ(47L)、純度99.9995vol.%を使用した。
【0059】
プラズマ発生用電源から高周波(20kHz)の高電圧(約24kV)を印加することでプラズマ発生装置からプラズマ流を得た。上記以外の放電条件として、パルス変調周波数を60Hz、パルスデューティーを99%とした。このプラズマ流をフッ素樹脂フィルムに照射し、フィルム全面を改質した。プラズマ照射装置をX軸方向に4mm/秒で移動しながら一往復させ、一往復後保持具と保持具上のフィルムをY軸方向に10mm移動させることで搬送を行い、フィルム全面を処理した。
【0060】
プラズマ重合処理後のフィルムを超音波洗浄し、フィルム表面の余分なモノマーおよび重合体を除去した。超音波洗浄は、アズワン社製超音波洗浄器USK−4Rを使用し、条件はエタノール使用量1000ml、発振パワー:Highに設定し10分間処理を行った。その後、卓上フード内において表面のエタノールが気化するまで室温で乾燥させ、最終的な改質フィルムを得た。得られた改質フッ素樹脂フィルムのプラズマ−モノマー重合層の厚みは10nm(薄膜表面スキャン・プロファイラー(KLA Tencor,P−15)で測定)であった。
【0061】
得られた改質フィルムとゴムとの複合体の成形は加硫成形にて行った。架橋剤として2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン(三協化成社製、ジスネットDB(登録商標))を含む未加硫ゴムシート(ハロゲン化ブチルゴム、厚さ2mm)を準備し、改質フィルムの改質面と未加硫ゴムシートを重ねた状態でプレス型に入れた。温度150℃、処理時間40分、処理圧力1.6MPaにて加硫成形を行い、フッ素樹脂フィルムとゴムとの複合体を得た。加硫後のゴムの厚さは1.95mmであった。保持具としてガラスエポキシ板(比較例1)を用いた場合の複合体の写真を図7Aに示し、ガラスエポキシ銅張積層板(実施例1)を用いた場合の複合体の写真を図7Bに示す。図7A−Bのサンプルは縦90mm、横70mmの大きさのフィルムの上に、縦100mm、横100mmの大きさのゴムを加硫成形した例を示している。
【0062】
(2)均一性の評価
図7A−Bより、ガラスエポキシ板(比較例1)を用いた場合にはフッ素樹脂フィルムとゴムの間に気泡が見られるが、ガラスエポキシ銅張積層板(実施例1)を用いた複合体にはそのような気泡は見られない。このことから実施例1で得られた改質フッ素樹脂フィルムは、均一薄膜が形成されていることが確認できた。これに対して比較例1はフッ素樹脂フィルムとゴムとの間に気泡が入り、不均一であった。
【0063】
(3)はく離試験
実施例1で得られた複合体のはく離試験を行うため、図4Aに示すように、フッ素樹脂フィルムの21の表面にプラズマ−モノマー重合層22を形成した改質フィルムの上に、半分程度の大きさの未処理フッ素樹脂フィルム25を改質フィルムとゴム23の間に挟むことで改質フィルムをはく離試験機のチャックに固定するのに必要なはさみしろ25を確保した。架橋剤として2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン(三協化成社製、ジスネットDB(登録商標))を含む未加硫ゴムシート(ハロゲン化ブチルゴム、厚さ2mm)を準備し、改質フィルムの改質面と未加硫ゴムシートを重ねた状態でプレス型に入れた。温度150℃、処理時間40分、処理圧力1.6MPaにて加硫成形を行い、フッ素樹脂フィルムとゴムとの複合体を得た。
【0064】
はく離試験はJIS K 6854(ASTM D 1876も同様)にしたがって実施した。前記で得られた複合体を約25mm幅に切り、ゴム部23とフィルム部21aをそれぞれ180°はく離試験に固定し、その後100mm/minの速度で剥離し、引張強度を測定した。その結果を図8に示す。グラフの横軸はクロスヘッドの動いた距離であり、縦軸は荷重である。ここから、最大荷重やPTFEの伸びを読みとることができる。図8より、最大点荷重は3.69N/mmでそのときの伸びは83.0825mmであった。また、2N/mmを超えたあたりからゴムがはがれ始め,最終的にゴムのほうが破断した。ゴム−フッ素樹脂フィルム間においてどのような破壊現象が起こっているかを調べるためにはく離した部分のフッ素樹脂フィルムの表面をフーリエ変換赤外分光(FTIR)測定装置(Thermo Nicolet,Avatar360)を用いて分析した。図9A−Cは本発明の実施例1におけるゴム−フッ素樹脂フィルム間の破壊現象を示すフーリエ変換赤外分光(FTIR)測定装置によるATR法による分析結果である。図9Aにフッ素樹脂表面の透過スペクトル、図9Bにフッ素樹脂のはく離面の反射スペクトル、図9Cにゴム表面の透過スペクトルをそれぞれ示す。なお、グラフト重合膜の反射スペクトルについては重合膜が非常に薄いため検出されなかった。図9Aでは1100〜1200cm-1付近に−CF2―および−CF3のピークがみられるが、図9Bではこれらのピークは見られない。また、図9Bでは図9Cのゴムおよびゴムに添加されているタルクによるピークと同様のピークが見られることから基材層(被着材)そのものが破壊する被着材破壊が起こっているものと考えられる。この結果から改質フィルムとゴム間の接着はゴムの破断応力以上の非常に強い引張強度を持つことが確認できた。このことから、ガラスエポキシ銅張積層板(実施例1)を保持具として用いるほうがフッ素樹脂フィルムとゴムとの接着性が向上していることがわかった。はく離試験前のサンプルは図3A、試験後のサンプルは図3Bに示すとおりであった。
【0065】
比較例1品のプラズマ−モノマー重合層の厚みは62.5nm(薄膜表面スキャン・プロファイラー(KLA Tencor,P−15)で測定)であった。
【0066】
(実施例2)
樹脂フィルムとして、PFA(ダイキン工業社製、ネオフロンPFAフィルム(ネオフロン:登録商標)、厚さ25μm)、を用いて実施例1と同様な条件および方法で改質フィルムを作成した。実施例1と同様な方法で得られた改質フィルムとゴムとの複合体の成形を行った。その結果、改質フィルムとゴム間は均一かつ強固に接着されており、PTFEを用いた場合と同様の結果が得られた。はく離試験においても被着材破壊していた。また、実施例1に記載の均一性の評価においても、フッ素樹脂フィルムとゴムの間に気泡は見られず均一薄膜であることが確認できた。
【0067】
(実施例3,比較例2)
モノマーガスとして、アクリル酸(和光純薬社製アクリル酸(純度98質量%、500ml))を用いて、実施例1に記載の方法で改質フィルムを作成した(実施例3)。アクリル酸は60℃に加熱することでガス化を行って改質フィルムを作成した。また、比較例2として特許文献4に記載の装置および方法により,改質フィルムを作成した。さらに得られた改質フィルムとゴムとの複合体の加硫成形を実施例1と同様な方法により行った。加熱温度を130〜180℃、処理時間5〜90分、処理圧力1.6MPaの条件で加硫成形を行ったときの接着状態の評価結果を図10に示す。接着状態の評価は接着後の目視による接着状態の確認と、カッターで複合体表面のフィルムに切れ目を入れ、幅2〜3mmの帯状になったフィルムをピンセットで人為的に引張ったときのはく離状態で判断した。評価基準は、△は見た目では気泡の混入はないが接着率が10%程度の低いもの、○は見た目も気泡の混入はなく、接着率も50%程度あるもの、◎は見た目も気泡の混入はなく接着率がほぼ100%でありピンセットでのはく離はほとんど困難であったものである。図10中の点のうち加熱温度180℃、処理時間5分、10分、20分、40分または加熱温度150℃、処理時間40分で加硫成型を行った結果が実施例1に記載の方法で作成した改質フィルムに対するものであり(実施例3)、その他の結果は特許文献4に記載の装置および方法により、改質フィルムを作成したものである(比較例2)。図10からわかるように実施例3ではいずれも接着率がほぼ100%の強固な複合体が得られ、従来方式(比較例2)にくらべて良好な結果が得られた。また、実施例1に記載の均一性の評価においても、実施例3はフッ素樹脂フィルムとゴムの間に気泡が見られず均一薄膜が形成されていることが確認できた。これに対して比較例2はフッ素樹脂フィルムとゴムとの間に気泡が入り、不均一であった。
【0068】
(実施例4)
保持具として、実施例1で使用したガラスエポキシ板の表面にアルミニウムテープを貼り付けものを用い、実施例1に記載の条件、方法でフッ素樹脂フィルムとゴムとの複合体を得た。その結果、保持具としてガラスエポキシ銅張積層板を用いた場合と同程度のフッ素樹脂フィルムとゴムとの接着性向上が得られた。はく離試験においても被着材破壊していた。また、実施例1に記載の均一性の評価においても、フッ素樹脂フィルムとゴムの間に気泡は見られず均一薄膜であることが確認できた。
【0069】
以上から本発明の実施例の改質フッ素樹脂フィルムは、接着強度は高く、従来品に比べて優位性が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の表面改質フッ素樹脂フィルムは、実施例で示したもの以外に、ポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムとラミネート加工したラミネートフィルム、印刷物、プリント基板、電子回路、電池などのセパレータ、防水透湿布、フィルター、インサート成形体、ローラー、燃料電池用固体電解質膜、太陽電池表面保護シート、建材シートなどの広い範囲に応用できる。
【符号の説明】
【0071】
1,15 フッ素樹脂フィルム層
2,16,22 プラズマ−モノマー重合層
3a,3b,6,7,7a,7b,9 被着材
4,11,12,13,14a,14b,14c,18 破壊部分
5a,5b,8,8a,8b 接着剤層
10,20 複合体
17,17a,17b ゴム層
21 フッ素樹脂フィルム
21a フッ素樹脂フィルムの把持剥離部
23 ゴム層
24 破壊部
25 未処理フッ素樹脂フィルム
31 プラズマ重合装置
32 ドラフトチャンバ
33 プロセスガス供給装置
34 処理室
35 フッ素樹脂フィルム
36 搬送装置
37 保持具
38 モノマーガス供給装置
39 プラズマ発生装置(プラズマヘッド)
40 温度調節器
41a,41b ガスカーテン
42 プラズマ発生用電源
43 送風機
44 排出ガス
45 パージ及びガスカーテン用のプロセスガスボンベ
46 プラズマ発生用プロセスガスポンベ
47 流量計
48 マスフローコントローラ
49 アース
50 電気導体シート
51 パージガス
52 プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂フィルム層の少なくとも一表面にプラズマ−モノマー重合層を有する表面改質フッ素樹脂フィルムであって、
前記プラズマ−モノマー重合層は、プラズマを照射しながら前記フッ素樹脂フィルム層に帯電する電荷を除去した状態で、反応性不飽和基を含むモノマーをグラフト重合させた均一な薄膜層であることを特徴とする表面改質フッ素樹脂フィルム。
【請求項2】
前記表面改質フッ素樹脂フィルムの上に直接又は接着層を介して被着材を接着したとき、
前記表面改質フッ素樹脂フィルムと前記被着材を剥離させると、前記表面改質フッ素樹脂フィルムより上の部分で破壊する請求項1に記載の表面改質フッ素樹脂フィルム。
【請求項3】
表面改質フッ素樹脂フィルムの上に直接接着した被着材が、表面改質フッ素樹脂フィルムの上で熱硬化性樹脂又はゴムを硬化させることにより自己接着させたものである請求項2に記載の表面改質フッ素樹脂フィルム。
【請求項4】
前記薄膜層の厚みは500nm以下である請求項1〜3のいずれか1項である表面改質フッ素樹脂フィルム。
【請求項5】
チャンバー内で、フッ素樹脂フィルム層の少なくとも一表面にモノマー重合層を形成して請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面改質フッ素樹脂フィルムを製造する方法であって、
電気導体シートの上にフッ素樹脂フィルムを載置し、前記フッ素樹脂フィルム層に帯電する電荷を除去した状態で、
プラズマ照射手段と前記電気導体シートとの間で電圧をかけた状態で前記フッ素樹脂フィルムの表面にプラズマを照射しながら反応性不飽和結合基を含むモノマーを供給し、前記フッ素樹脂フィルムの表面に前記モノマーをグラフト重合させて均一な薄膜層を形成することを特徴とする表面改質フッ素樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記チャンバー内でモノマー蒸気を発生させ、プラズマ発生装置(プラズマヘッド)を移動させながら、前記フッ素樹脂フィルムの表面に前記モノマーをグラフト重合させて薄膜層を形成する請求項5に記載の表面改質フッ素樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記電気導体シートは接地されている請求項5又は6に記載の表面改質フッ素樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
プラズマ照射手段と前記電気導体シートとの間の電圧が1〜50kVの範囲である請求項5〜7のいずれか1項に記載の表面改質フッ素樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記チャンバー内に不活性ガスを供給する請求項5〜8のいずれか1項に記載の表面改質フッ素樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
チャンバー内で、フッ素樹脂フィルム層の少なくとも一表面にモノマー重合層を形成して請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面改質フッ素樹脂フィルムを製造する装置であって、
フッ素樹脂フィルムを載せかつ前記フッ素樹脂フィルム層に帯電する電荷を除去するための電気導体シートと、
前記チャンバー内に反応性不飽和結合基を含むモノマーを供給する手段と、
前記フッ素樹脂フィルムの表面に前記モノマーを重合するためのプラズマ照射手段と、
前記プラズマ照射手段と前記電気導体シートとの間で電圧をかける手段を含むことを特徴とする表面改質フッ素樹脂フィルムの製造装置。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面改質フッ素樹脂フィルムの上に直接又は接着層を介して被着材を接着した複合体であって、
前記表面改質フッ素樹脂フィルムと前記被着材を剥離させると、前記表面改質フッ素樹脂フィルムより上の部分で破壊することを特徴とする表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体。
【請求項12】
前記被着材が、ゴム、樹脂、繊維、木材、紙、石材、金属、金属メッキ、印刷インク、導電性ペースト、金属ペースト又は塗膜である請求項11に記載の表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体。
【請求項13】
前記被着材が、前記表面改質フッ素樹脂フィルムの上で熱硬化性樹脂又はゴムを硬化させることにより自己接着させたものであり、前記表面改質フッ素樹脂フィルムと前記被着材を剥離させると被着材破壊をする請求項11又は12に記載の表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体。
【請求項14】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の表面改質フッ素樹脂フィルムの上に直接ゴムを加硫成形した複合体の製造方法であって、
前記表面改質フッ素樹脂フィルムの上でゴム材料を加熱温度130〜180℃、処理時間5〜20分の条件で加硫成形することを特徴とする表面改質フッ素樹脂フィルムを含む複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−233038(P2012−233038A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101189(P2011−101189)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(512109161)地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所 (13)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【上記1名の代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
【Fターム(参考)】