説明

表面改質剤又は表面処理剤としての複合体コアセルベートコアミセル

本発明は、表面上に重合体ミセルを有する装置及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、表面を防汚性及び/又は蛋白質抵抗性にするための表面被覆として重合体ミセルを使用することに関する。本発明は、重合体ミセルを有する改質又は処理表面及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、表面改質又は表面処理用の表面被覆剤として重合体ミセルを使用することに関する。当該表面改質又は表面被覆は、例えば、表面を防汚性及び/又は蛋白質抵抗性にし、或いは細菌の増殖を防止し、消毒し、臭気を抑え、悪臭を予防し、掃除の容易さ又は土壌放出特性を与えるためのものである。これらの重合体ミセルは、親水性の中性コロナ及びコアを示し、反対に荷電したブロックの荷電複合体化によって形成される、所謂複合体コアセルベートコア型のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、重合体ミセルを有する改質又は処理表面及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、表面改質又は表面処理のための表面被覆剤として重合体ミセルを使用することに関する。この表面改質又は表面処理は、例えば、表面を防汚性にし及び/又は蛋白質抵抗性にするため、或いは、細菌の増殖を防ぎ、消毒し、臭気を抑え、悪臭を予防するため、或いは、清掃の容易さ又は土壌放出特性を与えるためのものである。
【背景技術】
【0002】
背景
多くの装置及び材料は、特に生物医学装置の場合には、その表面での特性が該装置又は材料の大部分の特性とは異なることが必要である。これらの装置を生体適合性にさせ又は血漿蛋白質及び核酸のような生体高分子と該装置の表面との非特異的な相互作用を阻害するために、これらの表面特性は、被覆方法を使用して改善される。
【0003】
コンタクトレンズが、改善された表面特性を必要とする生物医学装置のよい例である。良好な角膜の健全さを保持するために、これらのものは、通常、これらのレンズの大部分を通して比較的高い酸素透過性を示す疎水性材料から構築されている。しかしながら、任意の表面処理又は表面改質がなければ、このようなレンズは眼に付着するであろう。従って、コンタクトレンズは、一般に、高い酸素透過性及び疎水性の中心バルク材料と、親水性の特性を増大させるように処理又は被覆された表面とを有するであろう。この親水性表面は、これらのレンズが、過剰量の涙の液体及び蛋白質を付着させることなく、眼の上を比較的自由に移動するのを可能にする。
【0004】
装置を生体適合性、防汚性及び/又は蛋白質非吸着性にさせるという上記目的については、これらのものを単独重合体、ブロック重合体又はそれらの混合物の一つ以上の層で被覆することが斯界に知られている(例えば、WO A 99/38858を参照)。所望の疎水性及び親水性の特性を1分子で組み合わせたブロック重合体を適用することが好ましい。これらのマクロ分子の被覆は、これらのものを表面に化学的にグラフトさせ又はこれらのものを物理的に溶液から吸着させることによって達成される。
【0005】
WO−A−01/32230には、ブロック重合体のうちの一つにとっては好適な溶媒であるが、別のものにとっては劣る溶媒であるいわゆる選択溶媒中での分解に基づき規則正しい形状のミセルに自己集合するというこの種類のブロック重合体の傾向を都合よく使用する方法が開示されている。水のような極性媒体中では、親水性及び疎水性のセグメントを有するブロック重合体は、その親水性コロナが該極性媒体から疎水性コアを保護する形で集合する。非極性媒体中では、これらのミセルは逆転する。このミセルの形状及び寸法は、単に単量体の種類又は構成ブロックの寸法と割合を変更することによって逆転できる。WO−A−01/32230に従う、疎水性コア及び親水性シェル又はその逆を有するこれらの重合体ミセルの被覆は、集合していないマクロ分子を適用するときよりも、その表面に明確且つ均一な層を生じさせる。
【0006】
しかしながら、両親媒性の性質を有する重合体ミセルの適用性は、表面及び環境の限られた数の組合せにのみ制限される。それらの異なる構成成分は、装置の特性を一致させ且つその生体適合性、防汚性又は蛋白質非吸着特性を生じさせることができなければならないだけでなく、形状的制約も満足しなければならない:自己集合は、ブロック重合体の異なる部分の間で溶媒選択性が十分な場合にのみ誘導される。
【0007】
さらに、低分子量の界面活性剤から製造されたミセルのように、重合体ミセルは、いわゆる臨界ミセル濃度以上でしか形成しない。それよりも低い濃度はミセル被膜を破壊し得るが、これは、結局のところ、両親媒性分子の化学的会合ではなく物理的会合からなる。
【0008】
WO−A−01/32230では、これらの問題は、官能性末端基であってそれらによってミセルが表面に化学的に結合するものを有するブロック重合体を供給することによって、又はその他の重合体を有するミセル又は逆ミセルの多層を形成させることによって克服されている。これらに関連する方法は、多少面倒であり、追加の合成工程を必要とし、しかもさらに別個の疎水性ブロックと親水性ブロックの組合せを必要とする。
【特許文献1】国際公開第99/38858号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/32230号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の簡単な説明
選択された両親媒性重合体ミセル群のうち上記欠点を有しない重合体ミセルを含む被覆用組成物を提供することが本発明の目的である。本発明に従う被覆用組成物は、簡単に合成される構成成分を使用して、様々なタイプの表面に適用でき、しかもCMCによって面倒を掛けられない。
【0010】
さらに、少なくとも1種の重合体ミセルを含む被覆用組成物であって、該重合体ミセルが親水性の中性コロナ及び複合体コアセルベートコアを有し、該複合体コアセルベートコアが荷電複合体化によって形成されたものの、装置の表面を改質し若しくは処理するための、例えば装置の少なくとも一つの表面を蛋白質抵抗性にするための、又は細菌の増殖を防ぎ、消毒し、臭気を抑え、悪臭を予防するための、又は清掃の容易さ若しくは土壌放出特性を与えるための使用を提供することが本発明の目的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
定義
本願において、「被覆」とは、少なくとも1種の化合物を表面上に残す任意の処理又は改質を意味する。従って、被覆とは、ある種の組成物の層として、又は少なくとも1種の化合物の付着として理解できる。
【0012】
ここで使用するときに、用語「複合体コアセルべーション」とは、対立する電荷の2種のマクロ分子の相互作用をいう。文献において、コアセルべーションとは、液相中のコロイド系の分離をいい、ここで、この親水性コロイド成分でさらに濃縮された相は、コアセルベートと呼ばれる。用語「複合体」とは、コロイドを分離させるための原動力が静電的起源のものであることをいう。複合体コアセルべーションの原理によって形成されるミセルは、複合体コアセルベートコアミセル(CCCM)と呼ばれる。
【0013】
本発明の重合体ミセルにおいて、複合体コアセルべーションは、さもなくば複合体凝集、ブロックイオノマー複合体化(BIC)、高分子電解質複合体化(PEC)又はさらに高分子電解質間複合体化(IPEC)と呼ばれることもある。
【0014】
本明細書において、単量体から誘導される単位とは、該単量体から重合によって直接得られ得る単位と理解される。従って、アクリル酸又はメタクリル酸のエステルから誘導される単位は、例えば、アクリル酸若しくはメタクリル酸のエステル又は酢酸ビニルを重合させ、次いで加水分解させることによって得られる、式−CH−CH(COOH)−、−CH−C(CH3)(COOH)−、−CH−CH(OH)−、−CH−C(CH3)(OH)−の単位を包含しない。アクリル酸又はメタクリル酸から誘導される単位は、例えば、単量体(例えば、アクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキル)を重合させ、次いで反応(例えば、加水分解)させて式−CH−CH(COOH)−又は−CH−C(CH3)(COOH)−の単位を得ることによって得られる単位を包含する。ビニルアルコールから誘導される単位は、例えば、単量体(例えば、ビニルエステル)を重合させ、次いで反応(例えば、加水分解)させて式−CH−CH(OH)−又は−CH−C(CH3)(OH)−の単位を得ることによって得られる単位を包含する。
【0015】
本明細書において、重合体、共重合体又はブロックの分子量とは、該重合体、共重合体、部分又はブロックの重量平均分子量をいう。重合体又は共重合体の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。本明細書において、ブロックの分子量とは、該ブロックを作るために使用される単量体、重合体、開始剤及び/又は連鎖移動剤の量から算出される分子量をいう。当業者であれば、これらの分子量を算出する方法を熟知している。ブロック間の重量比とは、広範囲にわたる重合を考慮して、該部分又はブロックを作るために使用される化合物の量の間の比をいう。
【0016】
典型的には、ブロックの分子量Mは、次式:
【数1】

(式中、Miは単量体iの分子量であり、niは単量体iのモル数であり、n先駆物質は、該ブロックのマクロ分子鎖が結合するであろう化合物のモル数である。)
に従って算出される。該化合物は、連鎖移動剤若しくは連鎖移動基又は先のブロックであることができる。このものが先のブロックである場合には、そのモル数は、該先のブロックのマクロ分子鎖が結合した化合物、例えば、連鎖移動剤又は連鎖移動基のモル数であるとみなされ得る。また、これは、該先のブロックの分子量の測定値からの算出によって得ることもできる。2種のブロックが、先のブロックから、例えば末端で同時に成長する場合には、上記式に従って算出される分子量を2で割るべきである。
【0017】
発明の詳細な説明
複合体コアセルベートコアミセルの主要部分は、荷電ブロック、対立する電荷を有する第2荷電ブロック及び親水性の中性ブロックである。全ての成分は、優れた水溶性を示す。
【0018】
本発明の一具体例では、これらの本質的な特徴は、単一の重合体、好ましくは、陰イオン性ブロック、陽イオン性ブロック及び中性親水性ブロックを任意の順序で有するトリブロック三元共重合体のなかに含まれる。しかしながら、好ましい具体例では、本発明に従う重合体ミセルは、少なくとも第1重合体及び第2重合体を含む。
【0019】
該第1及び第2重合体は、反対に荷電しているが、これは、一方の重合体が全体として陰イオンの性質を示し、他方の重合体が全体として陽イオンの性質を示すことを意味する。このイオン特性は、例えばスルホン化基のように水性環境中で永続的に荷電若しくは「クエンチング」される基によって、又は、例えば、アミン及びカルボキシル化された基のようにpHに依存する荷電性若しくは「アニール」基によって説明できる。本明細書に使用するときに、用語「荷電性」とは、永続的に荷電した基及び荷電可能な基の両方をいう。また、これは、「イオン性」(荷電)の単位、単量体、ブロック若しくは重合体、又は「潜在的にイオン性の」(荷電可能な)単位、単量体、ブロック若しくは重合体ということもできる。簡略化する目的のために、本明細書では、「イオン性」(確実には、陰イオン性又は陽イオン性)とは、特に示さない限り、イオン性及び潜在的にイオン性(確実には、潜在的に陰イオン性又は潜在的に陽イオン性)の両方をいう。
【0020】
第1重合体は、少なくとも6個、より好ましくは少なくとも20個、最も好ましくは少なくとも40個の荷電性基を含むイオン性ブロックを有するブロック重合体である。ここで使用するときに、用語「ブロック重合体」とは、1種以上の単量体(又は単量体から誘導される単位)のブロックから構成される重合体をいう。このものは、1種以上の単量体のランダムな分布を有する重合体を含まない。しかしながら、ブロックは、それ自体が1種以上の単量体から誘導される単位のランダムな分布であることができる。本発明によれば、ブロック重合体は、末端から末端までの鎖を有するジブロック重合体又は中間に第3ブロックを有するトリブロック三元共重合体である。有利には、少なくとも1個のブロック、好ましくは少なくとも2個のブロックは、モノ−α−エチレン性不飽和単量体から誘導される単位を含む。
【0021】
ここで使用するときに、用語「イオン性ブロック」とは、荷電基及び荷電性基のブロックを含むことを意味する。このブロック重合体は、全体的に陽イオンに荷電し、又は陰イオンに荷電し得る。好ましくは、少なくとも6個、より好ましくは少なくとも20個、最も好ましくは少なくとも40個の荷電性基の配列を有するイオン性ブロックを本発明に従う重合体ミセルのために使用できる。
【0022】
ブロック重合体のイオン性ブロックは、好ましくは、ポリL−リシン又はその他のポリアミノ酸、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、DNAセグメント、ポリ(チオフェン−3−酢酸)、ポリ(4−スチレンスルホン酸)、ポリビニルピロリドン、ポリ(ピリジニウムアセチレン)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアミン)、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(アルキルアミン塩酸塩)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PAMA)、ポリアスパラギン酸、ポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウム)(PVP)よりなる群から選択されるが、これらに限定されない。より好ましくは、該イオン性ブロックは、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PAMA)及びポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウム)(PVP)よりなる群から選択される。
【0023】
また、ブロックは、このものが含む単位及び/又は該単位を誘導する単量体によっても定義できる。従って、イオン性ブロックは、陰イオン性単位又は陽イオン性単位を含むことができる。
【0024】
陽イオン性ブロックの例は、
・(メタ)アクリル酸アミノアルキル、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、
・特に(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリルアミド誘導体を含めた単量体であって、少なくとも1個の第二、第三又は第四アミン官能基又は窒素原子、ビニルアミン若しくはエチレンイミンを含有する複素環式基を含むもの、
・ジアリルジアルキルアンモニウム塩、
・それらの混合物、それらの塩及びそれらから誘導されるマクロ単量体
のような陽イオン性単量体から誘導される単位を含むブロックである。
【0025】
陽イオン性単量体の例としては、
・(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジ−t−ブチルアミノエチル、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、
・エチレンイミン、ビニルアミン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、
・トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートクロリド、トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートメチルスルフェート、ジメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートベンジルクロリド、4−ベンゾイルベンジルジメチルアンモニウムエチルアクリレートクロリド、トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリルアミド(また、2−(アクリルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム、TMAEAMSとも呼ばれる)クロリド、トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレート(また、2−(アクリルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム、TMAEAMSとも呼ばれる)メチルスルフェート、トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミドクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、
・塩化ジアリルジメチルアンモニウム、
・次式:
【化1】

(式中、
・R1は水素原子又はメチル若しくはエチル基であり、
・R2、R3、R4、R5及びR6は同一又は異なるものであり、そして線状又は分岐C1〜C6、好ましくはC1〜C4アルキル、ヒドロキシアルキル又はアミノアルキル基であり、
・mは1〜10の整数、例えば1であり、
・nは1〜6の整数、好ましくは2〜4であり、
・Zは−C(O)O−若しくは−C(O)NH−基又は酸素原子を表し、
・Aは(CH2pを表し、ここで、pは1〜6の整数、好ましくは2〜4であり、
・Bは線状又は分岐のC1〜C12、有利にはC3〜C6ポリメチレン鎖であって、随意として1個以上のヘテロ原子又はヘテロ基、特にO又はNHで中断され、且つ、随意として1個以上のヒドロキシル又はアミノ基、好ましくはヒドロキシル基で置換されたものを表し、
・Xは同一又は異なるものであり、そして対イオンを表す。)
を有する単量体、並びに
・それらの混合物及びそれらから誘導されるマクロ単量体
が挙げられる。
【0026】
陰イオン性ブロックの例は、
・ホスフェート又はホスホネート基を含むα−エチレン性不飽和、好ましくはモノ−α−エチレン性不飽和単量体、
・α−エチレン性不飽和、好ましくはモノ−α−エチレン性不飽和のモノカルボン酸、
・α−エチレン性不飽和、好ましくはモノ−α−エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、
・α−エチレン性不飽和、好ましくはモノ−α−エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノアルキルアミド、
スルホン酸基を含むα−エチレン性不飽和、好ましくはモノ−α−エチレン性不飽和化合物及びスルホン酸基を含むα−エチレン性不飽和化合物の塩
よりなる群から選択される陰イオン性単量体から誘導される単位を含むブロックである。
【0027】
好ましい陰イオン性ブロックとしては、
・アクリル酸、メタクリル酸、
・ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸の塩、
・ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸の塩、
・α−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、α−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸の塩、
・メタクリル酸2−スルホエチル、メタクリル酸スルホエチルの塩、
・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及び
・スチレンスルホネート(SS)
よりなる群から選択される少なくとも1種の陰イオン性単量体から誘導される単位を含むブロックが挙げられる。
【0028】
第1重合体は、少なくとも親水性及び中性のブロックをさらに含む。該第1重合体が線状重合体である場合には、それらのブロックは、末端間で結合する。該第1重合体が分岐である場合には、それらの荷電性基は、親水性及び中性の主鎖上にグラフトされ得、又はその逆でもよい。しかしながら、該第1重合体は線状鎖であることが好ましい。
【0029】
原則として、任意の親水性及び中性のブロックが使用できるが、唯一の制限は、このものが水溶性であること、イオン性ブロックに結合し得ること、及び装置の表面のために望ましい特性を示すことである。該ブロック重合体の親水性及び中性のブロックは、ポリエチレングリコール(PEG)、メタクリル酸ポリグリセリル(PGMA)、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリメタクリルアミドよりなる群から選択できるが、これらに限定されない。該親水性及び中性のブロックは、蛋白質抵抗性及び/又は防汚特性を有することが好ましい。より好ましくは、親水性及び中性のブロックは、ポリエチレングリコール(PEG)若しくはポリアクリルアミド(PAM)又はそれらの組合せである。
【0030】
また、このブロックは、このものが含む単位及び/又は該単位を誘導する単量体によっても定義できる。従って、陰イオン性ブロックは、中性親水性単位を含むことができる。
【0031】
中性親水性ブロックの例は、
・エチレンオキシド、
・ビニルアルコール、
・ビニルピロリドン、
・アクリルアミド、メタクリルアミド、
・ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート(即ち、ポリエトキシル化(メタ)アクリル酸)、
・α−エチレン性不飽和、好ましくはモノ−α−エチレン性不飽和モノカルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及び
・α−エチレン性不飽和、好ましくはモノ−α−エチレン性不飽和モノカルボン酸のヒドロキシアルキルアミド
よりなる群から選択される、中性親水性単量体から誘導される単位を含むブロックである。
【0032】
第1重合体の親水性及び中性のブロックは、好ましくは、10000K以下、より好ましくは5000K以下、最も好ましくは1000K以下の分子量を有する。
【0033】
本発明に従う第2重合体は、単独重合体、ランダム共重合体、ブロック重合体、中性重合体又はそれらの誘導体であることができる。第2重合体が単独重合体又はランダム共重合体である場合には、このものは高分子電解質である。該第2重合体がブロック重合体である場合には、このものは少なくともイオン性ブロックを含む。高分子電解質又はイオン性ブロックは、陽イオン荷電性又は陰イオン荷電性のいずれかであることができ、ここで、このものは、第1重合体のイオン性ブロックとは逆に荷電している。該第1重合体のイオン性ブロックがポリ陽イオンである場合には、該第2重合体は全体的に陰イオンの性質を有し、そして該第1重合体の陰イオン性ブロックがポリ陰イオンである場合には、該第2重合体は全体的に陽イオンの性質を有する。該第2重合体がランダム共重合体である場合には、このものは、好ましくは、陰イオン性単位の組合せ又は陽イオン性単位の組合せ又は陰イオン性単位と中性単位の組合せ又は陽イオン性単位と中性単位の組合せを含む。
【0034】
本発明に従う第2重合体は、単独重合体若しくはランダム共重合体、ブロック重合体、中性重合体又はそれらの誘導体であることができる。このものは、第1重合体のイオン性ブロックと同一のポリ陰イオン及びポリ陽イオンの群から選択できるが、このリストに限定されない。換言すれば、第2重合体又はそのブロックは、上に列挙した単位を含み及び/又は上に列挙した単量体から誘導され得るが、ただし、このものは、該第1重合体が陰イオン性ブロックである場合には陽イオン性であり、又は該第1重合体が陽イオン性ブロックを有する場合には陰イオン性であるものとする。原則として、いかなる陰イオン性ブロックも本発明に従う複合体コアセルベートコアミセルの製造の際に使用できるが、その唯一の制約は、このものが該第1重合体の陰イオン性ブロックとは逆に荷電可能であることである。最も好ましくは、該第2重合体は、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PAMA)及びポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウム)(PVP)よりなる群から選択される。また、このものは、上に列挙した単量体から誘導される単位を含む単独重合体又はランダム共重合体であることもできる。
【0035】
第2重合体が単独重合体である場合には、このものは、好ましくは、少なくとも50個、より好ましくは少なくとも200個、最も好ましくは少なくとも500個の単量体単位からなる。単独重合体は、好ましくは、100000K以下、より好ましくは50000K以下、最も好ましくは10000K以下の分子量を有する。
【0036】
第2重合体がブロック重合体である場合には、その陰イオン性ブロックは、好ましくは、少なくとも50個、より好ましくは少なくとも200個、最も好ましくは少なくとも500個の単量体単位からなる。第2重合体のイオン性ブロックは、好ましくは100000K以下、より好ましくは50000K以下、最も好ましくは10000K以下の分子量を有する。
【0037】
第2重合体がブロック重合体である場合には、該第2ブロックは、第1重合体の第2ブロックと同一又は異なる中性ブロックであることができる。原則として、いかなる単量体も適用できるが、唯一の制限は、これらの単量体のブロックが水溶性であること、陰イオン性ブロックに結合し得ること及び装置の表面のために望ましい性質を示すことである。親水性及び中性のブロックは、蛋白質抵抗性及び/又は防汚特性を有することが好ましい。最も好ましくは、該親水性及び中性のブロックは、ポリエチレングリコール、メタクリル酸ポリグリセリル若しくはポリアクリルアミド又はそれらの組合せである。
【0038】
蛋白質吸着の低減若しくは防止及び/又は防汚のための被覆用組成物の使用を提供することが本発明の目的である。本発明に従う被覆用組成物は、さらに、表面改質又は表面処理に関連する。
【0039】
表面改質又は表面処理は、蛋白質吸着の低減若しくは防止及び/又は防汚性であることができる。
【0040】
表面改質又は表面処理は、細菌の増殖を防ぐこと、消毒すること、臭気を抑えること、悪臭を防止すること又は清掃の容易さ若しくは土壌放出特性を与えることであり得る。
【0041】
該組成物は、例えば、ホームケア組成物又は織物ケア組成物又は施設清掃用組成物又は産業清掃用組成物であることができる。該組成物は、例えば、船舶用ペイントのようなペイント又はシーラントであることができる。いくつかの組成物及び/又は表面処理若しくは表面改質及び/又は特定の表面(随意として装置の)を以下に与える。
【0042】
また、本発明は、蛋白質の精製並びに薬剤及び遺伝子送達のために複合体コアセルベートコアミセルを使用することに関するものでもある。本発明に従う被覆用組成物を使用して装置の少なくとも一つの表面を被覆することが好ましい。
【0043】
さらに、ある種の表面の改質又は処理方法、例えば、装置の表面の被覆方法であって、次の工程:
(i)少なくとも第1重合体と第2重合体とを、得られる混合物が0.2〜0.8の範囲の陽イオン性重合体基の総数対荷電基の総数の割合を有するような量で混合させ、ここで、該第1重合体と該第2重合体は、反対に荷電しており、しかも該第1重合体は、少なくとも親水性及び中性のブロックを含むブロック重合体であるものとし、
(ii)得られた混合物と装置の表面とを接触させること
を含み、
しかも該両工程における塩濃度が1M以下、より好ましくは0.2M以下、最も好ましくは0.05M以下である
方法を提供することが本発明の目的である。
【0044】
工程(i)の第1重合体と第2重合体との混合中に、該第1重合体のイオン性基と該第2重合体上の逆に荷電したイオン性基とが複合体コアセルべーションを誘導するが、これは、過剰の電荷なしに可溶性の複合体に至る。というのは、これらの電荷は、全て、コアセルベートコアによって形成される複合体ドメインに限られるからである。親水性及び中性のブロックはコロナを形成する。コアの寸法は荷電基の量によって決定されるのに対し、コロナの寸法は全体的に中性単量体の量に依存する。本発明に従う重合体ミセルは、両親媒性又は溶媒選択性では誘導されない自己集合体であり、そしてそれらの構成成分は、全て、優れた水溶性を示す。
【0045】
このタイプの相分離のための原動力は、関与するイオン性ブロックの電場によって初めに制限された少量の対イオンの遊離と、これらの電荷のさらに効率的な遮蔽による該イオン性ブロックの静電エネルギーの減少とに関連するエントロピーの獲得である。
【0046】
本発明に従う自己集合体は、CMCを欠く。従って、複合体コアセルベートコアミセルの形成は、荷電性ブロックと中性ブロックの長さ比に制限されず、しかも構成成分が供給されるのに必要である最小濃度を有しない。
【0047】
しかしながら、複合体コアセルベートコアミセルの形成は、どちらかといえば陰イオン荷電性基及び陽イオン荷電性基の総数に依存することが分かる。本発明を実施するための条件を決めるために、該組成物は、単量体単位の割合では表されないが、陽イオン性基f+の割合
【数2】

又は陰イオン性基f=1−f+の割合として表される。
【0048】
所謂好ましいミセル組成物(PMC)の周囲には、重合体ミセルへの自己集合が生じる、該組成物中の陽イオン性基及び陰イオン性基の相対量に関連するf+の限界範囲が存在する。この範囲外では、いかなる複合体コアセルベートコアも形成されない。このPMCは、両親媒性ミセルからの知られているCMCのように下限を形成せず、むしろ下限及び上限による範囲の最適条件を形成する。このPMCは、正に荷電した基の総量が該組成物中の負に荷電した基の総量におおよそ等しいときには、f+=0.5であることが分かる。f+は、0.2〜0.8、より好ましくは0.3〜0.7、最も好ましくは0.4〜0.6の範囲にあることが好ましい。
【0049】
本発明の具体例では、重合体ミセルは、第1重合体を1種以上及び第2重合体を1種以上含むが、ここで、それらの相対量は、f+についての上記制限によって決定される。所謂集合数は、ミセル形成に関わる重合体の数に関連する。
【0050】
ミセルの集合数は、ミセル半径の僅かな増大を生じさせるコロナブロックの長さの増加と共に強く減少する。従って、コアとコロナのブロック寸法の比は、表面に結合した複合体コアセルベート層及び中性重合体ブラシ層の厚さで表される。コア及びコロナのブロック長さは、当業者が被覆特性を必要な用途に一致させるために変更できるパラメーター、即ち、それぞれ、結合強さ及び、例えば、防汚特性である。
【0051】
ミセル形成の出現は、(i)ブロックの長さ比、(ii)ブロック重合体の全ブロック長さ、(iii)コロナ単量体の化学構造(即ち、親水性)及び(iv)第2重合体のイオン性基の分子量とタイプによって決定される。安定なミセルは、ブロック重合体上の陰イオン性ブロックと親水性及び中性ブロックとの長さが適切である場合にのみ形成される。
【0052】
中性ブロックが荷電部分と比較して短すぎる場合には、この系は、反対に荷電した高分子電解質の混合物にまで実質的に分解し、そしてミセルの形成よりもむしろ肉眼で見える相分離に至る。しかしながら、親水性及び中性の単量体の量対荷電基の量の比が高すぎても、本発明に従うミセルには至らないことが分かる。従って、親水性及び中性の単量体の数対第1ブロック重合体上の荷電基の数の比を1〜10の範囲、より好ましくは2〜9の範囲、最も好ましくは3〜8の範囲に維持することが好ましい。この比が3を超える場合には、沈殿が完全に回避できる。また、この比は、親水性及び中性のブロックの親水性にも関係する:親水性が改善すると、ミセル形成にはさらに小さい比で十分である。
【0053】
本発明の一具体例では、複合体化に関わる荷電基の数が14個以下、好ましくは35個以下の場合に、3〜10の範囲の比を有することが好ましい。
【0054】
上記のように、非常に不均整のブロック長さ比の場合であってコロナがコアブロックよりもかなり長いときには、いかなるミセルも形成されない。従って、本発明を実施するためには、第2重合体が少なくとも20個、より好ましくは少なくとも100個、最も好ましくは少なくとも500個の荷電単量体単位を有することが好ましい。
【0055】
さらに、複合体コアセルべーションは、塩濃度が臨界値に達する場合には、全体的に抑制される。高分子電解質を含有する溶液のイオン強度が高すぎる場合には、混合中にいかなる複合体化も生じないであろう。塩の複合体コアセルべーション系への添加中に、そのコアセルベート相は、その別個の成分に再溶解するであろう。従って、工程(i)の混合中及び工程(ii)の被覆中に、塩濃度が1M以下、より好ましくは0.2M以下、最も好ましくは0.05M以下であることが好ましい。
【0056】
上記の方法によって得られ得る、改質表面又は処理表面、例えば被覆装置(その表面は、該装置の表面である)を提供することが本発明のさらなる目的である。
【0057】
また、改質表面又は処理表面、例えば被覆装置(その表面は該装置の表面である)であって、少なくとも1種の重合体ミセルが、例えば該装置の少なくとも一つの表面に物理的に結合したものを提供することも本発明の目的である。このミセルと表面との間の物理的結合は、好ましくは、溶液からの吸着によって達成される。好ましくは、この表面は、工程(i)から得られた溶液に、該溶液から該表面上に重合体ミセルが吸着するのに十分な時間にわたって浸漬され、それによって好ましくは単層が形成される。本発明に従う被覆適用は、当業者に知られている多数の方法で達成できる。
【0058】
処理され又は改質されるべき表面の特性は、疎水性又は親水性、負電荷又は正電荷のいずれかの任意の性質であることができる。限定されるものではないが、金属、金属合金、セラミックス、ガラス、シリカ、木材及び重合体材料などから作られた装置又は器具が本発明に従って被覆され得る。
【0059】
生物学、医療又はパーソナルケア産業で使用される幅広い装置、特に、血液又はその他の蛋白質含有流体との接触を必要とするもの又は組織との接触を必要とするものを含め、生物医学装置の被覆のために、本発明に従う被覆用組成物を使用することが好ましい。このような用途は、例えば、腎臓透析及び血液灌流装置のような外部から使用される人工器官又は体外治療用装置並びに血管アクセス装置、インスリンポンプチューブ、導尿カテーテル若しくは静脈カテーテルなどのような埋め込み型若しくは部分埋め込み型人工器官又は装置に見出され得る。さらに、人工器官装置の他の部分も被覆され得る。埋め込み型装置では、例えば、全外部表面積を被覆して装置の生体適合性を増大させることができる。装置の内部の血液接触部分の全部を被覆して蛋白質の結合を低減させ、それによって血栓形成を低減させ又は解消させることができる。
【0060】
組織又は細胞培養液、血液又は血清のような蛋白質含有流体などと共に使用される様々なタイプの実験器具のようなその他の医療装置も被覆できる。これらのものとしては、検定用プレート、担体又は膜、ガラス製品、細胞培養装置若しくはバイオリアクター装置又は集成体、血液輸送用チューブ、血液細胞保管用バッグ、フィルター、薬物製造及び包装、蛋白質の単離、調製及び精製用の装置又はシステムなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、研究室で又は医療の場で使用される織布若しくは不織布又は生地様材料も本発明の重合体で被覆し又は含浸させて蛋白質結合に対する抵抗性を増大させ、それによって蛋白質源からの汚染を低減させることができる。本発明に従って製造された被覆物品は、再利用可能なシステム、装置などにとって、二次汚染を最小化させ且つ洗浄による蛋白質除去を容易にするために特に有用であろう。
【0061】
ホームケア又は織物ケア用組成物は、硬質表面洗浄剤又は洗剤組成物であることができる。
【0062】
上及び下において、「組成物」とは、それ自体で使用できる組成物、又は使用前若しくは使用中に希釈されるべき組成物(これは、「濃縮組成物」ということができる。)又は希釈された形の組成物(これは、「希釈組成物」ということができる。)をいう。
【0063】
上及び下において、「硬質表面」とは、住宅若しくは施設建造物、又は産業用建造物又は家具において見出される任意の表面をいうが、ただし、該表面は、布地、家具用織物、カーテン、シートのような織物ではないものとする。硬質表面としては、特に、食器類、銀製品及び定期的に洗浄されることが必要な任意の他の表面が挙げられる。
【0064】
該組成物は異なる形態であることができる。この形態は、通常、組成物の用途に依存する。従って、該組成物は、液体、ゲル、気泡性の液体、泡、粉末又はタブレットであることができる。
【0065】
液状組成物は、例えば、ローラー又はポンプのような液体分散用装置による噴射、流し込み又は塗布によって施され得る。
【0066】
該組成物は、使用前又は使用中に希釈できる。希釈は、好ましくは、水で実行される。希釈率は、通常、組成物の用途に依存する。さらに、希釈の方法は、該組成物を使用する消費者に依存し得る。
【0067】
組成物が液状組成物、例えば、液状濃縮組成物である場合には、該組成物は、液状媒体、好ましくは水性媒体、アルコール媒体又はヒドロキシ−アルコール媒体を含むことができる。この媒体は、該組成物の一部分、濃縮組成物の一部分又は希釈組成物の一部分、例えば希釈用媒体であることができる。
【0068】
該組成物は、通常、ホームケア若しくは織物ケア又は施設清掃若しくは産業清掃用組成物の成分のような成分をさらに含むことができる。このさらなる成分は、通常、該組成物の用途、目的及び/又は形態に依存する。これらのさらなる成分は、数種の成分を含む組成物(又は処方物)を製造する当業者に、用途及び市場に役立つことが知られている。
【0069】
従って、該組成物は、少なくとも1種の界面活性剤を含むことができる。界面活性剤を含む組成物は、例えば、食器洗浄用組成物(食器手洗い又は自動食器洗浄)、洗濯用組成物、硬質表面清掃用組成物、産業清掃用又は脱脂用組成物のような清掃又は脱脂を与えるべき組成物に有用である。
【0070】
有用な界面活性剤としては、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性(両性イオン性を含む)の界面活性剤及びそれらの混合物が挙げられる。
【0071】
陰イオン界面活性剤
本発明に有用な陰イオン界面活性剤は、好ましくは、線状アルキルベンゼンスルホネート、α−オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、メチルエステルスルホネート、アルキルスルフェート、アルキルアルコキシスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアルコキシカルボキシレート、アルキルアルコキシル化スルフェート、サルコシネート、タウリネート及びそれらの混合物よりなる群から選択される。
【0072】
使用できる陰イオン界面活性剤の一タイプは、アルキルエステルスルホネートを包含する。これらのものは、再生可能な非石油資源で作られ得るため、望ましい。アルキルエステルスルホネート界面活性剤成分の製造は、技術文献に開示されている既知の方法に従って達成できる。例えば、C8〜C20カルボン酸の線状エステルを、「The Journal of the American Oil Chemists Society」,52(1975),pp.323−329に従ってガス状SO3でスルホン化させることができる。好適な出発材料としては、獣脂、ヤシ油及びココナツ油などから誘導されるような天然脂肪物質が挙げられよう。特に洗濯用途のために好ましいアルキルエステルスルホネート界面活性剤は、次の構造式:
【化2】

(式中、R3はC8〜C20ヒドロカルビル、好ましくはアルキル、又はそれらの組合せであり、R4はC1〜C6ヒドロカルビル、好ましくはアルキル、又はそれらの組合せであり、Mは可溶性塩形成性陽イオンである。)
のアルキルエステルスルホネート界面活性剤を含む。好適な塩としては、ナトリウム、カリウム及びリチウム塩のような金属塩、並びにメチル−、ジメチル−、トリメチル−及び第四アンモニウム陽イオン、例えば、テトラメチルアンモニウム及びジメチルピペリジニウムのような置換又は非置換アンモニウム塩、並びにアルカノールアミン、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンから誘導される陽イオンが挙げられる。好ましくは、R3はC10〜C16アルキルであり、R4はメチル、エチル又はイソプロピルである。特に好ましいものは、R3がC14〜C16アルキルであるメチルエステルスルホネートである。
【0073】
アルキルスルフェート界面活性剤は、ここで使用するのに重要である別のタイプの陰イオン界面活性剤である。ポリヒドロキシ脂肪酸アミド(以下参照)と併用されるときに、広範囲の温度、洗浄濃度及び洗浄時間にわたる良好なグリース/油の洗浄性を含めて優れた全体的な洗浄力を与えることに加えて、アルキルスルフェートの分解が得られ、並びに液状洗剤処方物への改善された処方能力は、式ROSO3M(式中、Rは、好ましくは、C10〜C24ヒドロカルビル、好ましくは、アルキル又はC10〜C20アルキル成分を有するヒドロキシアルキル、より好ましくは、C12〜C18アルキル又はヒドロキシアルキルであり、MはH又は陽イオン、例えば、アルカリ若しくはアルカリ土類(第IA族若しくは第IIA族)金属陽イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム)、メチル−、ジメチル−及びトリメチルアンモニウム及び第四アンモニウム陽イオン、例えば、テトラメチルアンモニウム及びジメチルピペリジニウムのような置換若しくは非置換アンモニウム陽イオン並びにエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びそれらの混合物から誘導される陽イオンなどである。)
の水溶性の塩又は酸である。典型的には、低い洗浄温度(例えば、約50℃以下)についてはC12〜C16のアルキル鎖が好ましく、高い洗浄温度(例えば、約50℃以上)についてはC16〜C18アルキル鎖が好ましい。これらの界面活性剤の例としては、商品名Rhodapanの下にロディア社によって販売されている界面活性剤が挙げられる。
【0074】
アルキルアルコキシル化スルフェート界面活性剤は、有用な陰イオン界面活性剤の別のカテゴリーである。これらの界面活性剤は、典型的には式RO(A)mSO3M(式中、Rは非置換C10〜C24アルキル又はC10〜C24アルキル成分を有するヒドロキシアルキル基、好ましくはC12〜C20アルキル又はヒドロキシアルキル、より好ましくはC12〜C18アルキル又はヒドロキシアルキルであり、Aはエトキシ又はプロポキシ単位であり、mは0以上、典型的には約0.5〜約6、より好ましくは約0.5〜約3であり、MはH又は、例えば、金属陽イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムなど)、アンモニウム若しくは置換アンモニウム陽イオンであることができる陽イオンである。)の陽イオンである。ここでは、アルキルエトキシル化スルフェート並びにアルキルプロポキシル化スルフェートが意図される。置換アンモニウム陽イオンの特定の例としては、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム及び第四アンモニウム陽イオン、例えば、テトラメチルアンモニウム、ジメチルピペリジニウム、並びにアルカノールアミン、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンから誘導される陽イオン、並びにそれらの混合物が挙げられる。代表的な界面活性剤は、C12〜C18アルキルポリエトキシレート(1.0)スルフェート、C12〜C18アルキルポリエトキシレート(2.25)スルフェート、C12〜C18アルキルポリエトキシレート(3.0)スルフェート及びC12〜C18アルキルポリエトキシレート(4.0)スルフェート(ここで、Mはナトリウム及びカリウムから都合よく選択される。)である。ここで使用するための界面活性剤は、天然又は合成アルコール原料から作られ得る。分岐を含め、鎖長は、平均的な炭化水素分布を表す。これらの界面活性剤の例としては、商品名Rhodapexの下にロディア社によって販売されている界面活性剤が挙げられる。
【0075】
その他の陰イオン界面活性剤
また、洗浄目的のために有用なその他の陰イオン界面活性剤もここの組成物に含まれ得る。これらのものは、石鹸の塩(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン塩のような置換アンモニウム塩)、例えば、商品名Rhodacalの下にロディア社によって販売されているC8〜C20線状アルキルベンゼンスルホネート、C8〜C22第一又は第二アルカンスルホネート、C8〜C24オレフィンスルホネート、例えば英国特許第1082179号明細書に記載されるようなクエン酸アルカリ土類金属の熱分解生成物のスルホン化によって製造されたスルホン化ポリカルボン酸、アルキルグリセリンスルホネート、脂肪アシルグリセリンスルホネート、脂肪オレイルグリセリンスルフェート、アルキルフェノールエチレンオキシドエーテルスルフェート、パラフィンスルホネート、アルキル燐酸塩、アシルイソチオネートのようなイソチオネート、N−アシルタウレート、メチルタウリドの脂肪酸アミド、アルキルスクシナメート及びスルホスクシネート、例えば商品名Geroponの下にロディア社によって販売されているスルホスクシネートのモノエステル(特に、飽和及び不飽和C12〜C18モノエステル)、スルホスクシネートのジエステル(特に、飽和及び不飽和C6〜C14)、N−アシルサルコシネート、アルキルポリグルコシド(この非イオン性非硫酸化化合物は以下に説明する)の硫酸塩のようなアルキル多糖類の硫酸塩、分岐第一アルキル硫酸塩、式RO(CH2CH2O)kCH2COO-+(式中、RはC8〜C22アルキルであり、kは0〜10の整数であり、Mは水溶性塩形成性陽イオンである。)のようなアルキルポリエトキシカルボキシレート並びにイセチオン酸でエステル化され且つ水酸化ナトリウムで中和された脂肪酸を挙げることができる。また、ロジン、水素化ロジン並びにトール油中に存在し又はそれから誘導される樹脂酸及び水素化樹脂酸のような樹脂酸及び水素化樹脂酸も好適である。
【0076】
さらなる例は、「Surface Active Agents and Detergents」(I及びII巻,Schwartz,Perry及びBerch)に与えられている。また、このような界面活性剤の一種は、1975年12月30日に与えられたLaughlin外の米国特許第3929678号の23欄58行〜29欄23行に一般的に開示されている。
【0077】
非イオン界面活性剤
好適な非イオン界面活性剤は、1975年12月30日に与えられたLaughlin外の米国特許第3929678号の13欄14行〜16欄6行に一般的に開示されている。当該特許文献は、引用によってここに加えるものとする。有用な非イオン界面活性剤の代表的な部類としては、例えば、商品名Rhodamoxの下にロディア社によって販売されている酸化アルキルジアルキルアミン、例えば、商品名Rhodasurfの下にロディア社によって販売されているアルキルエトキシレート、アルカノイルグルコースアミド、例えば、商品名Mirataineの下にロディア社によって販売されているアルキルベタイン及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ここで使用するための他の非イオン界面活性剤としては、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリブチレンオキシド縮合物が挙げられる。一般に、ポリエチレンオキシド縮合物が好ましい。これらの化合物としては、直鎖又は分岐鎖構造内に約6〜12個の炭素原子を含有するアルキル基を有するアルキルフェノールとアルキレンオキシドとの縮合生成物が挙げられる。好ましい具体例では、エチレンオキシドは、アルキルフェノール1モル当たり約5〜約25モルのエチレンオキシドに等しい量で存在する。このタイプの市販の非イオン界面活性剤としては、商品名Igepalの下にロディア社によって販売されている界面活性剤が挙げられる。これらのものは、一般には、フェノールアルコキシレート(例えば、アルキルフェノールエトキシレート)と呼ばれている。
【0078】
脂肪族アルコールと約1〜約25モルのエチレンオキシドとの縮合生成物が挙げられる。該脂肪族アルコールのアルキル鎖は、直鎖又は分岐鎖の第一又は第二のいずれかであることができ、そして、一般に、約8〜約22個の炭素原子を含有し得る。特に好ましいものは、約10〜約20個の炭素原子を含有するアルキル基を有するアルコールと、1モルのアルコール当たり約2〜約18モルのエチレンオキシドとの縮合生成物である。このタイプの市販の非イオン界面活性剤の例としては、Tergitol B15−S−9(C11〜C15線状第二アルコールと9モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)、Tergitol 24−L−6NMW(C12〜C14第一アルコールと、狭い分子量分布を有する6モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)(両者ともユニオン・カーバイド社によって販売されている。)、Neodol(商標)45−9(C14〜C15線状アルコールと9モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)、Neodol(商標)23−6.5(C12〜C13線状アルコールと6.5モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)、Neodol(商標)45−7(C14〜C15線状アルコールと7モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)、Neodol(商標)45−4(C14〜C15線状アルコールと4モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)(シェル・ケミカル・カンパニーによって販売されている。)、Rhodasurf IT、DB及びB(ロディア社によって販売されている。)、Plurafac LF403(BASFによって販売されている。)並びにKyro(商標)EOB(C13〜C15アルコールと9モルのエチレンオキシドとの縮合生成物)(プロクター・アンド・ギャンブル社によって販売されている。)が挙げられる。その他の市販の非イオン界面活性剤としては、シェル・ケミカル社によって販売されているDobanol91−8(商標)及びヘキスト社によって販売されているGenapol UD−080(商標)が挙げられる。非イオン界面活性剤のこのカテゴリーは、一般に、「アルキルエトキシレート」と呼ばれる。
【0079】
プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成された疎水性塩基と、エチレンオキシドとの縮合生成物が挙げられる。これらの化合物の疎水性部分は、好ましくは、約1500〜約1800の分子量を有し、且つ、水不溶性を示す。ポリオキシエチレン部分のこの疎水性部分への付加は、該分子の水溶性を全体として増大させる傾向があり、そして該生成物の液体の性質は、ポリオキシエチレン含有量が該縮合生成物の全重量の約50%(これは約40モルまでのエチレンオキシドとの縮合に相当する。)である点まで保持される。このタイプの化合物の例としては、BASF社によって販売されている市販のPluronic(商標)界面活性剤及びロディア社によって販売されているAntaroxのうちのいくらかが挙げられる。
【0080】
プロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応によって得られた生成物と、エチレンオキシドとの縮合生成物が挙げられる。これらの生成物の疎水性部分は、エチレンジアミンと過剰のプロピレンオキシドとの反応生成物からなり、且つ、一般に、約2500〜約3000の分子量を有する。この疎水性部分は、エチレンオキシドと、縮合生成物が約40重量%〜約80重量%のポリオキシエチレンを含有し且つ約5000〜約11000の分子量を有する範囲にまで縮合する。このタイプの非イオン性界面活性剤の例としては、BASFによって販売されている市販のTetronicB化合物のうちいくらかが挙げられる。
【0081】
半極性非イオン界面活性剤は、水溶性アミンオキシドであって約10〜約18個の炭素原子の1個のアルキル部分と約1〜3個の炭素原子を含有するアルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選択される2個の部分とを含有するもの、水溶性ホスフィンオキシドであって約10〜約18個の炭素原子の1個のアルキル部分と1〜3個の炭素原子を含有するアルキル基及びヒドロキシアルキル基よりなる群から選択される2個の部分とを含有するもの、並びに水溶性スルホキシドであって約10〜約18個の炭素原子の1個のアルキル部分と約1〜約3個の炭素原子のアルキル及びヒドロキシアルキル部分よりなる群から選択される部分とを含有するものを含む非イオン界面活性剤の特定のカテゴリーである。半極性非イオン洗剤界面活性剤としては、アミンオキシド界面活性剤が挙げられる。これらのアミンオキシド界面活性剤としては、特に、C10〜C18アルキルジメチルアミンオキシド及びC8〜C12アルコキシエチルジヒドロキシエチルアミンオキシドが挙げられる。
【0082】
約6〜約30個の炭素原子、好ましくは約10〜約16個の炭素原子及び多糖類、例えば、ポリグリコシドを含有する疎水性基と、約1.3〜約10個、好ましくは約1.3〜約3個、最も好ましくは約1.3〜約2.7個の糖単位を含有する親水性基とを有する、1986年1月21日に与えられたLlenadoの米国特許第4565647号に開示されたアルキル多糖類が挙げられる。5又は6個の炭素原子を含有する任意の還元糖、例えばグルコースが使用でき、このグリコシル部分は、ガラクトース及びガラクトシル部分で置換されていてよい(随意として、疎水性基は、2、3、4などの位置で結合するため、グルコシド又はガラクトシドとは対照的にグルコース又はガラクトースを与える。)。該糖間結合は、例えば、追加の糖単位の1位と、先の糖単位の2、3、4及び/又は6位との間にあり得る。
【0083】
随意として(望ましいほどではない)、疎水性部分と多糖部分とを結合させるポリアルキレンオキシド鎖が存在し得る。この好ましいアルキレンオキシドは、エチレンオキシドである。典型的な疎水性基としては、約8〜約18個、好ましくは約10個〜約16個の炭素原子を含有する飽和又は不飽和の分岐又は非分岐アルキル基が挙げられる。好ましくは、このアルキル基は直鎖の飽和アルキル基である。このアルキル基は、約3個までのヒドロキシ基を含有することができ、及び/又はポリアルキレンオキシド鎖は、約10個まで、好ましくは5個以下のアルキレンオキシド部分を含有することができる。好適なアルキル多糖類は、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル及びオクタデシル、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−及びヘキサグルコシド、ガラクトシド、ラクトシド、グルコース、フルクトシド、フルクトース及び/又はガラクトースである。好適な混合物としては、ココナツアルキルジ−、トリ−、テトラ−及びペンタグルコシド並びにタローアルキルテトラ−、ペンタ−及びヘキサグルコシドが挙げられる。
【0084】
好ましいアルキルポリグリコシドは、次式:
2O(Cn2nO)t(グリコシル)x
(式中、R2は、アルキル、アルキルフェニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキルフェニル及びそれらの混合物であってそのアルキル基が約10〜約18個、好ましくは約12個〜約14個の炭素原子を含有するものよりなる群から選択され、nは2又は3、好ましくは2であり、tは0〜約10、好ましくは0であり、そしてxは約1.3〜約10、好ましくは約1.3〜約3、最も好ましくは約1.3〜約2.7である。)
を有する。このグリコシルは、好ましくは、グルコースから誘導される。これらの化合物を製造するためには、まずアルコール又はアルキルポリエトキシアルコールを形成させ、次いで、グルコース又はグルコース源と反応させてグルコシドを形成させる(1位で結合)。次いで、追加のグリコシル単位を、それらの1位と、先のグリコシル単位の2、3、4及び/又は6位、好ましくは主として2位との間で結合させることができる。
【0085】
非イオン界面活性剤としては、次式:
【化3】

(式中、R6は約7〜約21個(好ましくは、約9〜約17個)の炭素原子を含有するアルキル基であり、それぞれのR7は、水素、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヒドロキシアルキル及び−(C24O)xH(ここで、xは約1〜3に変化する。)よりなる群から選択される。)
を有する脂肪酸アミド界面活性剤が挙げられる。好ましいアミドは、C8〜C20アンモニアアミド、モノエタノールアミド、ジエタノールアミド及びイソプロパノールアミドである。
【0086】
陽イオン界面活性剤
また、陽イオン洗浄性界面活性剤も本発明の洗剤組成物に含まれ得る。陽イオン界面活性剤としては、ハロゲン化アルキルジメチルアンモニウムのようなアンモニウム界面活性剤、及び次式:[R2(OR3y][R4(OR3y25+-(ここで、R2はアルキル又はアルキルベンジル基であってそのアルキル鎖中に約8〜約18個の炭素原子を有するものであり、それぞれのR3は、−CH2CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH2CH(CH2OH)−、−CH2CH2CH2−及びそれらの混合物よりなる群から選択され、それぞれのR4は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ヒドロキシアルキル、ベンジル、2個のR4基を結合させることによって形成される環構造、−CH2CHOHCHOHCOR6CHOH−CH2OH(ここで、R6は約1000以下の分子量を有する任意のヘキソース又はヘキソース重合体である。)及びyが0でないときには水素よりなる群から選択され、R5はR4と同一であり、又はR2+R5の炭素原子の総数が約18を超えないアルキル鎖であり、それぞれのyは0〜約10であり、そしてy値の合計は0〜約15であり、Xは任意の相溶性陰イオンである。)
を有する界面活性剤が挙げられる。
【0087】
また、ここで有用な他の陽イオン界面活性剤は、1980年10月14日に与えられたCambreの米国特許第4228044号にも開示されている。該文献は、引用によってここに加えるものとする。
【0088】
他の界面活性剤
両性界面活性剤を、ここの洗剤組成物に取り入れることができる。これらの界面活性剤は、概して、第二若しくは第三アミンの脂肪族誘導体、又は複素環式第二及び第三アミンの脂肪族誘導体であって、その脂肪族基が直鎖又は分岐鎖であることができるものと説明できる。これらの脂肪族置換基の一つは、少なくとも8個の炭素原子、典型的には約8〜約18個の炭素原子を含有し、そして少なくとも一つは、陰イオン性の水可溶化基、例えば、カルボキシ、スルホネート、スルフェートを含有する。両性界面活性剤の例については、1975年12月30日公表の米国特許第3929678号の第19欄18〜35行を参照されたい。好ましい両性界面活性剤としては、所謂狭いピークのアルキルエトキシレート及びC6〜C12アルキルフェノールアルコキシレート(特に、エトキシレート及び混合エトキシ/プロポキシ)を含めてC12〜C18アルキルエトキシレート(「AE」)、C12〜C18ベタイン及びスルホベタイン(「スルタイン」)、C10〜C18アミンオキシド並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0089】
また、両性イオン界面活性剤をその洗剤組成物に取り入れることもできる。これらの界面活性剤は、概して、第二アミン及び第三アミンの誘導体、複素環式第二及び第三アミンの誘導体又は第四アンモニウム、第四ホスホニウム若しくは第三スルホニウム化合物の誘導体と説明できる。両性イオン界面活性剤については、1975年12月30日公表の米国特許第3929678号(Laughlin外)の第19欄38行〜第22欄48行を参照されたい。両性及び両性イオン界面活性剤は、一般に、1種以上の陰イオン及び/又は非イオン界面活性剤と併用される。
【0090】
該組成物の他の随意成分としては、
・増粘重合体
・親水性化重合体、
・土壌放出重合体、
・接着剤又は接着助剤、例えば、シリコーンのような接着用重合体、
・消泡剤、
・発泡剤、
・気泡安定化剤及び/又は気泡向上剤、
・香料又はフレグランス
・有機ビルダー及び無機ビルダーを含め、ビルダー(洗浄助剤)
・緩衝剤、
・塩又は充填剤、
・キレート剤、
・着色剤、
・防腐剤、
・酵素、
・腐食防止剤
・スケール防止剤、
・染料、
・蛍光増白剤、
・汚れ懸濁化剤、
・凍結融解安定剤、
・溶媒、
・乳白剤、
・真珠光沢剤
が挙げられる。
【0091】
いくつかの有利な具体例によれば、組成物は、
・織物ケア用組成物、
・カーペットクリーニング用組成物、例えば、カーペットクリーニング用スプレー、フォーム又は気泡用液体、
・柔軟用及び/又は皺防止用及び/又はアイロン掛け用組成物、
・手洗い又は自動洗浄で使用できる液体状、粉末状又はタブレット状のランドリー製品、
・食器手洗い用組成物、
・液状、粉末状又はタブレット状の自動食器洗浄用組成物、
・窓清掃用組成物又は自動車フロントガラス用組成物を含めてガラス清掃用組成物、
・床清掃用組成物、
・多目的清掃用の硬質表面清掃用組成物、
・台所清掃用組成物、
・浴室清掃用組成物、
・便器清掃用組成物、リムブロック、リムリキッド、
・木材処理用組成物、
・シャワーリンス(毎日のシャワー)、
・生地、カーテン、シート、家具用織物又は自動車用織物のために消毒及び/又は臭気の抑制及び/又は悪臭の予防を与えるためのスプレー、
・洗車用組成物、
・空気清浄剤、
・タイル又はプラスチック床清掃用組成物
である。
【0092】
一具体例によれば、
・表面は織物表面であり、
・組成物は織物ケア用組成物であり、
・組成物は、洗浄工程、好ましくは、
・随意として織物表面上に予備スポット用組成物を適用し、
・洗浄用組成物で洗浄し、
・すすぎ用組成物を随意として含む水ですすぎ、
・随意としてさらにすすぐ
自動工程中に該表面上に適用される(該組成物は、予備スポット用組成物、洗浄用組成物又はすすぎ用組成物である。)。
【0093】
この具体例では、該組成物は、柔軟用組成物及び/又は防皺用組成物及び/又はアイロン掛け用組成物であることができる。
【0094】
この具体例では、該組成物は、液状、粉末状又はタブレット状の洗浄用ランドリー製品組成物であり、随意として、清浄さ及び柔軟性及び/又は防皺性及び/又はアイロン掛けの容易さを与える複合利益のある組成物であることもできる。
【0095】
別の具体例では、
・表面は織物表面、例えば、生地、カーテン、シート、家具用織物又は自動車用織物であり、
・組成物は、噴射によって該表面上に適用される。
【0096】
この具体例では、組成物は、定期的に使用される或いは悪臭を予防し及び/又はそれらを抑えるために使用されるスプレー、例えば、プロクター・アンド・ギャンブル社によって「Frebreze」として販売されているいくつかのスプレー組成物のようなスプレーであることができる。また、この組成物は、アイロン掛けに使用することもできる(「糊付け用」組成物又は「アイロン掛け加湿用」組成物)。
【0097】
別の具体例では、
・表面はカーペットであり、
・組成物は、液体、起泡性液体、スプレー又はスプレー用組成物の形態のカーペットクリーニング用組成物であり、
・該組成物をカーペットに適用し、該カーペットをクリーニングし、次いで随意としてすすぐ。
カーペットのクリーニングは、任意の手段によって、例えば、洗浄及び/又はシャンプー洗浄によって実行できる。
【0098】
別の具体例によれば、
・表面は硬質表面であり、
・組成物は、次の工程:
・随意として該組成物を希釈し、
・随意として希釈された該組成物を適用し、
・随意としてすすぐこと
を含む方法によって該表面上に適用される。
【0099】
該組成物は、任意の適切な手段によって表面上に適用できる。この適用方法及び手段は、処理されるべき表面及び使用者に依存し得る。
【0100】
この具体例での表面は、
・例えば、窓又は自動車のフロントガラスに含まれるガラス、
・例えば、台所、浴室、便器、シャワー室、磁器、食器類、床に含まれるタイル又はセラミック、
・例えば、銀製品、車体部品、窓枠又は床に含まれる金属、
・例えば、食器類、銀製品、自動車、窓、家具又は床に含まれるプラスチック、
・例えば、家具又は床に含まれる、随意としてワックスを塗った木材又は革、
・例えば、床に含まれる、随意としてワックス掛けされたコンクリート
であることができる。
【0101】
食器類の手洗いにおいては、該組成物は、該食器類を希釈組成物に浸漬し、濃縮組成物を直接食器類に塗布し、又は該組成物をスポンジ、布、パッド、スクラブ、ブラシ又は任意の他の手段のような洗浄用の道具上に塗布することによって適用できる。
【0102】
自動食器類洗浄では、組成物は、慣用型の自動食器洗浄機構によって希釈された形態で適用できる。
【0103】
窓、床、家具又は食器類若しくは銀製品とは異なる任意の他の硬質表面においては、組成物は、直接噴射、希釈後噴射、モップ、パッド、雑巾、布、スポンジ、紙などのような媒体を使用した適用を含め、任意の慣用手段によって適用できる。
【0104】
より一般的な観点では、本発明は、
・ホームケア、産業及び施設の清掃であって、
・洗剤組成物(自動洗浄又は手洗い)、柔軟剤処方物又は製品、防皺用処方物又は製品を含め、洗濯及び織物ケア、
・皿洗い(自動又は手動)、
・洗車、窓掃除(建物又は自動車)、便器掃除、シャワーリンス、家庭用及び産業用表面の洗浄又は掃除を含め、硬質表面の清掃、
を含むもの(これらに限定されない)、
・パーソナルケアであって、
・シャンプー、シャワー用ジェル、コンディショニング処方物、アフターシャンプー、個人向けクレンジング、ヘアカラー製品を含め、洗い流しタイプの製品、
・メークアップ、アフターシャンプー、スキンケア製品、例えば、クリーム、乳液、ヘアスタイリング製品(ジェル、ムース、スプレー)、カラーコスメティックを含め、リーブオン製品、
・日焼け防止製品
を含むもの(これに限定されない)、
・ベビーケア、ワイプス、女性ケアであって、
・おしめ表面処理、
・ドライワイプス、ウエットワイプス
を含むもの(これに限定されない)、
・口腔ケア処方物であって、
・練り歯磨き、
・ホワイトニング、
・口のすすぎ
を含むもの(これらに限定されない)、
・産業市場であって、
・食品又は非食品産業の作業場の清掃、
・産業用金属の清掃(パネル、プレート、シート)を含め、産業用表面の清掃、
・潤滑剤
を含むもの(これらに限定されない)、
・油田用処方物、
・ペイント及び被覆材であって、
・ペイント、船舶用ペイント(防汚用)、
・汚れ防止及び土汚れ防止ペイント(装飾用及び外装用)、
・プラスチック接着促進剤(産業用、装飾用及び外装用)、
・金属接着促進剤(装飾用及び産業用ペイント)、
・モルタル及び接着剤:プラスチック接着促進剤、ガラス及びセラミック接着促進剤、PSA、
・封止剤:プラスチック接着促進剤、ガラス及びセラミック接着促進剤、
・織物被覆、布処理又は繊維処理、親水性化、疎水性化、通気性、土汚れ防止、防汚処理、
・工業用プラスチック:表面改質剤(親水性化及び官能化)、
・産業及び水処理:腐食及び細菌に対する保護用被覆剤、
・接着促進剤、
・ゴム強化剤:金属接着促進剤、プラスチック接着促進剤
を含むもの(これらに限定されない)、
・食品技術であって、
・加工処理用器具の処理(食品及び飲料水を含めて飲料)、
・濾過、
・熱交換、
・乳化、
・膜(飲料水製造用)、
・食品製造業の作業場、
・食品取り扱い用器具、
・食品用包装
を含むもの(これらに限定されない)、
・生物医学用材料及び装置、ヘルスケアであって、
・コンタクトレンズ、
・血液透析、
・組織及び生体液と接触した状態で使用されるべき材料、
・カテーテル、
・血液バッグ、
・人工器官、
・心臓血管外科用移植物、
・人工発声器官、
・ステント、
・口腔外科、
・医療用器具
を含むもの(これらに限定されない)、
・作物保護であって、
・注入防止剤、
・種子粉衣
を含むもの(これらに限定されない)
において用途を見出すことができ及び/又はこれらに使用できる。
【0105】
次の例は、請求の範囲を限定することなく本発明をさらに例示するものである。
【実施例】
【0106】
例1
ポリマー・ソース社(カナダモントリオール)から得られるようなポリ(沃化N−メチル−4−ビニルピリジニウム)(PVP)を使用した。0.5gのPVPを10mMのNaNO3水溶液中にほぼ0.5g/Lの濃度にまで溶解させた。別個に、PAA42−PAM97及びPAA42−PAM417という名称のポリアクリル酸−コ−ポリアクリルアミドを有する2つのバッチを、それぞれ0.5gのPAA42−PAM97及び0.5gのPAA42−PAM417を10mMのNaNO3溶液に約0.5g/L及び1.5g/Lの濃度にまで溶解させることによって製造した。
PAA42−PAM97は、アクリル酸から誘導される約42個の単位を有するブロックと、アクリルアミドから誘導される約97個の単位を有するブロックとを含むジブロック共重合体である。PAA42−PAM417は、アクリル酸から誘導される約42個の単位を有するブロックと、アクリルアミドから誘導される約97個の単位を有するブロックとを含むジブロック共重合体である。これらのジブロック共重合体は、例えば、単量体の使用量を調節しつつ、実質的に上記文献に記載された方法によって得られ得る。
PVPにおける陽イオン性基の割合と、ブロック重合体PAA42−PAM97及びPAA42−PAM417における陰イオン性基の割合とを、メーカーによって提供されるような数から算出した。表1を参照されたい。全ての重合体の多分散性は低く、典型的にはほぼ1.05〜1.1であった。他の全ての化学物質(塩、塩基性及び酸性溶液)は分析等級のものであった。
【0107】
【表1】

【0108】
次に、複合体コアセルベートコアミセルの形成を、光散乱セル中で様々な組成のPAA42−PAM97及びPAA42−PAM417バッチとPVP溶液とを混合することにより動的光散乱によって検討した。動的光散乱は、514nmの波長に調整された400mWのアルゴンイオンレーザーを備えたALV光散乱器具で実行した。それぞれの混合物について、自己相関関数を記録し(これは、液体中での該粒子のブラウン運動から生じ、そして粒子の検出の場合には拡散係数をもたらした)、そしてこれをストークス・アインシュタインの方程式によって流体力学的粒径に変換した。
【0109】
光散乱の結果を、図1(白四角)に、PAA42−PAM97とPVPの混合物(上)及びPAA42−PAM417とPVPの混合物(下)について、陰イオン性PAA基対荷電基(PAA及びPVPの両方からの)の総数の割合fの関数としてプロットした。y軸に沿って、光散乱のデータを、測定された強度としてプロットした。ほぼf=0.5の粒子しか検出されなかった。
【0110】
ブロック重合体の両バッチについて、その最大寸法は、fが約半分のとき達成されたが、これは、陰イオン性基と陽イオン性基の量が大体等しいことを意味する。これらの濃度での流体力学径は、PAA42−PAM97及びPAA42−PAM417でそれぞれ20及び25nmであった。
【0111】
例2
例1の滴定実験を、そこで調製したようなPAA42−PAM97、PAA42−PAM417及びPVPの10mMのNaNO3溶液のバッチで繰り返した。親水性表面上でのこれらの溶液からの吸着を、陰イオン性基の割合の関数として反射計によって監視した。表面として、シリコンウエハー(Aurel GmbH,ドイツ)を適用したが、これは、約73nmの酸化物層を有する(偏光解析法によって決定される)。これらの溶液のpHを、NaOH及びHNO3溶液を使用してpH7に調整した。このpHでは、このシリカ表面は負に荷電している。
【0112】
吸着条件及び原反射計データの吸着量への変換は、「吸着研究用の道具としての反射計」,Adv.Colloid Interface Sci.1994,第50巻,p.79−101に記載されている。まず、基準反射率シグナルS0を10mMのNaNO3でセルをフラッシュして決定し、該セル中で監視される表面を送出された溶液にさらした。PAA−PAM及びPVPの特定の混合物を含有する溶液への交換による反射率の変化を、最大の吸着に相当する安定なシグナルSが再度達成されるまで追跡した。この反射率対吸着物添加前の反射率S/S0(これは吸着量と直線的に比例する)を、該溶液における異なる量の陰イオン性基対して決定し、そして図1において光散乱データと共にプロットした(黒四角)。
【0113】
これらの結果は先の例と一致したが、これは、最大の吸着が組成物中のPAA基及びPVP基のほぼ等しい量で達成されたことを示している。最大値は、両方のバッチについて3mg/m2に相当した。純粋成分であるPAA42−PAM97及びPAA42−PAM417は、シリカ表面上にほとんど吸着せず(f=1)、また、純粋PVPの吸着(f=0)も、溶液中の陰イオン性基と陽イオン性基との割合が同等であるときに達成されたレベルからは遠く離れていた。
【0114】
これらの層を再度バックグラウンド溶媒、即ち、10mMのNaNO3溶液に曝したときに、吸着量の僅か数パーセントしか表面から洗い流されなかった。この迅速な吸着段階の後に、再度安定なプラトー値が得られた。これらの層を再度ミセル溶液に曝したときに、その吸着量はその元々のプラトー値に戻った。1MのNaNO3溶液への暴露により、その吸着量は、元々のプラトー値のおよそ80%にまで減少したが、これは、PAA42−PAM97及びPVP(f=0.5)について3mg/m2の最大吸着量に相当する。
【0115】
例3
0.5gのPAA42−PAM97及び0.5gのPVPを2Lの0.10mM NaNO3溶液に溶解させ、f=0.5をもたらした。そのpHを、NaOH及びHNO3溶液を使用して7に調整した。これらの重合体の多分散度は低く、典型的にはおよそ1.05〜1.1であった。これらの化学物質(塩、塩基性及び酸性溶液)は、分析等級のものであった。
【0116】
これらの溶液からの吸着は例2に従ったが、ただし、ここでは厚さ66nmのポリスチレン被覆シリカ表面層を適用した。ポリマー・ソース社(カナダ,モントリオール)から商品名P630−Stで購入できるポリスチレンの分子量は850Kであった。吸着層の強固さを、溶媒及び1MのNaNO3溶液への暴露によって試験する。
【0117】
相対吸着シグナルS/S0の変化を図2に示しているが、ここで、0.1のS/S0単位は4mg/m2と一致する。また、図2は、ミセルもこの疎水性表面上に0.01MのNaNO3で吸着したことを示している。溶媒への暴露によって、これらの層は元々のシグナルの約3分の2にまで浸食された。
【0118】
1MのNaNO3溶液の添加では、層はさらに浸食された。このシグナルの大きな変動は、10mM及び1MのNaNO3の間での屈折率の大きな相違によって生じたものであり、これはこれらの液体が反射計セル中で混合されたときに多数の散乱を生じさせた。しかし、しばらくすると、定常的なシグナルが再度得られ、これは最初の吸着プラトー値のおよそ3分の1であるプラトー値をもたらした。従って、溶媒と1MのNaNO3の両方は、層を完全に浸食させることができなかった。
【0119】
例4
PAA42−PAM97/PVP及びPAA42−PAM417/PVP(f=0.5)の溶液で被覆されていない又は被覆されたシリカ表面上でのリゾチームの吸着を、例2に従う反射計を使用して検討した。さらに、シグマ社から得られる鶏卵の白身由来のリゾチーム[12650−88−3](L6876),ロット51K7028を10mMのNaNO3溶液中に100ppmの濃度にまで溶解させた。pHをNaOH溶液で約7に調整した。
【0120】
図3は、露出したシリカ表面上への直接的なリゾチームの吸着を相対反射率S/S0により示しており、そして図4は、例2に記載されたのと同一の溶液からの吸着の変化を示しているが、ただし、これはPAA42−PAM97/PVP又はPAA42−PAM417/PVPのf=0.5溶液でのシリカ表面の被覆後のみ示している。安定な吸着を達成した後で且つリゾチームを添加する前に、まず、反射計セルをバックグラウンド溶媒(10mMのNaNO3)で安定なバックグラウンドシグナルが得られるまでフラッシュした。
【0121】
図3及び4から、この親水性表面上でのリゾチームの吸着は、PAA−PAM及びPVPの重合体ミセルの層によって妨げられたことが結論付けられ得る。
【0122】
例5
コロナブロック長さの変動を、ポリアクリル酸(PAA)及びポリアクリルアミド(PAM)のジブロック共重合体と、Hoogeveen外,「メタクリル酸ジメチルアミノエチルとメタクリル酸ジヒドロキシプロピルとの新規な水溶性ブロック共重合体」,Macromolecular Chemical Physics,1996,第197巻,2553−2564頁に記載された方法に従って合成されたポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)(PAMA)単独重合体とを混合させることによって検討した。該ジブロック共重合体中の中性ポリアクリルアミドブロックの長さは、調整パラメーターであった。
【0123】
PAA−PAMブロック共重合体の異なるバッチを、30mMのNaNO3中2.7mMのPAA単量体の濃度で使用した。これらの濃度を、メーカーによって与えられた仕様書に基づき決定した(表2参照)。全ての重合体の多分散度は低く、典型的には1.05〜1.1であり、化学物質は分析等級のものであった。
【0124】
これらのジブロック共重合体を例1に従ってPAMAで滴定した。PAMA単量体の割合fPAMAによって特徴付けられる、得られた水性混合物を動的光散乱で検討した。
【0125】
PAMAが0.3〜0.6であったときに、20〜40mmの流体力学径を有する粒子が検出されたが、これは、複合体コアセルベートコアミセルの形成を示している。
【0126】
単量体PAM単位の関数としての測定径は線形従属を示し、417PAM単位のブロックについて最も大きい粒度をもたらした。
【0127】
【表2】

【0128】
例6
例5に従うDLS滴定試験では、本発明に従う重合体ミセルに及ぼす第2重合体の分子量の影響を検討した。さらに、1g/LのPAMA35−PGMA105水溶液を1300及び6900単量体の鎖長(それぞれ、113及び600Kの分子量)を有するPMAの水溶液と混合させた。PAMA35−PGMA105をHoogeveen外「メタクリル酸ジメチルアミノエチル及びメタクリル酸ジヒドロキシプロピルの新規な水溶性ブロック共重合体」,Macromolecular Chemical Physics,1996,197巻,2553〜2564頁に記載された方法に従って合成した。該ジブロック重合体が滴定されたPMA単量体単位の濃度は17mMであった。イオン強度は、実験全体を通して100mMのNaClであった。
【0129】
PMA単量体の割合がおよそ0.4〜0.6のときに、約15及び25nmの流体力学径を有するミセルが、それぞれPMA1300及びPMA6900について検出された。
【0130】
例7
例6に従ったが、ただし、もっぱら、PAMA35−PGMA105の代わりにPAMA12−PGMA118を使用し、そしてPMAの代わりに2100単量体単位(分子量154K)を有するPAAを使用した。該ジブロック共重合体を100mMのNaNO3中5g/Lの濃度にまで溶解させ、次いで33mMのPAMA単量体単位(100mMのNaNO3中)で滴定した。
【0131】
再度、PAA単量体の割合がおよそ0.4〜0.6のときに、約30nm寸法の径を有するミセルが観察された。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】PAA42−PAM97とPVPの混合物(上)及びPAA42−PAM417とPVPの混合物(下)についての光散乱及び反射率の結果を示す図である。
【図2】相対吸着シグナルS/S0の変化を示す図である。
【図3】露出したシリカ表面上への直接的なリゾチームの吸着を相対反射率S/S0により示した図である。
【図4】溶液からの吸着の変化を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の重合体ミセルを含む被覆用組成物の、表面改質又は表面処理のための使用において、該重合体ミセルが親水性の中性コロナ及び複合体コアセルベートコアを有し、該複合体コアセルベートコアが荷電複合体化によって形成された、少なくとも1種の重合体ミセルを含む被覆用組成物の使用。
【請求項2】
表面改質又は表面処理が、ある種の装置の少なくとも一つの表面を蛋白質抵抗性にさせるためのものである、請求項1に記載の被覆用組成物の使用。
【請求項3】
表面改質又は表面処理が、細菌の増殖を防止し、消毒し、臭気を抑え、悪臭を予防するため、又は清掃の容易さ若しくは土壌放出特性を与えるためのものである、請求項1に記載の被覆用組成物の使用。
【請求項4】
重合体ミセルが少なくとも第1重合体及び第2重合体を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の被覆用組成物の使用。
【請求項5】
第1重合体と第2重合体が反対に荷電している、請求項4に記載の被覆用組成物の使用。
【請求項6】
第1重合体が、少なくとも6個の荷電性基を含むイオン性ブロックを有するブロック重合体である、請求項4又は5に記載の被覆用組成物の使用。
【請求項7】
イオン性ブロックが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)及びポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウム)よりなる群から選択される、請求項6に記載の被覆用組成物の使用。
【請求項8】
第1重合体が少なくとも親水性及び中性のブロックを含む、請求項4〜7のいずれかに記載の被覆用組成物の使用。
【請求項9】
親水性及び中性のブロックがポリエチレングリコール若しくはポリアクリルアミド又はそれらの組合せである、請求項8に記載の被覆用組成物の使用。
【請求項10】
第2重合体が単独重合体、ランダム共重合体、ブロック重合体、中性重合体又はそれらの誘導体である、請求項4〜9のいずれかに記載の被覆用組成物の使用。
【請求項11】
単独重合体が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)及びポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウム)よりなる群から選択される、請求項10に記載の被覆用組成物の使用。
【請求項12】
ある種の装置の少なくとも一つの表面を蛋白質抵抗性にするための、蛋白質吸着の低減若しくは防止のための、及び/又は防汚のための、請求項1〜2又は4〜11のいずれかに記載の被覆用組成物の使用。
【請求項13】
生物医学装置の被覆のための請求項1〜2又は4〜12のいずれかに記載の被覆用組成物の使用。
【請求項14】
被覆用組成物がペイント又はシーラント、好ましくは船舶用ペイントである、請求項1〜13のいずれかに記載の被覆用組成物の使用。
【請求項15】
細菌の増殖を防止し、消毒し、臭気を抑え、悪臭を防止するため、又は清掃の容易さ若しくは土壌放出特性を与えるための、請求項1又は3〜11に記載の被覆用組成物の使用において、該被覆用組成物が、ホームケア若しくは織物ケア又は施設清掃若しくは産業清掃用の組成物である、被覆用組成物の使用。
【請求項16】
表面を改質し又は表面を処理するための方法であって、次の工程:
(i)少なくとも第1重合体と第2重合体を、得られる混合物が、0.2〜0.8の範囲の陽イオン性重合体基の総数対荷電基の総数の割合を有するような量で混合し、ここで、該第1重合体と第2重合体は反対に荷電しており、しかも該第1重合体は少なくとも親水性及び中性のブロックを含むブロック重合体であるものとし、及び
(ii)得られた混合物を水性条件下で該表面と接触させること
を含み、しかも該両工程の塩濃度が1M以下である、表面を改質し又は表面を処理するための方法。
【請求項17】
表面が装置の表面であり、しかも方法が装置を被覆するための方法である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第1重合体が少なくとも6個の荷電性基を含むイオン性ブロックを有するブロック重合体である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
イオン性ブロックが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)及びポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウム)よりなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
親水性及び中性のブロックがポリエチレングリコール、ポリメタクリル酸グリセリル若しくはポリアクリルアミド又はそれらの組合せである、請求項16〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
第2重合体が単独重合体、ランダム共重合体、ブロック重合体、中性重合体又はそれらの誘導体である、請求項16〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
単独重合体が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)及びポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウム)よりなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項16〜22のいずれかに記載の方法によって得られ得る改質表面又は処理表面。
【請求項24】
被覆された表面を含む改質表面又は処理表面において、該被覆表面が該表面に固定された少なくとも1種の重合体ミセルを含み、しかも該重合体ミセルが荷電コア及び親水性の中性コロナを有する、被覆された表面を含む改質表面又は処理表面。
【請求項25】
表面が装置の表面である、請求項24に記載の改質表面又は処理表面。
【請求項26】
重合体ミセルが第1重合体及び第2重合体を含む、請求項24又は25に記載の改質表面又は処理表面。
【請求項27】
第1重合体と第2重合体が反対に荷電している、請求項26に記載の改質表面又は処理表面。
【請求項28】
第1重合体が少なくとも6個の荷電性基を含むイオン性ブロックを有するブロック重合体である、請求項26又は27に記載の改質表面又は処理表面。
【請求項29】
イオン性ブロックが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)及びポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウム)よりなる群から選択される、請求項28に記載の改質表面又は処理表面。
【請求項30】
第1重合体が少なくとも親水性及び中性のブロックを含む、請求項26〜29のいずれかに記載の改質表面又は処理表面。
【請求項31】
親水性及び中性のブロックがポリエチレングリコール、ポリメタクリル酸グリセリル若しくはポリアクリルアミド又はそれらの組合せである、請求項30に記載の改質表面又は処理表面。
【請求項32】
第2重合体が単独重合体、ランダム共重合体、ブロック重合体、中性重合体又はそれらの誘導体である、請求項26〜31のいずれかに記載の改質表面又は処理表面。
【請求項33】
単独重合体がポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(メタクリル酸ジメチルアミノエチル)及びポリ(N−アルキル−4−ビニルピリジニウム)よりなる群から選択される、請求項32に記載の改質表面又は処理表面。
【請求項34】
少なくとも1種の重合体ミセルが表面に物理的に結合した請求項23〜33のいずれかに記載の改質表面又は処理表面。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−506826(P2007−506826A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527368(P2006−527368)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010773
【国際公開番号】WO2005/030282
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【氏名又は名称原語表記】RHONE−POULENC CHIMIE
【出願人】(506100347)ワーヘニンゲン ユニヴェルシテイト,アフロテヒノロヒー エン フーディングスウェテンスハッペン (1)
【Fターム(参考)】