説明

表面改質剤

【課題】優れた高い耐久性の低表面張力処理層を形成でき、かつ汚れまたは水分が一旦付着したとしても容易に拭き取ることができる表面改質剤を提供。
【解決手段】一般式(A)および/または一般式(B)で示される有機シリコーン化合物を含んで成る表面改質剤:F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)rSi(X’)3-a(R1)a・・・(A)およびF-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)2-a(R1)aSiO(F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)1-a(R1)aSiO)zF-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)2-a(R1)aSi・・・(B)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、さまざまな基材の表面上に防汚層または低表面張力の層を形成するのに用いられる表面改質剤、ならびに表面改質剤を使用する処理層を形成する方法に関する。さらに、本発明は、表面改質剤が用いられる光学部材(例えば、反射防止フイルム、光学フィルタ、光学レンズ、眼鏡レンズ、ビームスプリッタ、プリズム、鏡など);ディスプレイ(例えば液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、投影TV、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイなど)のスクリーン表面に適用される反射防止光学部材;光学機能部材;そのような光学機能部材がディスプレイスクリーン表面に適用されている表示装置;処理ガラス;処理陶磁器などに関する;
【背景技術】
【0002】
反射防止コーティング、光学フィルタ、光学レンズ、眼鏡レンズ、ビームスプリッタ、プリズム、鏡および他の光学要素および衛生陶磁器は、使用時に、指紋、皮脂、汗、化粧品などで汚れやすい。一旦付着すると、そのような汚れは容易に落ちにくく、特に、反射防止コーティングを有する光学部材に付着している汚れは容易に目立って、問題を生じさせる。更に、自動車および航空機の窓は、耐久的な撥水性を有することを必要とする。
【0003】
汚れおよび撥水性に関するそのような課題を解決するために、さまざまな防汚剤を使用する技術が、これまで提案されてきた。
【0004】
例えば、特開平9−61605号公報は、基材をパーフルオロアルキル基含有化合物で表面処理することによって得られた防汚性反射防止フィルタを提案している。特公平6−29332号公報は、その表面に、ポリフルオロアルキル基含有モノ−およびジシラン化合物およびハロゲン−、アルキル−またはアルコキシシラン化合物を含んでなる反射防止コーティングを有する防汚性の低反射プラスチックを提案している。特開平7−16940号公報は、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレートエステルとアルコキシシラン基含有モノマーとのコポリマーを、二酸化ケイ素を主に含んでなる光学薄膜の上に形成することによって、得られた光学部材を提案している。
【0005】
しかしながら、従来既知の方法によって形成される防汚性コーティングは不十分な防汚性を有しており、特に、指紋、皮脂、汗および化粧品のような汚れを取り除くことは困難である。更に、それらがより長い期間の間使われるとともに、防汚性は非常に減少する。従って、優れた防汚性および優れた耐久性を有する防汚性コーティングの開発が必要とされている。
【特許文献1】特開平9−61605号公報
【特許文献2】特公平6−29332号公報
【特許文献3】特開平7−16940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来技術の課題を解決して、水分または指紋、皮脂、汗、化粧品などの汚れがさまざまな基材、例えば特に反射防止フイルム、光学部材およびガラスの表面に付着することを防止する、優れた高い耐久性の低表面張力処理層を形成でき、かつ汚れまたは水分が一旦付着したとしても容易に拭き取ることができる表面改質剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の別の目的は、優れた低表面張力の層を形成することができる表面改質剤の製造方法を提供することである。
【0008】
更に、本発明の別の目的は、優れた低表面張力の層を容易に形成する方法を提供することである。
【0009】
さらに、本発明の別の目的は、優れた低表面張力の層を備えている光学部材およびさまざまな基材を提供することである。
【0010】
さらに、本発明の別の目的は、優れた低表面張力の層を備えている反射防止光学部材を提供することである。
【0011】
さらに、本発明の別の目的は、反射防止部材を備えている光学機能部材を提供することである。
【0012】
さらに、本発明の別の目的は、光学機能部材を備えている表示スクリーン表面を有する表示装置を提供することである。
【0013】
さらに、本発明の別の目的は、本発明の化合物の使用を微細加工(例えばナノインプリント)の分野に提供することである。微細加工は、近年顕著に技術開発されており、精密な離型を可能にする。
【0014】
さらに、本発明の別の目的は、本発明の化合物の使用を、材料を形成する装置製造および本発明の化合物の大きな撥液特性のため非常に小さい幅を有する線の加工容易性を可能にする処理方法に提供することである。
さらに、本発明の別の目的は、本発明の化合物の使用を石製品(例えばコンクリート、石灰岩、花崗岩または大理石)の処理に提供することである。
【0015】
本発明は、一般式(A)および/または部分加水分解生成物(一般式(B))で示される有機シリコーン化合物を含んで成る防汚剤を提供する。
【0016】
F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)rSi(X’)3-a(R1)a
(A)
【0017】
一般式(A)において、qは、1〜3の整数であり;m、nおよびoは、それぞれ、0〜200の整数であり;pは、1または2であり;Xは、Oまたは二価の有機基であり;rは、2〜20の整数であり;Rは、C1−22の直鎖または分岐の炭化水素基であり;aは、0〜2の整数であり;X’は、加水分解性基である。
【0018】
F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)2-a(R1)aSiO(F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)1-a(R1)aSiO)zF-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)2-a(R1)aSi
(B)
【0019】
一般式(B)において、qは、1〜3の整数であり;m、nおよびoは、それぞれ、0〜200の整数であり;pは、1または2であり;Xは、Oまたは二価の有機基であり;rは、2〜20の整数であり;Rは、C1−22の直鎖または分岐の炭化水素基であり;aは、0〜2の整数であり;X’は、加水分解性基であり;ならびにaが0または1である場合に、zは、0〜10の整数である。]。
【0020】
さらにまた、本発明は、前記表面改質剤の製造方法を提供する。
【0021】
本発明は、該表面改質剤を使用して、低い表面張力を形成する方法を提供する。
【0022】
本発明は、該表面改質剤を使用することによって得られた低い表面張力を有する表面を提供する。
【0023】
本発明は、表面改質剤を含んでいる処理層を備えている光学部材を提供する。
【0024】
本発明は、表面改質剤を含んでいる処理層を備えている反射防止光学部材を提供する。
【0025】
本発明は、反射防止光学部材を含んでいる光学機能部材を提供する。
【0026】
本発明は、光学機能部材を備えている表示装置を提供する。
【0027】
本発明は、表面改質剤を含有している処理層を備えている表面を有する無機基材(例えばガラス)を提供する。
【0028】
本発明は、上記表面を有する無機基材を有する自動車および航空機ガラスならびに衛生製品(衛生陶磁器)を提供する。
【0029】
本発明は、ナノインプリントにおける精密離型への表面改質剤の適用を提供する。
【0030】
本発明は、表面改質剤を使用してミクロ構造を有する装置を容易に製造する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の表面改質剤が特定の有機シリコーン化合物を含むので、表面改質剤を用いて、処理層が基材(例えば、さまざまな光学部材(反射防止フイルム、光学フィルタ、光学レンズ、眼鏡レンズ、ビームスプリッタ、プリズム、鏡など))の上に形成される場合に、汚れ、例えば、指紋、皮脂、汗、化粧品など、または水分の付着が、光学部材の光学的性質を損なうことなく、防止され、そして、汚れおよび水分は、一旦付着したとしても、容易に拭き取ることができ、処理層は高い耐久性を有している。
【0032】
本発明の防汚剤は、一般式(A)および/または一般式(B)で示される有機シリコーン化合物を含有している。
【0033】
F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)rSi(X’)3-a(R1)a
(A)
【0034】
F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)2-a(R1)aSiO(F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)1-a(R1)aSiO)zF-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)2-a(R1)aSi
(B)
【0035】
一般式(A)において、qは、1〜3の整数であり;
m、nおよびoは、それぞれ、0〜200の整数であり;
pは、1または2であり;
Xは、Oまたは二価の有機基であり;
rは、2〜20の整数であり;
は、C1−22の直鎖または分岐の炭化水素基であり;
aは、0〜2の整数であり;ならびに
X’は、加水分解性基である。
【0036】
一般式(B)において、qは、1〜3の整数であり;
m、nおよびoは、それぞれ、0〜200の整数であり;
pは、1または2であり;
Xは、Oまたは二価の有機基であり;
rは、2〜20の整数であり;
は、C1−22の直鎖または分岐の炭化水素基であり;
aは、0〜2の整数であり;
X’は、加水分解性基であり;ならびに
aが0または1である場合に、zは、0〜10の整数である。
好ましくは、一般式(A)および(B)において、Xは、酸素原子または二価の有機基(例えばC1−22の直鎖または分岐のアルキレン基)であり;
は、C1−22アルキル基、より好ましくはC1−12アルキル基であり;ならびに
X’は、塩素、アルコキシ(−OR)基またはO−N=CR(ただし、RはC1−22の直鎖または分岐の炭化水素基(特に、直鎖または分岐のアルキル基である。)である。
【0037】
一般式(A)または(B)における加水分解性基(X’)として、下記の基が例示される:
アルコキシ基またはアルコキシ基置換アルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびメトキシエトキシ基;アシルオキシ基、例えば、アセトキシ、プロピオニルオキシおよびベンゾイルオキシ基;アルケニルオキシ基、例えば、イソプロペニルオキシおよびイソブテニルオキシ基;イミンオキシ基、例えば、ジメチルケトキシム、メチルエチルケトキシム、ジエチルケトキシム、シクロヘキサンオキシム基;置換アミノ基、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノおよびジエチルアミノ基;アミド基、例えば、N−メチルアセトアミドおよびN−エチルアミド基;置換アミノオキシ基、例えば、ジメチルアミノオキシおよびジエチルアミノオキシ基;ハロゲン、例えば、塩素など。加水分解性基の中で、-OCH3, -OC2H5, and -O-N=C(CH3)2 が特に好ましい。加水分解性基は、1種として、または、2種以上の組合せとして、本発明の防汚剤の有機シリコーン化合物に含めることができる。
【0038】
一般式(A)および(B)において、m、nおよびoの合計は、好ましくは5以上、特に好ましくは10以上である。Xは好ましくは酸素であり、rは好ましくは3である。一般式(A)において、aは好ましくは0である。
【0039】
一般式(A)で示される化合物群の中で特に好ましい化合物である、Xが酸素であり、rは3であり、aが0であり、X’が−OCHである一般式(A)で示される化合物は、遷移金属の存在下で、トリクロロシランと下記の一般式(C)で示される化合物とのヒドロシリル化反応、次いでのメタノールによる脱塩化水素によって合成することができる。受酸剤、例えば、ナトリウムメトキシドまたはオルトぎ酸トリメチルの使用は、脱塩化水素を促進するので、好ましい。
【0040】
ヒドロシリル化で使用可能な触媒のVIII族遷移金属は、好ましくは白金またはロジウムである。白金が最も好ましい。クロロ白金酸として、または1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとの白金錯体として白金を供給すること、またはトリス(トリフェニルホスフィノ)RhClとしてロジウムを供給することが好ましい。
【0041】
F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pXCH2CH=CH2
(C)
【0042】
一般式(C)において、qは、1〜3の整数であり;m、nおよびoは、それぞれ、0〜200の整数であり;pは、1または2であり;Xは、酸素または二価の有機基である。
【0043】
具体的には、特に好ましい化合物は、以下の反応スキームに従って製造することができる。
【0044】

【0045】
上記の反応スキームにおいて、qは、1〜3の整数であり;m、nおよびoは、それぞれに0〜200の整数であり;pは、1または2であり;Xは、酸素または二価の有機基である。他の好ましい化合物は、第2工程として脱塩化水素を必要としない追加の利点を伴って、上記反応スキームにおいて HSiCl3をHSi(OMe)3または HSi(OEt)3に置き換えることによって製造できる。
【0046】
ヒドロシリル化反応は、反応を駆動する水素化ケイ素が過剰の状態で適当な時間および温度で反応させることによって進行する。必要により、適当な溶媒を、混合を容易にするために加えることができる。核磁気共鳴または赤外分光学のようなさまざまな器械による方法を、反応進行を監視するために用いることができる。
例えば、好適な条件は、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン触媒との白金錯体(すなわちVIII族遷移金属)として供給される0.01〜10mmolの白金を使用してフッ素化合物1モルにつき1.05〜30モルのトリクロロシランによる1〜10時間および30〜90℃の反応である。過剰の水素化ケイ素は、真空蒸留によって反応生成物から容易に除去できる。
【0047】
トリクロロシランをヒドロシリル化のために使用する場合、第2反応は、第1反応で得られた化合物1モルに対して0.05〜10モル過剰のオルトぎ酸トリメチルとメタノールとの混合物を30〜70℃で1〜10時間反応させることによって進行させることが好ましい。核磁気共鳴または赤外分光学のようなさまざまな器械的方法を、反応進行を監視するために用いることができる。過剰のオルトぎ酸トリメチルおよびメタノールは、真空蒸留によって反応生成物から容易に除去できる。
【0048】
上記一般式(C)で示されるフッ素化合物の中で、特に好ましいものは、qが3であり、mが10〜200であり、nが1であり、oが0であり、pが1であり、Xが酸素である一般式(C)で示されるものである。
【0049】
一般式(A)で示される他の化合物は、上記の反応スキームに従って、同じように合成できる。
【0050】
一般式(B)で示される化合物は、一般式(A)で示される化合物の部分加水分解および縮合反応によって合成できる。一般式(A)および/または(B)によって示される有機シリコーン化合物は、単独で、または、2種以上の組合せとして使用でき、本発明の表面改質剤を形成する。任意の触媒を、必要に応じて、一般式(A)および/または(B)で示される有機シリコーン化合物による表面改質を促進するために使用できる。これらは、単独で、または、2種以上の組合せとして使用でき、本発明の表面改質剤を形成する。好適な触媒化合物の例としては、ジブチル錫オクトエート、ステアリン酸鉄、オクタン酸鉛などのような有機酸の金属塩、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチルのようなチタン酸エステル、アセチルアセトナト・チタンのようなキレート化合物などが挙げられる。一般式(A)および/または(B)で示される有機シリコーン化合物100重量部に対して、好ましくは0〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部の範囲の量で任意の触媒を使用する。
【0051】
一般式(A)および/または(B)で示される有機シリコーン化合物は、表面改質剤の活性成分である。表面改質剤は、一般式(A)および/または(B)で示される有機シリコーン化合物のみから成ってよい。あるいは、表面改質剤は、一般式(A)および/または(B)で示される有機シリコーン化合物、および液体媒体(例えば有機溶媒)を含んでなっていてよい。表面改質剤における有機シリコーン化合物の濃度は、表面改質剤に対して0.01〜80重量%であることが好ましい。
有機溶媒は、有機溶媒が本発明の組成物に含まれる成分(特に、有機シリコーン化合物)と反応しない限りにおいて、有機シリコーン化合物を溶解することが好ましいさまざまな溶媒であってよい。有機溶媒の例としては、含フッ素アルカン、含フッ素ハロアルカン、含フッ素芳香族化合物および含フッ素エーテル(例えばヒドロフルオロエーテル(HFE))のような含フッ素溶媒を含む。
【0052】
表面処理層を形成するために本発明の表面改質剤で処理される基材は、特に限定されない。基材の例としては、無機基材、例えば、ガラス板、無機層を含んで成るガラス板、セラミック;ならびに、有機基材、例えば、透明プラスチック基材、および無機層を含んで成る透明プラスチック基材;などを含んでなる光学部材が挙げられる。
【0053】
無機基材の例は、ガラス板を含む。無機層を含んでなるガラス板を形成するための無機化合物の例としては、金属酸化物(酸化ケイ素(二酸化ケイ素、一酸化ケイ素など)酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、ITO(インジウムスズ酸化物)など;および、ハロゲン化金属(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、フッ化リチウム、フッ化トリウムなど)が挙げられる。
【0054】
そのような無機化合物を含んで成る無機層または無機基材は、単一層または、多層であってよい。無機層は反射防止層として働き、既知の方法、例えば湿潤被覆、PVD(物理蒸着)、CVD(化学蒸着)によって形成できる。湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、および類似の方法が挙げられる。PVD法の例としては、真空蒸着、反応性析出、イオンビーム補助析出、スパッタリング、イオン表面被覆および類似の方法が挙げられる。
【0055】
使用可能な有機基材の中で、透明プラスチック基材の例としては、さまざまな有機ポリマーを含んで成る基材が挙げられる。透明度、屈折率、分散性および類似の光学的性質ならびにさまざまな他の特性(例えば耐衝撃性、耐熱性および耐久性)の観点から、光学部材として使用する基材は、通常、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン66など)、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、アクリル、セルロース(例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロハンなど)またはこれら有機ポリマーのコポリマーを含んで成る。これらの基材は、本発明で処理できる透明プラスチック基材の例として挙げることができる。
【0056】
使用可能な材料の例は、既知の添加剤、例えば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、潤滑油、着色剤、抗酸化剤、難燃剤を、有機ポリマーに添加することによって製造されたものを含む。
【0057】
無機層を有機基材の上に形成することによって製造された基材を、本発明の基材としての使用することが可能である。この場合、無機層は、反射防止層として働いて、上記のような方法によって有機基材の上に形成できる。
【0058】
処理すべき無機基材または有機基材は、特に限定されない。光学部材として使用する透明プラスチック基材は、通常、フイルムまたはシートの形態である。フイルムまたはシートの形態のこの種の基材をも、本発明の基材として使用できる。フイルムまたはシートの形態の基材は、単層体または複数の有機ポリマーの積層体であってよい。厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜5mmである。
【0059】
ハードコート層を、透明プラスチック基材と無機層との間に形成できる。
ハードコート層は、基材の表面の硬度を改良し、更には基材の表面を平坦にしおよび滑らかにし、このようにして、透明プラスチック基材と無機層との間の接着力を高める。従って、鉛筆および類似の負荷によって生じる引っ掻き傷を防止できる。さらに、ハードコート層は透明プラスチック基材の屈曲によって生じる無機層のひび割れを防止することができる。このように、光学部材の機械的強度を改良できる。
【0060】
透明度、適当な硬度および機械強度を有する限り、ハードコート層の材料は特に限定されない。例えば、熱硬化性樹脂、および電離放射線または紫外線照射によって硬化する樹脂を使用可能である。紫外線硬化アクリル樹脂、有機シリコーン樹脂および熱硬化性ポリシロキサン樹脂が特に好ましい。このような樹脂の屈折率は、好ましくは透明プラスチック基材の屈折率に等しいかまたは接近している。
【0061】
そのようなハードコート層を形成するコーティング方法は、特に限定されない。均一なコーティングを達成することができるいずれかの方法を用い得る。ハードコート層が3マイクロメートル以上の厚さを有するときに、充分な強さが得られる。しかしながら、5〜7マイクロメートルの範囲が、透明度、コーティング精度および取扱いの容易さからみて好ましい。
【0062】
さらに、ハードコート層において0.01〜3マイクロメートルの平均粒径を有する無機粒子または有機粒子を混合分散させることによって、「防眩」と一般に呼ばれる光拡散処理を行うことができる。そのような粒子としていずれかの透明な粒子を用いられることができるが、低屈折率の材料が好ましい。酸化ケイ素およびフッ化マグネシウムが、特に安定性、耐熱性などの点で好ましい。光拡散処理は、ハードコート層に凹凸表面を設けることによっても達成することができる。
【0063】
上記のような基材を、本発明の反射防止光学部材の透明基材として使用できる。特に、表面上の反射防止層を有して成るそのような基材は、反射防止層を有して成る透明基材でありえる。本発明の反射防止光学部材は、防汚層をそのような基材の表面の上に形成することによって得ることができる。
【0064】
そのような光学部材に加えて、本発明の表面改質剤は、自動車または航空機用の窓部材に適用でき、高度な機能を提供する。更に表面硬度を改良するために、本発明の表面改質剤とTEOS(テトラエトキシシラン)との組合せを使用するいわゆるゾル−ゲル法によって表面改質を行うことも可能である。
【0065】
ナノインプリント法における離型剤として本発明の表面改質剤を用いると、精密な離型を容易に達成できる。表面を本発明の表面改質剤で処理する場合に、改質剤はほぼ単層の状態に拡散し、その結果、得られる層はわずか数ナノメートルの厚さを有する。そのような厚さにもかかわらず、以下に実施例に示すように、表面を110度以上の水の接触角を有し、5度以下の水の落下角を有する表面を形成することが可能である。
【0066】
本発明の表面改質剤は、優れた撥液性を有しており、リソグラフィーおよびデバイス形成に応用できる。
【0067】
さらに、セラミック材料の表面を処理することによって、メンテナンス容易な衛生陶磁器および外壁を製造することも可能である。
【0068】
処理層を形成する方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法および乾燥被覆法を使用できる。
【0069】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティングおよび類似の方法が挙げられる。
【0070】
乾燥被覆法の例としては、真空蒸着、スパッタリング、CVDおよび類似の方法が挙げられる。真空蒸着法の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、高周波加熱、イオンビームおよび類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ−CVD、光学CVD、熱CVDおよび類似の方法が挙げられる。
【0071】
さらに、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0072】
湿潤被覆法を使用するときに、使用可能な希釈溶媒は特に限定されない。組成物の安定性および揮発性の観点から、次の化合物が好ましい:5〜12の炭素原子を有するパーフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン);
ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);
ポリフルオロ脂肪族炭化水素、パーフルオロブチルメチルエーテルおよび類似のHFEなど。これらの溶媒は、単独で、または、2種以上の混合物として用いることができる。
【0073】
湿潤被覆法は、複雑な形状および/または大面積を有する基材のために使用することが好ましい。
【0074】
一方では、防汚層を形成する時の作業環境を考慮して、希釈溶媒を必要としない乾燥被覆法が好ましい。真空蒸着法が特に好ましい。
【0075】
乾燥または湿潤被覆法によって防汚層を基材の上に形成した後に、必要に応じて、加熱、加湿、光照射、電子線照射などを行うことができる。
【0076】
本発明の防汚剤を用いて形成した防汚層の厚さは、特に限定されない。1〜10ナノメートルの範囲が、光学部材の光学性能、耐引っ掻き性および防汚性の点から好ましい。
【0077】
以下の例は、詳細に本発明を例示することを目的としており、本発明の範囲を限定しない。
【0078】
合成例1:
磁気攪拌子、還流冷却器、温度調節器および上部空間乾燥窒素導入口を備えている1Lの3口フラスコに、411.2 gの(F3CCF2CF2(OCF2CF2CF2)11OCF2CF2CH2OCH2CH=CH2)、 286.13gの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンおよび110.47gのトリクロロシランを加えた。内容物を60℃に加熱して、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと錯体形成したPt金属(0.045g)を3.7時間にわたって添加した。内容物を60℃で30分間維持して、F3CCF2CF2(OCF2CF2CF2)11OCF2CF2CH2OCH2CH2CH2SiCl3を製造した。残余のトリクロロシランおよび溶媒を反応混合物から留去し、156.5gのオルトぎ酸トリメチルおよび1.8gのメタノールを添加した。フラスコの内容物を一晩60℃に維持して、クロロシランのメトキシ化を容易にした。14時間後に、追加のメタノール5.2gを添加し、そして、その温度を3時間維持した。活性炭(2.5g)を加えた。過剰な薬剤を真空下で除去した。生成物を、5ミクロン膜上のセライト濾過助剤の床で濾過した。生成物であるF3CCF2CF2(OCF2CF2CF2)11OCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si(OMe)3 (合成化合物1)を濾液として分離した。赤外および核磁気共鳴分光法による分析は、CH2=CHCH2O および SiCl官能基の完全な消失を示した。
【0079】
合成例2:
磁気攪拌子、還流冷却器、温度調節器および上部空間乾燥窒素導入口を備えている25mLの2口フラスコに、7.52 gの(F3CCF2CF2(OCF2CF2CF2)11OCF2CF2CH2OCH2CH=CH2)、12.02gの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンおよび3.91gのトリメトキシシランを加えた。内容物を100℃に加熱して、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンと錯体形成したPt金属(1.4E-3 g)を16時間にわたってゆっくりと添加した。さらに2時間後、過剰な薬剤を真空下で除去した。生成物であるF3CCF2CF2(OCF2CF2CF2)11OCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si(OMe)3 (合成化合物1)をフラスコ残渣として単離し、活性炭と混合し、濾過した。赤外および核磁気共鳴分光法による分析は、初めに存在したCH2=CHCH2O官能基が全く残っていないことを示した。
【0080】
合成例2〜8
合成例1に記載されているのと同様の手順で、以下の化合物を合成した。
合成化合物 2;
F3CCF2CF2(OCF2CF2CF2)21OCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si(OMe)3
合成化合物 3;
F3CCF2CF2(OCF2CF2CF2)30OCF2CF2CH2OCH2CH2CH2Si(OMe)3
合成化合物 4;
F3CCF2CF2(OCF2CF2CF2)21OCF2CF2CONHCH2CH2CH2Si(OMe)3
合成化合物 5;
F3CCF2CF2O[CF(CF3)CF2O]3CF(CF3)CH2OCH2CH2CH2Si(OMe)3
合成化合物 6;
F3CCF2CF2O[CF(CF3)CF2O]3CF(CF3)CONHCH2CH2CH2Si(OMe)3
合成化合物 7;
F3CCF2CF2O[CF(CF3)CF2O]4CF(CF3)CH2OCH2CH2CH2Si(OMe)3
合成化合物 8;
F3CCF2CF2O[CF(CF3)CF2O]5CF(CF3)CH2OCH2CH2CH2Si(OMe)3
【0081】
比較化合物 a
オプツールDSX (ダイキン工業株式会社製) を入手し、これを「比較化合物 a」とした。
【0082】
シリコンウエハ基材の予備処理:
シリコンウエハ(2cm x 4cm x 0.7mm)を、アセトン中において25℃で10分間にわたって超音波処理し、100℃で1時間にわたって、硫酸/30重量%過酸化水素水=70/30(V/V)で洗浄した。次いで、ウエハをメタノールおよびエタノールによってこの順で洗浄し、室温において減圧下で乾燥した。更に、UV/オゾン化処理を10分間にわたって70Paで行った。それによって、水接触角が0℃であることを確認した。
【0083】
表面改質剤による湿潤被覆:
合成化合物および比較化合物の各々をHFE−7200(3M製)で希釈して0.05重量%、0.10重量%および0.50重量%の濃度にした。前記のように予備処理したシリコンウエハを化合物希釈液中に25℃で30分間にわたって浸漬し、25℃で24時間乾燥した。次いで、ウエハをHFE−7200中において25℃で10分間にわたって超音波洗浄して、減圧下で25℃で1時間にわたって乾燥した。
【0084】
接触角および転落角の測定:
処理した試料について、水接触角および水転落角を、Model CA−X(協和界面科学株式会社製)によって測定した。測定は、20℃および65%のRHの条件で、20マイクロリットルの蒸留水の液滴を用いて行った。
【0085】
指紋の付着性:
処理試料の表面に指を押しつけ、指紋付着を行い、指紋の付着性および認知性を、以下の基準に従って目視により評価した。
【0086】
A: 指紋は、わずかにのみ付着しており、付着していたとしても、容易に認知できない。
B: 指紋の付着は認知できるものである。
【0087】
拭き取りによる指紋の除去容易性:
試料表面に付着している指紋をセルロース不織布(ベンリーゼ(Bemcot) M−3(旭化成株式会社製))で拭き取り、以下の基準に従って指紋の除去性を目視により評価した。
【0088】
A: 指紋を完全に拭き取り得る。
B: 拭き取り後に指紋の痕跡が残る。
C: 指紋を拭き取ることができない。
【0089】
耐磨耗性:
500gfの負荷をかけてセルロース不織布(ベンリーゼ(Bemcot) M−3(旭化成株式会社製))で試料表面を100回擦り、前記の試験に付した。
【0090】
【表1】

【0091】
表1において、括弧内の値は、耐摩耗試験の値である。
【0092】
表1は、本発明の表面改質剤を使用して形成される処理層が比較例の処理層と同様の水接触角を有するが、比較例の処理層よりもずっと少ない水転落角を有しており、水によって濡らすのが困難であり、指紋の拭き取り容易性を実現していることを示す。表1は、これら優れた特性に耐久性があることをも示す。
【0093】
実施例2
実施例1におけるのと同様の手順で、合成化合物2〜8の種々の特性を測定した。
結果を表2〜表5に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
【表4】

【0097】
【表5】

【0098】
表2、表3、表4および表5は、表1にて説明したのと同様の結果を示す。
【0099】
本発明の表面改質剤を使用して基材表面の上に形成される処理層は、処理層が従来既知の処理剤を使用して形成したよりも非常に少ない転落角を有しており、汚れ(例えば、指紋、皮脂、汗および化粧品)に対して、より高い耐性を示す。更に、これら汚れが本発明の表面改質剤の処理した層に付着した場合であっても、汚れは容易に拭き取ることができる。さらにまた、これらの特性は、安定的に示される。
【0100】
さらに、光学機能部材に、本発明の反射防止光学部材または光学要素を結合することによって得られた光学機能部材(例えば、偏光板)は、その表面上に形成された、上述の優れた機能および高い耐久性を有する処理層を有している。したがって、例えば、さまざまなディスプレイ(液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、映像ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイなど)のディスプレイスクリーンの前パネルに結合されるときに、本発明の高い画像認識性が備わった表示装置を提供する。
【0101】
さらにまた、本発明の表面改質剤を使用して基材表面の上に形成された処理層は、極めて薄くて、したがって、非常に精密な加工性および優れた微細機械加工性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(A)および/または一般式(B)で示される有機シリコーン化合物を含んで成る表面改質剤:
F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)rSi(X’)3-a(R1)a
(A)
[式中、qは、1〜3の整数であり;
m、n、およびoは、それぞれ、0〜200の整数であり;
pは、1または2であり;
Xは、Oまたは二価の有機基であり;
rは、2〜20の整数であり;
は、C1−22の直鎖または分岐の炭化水素基であり;
aは0〜2の整数であり;ならびに
X’は、加水分解性基である。]
F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)2-a(R1)aSiO(F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)1-a(R1)aSiO)zF-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pX(CH2)r(X’)2-a(R1)aSi
(B)
[式中、qは、1〜3の整数であり;
m、nおよびoは、それぞれ、0〜200の整数であり;
pは、1または2であり;
Xは、Oまたは二価の有機基であり;
rは、2〜20の整数であり;
は、C1−22の直鎖または分岐の炭化水素基であり;
aは、0〜2の整数であり;
X’は、加水分解性基であり;ならびに
aが0または1である場合に、zは、0〜10の整数である。]。
【請求項2】
一般式(A)および/または一般式(B)において、qは3であり、mは10〜200の整数であり、nは1であり、oは0であり、pは1であり、XはOであり、rは3であり、そして、aは0または1である請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項3】
一般式(A)および/または一般式(B)で示される化合物の比率は限定されない請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項4】
一般式(A)および/または一般式(B)で示される化合物と触媒の比率が限定されない表面改質を促進する触媒が追加されている請求項1〜3のいずれかに記載の表面改質剤。
【請求項5】
一般式(A)および/または一般式(B)で示される化合物と触媒の比率が0.001〜2である表面改質を促進する触媒が追加されている請求項1〜3のいずれかに記載の表面改質剤。
【請求項6】
rは3であり、X’は塩素またはアルコキシル基であり、aは0である一般式(A)で示される有機シリコーン化合物の製造方法であって、
方法は、遷移金属の存在下でのトリクロロシランまたはトリアルコキシシランと、
下記の一般式(C):
F-(CF2)q-(OC3F6)m-(OC2F4)n-(OCF2)o(CH2)pXCH2CH=CH2
(C)
[式中,qは1〜3の整数であり;m、n、およびoは、それぞれ、0〜200の整数であり;pは、1または2であり;そして、Xは、酸素または二価の有機基である。]
で示される化合物との間のヒドロシリル化反応を使用する製造方法。
【請求項7】
X’が−OR(ただし、RはC1−22の直鎖または分岐の炭化水素基である。)である一般式(A)で示される有機シリコーン化合物の製造方法であって、
遷移金属の存在下で、トリクロロシランと一般式(C)で示される化合物との間のヒドロシリル化反応、次いで、中和剤の存在下で、C1−22の直鎖または分岐の脂肪族アルコールによるアルコキシル化反応、これによって塩化水素を除去すること、
または金属アルコキシドによるアルコキシル化反応を使用する製造方法。
【請求項8】
X’が−O-N=CR2(ただし、RはC1−22の直鎖または分岐の炭化水素基である。)である一般式(A)で示される有機シリコーン化合物の製造方法であって、
遷移金属の存在下で、トリクロロシランと一般式(C)で示される化合物との間のヒドロシリル化反応、次いで、H−O-N=CR2(ただし、RはC1−22の直鎖または分岐の炭化水素基である。)で示されるジアルキルケトオキシムとの反応を使用する製造方法。
【請求項9】
遷移金属はプラチナまたはロジウムである請求項6〜8のいずれかに記載の有機シリコーン化合物の製造方法。
【請求項10】
一般式(B)で示される有機シリコーン化合物の製造方法であって、
方法が、請求項6〜9のいずれかに記載の方法に従って得られる一般式(A)で示される化合物の部分加水分解および縮合反応を使用する製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の表面改質剤を用いて得られた処理表面であって、110度以上の水接触角および5度以下の水転落角を有する処理表面。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤を用いて得られた処理表面であって、
処理表面が、単分子膜の形態のパーフルオロポリエーテルを含んで成る処理表面。
【請求項13】
湿潤被覆法に従って請求項1〜5のいずれかに記載の表面処理剤の被膜を基材上に形成する工程を有する請求項11に記載の表面を製造する方法。
【請求項14】
湿潤被覆法に従って請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤の被膜を乾燥被覆法に従って基材上に形成する工程を有する請求項11に記載の表面を製造する方法。
【請求項15】
請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤を多孔性物品に含浸する工程、および
表面改質剤を含浸した多孔性物品を真空下で加熱して表面改質剤を蒸発させることによって基材上に処理層を形成する工程
を有してなる、表面を形成する方法。
【請求項16】
多孔性物品は、SiO2, TiO2, ZrO2, MgO, Al2O3, CaSO4, Cu, Fe, Al,ステンレス鋼およびカーボンからなる群から選択された少なくとも一つの種を含んでなる請求項15に記載の表面形成方法。
【請求項17】
抵抗加熱、電子ビーム加熱、イオンビーム加熱、高周波加熱および光学加熱から選択される少なくとも一つの加熱法によって、多孔性物品に含浸された表面改質剤を蒸発させる請求項15または16に記載の表面形成方法。
【請求項18】
プラズマの存在下で、請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤をノズル吹付けによって被膜を基材の上に形成する工程を有してなる請求項15に記載の表面形成方法。
【請求項19】
プラズマは、アルゴンまたはヘリウムの常圧プラズマである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
透明基材、
透明基材の少なくとも一つの面の上に形成された反射防止フイルム、および
最外の表面の上に形成された処理層
を有して成る反射防止光学部材であって、
処理層が、請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤を含んでなる反射防止光学部材。
【請求項21】
透明基材は、有機基材、例えば、透明プラスチック基材、または無機基材、例えば、ガラス基材である請求項20に記載の反射防止光学部材。
【請求項22】
請求項20または21に記載の反射防止光学部材、および
反射防止光学部材に取り付けた機能的な光学部材を有して成る光学機能部材。
【請求項23】
機能的な部材は、偏光板である請求項22に記載の光学機能部材。
【請求項24】
ディスプレイスクリーン表面の前パネルの前面に接着剤で取り付けたコーティング部材を有してなる表示装置であって、
コーティング部材が請求項22または23に記載の光学機能部材である表示装置。
【請求項25】
ディスプレイは、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、投影ディスプレイ、プラズマディスプレイ、またはELディスプレイである請求項24に記載の表示装置。
【請求項26】
請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤を使用して得られた表面を有するガラス。
【請求項27】
自動車使用または航空機使用のための請求項26に記載のガラス。
【請求項28】
請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤を使用して得られた表面を有する眼鏡レンズまたは光学レンズ。
【請求項29】
請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤を使用して得られた表面を有する衛生製品。
【請求項30】
離型剤として請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤を使用する離型方法。
【請求項31】
ナノインプリントのために請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤を使用する離型方法。
【請求項32】
請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤を使用するミクロ構造の製造方法。
【請求項33】
リソグラフィーまたは装置製造における請求項32に記載のミクロ構造の使用。
【請求項34】
請求項1〜5のいずれかに記載の表面改質剤を使用して得られた表面を有する石製品。

【公開番号】特開2012−37896(P2012−37896A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−203321(P2011−203321)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【分割の表示】特願2007−544670(P2007−544670)の分割
【原出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】