説明

表面改質材、表面改質用スルホンイミド化合物、及び燃料電池

【課題】表面が高酸素透過度及び高プロトン伝導度を有するスルホンイミド化合物基で改質された表面改質材及びこれを触媒層に用いた燃料電池、並びに、表面改質材の製造に用いられる表面改質用スルホンイミド化合物を提供すること。
【解決手段】基材と、1個以上の連結基−A−Y'−(Aは直接結合又は有機基。Y'は基材との結合部位。)を介して前記基材の表面に結合している1種又は2種以上のスルホンイミド化合物基とを備え、前記スルホンイミド化合物基は、分子構造中に、1個以上の連結基−A−Y'−と、2個以上のスルホンイミド基とを備えた表面改質材、及びこれを触媒層に用いた燃料電池。1個以上の反応性末端基−A−Y(Aは直接結合又は有機基。Yは反応性官能基。)と、2個以上のスルホンイミド基とを備えた表面改質用スルホンイミド化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質材、表面改質用スルホンイミド化合物、及び燃料電池に関し、さらに詳しくは、基材表面にスルホンイミド化合物を結合させた表面改質材、このような表面改質材の製造に用いられる表面改質用スルホンイミド化合物、及び、このような表面改質材を触媒層に用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
基材表面に各種の有機化合物を化学的に結合させると、基材に対して、有機化合物が持つ機能や新たな機能を付与することができる。しかも、このような基材表面に有機化合物を化学的に結合させた材料(表面改質材)は、有機化合物の脱落が起きにくいので、付与された機能の劣化が少ないという特徴がある。このような表面改質材及びその製造方法については、従来から種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水にグラファイト粉末及び4−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートを加えて20分間攪拌し、生成物をろ過し、乾燥させることにより得られる炭素製品が開示されている。
同文献には、このような方法により、ジアゾニウム塩を還元するのに十分な電流を外部から供給することなく、クロロフェニル基を含有するグラファイト粉末が得られる点が記載されている。
【0004】
特許文献2には、表面にN,N−ジメチルアミノフェニル基が導入された表面修飾カーボン材料に白金粒子を担持させた白金担持カーボンが開示されている。
同文献には、窒素原子を含む有機基でカーボン材料の表面を修飾すると、白金微粒子がカーボン材料に高度に分散し、かつ強く担持される点が記載されている。
【0005】
特許文献3には、表面にニトロフェニル基、アントラキノニル基、又はN−メチルフタルイミドが導入された表面修飾カーボン材料に白金粒子を担持させた白金担持カーボンが開示されている。
同文献には、SCE基準で−2.5Vより高電位側に還元電位を有する有機基でカーボン材料の表面を修飾すると、白金微粒子がカーボン材料に高度に分散し、かつ強く担持される点が記載されている。
【0006】
非特許文献1には、ベンゼンスルホンイミド(−C64−SO2-SO2CF3)を電気化学的に炭素表面に担持させた材料が開示されている。
【0007】
特許文献4には、表面がシランカップリング剤で被覆された炭素材料とp−スチレンスルホン酸ナトリウムとを反応させることにより、炭素材料の表面にグラフト化によりポリ−p−スチレンスルホン酸ナトリウムを導入した炭素触媒が開示されている。
同文献には、炭素触媒の表面にイオン交換性官能基を導入することにより、炭素触媒の酸素還元活性を向上させることができる点が記載されている。
【0008】
非特許文献2には、炭素表面にベンジルアルコールを導入し、そこを起点としてグラフトポリマ化した炭素材料が開示されている。同文献には、このような炭素材料を燃料電池用触媒層として利用できる点が記載されている。
【0009】
さらに、特許文献5には、
(1)カーボンブラックに重合開始剤である2−ブロモイソ酪酸−p−(ブロモメチル)ベンジルを導入して重合開始剤修飾カーボンブラックを合成し、
(2)重合開始剤修飾カーボンブラックの分散液にメタクリル酸ブチル及び4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジルを加えて重合させる
ことにより得られるポリメタクリル酸ブチル修飾カーボンブラックが開示されている。
同文献には、ハロゲン化メチル芳香族化合物又はその誘導体に重合開始能を有する官能基(重合開始基)を導入すると、求核性官能基を有する種々の基材に重合開始基を導入することができ、重合開始基を起点として基材の表面に高分子鎖を高密度にグラフトさせることができる点が記載されている。
【0010】
固体高分子型燃料電池の触媒層は、一般に、白金等の電極触媒を担持したカーボンと触媒層アイオノマとの複合体からなっている。触媒層アイオノマには、一般に、ナフィオン(登録商標)などのフッ素系電解質ポリマが用いられている。燃料電池の性能を向上させるためには、触媒層アイオノマは、酸素透過度及びプロトン伝導度が高いほど良い。
しかしながら、従来の触媒層アイオノマは、酸素透過度が低いために、Ptの酸素還元効率が低く、高い性能が得られないという問題があった。また、プロトン伝導度を向上させるために、触媒層アイオノマを低当量重量(EW)化すると、触媒層アイオノマが水で流出しやすくなるという問題があった。
【0011】
この問題を解決するために、カーボン担体表面に電解質を化学的に結合させること、すなわち、カーボン担体表面を電解質で改質することも考えられる。カーボン表面に有機化合物を担持させる方法としては、特許文献1〜3、非特許文献1に記載されているように、ジアゾニウム塩を利用したものが一般的である。ジアゾニウム塩を用いてカーボン表面にベンゼン環を導入し、さらにベンゼン環に酸基を導入すれば、カーボン担体表面を電解質で改質できると考えられる。
しかしながら、従来、1つのベンゼン環に対して酸基は1つ、多くても2つまでしか導入できていなかった。また、グラファイト平面に多くのベンゼン環(酸基)を導入すると、抵抗が増加するためにグラファイトの電気伝導性が下がり、性能が低下する。さらに、グラファイト平面はsp2性を保ちたいため、熱や電位走査でベンゼン環が脱離し、その結果として酸基が脱離する。
【0012】
一方、ジアゾニウム塩を用いないグラフト化も報告されている(特許文献4、非特許文献2)。これらは、グラフト化された材料が炭化水素系材料であるため、フッ素系材料に比べて酸性度が低く、低湿での性能が低いと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表平10−510797号公報
【特許文献2】特開2009−226318号公報
【特許文献3】特開2009−231049号公報
【特許文献4】特開2009−295441号公報
【特許文献5】特開2010−024263号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】DesMarteau, Langmir 2006, 22, 10747-10753
【非特許文献2】Yamaguchi, Journal of Power Sources, 2004, 138, 25-30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、表面が高酸素透過度及び高プロトン伝導度を有するスルホンイミド化合物基で改質された表面改質材、このような表面改質材の製造に用いられる表面改質用スルホンイミド化合物、及び、このような表面改質材を触媒層に用いた燃料電池を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、スルホンイミド化合物基を低EW化しても、スルホンイミド化合物基の流出や脱離が起きにくく、しかも基材の機能(例えば、電気伝導度)を低下させるおそれの少ない表面改質材、このような表面改質材の製造に用いられる表面改質用スルホンイミド化合物、及び、このような表面改質材を触媒層に用いた燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明に係る表面改質材は、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(1)前記表面改質材は、
基材と、
1個以上の連結基−A−Y'−(Aは、直接結合、又は有機基。Y'は、前記基材との結合部位。)を介して前記基材の表面に結合している1種又は2種以上のスルホンイミド化合物基と
を備えている。
(2)前記スルホンイミド化合物基は、分子構造中に、
1個以上の前記連結基−A−Y'−と、
2個以上のスルホンイミド基(−SO2NMSO2−。Mは、H、又はアルカリ金属。)とを備えている。
【0017】
本発明に係る表面改質用スルホンイミド化合物は、分子構造中に、
(2)式で表される1個以上の反応性末端基と、
2個以上のスルホンイミド基(−SO2NMSO2−。Mは、H、又はアルカリ金属。)と
を備えている。
−A−Y ・・・(2)
但し、
Aは、直接結合、又は有機基。
Yは、表面改質用の基材と反応可能な反応性官能基。
【0018】
さらに、本発明に係る燃料電池は、本発明に係る表面改質材を触媒層に用いたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0019】
スルホンイミド化合物基は、主鎖を構成するスルホンイミド基がプロトン伝導部として機能する。そのため、分子構造中に含まれるスルホンイミド基の数が多くなるほど、表面改質材のEWを低くすることができる。
また、本発明に係る表面改質材は、基材とスルホンイミド化合物基とが直接結合しているため、EWを極限まで低下させても水による流出のおそれは少ない。しかも、相対的に少量の連結基を介して相対的に多量のスルホンイミド基を基材表面に導入することができるので、低EW化に伴ってスルホンイミド化合物基の脱離や基材の機能低下が起きるおそれも少ない。
さらに、スルホンイミド化合物基は、相対的に少量の連結基を介して基材表面に結合しているので、電解質ポリマを基材表面に塗布する場合に比べて、酸素透過(拡散、溶解)が阻害されにくい。そのため、このような表面改質材を燃料電池の触媒層に適用すれば、発電性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例2で得られた表面改質材、並びに、その原料であるPt/C及びPC3FSIのFT−IRスペクトルである。
【図2】実施例2で得られた表面改質材の固体19F NMRスペクトルである。
【図3】実施例5で得られた表面改質材の表面上のイオンスペクトルである。
【図4】本発明に係る表面改質材を含むカソード用触媒層を用いたMEA(a)及び従来のカソード用触媒層を用いたMEA(b)のRF維持率である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. 表面改質材]
本発明に係る表面改質材は、
基材と、
1個以上の連結基−A−Y'−(Aは、直接結合、又は有機基。Y'は、前記基材との結合部位。)を介して前記基材の表面に結合している1種又は2種以上のスルホンイミド化合物基と
を備えている。
【0022】
[1.1. 基材]
基材は、スルホンイミド化合物基を担持するためのものである。基材は、後述する−A−Y基と反応可能な表面を持つものであれば良い。基材の形状は、特に限定されるものではなく、粒子、箔、繊維、板、棒等、いずれの形状であっても良い。
【0023】
基材としては、具体的には、
(1)カーボンナノチューブ(CNT)、グラファイト、グラフェン、フラーレン、炭素繊維、これらの複合体などのグラファイト構造を持つカーボン、
(2)カーボン表面に、1種又は2種以上の金属元素(例えば、Pt、Pd等の貴金属元素、遷移金属元素など)を含み、直径が1〜数十nmである金属クラスターが担持された金属クラスター担持カーボン、
(3)鉄、銅、ニッケル、亜鉛、金などの金属材料、
(4)ポリシラン、ポリゲルマン、ガリウム砒素などの半導体材料、
(5)ポリアニリンなどの有機材料、
(6)ポリテトラフルオロエチレン、
(7)表面が酸化されたグラファイト構造を持つカーボン、あるいはその表面に金属クラスターが担持された金属クラスター担持酸化カーボン、
(8)表面に−Si(OH)を有する化合物(例えば、シリカ)、
(9)シランカップリング剤で覆われたカーボン、金属、もしくは無機酸化物、
(10)表面にアミンを導入したカーボン(合成法は、例えば特開2008−19120号公報等参照)、
などがある。
【0024】
これらの中でも、基材は、カーボン又は金属クラスター担持カーボンが好ましい。基材としてカーボン又は金属クラスター担持カーボンを用いると、高酸素透過性及び高プロトン伝導性に加えて、電子伝導性や触媒活性に優れた表面改質材が得られる。
【0025】
[1.2. スルホンイミド化合物基]
[1.2.1. 定義]
「スルホンイミド化合物基」とは、分子構造中に、1個以上の連結基−A−Y'−と、2個以上のスルホンイミド基(−SO2NMSO2−。Mは、H、又はアルカリ金属。)とを備えているものをいう。
「連結基−A−Y'−」とは、スルホンイミド化合物基と基材とを連結させるための基をいう。
【0026】
Aは、直接結合、又は有機基を表す。「有機基」とは、分子構造中に炭素同士の飽和結合又は不飽和結合を有する2価以上の基をいう。Aを構成する有機基の種類は特に限定されるものではなく、目的に応じて種々の基を用いることができる。
有機基としては、具体的には、
(1)−C64−、−C64−C64−、−C64−O−C64−、
−C64−SO2−C64−、−C64−SO2−C64−(CH2)n-C64−、
−C64−(CH2)n−、
【化1】

などの2価の芳香族炭化水素基、
(2)−(CH2)n−、−(CH2)n−O−(CH2)m−などの2価の脂肪族炭化水素基、
(3)−(CF2)n−などのパーフルオロアルキレン基、
などがある。
これらの中でも、有機基は、−C64−が好ましい。後述する−A−Y基のYがジアゾニウム塩である場合において、Aが−C64−であるときには、ジアゾニウム塩が安定化するという利点がある。また、−C64−は分子量が小さいため、これを有機基Aとして用いると、表面改質材のEWを低くすることができる。
【0027】
Y'は、基材との結合部位を表す。基材と後述する反応性官能基Yとを反応させる場合、Yが完全に脱離して基材と結合する場合と、Yの一部が残存した状態で基材と結合する場合とがある。すなわち、結合部位Y'は、直接結合、又は反応性官能基Yと基材とが反応した後に残存する基を表す。Y'は、共有結合、又は配位結合のいずれを介して基材と結合していても良い。Y'が反応性官能基Yの残存基である場合、Y'の種類は特に限定されるものではなく、Y及び基材の種類及び組み合わせに応じて種々の基をとることができる。
Y'としては、具体的には、直接結合、アミド結合、エーテル結合、4級アンモニウム塩構造、エステル結合、スルホン結合、−SO2NH−、−Si(O−)3−、−SH…(…は、Sとの配位結合を表す)、−CH(−A)−CH2−などがある。
【0028】
スルホンイミド化合物基に含まれるスルホンイミド基の数は、2個以上であれば良い。一般に、スルホンイミド化合物基に含まれるスルホンイミド基の数が多くなるほど、表面改質材を低EW化することができる。
スルホンイミド化合物基に含まれる連結基−A−Y'−の数は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な数を選択することができる。スルホンイミド化合物基が2個以上の連結基−A−Y'−を持つ場合、スルホンイミド化合物基は、すべての連結基−A−Y'−を介して基材と結合していても良く、あるいは、一部の連結基−A−Y'−を介して基材と結合していても良い。
さらに、基材表面には、1種類のスルホンイミド化合物基が結合していても良く、あるいは、分子構造が異なる2種以上のスルホンイミド化合物基が結合していても良い。
【0029】
[1.2.2. 具体例1]
スルホンイミド化合物基の第1の具体例は、(1.1)式又は(1.2)式で表される構造を備えているものからなる。
−Y'−A−SO2NMSO2−[RfSO2NMSO2]n−A−Y'− ・・・(1.1)
−Y'−A−SO2NMSO2−[RfSO2NMSO2]n−RfSO2R ・・・(1.2)
但し、
nは、1以上50以下の整数。
Aは、直接結合、又は有機基。
Y'は、基材との結合部位。
Rfは、炭素数が1以上10以下であるパーフルオロアルキレン基。Rfは、分岐や環状構造を有していても良い。
Mは、H、又はアルカリ金属。
Rは、OH、NH2、又はNHSO2R'(R'は、分子構造中に炭素同士の飽和結合又は不飽和結合を有する1価の基。)。
【0030】
nは、パーフルオロスルホンイミド基(RfSO2NMSO2)の繰り返し数を表す。少なくとも一端にパーフルオロアルキレン基Rfが結合しているスルホンイミド基は、強酸基として機能する。高い酸性度を得るためには、パールフルオロアルキレン基Rfは、スルホンイミド基の両端に結合しているのが好ましい。従って、nは、1以上が好ましい。nは、さらに好ましくは5以上である。
一般に、nが大きくなるほど、表面改質材が低EW化する。しかしながら、nが大きくなりすぎると、スルホンイミド化合物を高収率で合成するのが困難になる。従って、nは、50以下が好ましい。nは、さらに好ましくは30以下である。
【0031】
Aは、直接結合又は有機基を表す。また、Y'は、基材との結合部位を表す。A及びY'の詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0032】
Rfは、パーフルオロアルキレン基を表す。Rfは、鎖状構造であっても良く、あるいは、分岐や環状構造を有していても良い。
Rfの炭素数は、1以上であれば良い。一般に、Rfの炭素数が多くなるほど、疎水性が増すので、カーボンなどの疎水性の基材への担持が容易化する。Rfの炭素数は、さらに好ましくは2以上である。
一方、Rfの炭素数が多くなりすぎると、プロトン伝導性が低下する。従って、Rfの炭素数は、10以下が好ましい。Rfの炭素数は、さらに好ましくは5以下である。
【0033】
Mは、スルホンイミド基(−SO2-(M+)SO2−)のN-とイオン結合するカチオンを表す。Mは、H又はアルカリ金属のいずれであっても良い。
【0034】
(1.2)式中、Rは、OH、NH2、又はNHSO2R'を表す。R'は、分子構造中に炭素同士の飽和結合又は不飽和結合を有する1価の基を表す。R'としては、具体的には、芳香族基、パーフルオロアルキル基Rf'などがある。
芳香族基としては、具体的には、−C65、−C64−C65
−C64−O−C65、−C64−SO2−C65
−C64−SO2−(CH2)n−(C65)、−(CH2)n−C65
【化2】

などがある。
【0035】
パーフルオロアルキル基Rf'は、鎖状構造であっても良く、あるいは、分岐や環状構造を有していても良い。
Rf'の炭素数は、1以上であれば良い。一般に、Rf'の炭素数が多くなるほど、疎水性が増すので、カーボンなどの疎水性の基材への担持が容易化する。Rf'の炭素数は、さらに好ましくは2以上である。
一方、Rf'の炭素数が多くなりすぎると、プロトン伝導性が低下する。従って、Rf'の炭素数は、10以下が好ましい。Rf'の炭素数は、さらに好ましくは5以下である。
【0036】
[1.2.3. 具体例2]
スルホンイミド化合物基のその他の例としては、例えば、ナフィオン(登録商標)などのフッ素系電解質ポリマの側鎖末端に−[RfSO2NMSO2]n−A−Y'−が結合しているものがある。
【0037】
[1.3. スルホンイミド化合物基の担持量]
基材表面に担持されるスルホンイミド化合物基の量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な担持量を選択することができる。一般に、スルホンイミド化合物基の担持量が多くなるほど、表面改質材を低EW化することができる。
【0038】
[2. 表面改質用スルホンイミド化合物]
[2.1. 定義]
本発明に係る表面改質用スルホンイミド化合物は、分子構造中に、
(2)式で表される1個以上の反応性末端基と、
2個以上のスルホンイミド基(−SO2NMSO2−。Mは、H、又はアルカリ金属。)とを備えている。
−A−Y ・・・(2)
但し、
Aは、直接結合、又は有機基。
Yは、表面改質用の基材と反応可能な反応性官能基。
【0039】
(2)式中、Aは、直接結合、又は有機基を表す。Aの詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
Yは、表面改質用の基材と反応可能な反応性官能基を表す。Yの種類は、基材と反応可能である限りにおいて、特に限定されるものではない。
Yとしては、具体的には、−NH2、−N+≡NX-で表されるジアゾニウム塩(Xは、カウンターアニオン)、エポキシ、メタクリル、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、スルホンアミド、−Si(OR)3、−(CH2)Hal(Hal=Cl、Br、I)、−OH、−SH、−CH=CH2などがある。
【0040】
Yは、直接、基材と反応可能なものでも良く、あるいは、適当な官能基変換後に基材と反応可能となるものでも良い。Yの官能基変換が必要である場合、変換は、基材と接触させる前に行っても良く、あるいは、基材と接触させながら行っても良い。
例えば、Yがジアゾニウム塩である場合、Yは、通常、基材と反応させる際の反応起点となる。
一方、YがNH2である場合、−NH2基がそのまま反応起点となる場合と、ならない場合とがある。例えば、基材表面がC(=O)OH、C(=O)Clなどの酸化物からなる場合、−NH2基と基材とを、直接、反応させることができる。一方、基材表面と−NH2基との反応性が低い場合、末端が−NH2基である化合物と亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩とを反応させると、容易に−NH2基をジアゾニウム塩に変換することができる。
また、YがSHである場合において、基材が金(粒子、バルクなど形状は問わない)であるときには、これらを有機溶媒中で混合すれば、反応させることができる。
【0041】
[2.2. 具体例1]
表面改質用スルホンイミド化合物の第1の具体例は、(2.1)式又は(2.2)式で表される構造を備えたものからなる。
Y−A−SO2NMSO2−[RfSO2NMSO2]n−A−Y ・・・(2.1)
Y−A−SO2NMSO2−[RfSO2NMSO2]n−RfSO2R ・・・(2.2)
但し、
nは、1以上50以下の整数。
Aは、直接結合、又は有機基。
Yは、表面改質用の基材と反応可能な反応性官能基。
Rfは、炭素数が1以上10以下であるパーフルオロアルキレン基。Rfは、分岐や環状構造を有していても良い。
Mは、H、又はアルカリ金属。
Rは、OH、NH2、又はNHSO2R'(R'は、分子構造中に炭素同士の飽和結合又は不飽和結合を有する1価の基。)。
【0042】
(2.1)式及び(2.2)式中、n、A、Y、Rf、M及びRの詳細については、上述した通りであるので、説明を省略する。
【0043】
[2.3. 具体例2]
スルホンイミド化合物のその他の例としては、例えば、ナフィオン(登録商標)などのフッ素系電解質ポリマの側鎖末端に−[RfSO2NMSO2]n−A−Y基が結合しているものがある。
【0044】
[3. 表面改質用スルホンイミド化合物の製造方法]
表面改質用スルホンイミド化合物は、種々の方法により製造することができる。
例えば、(2.1)式又は(2.2)式で表されるスルホンイミド化合物は、以下の手順により合成することができる。
すなわち、まず、(a)式に従い、炭素数がmであるパーフルオロジスルホンアミド(CmA)と炭素数がmであるパーフルオロジスルホニルフロリド(CmF)とを塩基共存下で反応させ、ポリパーフルオロスルホンイミド(PCmFSI)を得る。この場合、CmAの炭素数mと、CmFの炭素数mは、必ずしも同一である必要はない。
2NSO2(CF2)mSO2NH2+FSO2(CF2)mSO2F→
2NSO2−[(CF2)mSO2NHSO2]n−(CF2)mSO2NH2 ・・・(a)
【0045】
次に、末端にある−SO2NH2基の一方又は双方と種々の有機化合物とを反応させることにより、PCmFSIの末端に−A−Y基を導入する。
例えば、−A−Y基が−C64−NH2であるスルホンイミド化合物は、
(1)PCmFSIと4−アセトアミドベンゼンスルホニルクロリドとを反応させ、PCmFSIの末端に−C64−NHC(=O)CH3基を結合させ、
(2)さらに塩酸エタノール混合溶液を加えて加熱し、アセトアミド基をアミド基に変換する、
ことにより製造することができる。
この場合、反応が理想的に進行すると、(2.1)式のスルホンイミド化合物のみが生成するが、反応条件によっては、(2.1)式のスルホンイミド化合物と(2.2)式のスルホンイミド化合物との混合物が得られる場合もある。
【0046】
また、例えば、ナフィオン(登録商標)等のフッ素系電解質ポリマの末端に−C64−NH2基が結合しているスルホンイミド化合物は、
(1)末端がスルホンアミド化されたフッ素系電解質ポリマに、CmFとCmAとを塩基共存下で反応させることにより、末端をスルホンイミド化し、
(2)上述と同様の手順に従い、末端に−C64−NH2基を導入する、
ことにより合成することができる。
【0047】
その他のスルホンイミド化合物も同様であり、上述した方法と類似の方法を用いて製造することができる。
【0048】
[4. 表面改質材の製造方法]
本発明に係る表面改質材は、基材とスルホンイミド化合物とを反応させることにより製造することができる。
例えば、スルホンイミド化合物の−A−Y基が−A−NH2基であり、基材がカーボン又は金属クラスター担持カーボンである表面改質材は、
(1)ジアゾニウム塩の脱N2反応を促進させるため(ジアゾニウム塩のカウンターアニオンX-をHSO4-にするため)に予めスルホンイミド化合物を硫酸処理し、
(2)硫酸で処理されたスルホンイミド化合物を亜硝酸塩で処理することにより、−A−NH2基を−A−N+≡NX-に変換し、
(3)−A−N+≡Nと、基材表面とを反応させる、
ことにより製造することができる。
この場合、亜硝酸塩を加える温度は、0℃〜60℃が好ましく、さらに好ましくは0℃〜室温である。また、基材表面に均質に担持させるためには、攪拌しながら徐々に温度を上げるのが好ましい。
【0049】
また、例えば、スルホンイミド化合物の−A−Y基が−A−NH2基であり、基材が鉄などの金属材料である表面改質材は、
(1)上記の(1)(2)と同様の手順に従い、−A−NH2基を−AN+≡NX-に変換し、
(2)スルホンイミド化合物の硫酸溶液に基材をしばらく浸漬した後、アセトンで超音波処理して不要な成分を取り除く、
ことにより製造することができる。
【0050】
また、例えば、スルホンイミド化合物の−A−Y基が−A−NH2基であり、基材がポリシラン又はポリゲルマンである表面改質材は、
(1)スルホンイミド化合物とテトラフルオロホウ酸とを反応させ、反応物を乾燥させ、
(2)不活性雰囲気のグローブボックス中で表面処理したポリシラン等と、(1)で得られた乾燥物とを亜硝酸イソアミル存在下でアセトニトリル中で反応させる、
ことにより製造することができる。
【0051】
また、例えば、スルホンイミド化合物の−A−Y基が−A−NH2基であり、基材が表面酸化カーボンである表面改質材は、塩基存在下でスルホンイミド化合物と基材表面とを反応させることにより製造することができる。
また、例えば、スルホンイミド化合物の−A−Y基が−A−SH基であり、基材がAuである表面改質材は、スルホンイミド化合物とAuとを溶液中で混合することにより製造することができる。
【0052】
また、例えば、スルホンイミド化合物の−A−Y基が−A−Si(OR)3基であり、基材がシリカである表面改質材は、スルホンイミド化合物と基材とを溶液中で混合し、加熱することにより製造することができる。
また、例えば、スルホンイミド化合物の−A−Y基が−A−OH基であり、基材がエポキシ化シランカップリング剤で表面処理したカーボンである表面改質材は、スルホンイミド化合物と基材とを溶液中で混合し、加熱することにより製造することができる。
【0053】
その他の表面改質材も同様であり、上述した方法と類似の方法を用いて製造することができる。
【0054】
[4. 燃料電池]
本発明に係る燃料電池は、本発明に係る表面改質材を触媒層に用いたことを特徴とする。触媒層は、一般に、触媒又は担体に担持された触媒と、触媒層アイオノマとの複合体からなる。本発明に係る表面改質材を触媒層に用いる場合、触媒層は、本発明に係る表面改質材を含み、かつ触媒層アイオノマを含まないものでも良く、あるいは、双方を含むものでも良い。
本発明に係る表面改質材を触媒層に用いる場合、基材は、カーボン又は金属クラスター担持カーボンが好ましい。基材が金属クラスター担持カーボンである場合、スルホンイミド化合物基は、金属クラスター粒子をほとんど覆わないと考えられる。そのため、本発明に係る表面改質材を用いた触媒層は、電解質ポリマを混合した従来の触媒層に比べて、酸素透過度が高い。すなわち、本発明に係る表面改質材は、アノード側触媒層及びカソード側触媒層のいずれにも用いることができるが、特にカソード側触媒層として好適である。
【0055】
[5. 表面改質材、表面改質用スルホンイミド化合物及び燃料電池の作用]
スルホンイミド化合物基は、主鎖を構成するスルホンイミド基がプロトン伝導部として機能する。そのため、分子構造中に含まれるスルホンイミド基の数が多くなるほど、表面改質材のEWを低くすることができる。
また、本発明に係る表面改質材は、基材とスルホンイミド化合物基とが直接結合しているため、EWを極限まで低下させても水による流出のおそれは少ない。しかも、相対的に少量の連結基を介して相対的に多量のスルホンイミド基を基材表面に導入することができるので、低EW化に伴ってスルホンイミド化合物基の脱離や基材の機能低下が起きるおそれも少ない。
さらに、スルホンイミド化合物基は、相対的に少量の連結基を介して基材表面に結合しているので、電解質ポリマを基材表面に塗布する場合に比べて、酸素透過(拡散、溶解)が阻害されにくい。そのため、このような表面改質材を燃料電池の触媒層に適用すれば、発電性能が向上する。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
両末端がスルホンアミドであるポリパーフルオロプロピルスルホンイミド(PC3FSI)と、4−アセトアミドベンゼンスルホニルクロリドとをアセトニトリル中で混合し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を加えて80℃で2日間攪拌した。反応終了後、塩酸エタノール混合溶液を加えて、80℃で2時間加熱した。その後、NaOH水溶液を加えてアルカリ性とし、有機層をアセトニトリルで抽出した。得られた有機層を乾燥させることで、両末端がアニリンで保護されたスルホンイミド化合物を得た。次の(b)式に、その合成反応式を示す。
【0057】
【化3】

【0058】
(実施例2)
[1. 表面改質材の作製]
実施例1で得られたスルホンイミド化合物とPt担持カーボン材料(炭素種はケッチェン)とを水−アルコール混合溶媒に分散させた後、硫酸を加えて攪拌した。その後、亜硝酸ナトリウムを加えて攪拌し、室温から徐々に60℃まで加熱して1時間保持した。その後、室温まで放冷し、加圧ろ過を繰り返して固体部分を洗浄した。
[2. 評価方法及び結果]
固体部分を乾燥後、FT−IR、及び固体19F NMRを測定した。図1に、実施例2で得られた表面改質材のFT−IRスペクトルを示す。図1中、「PC3FSI」は、両末端をアニリンで保護する前のスルホンイミド化合物を表す。また、図2に、実施例2で得られた表面改質材の固体19F NMRスペクトルを示す。
【0059】
図1に示すように、PC3FSIには、1000〜1400cm-1の範囲に明瞭な3本のピークが認められるが、Pt/Cにはこのようなピークが存在しない。一方、実施例2で得られた表面改質材には、PC3FSIと同様の位置に弱いピークが認められた。さらに、図2に示すように、実施例2で得られた表面改質材には、−CF2-CF2-CF2−の両端のCに対応するピーク(●印)と、中央のCに対応するピーク(○印)が認められた。図1及び図2より、カーボン表面にスルホンイミド化合物基が担持された表面改質材が得られことが分かる。
【0060】
(実施例3)
実施例2で得られた表面改質材を水とエタノールの混合溶媒に分散させて触媒インクとした。この触媒インクをスプレーで電解質膜表面に塗布した。さらに、これを130℃でホットプレスした。さらに電解質膜の両面を拡散層で挟み、膜電極接合体(MEA)を得た。得られたMEAを用いて燃料電池発電試験を行った。その結果、発電することを確認した。
【0061】
(実施例4)
実施例1で得られたスルホンイミド化合物を水とアルコールの混合溶媒に溶解させ、硫酸を加えた後、亜硝酸ナトリウムを0℃で加えた。この溶液を基板上に垂直配向させたCNTに塗布し、加熱した。
CNT表面上にスルホンイミド化合物が結合してグラフト化されたこと、及び、プロトンが伝導することを確認した。
【0062】
(実施例5)
[1. 表面改質材の作製]
実施例1で得られたスルホンイミド化合物をエタノール10mLに溶解し、硫酸(0.45g)を加え、析出した沈殿をろ過した。このろ液に、室温でテトラフルオロホウ酸ニトロシル(NOBF4)(0.12g)を加えて一晩攪拌した。
溶媒を留去し、真空乾燥させることで、ジアゾニウム化合物を得た。これにPt担持炭素(炭素種はバルカン)を混合し、水・エタノール(5mL:5mL)を加えて攪拌した。その後、室温から徐々に60℃に加熱して1時間保持した。その後、室温まで放冷し、加圧ろ過を繰り返して固体部分(表面改質材)を洗浄した。
【0063】
[2. 評価方法及び結果]
FT−IR、固体19F NMRを測定し、実施例2と同様にPt担持炭素表面にアイオノマが担持されていることを確認した。さらに、TOF−SIMSで改質材の表面上のイオンスペクトルを観測した(図3)。表面改質後には、SO2-イオンが炭素表面に一様に分布していることがわかる。
【0064】
(実施例6)
スルホンイミドの繰り返し(n)を変えたものを用いて、実施例5と同じ反応を行った。得られた表面改質材に含まれるスルホンイミド量を固体19F NMRスペクトルで定量した。その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
(実施例7)
[1. MEAの作製]
以下の手順に従い、膜・電極接合体(MEA)を作製した。
まず、実施例5で得られた表面改質材をエタノールと水の混合溶媒に分散させた。この溶液をポリテトラフルオロエチレンシート上に塗布し、乾燥させたものをカソード用転写触媒層とした。アノードには表面改質材を使用せず、従来の方法で作製した転写触媒層を用いた。
電解質膜(NR211、デュポン社製)の一方の面にカソード用転写触媒層を、他方の面にアノード用転写触媒層を、それぞれホットプレス接合し、評価用MEA(a)とした。電極面積は、1cm2とした。
【0067】
比較用MEAとして、Pt担持炭素(バルカン)とナフィオン(登録商標)分散液(DE2020、デュポン)とを用いたカソード用触媒層を接合したMEA(b)を作製した。
【0068】
[2. MEAの耐久評価]
はじめに、セル温度80℃で、以下に述べるコンディショニングを行った。
まず、アノードに水素(279sccm)、カソードに窒素(680sccm)をそれぞれ相対湿度(RH)100%に加湿して導入した。アノードに対するカソードの電位を0.05Vと1.20Vの間で、掃引速度100mV/sで30サイクル掃引した。その後、カソードに窒素の代わりに空気(680sccm)をRH100%に加湿して導入し、2.0A/cm2で30分間運転した。
【0069】
以下の手順を実施して、耐久評価におけるRF値(=ECSA/電極のみかけの面積)を求めた。
アノードに水素(279sccm)、カソードに窒素(680sccm)をそれぞれ相対湿度(RH)100%に加湿して導入し、0.1Vと1.0Vとの間を掃引速度50mV/sで500サイクル掃引した。30サイクル目の水素脱離の電気量を用い、210μC/cm2Pt、電極面積1cm2を使って、RF値(「耐久前」とした)を求めた。
次に、ガスは同じまま、0.1Vと1.0Vとの間を掃引速度50mV/sで500サイクル掃引してRF値(「耐久中」とした)を求めた。
最後にガスは同じまま、0.1Vと1.2Vとの間を掃引速度50mV/sで500サイクル掃引し、RF値(「耐久後」とした)を求めた。
【0070】
耐久前、耐久中、耐久後のRF値をMEA(a)とMEA(b)とで比較し、耐久前に対するRF値の維持率をそれぞれ算出したところ、際だった違いが見られなかった(図4)。これから、表面改質材の耐久性は、ナフィオン(登録商標)を塗布したMEAとほぼ同程度だと判断した。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る表面改質材は、
(1)固体高分子型燃料電池、水電解装置、ハロゲン化水素酸電解装置、食塩電解装置、酸素及び/又は水素濃縮器、湿度センサ、ガスセンサ等の各種電気化学デバイスに用いられるMEAの触媒層、
(2)陽イオン交換樹脂、
などに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成を備えた表面改質材。
(1)前記表面改質材は、
基材と、
1個以上の連結基−A−Y'−(Aは、直接結合、又は有機基。Y'は、前記基材との結合部位。)を介して前記基材の表面に結合している1種又は2種以上のスルホンイミド化合物基と
を備えている。
(2)前記スルホンイミド化合物基は、分子構造中に、
1個以上の前記連結基−A−Y'−と、
2個以上のスルホンイミド基(−SO2NMSO2−。Mは、H、又はアルカリ金属。)とを備えている。
【請求項2】
前記スルホンイミド化合物基は、(1.1)式又は(1.2)式で表される構造を備えている請求項1に記載の表面改質材。
−Y'−A−SO2NMSO2−[RfSO2NMSO2]n−A−Y'− ・・・(1.1)
−Y'−A−SO2NMSO2−[RfSO2NMSO2]n−RfSO2R ・・・(1.2)
但し、
nは、1以上50以下の整数。
Aは、直接結合、又は有機基。
Y'は、前記基材との結合部位。
Rfは、炭素数が1以上10以下であるパーフルオロアルキレン基。Rfは、分岐や環状構造を有していても良い。
Mは、H、又はアルカリ金属。
Rは、OH、NH2、又はNHSO2R'(R'は、分子構造中に炭素同士の飽和結合又は不飽和結合を有する1価の基。)。
【請求項3】
前記Y'は、直接結合、アミド結合、エーテル結合、4級アンモニウム塩構造、エステル結合、スルホン結合、−SO2NH−、−Si(O−)3−、−SH…(…は、Sとの配位結合を表す)、又は、−CH(−A)−CH2−である請求項1又は2に記載の表面改質材。
【請求項4】
前記基材は、カーボン、又は金属クラスター担持カーボンである請求項1から3までのいずれかに記載の表面改質材。
【請求項5】
分子構造中に、
(2)式で表される1個以上の反応性末端基と、
2個以上のスルホンイミド基(−SO2NMSO2−。Mは、H、又はアルカリ金属。)と
を備えた表面改質用スルホンイミド化合物。
−A−Y ・・・(2)
但し、
Aは、直接結合、又は有機基。
Yは、表面改質用の基材と反応可能な反応性官能基。
【請求項6】
(2.1)式又は(2.2)式で表される構造を備えた請求項5に記載の表面改質用スルホンイミド化合物。
Y−A−SO2NMSO2−[RfSO2NMSO2]n−A−Y ・・・(2.1)
Y−A−SO2NMSO2−[RfSO2NMSO2]n−RfSO2R ・・・(2.2)
但し、
nは、1以上50以下の整数。
Aは、直接結合、又は有機基。
Yは、表面改質用の基材と反応可能な反応性官能基。
Rfは、炭素数が1以上10以下であるパーフルオロアルキレン基。Rfは、分岐や環状構造を有していても良い。
Mは、H、又はアルカリ金属。
Rは、OH、NH2、又はNHSO2R'(R'は、分子構造中に炭素同士の飽和結合又は不飽和結合を有する1価の基。)。
【請求項7】
前記Yは、−NH2、−N+≡NX-で表されるジアゾニウム塩(Xは、カウンターアニオン)、エポキシ、メタクリル、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、スルホンアミド、−Si(OR)3、−(CH2)Hal(Hal=Cl、Br、I)、−OH、−SH、又は−CH=CH2である請求項5又は6に記載の表面改質用スルホンイミド化合物。
【請求項8】
請求項1から4までのいずれかに記載の表面改質材を触媒層に用いた燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−214020(P2012−214020A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−42527(P2012−42527)
【出願日】平成24年2月28日(2012.2.28)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】