説明

表面改質無機酸化物粉末及び電子写真用トナー組成物

【課題】シリコーンオイルで表面処理された表面改質無機酸化物粉末であって、シリコーンオイルの固定化率が高く、高疎水性の表面改質無機酸化物粉末を提供する。
【解決手段】反応性変性シリコーンオイルにより表面処理された無機酸化物粉末であって、カーボン固定化率が90%以上で、疎水率が95%以上である表面改質無機酸化物粉末。無機酸化物粉末としては、フュームドシリカが好ましい。無機酸化物粉末に反応性変性シリコーンオイルを添加して温度150〜280℃で1次処理した後、280℃を超える温度で2次処理して得られる。反応性変性シリコーンオイルを用い、特定の温度条件の2段階処理による表面処理を行うことにより、固定化率が高く、高疎水性の表面改質無機酸化物粉末を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体塗料や電子写真用トナー、化粧料等の粉体系材料において、流動性改善、固結防止、帯電調整等の目的で添加される表面改質無機酸化物粉末と、この表面改質無機酸化物粉末を用いた電子写真用トナー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
微細なシリカ、チタニア、アルミナなどの無機酸化物粉末の表面を有機物によって処理して帯電性や疎水性を改善したいわゆる表面改質無機酸化物粉末は、複写機、レーザープリンタ、普通紙ファクシミリ等を含む電子写真において、トナー流動性改善剤、或いは帯電性調整剤として広く用いられている。
【0003】
従来、無機酸化物粉末の表面処理剤としては、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル等の有機珪素化合物が用いられており、これらの有機珪素化合物による表面処理で、例えば、シリカ微粒子表面のシラノール基を有機基で置換して疎水化処理がなされている。
【0004】
従来、これらの有機珪素化合物のうち、シリコーンオイルが、十分な疎水性を示し、かつ表面エネルギーが低いことなどから、好ましい疎水化処理剤として知られている。
【0005】
シリコーンオイルで無機酸化物粉末の表面処理を行った場合、十分な疎水性の改善効果を得ると共に、表面処理に用いたシリコーンオイルが無機酸化物粉末に対して十分に固定化されている必要がある。即ち、表面処理に用いたシリコーンオイルが無機酸化物粉末表面に固定化されずにその一部が遊離状態であると、表面改質無機酸化物粉末の経時安定性に劣るものとなり、また、遊離のシリコーンオイルが表面改質無機酸化物粉末の使用形態において離脱して、例えば、トナーに外添した時にトナーへの流動性付与効果が低下する、電子写真における転写不良、機械の汚染等の欠陥の要因となる。
【0006】
従来、シリコーンオイルの固定化率を上げるために、表面処理に用いるシリコーンオイル量を低減する方法や表面処理温度を上げる方法も提案されているが(例えば、特許文献1)、シリコーンオイル量を低減すると、得られる表面改質無機酸化物粉末の疎水性を十分に高めることができないという問題がある。また、処理温度が高過ぎる場合も、固定化率は上がる反面、疎水性が低下する。これは、処理温度を高めた結果、表面処理中にシリコーンオイルが分解して表面が劣化し、表面処理剤としての機能が損なわれることや、低分子分解物の蒸発により表面処理に関与するシリコーンオイルの歩留りが低下し、このため無機酸化物粉末表面が十分にシリコーンオイルで被覆されないことによる。
【0007】
また、表面処理に用いるシリコーンオイルとして、揮発性の高い低分子量のシリコーンオイルを用いて固定化率を上げることができる。しかし、単に低分子量のシリコーンオイルを用いた場合には、シリコーンオイルが無機酸化物粉末の表面と十分に反応する前に蒸発してしまい、このため、無機酸化物粉末表面が十分にシリコーンオイルで被覆されず、その結果、高固定化率だけは得ることができても高疎水性を得ることができない。
【特許文献1】特開2002−174926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、シリコーンオイルで表面処理された表面改質無機酸化物粉末であって、シリコーンオイルの固定化率が高く、高疎水性の表面改質無機酸化物粉末を提供することを目的とする。
【0009】
本発明はまた、このような高疎水性表面改質無機酸化物粉末を用いた電子写真用トナー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、シリコーンオイルとして反応性変性シリコーンオイルを用い、特定の温度条件の2段階処理による表面処理を行うことにより、固定化率が高く、高疎水性の表面改質無機酸化物粉末を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0012】
[1] 反応性変性シリコーンオイルにより表面処理された無機酸化物粉末であって、カーボン固定化率が90%以上で、疎水率が95%以上であることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【0013】
[2] [1]において、前記無機酸化物粉末が、珪素、チタン、アルミニウム、アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素よりなる群から選ばれる1種を含む酸化物、或いは2種以上を含む複合酸化物よりなることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【0014】
[3] [2]において、前記無機酸化物粉末がシリカ粉末であることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【0015】
[4] [3]において、前記シリカ粉末がフュームドシリカであることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【0016】
[5] [1]ないし[4]のいずれかにおいて、無機酸化物粉末に反応性変性シリコーンオイルを添加して温度150〜280℃で1次処理した後、280℃を超える温度で2次処理して得られることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【0017】
[6] [5]において、1次処理の温度が200〜280℃で、処理時間が5〜120分であり、2次処理の温度が280℃を超え330℃以下で、処理時間が5〜180分であることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【0018】
[7] [1]ないし[6]のいずれかにおいて、反応性変性シリコーンオイルが、ジメチルハイドロジェンポリシリコーン及び/又は両末端シラノールジメチルシリコーンオイルであることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【0019】
[8] [1]ないし[7]のいずれかにおいて、表面処理に用いられる反応性変性シリコーンオイルの量が無機酸化物粉末100重量部に対して1〜40重量部であることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【0020】
[9] [1]ないし[8]のいずれかに記載の表面改質無機酸化物粉末を外添したことを特徴とする電子写真用トナー組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明の表面改質無機酸化物粉末は、カーボン固定化率90%以上、疎水率95%以上という、表面処理剤であるシリコーンオイルの固定化率が高く、また、著しく疎水性に優れたものであるため、粉体塗料や電子写真用トナー、化粧料等の粉体材料系において、流動性改善、固結防止、帯電調整等の目的で添加される表面改質無機酸化物粉末として工業的に極めて有用である。
【0022】
本発明において、無機酸化物粉末としては、珪素、チタン、アルミニウム、アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素よりなる群から選ばれる1種を含む酸化物、或いは2種以上を含む複合酸化物よりなるものが挙げられ(請求項2)、シリカ粉末が好ましく(請求項3)、特に、フュームドシリカが好ましい(請求項4)。
【0023】
このような本発明の表面改質無機酸化物粉末は、無機酸化物粉末に反応性変性シリコーンオイルを添加して温度150〜280℃で1次処理した後、280℃を超える温度で2次処理する2段階処理により得ることができ(請求項5)、この2段階処理において、1次処理の温度が200〜280℃で、処理時間が5〜120分であり、2次処理の温度が280℃を超え330℃以下で、処理時間が5〜180分であることが好ましい(請求項6)。
【0024】
また、本発明において、無機酸化物粉末の表面処理に用いる反応性変性シリコーンオイルとしては、ジメチルハイドロジェンポリシリコーン及び/又は両末端シラノールジメチルシリコーンオイルが好ましく(請求項7)、表面処理に用いられる反応性変性シリコーンオイルの量は無機酸化物粉末100重量部に対して1〜40重量部であることが好ましい(請求項8)。
【0025】
本発明の電子写真用トナー組成物は、このような本発明の高固定率、高疎水性の表面改質無機酸化物粉末を外添したものであり、流動性、帯電防止性に優れ、かぶりやクリーニング不良や感光体へのトナー等の付着が発生しにくく、画像欠陥を生じにくい、高特性電子写真用トナー組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の表面改質無機酸化物粉末及び電子写真用トナー組成物の実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
[表面改質無機酸化物粉末]
本発明の表面改質無機酸化物粉末は、反応性変性シリコーンオイルにより表面処理された無機酸化物粉末であって、カーボン固定化率が90%以上で、疎水率が95%以上であることを特徴とするものである。
【0028】
<カーボン固定化率>
カーボン固定化率は、表面処理剤であるシリコーンオイル(本発明では反応性変性シリコーンオイル)の無機酸化物粉末への固定化率を示す指標となるものであり、具体的には、後掲の実施例の項に記載した方法で測定される。
本発明の表面改質無機酸化物粉末のカーボン固定化率は90%以上であるが、このカーボン固定化率が90%未満では、固定化率の高い表面改質無機酸化物粉末を提供するという本発明の目的を達成し得ない。カーボン固定化率は高い程好ましく、特に94%以上、とりわけ97%以上であることが好ましい。なお、カーボン固定化率の上限は100%である。
【0029】
<疎水率>
疎水率は、表面改質無機酸化物粉末の疎水性の程度を示す指標であり、具体的には、後掲の実施例の項に記載した方法で測定される。
本発明の表面改質無機酸化物粉末の疎水率は95%以上であるが、この疎水率が95%未満では、疎水性に優れた表面改質無機酸化物粉末を提供するという本発明の目的を達成し得ない。疎水率は高い程好ましく、特に97%以上、とりわけ99%以上であることが好ましい。なお、疎水率の上限は通常100%である。
【0030】
<無機酸化物粉末>
本発明に係る無機酸化物粉末としては、珪素、チタン、アルミニウム、アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素よりなる群から選ばれる1種を含む酸化物、或いは2種以上を含む複合酸化物が挙げられ、好ましくは、シリカ、チタニア、アルミナ又はこれらの複合酸化物の粉末であり、また、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属酸化物やマグネシウム、カリウム等のアルカリ土類金属を5重量%以下含有しても良い。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0031】
本発明において、特に好ましい無機酸化物粉末はシリカ粉末であり、より好ましくはフュームドシリカである。
【0032】
フュームドシリカとしては、窒素吸着法(BET)による比表面積が5〜500m/g、特に20〜400m/g程度のものを用いることが好ましい。フュームドシリカのBET比表面積が小さ過ぎると、電子写真トナーに外添した場合に流動化剤としての効果が小さくなり、大き過ぎると電子写真トナーに外添した場合にトナーへの埋没が速く、性能の経時劣化が大きくなる。
【0033】
<反応性変性シリコーンオイル>
本発明では表面処理剤としてのシリコーンオイルとして、反応性変性シリコーンオイルを用いることを特徴とする。シリコーンオイルとして反応性に優れた反応性変性シリコーンオイルを用いることにより、無機酸化物粉末に対するシリコーンオイルの反応性を高め、固定率を高めることができる。
【0034】
本発明で用いる反応性変性シリコーンオイルとしては、ジメチルハイドロジェンポリシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、両末端シラノールジメチルシリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイル等を用いることができ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0035】
これらのうち、ヒドロキシシリル基と反応して「Si−O−Si」なる結合を生成しうる基を有するものであり、好ましい例は水素原子、水酸基等を有するものであることから、ジメチルハイドロジェンポリシリコーン、両末端シラノールジメチルシリコーンオイル等の反応性変性シリコーンオイルを用いることが好ましい。
【0036】
なお、本発明で用いる反応性変性シリコーンオイルは、後述の2段階処理における2次処理で効率的に蒸発、除去できるような揮発性の高いものが好ましく、そのために、本発明で用いる反応性変性シリコーンオイルは分子量が比較的小さいものが好ましい。この反応性変性シリコーンオイルの分子量は、例えば、数平均分子量として250〜50000、特に250〜10000、とりわけ250〜5000であることが好ましい。反応性変性シリコーンオイルの分子量が大き過ぎると、揮発性が低く、後述の2段階処理における2次処理で効率的に蒸散、除去してカーボン固定化率の高い表面改質無機酸化物粉末を得ることができず、小さ過ぎると、高疎水性の付与が困難である。
【0037】
これらの反応性変性シリコーンオイルは、ヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなどの炭素数1〜8の脂肪族アルコール)、アセトン等、場合によっては、水などで、例えば、5〜50重量%程度に希釈して表面処理に用いることが、均一処理を行うことができ、好ましい。
【0038】
無機酸化物粉末の表面処理に供する、無機酸化物粉末に対する反応性変性シリコーンオイルの使用量は、無機酸化物粉末の種類(比表面積等)、反応性変性シリコーンオイルの種類(分子量等)等によって異なるが、通常、無機酸化物粉末100重量部に対して1〜40重量部、特に2〜35重量部、とりわけ5〜30重量部とすることが好ましい。反応性変性シリコーンオイルの使用量が少な過ぎると十分な表面処理を行って疎水率の高い表面改質無機酸化物粉末を得ることができない。本発明では、後述の2段階処理における2次処理で、余剰の反応性変性シリコーンオイルを蒸発、除去するため、過剰量の反応性変性シリコーンオイルを用いて疎水率を高めることもできるが、過度に多量の反応性変性シリコーンオイルを用いることは、凝集し易くなることとコストの面で好ましくない。
【0039】
なお、反応性変性シリコーンオイルの使用量としては、用いる無機酸化物粉末の比表面積と反応性変性シリコーンオイルの分子量に応じてより好適な範囲が存在し、例えば、無機酸化物粉末としてのフュームドシリカのBET比表面積と、反応性変性シリコーンオイルの使用量との関係は、下記式を満たすことが好ましい。
0.0005≦C/(A×B)≦0.0018
A:フュームドシリカのBET比表面積(m/g)
B:表面処理に供するフュームドシリカの量(g)
C:表面処理に供する反応性変性シリコーンオイルの量(g)
【0040】
<表面処理方法>
本発明に係る、高カーボン固定化率及び高疎水率の表面改質無機酸化物粉末を製造する方法には特に制限はないが、前述の反応性変性シリコーンオイルを用いて、以下に記載する1次処理と2次処理との2段階処理による表面処理を行うことが好ましい。
【0041】
なお、以下の1次処理及び2次処理は、加水分解及び酸化防止のために窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。具体的には、ヘンシェルミキサーなどの攪拌装置を備えた容器に無機酸化物粉末を入れ、窒素パージ下で攪拌し、反応性変性シリコーンオイル(好ましくは反応性変性シリコーンオイルの希釈液)を噴霧して無機酸化物粉末と混合し、加熱して反応させる方法が採用される。噴霧は加熱に先立って行っても、また、1次処理の温度又は、それ以下の温度に加熱しながら行っても良い。
【0042】
(1次処理)
1次処理は、無機酸化物粉末に前述の所定量の反応性変性シリコーンオイルを付与して攪拌下に加熱することにより、無機酸化物粉末の表面に反応性変性シリコーンオイルを反応させて固定化する処理である。ここで、反応性変性シリコーンオイルは前述の各種溶媒で希釈して無機酸化物粉末に付与しても良い。
【0043】
この1次処理における加熱温度は、用いた反応性変性シリコーンオイルの反応性等によっても異なるが、150〜280℃、特に200〜280℃とすることが好ましく、1次処理の処理時間は、加熱温度や用いた反応性変性シリコーンオイルの反応性によっても異なるが、5〜120分、特に5〜60分、とりわけ5〜40分とすることが好ましい。
【0044】
1次処理の処理温度が低過ぎたり、処理時間が短か過ぎると、十分な固定化率および疎水率を得ることができず、逆に処理温度が高過ぎても、固定化率及び疎水率が低下する恐れがあり、また、処理時間が徒に長過ぎると生産効率が低下し、好ましくない。
【0045】
(2次処理)
2次処理は、1次処理後の無機酸化物粉末を1次処理よりも高い温度で加熱処理することにより、無機酸化物粉末に固定化されていない余剰の反応性変性シリコーンオイルを蒸発させて除去させる処理である。
【0046】
2次処理の加熱温度や処理時間は、用いた反応性変性シリコーンオイルの種類(揮発性)や量によっても異なり、所定の固定化率と疎水率が得られるような条件であれば良いが、通常、1次処理の温度より高く、従って、280℃より高く、330℃以下、好ましくは290〜330℃の温度で、5〜180分、特に5〜120分行うことが好ましい。
【0047】
この2次処理の温度が低過ぎたり、処理時間が短か過ぎると、余剰の反応性変性シリコーンオイルを十分に除去し得ず、固定化率の高い表面改質無機酸化物粉末を得ることができない。2次処理の温度が高過ぎたり、処理時間が長過ぎると、無機酸化物粉末表面の反応性変性シリコーンオイルが分解するなどして、疎水率が低下するおそれがある。
【0048】
なお、1次処理から2次処理への温度変更は、段階的に行っても良く、連続的に温度が上昇するように行っても良い。
【0049】
このように、無機酸化物粉末に対する反応性に優れた反応性変性シリコーンオイルを用いて、無機酸化物粉末に対して十分に反応させた後、余剰の反応性変性シリコーンオイルを蒸発除去する2段階処理を行うことにより、カーボン固定化率と疎水率が共に高い本発明の表面改質無機酸化物粉末を得ることができる。
【0050】
[電子写真用トナー組成物]
本発明の電子写真用トナー組成物は、上述の本発明の表面改質無機酸化物粉末を外添したものであり、その組成やその製造方法には特に制限はなく、公知の組成及び方法を採用することができる。
【0051】
本発明の電子写真用トナー組成物の製造に当り、本発明の表面改質無機酸化物粉末の添加量は、所望の特性向上効果が得られるような添加量であれば良く、特に制限されないが、電子写真用トナー組成物中に、本発明の表面改質無機酸化物粉末が0.01〜5.0重量%含有されていることが好ましい。電子写真用トナー組成物中の本発明の表面改質無機酸化物粉末の含有量が0.01重量%未満では、表面改質無機酸化物粉末を添加したことによる流動性の改善効果や帯電性の安定効果が十分に得られない。また、表面改質無機酸化物粉末の含有量が5.0重量%を超えると表面改質無機酸化物粉末単独で行動するものが増え、画像やクリーニング性に問題が生じてくる。
【0052】
トナーには一般に熱可塑性樹脂の他、少量の顔料及び電荷制御剤、その他の外添剤が含まれている。本発明では、上記表面改質無機酸化物粉末が配合されていれば、他の成分は従来と同様で良く、磁性、非磁性の1成分系トナー、2成分系トナーのいずれでも良い。また、負帯電性トナー、正帯電性トナーのいずれでも良く、モノクロ、カラーのどちらでも良い。
【0053】
なお、本発明の電子写真用トナー組成物の製造に当り、外添剤としての本発明の表面改質無機酸化物粉末は、単独で使用されるに限られず、目的に応じて、他の金属酸化物微粉末と併用しても良い。例えば、上記表面改質無機酸化物粉末と、他の表面改質された乾式シリカ微粉末や表面改質された乾式酸化チタン微粉末や表面改質された湿式酸化チタン微粉末等を併用することができる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0055】
なお、以下の実施例及び比較例で用いたフュームドシリカ、反応性変性シリコーンオイル、及びシリコーンオイルの仕様は次の通りである。
【0056】
<フュームドシリカ>
フュームドシリカ300:
日本アエロジル(株)製商品名「AEROSIL(登録商標)300」
(BET比表面積300m/g)
フュームドシリカ200:
日本アエロジル(株)製商品名「AEROSIL(登録商標)200」
(BET比表面積200m/g)
フュームドシリカ130:
日本アエロジル(株)製商品名「AEROSIL(登録商標)130」
(BET比表面積130m/g)
フュームドシリカ90 :
日本アエロジル(株)製商品名「AEROSIL(登録商標)90」
(BET比表面積90m/g)
フュームドシリカ50 :
日本アエロジル(株)製商品名「AEROSIL(登録商標)50」
(BET比表面積50m/g)
【0057】
<反応性変性シリコーンオイル>
ジメチルハイドロジェンポリシリコーン(DMHPS):
信越化学工業社製「KF99」(数平均分子量:約2000)
両末端シラノールジメチルシリコーンオイル(DMO−SiOH):
レ・ダウ・コーニング社製「CF1079」(数平均分子量:約3000)
【0058】
<シリコーンオイル>
ポリジメチルシロキサン(PDMS100cs):
信越化学工業社製「KF96−100cs」(数平均分子量:約5500)
ポリジメチルシロキサン(PDMS10cs) :
信越化学工業社製「KF96-10cs」(数平均分子量:約1000)
【0059】
また、表面処理シリカ粉末のカーボン固定化率及び疎水率の測定方法は次の通りである。
【0060】
[カーボン固定化率]
BUCHI社製ソックスレー抽出装置を用い、表面処理フュームドシリカ0.7gを直径28mmの円筒濾紙に入れ、抽出溶媒にはヘキサンを使用し、抽出時間60分、リンス時間30分の条件で表面処理フュームドシリカ上の遊離オイルを抽出した。オイルを抽出除去した後の表面処理フュームドシリカのカーボン量を測定し、抽出前の表面処理フュームドシリカのカーボン量で割ったものの百分率を固定化率とした。
なお、表面処理フュームドシリカのカーボン量は、(株)堀場製作所製の金属中炭素分解装置(EMIA−110)を用いて測定した。
【0061】
[疎水率]
表面処理フュームドシリカ1gを200mLの分液ロートに計り採り、これに純水100mLを加えて栓をし、ターブラーミキサーで10分間振盪した。振盪後、10分間静置した。静置後、下層の20〜30mLをロートから抜き取った後に、下層の混合液を10mm石英セルに分取し、純水をブランクとして比色計にかけ、その波長500nmの光の透過率を疎水率とした。
【0062】
[実施例1〜14]
表1に示すフュームドシリカ100重量部を反応器に入れ、窒素パージ下の攪拌下に、表1に示す反応性変性シリコーンオイルをヘキサンで30重量%に希釈したものを表1に示す反応性変性シリコーンオイル添加量となるように導入し、攪拌を継続した状態で、まず、表1に示す反応温度及び反応時間で1次処理した後、表1に示す反応温度及び反応時間で2次処理した。
得られた表面処理フュームドシリカを取り出してカーボン固定化率と疎水率を測定し、結果を表1に示した。
【0063】
[比較例1〜12]
反応性変性シリコーンオイルの代わりに表2に示すポリジメチルシロキサンを用い、表2に示すポリジメチルシロキサン添加量となるように導入し、表2に示す反応温度及び反応時間で1次処理した後、表2に示す反応温度及び反応時間で2次処理したこと以外は、実施例1〜14と同様にしてフュームドシリカの表面処理を行った。
得られた表面処理フュームドシリカを取り出してカーボン固定化率と疎水率を測定し、結果を表2に示した。
【0064】
[比較例13〜30]
実施例1〜14において、1次処理及び2次処理のいずれか一方を省略するか、或いは、1次処理及び/又は2次処理条件を変更し、表3,4に示す処理条件で表面処理を行ったこと以外は同様にして表面処理フュームドシリカを得、そのカーボン固定化率及び疎水率を測定して、結果を表3,4に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
以上の結果から、本発明によれば、カーボン固定化率が高く、高疎水性の表面改質無機酸化物粉末が提供されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性変性シリコーンオイルにより表面処理された無機酸化物粉末であって、カーボン固定化率が90%以上で、疎水率が95%以上であることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【請求項2】
請求項1において、前記無機酸化物粉末が、珪素、チタン、アルミニウム、アルカリ金属元素、及びアルカリ土類金属元素よりなる群から選ばれる1種を含む酸化物、或いは2種以上を含む複合酸化物よりなることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【請求項3】
請求項2において、前記無機酸化物粉末がシリカ粉末であることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【請求項4】
請求項3において、前記シリカ粉末がフュームドシリカであることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、無機酸化物粉末に反応性変性シリコーンオイルを添加して温度150〜280℃で1次処理した後、280℃を超える温度で2次処理して得られることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【請求項6】
請求項5において、1次処理の温度が200〜280℃で、処理時間が5〜120分であり、2次処理の温度が280℃を超え330℃以下で、処理時間が5〜180分であることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、反応性変性シリコーンオイルが、ジメチルハイドロジェンポリシリコーン及び/又は両末端シラノールジメチルシリコーンオイルであることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、表面処理に用いられる反応性変性シリコーンオイルの量が無機酸化物粉末100重量部に対して1〜40重量部であることを特徴とする表面改質無機酸化物粉末。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載の表面改質無機酸化物粉末を外添したことを特徴とする電子写真用トナー組成物。

【公開番号】特開2009−292915(P2009−292915A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147048(P2008−147048)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(390018740)日本アエロジル株式会社 (14)
【Fターム(参考)】